説明

カルコン類化合物含有組成物

【課題】水溶性でえぐ味や青臭さが低減されたアシタバのカルコン類化合物を含有する組成物やその製造方法を提供すること。
【解決手段】アシタバ由来の処理物および乳化剤を含有することを特徴とするカルコン類化合物含有組成物、当該組成物を含有する食品、特定の工程を経て得られるアシタバ由来のカルコン類化合物含有組成物の製造方法、特定の工程を経て得られるアシタバの含水アルコール抽出物の製造方法を提供する。これらの組成物および抽出物はアシタバ特有のえぐ味や青臭さが低減されており、水に可溶で、特に高濃度でカルコン類化合物を含有する飲料の素材として使用するのに極めて適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアシタバ由来のカルコン類化合物を含有する食品素材として適した組成物、当該組成物の製造方法、アシタバ由来の含水アルコール抽出物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アシタバ(Angelica keiskei Koidz.)はセリ科の大型多年性草本であり、さまざまな健康促進効果が知られている。例えば、アシタバの有する生理活性としては、抗菌作用、抗腫瘍作用、胃酸分泌抑制作用、抗癌効果、神経成長因子(NGF)産生増強作用、肝細胞増殖因子産生増強作用が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、アシタバはそのインスリン様作用により、抗糖尿病作用があることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
アシタバに含まれる特徴的な成分として、キサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンを主とするカルコン類化合物が知られている。カルコン類化合物とは特定の化学構造を有するポリフェノールの一種である。近年、カルコン類化合物は多様な生理機能を有することが報告されており、例えば、抗がん活性、抗菌作用、抗ウィルス作用、セルライト解消作用、NGF産生増強作用、抗糖尿病作用等が知られている(例えば特許文献3、4および非特許文献1参照)。
【0004】
特にアシタバに含まれる主要なカルコン類化合物であるキサントアンゲロールや4−ハイドロキシデリシンはいずれもインスリン様作用が確認されている。これらの化合物はインスリンと同様の生理機能、すなわち前駆脂肪細胞を脂肪細胞に分化させる作用と、分化された脂肪細胞へのグルコースの取り込みを促進させる作用の両方を併せ持ち、さらには動物実験においても糖尿病改善効果、糖尿病の発症予防効果が認められており、医薬や健康食品素材としての効果が期待されている化合物である。
【0005】
アシタバを含有する加工食品はこれまでにも種々検討されているが、アシタバは独特のえぐ味や青臭さを有することから、この味を好む者もいれば、敬遠する者もいるため、えぐ味や青臭さを低減させることが課題であった。例えば特許文献5では、アシタバ茶の製造方法として、蒸熱・冷却工程、粗揉工程、仕上捻工程を経て煎茶を得、当該煎茶を加熱乾燥した後に胴あぶり乾燥機によって焙煎することで、青臭さの低減されたアシタバ茶を製造している。なお、当該文献の方法により得られたアシタバの茶葉を用いてお茶を煎じても、上述のカルコン類化合物は熱水に不溶であるため、カルコン類化合物を摂取することはできない。
【0006】
また、本発明者らは食用に適したカルコン類化合物を含有するアシタバの抽出物として、アシタバの含水アルコール抽出物の製造方法について開示している(例えば、特許文献6)。しかしながら、当該方法により得られた抽出物は水にほとんど不溶であり、さらに味についてもアシタバ由来のえぐ味や青臭さが残っており、飲料素材として使用するには必ずしも適していないものであった。また、当該抽出物は水に不溶であるため、飲料素材として使用するのに適しておらず、またカルコン類化合物の体内への吸収率も低いため、カルコン類化合物の生理活性の発現という観点からは決して満足できるものではなく、カルコン類化合物による生理活性の発現を期待する健康食品素材としてはさらに鋭意検討が必要であった。
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/76614号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/014407号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/54682号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/096198号パンフレット
【特許文献5】特開平1−262781号公報
【特許文献6】国際公開第2004/112817号パンフレット
【非特許文献1】J.R.Dimmock 他3名,Current Medicinal Chemistry,1999年,Vol.6,P1125−1149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水溶性でえぐ味や青臭さが低減された、アシタバのカルコン類化合物を含有する組成物、当該組成物を含有する食品、当該組成物の製造方法、アシタバの抽出物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、アシタバ由来の処理物および乳化剤を含有することを特徴とするカルコン類化合物含有組成物に関するものである。本発明の第1の発明において、乳化剤の含有量としてはキサントアンゲロール及び4−ハイドロキシデリシンの総含有量1gに対して0.1〜10000g、特に好適には10〜1000gが例示される。さらに乳化剤のHLBは10〜20の範囲が例示され、好適な乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルが例示される。また、アシタバ由来の処理物としては、アシタバの含水アルコール抽出物が例示され、さらに含水アルコールとしては、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液が例示される。また、アシタバの含水アルコール抽出物としては、好適には下記工程により得られたものが例示される。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)で得られた抽出液をろ過する工程
【0010】
本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明のカルコン類化合物含有組成物を含有する食品に関する。本発明の第2の発明において、食品としては、例えば容器詰飲料が例示される。
【0011】
本発明の第3の発明は、下記工程(a)〜(c)を包含するアシタバの含水アルコール抽出物の製造方法に関する。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)で得られた抽出液をろ過する工程
本発明の第3の発明において、含水アルコールとしては、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液が例示される。
【0012】
本発明の第4の発明は、下記工程(a)〜(d)を包含するカルコン類化合物含有組成物の製造方法に関する。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)工程で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)工程で得られた抽出液をろ過する工程
(d)(c)工程で得られたろ液に乳化剤を添加し混合する工程
本発明の第4の発明において、含水アルコールとしては、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液が例示される。また、乳化剤としては、HLBが10〜20の乳化剤が例示され、さらに好適な乳化剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステルが例示される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、アシタバ由来の処理物および乳化剤を含有することを特徴とするカルコン類化合物含有組成物、当該組成物を含有する食品、特定の工程を経て得られるアシタバ由来のカルコン類化合物含有組成物の製造方法、特定の工程を経て得られるアシタバの含水アルコール抽出物の製造方法を提供する。これらの組成物および抽出物はアシタバ特有のえぐ味や青臭さが低減されており、水に可溶で、特に高濃度でカルコン類化合物を含有する飲料の素材として使用するのに極めて適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明に使用されるアシタバは、特に限定はないが、果実、種子、種皮、花、葉、茎、根、根茎及び/又は植物全体そのままを使用することができ、好適には茎、葉、もしくはこれらの混合物を使用することができる。また、タンク培養等により工業的に培養されたアシタバの組織や細胞培養物を使用することもできる。
【0015】
本発明においてアシタバ由来の処理物としては原料のアシタバに何らかの加工を施したものであってカルコン類化合物が含有されていれば特に限定はないが、例えば抽出物、粉砕物、搾汁液、破砕物、化学処理物、酵素処理物、アシタバの茎を切断しその切断面から得られる汁液をいい、好適には得られる処理物のカルコン類化合物含量の観点から、抽出物、アシタバの茎を切断しその切断面から得られる汁液が例示され、さらに好適には得られる組成物の風味の観点から、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物が例示される。
【0016】
アシタバの茎を切断しその切断面から得られる汁液としては、例えば生のアシタバの茎部分を切断し、その切断面より得られる黄色の汁液が例示され、また当該汁液にデキストリンやサイクロデキストリン等の賦形剤を添加し乾燥させたそれらの乾燥物であっても良い。
【0017】
粉砕物の製造方法としては、例えば植物を乾燥させ、粉砕機を使用して粉砕することで粉状のアシタバ由来の粉砕物を得る方法が挙げられる。また、凍結粉砕により粉砕物を得てもよい。破砕物とは、原料植物を砕き壊したものであり、一般には粉砕物よりも組織片が大きく、例えば、破砕機を使用することにより製造することができる。また、化学処理物とは、特に限定はないが、原料植物を酸処理、アルカリ処理、酸化処理、還元処理等に供して得られた物をいい、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸等の無機酸や有機酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基や有機塩基を含む水溶液に原料のアシタバを浸漬することにより製造することができる。化学処理物には、前記のような化学処理を受けた植物体に由来するすべてのものを含む。酵素処理物とは、例えば、ペクチナーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、マンナナーゼ、グルコシダーゼ等による酵素処理物、微生物による酵素反応物(例えば、発酵物)をいい、例えば、原料植物に対して上記酵素を適当な緩衝液中で作用させることにより製造することができる。酵素処理物には、前記のような酵素処理を受けた植物体に由来するすべてのものを含む。
【0018】
以下、本発明の好適な態様として使用されるアシタバ由来の抽出物について説明する。
【0019】
使用されるアシタバは生のまま、粉砕物、細断物、搾汁液もしくはこれらの乾燥物を使用してもよい。工業的には1ミクロン〜100mm、好適には10ミクロン〜10mm、より好適には100ミクロンから2mm程度の粒度に粉砕した乾燥アシタバを使用するのが抽出効率や操作上の観点から好適である。
【0020】
本発明により得られるカルコン類化合物含有組成物の風味向上の観点からは、好適には熱水で処理し、圧搾して得られる残渣を原料のアシタバとして使用することができる。ここで熱水の温度としては、特に限定はないが、例えば45〜120℃、好適には60〜110℃、さらに好適には70〜100℃が例示されるが、各種塩を添加し100℃以上の処理を施してもよい。熱水処理時の圧力については、適宜設定すれば良く特に限定はないが、常圧、加圧条件下で行なうことができ、例えば100〜250kPaの範囲で行なうことができる。処理時間としては、特に限定はないが、3分〜24時間の範囲で行なうことができる。使用する水の量としては、特に限定はないが、アシタバ100gに対し、例えば0.01〜100リットル、好適には0.5〜50リットル、特に好適には0.1〜10リットルの熱水を使用することができる。熱水のpHについても特に限定はないが、pH3〜10の範囲で行なうことができる。また、熱水処理としては、熱水蒸気処理も包含される。熱水処理後は複数回、例えば2〜8回繰り返して行なうことができ、例えば、熱水処理後、熱水と残渣を分離して熱水を除き、さらに残渣に熱水を加えて熱水処理を実施するという工程を複数回繰り返して行なうことができる。また、熱水処理後は、必要に応じて水などにより洗浄してから、後述の抽出に使用することができる。
【0021】
抽出に使用される抽出溶媒としては、カルコン類化合物が抽出されるものであれば特に限定はないが、例えば、水、クロロホルム、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等の親水性もしくは親油性の溶媒を挙げることができ、所望により単独で、もしくは適宜混合液として用いることができる。特に好適には食品素材としての適用やカルコン類化合物の抽出効率の観点から、アルコール、特に含水アルコールが好適に使用され、特に限定はないが、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等のアルコール類と水との混合物(アルコール水溶液)、特に好適には含水エタノールが例示される。アルコール濃度については、特に限定はないが、例えばカルコン類化合物の収率向上と不純物の混入防止の観点から、例えば40〜95%、好適には45〜90%、特に好適には50〜85%の含水アルコールを使用することができる。
【0022】
本発明において、抽出物とは抽出溶媒を用いて抽出操作を行う工程を経て得られる物質のことをいう。抽出は、公知の抽出方法により以下のようにして行うことができる。例えば、原料であるアシタバもしくは前述の熱水処理を施したアシタバに前述の溶媒を用いてバッチ式もしくは連続式で行うことができる。抽出溶媒の量は適宜決定すればよいが、通常、原料に対し、使用時の原料植物の形態そのまま(例えば、原料が生の植物であれば生の植物)の重量の、好ましくは0.1〜100倍量の溶媒を使用すれば良い。抽出温度も適宜、目的に応じて決定すれば良いが、好適には0〜80℃、より好適には0〜60℃、さらに好適には0〜50℃、特に好適には0〜40℃の範囲である。抽出時間も、抽出効率や原料の量、抽出温度を考慮し決定すればよいが、通常、好ましくは数秒〜数日間、より好ましくは5分〜5日間とすればよい。抽出操作は、たとえば、攪拌しながら又は静置して行えばよく、また、必要に応じて数回繰り返してもよい。抽出操作後は、必要に応じて圧搾、遠心分離等の処理を施し、不溶物を除去することが好ましい。
【0023】
このようにして得られた抽出物からさらに不溶物を除去するため、ろ過を行なうことができる。ここでろ過に使用されるろ材としては、特に限定はないが、ろ紙、ろ布、金属ストレナー等が使用でき、好適にはろ過助材がプリコートされたものが使用できる。プリコート材としては、ケイソウ土、パーライト、セルロース質のろ過助材がプリコートされたものが使用でき、好適には粒径1〜20μmのケイソウ土がプリコートされたろ材が使用できる。ろ過方式としては、特に限定はないが、自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過のいずれの方式を採用することもできる。
【0024】
このようにして得られたアシタバの抽出物は、後の操作の効率性の観点から必要に応じて濃縮処理を施すことができる。濃縮は、ロータリーエバポレーター、減圧濃縮缶等により濃縮することができる。濃縮時の温度は濃縮方法に応じて適宜設定すればよく、例えば20〜90℃、好適には25〜85℃、特に好適には30〜80℃の範囲に設定することができる。また、濃縮時間についても上記の条件や、得られる濃縮物の性状に合わせて適宜設定すればよいが、好適には1時間〜3日間に設定することができる。
【0025】
上記のように濃縮処理を施した場合、当該抽出物は粘度の高い飴状の物質となることがあるため、操作上の観点から、好ましくは当該抽出物を含水アルコールで溶解して後の工程に供すことができる。ここで使用する含水アルコールとしては、当該抽出物の濃縮物が溶解するものであれば特に限定はないが、例えば60〜100%のエタノール水溶液を使用することができる。
【0026】
また、このようにして得られたアシタバの抽出物から、さらに不溶物を除去したい場合は、さらにろ過を行なうことで不溶物を除去することができる。また、上記の抽出工程を経て得られた抽出物もしくはその濃縮物を合成吸着材やODS系樹脂、シリカゲルなどにカルコン類化合物を吸着後、アルコールや酢酸エチル等で溶出することでカルコン類化合物の純度を高めたものを使用しても良い。また、フィルターろ過等で除菌、滅菌処理を施しても良い。
【0027】
なお、前述の熱水処理、含水アルコール抽出、およびろ過処理を施して得られるアシタバの含水アルコール抽出物は、アシタバ特有のえぐ味や青臭さが特に低減され、水溶性も向上した抽出物となり、食品素材として使用するのに非常に適している。なお、本発明においては、当該含水アルコール抽出物を後述のカルコン類化合物含有組成物と同様に使用することで、当該含水アルコール抽出物を含有する食品、医薬、飼料、化粧料も提供される。
【0028】
アシタバ由来の処理物に、さらに乳化剤を添加し、混合、攪拌することにより、水溶性やカルコン類化合物の生体への吸収性がさらに向上したカルコン類化合物含有組成物(以下、本発明の組成物と称することがある)が得られる。本発明に使用される乳化剤としては、特に限定はないが、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノ脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、大豆レシチン、卵黄レシチン等が使用できる。得られるカルコン類化合物含有組成物の透過性の観点からは、特に好適にはポリグリセリン脂肪酸エステルが使用される。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成するグリセリンの重合度、脂肪酸種は特に限定はなく、例えばデカグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンミリスチン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル等が使用される。ここで乳化剤としては、単独もしくは複数種の混合物であってもよい。本発明に使用される乳化剤のHLBとしては、特に限定はないが、本発明の組成物の溶解性や透明度の観点から、10〜20が好適である。ただし、前述の熱水処理を施したアシタバの含水アルコール抽出物を使用する場合は、HLBが10以下の乳化剤であっても使用することができる。また、複数種の乳化剤を使用する場合は、これらの混合比率や使用する各乳化剤のHLBを考慮して調製することが好ましい。乳化剤の添加量としては、特に限定はないが、本発明の組成物の風味や、水への溶解性を適切に実現させる観点から、アシタバ由来の処理物、例えばアシタバの含水アルコール抽出物中のキサントアンゲロール、4−ハイドロキシデリシンの総含有量をカルコン類化合物の含有量として、カルコン類化合物含有量1gに対して、例えば0.1〜10000g、好適には1〜1000g、より好適には10〜1000g、特に好適には10〜100gが例示される。
【0029】
さらに乳化剤を添加する際に、溶解助剤として、レシチン、サポニン(キラヤ、大豆、甘草由来のもの)等を添加することもできる。
【0030】
乳化剤の添加、混合時の温度条件としては特に限定はないが、例えば室温〜80℃が好ましい。また、撹拌方法としては、ホモジナイザー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ミル、パドル撹拌機、超音波乳化機等により撹拌することができる。また、高濃度のカルコン類化合物含有組成物を得る場合は、乳化剤を添加後、必要に応じてロータリーエバポレーター等により濃縮処理を施すこともできる。
【0031】
本発明により得られるカルコン類化合物含有組成物中に含まれるカルコン類化合物の含有量としては、特に限定はないが、例えば0.001〜50%(w/w)、好適には0.01〜25%(w/w)、特に好適には0.05〜10%(w/w)が例示される。
【0032】
また、本発明により得られるカルコン類化合物含有組成物に含まれるカルコン類化合物の含量の測定方法としては、特に限定はないが、たとえばキサントアンゲロールおよび4−ハイドロキシデリシンの総含有量として、ODSカラムを用いたHPLCにより標準品とのUV吸収面積比によって測定することができる。なお、アシタバ中のカルコン類化合物はキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンがその大部分を占めるため、本願においては、キサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの総含有量を特定することでカルコン類化合物の含有量の指標とする。
【0033】
また、本発明により得られるカルコン類化合物含有組成物に含有されているポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の測定方法としては、特に限定はないが、トリメチルシリル誘導体化した後、ガスクロマトグラフィー分析する方法や、ゲルろ過カラムを用いたHPLCにて分離し、UV検出器や示差屈折計を用いて検出する方法などが挙げられる。また、乳化剤を適宜分離後、けん化分離し、ポリグリセリド、脂肪酸をそれぞれガスクロマトグラフィーで定量することもできる。
【0034】
また、本発明により得られる組成物は、その操作上の観点から、必要に応じてグリセロールや各種含水アルコール、クエン酸やリン酸緩衝液等を添加することで、流動性の高められた本発明の組成物とすることもできる。さらに、アルギン酸塩、ペクチン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グリセロール、トラガントガム、グアーガム、カラギーナン、タマリンドガム、プルラン等の安定剤や、砂糖、スクラロース、エリスリトール、キシリトール、パラチノース、ステビア、アスパルテーム、果糖、グルコース、マルトース等の各種甘味料、グルコン酸塩、ソーマチン、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、マルミノースなどのオリゴ糖、スクラロース、サイクロデキストリン(α、β、γ、分岐等)、リンゴ酸塩、分岐環状デキストリン、酵素分解レシチンや各種香料等を添加し、風味を改善しても良い。
【0035】
このようにして得られたカルコン類化合物含有組成物は、カルコン類化合物である4−ハイドロキシデリシンやキサントアンゲロールを高濃度に含有し、かつえぐ味や青臭さの低減された可溶性の組成物となり、特にアシタバ由来の処理物としてアシタバの含水エタノール抽出物を使用した場合や、熱水処理を施されたアシタバを用いた含水アルコール抽出物を使用した場合には、特にえぐ味や青臭さが低減されており、カルコン類化合物を含有する健康食品素材として使用するのに極めて適している。なお、後述の実施例2〜6に示すように、乳化剤を含有しないアシタバの含水エタノール抽出物やアシタバの汁液で本発明の組成物と同量のカルコン類化合物の含有量とした場合、水に不溶で沈殿物が析出し、食用、特に飲用とするには適さないものとなる。
【0036】
また、本発明により得られる組成物は、実施例7および8に記載のとおり、カルコン類化合物の体内への吸収率が高いことも特徴であり、このことから本発明の組成物はカルコン類化合物の生理活性を期待する健康食品素材として極めて適しており、従来のアシタバ加工食品になかった新規な健康食品素材である。特に、実施例9では本発明のカルコン類化合物含有組成物を糖尿病モデルのラットに投与することにより血糖値の低下が認められていることから、血糖値の低下を訴求した健康食品の素材として極めて適している。
【0037】
本発明において、本発明により得られるカルコン類化合物含有組成物の形状は、特に限定はないが、液状、粉状、固形状のいずれの形状であってもよく、使用用途によっていずれの形状とすることもできるが、例えば飲料素材として使用する場合は好適には液状とすることができる。
【0038】
また、本発明は、本発明の組成物を含有する食品(以下、本発明の食品と称することがある)を提供する。なお、本発明の食品において「含有」とは、含有、添加及び/又は希釈を意味する。ここで、「含有」とは食品中に本発明の組成物が含まれるという態様を、「添加」とは食品の原料に、本発明の組成物を添加するという態様を、「希釈」とは本発明の組成物に、食品の原料を添加するという態様をいうものである。本発明の食品はアシタバ独特のえぐ味や青臭さが低減されており、食品原料として優れている。すなわち、本発明の食品は、健康面のみではなく嗜好的にも優れた食品である。
【0039】
本発明の食品としては特に限定はないが、たとえば、本発明の組成物が含有されてなる、嗜好飲料(青汁、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲料など)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュールなど)、穀物加工品(小麦粉加工品、デンプン類加工品、プレミックス加工品、麺類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさめ、包装餅など)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ドレッシングなど)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆など)、食肉加工品(ハム、ベーコン、プレスハム、ソーセージなど)、水産製品(冷凍すりみ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、魚卵加工品、水産缶詰、つくだ煮など)、乳製品(原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、アイスクリームなど)、野菜・果実加工品(ペースト類、ジャム類、漬け物類、果実飲料、野菜飲料、ミックス飲料など)、菓子類(チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類など)、調味料(しょうゆ、ソース、酢、みりんなど)、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品(牛飯、釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥または濃縮食品(レバーペースト、その他のスプレッド、そば・うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席麺類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープなど)、冷凍食品(すき焼き、茶碗蒸し、うなぎかば焼き、ハンバーグステーキ、シュウマイ、餃子、各種スティック、フルーツカクテルなど)、固形食品、液体食品(スープなど)、香辛料類などの農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品などが挙げられる。
【0040】
本発明の食品は、本発明の組成物が単独もしくは複数含有、添加および/または希釈されており、特にその形状に限定はなく、タブレット状、粉末状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取可能な形状物も包含する。
【0041】
タブレット状食品の製造方法としては、公知の方法により製造することができ、特に限定はないが、例えば本発明の組成物に、賦形剤、例えば、デキストリン、難消化性デキストリン、コーンスターチ、タピオカデンプン、サイクロデキストリン等を添加して凍結乾燥、粉砕することにより、乾燥粉末を得た後、さらに乳糖、結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、還元麦芽糖、リン酸カルシウム、卵殻カルシウム、微粒二酸化ケイ素、CMC−Ca、トレハロース、ビタミンC等の各種ビタミン類、クエン酸、ブドウ糖、砂糖、糖アルコール、ステビア等の甘味料、香料、粉末果汁、海藻由来粉末(例えば、フコイダン含有粉末、アガロオリゴ糖粉末等)、きのこ粉末、乾燥野菜粉末(例えばアシタバ等のセリ科植物粉末)等を適宜混合し、必要に応じて造粒工程を施し、ロータリー式打錠機により打錠して製造することができる。
【0042】
また、顆粒状食品の製造方法としては、公知の方法により製造することができ、特に限定はないが、例えば上記のタブレット状食品の製造工程においてロータリー式打錠機に施す前に得られる各種混合した粉末に、エタノールを添加して練合し、押出し造粒機により造粒し、これを乾燥させて振動篩で整粒して顆粒状食品を製造することができる。
【0043】
また、カプセル状食品の製造方法としては、公知の方法により製造することができ、特に限定はないが、例えば上記のタブレット状食品の製造工程においてロータリー式打錠機に施す前に得られる各種混合した粉末、もしくは本発明の組成物そのままを、1号カプセルに充填して製造することができる。また、充填前の粉末にグリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ等を添加して乳化させ、ゼラチンとグリセリンを被包材としてソフトカプセルを製造することもできる。
【0044】
また、本発明の食品としては、特に好適には本発明の組成物を含有する飲料(以下、本発明の飲料と称することがある)が例示される。
【0045】
本発明の飲料としては、公知の方法により製造することができ、特に限定はないが、例えば本発明の組成物に、適宜香料、甘味料(砂糖、スクラロース、エリスリトール、キシリトール、羅漢果エキス等)、安定剤(ペクチン、カラギーナン、大豆多糖類等)、果汁、粉末果汁、野菜エキス、野菜ペースト、海藻由来成分や海藻抽出物(例えば、フコイダン含有物、アガロオリゴ糖含有物等)、きのこ粉末、アシタバ等の植物の乾燥粉末、焙煎物又は発酵エキス、また健康食品素材として知られている成分(バナバエキス、アマチャヅルエキス、クコ葉エキス、桑の葉エキス、難消化性デキストリン、各種ビタミン類等)等とともに、水やアルコール、各種お茶飲料等に溶解することにより本発明の飲料を製造することができる。また、本発明の飲料は、熱に対しても安定であり、本発明の組成物を高濃度に含有させてもにごりや沈殿物の析出も少ないことから、缶、ビン、ペットボトル等の容器詰飲料とするのに適している。また、本発明の組成物を公知の青汁、清涼飲料やお茶飲料に添加して本発明の飲料を製造することもできる。特にアシタバの青汁に本発明の組成物を添加することにより、カルコン類化合物の含量を向上させた青汁とすることができる。また、本発明の組成物を高濃度に含む飲料を製造する場合は、さらに分散剤を添加することにより、飲料中の本発明の組成物の均一化をはかることができる。
【0046】
本発明の食品中の本発明の組成物の含有量は特に限定されず、その官能とカルコン類化合物含量の観点から適宜選択できるが、例えば、食品中のキサントアンゲロールおよび4−ハイドロキシデリシンの総含有量として、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05〜20重量%、更に好適には0.1〜15重量%である。
【0047】
また、本発明の組成物は、高濃度のカルコン類化合物が含有されており、さらに体内への吸収率も向上した組成物であることから、本発明の食品は特定保健用食品等の機能性食品素材として特に適している。当該食品としては、そのカルコン類化合物の生理機能によって、血糖値が気になる方や体脂肪が気になる方、セルライトを解消したい方に対して有用であり、例えば血糖値の低下や上昇抑制、セルライトの解消等の表示を付した食品として極めて有用である。
【0048】
また、本発明の組成物は、カルコン類化合物を多く含有することから、医薬品、飼料、もしくは化粧料の原料として使用することもできる。これらの調製や製造については公知の方法に従えばよい。
【0049】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、実施例における%は特に記載がない限りは(w/v)%を意味する。
【実施例】
【0050】
実施例1
(1)アシタバ含水アルコール抽出物−1の調製
アシタバの葉茎部乾燥物を破砕しチップ状にしたもの1000gに6Lの60%(v/v)エタノールで1時間、攪拌しながら抽出した後、ろ紙にて抽出物と残渣とをろ過分離した。残渣に対して同様の抽出、ろ過を行った。抽出液を合わせロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、濃縮物を70%(v/v)エタノールに溶解し400mLのアシタバ含水アルコール抽出物−1を調製した。調製した抽出液の固形成分濃度は520mg/mLであり、HPLC法で定量したカルコン類濃度はキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの合計として4.2mg/mLであった。
【0051】
(2)アシタバ含水アルコール抽出物−2の調製
30Lの90℃脱イオン水中に、アシタバ葉茎部乾燥物を破砕しチップ状にしたもの1kgを加え10分間加熱を行った。室温に戻した後、茹でたアシタバを30Lの脱イオン水で水洗いし、ろ過により水気をきった後、搾汁機にかけることによりさらに水分を除いた。この圧搾残渣の水分含量を測定し、最終的に60%(v/v)エタノール、20Lが含まれるように含水エタノールを圧搾残渣に加え、時々攪拌しながら室温で一晩抽出を行った。次に、ろ過により抽出液を抽出残渣と分離後、抽出残渣を搾汁機にかけることによりさらに抽出液を回収した。これら抽出液を合わせ、セライト500(ナカライテスク社製)でろ過することにより不溶性成分を除去した。セライトろ液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、濃縮物を80%(v/v)エタノールに溶解し66mLのアシタバ含水アルコール抽出物−2を調製した。抽出物の固形成分濃度は428mg/mLであり、カルコン類濃度はキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの合計として20.5mg/mLであった。
【0052】
すなわち、アシタバ含水アルコール抽出物−2は前述の実施例1−(1)で調製したアシタバ含水アルコール抽出物−1と比較して、固形成分濃度中のカルコン類含量が高く、カルコン類を高濃度、高純度で含有する抽出物であった。
【0053】
実施例2
(1)カルコン類含有組成物1〜7の調製
実施例1−(1)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−1の2.4mL分から減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示す各種ポリグリセリン脂肪酸エステル(A〜F)200mgを添加し脱イオン水で10mLとし60℃で混合した。その後、ホモミキサー(AM−5、日本精機製作所社製)を用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物1〜6を得た。また対照として、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物7を調製した。
【0054】
なお、以下の実施例で使用した乳化剤の一覧を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
(2)透過率、官能評価試験
実施例2−(1)で調製したカルコン類含有組成物1〜7を脱イオン水に5%となるようにそれぞれ添加後混合し、100mL中に5mgのカルコン類を含む水溶液を調製した。これら水溶液でのカルコン類含有組成物の溶解状態を評価するために、目視ならびに分光光度計(島津製作所社製)を用いた660nmの透過率の測定を行った。その結果、表2に示すように、カルコン類含有組成物1〜6のいずれの溶液でも沈殿物を目視で認めることはなかった。さらにポリグリセリン脂肪酸エステルA〜Dを使用した場合に透明感の高い溶液が得られ、特にポリグリセリン脂肪酸エステルAを使用した場合に最も透明な溶液が得られた。これに対して、乳化処理を行っていないカルコン類含有組成物7は透過率を測定するまでもなく一見して不溶物が析出し、固体と液体が分離した状態が認められ、溶解状態が著しく悪いと判定された。
また、これらの風味を評価したところ、カルコン類含有組成物7に対してカルコン類含有組成物1〜6の方が、アシタバ特有のえぐ味や青臭さが若干低減されていた。
【0057】
【表2】

【0058】
すなわち、実施例1−(1)のアシタバ含水アルコール抽出物−1に乳化処理をしたカルコン類含有組成物を用いてカルコン濃度5mg/100mLの当該溶液を調製した場合、特に透過性において良好であることが明らかになった。
【0059】
実施例3
(1)カルコン類含有組成物8〜18の調製
実施例1−(2)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−2の0.05mL分から減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示す各種ポリグリセリン脂肪酸エステル(A、B、C、E、G、H、I)もしくはショ糖脂肪酸エステル(J、K)100mgを添加し脱イオン水で10mLとし60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物8〜16を得た。また同じ抽出物を使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物17を調製した。対照として、実施例1−(1)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−1を0.24mL使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物18を調製した。
【0060】
(2)透過率、官能評価試験
実施例3−(1)で調製したカルコン類含有組成物8〜17ならびに対照として調製したカルコン類含有組成物18を脱イオン水に10%添加後混合し、100mL中に1mgのカルコン類を含む水溶液を調製した。次に、これら水溶液でのカルコン類含有組成物の溶解状態を評価するために、目視ならびに660nmの透過率の測定を行った。その結果、表3に示すようにカルコン類含有組成物8〜16の溶液では極めて透明感の高い溶液が得られた。カルコン類含有組成物17の溶液はカルコン類含有組成物8〜16の溶液に比べ透過率は劣るものの不溶物析出、固液分離は起こらなかった。一方、対照のカルコン類含有組成物18の溶液は不溶物が析出し、固体と液体が分離した状態が認められ、溶解状態が著しく悪いと判定された。
また、これらの風味を評価したところ、対照のカルコン類含有組成物18と比較して、カルコン類含有組成物8〜17はいずれもアシタバ特有のえぐ味や青臭さが明らかに低減されていた。
【0061】
【表3】

【0062】
すなわち、実施例1−(2)のアシタバ含水アルコール抽出物−2を用いて得られたカルコン類含有組成物を使用したカルコン類濃度1mg/100mLの当該溶液は、当該組成物の乳化処理の有無にかかわらず、透過性、風味の面において良好であり、さらに乳化処理を行なった当該組成物を用いた場合には透過性においてさらに良好であることが明らかになった。
【0063】
実施例4
(1)カルコン類含有組成物19〜21の調製
実施例1−(2)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−2の0.15mL分から減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC100mgを添加し脱イオン水で10mLとし60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物19を得た。また同じ抽出物を使用し乳化処理を行わないカルコン類含有組成物20を調製した。対照として、実施例1−(1)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−1を0.72mL使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物21を調製した。
【0064】
(2)透過率、官能評価試験
実施例4−(1)で調製したカルコン類含有組成物19、20ならびに対照として調製したカルコン類含有組成物21を脱イオン水に10%添加後混合し、100mL中に3mgのカルコン類を含む水溶液を調製した。次に、これら水溶液でのカルコン類含有組成物の溶解状態を評価するために、目視ならびに660nmの透過率の測定を行った。その結果、表4に示すようにカルコン類含有組成物19の溶液では透明感の高い溶液が得られた。カルコン類含有組成物20の溶液は濁りが発生するが不溶物析出、固液分離は起こらず均一な分散状態であった。一方、対照のカルコン類含有組成物21の溶液は不溶物が析出し、固体と液体が分離した状態が認められ、溶解状態が著しく悪いと判定された。
また、これらの風味を評価したところ、対照のカルコン類含有組成物21と比較して、カルコン類含有組成物19、20はどちらもアシタバ特有のえぐ味や青臭さが明らかに低減されていた。
【0065】
【表4】

【0066】
すなわち、実施例1−(2)のアシタバ含水アルコール抽出物−2を用いて得られたカルコン類含有組成物を使用したカルコン類濃度3mg/100mLの当該溶液は、当該組成物の乳化処理の有無にかかわらず、透過性、風味の面において良好であり、さらに乳化処理を行なった当該組成物を用いた場合には透過性においてさらに良好であることが明らかになった。
【0067】
実施例5
(1)カルコン類化合物22、23の調製
実施例1−(2)で得られたアシタバ含水アルコール抽出物−2の0.15mL分から減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルCを300mg添加したものと、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC、G各100mgとポリグリセリン脂肪酸エステルL50mgを添加したものをそれぞれ、脱イオン水で10mLとし60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて65℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、それぞれカルコン類含有組成物22、23を得た。
【0068】
(2)溶解状態、官能評価試験
実施例5−(1)で調製したカルコン類含有組成物22、23ならびに実施例4−(1)で調製したカルコン類含有組成物20、カルコン類含有組成物21(対照)を0.01%クエン酸ナトリウム含有脱イオン水(pH3.5)に10%添加後混合し、100mL中に3mgのカルコン類を含む酸性水溶液を調製した。これら酸性水溶液でのカルコン類含有組成物の溶解状態を評価した。その結果、表5に示すとおりカルコン類含有組成物22はほぼ透明であり、カルコン類含有組成物23、20はいずれも不溶物析出、固液分離は起こらず均一な分散状態であり、カルコン類含有組成物23はカルコン類含有組成物20よりもさらに良好な分散状態であった。一方、対照のカルコン類含有組成物21の溶液は不溶物が析出し、固体と液体が分離した状態が認められ、溶解状態が著しく悪いと判定された。
また、これらの風味も評価したところ、カルコン類含有組成物21の溶液と比較して、カルコン類含有組成物20、22、23はいずれもアシタバ特有のえぐ味や青臭さが明らかに低減されていた。
【0069】
【表5】

【0070】
すなわち、実施例1−(2)のアシタバ含水アルコール抽出物−2を用いて得られたカルコン類含有組成物を使用したカルコン類濃度3mg/100mLの酸性溶液は、当該組成物の乳化処理の有無にかかわらず、透過性、風味の面において良好であり、さらに乳化処理を行なった当該組成物を用いた場合には透過性においてさらに良好であることが明らかになった。
【0071】
実施例6
(1)アシタバ汁液溶液、汁液由来乾燥粉末の調製
新鮮な生のアシタバの茎を切断し、切断面から黄色の汁液を採取し、エタノールに溶解しアシタバ汁液溶液を調製した。また、汁液にデキストリンを混合し乾燥させアシタバ汁液由来乾燥粉末を調製した。調製したアシタバ汁液溶液のカルコン類濃度はキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの合計として10mg/mLであり、アシタバ汁液由来乾燥粉末中のカルコン類含量は50mg/gであった。
【0072】
(2)カルコン類含有組成物24〜27の調製
実施例6−(1)で調製したアシタバ汁液溶液20mL分を減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC20gを添加し脱イオン水で200mLとした。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物24を調製した。また、同じ原料を使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物25(対照)を調製した。つぎに、実施例6−(1)で調製したアシタバ汁液由来乾燥粉末4gに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC20gを添加し脱イオン水で200mLとした。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物26を調製した。また、同じ原料を使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物27(対照)を調製した。
【0073】
(3)カルコン類含有組成物28〜31の調製
実施例1−(2)で調製したアシタバ含水エタノール抽出物−2の10.0mL分を減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC20gを添加し脱イオン水で200mLとした。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、カルコン類含有組成物28を得た。また、同じ抽出物を使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物29を調製した。次に、実施例1−(1)で調製したアシタバ含水エタノール抽出物−1の48mL分を減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、同様の乳化操作を行いカルコン類含有組成物30を得た。また、同じ抽出物を使用し、乳化処理を行わないカルコン類含有組成物31(対照)を調製した。
【0074】
(4)溶解状態、官能評価試験
実施例6−(2)で調製したカルコン類含有組成物24〜27ならびに実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31を脱イオン水に3%添加後混合し、100mLに3mgのカルコン類を含む水溶液を調製した。これら水溶液でのカルコン類含有組成物の溶解状態を評価した。その結果、表6に示すとおりカルコン類含有組成物28は透明であり、カルコン類含有組成物24、26、30はほぼ透明、カルコン類含有組成物29は不溶物析出、固液分離は起こらず均一な分散状態であった。一方、対照のカルコン類含有組成物25、27、31は不溶物が析出し、固体と液体が分離した状態が認められ、溶解状態が著しく悪いと判定された。
また、これらの風味も評価したところ、カルコン類含有組成物25、27の溶液と比較して、カルコン類含有組成物24、26はいずれもアシタバ汁液特有のえぐ味が低減されていた。また、カルコン類含有組成物28、29はいずれもアシタバ特有のえぐ味、青臭さが明らかに低減されていた。
【0075】
【表6】

【0076】
すなわち、アシタバ処理物として実施例6−(1)のアシタバ汁液溶液ならびにアシタバ汁液由来乾燥粉末を用いて得られたカルコン類含有組成物を使用したカルコン類濃度3mg/100mLの当該溶液は、乳化処理を行うことにより、えぐ味が低減され、透過性が良好であることが明らかとなった。また、アシタバ処理物として実施例1−(2)のアシタバ含水アルコール抽出物−2を用いて得られたカルコン類含有組成物を使用した当該溶液は、当該組成物の有無にかかわらず、透過性、風味の面において良好であり、さらに乳化処理を行った当該組成物を用いた場合には、透過性においてさらに良好であることが明らかとなった。
【0077】
実施例7
(1)カルコン類含有組成物32、33の調製
実施例1−(2)で得られたアシタバ含水エタノール抽出物−2を14mL使用し、減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルA25.3gを添加し60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、脱イオン水で液量を60mLとしカルコン類含有組成物32を得た。また、実施例1−(2)で得られたアシタバ含水エタノール抽出物−2を14mL使用し、減圧濃縮下でエタノールを除去したものを0.5%カルボキシメチルセルロース水溶液で60mLに均一懸濁しカルコン類含有組成物33を得た。
【0078】
(2)吸収性試験
実施例7−(1)で調製したカルコン類含有組成物32ならびに33の体内への吸収性を以下の方法で評価した。一晩絶食したWistarラット(雄、14週齢:日本クレア社)各6匹に実施例7−(1)で調製したカルコン類含有組成物32ならびに33を20mL/kg強制経口投与した。投与後、1、2、4、6、24および48時間目に鎖骨下静脈から採血を行った。次に、血漿中のキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの濃度をHPLC法で定量し、血漿中の合計カルコン濃度を算出した。その結果、図1に示すように、いずれの投与でも血漿中からカルコン類が検出され、カルコン類含有組成物32ならびに33に含まれるカルコン類が体内に吸収されていることが確認された。さらに、カルコン類含有組成物33に比べカルコン類含有組成物32の方が、血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)で約2倍高いことから、乳化処理を行うことによるカルコン類の体内吸収性の向上が明らかとなった。
【0079】
実施例8
(1)カルコン類含有組成物34とアシタバ粉末水懸濁物の調製
実施例1−(2)で得られたアシタバ含水エタノール抽出物−2を1.03mL使用し、減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC2.12gを添加し60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、脱イオン水で液量を60mLとしカルコン類含有組成物34を得た。また、アシタバの茎葉部乾燥物を粉末化したもの10gに脱イオン水を加え液量を60mLとしアシタバ粉末水懸濁物を得た。調製したカルコン類含有組成物34とアシタバ粉末水懸濁物中のカルコン類濃度をHPLC法によって測定したところ、キサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの合計として、それぞれ0.352mg/mLと0.355mg/mLであった。
【0080】
(2)吸収性試験
実施例8−(1)で調製したカルコン類含有組成物34ならびにアシタバ粉末水懸濁物の体内への吸収性を以下の方法で評価した。Wistarラット(雄、5週齢:日本クレア社)各5匹に実施例8−(1)で調製したカルコン類含有組成物34ならびにアシタバ粉末水懸濁物を20mL/kg強制経口投与した。投与後、0.5、1、2、4時間目に鎖骨下静脈から採血を行った。次に、血漿中のキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの濃度をHPLC法で定量し、血漿中の合計カルコン濃度を算出した。その結果、図2に示すようにいずれの投与でも血漿中からカルコン類が検出され、カルコン類含有組成物34ならびにアシタバ粉末水懸濁物に含まれるカルコン類が体内に吸収されていることが確認された。さらに、アシタバ粉末水懸濁物に比べカルコン類含有組成物34の方が、最大血漿濃度で約2倍、血漿−時間曲線下面積(AUC)で約1.5倍高いことから、乳化処理を行うことによるカルコン類の体内吸収性の向上が明らかとなった。
【0081】
実施例9
(1)カルコン類含有組成物35とコントロール溶液の調製
実施例1−(2)と同様の方法でアシタバ含水エタノール抽出物−2を調製し、その14.6mLを減圧濃縮下でエタノール除去したものに対して、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC30gを添加し60℃で混合した。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、脱イオン水で液量を100mLとし、カルコン類含有組成物35を得た。同時に、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルC30gを脱イオン水で溶解し100mLとしコントロール溶液を得た。
【0082】
(2)カルコン類含有組成物35の血糖値低下作用
実施例9−(1)で調製したカルコン類含有組成物35の血糖値低下作用を以下の方法で評価した。2型糖尿病モデル動物のGKラット(雄、5週齢:日本クレア社)各4匹に実施例9−(1)で調製したカルコン類含有組成物35ならびにコントロール溶液を6日間、1日1回10mL/kg強制経口投与した。投与開始日と6日目に尾静脈から採血し、血糖値測定システム(Glucose Vision:SYNTRON Bioresearch, Inc.製)を用いて血糖値を測定した。その結果、表7に示すように、カルコン類含有組成物35投与により、血糖値の有意な低下が認められた。尚、実験期間中、体重及び一般症状に変化は認められなかった。
【0083】
【表7】

【0084】
実施例10
緑茶葉25g、焙煎アシタバ5g、アスコルビン酸ナトリウム5gおよび脱イオン水5000mLを用いて、常法に従って緑茶飲料を調製した。次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて0.5%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、舌ざわり感、香り、目視での透明感、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表8に示した。
【0085】
【表8】

【0086】
表8より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料は、アシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられず焙煎アシタバ配合緑茶の風味を損なうことなく、味とのバランスが良いとの評価が得られた。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30が良いと評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび透明感に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さが感じられ、沈殿、濁りが認められると評価された。
【0087】
実施例11
焙煎アシタバ15g、アスコルビン酸ナトリウム5gおよび脱イオン水5000mLを用いて、常法に従って焙煎アシタバ茶飲料を調製した。次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて0.5%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、目視での透明感、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表9に示した。
【0088】
【表9】

【0089】
表9より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられず焙煎アシタバ茶の風味を損なうことなく、味とのバランスが良いとの評価が得られた。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30が良いと評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび透明感に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さが感じられ、沈殿、濁りが認められると評価された。
【0090】
実施例12
玄米茶葉25g、焙煎アシタバ10g、アスコルビン酸ナトリウム5gおよび脱イオン水5000mLを用いて、常法に従って玄米茶飲料を調製した。次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて0.5%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、目視での透明感、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表10に示した。
【0091】
【表10】

【0092】
表10より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられず焙煎アシタバ配合玄米茶の風味を損なうことなく、味とのバランスが良いとの評価であった。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30が良いと評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび透明感に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さが感じられ、沈殿、濁りが認められると評価された。
【0093】
実施例13
玄米茶葉20g、焙煎アシタバ10g、アマチャヅル1g、クコ葉1.5g、桑の葉1g、アスコルビン酸ナトリウム5gおよび脱イオン水5000mLを用いて、常法に従って混合茶飲料を調製した。次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて0.5%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、目視での透明感、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表11に示した。
【0094】
【表11】

【0095】
表11より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられずブレンド茶の風味を損なうことなく、味とのバランスが良いとの評価であった。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30が良いと評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわり及び透明感に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さが感じられ、沈殿、濁りが認められると評価された。
【0096】
実施例14
ドリンク剤として表12に示す配合に従い、常法により調製した。
【0097】
【表12】

【0098】
次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて3%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、後味、目視での液調、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表13に示した。
【0099】
【表13】

【0100】
表13より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐみ、青臭さが感じられずドリンク剤の風味を損なうことなく、味のバランスが良いとの評価が得られた。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30がざらつきもなく良好と評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび液調に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さやざらつき感があり、沈殿、濁りがあると評価された。
【0101】
実施例15
ドリンク剤として表14に示す配合に従い、常法により調製した。
【0102】
【表14】

【0103】
次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて3%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、後味、目視での液調、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表15に示した。
【0104】
【表15】

【0105】
表15より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられずドリンク剤の風味を損なうことなく、味のバランスが良いとの評価が得られた。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30がざらつきもなく良好と評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび液調に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さやざらつき感があり、沈殿、濁りがあると評価された。
【0106】
実施例16
ドリンク剤として表16に示す配合に従い、常法により調製した。
【0107】
【表16】

【0108】
次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて3%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、舌ざわり感、後味、目視での液調、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表17に示した。
【0109】
【表17】

【0110】
表17より、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はアシタバ特有のえぐ味、青臭さが感じられずドリンク剤の風味を損なうことなく、味のバランスが良いとの評価が得られた。舌ざわり感においてはカルコン類含有組成物28、29、30がざらつきもなく良好と評価された。特にカルコン類含有組成物28は舌ざわりおよび液調に優れているとの評価であった。カルコン類含有組成物31については、えぐ味、青臭さやざらつき感があり、沈殿、濁りがあると評価された。
【0111】
実施例17
新鮮なアシタバ葉茎部分を使用して、常法に従いジューサーにて青汁5Lを調製した。次に、実施例6−(3)で調製したカルコン類含有組成物28〜31をそれぞれ用いて5%(v/v)添加した。調製した飲料について、パネルメンバー20名で、味、香り、後味、総合について5段階(5良、1悪)の官能評価を行い、その結果の平均値を表18に示した。
【0112】
【表18】

【0113】
表18より、アシタバ青汁自体のえぐ味、青臭さについてはパネルメンバー内で好みが分かれたが、カルコン類含有組成物28、29を用いた飲料はえぐ味、青臭さが軽度であるとの評価であった。カルコン類含有組成物28、29、30は後味が良いと評価された。カルコン類含有組成物31についてはえぐ味、後味が悪いと評価された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によりアシタバ由来の処理物および乳化剤を含有するカルコン類化合物含有組成物、当該組成物を含有する食品、特定の工程を経て得られるアシタバ由来のカルコン類化合物含有組成物の製造方法、特定の工程を経て得られるアシタバ由来の含水アルコール抽出物が提供される。当該組成物又は抽出物は高濃度のカルコン類化合物が含有されており、水に可溶で体内への吸収もよく、またアシタバ特有のえぐ味や青臭さが低減されていることから、食品素材、特に健康食品素材として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】カルコン類含有組成物の吸収性を示した図である。
【図2】カルコン類含有組成物の吸収性を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバ由来の処理物および乳化剤を含有することを特徴とするカルコン類化合物含有組成物。
【請求項2】
乳化剤の含有量がキサントアンゲロール及び4−ハイドロキシデリシンの総含有量1gに対して0.1〜10000gである請求項1に記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項3】
乳化剤の含有量がキサントアンゲロール及び4−ハイドロキシデリシンの総含有量1gに対して10〜1000gである請求項2に記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項4】
HLBが10〜20である乳化剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項5】
乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項6】
アシタバ由来の処理物がアシタバの含水アルコール抽出物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項7】
含水アルコールが、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液である請求項6記載のカルコン類化合物含有組成物。
【請求項8】
アシタバの含水アルコール抽出物が下記工程により得られたものである請求項6又は7記載のカルコン類化合物含有組成物。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)で得られた抽出液をろ過する工程
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカルコン類化合物含有組成物を含有する食品。
【請求項10】
容器詰飲料である請求項9記載の食品。
【請求項11】
下記工程(a)〜(c)を包含するアシタバの含水アルコール抽出物の製造方法。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)で得られた抽出液をろ過する工程
【請求項12】
含水アルコールが、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液である請求項11記載のアシタバの含水アルコール抽出物の製造方法。
【請求項13】
下記工程(a)〜(d)を包含するカルコン類化合物含有組成物の製造方法。
(a)アシタバを45〜120℃で熱水処理し、圧搾する工程
(b)(a)工程で得られた圧搾残渣に、抽出溶媒として含水アルコールを添加し、抽出する工程
(c)(b)工程で得られた抽出液をろ過する工程
(d)(c)工程で得られたろ液に乳化剤を添加し混合する工程
【請求項14】
含水アルコールが、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液である請求項13記載のカルコン類化合物含有組成物の製造方法。
【請求項15】
乳化剤のHLBが10〜20である請求項13または14記載のカルコン類化合物含有組成物の製造方法。
【請求項16】
乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項13〜15いずれか1項に記載のカルコン類化合物含有組成物の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−176919(P2007−176919A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138407(P2006−138407)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】