説明

カルボジイミド系化合物及びその用途

【課題】 顔料分散性、顔料分散安定性、帯電特性及び絶縁性の改善を実現するための分散剤として機能するカルボジイミド系化合物、該化合物を利用した、油性インクジェット用インキ、液体現像剤、塗料、印刷インキ、カラーフィルター用顔料分散レジスト等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物、該顔料分散組成物を含有する液体現像剤、油性インクジェット用インキ組成物を提供する。
【解決手段】 カルボジイミド基と反応する官能基を有するポリブタジエン化合物の当該官能基を、カルボジイミド当量が100〜50000であるカルボジイミド化合物のカルボジイミド基に反応させることにより、ポリブタジエン鎖を導入してなるカルボジイミド系化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド系化合物、及びその用途に関し、より詳しくは、炭化水素系有機溶剤やエステル系有機溶媒中において、少量で顔料の良好な分散性と分散安定性を実現する顔料分散剤の機能を有するカルボジイミド系化合物、中間組成物として、該化合物を含有し油性インクジェット用インキ、液体現像剤、塗料等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物、さらに最終組成物として、その顔料分散組成物を用いた液体現像剤や油性インクジェット用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミド化合物は、カルボキシル基等の酸基と良好な反応性を有する数少ない化合物であることから、主として酸基を含む樹脂の架橋剤等に利用されてきた。しかしながら、このような架橋の反応性だけでなく、カルボジイミド化合物は多種の機能性側鎖が容易に導入できるという特徴を有し、最近では、その特徴を生かして多機能性の高分子化合物が設計され、色々な分野での利用が検討されている。
【0003】
例えば、本願出願人は、顔料分散技術への応用という観点から、カルボジイミド化合物の高機能化を図り、難分散性顔料をより微細に分散でき、更にその状態を安定的に維持できる方法の開発を推し進め下記の提案を既に行っている。
(1)顔料表面に存在する官能基と共有結合を利用する方法として、カルボジイミド基を有する化合物を用いる方法(例えば、特許文献1参照)。
(2)顔料表面との吸着力を利用する方法としては、カルボジイミド化合物を出発物質として、酸−塩基の親和力を利用する方法(例えば、特許文献2参照)。
(3)分子構造の類似性に起因する親和力を利用する方法(例えば、特許文献3参照)。
本願出願人が提案するこのような顔料分散剤は、顔料の高濃度化にも対応して、高顔料濃度時においても分散安定性、流動性等が非常に良好となる、優れた効果が得られるものである。
【0004】
さらに、本願出願人は、カルボジイミド化合物に、上記と異なる機能を付与するための側鎖(機能性鎖)を導入することにより、顔料分散性の基本性能の他にも、異なる効果が付加できることを見出し、特許出願を行っている。
本出願人は、今回、機能性鎖の導入により、分散媒体として絶縁性炭化水素溶媒を使用する系における顔料の分散性、顔料分散安定性のさらなる改善をするという着想のもとに検討を行った。
【0005】
このような絶縁性炭化水素溶媒を使用する用途として、例えば、油性インクジェット用インクにおいては、顔料の分散性及びトナー粒子の分散性の改善のために、本出願人は、(1)ポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、(2)分子内にポリエステル鎖を有するカルボジイミド系化合物を使用する方法(例えば、特許文献5参照)を提案している。これらの顔料分散剤を使用した油性インクジェット用インクでは、顔料分散性や分散安定性は、実用レベルであるが、顔料分散剤の使用量が多い。また、近年、高濃度・低粘度化、高精細化等を図る手段として、さらなる厳しい条件での顔料分散性や顔料分散安定性が要求されるようになってきており、それに対応する方法として顔料分散剤の改善の必要性がでてきている。
【0006】
また、液体現像剤においては、液体現像剤中の顔料の分散性及びトナー粒子の分散性の改善するために、(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ソルビタンモノオレート等の界面活性剤を用いる方法(例えば、特許文献6参照)、(2)塩基性あるいは酸性顔料の誘導体を用いる方法(例えば、特許文献7、8参照)、(3)ポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)やその末端に塩基等の極性基を持つ材料等の顔料分散剤を用いる方法(例えば、特許文献9参照)等が提案されている。
【0007】
しかし、上記(1)の界面活性剤を用いる方法では、顔料分散性が十分でなく、トナーの帯電性に悪影響を及ぼす等の問題がある。上記(2)の塩基性或いは酸性顔料の誘導体を用いる方法では、顔料分散と高電気抵抗率の維持には有効であるものの、塩基性基や酸性基由来の構造によりトナー粒子の帯電特性が少なからず影響を受け、また、有色であるため、同系色の顔料にしか使えない等の問題がある。上記(3)の顔料分散剤を用いる方法では、分散性を十分に改善できず、末端に塩基等の極性基を有する場合は、極性基由来の構造により帯電特性に影響する問題等を有するものであった。
【特許文献1】国際公開WO03/076527号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO04/000950号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO04/003085号パンフレット
【特許文献4】特開2002−063947号公報
【特許文献5】特開2005−023163号公報
【特許文献6】特開平06−148953号公報
【特許文献7】特開平05−323679号公報
【特許文献8】特開平05−333607号公報
【特許文献9】特開平05−273792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、顔料分散性、顔料分散安定性、帯電特性及び絶縁性の改善を実現するための分散剤として機能するカルボジイミド系化合物、該化合物を利用した、油性インクジェット用インキ、液体現像剤、塗料、印刷インキ、カラーフィルター用顔料分散レジスト等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物、該顔料分散組成物を含有する液体現像剤、油性インクジェット用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボジイミド化合物の側鎖としてポリブタジエン化合物を導入したカルボジイミド系化合物を使用することにより、上記課題を全て解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(1)カルボジイミド基と反応する官能基を有するポリブタジエン化合物の当該官能基を、カルボジイミド当量が100〜50000であるカルボジイミド化合物のカルボジイミド基に反応させることにより、ポリブタジエン鎖を導入してなるカルボジイミド系化合物に関する。
また、本発明は、(2)更に、分子内に塩基性窒素含有鎖、顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖、色素中間体鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種の鎖を含む上記(1)項記載のカルボジイミド系化合物に関する。
また、本発明は、(3)上記(1)項又は(2)項記載のカルボジイミド系化合物を用いて、顔料を分散させてなる顔料分散組成物に関する。
また、本発明は、(4)上記(3)項に記載の顔料分散組成物を含有する液体現像剤に関する。
また、本発明は、(5)上記(3)項に記載の顔料分散組成物を含有する油性インクジェット用インキ組成物に関する。
【0010】
<カルボジイミド系化合物について>
本発明のカルボジイミド系化合物は、カルボジイミド当量が100〜50000である化合物のカルボジイミド基に、反応性の官能基を利用してポリブタジエン鎖を側鎖として導入するものであり、そして、根本的な性能として顔料分散安定性が求められる各種用途で適用され、さらにポリブタジエン鎖を側鎖として導入することにより、分散媒体として絶縁性炭化水素系溶媒を使用する系における顔料の分散性、顔料分散安定性、帯電特性及び絶縁性を改良でき、液体現像剤や油性インクジェット用インキ組成物等の用途にも好適に用いることができるようになる。
なお、ここで「側鎖」とは、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物を反応させて形成される、カルボジイミド化合物に由来する部分から枝分れの状態にある鎖をいう。以下、本発明においては、鎖の構造の大きさにかかわらず、カルボジイミド化合物に由来する部分を「主鎖」といい、主鎖から枝分れの状態にある鎖をすべて「側鎖」という。
本発明のカルボジイミド系化合物は、全てのカルボジイミド基が他の官能基と反応したものであってもよいし、未反応のカルボジイミド基を有するものであってもよい。
【0011】
1)カルボジイミド系化合物を合成するための材料
まず、本発明のカルボジイミド系化合物の必須の構成材料として、出発物質であるカルボジイミド化合物と、ポリブタジエン側鎖を導入するための化合物とについて説明する。
1−1)カルボジイミド化合物
本発明のカルボジイミド系化合物を得るために、出発物質として用いられるカルボジイミド化合物は、分子内にカルボジイミド基、即ち、−N=C=N−で表される基を少なくとも1つ有する化合物であり、ここでは下記(a)〜(d)の好ましい形態の例示でもって、より具体的に説明する。形態に応じて、適宜選択して使用される。
【0012】
(a)ジイソシアネート化合物の脱炭酸反応により得られるイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物。
カルボジイミド化合物は、通常、有機溶媒中で、カルボジイミド化触媒の存在下、イソシアネート化合物を脱炭酸反応によりカルボジイミド化して製造することができ、さらにその材料がジイソシアネート化合物である場合、分子の両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が得られることになる。
上記製造方法において、脱炭酸反応させるジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族、芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0013】
上記有機溶媒としては、沸点が高く、且つイソシアネート化合物や生成するカルボジイミド基を有する化合物と反応するような活性水素を持たないものを用いることが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコールジアセテート、グリコールジアセテート、メチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート等のグリコールエーテルエステル類;エチルブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸アミル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル等の脂肪族エステル等が挙げられる。
上記カルボジイミド化触媒としては、ホスホレン類やホスホレンオキサイド類等を用いることが好ましく、例えば、1−エチル−3−メチル−3−ホスホレンオキサイド、1−フェニル−3−メチル−3−ホスホレンオキサイド、1−フェニル−3−メチル−2−ホスホレンオキサイド等が挙げられる。
【0014】
これらの材料を用いて、イソシアネート基の脱炭酸反応を行う方法としては、既知の方法が利用でき、例えば、窒素雰囲気下で、100〜200℃の反応温度で行うことができる。なお、上記カルボジイミド基を有する化合物を得る他の方法としては、例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、特開平5−178954号公報、特開平6−56950号公報等の方法が挙げられる。
【0015】
このような製造方法を用いて得られる、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物に関し、例えば、Kモル(但し、Kは2以上の整数)のジイソシアネート化合物を脱炭酸して得られる化合物を下記一般式(1)に示す。
OCN−(A−N=C=N)K−1−A−NCO (1)
上記一般式(1)中、Aは、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の合成に用いたジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除く残基を表す。
上記一般式(1)で表されるイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを原料としたカルボジイミドとして、カルボジライトV−03、V−05(いずれも商品名、日清紡社製)等が挙げられる。
【0016】
(b)上記(a)のカルボジイミド化合物を、更に鎖伸長剤で鎖伸長して得られたカルボジイミド化合物。
上記(a)のカルボジイミド化合物を、イソシアネート基と反応可能な鎖伸長剤を用いて高分子量化したものであり、分子内にカルボジイミド基をより多く含有する化合物とすることができる。このときに利用できる鎖伸長剤としては、カルボジイミド基と反応性が低くて、先にイソシアネート基と選択的に反応する化合物であることが好ましく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンジオール等のジオール化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のジアミン化合物;ヒドラジン等が挙げられる。
【0017】
(c)2モルのモノイソシアネート化合物とKモル(但し、Kは1以上の整数)のジイソシアネート化合物とを脱炭酸して得られる化合物。
上記(a)および(b)のカルボジイミド化合物は、分子の両末端にイソシアネート基を有する化合物であり、そのイソシアネート基を利用してさらにいろいろな分子鎖を付加できるという利点がある代わりに、カルボジイミド基と反応させる材料がイソシアネート基とも反応する場合、側鎖として導入し難いという問題がある。それに対して、分子の両末端がモノイソシアネート化合物で反応停止したカルボジイミド化合物では、分子の末端にイソシアネート基を有さないので、上記の問題は起こらないといえる。この様な分子の両末端がモノイソシアネート化合物で反応停止したカルボジイミド化合物は下記の一般式(2)で示すことができる。
B−N=C=N−(A−N=C=N)−B (2)
上記一般式(2)中、Bは、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の合成に用いたモノイソシアネート化合物のイソシアネート基を除く残基を表す。
ここで、利用可能なジイソシアネート化合物としては、上記(a)の合成材料と同じものを挙げる事ができ、また、モノイソシアネート化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、フェニルイソシアネート等の脂肪族、脂環族、芳香族又は芳香脂肪族モノイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0018】
(d)1モルのモノイソシアネート化合物とKモル(但し、Kは1以上の整数)のジイソシアネート化合物とを脱炭酸して得られる化合物。
分子の両末端にイソシアネート基を有するものと、有さないものとの中間的な化合物として、片末端のみモノイソシアネート化合物で反応停止させて、他方の片末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物も得ることができる。この様な分子の片末端がモノイソシアネート化合物で反応停止したカルボジイミド化合物は下記の一般式(3)で示すことができる。
OCN−(A−N=C−N)−B (3)
上記一般式(3)中、Bは、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の合成に用いたモノイソシアネート化合物のイソシアネート基を除く残基を表す。
ここで、利用できるジイソシアネート化合物は上記(a)の合成材料と同じものを挙げる事ができ、また、モノイソシアネート化合物としては、上記(c)の合成材料と同じものを挙げる事ができる。
【0019】
以上、上記カルボジイミド化合物(a)〜(d)は、カルボジイミド系化合物の出発物質として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
そして、上記のカルボジイミド化合物においては、カルボジイミド当量が100〜50000のものを利用する。ここで、カルボジイミド当量とは、(カルボジイミド化合物の分子量)/(カルボジイミド化合物1分子中のカルボジイミド基の数)で表される数を意味するものである。化合物のカルボジイミド当量が高すぎると、得られるカルボジイミド系化合物の分子全体に対するポリブタジエン側鎖の重量的な比率が少なくなり、顔料の分散安定性等が低下する。一方、カルボジイミド当量が低い化合物は、カルボジイミド系化合物の分子全体に対するポリブタジエン側鎖や後記する各機能性を有する側鎖の重量的な比率を高くすることが可能であるという点で有利であるが、カルボジイミド化合物自体の合成と、また側鎖を導入するための反応の制御が困難となる。そこで、より好ましいカルボジイミド当量としては、200以上、また、10000以下である。
【0020】
1−2)ポリブタジエン側鎖を導入するための化合物
次に、上記カルボジイミド化合物にポリブタジエン側鎖を導入するために利用する化合物について説明する。
本発明のカルボジイミド系化合物は、カルボジイミド基と、それと反応する官能基との反応によって側鎖を導入する方法が利用される。したがって、側鎖として導入される化合物としては、カルボジイミド基と反応する官能基を有するポリブタジエン化合物が利用可能である。
さらに、カルボジイミド基と反応する官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、その中でもカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基であることが好ましい。
【0021】
このような官能基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、下記の材料が利用できる。
(1)ポリブタジエンポリオールに酸無水物を反応させた化合物
具体例としては、ポリブタジエンポリオールに無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水安息香酸、スチレン−無水マレイン酸樹脂等の酸無水物を反応させた化合物等。
(2)マレイン化ポリブタジエン
具体例としては、ポリブタジエンに使用比率を調製してマレイン酸又は無水マレイン酸を付加重合させた化合物等。
なお、上記のポリブタジエンポリオールに酸無水物を反応させる方法、ポリブタジエンにマレイン酸又は無水マレイン酸を付加重合させる方法等としては、常法が利用できる。
本発明に用いるポリブタジエン化合物は、数平均分子量が200〜10000のものが好ましい。
【0022】
1−3)他の機能性鎖を導入するための材料
更に、要求される性能に応じて、下記の(ア)〜(エ)といった各種機能性を有する分子鎖や官能基の1種又は2種以上を、本発明のカルボジイミド系化合物の分子内に導入することにより、複数の機能を有する化合物を得ることもできる。そして、これら複数の機能を有するカルボジイミド系化合物は、利用できる分野がより広くなる可能性があるという点で、本発明において好ましい形態である。
(ア)カルボジイミド基
(イ)塩基性窒素含有鎖
(ウ)顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖
(エ)ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種の鎖
ここで、(ア)のカルボジイミド基を導入するには、カルボジイミド系化合物の製造において、上記ポリブタジエン側鎖を導入する際に、上記カルボジイミド化合物の分子内の少なくとも一つのカルボジイミド基を、そのまま未反応で残して利用し、(イ)で記載された機能性鎖の導入については、例えば、国際公開WO04/000950号パンフレットに記載された材料、(ウ)で記載された機能性鎖の導入については、例えば、国際公開WO04/003085号パンフレットに記載された材料、(エ)で記載された機能性鎖の導入については、例えば、国際公開WO03/076527号パンフレットに記載された材料を利用することができる。
【0023】
2)カルボジイミド系化合物の分子構造と効果について
本発明のカルボジイミド系化合物は、上記の材料を利用して得られるものであり、そのために、出発化合物であるカルボジイミド化合物に、上記のポリブタジエン側鎖として導入する材料を、カルボジイミド基との反応を介して導入する方法が利用できる。
このようなカルボジイミド系化合物としては、例えば、出発化合物であるカルボジイミド化合物に上記の式(1)の構造を有する化合物を利用した場合、以下の一般式(4)のように模式的に表現できる。
OCN−X(L)−(N=C=N)(N−L)−OCN (4)
〔ここで、Xは、それぞれ独立して、カルボジイミド基と、それと反応可能な官能基との反応による連結基を介して結合したポリブタジエン側鎖を含む構成単位、また、Lは分子内のXの構成単位の個数を表し、1以上の整数である。Nは、出発物質であるカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の個数を表し、1以上の整数である。そして、(N−L)は、0以上の整数を表す。〕
また、任意に利用される、その他の機能を有する鎖(イ)〜(エ)を導入する材料については、カルボジイミド基またはイソシアネート基の、どちらかとの反応を介して導入する方法が利用できる。このようなカルボジイミド系化合物としては、例えば、出発化合物であるカルボジイミド化合物に上記の式(1)の構造を有する化合物を利用した場合、以下の一般式(5)のように模式的に表現できる。
Y−X(L)−Z(M)−(N=C=N)(N−L−M)−Y (5)
〔ここで、X、N及びLは上記と同じ定義であり、Yは、それぞれ独立して、未反応のイソシアネート基、あるいはイソシアネート基と、それと反応可能な官能基との反応による連結基を介して結合した上記(イ)〜(エ)の機能性鎖を含む構成単位であり、Zは、それぞれ独立して、カルボジイミド基と、それと反応可能な官能基との反応による連結基を介して結合した(イ)〜(エ)の機能性鎖を含む構成単位である。また、Mは分子内のZの構成単位の個数を表し、0以上の整数を表す。また、(N−L−M)についても、0以上の整数を表す。〕
【0024】
なお、上記の一般式(4)および(5)は、主要な部位のみを抽象化して表示したものであり、また、XとZの構成単位がそれぞれ連なった構造を代表的に表示したが、XとZと−(N=C=N)−とがランダムに結合している構造も含む。そして、一般式(4)は本発明のカルボジイミド系化合物の基本構成ということができ、一方、一般式(5)については多機能性を図った好ましい構成であるといえる。
さらには、上記式(5)のYの部位は、(イ)〜(エ)以外であって、イソシアネート基と反応可能な化合物が、同様の反応による連結基を介して結合した構成単位であっても良い。その様なイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物としては、カルボジイミド基と反応性が低くて、先にイソシアネート基と選択的に反応する化合物が好ましく、
例えば、メタノール、エタノール、ポリブタジエンジオール等の水酸基含有化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の二級アミン化合物を挙げる事ができる。
また、本発明のカルボジイミド系化合物は、出発物質として用いられるカルボジイミド化合物が分子内にイソシアネ−ト基を有する場合、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するポリブタジエンジオール等の化合物と反応させたものであってもよい。
【0025】
なお、カルボジイミド基に、反応可能な官能基を反応させることによって上記の側鎖を導入する際に形成される連結基は、通常、カルボジイミド基と、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基等との反応により形成されるものであり、以下のような構造となる。
例えば、カルボジイミド基とカルボキシル基との反応から形成される連結基は、下記一般式(6)、(7)で表され、カルボジイミド基と水酸基との反応から形成される連結基は、下記一般式(8)、(9)で表され、カルボジイミド基とアミノ基との反応から形成される連結基は、下記一般式(10)され、カルボジイミド基とスルホン酸基との反応から形成される連結基は、下記一般式(11)で表され、カルボジイミド基とリン酸基との反応から形成される連結基は、下記一般式(12)で表される。
また、イソシアネート基に、反応可能な官能基を反応させて形成される連結基としては、通常、イソシアネート基と、水酸基、一級及び二級アミノ基等との反応により形成されるものであり、以下のような構造となる。
例えば、イソシアネート基と水酸基との反応から形成される連結基としては、下記一般式(13)で表され、イソシアネート基とアミノ基との反応から形成される連結基は、下記一般式(14)で表される。
【0026】
【化1】

【0027】
上記式中、Rは、水素原子又は炭素数1以上の炭化水素基を表す。
以上のように、本発明のカルボジイミド系化合物は、出発物質として例えば一般式(1)のカルボジイミド化合物のカルボジイミド基であった部位に、一般式(6)から一般式(12)のいずれか一つの連結基を介して、ポリブタジエン側鎖が少なくとも1つ導入されることにより、一般式(4)のXの構成単位を有するものである。さらには、同様にして他の機能性側鎖が導入された一般式(5)のZの構成単位を有する化合物、分子の両末端あるいは片末端に一般式(13)、(14)のどちらか一つの連結基を介して機能性鎖等が導入された化合物、分子内にカルボジイミド基が残存する化合物であることが好ましい。
本発明のカルボジイミド化合物は、ポリブタジエン側鎖を有することにより、化合物としての絶縁性炭化水素系溶媒に対する親和性が向上し、分散媒体中でドメインを形成して立体障害等の作用をすることから、分散媒体として絶縁性炭化水素系溶媒を使用する用途で、帯電特性、絶縁性等の他の特性を低下させずに、顔料分散性、分散安定性を向上させることができる。また、ポリブタジエン側鎖を導入することにより、ポリプロピレン樹脂成型品やポリプロピレン等のプラスチックに対する接着性も良好にさせることができる。
【0028】
さらに本発明のカルボジイミド系化合物は、他の機能性側鎖を導入することにより多機能化を図ることができ、例えば、基本的な性能である顔料分散機能については、使用する顔料の種類に応じて、顔料表面との共有結合や吸着による分散安定化作用を有する官能基や側鎖を導入することにより、更に充分な効果を発揮させることが可能となる。すなわち、後記するような表面にカルボジイミド基と反応する官能基を有する顔料を利用する場合は、カルボジイミド系化合物の分子内にカルボジイミド基を1つ以上有するようにし、当該官能基同士の共有結合を利用することにより、さらなる顔料分散の効果を発揮させることが可能となる。また、表面に酸性部位を有する顔料を利用する場合は、カルボジイミド系化合物として、分子内に塩基性窒素含有鎖を有するようにすると、酸−塩基の親和力による吸着を利用することができる。なお、上記「塩基性窒素含有鎖」とは、塩基性窒素含有基を少なくとも一つ有するものであり、上記「塩基性窒素含有基」とは、水中で4級アンモニウムイオンを形成する窒素を含有する基はもとより、ルイス塩基として作用する窒素を含むものであり、その代表的なものとしてはアミノ基や含窒素複素環基等が挙げられる。更に、顔料の分子構造の類似性に起因する親和力による吸着を利用する場合は、カルボジイミド系化合物としては、分子内に顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖を有するようにする。
【0029】
一方、分散媒体として絶縁性炭化水素系溶媒以外の溶媒を用いる塗料や印刷インキの分野では、顔料を分散媒体中により安定的に分散させるという観点からは、上記カルボジイミド系化合物は、更に、分子内にポリエステル鎖、ポリエーテル鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種の鎖を有するものであることが好ましく、その中でも、側鎖として有するものがより好ましい。これらの側鎖は、顔料を分散媒体中に分散したときに、分散媒体中でドメインを形成して立体障害等の作用をすることから、顔料を分散媒体中により安定的に分散させることができるものと考えられる。
【0030】
3)カルボジイミド系化合物の製造方法
上記の材料を用いて本発明のカルボジイミド系化合物を製造する場合において、全ての反応、すなわち、ポリブタジエン鎖や他の機能性鎖を導入するための反応として、カルボジイミド基とカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基等との反応、また、イソシアネート基と水酸基、アミノ基等との反応などには、常法が利用できる。さらに、各種機能性鎖を導入する順序は、特に限定されるものではなく、例えば、カルボジイミド基と反応する官能基を有する化合物を2種以上使用する場合は、別々あるいは同時に加えて反応させることができ、イソシアネート基と反応する官能基を有する化合物を2種以上使用する場合にも、別々あるいは同時に加えて反応させることもできる。また、カルボジイミド基と反応する官能基を有する化合物、および、イソシアネート基と反応する官能基を有する化合物を利用する場合、最終的に同じ化合物が得られれば、先にカルボジイミド基と反応させても、イソシアネート基と反応させてもどちらでもよい。
なお、分子内に導入するポリブタジエン側鎖、各機能性鎖の種類およびその比率、さらには残存するカルボジイミド基の量等は、例えば、顔料分散剤として利用する際の顔料や分散媒体等の種類、また、その他の利用分野で要求される性能に応じて適宜設定して、最終的に良好な性能バランスを有する化合物となるように各材料を配合することが好ましい。
以上の材料と製造方法から得られる本発明のカルボジイミド系化合物の数平均分子量としては、1000以上、また、100000以下であることが好ましい。数平均分子量が高くなりすぎると、分散媒体中に顔料を分散させた際や、顔料分散組成物とした際に、適切な粘度のものが得られにくくなり、特に高濃度の顔料分散組成物が必要なときは好ましくない。一方、数平均分子量が低くなりすぎると、分散媒体中での顔料の分散安定性が低下して好ましくない。より好ましくは、1000以上、また、50000以下である。
【0031】
<顔料分散組成物>
次に、上記カルボジイミド系化合物を用いて、顔料を分散させてなる顔料分散組成物について説明する。
本発明の顔料分散組成物に用いられるカルボジイミド系化合物としては、顔料表面の官能基や吸着点の有無、分散媒体の種類、得られた顔料分散組成物の用途等に応じて、好適には上述した(ア)〜(エ)の官能基や機能鎖を有するカルボジイミド系化合物を適宜選択して用いることができる。
また、本発明の顔料分散組成物において、顔料としては、カルボジイミド系化合物と、少なくとも、共有結合、酸−塩基の親和力による吸着又は分子構造の類似性に起因する親和力による吸着するものであることが好ましく、例えば、液体現像剤、油性インクジェット用インキ組成物、印刷インキ、塗料、カラーフィルター用レジスト組成物等に一般的に用いられる有機顔料や無機顔料を使用することができる。
【0032】
まず、カルボジイミド基を有するカルボジイミド系化合物と共有結合性を有する顔料としては、顔料表面にカルボジイミド基と反応する官能基を有するものが好適であり、その中でもカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する有機顔料や無機顔料であることが好ましい。
上記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系等が、無機顔料としては、カーボンブラック(好ましくは、pH7以下でカルボキシル基を有するもの)、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、顔料表面にカルボジイミド基と反応する官能基を有さない場合は、表面処理により官能基を導入することができ、例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第1刷、技術情報協会(出版)、2001年12月25日、p.76〜85に記載のプラズマ処理や酸素/紫外線処理、特開昭58−217559号公報に記載の低温プラズマ法によって、上記カルボジイミド基と反応可能な官能基が導入できる。また、顔料を絶縁性化合物(シリカ、シラン化合物、チタン化合物等)で被覆し、カルボジイミド基と反応する官能基が導入できる。
【0033】
次に、塩基性含窒素鎖を有するカルボジイミド系化合物に対して、酸−塩基の親和力による吸着部を有する顔料としては、顔料表面に塩基性窒素含有基との吸着部を有する有機顔料や無機顔料であることが好ましい。
上記塩基性窒素含有基との吸着部としては、代表的には酸基であって、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の塩基性窒素含有基と吸着可能な官能基である。
これら塩基性窒素含有基との吸着部を有する有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系等が、無機顔料としては、カーボンブラック(好ましくは、pH7以下でカルボキシル基を有するもの)等挙げられる。
【0034】
尚、塩基性窒素含有基との吸着部がない顔料でも、顔料表面の誘導体処理やスルホン化処理等、通常の官能基導入方法で処理することにより、カルボキシル基やスルホン酸基等を導入することができる。
次に、分子内に顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖を有するカルボジイミド系化合物に対して、分子構造の類似性に起因する親和力による吸着部を有する顔料としては、顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖と同一又は類似の構造である有機顔料や無機顔料;顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖と同一又は類似の構造でなくても顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖と充分な吸着力を有する有機顔料や無機顔料であることが好ましい。
このような分子構造の類似性に起因する親和力による吸着は、例えば、カルボジイミド基及び/又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有さない顔料(共有結合が利用できない場合);カルボジイミド基と反応可能な官能基を有する顔料であっても、該顔料が有するカルボジイミド基と反応可能な官能基が、例えば、アミノ基、水酸基等で、カルボジイミド基と反応する温度が100℃以上である顔料(共有結合の利用が条件的に困難な場合)に、より有効である。
【0035】
このような顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖及び/又は色素中間体鎖と顔料との好適な組合せとしては、例えば、(1)顔料誘導体としてのフタロシアニン系顔料誘導体については、顔料としてのフタロシアニン系顔料以外にもピグメントブラック7との組合せがあり、(2)色素誘導体としてのβ−ナフトールオレンジ染料誘導体については、顔料としてのナフトール系顔料以外にも、縮合アゾ顔料との組合せがあり、(3)色素中間体としてのアントラキノン誘導体については、顔料としてのジアントラキノニル系顔料以外にも、ジケトピロロピロール系顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリ系顔料、ペリノン系顔料、ヘテロ環を有するアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジブロモアンタントロン系顔料及び/又はベンズイミダゾロン系顔料との組合せが挙げられる。
【0036】
上記カルボジイミド系化合物を用いて、顔料分散組成物を得る方法としては、例えば、(I)カルボジイミド系化合物のみで顔料の処理を行った後、顔料を安定的に分散できる分散媒体、必要に応じて各種バインダー樹脂、光重合性化合物、溶剤、界面活性剤、その他の添加剤を加え攪拌し顔料組成物を得る方法、(II)カルボジイミド系化合物を溶解させた、顔料を安定的に分散できる分散媒体で顔料を分散させながら処理し顔料分散組成物を得る方法等が挙げられる。
【0037】
尚、(II)においては、顔料分散時、顔料分散後に、必要に応じて各種バインダー樹脂、光重合性化合物、溶剤、界面活性剤、その他の添加剤含有させることもできる。
本発明でいう「処理」とは、顔料の分散粒子表面の全面又は一部を、カルボジイミド系化合物で処理することを意味する。具体的には、上記顔料、上記カルボジイミド系化合物、及び、必要に応じて分散媒体、その他の添加剤等の混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散装置等を用いて混練し、分散・処理する方法が挙げられる。
【0038】
上記(I)の顔料分散組成物を得る方法は、カルボジイミド系化合物の融点以上の温度で顔料の処理を行い、後から任意の用途で好適な分散媒体中に分散する方法を利用することができる。尚、カルボジイミド基と反応可能な官能基を有する顔料を処理する場合、該官能基の間で反応を促進できる温度、概ね100℃以下であって、好ましくは、40〜80℃まで加温することが好ましい。
一方、上記(II)の顔料分散組成物を得る方法では、比較的低温でも処理が可能であるが、分子内にカルボジイミド基を有するカルボジイミド系化合物で、カルボジイミド基と反応可能な官能基を有する顔料を処理する場合、更に上記反応を促進する温度まで加温することがより好ましい。
【0039】
また、上記顔料分散組成物を得る方法において使用可能な分散媒体としては、有機系分散媒体として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、蟻酸n−アミル、ピルビン酸エチル等のエステル類;脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等のアルコール類;ポリシロキサン等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素としては、ノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素等が挙げられる。上記脂環式炭化水素としては、シクロパラフィン系炭化水素等が挙げられる。
なお、これらの分散媒体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、水性媒体としては、水のみであってもよく、水混和性の有機系分散媒体との併用であってもよい。
【0040】
上記顔料分散組成物における顔料の使用量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して質量分率で、5〜97質量%であることが好ましい。
上記顔料分散組成物におけるカルボジイミド系化合物の質量割合としては、顔料(使用顔料の合計)100質量部に対して、好ましくは、2質量部以上、また、100質量部以下であるが、好ましくは、最終的組成物としての用途、顔料表面に存在するカルボジイミド系化合物と反応、吸着する官能基の多少や、分散性能、流動性、要求性能等によって調整することが好ましい。
【0041】
次に、本発明の最終組成物としての用途である、液体現像剤及び油性インクジェット用インキ組成物について説明する。
<油性インクジェット用インキ組成物>
本発明の油性インクジェット用インキ組成物は、上記顔料分散組成物を含有するものである。油性インクジェット用インキ組成物は、顔料、カルボジイミド系化合物、炭化水素系有機溶媒を少なくとも含有し、必要に応じてバインダー樹脂、極性溶媒等の添加剤が適宜含有されているものである。
油性インクジェット用インキ組成物に使用するカルボジイミド系化合物としては、顔料表面の官能基や吸着点の有無、分散媒体の種類等に応じて、好適には上述した(ア)〜(ウ)の官能基や機能鎖を有するカルボジイミド系化合物を適宜選択して用いる。尚、カルボジイミド系化合物を得るために、出発物質として用いられるカルボジイミド化合物が、分子内にイソシアネ−ト基を有する場合は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するポリブタジエンジオール等の化合物と反応させたものを利用することが好ましい。
【0042】
本発明の油性インクジェット用インキ組成物を構成する顔料としては、一般のインクジェット用インクで使用できる各種の無機及び有機顔料が利用可能である。上記顔料としては、例えば、カーボンブラック等の無機顔料;染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系等の有機顔料が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機顔料中でも、とくに有用なものとしては、C.I.ピグメントイエロー93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、193;C.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、71;C.I.ピグメントレッド122、202;C.I.ピグメントレッド122と202の固溶体;C.I.ピグメントブルー15;C.I.ピグメントバイオレット19、23、33;C.I.ピグメントグリーン7、36;C.I.ピグメントブラック7等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
油性インクジェット記録方式では、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を基本として、最近ではオレンジ、グリーンを加えた6色、更にはライトマゼンタ、ライトブルーを加えた8色のインクを用いて画像等が形成されている。
これらの色相を得るために、更に上記の顔料の中でも耐候性の良好なものが好適であり、とりわけ、イエローとしては、C.I.ピグメントイエロー138、154、180、185、マゼンタとしては、C.I.ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントバイオレット19、シアンとしては、C.I.ピグメントブルー15、ブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7の酸性若しくは中性顔料、オレンジとしては、C.I.ピグメントオレンジ43、61、63、71、グリーンとしては、C.I.ピグメントグリーン7、36がより好適である。
【0044】
本発明において、顔料の好適な使用量としては、油性インクジェット用インキ組成物中に0.5〜30質量%であり、より好適には1〜10質量%程度である。顔料の使用量が少なくなりすぎるとインクの色濃度が低下するおそれがあり、一方、多くなりすぎるとインクの粘度や流動性の面から印刷が困難となるおそれがある。
【0045】
本発明の油性インクジェット用インキ組成物を構成する炭化水素系有機溶媒としては、飽和炭化水素系有機溶媒及び/又は一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒を含有するものが使用できる。
【0046】
【化2】

【0047】
(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素原子数1〜4の低級アルキル基を表す。)
飽和炭化水素系有機溶媒としては、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のノルマルパラフィン系炭化水素;イソオクタン、イソデカン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等のシクロパラフィン系炭化水素;更に、市販製品として、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD130、エクソールD140(以上、いずれもエクソン化学社製)、シェルゾール(シェルオイル社製)、ソルトロール(フィリップス石油社製)、ベガゾール(モービル石油社製)、IPソルベンド2835(出光石油化学社製)、モレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55(以上、いずれも松村石油研究所社製)、流動パラフィンNo.40−S、流動パラフィンNo.55−S(以上、いずれも中央化成社製)等を挙げることができる市販の飽和炭化水素系有機溶媒の中には少量の不飽和炭化水素を含有するものもあるが、本発明では支障なく利用できる。なお、市販製品については、すべて商品名を表す。
上記飽和炭化水素系有機溶媒としては、これらの中でも、イソパラフィン、イソパラフィンとシクロパラフィンとの混合物及び流動パラフィンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
なお、本発明の油性インクジェット用インキ組成物の蒸発乾燥による印字速度の向上とノズルの目詰まりを考慮すると、飽和炭化水素系有機溶媒の沸点としては180〜360℃/101kPaの範囲にあるのが好適である。また、インクの吐出安定性の面から、飽和炭化水素系有機溶媒は25℃における粘度が20mPa・s以下のものが好適である。また、低粘度の飽和炭化水素系有機溶媒と高粘度の飽和炭化水素系有機溶媒とを混合して、上記範囲内の粘度になるように調整しても使用可能である。
【0049】
一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒のR〜Rの低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
上記一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒の具体例としては、1−フェニル−キシリルエタン、フェニルキシリルメタン等が挙げられる。
これらの飽和炭化水素系有機溶媒及び/又は一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒は、単独又は混合して利用できる。
【0050】
本発明の油性インクジェット用インキ組成物で、必要に応じて使用する極性溶媒としては、顔料分散性や吐出安定性を向上させるための植物油等を挙げることができる。
上記植物油としては、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ナタネ油、カラシ油、ゴマ油等の半乾性油;オリーブ油、落花生油、ツバキ油等の不乾性油;亜麻仁油、サフラワー油等の乾性油を挙げることができ、これらの植物油は単独又は混合して使用できる。特に性状の点からは、酸化による重合性の低い半乾性油や不乾性油であって、その中でも、より低粘度なナタネ油、オリーブ油、また、安価な大豆油が好ましい。
本発明の油性インクジェット用インキ組成物で、必要に応じて使用するバインダー樹脂としては、被印刷体への固着性等の改善のため使用するもので、特に再溶解性に効果がある石油樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂等が好適である。なお、顔料分散剤として、カルボジイミド基を有するカルボジイミド系化合物を使用する場合は、バインダー樹脂としては、カルボジイミド基と反応する官能基を有していないものを使用することが好ましい。
【0051】
これらの構成材料を用いて油性インクジェット用インキ組成物を製造する方法としては、例えば、飽和炭化水素系有機溶媒及び/又は上記一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒の一部に顔料分散剤であるカルボジイミド系化合物を溶解させて顔料分散剤溶剤とし、これに更に顔料、必要に応じてバインダー樹脂等を混合攪拌し、分散機で顔料を分散してベースインクを調製し、このベースインクに、残りの溶媒、必要に応じて植物油等の極性溶媒、その他の添加剤を添加混合する方法等が利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
上記分散機としては、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY(ジーナス社製)、DeBEE2000(DEBEE社製)等)、パールミル等を挙げることができ、特に油性インクジェット用インキ組成物では、より微細に顔料を分散させる必要があることから、上記分散機の中でも湿式サーキュレーションミル、DeBEE2000が好ましい。
【0053】
なお、得られる油性インクジェット用インキ組成物は、25℃における表面張力が36mN/m以上であることが好ましく、この範囲の表面張力を有する油性インクジェット用インキ組成物は、ノズル内への充填が速やかであり、ノズルの詰まりも少なくすることができる。
また、低温における保存安定性等を良好にするという観点から、油性インクジェット用インキ組成物の凝固点は−10℃が好適である。更に、油性インクジェット用インキ組成物の粘度としては、使用時の環境温度において、1.0〜30.0mPa・sが好ましく、特に5.0〜20.0mPa・sが好適である。粘度がこの範囲にあると、高速印刷において吐出追随性や吐出安定性も良好となる。
【0054】
これらの物性値は、最終的な油性インクジェット用インキ組成物として有しているものであればよいが、とくに主要成分である飽和炭化水素系有機溶媒及び/又は上記一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒に支配される物性値であることから、用いる飽和炭化水素系有機溶媒及び/又は上記一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒(混合物の場合は混合物として)として、上記の表面張力及び粘度を有し、更に凝固点が−10℃以下となるものを選択しておくことが望ましい。
本発明の油性インクジェット用インキ組成物の用途としては、ピエゾ振動素子を利用して油性インクジェット用インクを吐出する、オンデマンド・インクジェット記録方式に適しており、現在市販されている油性インクジェット用インクを用いる印刷装置において、良好な吐出安定性を得ることができる。なお、上記一般式(15)で表される炭化水素系有機溶媒が溶剤の主要成分である場合は、ピエゾ振動素子を利用して油性インクジェット用インクを吐出する、オンデマンド・インクジェット記録方式において7kHzを越える印刷周波数での吐出性も良好となる。
【0055】
本発明の油性インクジェット用インキ組成物としては、該組成物をそのまま油性インクジェット用インクとしてもよいし、更にその他の添加剤を添加すること等により、油性インクジェット用インクを構成する成分としてもよい。
本発明の油性インクジェット用インキ組成物を印刷する被印刷体としては、インクジェット記録方式で一般に使用されているものがいずれも使用でき、例えば、普通紙、インク受理層を設けた専用紙、プラスチックフィルム、インク受理層を設けたプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0056】
<液体現像剤>
本発明の液体現像剤は、顔料分散組成物を含有するものである。液体現像剤は、顔料、カルボジイミド系化合物、熱可塑性樹脂、絶縁性有機溶媒を少なくとも含有し、必要に応じて荷電制御剤等の添加剤が適宜含有されているものである。
液体現像剤に使用するカルボジイミド系化合物としては、顔料表面の官能基や吸着点の有無、分散媒体の種類、得られた顔料分散組成物の用途等に応じて、好適には上述した(ア)〜(ウ)の官能基や機能鎖を有するカルボジイミド系化合物を適宜選択して用いる。尚、カルボジイミド系化合物を得るために、出発物質として用いられるカルボジイミド化合物が、分子内にイソシアネ−ト基を有する場合は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するポリブタジエンジオール等の化合物と反応させたものを利用することが好ましい。
本発明の液体現像剤において、上記カルボジイミド系化合物の使用比率は、好ましくは後述の顔料(使用顔料の合計)100質量部に対して2〜100質量部である。
液体現像剤を構成する顔料としては、通常使用されている顔料を使用できる。顔料としては、無機顔料、有機顔料が使用でき、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ベンガラ、黄鉛、群青等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料等が挙げられる。
本発明の液体現像剤における顔料の含有量は、特に限定されないが、画像濃度の点から、液体現像剤100重量部中に1〜10重量部が好ましい。
【0057】
液体現像剤を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を変性しカルボキシル基を導入したもの、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;熱可塑性飽和ポリエステル樹脂;スチレン−アクリル系共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂等のスチレン系樹脂;アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0058】
液体現像剤に構成する絶縁性有機溶媒としては、静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω・cm程度)のものが使用される。例えば、ノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素;シクロパラフィン系炭化水素等の脂環式炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素;ポリシロキサン等を用いることができる。特に、臭気、無害性、コストの点から、ノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素が好ましい。具体的には、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上いずれもエクソン化学社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上いずれも出光石油化学社製)等を挙げることができる。
【0059】
上記液体現像剤には、必要に応じて、荷電制御剤等の添加剤を適宜使用することができる。
荷電制御剤としては、大別して2つのタイプがある。
1つはトナー粒子の表面をイオン化、或いは、イオンの吸着を行い得る物質でトナー粒子の表面を被覆する方法である。このタイプとして、アマニ油、大豆油等の油脂;アルキッド樹脂、ハロゲン化重合体、芳香族ポリカルボン酸、酸性基含有水溶性染料、芳香族ポリアミンの酸化縮合物等が例示できる。
【0060】
もう1つは、絶縁性有機溶媒に溶解しトナー粒子とイオンの授受を行い得るような物質を共存させることであり、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸亜鉛、ドデシル酸コバルト、ドデシル酸ニッケル、ドデシル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸コバルト等の金属石鹸類;石油系スルホン酸金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩等のスルホン酸金属塩類;レシチン等のリン脂質;t−ブチルサリチル酸金属錯体等のサリチル酸金属塩類;ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、スルホン酸含有樹脂、ヒドロキシ安息香酸誘導体等が例示できる。
【0061】
本発明の液体現像剤を製造するには従来公知の製造法が使用できる。例えば、(1)本発明の液体現像剤において使用する絶縁性有機溶媒中で、本発明の分散剤であるカルボジイミド系化合物の存在下に顔料を分散させ、この系で不飽和二重結合を持つモノマーの重合を行い、顔料を含有する熱可塑性樹脂の樹脂粒子(トナー粒子)を形成する、いわゆるNADによる方法、(2)本発明の液体現像剤において使用する絶縁性有機溶媒中で、本発明の分散剤であるカルボジイミド系化合物の存在下に顔料を分散させ、この系に熱可塑性樹脂を良溶媒に溶解した樹脂溶液を加え、良溶媒を留去した後冷却したり、あるいは貧溶媒を加えて、顔料を含有する樹脂粒子を形成する方法、(3)本発明の液体現像剤において使用する絶縁性溶媒(熱可塑性樹脂の良溶媒を併用してもよい)中で、本発明の分散剤の存在下に顔料および熱可塑性樹脂を湿式粉砕する方法等が使用できる。ただし、本発明の範囲はこれらの例によって制限されるものではない。
【発明の効果】
【0062】
本発明のカルボジイミド系化合物は、カルボジイミド化合物の側鎖としてポリブタジエン化合物を導入することにより、顔料分散性及び顔料分散安定性に優れ、分散媒体として絶縁性炭化水素溶媒を使用する場合、更に帯電特性及び絶縁性にも優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「重量部」を意味するものとする。
1.油性インクジェット用インキ組成物
<顔料分散剤>
実施例1 顔料分散剤1(グラフト鎖の分子量1500、グラフト率50%)の合成
窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、分子量1500のポリブタジエンジオール200部、無水フタル酸19.7部を仕込み、約120℃で保持して水酸基と酸無水物を反応させた末端カルボン酸型のポリブタジエン樹脂1を得た。
次いで、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、イソシアネート基を有するカルボジイミド当量312のポリカルボジイミド化合物50.0部、メチルジエタノールアミン13.8部を仕込み、約100℃で2時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いでアイソパーM(イソパラフィンの混合物、沸点範囲208〜254℃/101kPa、エクソン化学社製)を293.8部、上記ポリブタジエン樹脂1を132.0部仕込み、約80℃で2時間保持してカルボジイミド基とカルボキシル基とを反応させ、カルボジイミド当量2448の顔料分散剤1(ポリブタジエン側鎖を有するカルボジイミド化合物、固形分40%)を得た。
【0064】
実施例2 顔料分散剤2(グラフト鎖の分子量3000、グラフト率50%)の合成
窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、分子量3000のポリブタジエンジオール200部、無水フタル酸9.9部を仕込み、約120℃で保持して水酸基と酸無水物を反応さた末端カルボン酸型のポリブタジエン樹脂2を得た。
窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、イソシアネート基を有するカルボジイミド当量312のポリカルボジイミド化合物50.0部、メチルジエタノールアミン13.8部を仕込み、約100℃で2時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いでアイソパーM(イソパラフィンの混合物、沸点範囲208〜254℃/101kPa、エクソン化学社製)474.0部、上記ポリブタジエン樹脂2を252.2部仕込み、約80℃で2時間保持してカルボジイミド基とカルボキシル基とを反応させ、カルボジイミド当量3950の顔料分散剤2(ポリブタジエン側鎖を有するカルボジイミド化合物、固形分40%カルボジイミド化合物)を得た。
【0065】
比較例1 比較顔料分散剤1の合成
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、イソシアネート基を有するカルボジイミド当量315のポリカルボジイミド化合物57.0部、メチルジエタノールアミン16.0部を仕込み、約100℃で2時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いでアイソパーM(イソパラフィンの混合物、沸点範囲208〜254℃/101kPa、エクソン化学社製)245.3部を仕込んだ後、末端にカルボキシル基を有する分子量1000の12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物90.5部を仕込み、約90℃で、カルボジイミド基とカルボキシル基とを反応させ、数平均分子量約2400、カルボジイミド当量1807の比較顔料分散剤1(ポリエステル側鎖を有するカルボジイミド化合物、固形分40%)を得た。
【0066】
なお、比較顔料分散剤2としてソルスパース17000(アベシア社製)を用いた。
【0067】
<顔料分散組成物>
実施例3 顔料分散組成物1の調製
分散剤として実施例1の顔料分散剤1の5部(固形分)を、溶剤としてアイソパーM(イソパラフィンの混合物、沸点範囲208〜254℃/101kPa、エクソン化学社製)の70部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−8(三菱化学社製)の25部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、3μppのプリーツフィルタで濾過して粗大粒子を除去して、顔料分散組成物1を得た。
【0068】
実施例4 顔料分散組成物2の調製
分散剤として実施例2の顔料分散剤2の5部(固形分)を、溶剤としてアイソパーM(エクソン化学社製)の70部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−8(三菱化学社製)の25部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、3μppのプリーツフィルタで濾過して粗大粒子を除去して、顔料分散組成物2を得た。
【0069】
比較例2 比較顔料分散組成物1の調製
分散剤として比較例1の比較顔料分散剤1の5部(固形分)を、溶剤としてアイソパーM(エクソン化学社製)の70部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−8(三菱化学社製)の25部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、3μppのプリーツフィルタで濾過して粗大粒子を除去して、比較顔料分散組成物1を得た。
【0070】
比較例3 比較顔料分散組成物2の調製
分散剤として比較顔料分散剤2の5部(固形分)を、溶剤としてアイソパーM(エクソン化学社製)の70部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−8(三菱化学社製)の25部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、3μppのプリーツフィルタで濾過して粗大粒子を除去して、比較顔料分散組成物2を得た。
【0071】
<油性インクジェット用インキ組成物>
実施例5、6及び比較例4、5
表1の配合に従い、上記の顔料分散組成物1、2、比較顔料分散組成物1、2とその他の材料とを攪拌混合して油性インクジェット用インキ組成物を得、下記の性能評価を行った。
【0072】
<性能評価>
実施例3、4の油性インクジェット用インキ組成物、比較例2、3の油性インクジェット用インキ組成物に関し、下記の評価試験を行った。結果を表1に示す。
(保存安定性)
実施例3、4、比較例2、3の各顔料分散組成物、及び、実施例5、6、比較例4、5の各油性インクジェット用インキ組成物をガラス瓶にとり密栓して、60℃で10日間保存したときの沈降物の有無を観察し、次の基準に基づいて保存安定性を評価した。
A:沈降物は全く生じない
B:沈降物は生じるが、軽く振ればなくなる
C:激しく振っても沈降物がなくならない
【0073】
(吐出安定性)
一般的な室内環境と考えられる20℃の温度下で、市販の油性インクジェット用インク対応の印字装置(IP−4000、ピエゾタイプ、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、実施例5、6、比較例4、5の各油性インクジェット用組成物インクを印字し、得られた印字物の細線の連続性から吐出安定性を評価した。
用紙:Xerox LのA4用紙
印字図柄:長さ180mm、太さ約0.2mmの細線を用紙1枚に対して30本印字
評価
A:100枚印字してもかすれがみられない
B:印字枚数が50枚以上、100枚未満でかすれた部分が見受けられる
C:印字枚数が50枚未満でかすれた部分が見受けられる
【0074】
【表1】

【0075】
2.液体現像剤
<顔料分散剤>
実施例7 顔料分散剤3(グラフト鎖の分子量3000、グラフト率50%)の合成
窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、分子量3000のポリブタジエンジオール200部、無水フタル酸9.9部を仕込み、約120℃で保持して水酸基と酸無水物を反応さた末端カルボン酸型のポリブタジエン樹脂3を得た。
窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、イソシアネート基を有するカルボジイミド当量312のポリカルボジイミド化合物50.0部、メチルジエタノールアミン13.8部を仕込み、約100℃で2時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いでアイソパーL(エクソン化学社製)474.0部、上記ポリブタジエン樹脂2を252.2部仕込み、約80℃で2時間保持してカルボジイミド基とカルボキシル基とを反応させ、固形分40%、カルボジイミド当量3950の顔料分散剤3(ポリブタジエン側鎖を有するカルボジイミド化合物、固形分40%)を得た。
【0076】
なお、比較顔料分散剤3としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた。
【0077】
<液体現像剤>
実施例8 液体現像剤の調製
カーボンブラックMA−8(三菱化学社製)20部、実施例7の顔料分散剤3の4部(固形分)、及びアイソパーLの76部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用いてペイントシェーカーで混練した。この混練物の30部をアイソパーLの70部で希釈し、これにデュミランC−2270(エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物、武田薬品工業社製)2部をテトラヒドロフラン100部に溶解した溶液を加えた。次いでテトラヒドロフランを60〜80℃で留去し、室温まで放冷した後、電荷制御剤としてモレスコアンバーSB−50N(商品名、スルホン酸バリウム塩、松村石油研究所社製)の2.5部を添加して、液体現像剤を得た。
【0078】
比較例6、7 比較液体現像剤の調製
実施例8における実施例7の顔料分散剤3の替わりに、比較顔料分散剤2、比較顔料分散剤3をそれぞれ用いたほかは実施例8と同様にして、比較例6、7の液体現像剤を得た。
【0079】
<性能評価>
実施例8の液体現像剤、比較例6、7の液体現像剤に関し、下記の評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0080】
(電気抵抗値)
各液体現像剤の電気抵抗値を、アドバンス社製R8340を用いて測定し、電気抵抗値が≧1011のものをA、電気抵抗値が<1011のものをBとして評価した。
【0081】
(経時安定性)
実施例8、比較例6、7の各液体現像剤の調製時と25℃で1ヶ月放置後の粘度及び平均粒径の比較を行い、調製時と較べて変化の少ないものをA、劣化の認められるものをBとして評価した。
【0082】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基と反応する官能基を有するポリブタジエン化合物の当該官能基を、カルボジイミド当量が100〜50000であるカルボジイミド化合物のカルボジイミド基に反応させることにより、ポリブタジエン鎖を導入してなるカルボジイミド系化合物。
【請求項2】
更に、分子内に塩基性窒素含有鎖、顔料誘導体鎖、顔料中間体鎖、色素誘導体鎖、色素中間体鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種の鎖を含む請求項1記載のカルボジイミド系化合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカルボジイミド系化合物を用いて、顔料を分散させてなる顔料分散組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の顔料分散組成物を含有する液体現像剤。
【請求項5】
請求項3に記載の顔料分散組成物を含有する油性インクジェット用インキ組成物。

【公開番号】特開2006−257243(P2006−257243A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75995(P2005−75995)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】