カルジオグラフ測定値の分析及び使用
カルジオグラフ測定値を分析する手法は、被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る工程と、血流流量の変動のレートをバイオインピーダンス情報に基づいて求める工程と、血流流量の変動のレートが、被験者の心収縮期の間に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、血流流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを含んでいる場合、2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間差を求める工程と、求められた時間を閾値時間と比較する工程とを含む。被験者のカルジオグラフ測定値を使用する手法は、求められた時間が閾値時間よりも大きい場合、被験者にペースメーカを植え込み、求められた時間が閾値時間よりも大きい訳でない場合、被験者にペースメーカを植え込まない工程を更に含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、カルジオグラフ測定値の分析及び使用に関し、特に、カルジオグラフ測定値を分析し、使用して、心室間非同期及び心室内非同期を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病専門医は、心臓の状態を診断し、治療するために利用可能な種々のツールを有する。例えば、心臓病専門医は、心電図(ECG)、心エコー図、及び磁気共鳴画像法(MRI)を使用して心臓の状態を診断し、心臓の状態の治療を支援することができる。前述の手法はそれぞれ、種々の手法を使用して、心臓の状態及び作用の種々の測定値及び/又は示度を生成する。更に、前述の手法にはそれぞれ、利点及び欠点がある。
【0003】
心エコー図は、心臓の超音波ベースの評価である。心エコー図では、超音波手法を使用して、心臓の2次元スライス及び3次元画像を生成する。心エコー図は、侵襲的であっても非侵襲的であってもよい。非侵襲性心エコー図では、画像が胸壁を介して撮影されている間に、心エコー図トランスデューサ(又はプローブ)を被験者の胸壁(又は胸郭)上に配置することができる。この非侵襲性手法は、心臓の全般的な健康状態の正確かつすばやい評価を提供する。この情報によれば、心臓病専門医は、患者の心臓弁及び心筋収縮力を(駆出率を使用して)すばやく評価することが可能である。侵襲性心エコー図では、画像が撮影されている間に、心エコー図トランスデューサ(TEEプローブ)を含む特殊スコープを患者の食道に挿入することができる。心血管系の画像の作成に加えて、心エコー図は、パルス波又は連続波のドップラ超音波を使用して任意の点での血液及び心臓組織の速度の測定値を生成することも可能である。心エコー図は通常、費用が高く、施し、読み取るのが困難であり、心エコー図を行うために、訓練を受けた技師を必要とする。
【0004】
MRIは磁場を使用して心臓などの体内部位の正確な画像を生成する。心エコー図と同様に、心臓病専門医は、MRIを使用して、患者の心臓弁及び心筋収縮力の度合いをすばやく評価することができる。しかし、MRIは、費用が非常に高い。更に、ペースメーカ、又は植込み可能な植込み型除細動器を体内に植込んだ人々は通常、MRIを受けることが可能でない。
【0005】
インピーダンス・カルジオグラフィ(ICG)は、心臓内の血液量における変動に関係する胸郭インピーダンスの変動を測定する手法である。そういうものとして、ICGは、心周期の間の血流流量の変動を追跡するために使用することができる。ICGでは、プローブが患者の肋骨及び首の近くに非侵襲的に配置され、プローブを介して患者の胸部に交流電流を流す。心臓内の血液の量及び速度は各心周期内で変動するので、ICGは、インピーダンスの変動を測定し、対応する血液の量及び速度を算出する。そういうものとして、ICGは、一回拍出量、心拍出量、全身血管抵抗、速度係数、加速係数、胸部体液容量、収縮時間比、左心室駆出時間、前駆出期、左室一回拍出仕事量、心拍数等を測定するために使用される。
【0006】
ECGは、身体の種々の位置間の電位を測定する。ECGは、心臓の電気的活動を表す、図1に示すような、時間に対する電気的活動のよく見かける図を生成する。ECGは、非侵襲的であり、費用が比較的低い。
【0007】
図1に示すように、ECG100は、P波と、PR区間と、QRS群と、ST区間と、T波とを含む。P波は、心房の収縮(左心房及び右心房は通常、概して同時に収縮する)をもたらす電流の電気的なサインである。PR区間は、P波とQRS群とを結ぶ。QRS群(Q波、R波、及びS波を含む)は左心室及び右心室の収縮をもたらす電流に対応する。この電流は通常、心房の収縮をもたらす電流よりもずっと強力であり、より多くの筋質量を伴い、よって、図に示すように、より大きなECGの動揺をもたらす。Q波がある場合、これは、活動電位が心室中隔を通って流れるにつれての水平方向の(左から右への)小電流を表す。R波及びS波は、心筋の収縮を示す。ST区間は、QRS群とT波とを結ぶ。T波は、心室の再分極を表す。
【0008】
PR間隔は、P波の最初からQRS群の最初まで測定される。PR間隔は通常、0.12乃至0.20秒である。QRS群の持続時間は通常、0.10秒以下である。QT間隔は、QRS群の最初からT波の最後まで測定される。通常のQT間隔は通常、約0.40秒である。
【0009】
ECGは、心臓の電気的活動についての情報を提供するので、心臓病の患者の診断及び治療に使用されることが多い。ECGに基づいた診断については、多くの経験則が展開されている。例えば、60未満のP波レートが洞性徐脈を示し得る一方、100を超えるP波レートは洞性頻脈を示し得る。0.20秒よりも長いPR間隔は、第1度の心ブロックを示し得る。
【0010】
心臓の状態の診断及び治療に使用することが可能なカルジオグラフ測定値が多く存在している。心臓の特定の状態の1つに、心室間非同期がある。これは、心臓の別々の室の収縮間のタイミングの同期がとれておらず、心臓の性能が最適以下となってしまう状態である。別の状態には、心室内非同期がある。これは、心臓の単一の室内の収縮のタイミングの同期がとれておらず、心臓の性能が最適以下となってしまう状態である。他の多くの心臓の状態は、ペースメーカに好ましく反応しない一方、心室間非同期及び心室内非同期は、多くの場合、ペースメーカで治療することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非同期を診断する一手法は、ECG、特にQRS群からの測定に依存する。35%未満の超音波検査駆出率に関係する、持続時間が0.12秒よりも長い、QRS群の幅は、非同期の存在を予測するために使用されている。QRS群の幅が0.12秒よりも大きな患者の多くは、最終的には、ペースメーカで治療される。しかし、前述のペースメーカの患者の多く(約30%)は実は、非同期を有しておらず、よって、ペースメーカによる改善を得ることはない。一方、QRS群の幅が0.12秒未満の持続時間の、特定の患者は、非同期を被っており、しかしながら、従来の手法の下では、ペースメーカが植え込まれることはなく、よって、治療の恩恵は受けられない。更に、非同期を有し、ペースメーカを有する患者の多くがペースメーカから受ける改善は、ほんのわずかに過ぎない。したがって、ペースメーカに好ましく反応する可能性がより高い患者を識別し、ペースメーカの調整の恩恵を受ける可能性が高い患者を識別するより好適な手法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
カルジオグラフ測定値を分析する手法は、被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る工程と、バイオインピーダンス情報に基づいて血流流量の変動のレートを求める工程と、血流流量の変動のレートが、被験者の心収縮期中に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、血流流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを含んでいる場合、2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間差を求める工程と、求められた時間を閾値時間と比較する工程とを含む。
【0013】
被験者のカルジオグラフ測定を使用する手法は、血流流量の変動のレートを求める工程と、血流流量の変動のレートが、被験者の心収縮期中に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間差を求める工程と、求められた時間を閾値時間と比較する工程と、求められた時間が閾値時間よりも大きい場合、ペースメーカを被験者に植え込む工程と、求められた時間が閾値時間よりも大きい訳でない場合、ペースメーカを被験者に植え込まない工程とを含む。更に、カージオグラフ測定値(例えば、2つのピーク間の時間差)に基づいて、調節(例えば、刺激遅延の調節、プローブ位置の調節等を含む)をペースメーカに対して行うことができる。
【0014】
情報担体に有形に実施されたコンピュータ・プログラムについても説明する。前述のコンピュータ・プログラムは、本明細書及び特許請求の範囲記載の1つ又は複数の動作をデータ処理装置に行わせることができる。
【0015】
同様に、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリとを含み得るシステムも説明する。メモリは、本明細書及び特許請求の範囲記載の動作の1つ又は複数をプロセッサに行わせる1つ又は複数のプログラムをコード化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例示的な心電図を示す図である。
【図2】例証的な心電図(ECG)信号と、心臓を通る正常な血流流量を表す例証的なインピーダンス・カルジオグラフィ(ICG)信号DZと、信号DZの加速度又は第一次導関数を表す例証的なICG信号DZ’とを示す図である。
【図3】右心室内の血液量及び左心室内の血液量の合計を表すICG信号Zとともにプロットした図2のECG信号を示す図である。
【図4】ICG信号DZ、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図5】右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットした、図2のICG信号DZ’及び図2のECG信号を示す図である。
【図6】(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なECG信号、(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を示す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図7】(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なECG信号、(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を示す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図8】図2のものと同様なECG信号、図2のもの(正常状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値と、図7のもの(非同期状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値とを示す図である。
【図9】ICG信号DZ’(累積)、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)を示す図である。
【図10】右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットしたICG信号DZ’(累積)を示す図である。
【図11】カルジオグラフ測定値を分析するための例証的な方法を示すフロー図である。
【図12】カルジオグラフ測定値を分析し、使用するための別の例証的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の1つ又は複数の変形の詳細は、添付図面及び以下説明に記載する。本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の他の構成は、本願の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0018】
種々の図面中の同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【実施例】
【0019】
前述の通り、インピーダンス・カージオグラフィ(ICG)は、大動脈内の血液量に関係する胸郭インピーダンスを測定する。ICGは、一回拍出量、心拍出量、全身血管抵抗、速度係数、加速係数、胸部体液容量、収縮時間比、左心室駆出時間、前駆出期、心拍数等を求めるために使用することができる。更に、ICG測定値を、ECG測定装置及び血圧測定装置と組み合わせて更なる情報(例えば、全身血管抵抗や左室一回拍出仕事量)を得ることができる。
【0020】
ECG及びICGに基づいて求め、かつ/又は推定することができる心周期のパラメータが複数存在している。一回拍出量(SV)は、左心室が一心拍において放出する血液の量であり、心拍毎ミリリットル(ml/心拍)で測定することができる。心拍出量(CO)は、一分間に左心室が体循環に駆出する血液の量であり、毎分リットル(l/分)で測定される。COは、SVを心拍数(HR)で乗算することによって求めることができる。全身血管抵抗(SVR)は、一回心拍出量を末梢に分配するために左心がポンピングしなければならない力を表す。
【0021】
SVRは、血圧に正比例し、血流流量(CO)に反比例する。速度係数(VI)は、インピーダンス変動の最大レートであり、大動脈の血液速度を表す。加速係数(ACI)は、血液速度の変動の最大レートであり、大動脈血液加速度を表す。胸部体液容量(TFC)は、胸部内の体液(血管内液及び血管外液を含む)の合計容量を表す。TFCは、ベースライン・インピーダンス測定値の逆数として算出することができる。ベースライン・インピーダンスは、胸部の導電性材質(例えば血液、肺水分)の量に正比例する。
【0022】
前駆出期(PEP)は、心室脱分極(ECG中のQ波)の始まりから、機械的収縮(インピーダンス波形の最初の上り坂)の最初までの測定間隔である。左心室駆出時間(LVET)は、大動脈弁開口から大動脈弁閉鎖までの時間である。収縮時間比(STR)は、左心室機能に反比例し、前駆出期(PEP)を左心室駆出時間(LVET)で除算することによって算出することができる。左心室一回拍出仕事量(LCW)は、心筋酸素消費量に対応し、血圧と血液流量との積に関係する。心拍数(HR)は毎分の心拍数であり、これは、ECGによって測定することが可能である。
【0023】
前述の心臓血管測定値を求めることに加えて、ICGは、心臓の血液流量を連続的に表すこともできる。図2は、例証的なECG信号と、心臓を通る正常な血流流量を表す例証的なICG信号DZと、信号DZの加速度又は1次導関数を表す例証的なICG信号DZ’とを示す。ECG信号は、図1に関して説明したものと同様である。
【0024】
信号DZは、等容性収縮期(IVCT)付近で始まり、大動脈弁閉鎖(AC)時付近で終わる収縮期中の第1の部分を含む。信号DZは、僧帽弁開口(MO)時付近で始まり、ECG信号のQRS群の時点付近で終わる拡張期中の第2の部分を含む。信号DZは、ピークDZmaxを(信号DZの第1の部分に)含み、最低点DZminを(信号DZの第2の部分に)含む。曲線の最低点(低い部分)は、僧帽弁開口(MO)に対応する。
【0025】
信号DZ’は、小さなピークPを有する第1の部分と、より大きなピークSを有する第2の部分と、最低点Tを有する第3の部分と、小さなピークOを有する第4の部分とを含む。信号DZ’のピークPは、ECG信号のP波の後に、かつ、上記P波の直後に生じる。信号DZ’のピークSは、ECG信号のQRS群の後に、かつ、上記QRS群の直後に生じる。信号DZ’の最低点Tは、ECG信号のT波の時点付近で生じる。信号DZ’のピークOは、ECG信号のT波の後に、かつ、上記T群の直後に生じる。時間T1は信号DZ’がピークSに上昇する時間であり、時間T2は信号DZ’がピークSから最低点Tに降下する時間である。
【0026】
通常、心臓の電気的活性化は、QRS群のECG Q点後に始まる。僧帽弁及び三尖弁の尖は通常、右心室内圧及び左心室内圧が大動脈圧よりも高くなるにつれ、ECGのR波の降下部分の1/3及び2/3の合流点付近で閉鎖する。電気的活性化は、収縮性の2つの室で同時に生じても、肺動脈弁は、2つの心室大動脈内の異なる圧力が理由で、大動脈弁よりも約10ミリ秒前に開口し得る。右心室等容収縮時間(IVCT)は、心室内圧が約15mmHgを超えるレベルまで上昇すると、肺動脈の血流の始まりとともに終了する一方、左心室が拡張期血圧を超えると大動脈弁尖が広がる。両方の血液駆出間の遅延が24ミリ秒である場合、信号DZ及び信号DZ’の平均累積曲線は重なり合い、よって、その最大値の間に、平滑な丘が生じる。心容積の修正は、右心室及び左心室の血行力活性の累積を表す信号DZに電気的に関係する。
【0027】
図3は、右心室内の血液量及び左心室内の血液量の合計を表すICG信号Zとともにプロットした図2のECG信号を表す図である。信号Zは、経時的に上昇する(、短持続時間の)第1の部分と、経時的に、よりすばやく上昇する(、より長い持続時間の)第2の部分とを含む。信号Zは、心室が空になることを表す、降下する量の第3の部分も含む。信号Zは、右心室の量及び左心室の量を含むその構成部分に分けることが可能である。右心室の量は、左心室の量よりもわずかに(例えば、数ミリ秒)早く上昇し始め、その結果、信号Zは、異なる量で上昇する2つの部分を含むようになる。
【0028】
図4は、ICG信号DZと、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)と、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)とプロットされた、図2のECG信号を示す。図3と同様に、右心室の血流流量は、左心室の血流流量よりもわずかに(例えば、数ミリ秒)早く上昇し始め、その結果、信号DZは、異なる量で上昇する2つの部分を含むようになる。ほぼ重なり合う2つの成分曲線(信号RV DZ及び信号LV DZ)を重ね、加えると、平滑な累積信号DZが生じる。これは、心臓内血液流量を表す。
【0029】
図5は、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットした、図2のICG信号DZ’及び図2のECG信号を表す図である。RV DZ’信号及びLV DZ’信号は形状が同様であるが、わずかに異なる時点で始まる。RV DZ’信号及びLV DZ’信号がかなり異なる時点で始まる場合、患者は心室間非同期を有し得る。
【0030】
DZ’の最大値はDZ’maxとして表す。時間T1(DZ’maxとDZ’の始まりの間の時間差である)は、収縮期収縮の正の部分として表される一方、時間T2(DZ’maxからDZ’minまでの時間である)は、収縮期収縮の負の部分として表される。
T1/T2が低い場合、患者は失神する傾向にあり得る。DZ’minは、収縮期駆出の最後ではなく、収縮性の変曲点である。信号DZ’の上昇部分の最後は、正の加速度でないが、負の収縮性の反転時点であり、僧帽弁開口が続く等容性弛緩直前の大動脈弁の尖の閉鎖に備えている。
【0031】
ECG信号のQ波から信号DZ’の始まりまでの時間は、前駆出時間である。等容収縮時間は、大動脈弁の尖の閉鎖から信号DZ’の始まりまでによって算出される。収縮期は、前述の2つの時間間隔と実行駆出期間との和である。
【0032】
個々の弁の収縮の開始時の差を求めようとするよりも、2つの心室間の前述の位相差は、図6に関して更に詳細に説明するように、DZ’信号のピークSを使用して、みることができる。
【0033】
図6乃至図7は、(非同期を有する患者以外は)図2のものと同様なECG信号を示し、(非同期を有する患者以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’を示し、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)と、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)とを示す。
【0034】
信号RV DZ及び信号LV RZは異なる時点(図4に関して示すよりも更に大きい)で始まる。これにより、信号DZ’のピークSにおいて2重ピークが生じる。図示したように、第1のピークS1は通常、右心室の最大体液駆出変動の時点付近で生じ、第2のピークS2は通常、左心室の最大体液駆出変動の時点付近で生じる。S1は一般に、右心室血液流出量の最大変動(加速度)に対応する。S2は、大動脈血流流量の最大変動(加速度)に対応する。よって、第1のピークS1と第2のピークS2との間の時間は、心室間の最大体液変動遅延である。
【0035】
更に、必ずしもピークS1とピークS2との間の中間点ではないが、ピークS1とピークS2との間に最低点又は最小点S’が存在する。ピークS1と点S’との間の時間は、右心室と左心室との間の位相遅延とみなされる。2重ピーク形状は、ICG信号DZ’の連続する2つの周期でみられ、累積又は平均ICG信号DZ’上でより顕著であり得る。ピークS1と点S’との間の時間は、測定し、算出し、又は求めることが可能であり、肺動脈血流流量の始まりから大動脈血流流量の始まりまでの位相遅延を表し、左心室の電気的活性化がより遅いことが理由で流出遅延が生じる。
【0036】
図8は、図2のものと同様なECG信号、図2のもの(正常状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺動脈及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値と、図7のもの(非同期状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺動脈及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値とを示す。ドップラ測定値を使用して非同期状態が存在することを確認することが可能である。(しかし、ドプラは解釈することがより難しく、実現することにより費用がかかり、訓練をより多く受けた操作者が必要である。更に、右心室の流出量及び左心室の流出量は組織ドップラ法中に行うことが可能でないので、非同期の評価は不整脈の間は可能でない。右心室流出又は左心室流出の始まりは、周期単位で変動する、先行拡張期の長さに関係する。
【0037】
心室間非同期を別のかたちで表示するのはR波である。大きなR波は非同期を示し得る。前述の場合、通常、これは遅延した局所収縮(例えば、心室を空きにすることが遅い)を有する線維性心筋による誤った電気的活性の問題である。これは、隆起信号DZをもたらし、よって、2重ピーク信号DZ’ももたらす。この2重ピーク信号DZ’では、S1は通常、右心室を表し、S2は通常、左心室を表す。しかし、左脚ブロックでは、逆のことが生じ得る。逆立状態又は直立状態で、2つのピークS1及びS2のそれぞれの高さは、前負荷又は後負荷に応じて変わり得る。よって、例えば、直立状態では、V字形の刻み目、又は最低点S’は、より明らかであり、より深いようにみえ得る。
【0038】
図8で分かるように、前駆出時間遅延は、DZ’信号の2つのピークの間の時間遅延に関係しているようにみえる。S1は最大瞬間肺動脈血流流量と同時であるようにみえ、S2は最大瞬間大動脈血流流量と同時であるようにみえる。
【0039】
図9は、ICG DZ’(累積)、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)を示す。信号DZ’は、2重ピークなしの丘形状であり、それにより、心臓機能が正常であることを示す。個々の成分信号RV DZ’及びLV DZ’は同時にピークに達する訳でない(maxRV DZ’はmaxLV DZ’とは異なる時点で生じる)。流出量(RV流出量及びLV流出量の始まり)も同時に生じる訳でない。しかし、累積信号DZ’は2重ピークを含む。信号DZ’の単一のピークは、maxRV DZ’とmaxLV DZ’との間に位置する。
【0040】
図10は、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットしたICG信号DZ’(累積)を示す。RV DZ’信号及びLV DZ’信号は一般に形状が同様であるが、図9に示すよりも、かなり異なる時点で始まる。RV流出量の始まり及びLV流出量の始まり(、並びにmaxRV DZ’及びmaxLV DZ’の間の前述のより大きな時間差が理由で、累積信号曲線DZ’には、(maxRV DZ’の時点付近で生じる)第1のピークS1及び(maxLV DZ’の時点付近で生じる)第2のピークS2を含む(、2重ピークを備える)V字形の刻み目が入っているようにみえる。ピークS1とピークS2との間には最小点S’が存在している。ピークS1と最小点S’との間の時間は位相遅延と表すことができる。位相遅延は通常、右心室の機械的活性化と左心室の機械的活性化との間の時間を表す。
【0041】
複数の状態が、ICG信号DZ’において、最低点を有する2重ピークをもたらし得る。例えば、左心筋の一部が、心室中央部の収縮に対する法線を有し、対側部分が収縮していないか、又はジスキネジーでない場合、等容収縮時間はより長い時間を要する。心室内血圧はゆっくりと上昇し、大動脈弁の尖の開口は、大動脈内圧の降下によって遅延する。前述の状態が、ICG信号DZ’において、最低点を有する2重ピークの状態をもたらし得る。後の時点で収縮する、心室の遅延部分は、弛緩し始めている対側部分に向けてポンピングされ、したがって、瞬間収縮の能動的な参加なしで受動的に押しのけられる。前述の、コヒーレントな収縮性がないということは、2つの心室の活性化において位相遅延が存在している場合でも、心室内圧が劣悪であり、駆出時間が比較的短いことを示している。
【0042】
厳密なマルチフォーカス脱同期化では、信号DZ’は、複数の、V字形の刻み目を有していることがあり得る。V字形の刻み目は全て、動いている左心室壁の特定の一部分によって発生する血流流量に関係する。この現象は、ペースメーカでは補正することが困難である。
【0043】
大動脈流出量の始まりがS1(maxRV DZ’から垂直方向に延びた点線)より前に始まる場合、2つの機械的活性化がマージするので、V字型の刻み目は存在しない。その結果、累積DZ’曲線は平滑な状態に留まる。LV流出量の始まりがS1後に始まる場合、(ICGでは評価することが可能でないが、心エコー図で評価することが可能な)2つの心室の同じ始まりの遅延が、同様な時間遅延(位相遅延)を有するSのピークで生じる。
【0044】
図11は、分析装置(例えば、汎用コンピュータ、ランプトップ型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ等)によって行うことが可能な非同期を分析する例証的な方法1100のフロー図である。図11に示すように、1110では、分析装置は、被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る。例えば、分析装置は、ICG信号と、ICG Z信号と、ICG DZ信号と、ICG DZ’信号と、それらの組合せ等を受け取ることができる。分析装置は、ECG情報も受け取ることができる。情報は、通信リンク、シリアル・ポート、ネットワーク通信リンク、無線ネットワーク、無線通信リンク、それらの組合せ等を介して受信することができる。よって、分析装置は、ICG装置及びECG装置と通信することができる。
【0045】
1120では、分析装置は、バイオインピーダンス情報に基づいて、血液流量の変動のレートを求める。分析装置は、ICG DZ’信号を受け取った場合、1120で、単にその信号を用い得る。更に、分析装置は、複数の心周期にわたって平均化された平均ICG DZ’信号を表す平均ICG DZ’信号を生成(し、又は受信)することができる。前述の平均ICG DZ’信号は、「雑音」がより少なく、よって、更なる分析のために、より良好な信号を供給することができる。分析装置は、ICG DZ信号を受け取った場合、ICG DZ信号の導関数を求めてICG DZ’信号を生成することができる。導関数を実行する前に、ICG DZ信号は複数の心周期にわたって平均化することができる。あるいは、ICG DZ信号は、導関数を実行する前に平均化されなくてもよい。この場合、ICG DZ’信号を、複数の心周期にわたって平均化し、平均化されたICG DZ’信号を生成することができる。
【0046】
1130では、分析装置は、図5乃至図11に関して説明したように、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有するかを判定する。5−11. 分析装置は、ICG DZ’信号又は平均化ICG DZ’信号を使用して、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有しているかを判定することができる。分析装置は、ピーク検出手法を使用して、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有するかを判定することができる。
【0047】
1140では、2つのピークが1130で検出された場合、分析装置は、2つのピークのうちの少なくとも1つに基づいて時点を求める。例えば、分析装置は、2つのピーク間の最低点の時点を求め、次いで、第1のピークから最低点までの時間を求めることができる。更に、分析装置は、第1のピークから第2のピークまでの時間、及び最低点から第2のピークまでの時間等を求めることができる。分析装置は、時間を求めるうえでICG DZ’信号又は平均化されたICG DZ’信号を使用することができる。分析装置は、時間を自動的に求めることができるか、又は、手作業の操作者の入力に依存して時間を求めることができる。通常、分析装置は、自動的に時間を求め、求められた時間を操作者が手作業で調節することを可能にする。例えば、分析装置は、自動的に、第1のピークと最低点との間の時間を求め、ICG DZ’信号(又は平均化信号)をグラフィック表示し、(例えば、第1のピーク及び最低点において垂直方向の線を表示することにより、)第1のピーク及び最低点の時間の表示をグラフィカル・ディスプレイ上に表示し、算出された時間を表示することができる。更に、分析装置は、(例えば、ドラッグアンドドロップ・カーソル処理により、)第1のピーク、最低点等の時間を調節する操作者入力を受け取ることができる。分析装置は次いで、第1のピーク、最低点等の操作者調節時間に基づいて、新たな時間を再算出し、表示することができる。
【0048】
1150では、分析装置は、求められた時間を、予め定義されるか、予め求められ得る時間等の時間の閾値と比較する。例えば、時間は、約40ミリ秒、45ミリ秒、50ミリ秒、60ミリ秒等と比較することができる。この比較は、図12に関して以下に更に詳細に説明し(、かつ図5乃至10に関して前述し)たように扱われる。
【0049】
図12は、心室間非同期及び心室内非同期を分析し、治療する例証的な方法1200のフロー図である。図12に示すように、1210では、分析装置又は従事者は、血液流量の変動のレートが、被験者の収縮期において2つのピークを有するかを判定する。従事者は、上記判定を行ううえで分析装置を使用することができる。2つのピークが存在していない場合、被験者は非同期を有していないことがあり得るので、従事者はペースメーカを植え込まないことがあり得る。2つのピークが存在している場合、方法は1220に進む。
【0050】
1220では、分析装置及び/従事者は、図11の1140に関して説明したように、ピークのうちの少なくとも1つに基づいて時間を求める。1230では、分析装置及び/又は従事者は、図11の1150に関して説明したように、上記時間を閾値と比較する。
【0051】
1240では、求められた時間が閾値よりも大きい場合、上記従事者又は他の従事者は、被験者が非同期を有している可能性が高いのでペースメーカを植え込む。しかし、求められた時間が閾値よりも少ない場合、上記従事者又は他の従事者は、被験者が非同期を有しない可能性が高いので、ペースメーカを植え込まない。
【0052】
1250では、ペースメーカの植え込み後、分析装置又は従事者は、例えば、1220に関して説明したものと同じ手法を使用して、新たな時間を求める。上記時間が閾値(例えば、約25ミリ秒、30ミリ秒、35ミリ秒、40ミリ秒)よりも少ない場合、上記従事者又は他の従事者は、植え込んだペースメーカに対して、いかなる調節も行わないことがあり得る。
【0053】
1260では、新たな時間が閾値よりも大きい場合、上記従事者又は他の従事者は、植え込まれたペースメーカに調節を行って、1250で求められた時間を低減させることができる。1250及び1260は、1250で求められた時間が、閾値未満であるか、又は最大数の調節が行われるまで反復繰り返しを行うことができる。例えば、ペースメーカの植え込み中、従事者は、ペースメーカ・プローブ(例えば、右心房プローブ、右心室プローブ、左心室プローブ)の位置を調節し、次いで、25ミリ秒未満に時間が減少したかを判定することができる。時間が25ミリ秒未満まで減少していない場合、従事者は、ペースメーカのプローブの位置に別の調節を行うことができる。一般に、調節を行う目標は、求められる時間(例えば、第1のピークS1と最低点Sとの間の時間又は位相遅延)を、約20ミリ秒と約30ミリ秒との間に調節するというものである。これは、一般に、正常な生理学的非同期とみなされる。ペースメーカを植え込んだ後、従事者は、ペースメーカ・プローブの刺激遅延(例えば、AV遅延、DV遅延)を調節し、25ミリ秒未満に時間が減少したかを判定することができる。時間が25ミリ秒未満まで減少していない場合、従事者は、ペースメーカのプローブの位置に別の調節を行うことができる。一般に、調節を行ううえでの目標は、2つのピーク間の時間を約20ミリ秒と約25ミリ秒との間のどこかに調節するというものである。これは通常、正常な生理学的非同期とみなされる。
【0054】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の種々の実現形態は、ディジタル回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向集積回路)、コンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組合せで実現することができる。前述の種々の実現形態は、記憶システム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置との間でデータ及び命令を送受信するよう結合された、特定目的用又は汎用目的用の少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能であり、かつ/又は解釈可能である1つ又は複数のコンピュータ・プログラムにおける実現形態を含み得る。
【0055】
前述のコンピュータ・プログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション又はコードとしても知られている)は、プログラム可能なプロセッサ用マシン命令を含み、高位手続型及び/若しくはオブジェクト指向型プログラミング言語、並びに/又はアセンブリ/マシン言語で実現することができる。本明細書及び特許請求の範囲使用の語「情報担体」は、マシン読み取り可能な信号及びマシン読み取り可能な伝搬信号としてマシン命令を受け取るマシン読み取り可能な媒体を含む、プログラム可能なプロセッサにマシン命令及び/又はデータを供給するために使用される何れかのコンピュータ・プログラム、装置及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラム可能な論理装置(PLD))を含む「マシン読み取り可能な媒体」を含む。「マシン読み取り可能な信号」の語は、プログラム可能なプロセッサにマシン命令及び/又はデータを供給するために使用される何れかの信号を表す。
【0056】
ユーザと対話することができるためには、本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、ユーザに向けて情報を表示する、表示装置(例えば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ))を有するディスプレイ装置、並びに、ユーザがコンピュータに入力を供給することができるキーボード及びポインティング装置(例えば、マウスやトラックボール)を有するコンピュータ上で実現することができる。他の種類の装置を使用して、ユーザとの対話ができるようにもしている。例えば、ユーザに与えられるフィードバックは、何れかの形式の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバックや触覚フィードバック)であり得、ユーザからの入力は何れかの形式(音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む)で受け取ることができる。
【0057】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、バックエンド構成部分を(例えば、データ・サーバ)として含むか、ミドルウェア構成部分(例えば、アプリケーション・サーバ)を含むか、又は、フロントエンド構成部分、若しくは、前述のバックエンド構成部分、ミドルウェア構成部分、あるいはフロントエンド構成部分(例えば、本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の実現形態とユーザが対話できるウェブ・ブラウザ又はグラフィカル・ユーザ・インタフェースを有するクライアント・コンピュータ)の何れかの組合せを含むコンピュータ・システムにおいて実現することができる。システムの構成部分は、ディジタル・データ通信の何れかの形態又は媒体(例えば、通信ネットワーク)により、相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)、ワイド・エリア・ネットワーク、及びインターネットを含む。
【0058】
コンピュータ・システムはクライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは一般に、互いに離れた所にあり、通常、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアントサーバ関係を有するコンピュータ・プログラムによって生じる。
【0059】
いくつかの変形を上記に詳細に説明したが、他の修正も考えられる。例えば、添付図面に表し、本明細書及び特許請求の範囲に記載した論理フローには、所望の結果を達成するうえで、示した特定の順序、又は順番は要求されていない。他の実施例も、特許請求の範囲記載の範囲内にあり得る。
【技術分野】
【0001】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、カルジオグラフ測定値の分析及び使用に関し、特に、カルジオグラフ測定値を分析し、使用して、心室間非同期及び心室内非同期を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病専門医は、心臓の状態を診断し、治療するために利用可能な種々のツールを有する。例えば、心臓病専門医は、心電図(ECG)、心エコー図、及び磁気共鳴画像法(MRI)を使用して心臓の状態を診断し、心臓の状態の治療を支援することができる。前述の手法はそれぞれ、種々の手法を使用して、心臓の状態及び作用の種々の測定値及び/又は示度を生成する。更に、前述の手法にはそれぞれ、利点及び欠点がある。
【0003】
心エコー図は、心臓の超音波ベースの評価である。心エコー図では、超音波手法を使用して、心臓の2次元スライス及び3次元画像を生成する。心エコー図は、侵襲的であっても非侵襲的であってもよい。非侵襲性心エコー図では、画像が胸壁を介して撮影されている間に、心エコー図トランスデューサ(又はプローブ)を被験者の胸壁(又は胸郭)上に配置することができる。この非侵襲性手法は、心臓の全般的な健康状態の正確かつすばやい評価を提供する。この情報によれば、心臓病専門医は、患者の心臓弁及び心筋収縮力を(駆出率を使用して)すばやく評価することが可能である。侵襲性心エコー図では、画像が撮影されている間に、心エコー図トランスデューサ(TEEプローブ)を含む特殊スコープを患者の食道に挿入することができる。心血管系の画像の作成に加えて、心エコー図は、パルス波又は連続波のドップラ超音波を使用して任意の点での血液及び心臓組織の速度の測定値を生成することも可能である。心エコー図は通常、費用が高く、施し、読み取るのが困難であり、心エコー図を行うために、訓練を受けた技師を必要とする。
【0004】
MRIは磁場を使用して心臓などの体内部位の正確な画像を生成する。心エコー図と同様に、心臓病専門医は、MRIを使用して、患者の心臓弁及び心筋収縮力の度合いをすばやく評価することができる。しかし、MRIは、費用が非常に高い。更に、ペースメーカ、又は植込み可能な植込み型除細動器を体内に植込んだ人々は通常、MRIを受けることが可能でない。
【0005】
インピーダンス・カルジオグラフィ(ICG)は、心臓内の血液量における変動に関係する胸郭インピーダンスの変動を測定する手法である。そういうものとして、ICGは、心周期の間の血流流量の変動を追跡するために使用することができる。ICGでは、プローブが患者の肋骨及び首の近くに非侵襲的に配置され、プローブを介して患者の胸部に交流電流を流す。心臓内の血液の量及び速度は各心周期内で変動するので、ICGは、インピーダンスの変動を測定し、対応する血液の量及び速度を算出する。そういうものとして、ICGは、一回拍出量、心拍出量、全身血管抵抗、速度係数、加速係数、胸部体液容量、収縮時間比、左心室駆出時間、前駆出期、左室一回拍出仕事量、心拍数等を測定するために使用される。
【0006】
ECGは、身体の種々の位置間の電位を測定する。ECGは、心臓の電気的活動を表す、図1に示すような、時間に対する電気的活動のよく見かける図を生成する。ECGは、非侵襲的であり、費用が比較的低い。
【0007】
図1に示すように、ECG100は、P波と、PR区間と、QRS群と、ST区間と、T波とを含む。P波は、心房の収縮(左心房及び右心房は通常、概して同時に収縮する)をもたらす電流の電気的なサインである。PR区間は、P波とQRS群とを結ぶ。QRS群(Q波、R波、及びS波を含む)は左心室及び右心室の収縮をもたらす電流に対応する。この電流は通常、心房の収縮をもたらす電流よりもずっと強力であり、より多くの筋質量を伴い、よって、図に示すように、より大きなECGの動揺をもたらす。Q波がある場合、これは、活動電位が心室中隔を通って流れるにつれての水平方向の(左から右への)小電流を表す。R波及びS波は、心筋の収縮を示す。ST区間は、QRS群とT波とを結ぶ。T波は、心室の再分極を表す。
【0008】
PR間隔は、P波の最初からQRS群の最初まで測定される。PR間隔は通常、0.12乃至0.20秒である。QRS群の持続時間は通常、0.10秒以下である。QT間隔は、QRS群の最初からT波の最後まで測定される。通常のQT間隔は通常、約0.40秒である。
【0009】
ECGは、心臓の電気的活動についての情報を提供するので、心臓病の患者の診断及び治療に使用されることが多い。ECGに基づいた診断については、多くの経験則が展開されている。例えば、60未満のP波レートが洞性徐脈を示し得る一方、100を超えるP波レートは洞性頻脈を示し得る。0.20秒よりも長いPR間隔は、第1度の心ブロックを示し得る。
【0010】
心臓の状態の診断及び治療に使用することが可能なカルジオグラフ測定値が多く存在している。心臓の特定の状態の1つに、心室間非同期がある。これは、心臓の別々の室の収縮間のタイミングの同期がとれておらず、心臓の性能が最適以下となってしまう状態である。別の状態には、心室内非同期がある。これは、心臓の単一の室内の収縮のタイミングの同期がとれておらず、心臓の性能が最適以下となってしまう状態である。他の多くの心臓の状態は、ペースメーカに好ましく反応しない一方、心室間非同期及び心室内非同期は、多くの場合、ペースメーカで治療することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非同期を診断する一手法は、ECG、特にQRS群からの測定に依存する。35%未満の超音波検査駆出率に関係する、持続時間が0.12秒よりも長い、QRS群の幅は、非同期の存在を予測するために使用されている。QRS群の幅が0.12秒よりも大きな患者の多くは、最終的には、ペースメーカで治療される。しかし、前述のペースメーカの患者の多く(約30%)は実は、非同期を有しておらず、よって、ペースメーカによる改善を得ることはない。一方、QRS群の幅が0.12秒未満の持続時間の、特定の患者は、非同期を被っており、しかしながら、従来の手法の下では、ペースメーカが植え込まれることはなく、よって、治療の恩恵は受けられない。更に、非同期を有し、ペースメーカを有する患者の多くがペースメーカから受ける改善は、ほんのわずかに過ぎない。したがって、ペースメーカに好ましく反応する可能性がより高い患者を識別し、ペースメーカの調整の恩恵を受ける可能性が高い患者を識別するより好適な手法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
カルジオグラフ測定値を分析する手法は、被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る工程と、バイオインピーダンス情報に基づいて血流流量の変動のレートを求める工程と、血流流量の変動のレートが、被験者の心収縮期中に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、血流流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを含んでいる場合、2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間差を求める工程と、求められた時間を閾値時間と比較する工程とを含む。
【0013】
被験者のカルジオグラフ測定を使用する手法は、血流流量の変動のレートを求める工程と、血流流量の変動のレートが、被験者の心収縮期中に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間差を求める工程と、求められた時間を閾値時間と比較する工程と、求められた時間が閾値時間よりも大きい場合、ペースメーカを被験者に植え込む工程と、求められた時間が閾値時間よりも大きい訳でない場合、ペースメーカを被験者に植え込まない工程とを含む。更に、カージオグラフ測定値(例えば、2つのピーク間の時間差)に基づいて、調節(例えば、刺激遅延の調節、プローブ位置の調節等を含む)をペースメーカに対して行うことができる。
【0014】
情報担体に有形に実施されたコンピュータ・プログラムについても説明する。前述のコンピュータ・プログラムは、本明細書及び特許請求の範囲記載の1つ又は複数の動作をデータ処理装置に行わせることができる。
【0015】
同様に、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリとを含み得るシステムも説明する。メモリは、本明細書及び特許請求の範囲記載の動作の1つ又は複数をプロセッサに行わせる1つ又は複数のプログラムをコード化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例示的な心電図を示す図である。
【図2】例証的な心電図(ECG)信号と、心臓を通る正常な血流流量を表す例証的なインピーダンス・カルジオグラフィ(ICG)信号DZと、信号DZの加速度又は第一次導関数を表す例証的なICG信号DZ’とを示す図である。
【図3】右心室内の血液量及び左心室内の血液量の合計を表すICG信号Zとともにプロットした図2のECG信号を示す図である。
【図4】ICG信号DZ、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図5】右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットした、図2のICG信号DZ’及び図2のECG信号を示す図である。
【図6】(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なECG信号、(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を示す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図7】(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なECG信号、(非同期を有する患者である以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)、並びに、左心室を通る血流流量を示す信号LV DZ(信号DZの別の成分)を示す図である。
【図8】図2のものと同様なECG信号、図2のもの(正常状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値と、図7のもの(非同期状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値とを示す図である。
【図9】ICG信号DZ’(累積)、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)を示す図である。
【図10】右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットしたICG信号DZ’(累積)を示す図である。
【図11】カルジオグラフ測定値を分析するための例証的な方法を示すフロー図である。
【図12】カルジオグラフ測定値を分析し、使用するための別の例証的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の1つ又は複数の変形の詳細は、添付図面及び以下説明に記載する。本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の他の構成は、本願の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0018】
種々の図面中の同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【実施例】
【0019】
前述の通り、インピーダンス・カージオグラフィ(ICG)は、大動脈内の血液量に関係する胸郭インピーダンスを測定する。ICGは、一回拍出量、心拍出量、全身血管抵抗、速度係数、加速係数、胸部体液容量、収縮時間比、左心室駆出時間、前駆出期、心拍数等を求めるために使用することができる。更に、ICG測定値を、ECG測定装置及び血圧測定装置と組み合わせて更なる情報(例えば、全身血管抵抗や左室一回拍出仕事量)を得ることができる。
【0020】
ECG及びICGに基づいて求め、かつ/又は推定することができる心周期のパラメータが複数存在している。一回拍出量(SV)は、左心室が一心拍において放出する血液の量であり、心拍毎ミリリットル(ml/心拍)で測定することができる。心拍出量(CO)は、一分間に左心室が体循環に駆出する血液の量であり、毎分リットル(l/分)で測定される。COは、SVを心拍数(HR)で乗算することによって求めることができる。全身血管抵抗(SVR)は、一回心拍出量を末梢に分配するために左心がポンピングしなければならない力を表す。
【0021】
SVRは、血圧に正比例し、血流流量(CO)に反比例する。速度係数(VI)は、インピーダンス変動の最大レートであり、大動脈の血液速度を表す。加速係数(ACI)は、血液速度の変動の最大レートであり、大動脈血液加速度を表す。胸部体液容量(TFC)は、胸部内の体液(血管内液及び血管外液を含む)の合計容量を表す。TFCは、ベースライン・インピーダンス測定値の逆数として算出することができる。ベースライン・インピーダンスは、胸部の導電性材質(例えば血液、肺水分)の量に正比例する。
【0022】
前駆出期(PEP)は、心室脱分極(ECG中のQ波)の始まりから、機械的収縮(インピーダンス波形の最初の上り坂)の最初までの測定間隔である。左心室駆出時間(LVET)は、大動脈弁開口から大動脈弁閉鎖までの時間である。収縮時間比(STR)は、左心室機能に反比例し、前駆出期(PEP)を左心室駆出時間(LVET)で除算することによって算出することができる。左心室一回拍出仕事量(LCW)は、心筋酸素消費量に対応し、血圧と血液流量との積に関係する。心拍数(HR)は毎分の心拍数であり、これは、ECGによって測定することが可能である。
【0023】
前述の心臓血管測定値を求めることに加えて、ICGは、心臓の血液流量を連続的に表すこともできる。図2は、例証的なECG信号と、心臓を通る正常な血流流量を表す例証的なICG信号DZと、信号DZの加速度又は1次導関数を表す例証的なICG信号DZ’とを示す。ECG信号は、図1に関して説明したものと同様である。
【0024】
信号DZは、等容性収縮期(IVCT)付近で始まり、大動脈弁閉鎖(AC)時付近で終わる収縮期中の第1の部分を含む。信号DZは、僧帽弁開口(MO)時付近で始まり、ECG信号のQRS群の時点付近で終わる拡張期中の第2の部分を含む。信号DZは、ピークDZmaxを(信号DZの第1の部分に)含み、最低点DZminを(信号DZの第2の部分に)含む。曲線の最低点(低い部分)は、僧帽弁開口(MO)に対応する。
【0025】
信号DZ’は、小さなピークPを有する第1の部分と、より大きなピークSを有する第2の部分と、最低点Tを有する第3の部分と、小さなピークOを有する第4の部分とを含む。信号DZ’のピークPは、ECG信号のP波の後に、かつ、上記P波の直後に生じる。信号DZ’のピークSは、ECG信号のQRS群の後に、かつ、上記QRS群の直後に生じる。信号DZ’の最低点Tは、ECG信号のT波の時点付近で生じる。信号DZ’のピークOは、ECG信号のT波の後に、かつ、上記T群の直後に生じる。時間T1は信号DZ’がピークSに上昇する時間であり、時間T2は信号DZ’がピークSから最低点Tに降下する時間である。
【0026】
通常、心臓の電気的活性化は、QRS群のECG Q点後に始まる。僧帽弁及び三尖弁の尖は通常、右心室内圧及び左心室内圧が大動脈圧よりも高くなるにつれ、ECGのR波の降下部分の1/3及び2/3の合流点付近で閉鎖する。電気的活性化は、収縮性の2つの室で同時に生じても、肺動脈弁は、2つの心室大動脈内の異なる圧力が理由で、大動脈弁よりも約10ミリ秒前に開口し得る。右心室等容収縮時間(IVCT)は、心室内圧が約15mmHgを超えるレベルまで上昇すると、肺動脈の血流の始まりとともに終了する一方、左心室が拡張期血圧を超えると大動脈弁尖が広がる。両方の血液駆出間の遅延が24ミリ秒である場合、信号DZ及び信号DZ’の平均累積曲線は重なり合い、よって、その最大値の間に、平滑な丘が生じる。心容積の修正は、右心室及び左心室の血行力活性の累積を表す信号DZに電気的に関係する。
【0027】
図3は、右心室内の血液量及び左心室内の血液量の合計を表すICG信号Zとともにプロットした図2のECG信号を表す図である。信号Zは、経時的に上昇する(、短持続時間の)第1の部分と、経時的に、よりすばやく上昇する(、より長い持続時間の)第2の部分とを含む。信号Zは、心室が空になることを表す、降下する量の第3の部分も含む。信号Zは、右心室の量及び左心室の量を含むその構成部分に分けることが可能である。右心室の量は、左心室の量よりもわずかに(例えば、数ミリ秒)早く上昇し始め、その結果、信号Zは、異なる量で上昇する2つの部分を含むようになる。
【0028】
図4は、ICG信号DZと、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)と、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)とプロットされた、図2のECG信号を示す。図3と同様に、右心室の血流流量は、左心室の血流流量よりもわずかに(例えば、数ミリ秒)早く上昇し始め、その結果、信号DZは、異なる量で上昇する2つの部分を含むようになる。ほぼ重なり合う2つの成分曲線(信号RV DZ及び信号LV DZ)を重ね、加えると、平滑な累積信号DZが生じる。これは、心臓内血液流量を表す。
【0029】
図5は、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットした、図2のICG信号DZ’及び図2のECG信号を表す図である。RV DZ’信号及びLV DZ’信号は形状が同様であるが、わずかに異なる時点で始まる。RV DZ’信号及びLV DZ’信号がかなり異なる時点で始まる場合、患者は心室間非同期を有し得る。
【0030】
DZ’の最大値はDZ’maxとして表す。時間T1(DZ’maxとDZ’の始まりの間の時間差である)は、収縮期収縮の正の部分として表される一方、時間T2(DZ’maxからDZ’minまでの時間である)は、収縮期収縮の負の部分として表される。
T1/T2が低い場合、患者は失神する傾向にあり得る。DZ’minは、収縮期駆出の最後ではなく、収縮性の変曲点である。信号DZ’の上昇部分の最後は、正の加速度でないが、負の収縮性の反転時点であり、僧帽弁開口が続く等容性弛緩直前の大動脈弁の尖の閉鎖に備えている。
【0031】
ECG信号のQ波から信号DZ’の始まりまでの時間は、前駆出時間である。等容収縮時間は、大動脈弁の尖の閉鎖から信号DZ’の始まりまでによって算出される。収縮期は、前述の2つの時間間隔と実行駆出期間との和である。
【0032】
個々の弁の収縮の開始時の差を求めようとするよりも、2つの心室間の前述の位相差は、図6に関して更に詳細に説明するように、DZ’信号のピークSを使用して、みることができる。
【0033】
図6乃至図7は、(非同期を有する患者以外は)図2のものと同様なECG信号を示し、(非同期を有する患者以外は)図2のものと同様なICG信号DZ’を示し、右心室を通る血流流量を表す信号RV DZ(及び信号DZの成分)と、左心室を通る血流流量を表す信号LV DZ(信号DZの別の成分)とを示す。
【0034】
信号RV DZ及び信号LV RZは異なる時点(図4に関して示すよりも更に大きい)で始まる。これにより、信号DZ’のピークSにおいて2重ピークが生じる。図示したように、第1のピークS1は通常、右心室の最大体液駆出変動の時点付近で生じ、第2のピークS2は通常、左心室の最大体液駆出変動の時点付近で生じる。S1は一般に、右心室血液流出量の最大変動(加速度)に対応する。S2は、大動脈血流流量の最大変動(加速度)に対応する。よって、第1のピークS1と第2のピークS2との間の時間は、心室間の最大体液変動遅延である。
【0035】
更に、必ずしもピークS1とピークS2との間の中間点ではないが、ピークS1とピークS2との間に最低点又は最小点S’が存在する。ピークS1と点S’との間の時間は、右心室と左心室との間の位相遅延とみなされる。2重ピーク形状は、ICG信号DZ’の連続する2つの周期でみられ、累積又は平均ICG信号DZ’上でより顕著であり得る。ピークS1と点S’との間の時間は、測定し、算出し、又は求めることが可能であり、肺動脈血流流量の始まりから大動脈血流流量の始まりまでの位相遅延を表し、左心室の電気的活性化がより遅いことが理由で流出遅延が生じる。
【0036】
図8は、図2のものと同様なECG信号、図2のもの(正常状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺動脈及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値と、図7のもの(非同期状態)と同様なICG信号DZ’、並びに、肺動脈及び大動脈からの流出量の対応するドップラ測定値とを示す。ドップラ測定値を使用して非同期状態が存在することを確認することが可能である。(しかし、ドプラは解釈することがより難しく、実現することにより費用がかかり、訓練をより多く受けた操作者が必要である。更に、右心室の流出量及び左心室の流出量は組織ドップラ法中に行うことが可能でないので、非同期の評価は不整脈の間は可能でない。右心室流出又は左心室流出の始まりは、周期単位で変動する、先行拡張期の長さに関係する。
【0037】
心室間非同期を別のかたちで表示するのはR波である。大きなR波は非同期を示し得る。前述の場合、通常、これは遅延した局所収縮(例えば、心室を空きにすることが遅い)を有する線維性心筋による誤った電気的活性の問題である。これは、隆起信号DZをもたらし、よって、2重ピーク信号DZ’ももたらす。この2重ピーク信号DZ’では、S1は通常、右心室を表し、S2は通常、左心室を表す。しかし、左脚ブロックでは、逆のことが生じ得る。逆立状態又は直立状態で、2つのピークS1及びS2のそれぞれの高さは、前負荷又は後負荷に応じて変わり得る。よって、例えば、直立状態では、V字形の刻み目、又は最低点S’は、より明らかであり、より深いようにみえ得る。
【0038】
図8で分かるように、前駆出時間遅延は、DZ’信号の2つのピークの間の時間遅延に関係しているようにみえる。S1は最大瞬間肺動脈血流流量と同時であるようにみえ、S2は最大瞬間大動脈血流流量と同時であるようにみえる。
【0039】
図9は、ICG DZ’(累積)、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)を示す。信号DZ’は、2重ピークなしの丘形状であり、それにより、心臓機能が正常であることを示す。個々の成分信号RV DZ’及びLV DZ’は同時にピークに達する訳でない(maxRV DZ’はmaxLV DZ’とは異なる時点で生じる)。流出量(RV流出量及びLV流出量の始まり)も同時に生じる訳でない。しかし、累積信号DZ’は2重ピークを含む。信号DZ’の単一のピークは、maxRV DZ’とmaxLV DZ’との間に位置する。
【0040】
図10は、右心室を通る血流流量の加速度を表す信号RV DZ’(及び信号DZ’の成分)、並びに、左心室を通る血流流量の加速度を表す信号LV DZ’(信号DZ’の別の成分)とともにプロットしたICG信号DZ’(累積)を示す。RV DZ’信号及びLV DZ’信号は一般に形状が同様であるが、図9に示すよりも、かなり異なる時点で始まる。RV流出量の始まり及びLV流出量の始まり(、並びにmaxRV DZ’及びmaxLV DZ’の間の前述のより大きな時間差が理由で、累積信号曲線DZ’には、(maxRV DZ’の時点付近で生じる)第1のピークS1及び(maxLV DZ’の時点付近で生じる)第2のピークS2を含む(、2重ピークを備える)V字形の刻み目が入っているようにみえる。ピークS1とピークS2との間には最小点S’が存在している。ピークS1と最小点S’との間の時間は位相遅延と表すことができる。位相遅延は通常、右心室の機械的活性化と左心室の機械的活性化との間の時間を表す。
【0041】
複数の状態が、ICG信号DZ’において、最低点を有する2重ピークをもたらし得る。例えば、左心筋の一部が、心室中央部の収縮に対する法線を有し、対側部分が収縮していないか、又はジスキネジーでない場合、等容収縮時間はより長い時間を要する。心室内血圧はゆっくりと上昇し、大動脈弁の尖の開口は、大動脈内圧の降下によって遅延する。前述の状態が、ICG信号DZ’において、最低点を有する2重ピークの状態をもたらし得る。後の時点で収縮する、心室の遅延部分は、弛緩し始めている対側部分に向けてポンピングされ、したがって、瞬間収縮の能動的な参加なしで受動的に押しのけられる。前述の、コヒーレントな収縮性がないということは、2つの心室の活性化において位相遅延が存在している場合でも、心室内圧が劣悪であり、駆出時間が比較的短いことを示している。
【0042】
厳密なマルチフォーカス脱同期化では、信号DZ’は、複数の、V字形の刻み目を有していることがあり得る。V字形の刻み目は全て、動いている左心室壁の特定の一部分によって発生する血流流量に関係する。この現象は、ペースメーカでは補正することが困難である。
【0043】
大動脈流出量の始まりがS1(maxRV DZ’から垂直方向に延びた点線)より前に始まる場合、2つの機械的活性化がマージするので、V字型の刻み目は存在しない。その結果、累積DZ’曲線は平滑な状態に留まる。LV流出量の始まりがS1後に始まる場合、(ICGでは評価することが可能でないが、心エコー図で評価することが可能な)2つの心室の同じ始まりの遅延が、同様な時間遅延(位相遅延)を有するSのピークで生じる。
【0044】
図11は、分析装置(例えば、汎用コンピュータ、ランプトップ型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ等)によって行うことが可能な非同期を分析する例証的な方法1100のフロー図である。図11に示すように、1110では、分析装置は、被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る。例えば、分析装置は、ICG信号と、ICG Z信号と、ICG DZ信号と、ICG DZ’信号と、それらの組合せ等を受け取ることができる。分析装置は、ECG情報も受け取ることができる。情報は、通信リンク、シリアル・ポート、ネットワーク通信リンク、無線ネットワーク、無線通信リンク、それらの組合せ等を介して受信することができる。よって、分析装置は、ICG装置及びECG装置と通信することができる。
【0045】
1120では、分析装置は、バイオインピーダンス情報に基づいて、血液流量の変動のレートを求める。分析装置は、ICG DZ’信号を受け取った場合、1120で、単にその信号を用い得る。更に、分析装置は、複数の心周期にわたって平均化された平均ICG DZ’信号を表す平均ICG DZ’信号を生成(し、又は受信)することができる。前述の平均ICG DZ’信号は、「雑音」がより少なく、よって、更なる分析のために、より良好な信号を供給することができる。分析装置は、ICG DZ信号を受け取った場合、ICG DZ信号の導関数を求めてICG DZ’信号を生成することができる。導関数を実行する前に、ICG DZ信号は複数の心周期にわたって平均化することができる。あるいは、ICG DZ信号は、導関数を実行する前に平均化されなくてもよい。この場合、ICG DZ’信号を、複数の心周期にわたって平均化し、平均化されたICG DZ’信号を生成することができる。
【0046】
1130では、分析装置は、図5乃至図11に関して説明したように、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有するかを判定する。5−11. 分析装置は、ICG DZ’信号又は平均化ICG DZ’信号を使用して、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有しているかを判定することができる。分析装置は、ピーク検出手法を使用して、血流流量の変動のレートが収縮期において2つのピークを有するかを判定することができる。
【0047】
1140では、2つのピークが1130で検出された場合、分析装置は、2つのピークのうちの少なくとも1つに基づいて時点を求める。例えば、分析装置は、2つのピーク間の最低点の時点を求め、次いで、第1のピークから最低点までの時間を求めることができる。更に、分析装置は、第1のピークから第2のピークまでの時間、及び最低点から第2のピークまでの時間等を求めることができる。分析装置は、時間を求めるうえでICG DZ’信号又は平均化されたICG DZ’信号を使用することができる。分析装置は、時間を自動的に求めることができるか、又は、手作業の操作者の入力に依存して時間を求めることができる。通常、分析装置は、自動的に時間を求め、求められた時間を操作者が手作業で調節することを可能にする。例えば、分析装置は、自動的に、第1のピークと最低点との間の時間を求め、ICG DZ’信号(又は平均化信号)をグラフィック表示し、(例えば、第1のピーク及び最低点において垂直方向の線を表示することにより、)第1のピーク及び最低点の時間の表示をグラフィカル・ディスプレイ上に表示し、算出された時間を表示することができる。更に、分析装置は、(例えば、ドラッグアンドドロップ・カーソル処理により、)第1のピーク、最低点等の時間を調節する操作者入力を受け取ることができる。分析装置は次いで、第1のピーク、最低点等の操作者調節時間に基づいて、新たな時間を再算出し、表示することができる。
【0048】
1150では、分析装置は、求められた時間を、予め定義されるか、予め求められ得る時間等の時間の閾値と比較する。例えば、時間は、約40ミリ秒、45ミリ秒、50ミリ秒、60ミリ秒等と比較することができる。この比較は、図12に関して以下に更に詳細に説明し(、かつ図5乃至10に関して前述し)たように扱われる。
【0049】
図12は、心室間非同期及び心室内非同期を分析し、治療する例証的な方法1200のフロー図である。図12に示すように、1210では、分析装置又は従事者は、血液流量の変動のレートが、被験者の収縮期において2つのピークを有するかを判定する。従事者は、上記判定を行ううえで分析装置を使用することができる。2つのピークが存在していない場合、被験者は非同期を有していないことがあり得るので、従事者はペースメーカを植え込まないことがあり得る。2つのピークが存在している場合、方法は1220に進む。
【0050】
1220では、分析装置及び/従事者は、図11の1140に関して説明したように、ピークのうちの少なくとも1つに基づいて時間を求める。1230では、分析装置及び/又は従事者は、図11の1150に関して説明したように、上記時間を閾値と比較する。
【0051】
1240では、求められた時間が閾値よりも大きい場合、上記従事者又は他の従事者は、被験者が非同期を有している可能性が高いのでペースメーカを植え込む。しかし、求められた時間が閾値よりも少ない場合、上記従事者又は他の従事者は、被験者が非同期を有しない可能性が高いので、ペースメーカを植え込まない。
【0052】
1250では、ペースメーカの植え込み後、分析装置又は従事者は、例えば、1220に関して説明したものと同じ手法を使用して、新たな時間を求める。上記時間が閾値(例えば、約25ミリ秒、30ミリ秒、35ミリ秒、40ミリ秒)よりも少ない場合、上記従事者又は他の従事者は、植え込んだペースメーカに対して、いかなる調節も行わないことがあり得る。
【0053】
1260では、新たな時間が閾値よりも大きい場合、上記従事者又は他の従事者は、植え込まれたペースメーカに調節を行って、1250で求められた時間を低減させることができる。1250及び1260は、1250で求められた時間が、閾値未満であるか、又は最大数の調節が行われるまで反復繰り返しを行うことができる。例えば、ペースメーカの植え込み中、従事者は、ペースメーカ・プローブ(例えば、右心房プローブ、右心室プローブ、左心室プローブ)の位置を調節し、次いで、25ミリ秒未満に時間が減少したかを判定することができる。時間が25ミリ秒未満まで減少していない場合、従事者は、ペースメーカのプローブの位置に別の調節を行うことができる。一般に、調節を行う目標は、求められる時間(例えば、第1のピークS1と最低点Sとの間の時間又は位相遅延)を、約20ミリ秒と約30ミリ秒との間に調節するというものである。これは、一般に、正常な生理学的非同期とみなされる。ペースメーカを植え込んだ後、従事者は、ペースメーカ・プローブの刺激遅延(例えば、AV遅延、DV遅延)を調節し、25ミリ秒未満に時間が減少したかを判定することができる。時間が25ミリ秒未満まで減少していない場合、従事者は、ペースメーカのプローブの位置に別の調節を行うことができる。一般に、調節を行ううえでの目標は、2つのピーク間の時間を約20ミリ秒と約25ミリ秒との間のどこかに調節するというものである。これは通常、正常な生理学的非同期とみなされる。
【0054】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の種々の実現形態は、ディジタル回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向集積回路)、コンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組合せで実現することができる。前述の種々の実現形態は、記憶システム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置との間でデータ及び命令を送受信するよう結合された、特定目的用又は汎用目的用の少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能であり、かつ/又は解釈可能である1つ又は複数のコンピュータ・プログラムにおける実現形態を含み得る。
【0055】
前述のコンピュータ・プログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション又はコードとしても知られている)は、プログラム可能なプロセッサ用マシン命令を含み、高位手続型及び/若しくはオブジェクト指向型プログラミング言語、並びに/又はアセンブリ/マシン言語で実現することができる。本明細書及び特許請求の範囲使用の語「情報担体」は、マシン読み取り可能な信号及びマシン読み取り可能な伝搬信号としてマシン命令を受け取るマシン読み取り可能な媒体を含む、プログラム可能なプロセッサにマシン命令及び/又はデータを供給するために使用される何れかのコンピュータ・プログラム、装置及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラム可能な論理装置(PLD))を含む「マシン読み取り可能な媒体」を含む。「マシン読み取り可能な信号」の語は、プログラム可能なプロセッサにマシン命令及び/又はデータを供給するために使用される何れかの信号を表す。
【0056】
ユーザと対話することができるためには、本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、ユーザに向けて情報を表示する、表示装置(例えば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ))を有するディスプレイ装置、並びに、ユーザがコンピュータに入力を供給することができるキーボード及びポインティング装置(例えば、マウスやトラックボール)を有するコンピュータ上で実現することができる。他の種類の装置を使用して、ユーザとの対話ができるようにもしている。例えば、ユーザに与えられるフィードバックは、何れかの形式の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバックや触覚フィードバック)であり得、ユーザからの入力は何れかの形式(音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む)で受け取ることができる。
【0057】
本明細書及び特許請求の範囲記載の主題は、バックエンド構成部分を(例えば、データ・サーバ)として含むか、ミドルウェア構成部分(例えば、アプリケーション・サーバ)を含むか、又は、フロントエンド構成部分、若しくは、前述のバックエンド構成部分、ミドルウェア構成部分、あるいはフロントエンド構成部分(例えば、本明細書及び特許請求の範囲記載の主題の実現形態とユーザが対話できるウェブ・ブラウザ又はグラフィカル・ユーザ・インタフェースを有するクライアント・コンピュータ)の何れかの組合せを含むコンピュータ・システムにおいて実現することができる。システムの構成部分は、ディジタル・データ通信の何れかの形態又は媒体(例えば、通信ネットワーク)により、相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)、ワイド・エリア・ネットワーク、及びインターネットを含む。
【0058】
コンピュータ・システムはクライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは一般に、互いに離れた所にあり、通常、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアントサーバ関係を有するコンピュータ・プログラムによって生じる。
【0059】
いくつかの変形を上記に詳細に説明したが、他の修正も考えられる。例えば、添付図面に表し、本明細書及び特許請求の範囲に記載した論理フローには、所望の結果を達成するうえで、示した特定の順序、又は順番は要求されていない。他の実施例も、特許請求の範囲記載の範囲内にあり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る工程と、
血流流量の変動のレートを前記バイオインピーダンス情報に基づいて求める工程と、
前記血流流量の変動のレートが、前記被験者の収縮期の間に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、
前記血流流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを含んでいる場合、前記2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程と、
前記求められた時間を閾値時間と比較する工程とを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、バイオインピーダンス情報を受け取る工程は、インピーダンス・カージオグラフ信号と、血液量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号と、血液流量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号と、血液流量の変動のレートを表すインピーダンス・カージオグラフ信号とのうちの少なくとも1つを受け取る工程を含む方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートを前記バイオインピーダンス情報に基づいて求める工程は、血液流量の変動のレートを表すインピーダンス・カージオグラフ信号を受け取る工程、及び、血液流量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号を受け取り、血液流量を表す前記インピーダンス・カージオグラフ信号の導関数を得る工程の少なくとも一方を含む方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートを求める工程は、複数の心周期にわたって血液流量の変動のレートを平均化する工程を含む方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを有しているかを判定する工程は、前記血液流量の変動のレートが前記被験者の前記収縮期の間に少なくとも2つのピークを含むかを自動的に判定する工程を含む方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、
前記2つのピーク間の最低点を求める工程と、
前記第1のピークと前記最低点との間の時間を求める工程とを含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、前記第1のピークと前記最低点との間の時間を求める工程を含む方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、
前記第1のピークと前記最低点との間の時間を自動的に求める工程と、
前記第1のピーク時間及び前記最低点のうちの少なくとも一方の時間を調節する入力装置からの入力を受け取る工程と、
前記受け取られた入力に基づいて前記第1のピーク時間及び前記最低点の少なくとも一方の時間を調節する工程と、
前記時間調節に基づいて前記第1のピーク時間と前記最低点との間の新たな時間差を求める工程とを含む方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間を閾値時間と比較する工程は、前記求められた時間を40ミリ秒に調節する工程を含む方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間を閾値時間と比較する工程は、前記求められた時間を、25ミリ秒と60ミリ秒との間の閾値に調節する工程を含む方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間が前記閾値時間よりも大きい場合、非同期を示す工程を更に含む方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、血液流量の変動のレートを求める工程は、
前記被験者が直立位置及び逆立位置の少なくとも一方にある状態で、血液流量の変動のレートを求める工程を含む方法。
【請求項13】
コンピュータ・プログラムであって、請求項1乃至12のうちの何れか一項に記載の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータ・プログラム。
【請求項14】
心周期を有する被験者のカルジオグラフ測定値を使用する方法であって、前記心周期は収縮期を含み、前記方法は、前記被験者にペースメーカを植え込むことを決定することを支援することができ、前記方法は、請求項1乃至12のうちの何れか一項記載の方法に従う方法。
【請求項1】
方法であって、
被験者のバイオインピーダンス情報を受け取る工程と、
血流流量の変動のレートを前記バイオインピーダンス情報に基づいて求める工程と、
前記血流流量の変動のレートが、前記被験者の収縮期の間に少なくとも2つのピークを含んでいるかを判定する工程と、
前記血流流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを含んでいる場合、前記2つのピークの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程と、
前記求められた時間を閾値時間と比較する工程とを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、バイオインピーダンス情報を受け取る工程は、インピーダンス・カージオグラフ信号と、血液量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号と、血液流量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号と、血液流量の変動のレートを表すインピーダンス・カージオグラフ信号とのうちの少なくとも1つを受け取る工程を含む方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートを前記バイオインピーダンス情報に基づいて求める工程は、血液流量の変動のレートを表すインピーダンス・カージオグラフ信号を受け取る工程、及び、血液流量を表すインピーダンス・カージオグラフ信号を受け取り、血液流量を表す前記インピーダンス・カージオグラフ信号の導関数を得る工程の少なくとも一方を含む方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートを求める工程は、複数の心周期にわたって血液流量の変動のレートを平均化する工程を含む方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記血液流量の変動のレートが少なくとも2つのピークを有しているかを判定する工程は、前記血液流量の変動のレートが前記被験者の前記収縮期の間に少なくとも2つのピークを含むかを自動的に判定する工程を含む方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、
前記2つのピーク間の最低点を求める工程と、
前記第1のピークと前記最低点との間の時間を求める工程とを含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、前記第1のピークと前記最低点との間の時間を求める工程を含む方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法であって、前記2つのピークのうちの少なくとも一方に基づいて時間を求める工程は、
前記第1のピークと前記最低点との間の時間を自動的に求める工程と、
前記第1のピーク時間及び前記最低点のうちの少なくとも一方の時間を調節する入力装置からの入力を受け取る工程と、
前記受け取られた入力に基づいて前記第1のピーク時間及び前記最低点の少なくとも一方の時間を調節する工程と、
前記時間調節に基づいて前記第1のピーク時間と前記最低点との間の新たな時間差を求める工程とを含む方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間を閾値時間と比較する工程は、前記求められた時間を40ミリ秒に調節する工程を含む方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間を閾値時間と比較する工程は、前記求められた時間を、25ミリ秒と60ミリ秒との間の閾値に調節する工程を含む方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、前記求められた時間が前記閾値時間よりも大きい場合、非同期を示す工程を更に含む方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、血液流量の変動のレートを求める工程は、
前記被験者が直立位置及び逆立位置の少なくとも一方にある状態で、血液流量の変動のレートを求める工程を含む方法。
【請求項13】
コンピュータ・プログラムであって、請求項1乃至12のうちの何れか一項に記載の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータ・プログラム。
【請求項14】
心周期を有する被験者のカルジオグラフ測定値を使用する方法であって、前記心周期は収縮期を含み、前記方法は、前記被験者にペースメーカを植え込むことを決定することを支援することができ、前記方法は、請求項1乃至12のうちの何れか一項記載の方法に従う方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−539534(P2009−539534A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514933(P2009−514933)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002828
【国際公開番号】WO2007/144776
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508368633)
【出願人】(508368622)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002828
【国際公開番号】WO2007/144776
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508368633)
【出願人】(508368622)
【Fターム(参考)】
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