説明

カルノシン酸からカルノソールを製造する方法

カルノシン酸からカルノソールを生成するための触媒法が提示される。カルノシン酸は純粋形態、不純形態、植物抽出物の一部であってもよく、またはローズマリー針葉中に存在していてもよい。触媒は鉄、鉄塩、少量の水、ローズマリー針葉、またはその混合物であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の概要]
本発明は、触媒を使用して、ローズマリー抽出物、ローズマリー針葉、またはセージ抽出物中に存在してもよいカルノシン酸からカルノソールを生成する新しい方法に関する。
【0002】
[背景技術]
ローズマリー(Rosmarinus officialis)は、地中海領域を原産とする芳香性で常緑の針様の葉がある木質多年生草本である。これは一般に、地中海料理で使用されるハーブとして知られている。その乾燥形態は、鉄、カルシウム、およびビタミンB6を多く含む。それはまたポリフェノールであるカルノソールも含有し、それは抗酸化剤であり、最近NF−κB経路を抑制することで機能する抗発癌性物質として記述されている(Loら、2002年、Carcinogenesis 23(6):983〜991頁)。
【0003】
親油性ローズマリーまたはセージ抽出物は、およそ10〜30%のカルノシン酸を含有する。
【0004】
カルノソールをカルノシン酸から合成する方法は、Marreroら、2002年、J.Natural Products 65:986〜989頁によって公開された。カルノソールへの「定量的転化」について述べられており、カルノシン酸がアセトンに溶解されて分子酸素が溶液中に吹き込まれる。しかしこのスキームの多数の反復にもかかわらず、これは再現されず、実質的にカルノソールは形成されなかった。
【0005】
カルノシン酸を生物学的活性形態のカルノソールに転化する容易で効率的な方法があれば、特に抽出および転化が本質的に同一ステップであれば望ましいであろう。
【0006】
[発明の詳細な説明]
本発明に従って、触媒が存在するという条件で、酸化工程によってカルノシン酸がカルノソールに転化することができることが分かった。触媒は、触媒量の鉄または鉄塩、少量の水、ローズマリー針葉、またはそれらの混合物のいずれかであることができる。触媒の選択は、下でより詳細に提示されるその他の反応パラメーターに左右される。したがって本発明の一方法は、
a)カルノシン酸を少量の水、鉄、鉄塩、ローズマリー針葉、およびそれらの混合物からなる群から選択される触媒を含む溶媒に曝すステップと、
b)酸素を導入してカルノソールを生成するステップと
を含む。
【0007】
理論による拘束は望まないが、カルノシン酸の転化は、二段階で起きると考えられる。第1のステップは、キノンへの酸化と見なされ(これはまだ分光法によって実証されていないが)、カルノソールの転位がそれに続く。二つの段階は同時に起きてもまたはワンポット手順中で別個のステップとして起きてもよく、または別々の反応で起きてもよい。
【化1】



【0008】
また本発明に従って、酸または弱塩基の存在下で、中間体カルノシン酸キノンが転位されてカルノソールを生成できることが分かった。したがって本発明はまた、カルノシン酸キノンを酸または弱塩基に曝すステップを含む、カルノシン酸キノンからカルノソールを生成する方法も含む。
【0009】
反応によって生成されるカルノソール含有組成物もまた、本発明の実施態様を形成する。したがって本発明はまた、ここで述べられる方法のいずれかによって作られたカルノソール組成物、ならびにこれらのカルノソール含有組成物を含有する栄養補給食品および医薬品などの最終生成物も含む。
【0010】
この反応の出発原料は、カルノシン酸の任意の原料であってもよい。それは精製カルノシン酸それ自体、またはカルノシン酸を含有するローズマリー抽出物またはその他の植物抽出物(セージ、サルビア種(Salvia spp.)など)などの精製された形態でないカルノシン酸であってもよい。別の本発明の実施態様では、それはローズマリーの葉(針葉)であってもよい。
【0011】
[触媒]
[A.酸化触媒が鉄である]
本発明に従って、鉄、鉄塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される鉄触媒が酸化触媒として作用し、カルノシン酸を中間体キノンに転化することが分かった。鉄または鉄塩なしでは、カルノシン酸の中間体キノンへの酸化はかなり緩慢であり、乾燥溶媒中では測定が容易でない。
【0012】
鉄塩は、鉄塩のあらゆる一般に使用される形態(塩化鉄、臭化鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、乳酸鉄、硝酸鉄、水酸化鉄、および酸化鉄など)であってもよい。明細書および特許請求の範囲全体を通じて「鉄塩」という用語は、第二鉄塩および第一鉄塩、ならびにそれらの水和物の双方を含むことが意図される。
【0013】
溶媒が酸性であって鉄製容器内に保存される場合、溶媒は鉄を取り込み、この量は本発明の目的で通常十分である。必要な鉄/鉄塩の量はきわめて小さく、少なくとも約0.0001〜20モル%(カルノシン酸を基準にして)であり、少なくとも約0.01〜10モル%が好ましい量であり、少なくとも約0.1〜5モル%がより好ましい。当然ながら、より多量の鉄が存在してもよい。しかし多くの量に際だった利点は見られない。
【0014】
[B.酸化触媒が水である]
鉄触媒を使用しない方法では水を触媒として使用し、溶媒に添加して反応速度を上昇させることができる。水は、鉄または鉄塩不在下では、非プロトン溶媒中の反応速度を上昇させる。非極性および中程度に極性の溶媒(ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、およびSF−CO2など)中では、反応速度は無水溶媒中では多かれ少なかれ存在しない。水の量は使用される溶媒の量を基準として約0.1〜60%、好ましくは約2〜40%、およびより好ましくは約3〜30%であるべきである。水を反応混合物に添加することができ、または湿潤溶媒を使用できる。
【0015】
[C.酸化触媒がローズマリー針葉(葉)である]
別の本発明の実施態様では、ローズマリー針葉それ自体が、この抽出/転化工程中に触媒として機能する。経済上の理由から、ローズマリー針葉が好ましいことが多い。それらを生で使用する場合、反応に先だって追加的加工する必要がない。針葉中に存在する天然水(約75%)が反応を触媒するのに十分であるので、追加的な水を溶媒に添加する必要はない(当然ながら、必要に応じて追加的な水を添加してもよい)。しかし乾燥させたローズマリーの葉を使用する場合は、いくらかの水を溶媒に添加すべきである。
【0016】
ローズマリー針葉を用いる場合、非極性から中程度に極性の溶媒(ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびアセトンなど)を使用すると、またはSF CO2中では、反応速度が上昇することが分かった。塩基の添加は任意であるが、弱塩基の使用はキノンからカルノソールへのステップの速度上昇を助ける。好ましい弱塩基は炭酸水素Naまたは炭酸水素K、または酢酸Naまたは酢酸Kである。
【0017】
[溶媒]
[鉄触媒と併用される溶媒]
鉄触媒の存在下で使用できる溶媒は、その中にカルノシン酸が溶解でき、または少なくとも部分的に可溶性である実質的にあらゆる溶媒である。溶媒は次のものであってもよい。
エーテルR2OR2(式中、R2はC1〜C4であり、同一であるかまたは異なっていてもよい)などの中性溶媒、または
エステルR1−COOR2(式中、R1はH、またはC1〜C3であり、R2はC1〜C4である)(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、または
ケトン(アセトン、メチルエチルケトンまたはジエチルケトンなど)、または
ジクロロメタン、または
アルコールR1OH(式中、R1はC1〜C4である)(エタノール、またはイソプロパノールなど)、または
亜臨界または超臨界二酸化炭素「SF−CO2」、または
2〜4個の炭素原子を有する酸性溶媒(酢酸、プロピオン酸またはイソ酪酸など)、または
上記溶媒の任意の混合物。
【0018】
好ましい溶媒は、ジクロロメタン、SF−CO2、アセトン、酢酸エチルおよび酢酸、プロピノン酸およびイソ酪酸である。中性溶媒は、塩素化溶媒以外は非択的酸化があることから好ましさに劣る。特に意図されるカルノソールの用途が食品または医薬品である場合、最も好ましい溶媒は酢酸である。
【0019】
[鉄触媒なしで使用される溶媒]
鉄触媒不在下で使用できる溶媒は、その中にカルノシン酸が溶解でき、または少なくとも部分的に可溶性である実質的にあらゆる溶媒である。溶媒は次のものであってもよい。
2〜4個の炭素原子を有する酸性溶媒(酢酸、プロピオン酸またはイソ酪酸など)、
エーテルR2OR2(式中、R2はC1〜C4であり、同一であるかまたは異なっていてもよい)などの中性溶媒、またはエステルR1−COOR2(式中、R1はH、またはC1〜C3であり、R2はC1〜C4である)(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、またはケトン(アセトン、メチルエチルケトンまたはジエチルケトンなど)、またはジクロロメタン、またはアルコールR1OH(式中、R1はC1〜C4である)(エタノール、またはイソプロパノールなど)、または亜臨界または超臨界二酸化炭素「SF−CO2」、または
上記溶媒の任意の混合物。
【0020】
中性溶媒の場合、いくらかの水が存在すべきであり、さもなければ反応はほとんど起こらない。
【0021】
好ましい溶媒は、ジクロロメタン、SF−CO2、酢酸、プロピオン酸およびイソ酪酸であり、選択的酸化がカルノシン酸をカルノソールに転化する。特に意図されるカルノソールの用途が食品または医薬品である場合、最も好ましい溶媒は酢酸である。
【0022】
[触媒としてのローズマリー針葉(葉)と併用される溶媒(鉄なし)]
使用できる溶媒は、その中にカルノシン酸が溶解でき、または少なくとも部分的に可溶性である実質的にあらゆる溶媒である。溶媒は次のものであってもよい。
エーテルR2OR2(式中、R2はC1〜C4であり、同一であるかまたは異なっていてもよい)などの中性溶媒、または
エステルR1−COOR2(式中、R1はH、またはC1〜C3であり、R2はC1〜C4である)(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、または
ケトン(アセトン、メチルエチルケトンまたはジエチルケトンなど)、または
ジクロロメタン、または
アルコールR1OH(式中、R1はC1〜C4である)(エタノール、またはイソプロパノールなど)、または
亜臨界または超臨界二酸化炭素「SF−CO2」、または
2〜4個の炭素原子を有する酸性溶媒(酢酸、プロピオン酸またはイソ酪酸など)。
【0023】
好ましい溶媒は酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、およびSF−CO2である。
【0024】
[中間体キノンの転化のための触媒]
次に溶媒および触媒中のカルノシン酸は酸素と反応して、一実施態様では、塩基または酸どちらかの存在下で酸化反応が起きる。あるいは、酸化の後期に、または中間体キノンの形成後に、塩基または酸を添加できる。別の代案では、中間体を別々に形成して、次に酸または塩基で処理してカルノソールを形成できる。
【0025】
塩基または酸は、キノンであると推定される中間体の転化速度を上昇させると考えられる。
【0026】
この反応の目的で、塩基はあらゆる都合よい所望の量で存在することができる。触媒として塩基が選択される場合、一般に塩基は反応速度を上昇させ、すなわちより多くの塩基が存在するほどより速い転化が起きる。一般に塩基は、カルノシン酸の量を基準として0%〜400モル%の量で存在すべきである。好ましい範囲は10〜300モル%、より好ましくは80〜200モル%である。
【0027】
塩基の選択は、選択される溶媒によってもまた影響される。酸性溶媒条件(すなわちSF−CO2、酢酸、またはその他のR−COOH)では、強塩基および弱塩基の双方が同様の結果を生じる。酢酸などの酸性溶媒が使用される場合、原則として対応する酢酸塩を形成するあらゆる塩基が使用できる。したがって塩基は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウムまたはプロピオン酸カリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0028】
使用される溶媒が中性溶媒である場合(ジクロロメタン、または酢酸エチルなど)、NaHCO、KOAc、NaHPO、およびMg(OH)などの弱塩基が好ましい。
【0029】
好ましい塩基は、一般に炭酸水素Naもしくは炭酸水素Kまたは酢酸Naもしくは酢酸Kである。
【0030】
あるいは、酸が塩基と同じ目的を果たす。触媒として酸が選択される場合、実質的にあらゆる強酸が使用できる。硫酸、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、またはp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸などの鉱酸が好ましい。一般に酸は、カルノシン酸の量を基準として0%〜100モル%の量で存在すべきである。好ましい範囲はカルノシン酸の量を基準として約1〜40モル%、より好ましくは2〜20モル%である。
【0031】
低含水量の溶媒中では、転化触媒として酸の使用が好ましい。
【0032】
[触媒に関係なく使用される酸化剤]
酸素(純粋酸素または空気として)を酸化剤として使用してもよい。酸素分圧を上昇させることで反応速度が上昇する。約0.1〜約20バールの酸素分圧が好ましく、より好ましい範囲は約0.2〜10バールであり、なおもより好ましい範囲は約1〜10バールである。
【0033】
[触媒に関係ない温度]
一般により高い温度はより速い反応をもたらす。しかしより高温では反応の選択性が低くなる。好ましい温度範囲は約0〜100℃であり、より好ましい範囲は約10〜80℃であり、なおもより好ましい範囲は約20〜60℃である。
【0034】
[任意の結晶化ステップ]
上述のいずれの手順を使用するかどうかにかかわらず、反応生成物を結晶化ステップに供することで、得られる最終カルノソールの純度を高めることができる。結晶化は、あらゆる従来の手段を使用して達成されてもよく、ほとんどの用途において好ましい溶媒は酢酸である。いくつかの用途では、カルノソール含量が90%を超える結晶を生成できる。
【0035】
[最終生成物用途]
これらの記述されている反応の最終生成物はカルノソールを含有しながら、その他の反応副生成物もまた含有する。これらの組成物はカルノソールと、以下で「カルノソール加工組成物」と称されるその他の反応副生成物の双方を含有し、様々な用途のための食品および/または栄養補給食品の使用において、さらなる精製またはその他の処理なしに直接使用できる。
【0036】
「栄養補給食品」という用語は、ここでの用法では栄養および製薬の応用分野の双方における有用性を意味する。したがってカルノソール加工組成物を含有する新しい栄養補給食品組成物は、食品および飲料の栄養補給剤として、そしてカプセルまたは錠剤などの固形製剤、または溶液または懸濁液などの液剤であってもよい、経腸的または非経口用途のための医薬製剤として使用できる。
【0037】
本発明に係る栄養補給食品組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、バインダー、塗膜形成剤、封入剤/封入材、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着材、キャリア、充填材、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、味覚マスキング材、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、および抗菌剤をさらに含有してもよい。
【0038】
さらに本発明の栄養補給食品組成物にマルチビタミン剤およびミネラル補給剤を添加して、食生活によっては欠けている適量の必須栄養素を得てもよい。マルチビタミン剤およびミネラル補給剤はまた、疾患予防と、生活習慣パターンに起因する栄養損失および欠乏症からの保護のためにも有用である。
【0039】
本発明に係る栄養補給食品組成物は、例えば食品または飼料(のための添加剤/栄養補給剤)、食品または飼料プレミックス、強化食品または飼料、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣丸、カプセル、および粉末および錠剤などの発泡性調合物などの固形形態の、または例えば飲料、ペースト、および油性懸濁液などの溶液、エマルジョンまたは懸濁液などの液体形態の、特に経口投与に標準的なあらゆる形態である、身体に投与するのに適したあらゆるガレヌス製剤形態であってもよい。ペーストは硬質または軟質シェルカプセルに組み込まれてもよく、カプセルは例えば(魚、ブタ、家禽、ウシ)ゼラチン、植物タンパク質またはリグニンスルホネートのマトリックスを特徴とする。その他の応用形態の例は、経皮、非経口または注射投与のためのものである。食餌および医薬組成物は、制御(遅延)放出製剤の形態であってもよい。
【0040】
飼料はペット動物、家畜、毛皮産業で使用される動物、および水産養殖動物に与えられるあらゆる飼料を包含する。それはまた、ペット動物(例えばイヌおよびネコ)に与えられるおやつも包含する。
【0041】
食品および酪農製品の例としては、例えばマーガリン、スプレッド、バター、チーズ、ヨーグルトまたは乳飲料が挙げられる。強化食品の例は、シリアルバー、およびケーキやクッキーなどのベーカリー製品である。飲料は、非アルコールおよびアルコール飲料、ならびに飲用水および液体食品に添加するための液体調製品を包含する。非アルコール飲料は、例えば清涼飲料、スポーツドリンク、果汁、レモネード、茶、およびミルクベースの飲料である。液体食品は、例えばスープおよび酪農製品である。カルノソール加工組成物を含有する栄養補給食品組成物は、成人が約10〜1000mgの1日量、好ましくは約50〜750mgの1日量、またはより好ましくは約100〜500mgの1日量のカルノソールを摂取するように、清涼飲料、エネルギーバー、またはキャンディに添加されてもよい。
【0042】
栄養補給食品組成物が医薬製剤であれば、組成物は薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤またはアジュバントをさらに含有する。それらの調合のために、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第20版、Williams & Wilkins,PA,USAで開示されるような標準技術を使用してもよい。経口投与のためには、好ましくは錠剤およびカプセルが使用され、それは例えばゼラチンまたはポリビニルピロリドンなどの適切な結合剤、例えば乳糖またはデンプンなどの適切な充填材、例えばステアリン酸マグネシウムなどの適切な潤滑剤、および任意にさらなる添加剤を含有する。
【0043】
栄養補給食品は、その抗炎症特性のため、精神または気分を維持または改善するため、関節健康のためなど、様々な病状を維持または改善するために使用できる。
【0044】
本発明をより良く例示するために、以下の限定を意図しない例を提示する。
【0045】
[実施例1]
[対照実験]
常温、酸素雰囲気内において10mlの反応容器内で、30mlアセトン中の0.132gカルノシン酸溶液(含量=90%カルノシン酸、2%カルノソール)を23時間撹拌した。これらは本質的にJ.G.Marrero,L.S.Andres,J.G.Luis;J.Nat.Prod.(2002年),65,986〜989頁で述べられている条件である。溶液は88%のカルノシン酸、およびわずか3%のカルノソールを含有した。
【0046】
[実施例2]
[ローズマリー抽出物と併用される触媒としての鉄]
[無固形分ローズマリー抽出物の調製]
320ml酢酸エチル中で102gローズマリー抽出物「Naturex CS」を撹拌し、濾過して不溶性物質を除去した。濾液を蒸発させ乾燥させた。残留物(34.3g)は、47%カルノシン酸および7.5%カルノソール[重量%]を含有した。
【0047】
上の無固形分ローズマリー抽出物の34g(56mmole)を280ml酢酸および5.7g炭酸水素ナトリウム、および50ml水中の15mg塩化鉄六水和物に添加した。これを500mlの反応容器に入れた。混合物を常温、酸素雰囲気内で4日間撹拌した。カルノソールのスラリーを濾過して真空中で乾燥させた。純度=92%の12.5gカルノソール。収率=63%[モル%]
【0048】
[実施例3]
[カルノシン酸と併用される触媒としての鉄]
酸素雰囲気内において10ml反応容器内で、2.5ml酢酸中の0.10gカルノシン酸(含量=90%カルノシン酸、2%カルノソール)溶液、0.5ml水、および34mg炭酸水素ナトリウムに、酢酸中の0.01mol/lの三塩化鉄溶液を添加した(下の表1に示すように)。容器内の混合物を常温、酸素雰囲気内で1時間撹拌した。溶液を転化率について分析した。
【0049】
【表1】



【0050】
[実施例4]
[ローズマリー抽出物(SF−CO2)と併用される触媒としての水]
[無固形分のローズマリー抽出物の調製]
Naturex(d’Agroparc−BP1218−84911 Avignon cedex 9)から市販される9.6gローズマリー抽出物「Naturex CS」を30ml酢酸エチル中で撹拌し、濾過して不溶性物質を除去した。濾液を蒸発させ乾燥させた。残留物(3.2g)は、47%カルノシン酸および7.5%カルノソール[重量%]を含有した。
【0051】
25mlのステンレス鋼オートクレーブ内で、3.2g無固形分ローズマリー抽出物(上記)および1ml水中の57mg炭酸水素ナトリウム溶液を混合した。しっかり閉じたオートクレーブを酸素で10バールに加圧し、続いて常温で二酸化炭素を充填して95バールにした。オートクレーブ内の混合物を60℃に加熱し(圧力は160バールに上昇した)、振盪機(Lab Shaker;LSR/L−V;Adolf Kuehner AG)上で振動数240で48時間振盪した。混合物を20℃に冷却して圧力を除去した。固形残留物が酢酸から結晶化し、含量93%のカルノソール結晶1.23gを生じた。単離されたカルノソールの収率=65%[モル%]。
【0052】
[実施例5]
[カルノシン酸と併用される触媒としての水]
酸素雰囲気内において、10mlの反応容器内に、0.10gカルノシン酸(含量=90%)、2.5ml酢酸、および0.5ml水中の17mg酢酸ナトリウム溶液を入れた。ほとんどのカルノシン酸がカルノソールに転化されるまで、容器内の混合物を常温、酸素雰囲気内で6日間撹拌した。カルノソール含量について溶液を分析した。収率=68%[モル%]が得られた。
【0053】
[実施例6]
[水と併用される溶媒]
水を用いたカルノシン酸からカルノソールへの反応において、様々な溶媒を評価した。0.30gローズマリー抽出物(先の実施例に従って得られた)、8.8ml溶媒、1.8ml水、および30mg炭酸水素ナトリウムを周囲温度、1バール空気内で数日間反応させた(酸素分圧は0.2バールであった)。[a%]はHPLCから判定された面積%。
【0054】
結果を下の表に提示する。
【0055】
【表2】



【0056】
[実施例7]
[塩基の添加]
実施例4で述べられているのと同様にして、次を調製した。
【0057】
【表3】



【0058】
[実施例8]
[触媒としての鉄塩および強酸]
常温、酸素雰囲気内において、25mlの反応容器内に、0.10gカルノシン酸(含量=90%)、3ml酢酸、27μl酢酸中の0.001モル濃度FeCl溶液、および81μl酢酸中の0.033モル濃度p−トルエンスルホン酸溶液を入れた。ほとんどのカルノシン酸がカルノソールに転化されるまで、容器内の混合物を常温、酸素雰囲気内で30時間撹拌した。カルノソール含量について溶液を分析した。収率=88%[モル%]が得られた。
【0059】
[実施例9]
[ローズマリー針葉/抽出物]
25mlのステンレス鋼オートクレーブ内に、次を充填した。100mgローズマリー抽出物(含量=19%カルノシン酸、1.4%カルノソール[重量%])、および各種量の水(表2に示す)、各種量の生のローズマリー針葉(含量=10mgカルノシン酸、<1mgカルノソール)(表2に示す)。
【0060】
しっかり閉じたオートクレーブを酸素で10バールに加圧し、続いて常温で二酸化炭素を充填して95バールにした。オートクレーブ内の混合物を40℃に加熱し、振盪機(Lab Shaker;LSR/L−V;Adolf Kuehner AG)上で振動数240で15時間振盪した。混合物を20℃に冷却して圧力を除去した。残留物をメタノールで抽出し、固形物を濾過して除去し、濾液を真空中で乾燥させた。この残留物をカルノシン酸およびカルノソール含量[重量%]について分析した。
【0061】
【表4】



【0062】
[実施例10]
[ローズマリー針葉]
10mlの反応器内で次を混合した。1gの生のローズマリー針葉(含量=10mgカルノシン酸、<1mgカルノソール[w%])、および2.5mlの酢酸エチル、および0.3mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液。反応器内の混合物を常温、空気雰囲気内で3日間撹拌した。固形物を濾過して除去し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を真空内で蒸発させて、14.4%のカルノソールおよび0.5%未満のカルノシン酸含量[重量%]の71mgの残留物を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルノシン酸キノンを酸または塩基触媒に曝すステップを含む、カルノシン酸キノンからカルノソールを製造する方法。
【請求項2】
カルノシン酸を少量の水、鉄、鉄塩、ローズマリー針葉、およびそれらの混合物からなる群から選択される触媒を含む溶媒に曝すステップを含む、カルノシン酸からカルノシン酸キノンを生成する方法。
【請求項3】
a)カルノシン酸を少量の水、鉄、鉄塩、ローズマリー針葉、およびそれらの混合物からなる群から選択される触媒を含む溶媒に曝すステップと、
b)酸素を導入してカルノソールを生成するステップと
を含む、カルノシン酸をカルノソールに転化する方法。
【請求項4】
カルノシン酸が植物抽出物中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酸素が塩基または酸の存在下で導入される、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸素が導入された後に塩基または酸が添加される、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項7】
酸素が空気中にある、請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
触媒が鉄または鉄塩である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
鉄塩が、塩化鉄、臭化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、プロピオン酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、乳酸鉄、酸化鉄、水酸化鉄の第二鉄塩および第一鉄塩、それらの水和物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒が少量の水である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項11】
カルノシン酸がローズマリー針葉中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
触媒がローズマリー針葉である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項13】
溶媒が、2〜4個の炭素原子を有する酸性溶媒、エーテルR2OR2(式中、R2はC1〜C4であり、同一であるかまたは異なっていてもよい)などの中性溶媒、またはエステルR1−COOR2(式中、R1はHまたはC1〜C3であり、R2はC1〜C4である)(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、またはケトン(アセトン、メチルエチルケトンまたはジエチルケトンなど)、またはジクロロメタン、またはアルコールR1OH(式中、R1はC1〜C4である)(エタノール、またはイソプロパノールなど)、または亜臨界または超臨界二酸化炭素「SF−CO2」、または上記溶媒の任意の混合物からなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項14】
溶媒が、2〜4個の炭素原子を有する酸性溶媒またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項15】
塩基が、カルノシン酸の量を基準として0%〜400モル%、好ましくは約10〜300モル%、およびより好ましくは80〜200モル%の量で存在する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項16】
酸が、カルノシン酸の量を基準として0%〜100モル%、好ましくは約0.2〜40モル%、およびより好ましくは2〜20モル%の量で存在する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項17】
酸が強鉱酸またはスルホン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、およびp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
酸が、酸素が導入された後に添加される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
溶媒が、酢酸およびSF−CO2からなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項21】
ローズマリー針葉が生である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項22】
ローズマリー針葉が乾燥しており水が溶媒に添加される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項23】
カルノソールを結晶化するステップをさらに含む、請求項3〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項3〜23のいずれか一項によって作製されるカルノソール組成物。
【請求項25】
食品、飼料、医薬組成物または栄養補給食品組成物である、請求項24に記載のカルノソール組成物。
【請求項26】
栄養補助食品、食品、飲料からなる群から選択される、請求項25に記載の栄養補給食品。
【請求項27】
薬剤の製造における、請求項26に記載のカルノソール加工組成物の使用。
【請求項28】
抗炎症条件、認知機能または関節健康を維持または改善するための薬剤または栄養補給食品の製造における、請求項24に記載のカルノソール加工組成物の使用。

【公表番号】特表2011−501749(P2011−501749A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529263(P2010−529263)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008289
【国際公開番号】WO2009/052924
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】