説明

カラー有機EL表示装置

【課題】 発光効率の異なる各表示画素の面積のうち、発光効率が最も悪い色に過大な電流を流すことによって生じるEL表示装置の早期劣化を防止し、長寿命化を図ることができるEL表示装置を提供する。
【解決手段】 陽極161、発光層163及び陰極166を順に積層しマトリックス状に配列され各色の表示画素を成すEL素子の発光層163の発光効率が最もよい緑色の発光領域1Gの発光面積を他の赤色及び青色の発光領域1R,1Bの発光面積に比べて最も小さくすることにより、EL表示装置の長寿命化が図れるとともに、容易にホワイトバランスをとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下、「EL」と称する。)素子等の自発光素子、及び薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と称する。)を備えたカラー有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EL素子を用いたEL表示装置が、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。
【0003】
また、そのEL素子を駆動させるスイッチング素子としてTFTを備えた表示装置も研究開発されている。
【0004】
図7に有機EL表示装置の表示画素付近を示す平面図を示し、図8(a)に図7中のA−A線に沿った断面図を示し、図8(b)に図7中のB−B線に沿った断面図を示す。
【0005】
図7に示すように、ゲート信号線51とドレイン信号線52とに囲まれた領域に表示画素が形成されている。両信号線の交点付近には第1のTFT30が備えられており、そのTFT30のソース13sは後述の保持容量電極線54との間で容量をなす容量電極55を兼ねるとともに、第2のTFT40のゲート41に接続されている。第2のTFTのソース43sは有機EL素子60の陽極61に接続され、他方のドレイン43dは有機EL素子60に供給される電流源である駆動電源線53に接続されている。
【0006】
また、TFTの付近には、ゲート信号線51と並行に保持容量電極線54が配置されている。この保持容量電極線54はクロム等から成っている。また、保持容量電極線54は、TFT30のソース13sに接続された容量電極55とはゲート絶縁膜12を介して形成されている。そして、保持容量電極線54と容量電極55との間で電荷を蓄積して容量を成している。この保持容量は、第2のTFT40のゲート電極41に印加される電圧を保持するために設けられている。
【0007】
図8に示すように、有機EL表示装置は、ガラスや合成樹脂などから成る基板又は導電性を有する基板あるいは半導体基板等の基板10上に、TFT及び有機EL素子を順に積層形成して成る。ただし、基板10として導電性を有する基板及び半導体基板を用いる場合には、これらの基板10上にSiO2やSiNなどの絶縁膜を形成した上にTFT及び有機EL素子を形成する。
【0008】
まず、スイッチング用のTFTである第1のTFT30について説明する。
【0009】
図8(a)に示すように、石英ガラス、無アルカリガラス等からなる絶縁性基板10上に、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などの高融点金属からなるゲート電極11を兼ねたゲート信号線51及び保持容量電極線54を配置する。続いて、ゲート絶縁膜12、及び多結晶シリコン(以下、「p−Si」と称する。)膜からなる能動層13が順に積層されている。
【0010】
そして、ゲート絶縁膜12、能動層13及びストッパ絶縁膜14上の全面には、SiO2膜、SiN膜及びSiO2膜の順に積層された層間絶縁膜15が形成されており、この層間絶縁膜15のドレイン13dに対応する位置に形成したコンタクトホールに、Al等の金属を充填したドレイン電極16が設けられ、更に基板全面に有機樹脂から成り表面を平
坦にする平坦化絶縁膜17が形成されている。
【0011】
次に、有機EL素子の駆動用のTFTである第2のTFT40について説明する。
【0012】
図8(b)に示すように、石英ガラス、無アルカリガラス等からなる絶縁性基板10上に、Cr、Moなどの高融点金属からなるゲート電極41、ゲート絶縁膜12、及びp−Si膜からなる能動層43を順に形成されており、その能動層43には、チャネル43cと、このチャネル43cの両側にソース43s及びドレイン43dが設けられている。そして、ゲート絶縁膜12及び能動層43上の全面に、SiO2膜、SiN膜及びSiO2膜の順に積層された層間絶縁膜15を形成し、この層間絶縁膜15のドレイン43dに対応した位置に形成したコンタクトホールに、Al等の金属を充填して駆動電源に接続された駆動電源線53が配置されている。更に全面に例えば有機樹脂から成り表面を平坦にする平坦化絶縁膜17を備えている。そして、その平坦化絶縁膜17及び層間絶縁膜15のソース43sに対応した位置にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールを介してソース43sとコンタクトしたITO(Indium Tin Oxide)から成る透明電極、即ち有機EL素子の陽極61を平坦化絶縁膜17上に設けている。
【0013】
有機EL素子60は、ITO等の透明電極から成る陽極61、MTDATA(4,4,4-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine)などから成る第1ホール輸送層、及びTPD(N,N-diphenyl-N,N-di(3-methylphenyl)-1,1-biphenyl-4,4-diamine)などからなる第2ホール輸送層のホール輸送層62と、キナクリドン(Quinacridone)誘導体を含むBebq2(bis(10-hydroxybenzo[h]quinolinato)beryllium)などから成る発光層63及びBebq2などから成る電子輸送層64からなる発光素子層65、マグネシウム・インジウム合金などから成る陰極66がこの順番で積層形成された構造であり、各画素にそれぞれ設けられ各画素での発光を可能としている。
【0014】
この有機EL素子は、陽極から注入されたホールと、陰極から注入された電子とが発光層の内部で再結合し、発光層を形成する有機分子を励起して励起子が生じる。この励起子が放射失活する過程で発光層から光が放たれ、この光が透明な陽極から透明絶縁基板を介して外部へ放出されて発光する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、各色を発光する発光層の発光効率は各色ごとに異なっている。
【0016】
しかしながら、従来のEL表示装置は、図9に示すように、複数のゲート信号線51と複数のドレイン信号線52との各交点にマトリックス状に配列された各色(赤(R),緑(G),青(B))の表示画素の発光領域1B,1R,1Gの発光面積がみな同一であるため、発光効率の悪い表示画素において同一輝度を得るためには、他の発光効率の良い表示画素よりも大きな電流を流さなければならなくなり、それによって、その表示画素の寿命が短くなってしまい、EL表示装置の寿命も短くなってしまうという欠点があった。
【0017】
また、発光効率の異なる各色の表示画素の発光面積を同一とすると、各色の色度の違いによる色バランス(ホワイトバランス)が取りにくく、またそのバランスを取るために電流を多く発光層に供給しなければならないため、多く電流を供給した表示画素のEL素子の劣化が生じるという欠点があった。
【0018】
そこで本発明は、上記の従来の欠点に鑑みて為されたものであり、ホワイトバランスの制御が容易で、かつ長寿命のEL素子等の発光素子を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のカラー表示装置は、各表示画素に、陽極と陰極との間にホール輸送層と有機材料からなる発光層を有する有機EL素子を備え、陽極の端部を覆い陽極に対応して開口部を備えた平坦化絶縁膜を有するカラー有機EL表示装置において、各色の表示画素のうちいずれかの色の表示画素の発光面積と他の色の表示画素の発光面積とを、平坦化絶縁膜の開口部の大小によって異ならせているとともに、ホール輸送層は開口部により露出した陽極上と平坦化絶縁膜上の全面を覆い、かつ、発光層はホール輸送層上の平坦化絶縁膜の開口部及び平坦部を覆い、さらに、陰極は各表示画素を覆った共通電極であるものである。
【0020】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、前記発光面積は、前記自発光素子の発光効率に応じて設定されているカラー有機EL表示装置である。
【0021】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、前記発光面積は、前記表示画素に備えられた前記自発光素子の発光効率と、該自発光素子がそれぞれ発する各色の色度と、設定する表示装置の白色の色度とに応じて、各色毎に設定されているカラー有機EL表示装置である。
【0022】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、発光効率が高い自発光素子の発光面積を、該発光効率が高い自発光素子よりも低い発光効率の自発光素子の発光面積よりも小さくしたカラー有機EL表示装置である。
【0023】
更に、上述のカラー有機EL表示装置は、最も発光効率が高い自発光素子の発光面積を、他の発光効率の自発光素子の発光面積よりも小さくしたカラー有機EL表示装置である。
【0024】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、前記最も発光効率が高い自発光素子は緑色を発光する自発光素子であるカラー有機EL表示装置である。
【0025】
更にまた、上述のカラー有機EL表示装置は、最も発光効率が低い自発光素子の発光面積を、他の発光効率の自発光素子の発光面積よりも大きくしたカラー有機EL表示装置である。
【0026】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、前記最も発光効率が低い自発光素子は、赤色又は青色を発光する自発光素子であるカラー有機EL表示装置である。
【0027】
また、上述のカラー有機EL表示装置は、発光効率が低くなるにつれて発光面積が順に大きくしたカラー有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のカラー有機EL表示装置によれば、自発光素子を備えた表示装置の長寿命化を図ることができるとともに、容易にホワイトバランスを制御することが可能なカラー有機EL表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明のEL表示装置について以下に説明する。
【0030】
図1は、本発明のEL表示装置100の平面図である。
【0031】
なお、同図には各表示画素が、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)を発光する場合
を示している。また、R、G、Bの各表示画素の基本的平面構成は図2に示す。
【0032】
EL表示装置100には、複数のゲート信号線51が行(左右)方向に、また複数のドレイン信号線52と、EL素子に電源からの電力を供給するための駆動電源線53が列(上下)方向に配置されており、それらの信号線51と、信号線52と、駆動電源線53とは互いに交差している。
【0033】
それらの交点付近に、両信号線51,52に接続された第1TFT30、及び駆動電源線53から電流を有機EL素子160に供給する第2TFT40、そしてR,G,Bのいずれかを発光する有機EL素子160とが形成されている。図1においては図2のR、G、Bを発光する各表示画素のうちの発光領域のみを表している(図1中において1R、1B、1Gを付している)。
【0034】
図1に示すように、各色の表示画素は基板上にマトリックス状に配列されており、それらの各表示画素の発光面積1R、1G、1Bはそれぞれ異なっている。具体的には図1の場合には、緑色の発光領域1Gの発光面積を最も小さくして設けられている。他の色の発光領域1R,1Bは緑の発光領域1Gよりも広い面積に形成されている。即ち、同図の場合には、緑色の発光領域1Gの発光面積を最も小さく形成し、次に赤色の発光領域1Rの発光面積を大きくし、青色の発光領域1Bの発光面積を最も大きくした場合を示している。
【0035】
なお、赤色の発光領域1Rと、緑色の発光領域1Gと、青色の発光領域1Bとの発光面積の大きさの順番は、それらの発光材料の発光効率に依存する。従って、発光面積の大きさの順は上述のG<R<Bに限ることなく、使用する発光材料の発光効率によって決定する。
【0036】
図3は、それぞれ図2のB−B線に沿った有機EL表示装置の一表示画素の断面図を示す。
【0037】
一表示画素は割り当てられたR、G、Bのいずれかを発光する有機EL素子160と、ゲート信号線51によってデータ信号を取り込む第1TFT30と、この第1TFT30を介してドレイン信号線52から供給されたデータ信号を保持する保持容量SCと、保持されたドレイン信号に応じて駆動電源線53を介して電流を有機EL素子160に供給する第2TFT40を備えている。なお、これらのうち、図2のA−A線に沿った第1TFT30及び保持容量SCの断面は上述の図8(a)と共通するため説明を省略する。また、図3において、第2TFT40は上述の図8(b)と共通する。
【0038】
有機EL素子160は、第2TFT40のソース43sに接続された陽極161と、基板上において共通電極として形成された陰極166と、この両電極の間に有機化合物を配置した発光素子層165とが形成されて構成されている。発光素子層165は、少なくとも発光層を含み、単一層でも多層構造でも構成できるが、一例として、図示するように陽極161側から順にホール輸送層162、発光層163、電子輸送層164から構成される。
【0039】
また、本実施の形態においては、図1に示すように基板上にマトリクス状に配置された複数の表示画素R,G,Bを発光してカラー表示を行うために、R用、G用、B用の有機EL素子160では、それぞれ異なる材料、特に発光機能を備える有機化合物として異なる材料を用いる。
【0040】
例えば、R用有機EL素子160Rでは、陽極161としてITO、ホール輸送層16
2として、MTDATA(第1ホール輸送層)及びTPD(第2ホール輸送層)、発光層163としてはZnPrを2%ドープしたBeBq2、陰極166としてMgIn合金を用いる。
【0041】
また、G用有機EL素子160Gでは、陽極161としてITO、ホール輸送層162として、MTDATA(第1ホール輸送層)及びTPD(第2ホール輸送層)、発光層163としてはBeBq2、陰極166としてMgIn合金を用いる。
【0042】
更に、B用有機EL素子160Bでは、陽極161としてITO、ホール輸送層162として、MTDATA(第1ホール輸送層)及びTPD(第2ホール輸送層)、発光層163としては1AZM−Hex、陰極としてMgIn合金を用いる。
【0043】
またB用有機EL素子160Bとしては、他にITO(陽極)/MTDATA(第1ホール輸送層)・TPD(第2ホール輸送層)/OXD−8(発光層)/MgIn(陰極)の組み合わせでも良い。
【0044】
なお、上述の各化合物の略称の正式名称は、以下の通りである。
ZnPr:5,10,15,20-tetraphenylporphyrinato zinc
MTDATA:4,4,4-tris(3-methylphenylphenyl amino)triphenylamine
TPD:N,N-diphenyl-N,N-di(3-methylphenyl)-1,1-biphenyl-4,4-diamine
BeBq2:bis(10-hydroxybenzo[h]quinolinato)beryllium
1AZM-Hex:(N,N-disalicylidene-1,6-hexanediaminato)zinc
OXD-8:3-bis[5-(p-dimethylaminophenyl)-1,3,4-oxadiazol-2-y l]benzene
また、R,G,B用有機EL素子160(160R、160G、160B)としてこのような材料を採用した場合、発光効率は素子160G>素子160R>素子160Bとなる。有機EL素子160において、発光輝度は電流(電流密度)に依存性を示す。従って、各表示画素に同等の電流を供給した場合に、各色が同等な輝度となるようにするためには、上述のように素子発光領域面積を領域1G<領域1R<領域1Bと設定すればよい。
【0045】
次に、各表示画素における発光面積をR,G,Bで適切な異なった大きさにするための表示画素の形成方法について説明する。
【0046】
その方法としては、(i)有機EL素子の陽極161の面積をR,G,Bで変える、(ii)陽極161の面積は同一として、陽極形成後、発光素子の層形成前に形成される平坦化絶縁膜167により陽極161の端部を覆うことで、陽極と発光素子層との接触面積をR,G,Bで変えるという方法がある。
【0047】
まず、陽極の面積を異ならせて表示画素を形成する上述の(i)の方法について、図4を参照して説明する。なお、図4はR,G,B各色の有機EL素子160の陽極161を形成するためのマスクを表している。
【0048】
マスク200Aは、図1に示すように発光領域面積を1G<1R<1Bとするためのマスクであり、目的とする陽極の大きさに応じた開口部201が形成されている。同図において最も大きい開口部は、発光効率がR,G,Bのうち最も低い青色の有機EL素子用陽極のための開口部201B、最も小さな開口部は、最も発光効率が高い緑色の有機EL素子用陽極のための開口部201Gである。また、開口部201Bと201Gの中間の大きさの開口部は、発光効率が緑色のEL素子より低く、青色のEL素子より高い赤色のEL素子用陽極のための開口部201Rである。
【0049】
以下に、図3(a)を参照して、(i)の方法について具体的に説明する。
【0050】
第2TFT40を形成し、このTFT40を覆うように層間絶縁膜15,TFT40のドレイン43dと接続された駆動電源線53、基板全面を覆う平坦化絶縁膜17を形成し、この平坦化絶縁膜17と層間絶縁膜15を貫通するようにTFT40のソース43s対応領域にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール及び平坦化絶縁膜17の全面を覆うように透明電極(陽極)材料であるITOをスパッタ法によって形成するまでの工程は、上述の図8(b)の構成と共通する。
【0051】
ITOを形成した後、次にレジストを塗布し、図4に示すマスク200Aを用いて、露光、現像工程を施すことにより、マスク200Aの開口部201R,201G,201Bに対応した位置にのみレジストパターンが残り、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いてITOを所定エッチャントにてエッチングして除去する。これにより、マスク200Aの開口部201R,201G,201Bに対応した大きさ及び位置にITOパターンが形成され、その結果、陽極161は、R,G,B毎に異なる大きさとなる。
【0052】
有機EL素子の陽極161を各表示画素領域に形成した後、R,G,B毎に異なる上述の有機化合物材料を用いてR,G,B用の発光素子層165をそれぞれ形成する。なお、有機EL素子において、発光素子層に用いられる材料は比較的高抵抗であり、発光領域は発光素子層のうち陽極と陰極との層間に挟まれた領域に限られる。
【0053】
従って、発光素子層は陽極形成領域と同一でも、また陽極形成領域より大きくても良いが、発光素子層上に形成される陰極と、陽極とが、陽極端部において短絡することを防止するため、本実施の形態においては、図3(a)に示すように、発光素子層はR、G、Bとも陽極を覆うようにこの陽極面積より大きく設定している。もちろん、陽極と陰極との間で短絡が起こらないように他の処置を施せば、必ずしも発光素子層165を陽極より大きくする必要はない。他の処置とは、例えば後述する図3(b)のように平坦化絶縁膜167を形成すること等である。
【0054】
ここで、上述のようにR用有機EL素子:ITO//MTDATA/TPD//BeBq2+ZnPr2%//MgIn、B用有機EL素子:ITO//MTDATA/TPD//BeBq2//MgIn、G用有機EL素子:ITO//MTDATA/TPD //1AZM-Hex//MgIn又はITO//MTDATA/TPD//OXD-8//MgInの構成を採用した場合、第1及び第2ホール輸送層から構成されるホール輸送層162としてR,G,Bで同一材料が用いられており、ホール輸送層162の形成に際してはR,G,Bの区別無く、対応する陽極上161及び平坦化絶縁膜17上の全面に形成すればよい。
【0055】
また、発光層163の形成にあたっては、上述のように本実施の形態においては、R,G,B用それぞれに異なる発光材料を用いており、各色用の発光層163の材料を変更して順に形成していく。各色の発光層163の形成に際しては、図5に示すようなマスク200Lを用いる。このマスク200Lはタングステン(W)等の金属であったり、あるいはシリコンなどが材料として用いられる。
【0056】
同図に示すように、マスク200Lは基板上に同一色の発光層を形成するための開口部202を有しており、それらの開口部202はマスク200Lの位置をシフトさせることにより図4に示したマスク200Aを用いて形成した各色の陽極と重畳するように設けられている。このとき、発光層の面積は陽極と同じ大きさであっても良く、陽極を覆って陽極よりも大きい面積であっても良く、本実施の形態においては図3(a)に示すようにR,G,Bいずれの陽極より大きい大きさに設定している。
【0057】
例えば、青色を発光する発光層を蒸着する際には、蒸着前にマスク200Lを青色の発光層を形成予定領域にマスク200Lの開口部202が位置するように位置合わせして、
ホール輸送層162上に密着させて配置する。その後、青色発光材料を蒸着することによって開口部202に応じた島状の青色発光層を形成する。
【0058】
赤色発光層の蒸着にはマスク200Lを横方向にシフトさせ図5のマスク200Lの開口部202を赤色発光層の形成予定領域に位置合わせして用い、同様にして緑色発光層の蒸着に際してはマスク200Lの開口部202を緑色発光層の形成予定領域に位置合わせして用いる。このような手順により、R,G,Bで共に材料は異なるが同じ面積の発光層を順次島状にホール輸送層162上に形成する。こうして各色の発光層163を形成することができる。
【0059】
発光層163を形成後、電子輸送層164を必要とするEL素子160に対しては、発光層163上及びホール輸送層162上に電子輸送層164を蒸着形成することで電子輸送層164を形成する。
【0060】
以上のような手法により得られた発光素子層165を覆うようにマグネシウム・インジウム合金などをスパッタ法によって堆積し陰極166を形成する。これにより、R,G,B毎で陽極の面積が異なり素子発光面積がR,G,B毎に所望の面積となった有機EL素子を用いた表示装置が得られる。
【0061】
次に、陽極の面積は同じで陽極と発光層との間に形成した平坦化絶縁膜で陽極と発光層との接触面積を異ならせる方法(上述の(ii))について説明する。
【0062】
図3(b)に示すように、陽極161上に設ける発光素子層165の陽極161の段差による断線することを防止するためには、陽極161の周縁部を平坦化絶縁膜167で覆うことが好適である。このような構成の有機EL素子の場合、実質的に発光する領域、即ち発光面積は発光素子層165が陽極161と接触している面積であり、この平坦化絶縁膜167によって覆われた陽極161の周縁部は実質的に発光しない領域となる。
【0063】
従って、平坦化絶縁膜167で覆う陽極161の周縁部の面積のみ各色で異ならせることにより、各色の表示画素の発光面積を異ならせることができる。
【0064】
このように各色の表示画素の発光面積を異ならせることによっても、EL素子の長寿命化が図れる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、発光効率がG>R>Bの場合に、表示画素の発光面積をG<R<Bとし、各色でそれぞれ発光面積をこの順に異なるものとした場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定するものはない。例えば、発光効率が同じくG>R>Bの場合において、発光面積はG≒R<Bとしても良いし、G<R≒Bとしても良い。
【0066】
また、陽極161の周縁部に平坦化絶縁膜167を配置したが、平坦化絶縁膜に限るものではなく、絶縁性を有するものであればよい。
【0067】
以上のようにすることにより、電流量が大きいほど劣化が早まる傾向を示す有機EL素子において、低発光効率の表示画素のEL素子発光層に、他の色の発光層よりも大きい電流を流すことで各色が同様に明るく光るようにさせると低発光効率の素子が選択的に劣化するといった不具合が発生することが防止でき、どの色の有機EL素子も同様の期間劣化を防ぐことが可能となり、その結果、表示装置全体としての寿命を長くできる。
【0068】
面積比の一例としては、次のようなものが挙げられる。
【0069】
例えば、発光する緑、赤、青の各色光の輝度を1:1:1とする場合、供給電流を一定とすると、発光効率の比が、10:3.8:1.8の場合である。各色とも輝度”1”成するために必要な各色の発光面積の比は、1/10:1/3.8:1/1.8=1:2.6:5.6である。
【0070】
このような発光面積比にすることにより、発光効率が最も悪い色の青色だけに大きな電流を流すことなく、R,G,Bを同様な輝度で発光させることができるので発光層の寿命を長くすることが可能となる。
【0071】
次に、面積比の他の例について説明する。この例は、発光効率の低い色の有機EL素子の劣化を防止すると共に、フルカラー表示におけるホワイトバランスの制御を考慮した場合の例である。
【0072】
自発光素子である有機EL素子を表示画素に用いてカラー表示を行う場合、各R,G,Bそれぞれの有機EL素子からの発光光を加算することにより白が表示される。
【0073】
目標として設定する白色を、NTSC方式の基準白色光源(C光源)の色度座標(x、y)=(0.31,0.32)とする場合に、このような白色の輝度100%を達成するためにR,G,Bに要求される輝度は、各有機EL素子の発するR,G,Bの各色の色度が、図6の上段に示すような座標で表される場合に、例えば、25%:46%:29%というように決まる。これは輝度比で示すと、R:G:B=0.54:1:0.63となる。
【0074】
また、有機EL素子の各色における発光効率の比が、上述の例と同様にG,R,Bについて、10:3.8:1.8の場合、G,R,Bの輝度比G:R:B=1:0.54:0.63を達成するために必要な発光面積の比は、G:R:B=1/10:0.54/3.8:0.63/1.8=1:14.2:35ということになる。
【0075】
このように、R,G,Bの色度と目標白色の色度、そして各色の発光効率を考慮し、例えば発光領域の面積比が上述の値になるように、R,G,B用の発光面積を設定すれば、各表示画素の有機EL素子に同量の電流を供給した場合に、白の輝度100%を達成することが可能となる。
【0076】
なお、目標とする白色の色度又は各色の色度が変わると、上述のように輝度比によって決まる各色の発光面積の順番も変わることになる。
【0077】
以上のように、このような方法により面積比を決定したEL表示装置では、各色の輝度バランスが発光面積で調整されているので、ホワイトバランスの制御が非常に容易であるとともに、白を表示するために特定の色のEL素子にのみ多く電流を流す必要が無くなり、表示装置全体としての寿命を向上することも可能となる。
【0078】
なお、使用する材料が異なれば有機EL素子の発するR,G,Bの光の色度座標値が異なるため、R,G,Bの輝度比もそれに応じて変わり、また発光効率も異なるため、発光面積比はこれに応じて決まり、上述の数値のものに限られない。
【0079】
また、本発明ではR,G,Bの有機EL素子にそれぞれ同一電流を供給した場合に、常時白色100%が達成されるように素子の発光面積が設定されている構成に限るものではない。例えば、各表示画素を駆動する図示しないドライバ等を更に考慮した上で、装置全体としてホワイトバランスの制御が容易で、かつ発光効率の低い素子に選択的に負荷がかかることを防止できるように、R,G,Bの各有機EL素子の発光面積を設定しても良い

【0080】
更に上述の実施の形態においては、有機EL表示装置を例に挙げて説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、発光素子として有機EL素子に代えて、発光材料に向き発光材料が用いられた無機EL素子を用いた無機EL表示装置や、2つの電極の間に発光層として蛍光層を備える蛍光表示管(VFD:Vacuum Fluorescent Display)等においても有機EL表示装置と同様の効果が得られる。
【0081】
VFDは、図3で示したEL素子と同様に、絶縁性基板10上に形成したTFTを用いて駆動する。VFDは、図3において、陽極161の形成までの工程及び構造はEL素子と同じである。ただし、陽極161はAl等の金属から成っている。その上には蛍光物質を堆積し、その上方にはグリッド及び陰極(フィラメント)が配置されている。陽極及び陰極で囲まれる間隙は真空状態である。
【0082】
フィラメントから発せられた熱電子がグリッドで整流化されて、陽極上の蛍光物質に衝突して発光する。こうして自ら光を発する。所定の色を発する蛍光物質を選択することにより所定の色を発することができる。また、発光面積は、上述のEL素子の場合と同様に決めればよい。即ち、蛍光物質の発光効率に応じて発光面積を決定すれば良い。
【0083】
なお、本発明において、表示画素の発光面積とは、表示画素の発光素子が実際に発光する領域の面積である。
【0084】
即ち、図3(b)に示すように、陽極の厚みによる段差に起因して発光層が段切れを起こして陰極と短絡してしまうことを防止するために設けた平坦化絶縁膜が、陽極の周辺部を覆っている場合には、陽極と発光素子層とが直接接することにより実質的に発光する領域の面積をいう。
【0085】
更に言い換えると、有機EL素子の発光素子層が、陽極又は陰極の少なくとも一方の電極と直接接触する面積のうち、小さい方の面積をいう。
【0086】
また、本実施の形態においては、各表示画素の数を4行X7列の場合について示したが、本発明はそれに限定されるものではなく、VGA(640X480)、SVGA(800X600)、XGA(1024X768)、SXGA(1280X1024)など、任意の表示画素数に適用可能である。
【0087】
また、各陽極の形状は「L」字の場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、長方形でも、正方形でも良く、形状は発光層の発光に支障のない形状であれば制限はない。
【0088】
また、上述の実施の形態においては、各色の表示画素の配列がストライプ配列の場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、デルタ配列、ダイアゴナル配列でも同様の効果が得られる。
【0089】
更に、上述の実施の形態においては、ゲート電極が能動層の下層に配置されたいわゆるボトムゲート型TFTの場合を説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、ゲート電極が能動層の上層にあるいわゆるトップゲート型TFTであっても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のEL表示装置の各色の表示画素の発光領域を示す平面図である。
【図2】本発明のEL表示装置の表示画素付近を表す平面図である。
【図3】本発明のEL表示装置の断面図である。
【図4】本発明のEL表示装置の陽極を作製するためのマスクの平面図である。
【図5】本発明のEL表示装置の発光層を作製するためのマスクの平面図である。
【図6】白表示の場合のR,G,Bの発光輝度比の求め方の説明図である。
【図7】従来のEL表示装置の表示画素付近を表す平面図である。
【図8】従来のEL表示装置の断面図である。
【図9】従来のEL表示装置の各色の表示画素の発光領域を示す平面図である。
【符号の説明】
【0091】
1B 青色の表示画素の発光領域
1R 赤色の表示画素の発光領域
1G 緑色の表示画素の発光領域
30 第1のTFT
40 第2のTFT
51 ゲート信号線
52 ドレイン信号線
53 駆動電源線
54 保持容量電極線
100 EL表示装置
161 陽極
163 発光層
165 発光素子層
166 陰極
200A 陽極形成用マスク
200L 発光層形成用マスク
201R 陽極形成用マスクの開口部
201G 陽極形成用マスクの開口部
201B 陽極形成用マスクの開口部
202 発光層形成用マスクの開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各表示画素に、陽極と陰極との間に各色毎に異なる有機材料からなる発光層を有する有機EL素子を備え、前記陽極の端部を覆い前記陽極に対応して開口部を備えた平坦化絶縁膜を有するカラー有機EL表示装置において、
各色の表示画素のうちいずれかの色の表示画素の発光面積と他の色の表示画素の発光面積とは、前記平坦化絶縁膜の開口部の大小によって異なり、
前記発光層は、前記平坦化絶縁膜の開口部及び平坦部を覆い、各色毎に島状に同じ面積で形成されることを特徴とするカラー有機EL表示装置。
【請求項2】
前記陽極は、各色毎に島状に同じ面積で形成されることを特徴とする請求項1に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項3】
前記発光層の面積は、前記陽極の面積と異なることを特徴とする請求項2に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項4】
前記発光層は前記陽極を覆って形成され、前記発光層の面積は、前記陽極の面積よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項5】
前記発光面積は、前記有機EL素子の発光効率に応じて設定されていることを特徴とする請求項1に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項6】
発光効率が高い有機EL素子の発光面積を、該発光効率が高い有機EL素子よりも低い発光効率の有機EL素子の発光面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項7】
最も発光効率が高い有機EL素子の発光面積を、他の発光効率の有機EL素子の発光面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項8】
前記最も発光効率が高い有機EL素子は緑色を発光する有機EL素子であることを特徴とする請求項7に記載のカラー有機EL表示装置。
【請求項9】
発光効率が低くなるにつれて発光面積を順に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のカラー有機EL表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−300367(P2008−300367A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223922(P2008−223922)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【分割の表示】特願2005−70782(P2005−70782)の分割
【原出願日】平成12年2月24日(2000.2.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】