説明

カルバメート透明塗装上のフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を達成する方法

その透明塗装がカルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有する、下塗/透明塗装仕上げ上にフロントガラス用シーラントを直接付着させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下塗/透明塗装仕上げ上にフロントガラス用シーラントの接着性を達成する方法に関し、その透明塗装はカルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有する。特に、本発明は、自動車またはトラックの組み立て作業中に、カルバメート透明塗装上にフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車または他の車両上の仕上げ塗装の美的な質を保護および保持するため、環境または天候に長期間さらされた場合でさえ、下塗が影響を受けないでいるように、有色(着色)下塗上にクリア(無着色、またはわずかに着色されている)トップコートを施すことが一般に知られている。これは、下塗/透明塗装仕上げと呼ばれる。硬化するとコーティングにおいて望ましい第三ウレタン結合が形成することから、メラミン架橋剤と共にカルバメートポリマーによって、向上した耐薬品性または耐腐食性を有するコーティングが提供されることも一般に知られている。コーティングに使用されるカルバメートポリマーを開示している先行特許の例としては、米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)が挙げられる。
【0003】
カルバメート仕上げ塗装の製品化は、いくつかの重要または決定的な技術的障害によって妨げられている。例えば、実用化されている仕上げ塗装は、要求条件の中でも、米国特許公報(特許文献3)に記載の接着剤などのイソシアネート基を含有する一般に湿分硬化接着剤であるフロントガラス用シーラントまたは接着剤に対して十分な接着性を持っていなければならない。
【0004】
一般に、既に塗装されている車体にフロントガラスを取り付ける場合には、シーラント材を使用して、フロントガラスを車体に取り付ける。しかしながら、市販のフロントガラス用接着剤の多くは、カルバメート基を含有する透明塗装にうまく接着しない。フロントガラス用シーラントが、カルバメート含有透明塗装への接着に失敗する問題の1つの解決策は、接着剤がどこに塗布されたとしても、ウレタンプライマーで透明塗装を下塗りすることである。有効であるが、この方法は、車体にフロントガラスを接着するプロセスに更なる工程が追加される。その問題のもう1つの解決策は、コーティングに加水分解性シラン添加剤を添加して、硬化透明塗装の表面上の活性シラン基と、湿分硬化フロントガラス用シーラント中の活性シラン基との架橋を可能にし、フロントガラス用シーラントの接着性を得ることである。しかしながら、より良い外観のために市販の下塗において現在一般に使用されている、フェニル酸ホスフェートなどの弱酸触媒は、下塗から透明塗装に拡散または移動する傾向があり、透明塗装におけるシランの活性を破壊する傾向がある。
【0005】
このように、下塗/カルバメート透明塗装仕上げ上のフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を得るため、高光沢、DOI(像の明瞭さ(distinctness of image))および低いオレンジピール、耐腐食性、耐引っかき性および表面損傷抵抗、ライン中での、またはラインの終わりでの更なる修復コーティングに対する接着性、および低VOC(揮発性有機化合物含有率)排出基準などの今日の性能条件も満たすために、絶えず努力がなされている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,451,930号明細書
【特許文献2】米国特許第6,239,212号明細書
【特許文献3】米国特許第5,852,137号明細書
【特許文献4】国際公開第00/55229号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4,147,688号明細書
【特許文献6】米国特許第4,180,489号明細書
【特許文献7】米国特許第4,075,141号明細書
【特許文献8】米国特許第4,415,681号明細書
【特許文献9】米国特許第4,591,533号明細書
【特許文献10】米国特許第5,747,590号明細書
【特許文献11】米国特許第5,102,961号明細書
【非特許文献1】Barrett,DISPERSION POLYMERIZATION IN ORGANIC MEDIA(John Wiley 1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両組立て工場での従来のフロントガラス取り付け作業において、フロントガラスは、下塗/透明塗装仕上げで既に塗装されている車体に取り付けられる。このプロセス中、湿分硬化シーラント材のビーズ(bead)が、既に硬化されている下塗/透明塗装仕上げ上にフロントガラスフレームに沿って適用される。フロントガラス用シーラントは、下塗/透明塗装仕上げに付着し、適所で効果的にフロントガラスを保持し、現在の自動車安全基準(MVSS)および規制を満たすと期待される。
【0008】
耐腐食性カルバメート透明塗装組成物の開発中に、本出願人は、従来のフロントガラス接合用接着剤が硬化透明塗装に対して不十分または不適切な接着性を示すことを見出した。この不十分な接着性は、下塗中の弱酸触媒が透明塗装に移動し、その中の活性シラン基を不活性化する現象が原因であると考えられる。したがって、かかる移動は、プライマーレスMVSS接着性とも呼ばれる、フロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性として知られるものに対して有害作用を及ぼすと思われる。本出願人は、下塗に強酸硬化触媒を含ませることによって、フロントガラス用プライマーレス・シーラントのこの問題を解決することができた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許請求される方法は、下塗/透明塗装仕上げ上にフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を達成する方法であって、その元の透明塗装が硬化カルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有し、かつ活性シラン基も含む方法に関する。その方法は、
(a)エポキシまたはエポキシ−イソシアネートポリマーブロック化スルホン酸硬化触媒を含む下塗組成物を基材に塗布する工程;
(b)カルバメート材料および活性シラン基を含有する透明塗装組成物を塗布する工程;
(c)下塗/透明塗装仕上げを実質的に、または完全に硬化させる工程;
(d)実質的に、または完全に硬化した下塗/透明塗装仕上げに、活性シラン基を含有するフロントガラス用シーラントを直接塗布する工程;
を含む。
【0010】
「実質的に硬化した(硬化された)」または「部分的に硬化させた(硬化された)」という表現は、少なくともいくらかの硬化は起こるが、時間が経つにつれてさらに硬化が起こることを意味する。透明塗装組成物は適切には、結合剤約50〜75重量%を含む。結合剤は、カルバメートポリマーまたはオリゴマー約10〜83重量%、好ましくは20〜65重量%、メラミン15〜45重量%、好ましくは30〜40重量%、シランオリゴマーまたはポリマー2〜45重量%、好ましくは5〜40重量%を含む。好ましくはシランポリマーはモノマーの混合物の重合生成物であり、該モノマー混合物が約5〜90重量%、好ましくは30〜70重量%のシラン官能基を含有するエチレン性不飽和モノマー及び約10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%のシラン非含有エチレン性不飽和モノマーを含み、シラン非含有エチレン性不飽和モノマーのうち、前記シランポリマーの約50重量%までのモノマーがヒドロキシル官能基を含有し得る。
【0011】
特許請求される本発明はさらに、本発明の方法において使用可能な下塗組成物、および本発明に従って製造される複合コーティングを有するコーティングされた基材を含む。
【0012】
本発明に従って製造される複合コーティング、特に下塗/透明塗装仕上げは硬化され、市販のフロントガラス用シーラントでコーティングされ、その上に適用されるシーラント材に対して優れた接着性を有する。
【0013】
本発明は、下塗において特定の強酸硬化触媒を使用することによって、フロントガラス接合用接着剤に対する硬化透明塗装フィルムの接着性が改善されるという発見に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
別段の指定がない限り、本明細書で使用される「活性シラン基」という用語は、式―Si(R)X3−nの加水分解性シリル基を含有する材料を意味し、この基は、ケイ素−炭素結合によってシリル含有材料に結合され、上記式中:nは、0、1または2であり;Rは、オキシシリルまたは非置換ヒドロカルビルまたはO、N、S、P、Siの群から選択されるメンバーを含有する少なくとも1つの置換基で置換されたヒドロカルビルであり;Xは、C〜Cアルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜Cアシルオキシ、水素、ハロゲン、アミン、アミド、イミダゾール、オキサゾリジノン、尿素、カルバメート、およびヒドロキシルアミンの群から選択される加水分解性部位である。本明細書で使用される「カルバメートオリゴマーまたはポリマー」という用語は、反応性ウレタン基を含有するウレタンオリゴマーまたはポリマーもまた意味する。
【0015】
本発明は、自動車およびトラックの車体およびその部品の外面の仕上げ塗装に有用な複合下塗/透明塗装コーティングに関する。さらに詳しくは、本発明は、その透明塗装組成物がカルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有する、下塗/透明塗装仕上げを提供し、塗布して、少なくとも部分的に硬化した後に、複合コーティングはフロントガラス用シーラントに対して優れた接着性を示す。さらに詳しくは、本発明は、硬化した、または少なくとも部分的に硬化したカルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有する透明塗装を有する仕上げ塗装上に市販のフロントガラス用シーラントを適用した場合に、フロントガラス用シーラントの接着性を得る方法を提供する。この方法は、車両組立て工場で最初の製造時に自動車およびトラックなどの車両に対してプライマーレスのフロントガラス接着能力を実現するのに特に有用である。
【0016】
一般に、車体などの自動車の基材は最初に、無機錆止め亜鉛またはリン酸鉄層でコーティングされ、その上には、電着塗装プライマーであり得るプライマーが施される。一般的な電着塗装プライマーは、陰極電着エポキシ変性樹脂を含む。任意に、プライマーサーフェーサーをプライマーコーティングの上に適用し、より良い外観および/またはプライマーコートに対する下塗の向上した接着性が得られる。着色下塗又はカラーコートが次に塗布される。一般的な下塗は、メタリック仕上げの場合には金属フレークを含む顔料と、ポリエステルまたはアクリロウレタン塗膜形成結合剤と、を含む。
【0017】
次いで、クリアトップコート(透明塗装)が着色下塗(カラーコート)に塗布される。カラーコートおよび透明塗装はそれぞれ、厚さ約0.1〜2.5ミルおよび1.0〜3.0ミルを有するように形成することが好ましい。本発明において、透明塗装は、カルバメートオリゴマーまたはポリマーを含有する。
【0018】
上記で示されるように、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公報(特許文献3)に開示されている接着剤などのフロントガラス用接着剤を、下塗/透明塗装仕上げ上に接着させるために、エポキシまたはエポキシ−イソシアネートブロック強酸硬化触媒を含有するように下塗が配合される。複数のかかる硬化触媒、またはかかる硬化触媒の混合物を用いることができる。かかる強酸触媒を使用することにより、その活性基を使用して所望のフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性が得られる、透明塗装における活性シラン基の活性の破壊が起こらないように、透明塗装仕上げへのその移動または拡散が有効に予防されると考えられる。この種類の触媒を下塗に添加することによって、非常に費用が高くつくであろう、透明塗装中のシランレベルを増加する必要が避けられる。
【0019】
さらに、透明塗装の全体的な外観は驚くべきことに、下塗に強酸触媒を含ませることによって悪影響を受けない。これは、本明細書において使用される強酸触媒が、強酸を放出して下塗の結合剤システムを触媒するために、現在高い硬化温度(つまり、120℃以上)を必要とするポリマー化合物で有効にブロック化されるからである。高い脱ブロック化温度の性質によって、下塗の全体的に遅い硬化速度に対して、その触媒はむしろ弱酸触媒のように挙動する。したがって、フェニル酸ホスフェートなどの弱酸触媒の代わりに上述の種類の触媒を使用しても、下塗と透明塗装の硬化のバランスは変化しないだろう。結果として、透明塗装の全体的に良い外観(光沢およびDOIおよび低いオレンジピール)が保たれる。
【0020】
上述のように、本発明の下塗組成物は、透明塗装中のシランの活性を破壊する、フェニル酸ホスフェートなどの非ブロックアルキルまたはアリール酸ホスフェートを含有しない。しかしながら、代替の実施形態では、透明塗装のプライマーレスMVSS接着性を破壊することなく、フェニル酸ホスフェートなどのエポキシまたはエポキシ−イソシアネートポリマーブロック化弱酸を使用することができる。それでもなお、少量のアルキル酸ホスフェートが初期に放出され、透明塗装中に移動して、この実施形態におけるシラン活性を破壊する可能性は常にある。このように、本出願は主に、下塗におけるエポキシまたはエポキシ−イソシアネートポリマーブロック化強酸触媒の使用に焦点を当てている。かかる強酸は、シランの縮合架橋反応にあまり有効ではなく、かかる強酸の初期の放出は、透明塗装におけるシラン活性に影響しないだろう。
【0021】
好ましくは、下塗において架橋される塗膜形成ポリマーはすべてシラン非含有ポリマーであるが、少量のシラン含有ポリマー(1つまたは複数)が透明塗装への接着性の向上のために存在し得る。したがって、下塗はシラン縮合反応によって硬化されないため、下塗を触媒するために使用される触媒は一般に、透明塗装におけるシラン含有ポリマーをはっきり認められるほどまで触媒せず、それにおけるシラン基を不活性化しない。「シラン非含有」という用語は、下塗の組成物の結合剤中の塗膜形成ポリマーが、その反応によって硬化が起こる、特定のアルコキシシラン、シラノール、および/またはアセトキシシラン基、または同様な反応性ケイ素含有基を含有しないことを意味する。しかしながら、結合剤の塗膜形成部分は主に、または本質的に、完全にではないにしてもシラン非含有であるが、少量のアクリロシラン樹脂、シロキサン、および/またはシランカップリング剤が、結合剤に対して0〜20重量%、好ましくは0〜10%の量で透明塗装に対する下塗の接着性を改善するために、上述のように下塗において使用される。「本質的にシラン非含有の下塗」という表現は、下塗がシラン硬化触媒以外によって有効に硬化されるが、少量のシラン基が存在し得ることを意味するものである。
【0022】
本発明で使用される透明塗装組成物は、塗膜形成ポリマーとして、本明細書でウレタンポリマーまたはオリゴマーとも呼ばれるカルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有する。カルバメート材料は、その部位の少なくとも1つがカルバメート基である、少なくとも2つの反応性(つまり、架橋性)部位を含有する。その材料は、複数のカルバメート基を含有することが好ましい。カルバメート基は、第1級または第2級であり得るが、本発明は、第2級カルバメート基を有するカルバメート材料に特に向けられている。オリゴマー材料もまた一般に好ましい。
【0023】
適切なカルバメートオリゴマーは、重量平均分子量約75〜2,000、好ましくは約75〜1,500を有する。本明細書において開示されるすべての分子量は、ポリスチレン標準物質を使用して、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって決定されている。
【0024】
硬化性カルバメート基を含有する多種多様なカルバメートオリゴマーを本発明で使用することができる。しかしながら、好ましいカルバメートオリゴマーは、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる(特許文献4)に記載のように、ポリイソシアネート、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートを単官能アルコールと反応させて、複数の第2級カルバメート基を有するオリゴマー化合物を形成することによって製造される。この反応は、当技術分野で公知のように、熱の下で、好ましくは触媒の存在下にて行われる。
【0025】
これらの第2級カルバメート化合物の製造において種々のポリイソシアネート化合物を使用することができる。好ましいポリイソシアネート化合物は、1分子当たり2〜3個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物の一般的な例は、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート等である。商品名Desmodur(登録商標)N−3390で販売されているヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート)の三量体、商品名Desmodur(登録商標)Z−4470で販売されているイソホロンジイソシアネート(イソシアヌレート)の三量体などのジイソシアネートの三量体を使用することもできる。前記の有機ポリイソシアネートのうちのいずれかとポリオールとから形成される、ポリイソシアネート官能性付加物も使用することができる。トリメチロールプロパンまたはエタンのようなトリメチロールアルカンなどのポリオールを使用することができる。1つの有用な付加物は、テトラメチルキシリデンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物であり、Cythane(登録商標)3160の商品名で販売されている。本発明の硬化性カルバメート官能性樹脂が外面コーティングで使用される場合、耐候性および耐黄変性の観点から、脂肪族または脂環式イソシアネートの使用は、芳香族イソシアネートの使用よりも好ましい。
【0026】
いずれかの一価アルコールを使用して、上記のポリイソシアネートを第2級カルバメート基に変換することができる。適切な一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、およびシクロヘキサノールが挙げられる。
【0027】
代替の実施形態において、こられの低分子量第2級カルバメート材料は、当業者によって理解されるように、単官能性イソシアネート、好ましくは脂肪族単官能性イソシアネートをポリオールと反応させることによって形成することができる。
【0028】
上記の代表的なかかる低分子量第2級カルバメート材料は、以下の構造式:
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、Rは、多官能性オリゴマーまたはポリマー材料であり;Rは、一価アルキルまたはシクロアルキル基、もしくは一価C〜C12アルキル基またはC〜Cシクロアルキル基、またはアルキル基とシクロアルキル基との組み合わせであり;Rは、二価アルキルまたはシクロアルキル基、好ましくは二価C〜C12アルキル基またはC〜Cシクロアルキル基、二価アルキル基とシクロアルキル基との組み合わせであり;Rは、上記で定義されるRまたはRのいずれかである)を有する材料である。
【0031】
カルバメート官能性ポリマー、特に第2級カルバメート基を有するカルバメート官能性ポリマーもまた、本発明の実施において使用することができる。かかるポリマーは、当技術分野でよく知られている。かかるポリマーは、様々な方法で製造することができ、一般に、カルバメートペンダント基および/またはカルバメート末端基を有するアクリル、ポリエステル、またはポリウレタン含有材料である。アクリルポリマーが一般に自動車用透明塗装において好ましい。
【0032】
ポリマーおよびオリゴマーカルバメート官能性化合物の混合物も、本発明のコーティング組成物に用いることができる。
【0033】
透明塗装において使用される結合剤は一般に、これらのカルバメート官能性材料を約5〜60重量%、好ましくは10〜40%含有する。
【0034】
本発明において使用される透明塗装組成物の塗膜形成結合剤部分もまた、その少なくとも1つがカルバメート官能基と反応性である、少なくとも2つの反応性(つまり、架橋性)部位を含有する架橋性成分を、結合剤の重量を基準にして約15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%含有する。カルバメート基と反応し、硬化コーティングにおいて所望のウレタン結合を形成することができる多くの架橋性材料が知られており、そのウレタン結合は、耐久性、酸性雨に対する耐腐食性、および耐引っかき性のために望ましい。これらとしては、メラミンホルムアルデヒド樹脂などのアミノプラスト樹脂(モノマーまたはポリマーメラミン樹脂、部分的または完全アルキル化メラミン樹脂を含む)、尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのメチロール尿素、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルコキシ尿素)、およびフェノール/ホルムアルデヒド付加物などのフェノール樹脂が挙げられる。
【0035】
アミノプラスト架橋剤、最も好ましくは部分または完全アルキル化アミノプラスト架橋剤が一般に、本発明の塗膜形成組成物中に含まれる。これらの架橋剤は当技術分野でよく知られており、塗膜形成ポリマー中に存在するカルバメートペンダント基または末端基と反応性であり、したがってカルバメート官能性ポリマーと所望のウレタン結合を形成することができる複数の官能基、例えば、アルキル化メチロール基を含有する。最も好ましくは、架橋剤は、部分または完全アルキル化されているモノマーまたはポリマーメラミン−ホルムアルデヒド縮合体であり、つまり、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体は、アルコール、好ましくは炭素原子1〜6個を含有するアルコールでさらにエーテル化されているメチロール基を含有する。この目的のために、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、およびシクロヘキサノールなどのいずれかの一価アルコールを使用することができる。最も好ましくは、メタノールとn−ブタノールとのブレンドが使用される。かかる架橋剤は一般に、標準物質としてポリスチレンを使用したGPCによって決定される重量平均分子量約500〜1,500を有する。
【0036】
前記の種類の適切なアミノプラスト樹脂は、サイテック社(Cytec Industries,Inc.)から商標シメル(CYMEL)(登録商標)で市販されており、ソルーシア社(Solutia,Inc.)から商品名RESIMENE(登録商標)で市販されている。
【0037】
本発明の透明塗装組成物中に架橋剤の混合物を使用することもできる。
【0038】
上述のカルバメート材料および架橋性成分の他に、透明塗装組成物の塗膜形成部分は好ましくは、1つまたは複数の活性シラン基を含有する反応性シラン化合物も含有する。この材料は、ポリシロキサンベースの材料などのオリゴマーまたはポリマー材料であることができる。本明細書においてシランポリマーとも呼ばれるオルガノシランポリマーが一般に好ましい。適切なシランポリマーは、重量平均分子量約1000〜30,000、好ましくは約2000〜10,000を有する。
【0039】
活性シラン基を含有する多種多様な有機シランポリマーを本発明で使用することができる。アクリルポリマーが、自動車用透明塗装において一般に好ましい。好ましいアクリロシランポリマーは、シランポリマーの重量を基準にして、エチレン性不飽和シラン非含有モノマー約10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%と、エチレン性不飽和シラン含有モノマー約5〜90重量%、好ましくは30〜70重量%との重合生成物である。適切なエチレン性不飽和シラン非含有モノマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびその混合物であり、そのアルキル基は炭素原子1〜12個、好ましくは炭素原子3〜8個を有する。
【0040】
シランポリマーを形成するために使用される適切なアルキルメタクリレートは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等である。同様に、適切なアルキルアクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。例えばトリメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、またはt−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなどの脂環式メタクリレートおよびアクリレートも使用することもできる。例えば、ベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレートなどのアリールアクリレートおよびアリールメタクリレートも使用することができる。当然のことながら、上記のモノマーの2つ以上の混合物もまた適している。
【0041】
さらに、シラン非含有アルキルアクリレートまたはメタクリレートの他に、外観、硬度、表面損傷抵抗、フロントガラス接着性と塗り重ね接着性、つまり透明塗装上に塗布された更なる修復コーティングに対する接着性との良いバランスなど、所望の物理的性質を達成するために、ポリマーに対して約50重量%までの他の重合性モノマーもアクリロシランポリマーにおいて使用することができる。他のかかるモノマーの例としては、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。スチレンは0〜50重量%の範囲で使用することができる。塗り重ね接着性をさらに改善するために、ヒドロキシ官能性モノマーが好ましくは、オルガノシランポリマー中に組み込まれ、ヒドロキシ価4〜160、好ましくは10〜50(KOH mg/樹脂固体g)を有するポリマーが製造される。これは一般的に、ポリマーに対して約1〜10重量%の範囲でヒドロキシ官能性モノマーが使用されるということになる。
【0042】
適切なヒドロキシ官能性シラン非含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アルキル基中に炭素原子1〜4個を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートを意味するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ官能性モノマーが存在することによって、ヒドロキシ基とシランポリマー上のシラン部位の間で、かつ/または透明塗装組成物中に存在し得る架橋性基(メラミン基など)とヒドロキシ基との間で更なる架橋が起こることが可能となり、最終的な透明塗装のケイ素の成層(stratification)が制御され、フロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を維持しながら最適な塗り重ね接着性が得られる。
【0043】
アクリロシランポリマーの形成に有用な適切なシラン含有モノマーは、以下の構造式:
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、Rは、CH、CHCH、CHO、またはCHCHOのいずれかであり;RおよびRは独立して、CHまたはCHCHであり;Rは、H、CH、またはCHCHのいずれかであり;nは、0または1〜10の正の整数である)を有するアルコキシシランである。好ましくは、RはCHOまたはCHCHOであり、nは1である。
【0046】
かかるアルコキシシランの代表的な例は、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリラトアルコキシシラン、およびγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(クロンプトン社(Crompton)から市販のSilquest(登録商標)A−174)、およびγ−メタアクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのメタアクリラトアルコキシシランである。
【0047】
他の適切なアルコキシシランモノマーは、以下の構造式:
【0048】
【化3】

【0049】
(式中、R、RおよびRは上記のとおりであり、nは、0または1〜10の正の整数である)を有する。かかるアルコキシシランの例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのビニルアルコキシシランである。
【0050】
他の適切なシラン含有モノマーは、アクリラトキシシラン、メタアクリラトキシシランおよびビニルアセトキシシラン、例えばビニルメチルジアセトキシシラン、アクリラトプロピルトリアセトキシシラン、およびメタアクリラトプロピルトリアセトキシシランを含むエチレン性不飽和アクリロキシシランである。当然のことながら、上記のシラン含有モノマーの混合物もまた適している。
【0051】
上記の成分と一致して、本発明の実施において有用なヒドロキシ官能性アクリロシランポリマーの一例は、スチレンの重合モノマー、アクリレート、メタクリレートまたはビニルアルコキシシランモノマーまたはこれらの混合物、非官能性アクリレートまたはメタクリレートまたはこれらのモノマーの混合物、およびヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等のアルキル基中に炭素原子1〜4個を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートまたはこれらのモノマーの混合物のいずれかであるエチレン性不飽和アルコキシシランモノマーで構成される。
【0052】
好ましいアクリロシランポリマーは以下の成分:スチレン約1〜30重量%、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン約1〜95重量%、イソブチルメタクリレート約1〜30重量%、ブチルアクリレート1〜30重量%、およびヒドロキシプロピルアクリレート10重量%未満、さらに好ましくは約0〜10重量%を含有する。ポリマーにおけるモノマーの全パーセンテージは100%に等しい。このポリマーは、範囲約1,000〜20,000の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0053】
特に好ましいアクリロシランポリマーは、スチレン約10重量%、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン約65重量%、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびイソブチルメタクリレートなどの非官能性アクリレートまたはメタクリレートおよびその混合物約15重量%、ヒドロキシプロピルアクリレート約10重量%を含有する。シラン官能性マクロモノマーも、シランポリマーの形成に使用することができる。例えば、かかるマクロモノマーは、エポキシドまたはイソシアネートなどの反応性基を有するシラン含有化合物と、シランモノマーと共反応性である反応性基、一般にヒドロキシルまたはエポキシド基を有するエチレン性不飽和シラン非含有モノマーとの反応生成物である。有用なマクロモノマーの例は、アルキル基中に炭素原子1〜4個を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートなどのヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマーと、イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトアルキルアルコキシシランとの反応生成物である。
【0054】
代表的な上記のかかるシラン官能性マクロモノマーは、以下の構造式:
【0055】
【化4】

【0056】
(式中、R、R、およびRは上記のとおりであり;Rは、HまたはCHであり、Rは、炭素原子1〜8個を有するアルキレン基であり、nは、1〜8の正の整数である)を有するマクロモノマーである。
【0057】
シラン材料は、本質的にオリゴマーでもあり得る。これらの材料は当技術分野でよく知られている。
【0058】
ポリマーヒドロキシ官能性シラン化合物とオリゴマーヒドロキシ官能性シラン化合物との混合物を本発明において用いることもできる。
【0059】
任意に、他の塗膜形成および/または架橋性溶液ポリマーが透明塗装組成物中に含まれる。その例としては、従来から知られているアクリル、セルロース系材料、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ウレタン、ポリエステル、エポキシまたはその混合物が挙げられる。任意の好ましい塗膜形成ポリマーは、ポリオール、例えば重合モノマーのアクリルポリオール溶液ポリマーである。かかるモノマーは、前述のアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートのいずれか、さらにヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートを含み得る。適切なアルキルアクリレートおよびメタクリレートは、アルキル基中に炭素原子1〜12個を有する。ポリオールポリマーは好ましくは、ヒドロキシル価約50〜200、重量平均分子量約1,000〜200,000、好ましくは約1,000〜20,000を有する。ポリオール中にヒドロキシ官能性を提供するために、ポリオールの約90重量%まで、好ましくは20〜50重量%までが、ヒドロキシ官能性重合モノマーを含む。適切なモノマーとしては、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、例えば上記で列挙されるヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートおよびその混合物が挙げられる。他の重合性ヒドロキシ非含有モノマーが、ポリオールポリマー成分中に約90重量%までの量、好ましくは50〜80重量%の量で含有される。かかる重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド等、およびその混合物が挙げられる。
【0060】
アクリルポリオールポリマーの一例は、スチレン約10〜20重量%、アルキル基中に炭素原子1〜6個を有するアルキルメタクリレートまたはアクリレート40〜60重量%、アルキル基中に炭素原子1〜4個を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート10〜50重量%を含む。かかる1つのポリマーは、スチレン約15重量%、イソブチルメタクリレート約29重量%、2−エチルヘキシルアクリレート約20重量%、ヒドロキシプロピルアクリレート約36重量%を含有する。
【0061】
上記のポリマー成分に加えて、分散ポリマーが任意に、コーティング組成物中に含まれる。有機媒質(実質的に非水性)に分散されたポリマーは、当技術分野において非水分散型(NAD)ポリマー、非水性微粒子分散液、非水性ラテックス、またはポリマーコロイドと様々に呼ばれている。一般に、(非特許文献1)を参照されたい。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公報(特許文献5);米国特許公報(特許文献6);米国特許公報(特許文献7);米国特許公報(特許文献8);米国特許公報(特許文献9);および米国特許公報(特許文献10)もまた参照されたい。一般に、非水性分散ポリマーは、有機媒質中で分散されたポリマー粒子として特徴付けられ、その粒子は、立体的安定化として知られているものによって安定化される。従来技術によれば、立体的安定化は、粒子媒体界面での溶媒和ポリマーまたはオリゴマー層の付着によって達成される。
【0062】
分散ポリマーは、透明塗装コーティング、特にシラン化合物を含有するコーティングに一般的に伴う亀裂の問題を解決することが知られており、組成物中の樹脂固体の全重量に対して約0〜30重量%、好ましくは約10〜20重量%と様々な量で使用される。組成物のシラン化合物と分散ポリマー成分との比は適切には、5:1〜1:10、好ましくは4:1〜1:5の範囲である。これらの比較的高濃度の分散ポリマーを収容するために、分散ポリマーの溶媒和部分上に反応性基(例えば、ヒドロキシ基)を有することが望ましく、その反応性基によって、ポリマーはその系の連続相と相溶性になる。
【0063】
ヒドロキシ官能基を有する分散ポリマーの好ましい組成物は、ヒドロキシエチルアクリレート約25重量%、メタクリル酸約4重量%、メチルメタクリレート約46.5重量%、メチルアクリレート約18重量%、架橋コアを提供するためのグリシジルメタクリレート約1.5重量%、およびスチレン約5重量%からなるコアを含む。コアに付けられる溶媒和アーム(solvated arm)は、プレポリマー97.3重量%、グリシジルメタクリレート約2.7重量%を含有し、後者は架橋またはアームの固定のために含有される。好ましいプレポリマーは、ブチルメタクリレート約28重量%、エチルメタクリレート約15重量%、ブチルアクリレート約30重量%、ヒドロキシエチルアクリレート約10重量%、アクリル酸約2重量%、スチレン約15重量%を含有する。
【0064】
分散ポリマーは、粒子の立体的安定剤の存在下での有機溶媒中でのモノマーの公知の分散重合によって製造することができる。この手順は、溶解された両性安定剤の存在下にて、不活性溶媒中でモノマーを重合する方法として記述されており、その溶媒にモノマーは可溶性であるが、得られたポリマーは可溶性ではない。
【0065】
硬化触媒は一般に、カルバメート部位とメラミン部位との、および/または組成物中に存在する他の成分間での硬化(つまり、架橋)を触媒するために、透明塗装組成物に添加される。多種多様な硬化触媒を使用することができるが、スルホン酸などの強鉱酸が一般に好ましい。ブロック化された、またはブロック化されていない、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸が有効な触媒である。一般的なブロック化酸触媒は、アミノメチルプロパノールまたはジメチルオキサゾリジンなどのアミンでブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸である。ブロック化トルエンスルホン酸も使用することができる。他の有用な触媒は、当業者であれば容易に思いつくだろう。好ましくは、触媒は、結合剤の全重量を基準にして約0.1〜5.0%の量で使用される。
【0066】
本発明のコーティング組成物によって製造されるクリア仕上げ塗装の特に耐候性を改善するために、紫外線安定剤または紫外線安定剤の組み合わせを、結合剤の全重量を基準にして、約0.1〜10重量%の量で透明塗装組成物に添加することができる。かかる安定剤としては、紫外線吸収剤、遮断剤(screener)、失活剤、および特定のヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。さらに、結合剤の全重量を基準にして約0.1〜5重量%で酸化防止剤を添加することができる。有用である、一般的な紫外線安定剤としては、ベンゾフェノン、トリアゾール、トリアジン、ベンゾエート、ヒンダードアミンおよびその混合物が挙げられる。
【0067】
オルト酢酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、テトラシリケート等などの適切な量の捕水剤(water scavenger)(結合剤に対して好ましくは2〜7重量%)が一般に、そのポットライフを延ばすために透明塗装組成物に添加される。ミクロゲル(好ましくはアクリル)約3%、および疎水性シリカ1%がレオロジー制御のために使用される。組成物は、流動調整剤、例えばResiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320および325(高分子量ポリアクリレート)などの従来の他の配合添加剤も含むことができる。
【0068】
本発明において、前述の組成物が、クリアコーティング組成物として、つまり顔料を含有しない組成物として使用される。しかしながら、少量の顔料を透明塗装に添加して、黄変などの仕上げ塗装における望ましくない色を解消することができる。組成物は好ましくは、結合剤約45〜90重量%、それに応じて、結合剤のための溶媒または溶媒の混合物であり得る有機液体担体約10〜55重量%の比較的高い固形分も有する。本明細書に記載の透明塗装は、低VOC揮発性(有機化合物含有率)コーティング組成物であることもまた好ましく、それは、ASTM D3960で提供される手順の下で決定される、組成物1リットル当たり有機溶媒0.6kg未満(5ポンド/ガロン)を含むコーティングを意味する。
【0069】
透明塗装上のプライマーレスのフロントガラス接着能力を達成するために、本発明において用いられる下塗中に、適切な量の特定の強酸硬化触媒を添加して、下塗の硬化を可能にする。上記で示すように、触媒は、透明塗装中のシラン基の活性を著しく妨げない材料から選択される。下塗中の適切な量の強酸硬化触媒は、下塗中の結合剤の重量を基準にして、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、さらに好ましくは0.2〜0.8重量%である。
【0070】
本発明の方法に従って、透明塗装を下塗上に塗布した場合には、下塗における触媒の少なくとも一部が下塗から透明塗装中に拡散または移動し得る。しかしながら、下塗と透明塗装を共に焼き付けまたは硬化すると、硬化触媒は、同じ透明塗装における活性シラン基の縮合(つまり、架橋)に最小限の影響しか与えず、したがって、透明塗装のプライマーレスMVSS接着性は破壊されない。明らかに、下塗触媒の移動は、酸触媒のためのブロック剤のサイズおよび性質に依存する。分子が大きいと、下塗から透明塗装への触媒の移動が少なくなり、そのために、下塗触媒が透明塗装シランに干渉しなくなるだろう。
【0071】
透明塗装の場合と同様に、多種多様な強鉱酸硬化触媒を使用することができるが、スルホン酸が一般に好ましい。ブロック化ドデシルベンゼンスルホン酸またはブロック化アルキルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸が有効な触媒である。一般的なブロック化酸触媒は、エポキシポリマーまたはモノもしくはジもしくはポリイソシアネート変性エポキシポリマー(本明細書においてエポキシイソシアネートポリマーとも呼ばれる)でブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸である。120℃以上で脱ブロック化する、エポキシポリマーまたはイソシアネート変性エポキシポリマーが、下塗の硬化を有効に減速し、全体的な仕上げ塗装の外観をより良くするのに最も好ましい。エポキシブロック化スルホン酸は、そのスルホン酸基がエポキシドと反応して、β−ヒドロキシスルホン酸エステルが生成されることを特徴とする。エポキシブロック化スルホン酸を製造するのに適切なエポキシ化合物としては、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコールまたはブタンジオールなどのグリコールのジグリシジルエーテル;C〜C18αオレフィンエポキシドおよび1,2−エポキシシクロヘキサンのモノグリシジルエーテルが挙げられる。かかる材料は、当技術分野でよく知られている手順に従ってスルホン酸から製造することができる。一般に、エポキシブロック化エステルは、スルホン酸をモノ、ジまたはポリエポキシ化合物と反応させ、次いで、任意に得られたβ−ヒドロキシアルキルスルホン酸エステルをモノ、ジまたはポリイソシアネートと反応させることから製造される。
【0072】
好ましい触媒は、以下の構造式:
【0073】
【化5】

【0074】
を有するエポキシブロック化またはイソシアネート変性エポキシブロック化スルホン酸触媒であり、
上記式中、Zは、Hまたは以下の構造:
【0075】
【化6】

【0076】
のイソシアネート誘導部位であり、
は、一価もしくは二価C1−18アルキル、C1−18アルキレン、またはC1−18モノもしくはジアルキル置換フェニルまたはナフチルであり、1〜2個のスルホン酸基で任意に置換されてもよく、
は、H、一価もしくは多価C1−18アルキル、ビスフェノールAまたはビスフェノールFであり、
【0077】
【化7】

【0078】
などのグリシジルまたはグリシジル誘導部位で任意に置換されてもよく、
は、C1−18アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールまたはポリマー部位であり、任意にエステル、エーテルまたはイソシアネート官能性またはイソシアネート誘導基を含有してもよく、
Aは、以下の構造:
【0079】
【化8】

【0080】
を有するエポキシ基の開環反応から誘導される多価結合性基部位であり、
上記式中、Rは、Hまたは−CH−であり;RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、RおよびRのそれぞれが、H、C−C12アルキルであるか、またはRおよびRが一緒になって、C−C12シクロアルキルを形成し;
nは、nが1を超える場合には1〜10であり、R、RまたはRの少なくとも1つが少なくとも二官能性であり;
Xは、任意であり、かつカルボキシまたはオキシであってもよく、触媒の分子量は少なくとも約1000である。
【0081】
上記の触媒の製造で使用するのに適しているスルホン酸としては、モノおよびジスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸、ジアルキルナフチルスルホン酸、ジアルキルナフタレンジスルホン酸等が挙げられる。
【0082】
触媒の製造に適しているエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAおよびビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、C〜C18アルコールのモノグリシジルエーテル、C〜C18カルボン酸のグリシジルエステル、C〜C18α−オレフィンエポキシド、分子量約350〜2000を有するイソブチレンエポキシド、脂環式化合物の過酸エポキシ化から誘導される脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。かかる脂環式エポキシ樹脂の例は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートである。
【0083】
適切なイソシアネートとしては、1,6−ヘキサンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メチレンジアニリン誘導生成物、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはテトラメチルキシレンジイソシアネート、イソシアネート基を末端とするポリエステルまたはポリエーテル、例えばポリプロピレングリコール1モルとイソホロンジイソシアネート2モルとの反応生成物、またはネオペンチルグリコールから製造されたポリエステルジオールと、アジピン酸および過剰量のイソホロンジイソシアネートとの反応生成物が挙げられる。
【0084】
かかる触媒は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公報(特許文献11)にさらに正確に説明されている。
【0085】
一般的な場合において、本発明において用いられる下塗は、架橋化学反応、例えばカルバメート−メラミンおよび/またはヒドロキシ−メラミンおよび/またはヒドロキシ−イソシアネート架橋化学反応を要し、その反応は、上述のスルホン酸などの強鉱酸によって促進され、シラン硬化触媒は必要ない。しかしながら、本発明の下塗は、シラン硬化を促進することが知られている更なる触媒、例えばスズ触媒または他のルイス酸触媒も含み得る。かかる触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオキシド、ジブチルスズジオクトエート、スズオクトエート、チタン酸アルミニウム、アルミニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。しかしながら、これらの触媒は、シラン縮合反応を促進する公知のシラン硬化触媒であることから、透明塗装のプライマーレスフロントガラス接着能力を妨げない量でのみ使用することができる。前述の触媒の混合物もまた有用である。好ましくは、これらの更なる触媒は、結合剤の約2重量%までの量でのみ使用される。使用することができる他の有用な触媒は、当業者であれば容易に思いつくだろう。
【0086】
一般に、透明塗装中のシラン基の活性を妨げない、上記のような範囲で触媒を含有しなければならないことを除いては、下塗の組成は本発明によって制限されない。好ましい下塗は、メラミン架橋剤およびポリオールと併せてポリエステルまたはポリエステルウレタンを含む。適切なポリオールとしては、アクリル、ポリエステル、ポリエステルウレタン、またはヒドロキシ価60〜160を有するアクリルウレタンポリオールが挙げられる。かかるポリオールは、透明塗装が実質的または部分的に硬化したとしても、透明塗装中の未反応または残留シラン基の一部と反応する、ポリオール上のヒドロキシ基によってシラン透明塗装上での塗り重ね接着性をもたらす。下塗において使用される結合剤は、透明塗装の硬化のバランスをとるために、透明塗装のためのカルバメートオリゴマーまたはポリマー0〜40%もまた任意に含有することができる。上述のカルバメートのうちのいずれかを使用することができる。
【0087】
更なる塗膜形成および/または架橋性溶液ポリマーもまた、下塗中に含ませることができる。透明塗装で使用される上記の更なる塗膜形成および架橋性溶液ポリマーのいずれかを下塗において使用することができる。適切な下塗の一例は、顔料、アルミニウムフレーク、紫外線吸収剤の他に、組成物に対して、レオロジー制御および剥離制御のためのミクロゲル約24重量%、メラミンホルムアルデヒド樹脂38重量%、分枝鎖ポリエステル樹脂8重量%、カルバメート樹脂15重量%、更なるレオロジー制御および剥離制御のための酢酸酪酸セルロース3重量%、更なるレオロジー制御および剥離制御のためのシリカ分散液10重量%、ポリマーブロック化ドデシルベンゼンスルホン酸触媒、ジブチルスズジアセテート2重量%を含む。
【0088】
理論に束縛されることはないが、好ましい下塗組成物においてフェニル酸ホスフェートなどの弱酸触媒の代わりに、スルホン酸触媒を使用することによって、そのどちらもフロントガラス用プライマーレス・シーラントの接着性を妨げる、アルコキシシランおよび/またはシラノールの自己縮合のレベルが低減される、またはSi−O−C結合を形成する透明塗装におけるヒドロキシ官能性樹脂とのそれらの反応が低減されると推測される。
【0089】
当業者には理解されるように、様々な顔料および金属フレークを下塗において使用することができる。下塗組成物中の一般的な顔料としては、以下の金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、種々の色の酸化鉄、カーボンブラック、充填剤顔料、例えばタルク、チャイナクレー、バリタ、カーボネート、シリケート、および多種多様な有機有色顔料、例えばキナクリドン、銅フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダンスロンブルー、カルバゾール、例えばカルバゾールバイオレット、イソインドリノン、イソインドロン(isoindolones)、チオインジゴレッド、ベンズイミダゾリノン、金属フレーク顔料、例えばアルミニウムフレーク、真珠箔フレーク等が挙げられる。
【0090】
特定の顔料と結合剤との比は、当業者には明らかであるように、所望の塗膜厚および塗布固形分での必須の隠ぺい、色および/または効果を提供する限り、大きな幅がある。高速混合、研磨粉砕(sand grinding)、ボールミル粉砕、アトリター粉砕(attritor grinding)または2本ロール練りなどの従来の技術によって、コーティング組成物において使用される前述のポリマーのいずれか、または他の相溶性のポリマーまたは分散剤と共に練り顔料または顔料分散液を最初に形成することによって、コーティング組成物中に顔料を導入することができる。次いで、練り顔料をコーティング組成物で使用される他の成分とブレンドする。
【0091】
本発明で用いられる下塗組成物および透明塗装組成物のどちらも、他の従来の配合添加剤、例えばResiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320および325(高分子量ポリアクリレート)などの流動調整剤;およびヒュームドシリカなどのレオロジー制御剤を含有し得る。
【0092】
上記のポリマーを分散および/または希釈するために、従来の溶媒および希釈剤が使用される。一般的な溶媒および希釈剤としては、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、エチレングリコール、モノエチルエーテル、VMおよびPナフタ、ミネラルスピリット、ヘプタンおよび他の脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素、エステル、エーテルおよびケトン等が挙げられる。
【0093】
本発明に従って、本明細書に記載のコーティング組成物のそれぞれを、吹付け塗り、静電吹付け塗り、浸し塗り、はけ塗り、流し塗り等などの従来の技術によって塗布することができる。好ましい技術は、吹付け塗りおよび静電吹付け塗りである。本発明において、透明塗装は一般に、透明塗装を塗布する前に、指触乾燥状態に乾燥され、硬化され、または好ましくは短時間フラッシュ乾燥される下塗上に塗布される。下塗および透明塗装の両方を塗布した後に、複合下塗/透明塗装仕上げを一般に、100〜150℃で約15〜30分間焼付けして、厚さ約0.1〜3.0ミルの乾燥された、および少なくとも一部乾燥されたコーティングが形成される。
【0094】
特に自動車産業において、「重ね塗」塗布(つまり、下塗を硬化または完全に乾燥させることなく、透明塗装が下塗に塗布される)によって、下塗上に透明な透明塗装を塗布することは一般的になっている。次いで、コーティングされた基材を所定の時間加熱して、下塗および透明塗装を同時に硬化させる。
【0095】
塗布し、少なくとも一部硬化させた後、本発明の複合コーティングは、現在の自動車安全基準を満たすプライマーを使用することなく、フロントガラス用シーラントに対する優れた接着性を提供するのに特に有用である。仕上げ塗装における欠陥が、元の製造プロセス中に時折生じ、現場での修復が必要となることから、元の下塗/透明塗装仕上げにおける傷および欠陥を修復するために、その上に硬化下塗層および硬化透明塗装層を有する基材に塗布する必要が時としてある、更なる修復コーティング、例えば修復下塗、続いて修復透明塗装に対しても、硬化された塗膜は優れた接着性を有する。
【0096】
以下の実施例によって本発明が説明される。別段の指定がない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量をベースとするものである。
【実施例】
【0097】
本発明はさらに、以下の非制限的な実施例において説明される。別段の指定がない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量をベースとするものである。本明細書において開示されるすべての分子量は、ポリスチレン標準物質を使用してGPCによって決定されている。
【0098】
以下に記載の透明塗装および下塗実施例に示されるように、以下の樹脂を製造し、使用した。
【0099】
(樹脂の実施例1)
透明塗装および下塗実施例で使用されるカルバメート官能性オリゴマーの製造
上述のように装備された反応フラスコ中に以下の成分を装入することによって、カルバメート官能性オリゴマーを製造した。
【0100】
【表1】

【0101】
割当て分Iをプレミックスし、反応フラスコ中に装入し、攪拌および窒素ブランケット下にて100℃に加熱した。次いで、103〜107℃以下で発熱温度を維持するために、割当て分IIを120分間にわたって添加した。次いで、赤外線走査で示されるように、本質的にすべてのイソシアネートが反応するまで、混合しながら、反応混合物を100℃に維持した。NCOが存在しない場合には、反応混合物を100℃未満に冷却し、次いで割当て分IIIを添加して、得られた溶液の固形分を固形分70重量%に調節した。
【0102】
その結果得られた溶液は、以下の成分:HDI三量体/シクロヘキサノール/2−エチルヘキサノールを重量比65/32/3で含有した。
【0103】
(樹脂の実施例2)
透明塗装実施例で使用されるヒドロキシ官能性アクリロシランポリマー1〜3およびヒドロキシ非含有単官能性アクリロシランポリマー4の製造
2/1ソルベッソ(Solvesso)100芳香族溶媒/ブタノール混合物の存在下での、スチレン(S)10重量部と、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)10重量部と、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTS)(クロンプトン社(Crompton)から市販のSilquest(登録商標)A−174)65重量部と、ブチルアクリレート(BA)3重量部と、イソブチルメタクリレート(IBMA)12重量部とのモノマー混合物を、8重量部のバゾ(Vazo)(登録商標)67の存在下にて共重合することによって、アクリロシランポリマー溶液を調製した。得られたポリマー溶液は固形分71%、25℃で測定されたガードナーホルト(Gardner Holdt)スケールでの粘度F〜Rを有する。ポリマー組成物を以下の表2に示し、それらはすべて、重量平均分子量約4,500g/モルを有する。
【0104】
(樹脂の実施例3)
透明塗装および下塗実施例で使用されるアクリルミクロゲルの製造
以下のアクリルミクロゲルの合成に使用される中間体安定化ポリマーとして、メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーを製造した。上述のように装備された窒素ブランケット下のフラスコに以下の成分を装入することによって、安定化ポリマーを製造した。
【0105】
【表2】

【0106】
割当て分Iを反応器に装入し、温度96℃〜100℃にした。割当て分IIおよびIIIを別々にプレミックスし、次いで反応温度を反応温度96℃〜100℃を維持しながら180分間にわたって同時に加えた。次いで、その溶液を90分間保持した。順々に、割当て分IV、V、およびVIを別々にプレミックスし、反応器に添加した。次いで、反応溶液を加熱して還流し、酸価が0.5以下になるまで持続した。得られたポリマーは固形分40%を有する。
【0107】
次いで、上述のように装備された窒素ブランケット下のフラスコに以下の成分を装入することによってアクリルミクロゲル樹脂を製造した。
【0108】
【表3】

【0109】
割当て分Iを反応容器中に装入し、その還流温度に過熱し、60分間維持した。割当て分IIおよびIIIを別々にプレミックスし、次いで、その還流温度で反応混合物を維持しながら、反応容器に同時に180分間にわたって添加した。次いで、割当て分IVを添加した。次いで、その反応溶液を還流で120分間維持し、溶媒246.3ポンドを除去した。次いで、樹脂を60℃に冷却し、割当て分Vと混合した。混合を30分間続けた。
【0110】
得られたポリマー溶液は、固形分(重量)70%および粘度50センチポイズ(ブルックフィールドモデル(Brookfield Model)RVT,スピンドルNo.2,25℃)を有する。
【0111】
(樹脂の実施例4)
下塗実施例で使用されるポリエステル樹脂の製造
マントルヒーター、スターラー、温度計、窒素入口および還流冷却器を備えた反応フラスコ中に以下の成分を装入することによって、ポリエステル樹脂を製造した。
【0112】
【表4】

【0113】
割当て分Iにおいて使用される成分を、混合しながら所定の順序で反応フラスコ中に装入し、50〜80℃に加熱した。次いで、酸価が5未満になるまで、攪拌しながら、反応混合物を220〜225℃で維持した。5未満の酸化に達した後、反応混合物を110℃未満に冷却し、次いで、割当て分IIを添加して、得られた溶液の固形分を80重量%に調節した。
【0114】
得られた溶液は、以下の成分:NPG/TMP/1,6−HD/IPA/AD/DDDA/PAを重量比22.5/14.4/6.7/11.8/13.9/22.8/7.9で含有した。
【0115】
(透明塗装の実施例)
透明塗装組成物の製造
所定の順序で以下の成分を互いにブレンドすることによって、透明塗装組成物を製造した。
【0116】
【表5】

【0117】
(下塗の実施例1〜3および比較例4)
下塗組成物の製造
所定の順序で以下の成分を互いにブレンドすることによって、下塗組成物を調製した。
【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
(塗装試験)
下塗の実施例1〜3および比較例4の下塗組成物を酢酸ブチルを使用して、フォードカップ#4において19秒に下げ、電着塗装およびプライマーサーフェーサーそれぞれの層で既にコーティングされている別々の鋼板に自動吹付け塗装した。5分間のフラッシュ後、上記で製造された透明塗装組成物を下塗上に自動吹付け塗装した。使用されるプライマーサーフェーサーは、デュポンコード(DuPont Code)708S43302(ライトチタン)として本願特許出願人から市販されている。使用される電着塗装は、商品名ED5050で本願特許出願人から市販されている。
【0121】
75°Fおよび湿度55%のブース条件下にて、下塗された電着塗装鋼基材に60秒のフラッシュで2つのコートとして、基材を挟んで下塗実施例1〜3および比較例4を塗布した。
【0122】
(実施例において使用される試験手順)
1.MVSS(自動車安全基準)プライマーレスフロントガラス接着性試験
フロントガラス接着剤に対する密着性を試験するために、5分間の下塗フラッシュの後に、クリア組成物を下塗されたパネルに、塗膜塗り厚ウェッジ(film build wedge)まで塗布した。焼付け前に、塗布した透明塗装を空気中で約10分間フラッシュした。実施例1〜3および比較例4のすべての透明塗装および下塗されたパネルを135℃で10分間焼付けた。最終的な乾燥塗膜厚は、Medium Steel Blue下塗については35〜50ミクロン、透明塗装については2.5ミクロン〜75ミクロンのウェッジ(wedge)であった。焼付けから12時間以内に、フロントガラス用接着剤のビーズが、2.5ミクロン〜75ミクロンのウェッジ塗膜付着層全体を覆うように、フロントガラス接着剤ビーズをプライマーレス透明塗装表面に適用した(ゼネラルモーターズ社(General Motors Corporation)によって公開されているGM4352MおよびGM9522P仕様書に従ったクイックナイフ接着性試験(quick knife adhesion test))。使用されるフロントガラス接着剤は、ダウ・エセックス・スペシャリティ・プロダクツ社(Dow Essex Specialty Products company)から市販されており、Betaseal(商標)15625であると確認される。
【0123】
フロントガラス接着剤ビーズを73°F(23℃)および湿度50%で72時間硬化させた。接着剤ビーズのサイズは、約6×6×250mmであり、透明塗装塗膜付着層範囲全体にわたって、硬化したビーズをかみそりの刃で切断した。切断の間隔は、少なくとも12mm離れていた。望ましい結果は、接着剤と透明塗装の間の、または透明塗装内または層の下の接着性が低下したための破損よりもむしろ、接着剤ビーズの凝集破壊(CF)100%である。接着剤と透明塗装との接着性の低下を示し始める領域を塗膜塗り厚(film build)について測定した。一般に、透明塗装の低い塗膜塗り厚の領域、および下塗の高い塗膜塗り厚の領域は、2つの層の間で透明塗装シラン樹脂および下塗触媒が移動するために、接着剤ビーズの接着性が低下する傾向が強いだろう。実施例1〜3および比較例4の結果を以下の表3に示す。
【0124】
2.表面外観試験
外観の評価のために、5分間の下塗フラッシュの後に、下塗されたパネルに、一定の塗膜塗り厚まで塗布した。塗布された下塗および透明塗装を140℃で30分間焼付けた。最終的な乾燥塗膜厚は、Medium Steel Blue 下塗については15〜20ミクロンであり、透明塗装については45〜50ミクロンであった。光沢、DOI(像の明瞭さ(distinctness of image))およびオレンジピールの複合測定を提供する、QMS(品質測定システム(Autospec America社からのQuality Measurement Systems))によって、パネルの外観を測定した。自動車仕上げ塗装の一般的なQMS値は45〜80であり、数値が高いほど、外観が良いことを意味する。
【0125】
(塗装の結果)
フロントガラス接着剤ビーズに対する接着性の結果および本発明の複合コーティングの外観の結果を表3にまとめる。
【0126】
【表8】

【0127】
表3に示されるように、フェニル酸ホスフェート触媒は許容可能な透明塗装の外観を提供するが、MVSS接着剤に対するそのプライマーレス接着性は、40ミクロン未満の塗膜塗り厚で失った。プライマーレスMVSS接着性を失うまでの、許容可能な塗膜塗り厚は、自動車メーカーによって必要とされる25ミクロン未満である。AMP−ブロック化DDBSAの使用によって、プライマーを使用することなく、接着剤に対する透明塗装の接着性は著しく改善されたが、その外観もまた著しく低下した。許容可能なプライマーレス接着性と、フェニル酸ホスフェートよりも良い外観の両方を提供する触媒は、エポキシ−イソシアネートブロック化DDBSAおよびエポキシブロック化DNNSAである。
【0128】
本発明の精神および範囲から逸脱することのない、本発明の方法および組成物の種々の他の修正、変更、追加または置換は、当業者には明らかであるだろう。本発明は、本明細書に記載の実例となる実施形態によって制限されないが、以下の特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下塗/透明塗装仕上げ上でのフロントガラス用プライマーレス・シーラント(primerless sealant)の接着性を得る方法であって、その元の透明塗装が硬化カルバメートポリマーまたはオリゴマーを含有し、かつ活性シラン基も含み、
前記方法が:
(a)エポキシまたはエポキシ−イソシアネートポリマーブロック化スルホン酸硬化触媒を含む下塗組成物を基材に適用する工程;
(b)カルバメート材料および活性シラン基を含有する透明塗装組成物を塗布する工程;
(c)その下塗/透明塗装仕上げを実質的に、または完全に硬化させる工程;および
(d)前記実質的に硬化した下塗/透明塗装仕上げに、活性シラン基を含有するフロントガラス用シーラントを直接塗布する工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記透明塗装が、前記下塗上に重ね塗(wet−on−wet)で塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下塗および透明塗装が一緒に硬化されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシブロック化スルホン酸触媒が、120℃以上で脱ブロック化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシブロック化スルホン酸硬化触媒が、モノまたはジスルホン酸と、モノ、ジまたはポリエポキシドとの反応生成物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記エポキシブロック化スルホン酸硬化触媒が、以下の構造式:
【化1】

によって表され、
上記式中、Zは、Hまたは以下の構造:
【化2】

のイソシアネート誘導部位であり、
は、一価もしくは二価C1−18アルキル、C1−18アルキレン、またはC1−18モノもしくはジアルキル置換フェニルまたはナフチルであり、1〜2個のスルホン酸基で任意に置換されてもよく、
は、H、一価もしくは多価C1−18アルキル、ビスフェノールAまたはビスフェノールFであり、
【化3】

などのグリシジルまたはグリシジル誘導部位で任意に置換されてもよく、
は、C1−18アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールまたはポリマー部位であり、任意にエステル、エーテルまたはイソシアネート官能基またはイソシアネート誘導基を含有してもよく、
Aは、以下の構造:
【化4】

を有するエポキシ基の開環反応から誘導される多価結合性基部位であり、
上記式中、Rは、Hまたは−CH−であり;RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、RおよびRのそれぞれが、H、C〜C12アルキルであるか、またはRおよびRが一緒になって、C〜C12シクロアルキルを形成し;
nは、nが1を超える場合には1〜10であり、R、RまたはRの少なくとも1つが少なくとも二官能性であり;
Xは、任意であり、かつカルボキシまたはオキシであってもよく、前記触媒の分子量が少なくとも約1000であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
透明塗装中の前記活性シラン基が、アクリロシランポリマーによって提供され、
該アクリロシランポリマーが、モノマーの混合物の反応生成物であり、
該モノマー混合物が、前記アクリロシランポリマーの重量を基準にして約5〜90重量%のシラン官能基を含有するエチレン性不飽和モノマー、及び前記アクリロシランポリマーの重量を基準にして約10〜95重量%のシラン非含有エチレン性不飽和モノマーを含み、
シラン非含有エチレン性不飽和モノマーのうち、前記アクリロシランポリマーの約50重量%までのモノマーがヒドロキシル官能基を含有し得ることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記下塗組成物が、結合剤の重量を基準にして、約0.1〜5重量%の前記エポキシブロック化シラン触媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法に従ってコーティングされることを特徴とする基材。
【請求項10】
(a)エポキシブロック化スルホン酸硬化触媒を含有する少なくとも1つの下塗組成物の層であって、基材に塗布された層;
(b)カルバメート材料を含有し、かつ活性シラン基も含有する少なくとも1つの透明塗装組成物の層であって、前記下塗上に塗布された層;
を含む複合コーティングであって、
前記(a)及び(b)複合コーティングが、基材上で乾燥されて硬化されるか、または実質的に硬化されて、前記基材上に下塗/透明塗装仕上げが提供されることを特徴とする複合コーティング。
【請求項11】
自動車またはトラック上の外装仕上げ塗装として形成されることを特徴とする請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項12】
請求項10に記載の乾燥かつ硬化された複合コーティングでコーティングされることを特徴とする自動車またはトラックの車体外装。

【公表番号】特表2007−510543(P2007−510543A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539734(P2006−539734)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/037312
【国際公開番号】WO2005/046889
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】