カルボニル自己分散性顔料およびその顔料を含むインクジェットインク
液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料が開示されている。こうした顔料は、反応性インクジェットインク配合物中で特に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、自己分散性顔料およびインクジェットインク中でのその顔料の使用に関する。より詳しくは、本発明は、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基および更に少なくとも1個の共有結合した外部反応性カルボニル基を有する自己分散性顔料に関する。この顔料は、反応性インクジェットインク配合物中で特に有用である。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2006年6月5日に出願された米国仮特許出願第60/810,937号からの優先権を請求する。この特許出願の開示は、その内容全体を本明細書に記載したものとしてすべての目的のために本明細書に引用して援用する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷は、インクの小滴を種々の媒体上に沈着させて所望の画像を形成する非衝撃印刷方法である。小滴は、マイクロプロセッサーによって発生する電気信号に応答してプリントヘッドから吐出する。用いられるインクは、例えば、良好な分散安定性、吐出安定性および媒体への良好な定着を含む厳しい要求を受ける。
【0004】
インクジェットプリンタは低コストで高品質の印刷を提供し、レーザプリンタなどの他のタイプのプリンタの一般的な代替品になってきた。しかし、インクジェットプリンタは、レーザプリンタの速度およびレーザ印刷画像の耐久性に匹敵できない。高い耐久性を有するインクジェットプリントは非常に有利であろう。
【0005】
少なくとも2種のインクを含む反応性インクジェットインクセットの使用は、インクジェットプリントの耐久性を高めることが可能である。第1のインクは少なくとも1個の反応性カルボニル基を有する化学種を含有し、第2のインクは少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種を含有する。
【0006】
こうした反応性インクセットの利点は、米国特許公報(特許文献1)(2006年3月9日出願)に完全に記載されており、2種のインクが重なり状態で基材上に印刷される時に最良に実現することが可能である。こうして、反応性化学種の両方のタイプは基材上で近傍にあり、架橋は容易に起きて、それによってプリントの耐久性を高めることが可能である。インクの印刷は、いかなる順序でも、または同時に起きることが可能である。反応性カルボニル基と反応性アミン基の架橋反応を促進するために、印刷された基材を加熱することが有利な場合がある。この目的のために有用な温度は、典型的には約60℃〜約150℃である。
【0007】
適合性で安定性であるとともに反応性インクセットに容易に導入して性能を最適化できる反応性化学種の選択を広げるために新規の化学品がなお必要とされている。従って、インクジェット印刷のために適する反応性カルボニル基含有自己分散性顔料が必要とされ、本発明の目的は、こうした顔料を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/780,706号明細書
【特許文献2】米国特許第6,852,156号明細書
【特許文献3】米国特許第6,723,161号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0103822号明細書
【特許文献5】米国特許第5,718,746号明細書
【特許文献6】米国特許第5,846,307号明細書
【特許文献7】米国特許第5,861,447号明細書
【特許文献8】米国特許第6,468,342号明細書
【特許文献9】米国特許第6,480,753号明細書
【特許文献10】米国特許第6,831,194号明細書
【特許文献11】米国特許第6,660,075号明細書
【特許文献12】米国特許第6,758,891号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0138342号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2001/0036994号明細書
【特許文献15】米国特許第5,922,118号明細書
【特許文献16】米国特許第5,900,029号明細書
【特許文献17】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献18】米国特許第5,895,522号明細書
【特許文献19】米国特許第5,885,335号明細書
【特許文献20】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献21】米国特許第5,837,045号明細書
【特許文献22】米国特許第6,398,858号明細書
【特許文献23】米国特許第6,494,943号明細書
【特許文献24】米国特許第6,506,245号明細書
【特許文献25】米国特許第5,713,988号明細書
【特許文献26】米国特許第6,336,965号明細書
【特許文献27】米国特許第6,432,194号明細書
【特許文献28】特開平第11323176号公報
【特許文献29】特開平第11323178号公報
【特許文献30】特開平第11323229号公報
【特許文献31】特開平第11323179号公報
【特許文献32】特開平第11323222号公報
【特許文献33】特開平第11335586号公報
【特許文献34】特開平第11335587号公報
【特許文献35】米国特許第6,150,433号明細書
【特許文献36】米国特許第6,323,257号明細書
【特許文献37】米国特許第6,723,783号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ツボカワ(Tsubokawa)、Prog.Polym.Sci、17巻、417〜470頁(1992年)
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jpn.、75、2115〜2136頁(2002)
【非特許文献3】ハウエル(Howell)およびリウ(Liu)、Thermochimica Acta、243、(1994年)、169〜192頁
【非特許文献4】ワン(Wang)ら、Dyes and Pigments、41(1999年)、35〜39頁
【非特許文献5】Tetrahedron、36巻、1753頁(1980年)
【非特許文献6】Tetrahedron Letters、28巻、4255〜4258頁、1987年
【非特許文献7】ツボカワ、Reactive and Functional Polymers、27、75〜81頁(1995年)
【非特許文献8】M.クニシマ(M.Kunishima)、Tetrahedron、57、1551〜1558頁(2002年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、(a)液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基および(b)少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を有する顔料粒子を含む自己分散性顔料に関する。
【0011】
本発明は、液体ビヒクルと顔料とを含み、顔料が、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含む、インクジェットインクを更に提供する。
【0012】
本発明は、少なくとも第1のインクと第2のインクとを含むインクジェットインクセットであって、
(a)第1のインクが液体ビヒクルと顔料とを含み、顔料が、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含み、
(b)第2のインクが液体ビヒクルと、少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種とを含む
インクジェットインクセットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施において有用なカルボニル基含有自己分散性のカーボンブラック粒子または有機顔料粒子を製造するために使用できる7つの合成経路の例を図で示している(得られた顔料粒子をそれぞれ粒子11〜17と呼ぶ)。
【図2】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子11を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体の調製を示している。
【図3】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子12を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体の調製およびカルボニル自己分散性顔料粒子12の類似体を調製するための代替アルキル化試薬を示している。
【図4】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子13を製造する反応において用いられるアミン前駆体の調製を示している。
【図5】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子15および16を製造する反応において用いられるベータケトアミド前駆体の調製を示している。
【図6】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子17を製造する反応において用いられるジケトン前駆体の調製を示している。
【図7】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を形成するために使用できる3つの追加の合成経路を例示している。
【図8】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造する他の3つの反応の例を示している。
【図9】D基にカルボニル基を結合することにより本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するために使用できる2つの更なる反応の例を示している。
【図10】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料へのもう1つの合成経路の例を示している。
【図11】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性無機顔料を製造するための合成経路の例を示している。
【図12】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性無機顔料を製造するための合成経路の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、カルボニル自己分散性顔料、すなわち、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを含有する顔料粒子を有する顔料を提供する。顔料粒子は、液体中で顔料の安定分散体を形成するのを可能にするのに十分な数の共有結合した安定化基を含有し、そして少なくとも1個の共有結合した外部反応性カルボニル基を含有する。好ましくは、顔料粒子は、2つ以上の外部反応性カルボニル基を含有する。カルボニル自己分散性顔料は、インクセット中のもう1つのインクが反応性アミン基を有する化学種を含有する時にインクジェットセットインク中で特に有用である。
【0015】
当該技術分野で一般に理解され、本明細書において用いられる「自己分散性」という用語は、他のいかなる分散剤も存在しない状態で液体中で顔料粒子が安定分散体を形成するように、顔料粒子の表面に共有結合した安定化基を有する顔料を意味する。液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基は、本明細書で「D」基、すなわち、分散性基と呼ぶ。
【0016】
本発明によると、新規の自己分散性顔料が所望の架橋反応に参加できるように、新規の自己分散性顔料に反応性カルボニル基も提供される。一般に、架橋において有効である反応性カルボニル基は分散において有効ではなく、従って、本自己分散性顔料上の共有結合した分散性基および共有結合した反応性カルボニル基は、典型的には別個で異なる化学種である。共有結合した分散性基を有する自己分散性顔料は当該技術分野で周知されているが、共有結合した分散性基と反応性カルボニル基の両方を有する自己分散性顔料は新規で独特である。
【0017】
カルボニル基は、a)カルボニル基が顔料分子式の一部ではなく、顔料粒子の表面で実質的に顔料分子のみに結合されている、b)カルボニル基が外部末端、すなわち、顔料粒子に共有結合されている実体の顔料粒子に共有結合されていない末端における末端基であるという意味で「外部」基である。カルボニル基が反応性アミン基と反応できる、すなわち、反応性アミン基により架橋できるので、カルボニル基は「反応性」と呼ばれる。これらのカルボニル基の反応性は、顔料粒子に共有結合されている実体の外部末端におけるカルボニル基の位置の結果として高められる。種々のアルキル基またはアリール基あるいは水素をカルボニル基に結合させて、ケトンまたはアルデヒドを形成することが可能である。カルボニル基の反応性は、メチル基または水素をカルボニル基に結合させる時に最高であると予想される。外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、顔料粒子に直接共有結合することが可能であるか、顔料粒子に共有結合されている他の基に結合させることが可能であるか、または顔料粒子に共有結合されているポリマー鎖に付加することが可能である。
【0018】
顔料粒子は、カーボンブラック粒子、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子であることが可能である。乾燥形態を取った代表的な商用顔料には、以下の顔料が挙げられる。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
水−湿りプレスケーキの形態を取って入手できる代表的な商用顔料には、「ヒューコフタル(Heucophthal)」(登録商標)Blue BT−585−P、「トルイジン(Toluidine)」Red Y(C.I.ピグメントレッド3)、「キンド(Quindo)」(登録商標)Magenta(ピグメントレッド122)、「マゼンタ(Magenta)」RV−6831プレスケーキ(ニュージャージー州ハレドンのモベイ・ケミカル、ハーモンディビジョン(Mobay Chemical,Harmon Division(Haledon,NJ)))、「サンファスト(Sunfast)」RTM Magenta122(オハイオ州シンシナティのサンケミカル(Sun Chemical Corp.(Cincinnati,OH)))、「インド(Indo)」(登録商標)Brilliant Scarlet(ピグメントレッド123)、C.I.No.71145)、「トルイジン(Toluidine)」Red B(C.I.ピグメントレッド3)、「ワトチュング(Watchung)」(登録商標)Red B(C.I.ピグメントレッド48)、「パーマネントルビン(Permanent Rubine)」F6B13−1731(ピグメントレッド184)、「ハンサ(Hansa)」(登録商標)Yellow(ピグメントイエロー98)、「ダラマール(Dalamar)」(登録商標)Yellow YT−893−P(ピグメントイエロー74、C.I.No.11741)、「サンブライト(Sunbrite)」(登録商標)Yellow17(オハイオ州シンシナティのサンケミカル(Sun Chemical Corp.(Cincinnati,Ohio)))、「トルイジン(Toluidine)Yellow G(C.I.ピグメントイエロー1)、Pigment Scarlet(C.I.ピグメントレッド60)、Auric Brown(C.I.ピグメントブラウン6)などが挙げられる。カーボンブラックなどのブラック顔料は、一般に水性プレスケーキの形態を取っては入手できない。
【0023】
インクジェットインクの液体ビヒクルキャリアは水性または有機であることが可能である。
【0024】
「水性液体」または「水性ビヒクル」という用語は、水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶媒(共溶媒)の混合物を意味する。適する混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択された着色剤、インクの乾燥時間およびインクを上に印刷する基材のタイプなどの特定の用途の要件に応じて異なる。水と水溶性溶媒の混合物を用いる場合、水性ビヒクルは、典型的には約30%〜約95%の水を含有し、残り(すなわち、約70%〜約5%)は水溶性溶媒である。好ましい組成物は、水性ビヒクルの全重量を基準にして約60%〜約95%の水を含有する。
【0025】
「有機液体」または「有機ビヒクル」は、実質的に非水性であるとともに有機溶媒または有機溶媒の混合物よりなる液体またはビヒクルを意味する。これらの溶媒は極性および/または非極性であることが可能である。極性溶媒の例には、アルコール、エステル、ケトンおよびエーテル、特に、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのモノメチルエーテル、およびエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールおよびポリグリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。非極性溶媒の例には、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素、ならびに製油所蒸留製品および製油所蒸留副生物を含むそれらの混合物が挙げられる。水を有機ビヒクルに故意に添加しない時でさえ、偶発的な多少の水は配合物に運ばれ得るが、一般に、これは、約2〜4%以下である。本明細書で用いられる有機ビヒクルは、非水性ビヒクルの全重量を基準にして約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下の水を有する。
【0026】
水性ビヒクルまたは有機ビヒクル中で粒子を安定化させる、すなわち、粒子を自己分散性にする共有結合した安定化基により顔料を官能化させる多くの方法を開示してきた。水性液体のための共有結合した安定化基は、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基あるいはこれらの安定化基を含有する共有結合したポリマーであることが可能である。
【0027】
これらの共有結合した基は、調製されたままで、または酸性基を塩基で中和してアニオンを形成するか、あるいは塩基性基を酸で中和してカチオンを形成することにより、顔料粒子が安定分散体を形成することを可能にするのに十分な量で存在する必要がある。
【0028】
吸着されたカチオンまたはアニオンによって、または水性液体のための共有結合アニオン基または共有結合カチオン基によって、分散液を形成するために無機酸化物粒子を安定化させることが可能であるか、または有機液体中で分散可能であるように無機酸化物粒子を安定化させることが可能である。本明細書で用いられる共有結合した安定化基は、共有結合アニオン基または共有結合カチオン基のみでなく、これらの吸着されたカチオンまたはアニオンも含む。
【0029】
有機液体に関して、有機液体に適合する共有結合した安定化基が用いられる。有機液体中の安定化基は、結合された酸基または塩基性基の有機溶媒適合性塩であることも可能である。
【0030】
粒子の表面の酸化によって生成するカルボキシレート基によって安定化された自己分散性カーボンブラック粒子分散液は多くの特許において開示されている。媒体ミル内でのカーボンブラックのオゾン化および粉砕によって調製された自己分散性カーボンブラックは米国特許公報(特許文献2)において開示されている。超音波エネルギーおよび過酸化水素によるか、または熱および一過硫酸塩によるカーボンブラックの処理によってカーボンブラック分散液を調製する方法は、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)において開示されている。一連の特許、米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)には、カーボンブラックを酸化させるために低酸化岩塩試薬を用いる安定分散液の調製が開示されている。
【0031】
米国特許公報(特許文献10)には、炭素粒子と環式アルデヒドおよびAlCl3触媒との反応による炭素粒子の表面改質および安定水性分散液の形成が開示されている。
【0032】
米国特許公報(特許文献11)には、カルボニル基によって活性化された二重結合および三重結合を含有する試薬、例えば、無水マレイン酸による炭素粒子の表面改質が開示されている。この化学作用を用いて、水性環境(アニオン基およびカチオン基)または有機環境において粒子を安定化させることができる様々な基を粒子に共有結合させることが可能である。
【0033】
米国特許公報(特許文献12)には、水性環境における分散安定性のためのカルボキシレート、スルホネート、アミンまたは第四級基あるいは有機環境において粒子の分散液を安定化させる有機基により炭素粒子を官能化するための一般式の有機化合物と炭素粒子の反応が開示されている。
【0034】
米国特許公報(特許文献13)には、炭素粒子を安定な水性分散液にすることができる一般式R1−N=N−R2(式中、Rは、置換されていないか、またはアクセプタ置換基またはドナー置換基で置換されているアリール基である)の化合物と反応させた炭素粒子が記載されている。
【0035】
米国特許公報(特許文献14)には、一般式R1−Sx−R2の化合物とカーボンブラック粒子との反応によってスルフィド連結またはポリスルフィド連結を経由して結合される有機基により変性されたカーボンブラック粒子が記載されている。
【0036】
米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)および米国特許公報(特許文献21)には、有機安定化基がジアゾニウム塩の一部であるジアゾニウム反応を経由してカーボンブラックに有機安定化基を結合させる方法が開示されている。安定化基には、水性媒体中で粒子の分散を安定化させるカルボキシレート、スルホネート、アミンおよび第四級アミンならびに有機媒体中で粒子を安定化させる有機基が挙げられる。米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)および米国特許公報(特許文献24)には、着色有機顔料に安定化基を結合する類似の方法が記載されている。米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)および米国特許公報(特許文献27)には、有機ビヒクルまたは水性ビヒクル中で顔料を安定化させる非イオン安定化基(および任意にイオン基)を含有するジアゾニウム塩により官能化されたカーボンブラックが記載されている。
【0037】
カーボンブラック粒子は、水性ビヒクルまたは有機ビヒクル中で粒子の分散を安定化させるラジカル含有基の付加によって変性することが可能である。こうした分散液はインクジェットのために適することが可能である。(特許文献28)には、一般式(X)(Y)(CN)C−N=N−C(CN)(Y)(X)(式中、XおよびYは疎水性基または親水性基を含有することができる置換基である)のアゾニトリル化合物により官能化されたカーボンブラックが記載されている。親水性基による好ましいラジカル形成試薬の例は4,4’−アゾビス(4−シアノペンタンカルボン酸)である。
【0038】
(特許文献29)には、一般式A1−O−N=N−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のハイポニトリルエステルにより官能化された炭素粒子が開示されている。
【0039】
(特許文献30)には、一般式A1−N=N−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のアゾ化合物により官能化された炭素粒子が開示されている。水性分散性を与えるアゾラジカル形成化合物には、下記が挙げられる。
【0040】
【化1】
【0041】
(特許文献31)には、一般式A1−O(O=)C−O−O−C(=O)O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシジカーボネート化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0042】
(特許文献32)には、一般式A1−O−O−H(式中、A1は、親水性基または疎水性基を含有することができる、置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のヒドロペルオキシド化合物により官能化された炭素粒子が開示されている。
【0043】
(特許文献33)には、一般式A1(O=)C−O−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシエステル化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0044】
(特許文献34)には、一般式A1−O−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシエステル化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0045】
(特許文献34)には、一般式A1−C(O=)−O−O−C(O=)−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のジアシルペルオキシドにより官能化された炭素粒子が記載されている。
【0046】
ポリマーの表面グラフト化によるカーボンブラックの安定化は、(非特許文献1)および(非特許文献2)によって広範囲にわたり精査された。グラフト化の主要な3つの方法の内、カーボンブラック表面上への成長ポリマー鎖の停止反応はグラフト鎖の最低%を提供した。カーボンブラック粒子の表面に結合された開始基によるグラフト化ならびに官能基を含有する予備成形されたポリマーおよびオリゴマーと炭素表面に既に結合された官能基との反応は良好な結果を提供している。
【0047】
共有結合したポリマーを導入するインクジェット用途における使用のための自己分散性顔料の調製は、米国特許公報(特許文献35)および米国特許公報(特許文献36)に記載されている。調製は、ビニル不飽和を有する基が結合される、水分散性のために変性された顔料で開始する。これらの不飽和サイトにグラフトさせて、ポリマー鎖を形成するために広範囲のモノマーが開示されている。
【0048】
カルボニル自己分散性有機顔料およびカルボニル自己分散性カーボンブラック顔料を様々な方法で調整することが可能である。少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種をインクジェットインク用途のために適する自己分散性顔料粒子に共有結合させることが可能である。少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種を共有結合させる前に安定化基を付加するのは、カルボニル基の付加の前に適切な顔料粒子サイズを達成するとともに確実なものにすることが可能である点で有利であり得る。あるいは、安定化基および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種を単一プロセスで顔料粒子に共有結合させることが可能である。
【0049】
少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、ケトン、ベータジケトン、ベータケトエステル基、それらのイミン形態およびエナミン形態ならびにそれらのアルデヒド類似体であることが可能である。イミン形態およびエナミン形態は、アミンがカルボニル入り溶液中に存在する時にカルボニルと平衡にあることが可能である。種々の化学種を次の通り示す。
−C(=O)R(式中、Rはケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒドに関してRはHである)
−C(=NR1)R(式中、Rはイミンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基である)
−C=C(=NR1R2)R(式中、Rはエナミンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHであり、R1およびR2は同じかまたは異なるC1〜C10のアルキル基またはアリール基である)
−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−R(式中、Xはベータジケトンに関してCH2であり、ベータケトエステルに関してXはOまたはNHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rはケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−R(式中、XはCH2、OまたはNHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは上のジケトンおよびエステルのイミン形態類似体に関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−R(式中、XはCH2、OまたはNHであり、R1およびR2は同じかまたは異なるC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは上のジケトンおよびエステルのエナミン形態類似体に関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
【0050】
少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、電子吸引性基(EWD)によって活性化されたケトン基およびアルデヒド基も含む。EWDは、CN基、SO基、SO2基、SO3基、SO2NH基、PO基、PO3基またはPO2NH基であることが可能である。顔料粒子または顔料粒子化学種に共有結合された実体へのこれらの化学種の結合の点は、原子価が許せば、反応性カルボニルとEWDとの間のアルファ炭素を通して、またはEDWを通してのいずれかであることが可能である。種々の化学種を次の通り示す。
【0051】
【化2】
【0052】
式中、EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基であり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは活性化ケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、活性化アルデヒドに関してRはHである。
【0053】
化学種は、ケタール、アセタール、環式ケタールまたは環式アセタール基であることも可能である。ケタールおよびアセタールは中性において安定であるか、または僅かにアルカリ性溶液であるが、酸の存在下で反応性ケトンまたは反応性アルデヒドに戻る。種々の化学種を次の通り示す。
−C(−OR1)2R(式中、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rはケタールに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アセタールに関してRはHである)
【0054】
【化3】
【0055】
(式中、Rは環式ケタールに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、環式アセタールに関してRはHである)
【0056】
上の化学種のすべてにおいて、Rがメチル基またはHであることが好ましい。
【0057】
要約すると、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、ケトン、アルデヒド、ベータジケトン、ベータケトエーテル;ケトン、アルデヒド、ベータジケトンおよびベータケトエーテルのイミン形態およびエナミン形態、ケタール、アセタール、環式ケタール、環式アセタール、電子吸引性基で活性化されたケトン、電子吸引性基で活性化されたアルデヒドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書で用いられるケトンまたはアルデヒド基は、これらの基のすべてを含む。
【0058】
図面をここで参照すると、参照番号11〜17によって特定されている所望のカルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子をもたらす、参照番号10によって特定されたカーボンブラック顔料または有機顔料粒子とジアゾ化試薬との反応の7つの例が図1で例示されている。図示されているカーボンブラック顔料粒子または有機顔料粒子10は、水性ビヒクル中で安定分散体の形成を可能にするためにD基を含有するように表面官能化されている。分散性D基は、所定の顔料のために適切である上述した方法のいずれかによって導入することが可能である。顔料粒子表面への反応性ケトン基または反応性アルデヒド基の共有結合はジアゾ化試薬により行われる。
【0059】
カルボニル自己分散性顔料粒子11を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体は、水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化され得る市販の化合物であるパラアミノアセトフェノンを用いて図2に示したように調製される。その後、ジアゾ化前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0060】
カルボニル自己分散性顔料粒子12または14を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体を調製するために用いられるアミノケトンは、顔料粒子12に関して図3で示したように(非特許文献3)によって記載された合成戦略に似た合成戦略を用いて製造することが可能である。p−クロロニトロベンゼン上のクロロ基はメチルアセトアセテートアニオンで置換され、その後、ニトロ基を還元し、加水分解し、脱カルボキシル化してアミンをもたらし、アミンを水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化することが可能である。その後、ジアゾ化前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、反応性脂肪族ケトン基を有する所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。このケトンの類似体、例えば、図1に示した所望のカルボニル自己分散性顔料粒子14を製造する反応において用いられる類似体は、図3に示したアルキル化剤などの代替アルキル化剤を用いることにより調製することが可能である。
【0061】
カルボニル自己分散性顔料粒子13を製造する反応において用いられるアミン前駆体は、図4に示した(非特許文献4)によって記載された合成経路に似た合成経路によって調製することが可能である。市販されているスルフィン酸のナトリウム塩をクロロアセトンと反応させることが可能であり、その後、アセチル基を開裂してアミンを形成し、その後、ジアゾ化する。その後、アミン前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0062】
カルボニル自己分散性顔料粒子15および16を製造する反応において用いられるベータケトアミド前駆体は、15の場合p−ニトロベンジルアミンまたは16の場合p−ニトロアニリンを図5に示した2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと反応させることにより調製することが可能である。その後、ニトロ基を図示したようにアミンに還元し、各々を水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化する。その後、ベータケトアミド前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、反応性ベータケトン基を有する所望のカルボニル自己分散顔料粒子を提供する。
【0063】
カルボニル自己分散性顔料粒子17を製造する反応において用いられるジケトン前駆体は、アセチルアセトンアニオンと反応させる遮断ビニルスルホンのスルフェートエステルで出発することにより図6に示したように調製することが可能である。この後にアミンを保護するアセチル基を開裂させる。得られたアミンを水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化することが可能である。その後、ジケトン前駆体を分散顔料粒子と反応させて、反応性ベータジケトン基を有する所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0064】
反応性カルボニル基を有する自己分散性カーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するためのもう1つの経路の3つの例を図7で例示している。カーボンブラック顔料または有機顔料粒子20は、水性ビヒクル中で安定分散体の形成を可能にするためにD基を含有するように表面官能化されている。再び、所定の顔料のために適切である上述した方法のいずれかによって分散性D基を導入することが可能である。カルボニル基および活性化二重結合を含有する試薬を顔料粒子20と反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子21、22および23を製造する。粒子22へのケトン前駆体をジケテンとフタルイミドとの間の反応によって調製することが可能である。粒子22および23のためのケトン試薬前駆体は市販されている。
【0065】
反応性カルボニル基を有する自己分散性カーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するためのなおもう1つの経路の3つの例を図8で例示している。カーボンブラックまたは有機顔料粒子30は、D基を含有するように表面官能化されている。ラジカルに切断できるとともに反応性カルボニル基を含有する試薬を顔料粒子30と反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子31、32および33を製造する。31、32および33のためのアゾケトン前駆体の調製は、(非特許文献5)および(非特許文献6)に記載されている。
【0066】
安定化基または既に顔料表面に結合されている他の基上での適切な反応によってカルボニル自己分散性顔料を調製することが可能である。(非特許文献7)は、すべて粒子表面に付加されたカルボキシル基から誘導されたアシルアジ化物、無水物、アシルイミダゾール、p−ニトロフェニルエステルおよびペンタクロロフェニルエステルにより官能化されたカーボンブラックに末端アミンまたはヒドロキシル基によりポリマーおよびオリゴマーを結合させることを開示した。アミンと反応性カルボニルの両方あるいはアセタールまたはケタールとしてのカルボニルを含有する試薬をカルボキシ化カーボンブラックおよび他の有機顔料に同じ方式で付加して、カルボニル自己分散性顔料を形成することが可能である。
【0067】
(非特許文献8)は、水溶液中で70%以上の収率でカルボン酸またはカルボン酸エステルのアミドを調製するために4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)の使用を記載している。活性化エステルを形成する反応はアミンの存在下で行うことが可能である。この化学作用は、図9で例示したように水相中で直接カルボキシ化顔料のD基にケトンまたはアルデヒドを含有する試薬をアミン基により付加するために良く適合する。カルボキシ化分散顔料粒子40をDMTMMと反応させて活性化エステル41を生成させる。図示したように、その後、アルデヒドまたはケトンを含有する試薬を活性化エステルと反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子42および43を生成させる。
【0068】
米国特許公報(特許文献37)には、ジアゾ化2−(4−アミノフェニルスルホニル)エチル水素スルフェートと反応させて、水相中にありつつアミン含有試薬と更に反応させることが可能である自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子をもたらした炭素粒子が開示されている。これらの顔料粒子をポリアミン化学種と反応させて、ポリマー変性粒子を調製する。本発明の目的のために、これらの顔料粒子をアミンとまたはカルボニルを含有する他の求核性試薬と反応させて、カルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料を生成させることが可能である。図10で例示したように、カーボンブラック顔料粒子または有機顔料粒子50は、スルフェート基のすべてが置換された後にカーボンブラック顔料または有機顔料粒子50が自己分散性のままであるように別個の分散基、例えば、カルボキシルを有することが可能であり、こうしたD基を図10に示している。ジアゾ化2−(4−アミノフェニルスルホニル)エチル水素スルフェートとの反応は自己分散性顔料粒子51をもたらす。前駆体求核性試薬は市販されている材料である。それらと顔料粒子51との反応は、カルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子52、53および54をもたらす。
【0069】
カルボニル自己分散性無機顔料は本発明のもう1つの実施形態である。酸化物顔料、例えば、TiO2または酸化鉄は好ましい。顔料は、1つまたは複数の金属酸化物表面被膜も保持してよい。これらの被膜は、当業者によって知られている技術を用いて被着させてもよい。金属酸化物被膜の例には、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリカおよびジルコニアが挙げられる。これらの酸化物粒子の表面は、反応性ケトン基を含有するシロキサン試薬により表面を官能化することを可能にするヒドロキシル基を含有する。カルボニル自己分散性酸化物顔料をもたらす異なるシロキサン試薬と酸化物顔料粒子の5つの反応の例を図11で例示している。酸化物粒子60をそれぞれのシロキサンと反応させて、カルボニル自己分散性酸化物顔料61〜65を生成させる。図12は、図11に示した反応において用いられる5種のシロキサン試薬への合成経路を例示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、自己分散性顔料およびインクジェットインク中でのその顔料の使用に関する。より詳しくは、本発明は、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基および更に少なくとも1個の共有結合した外部反応性カルボニル基を有する自己分散性顔料に関する。この顔料は、反応性インクジェットインク配合物中で特に有用である。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2006年6月5日に出願された米国仮特許出願第60/810,937号からの優先権を請求する。この特許出願の開示は、その内容全体を本明細書に記載したものとしてすべての目的のために本明細書に引用して援用する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷は、インクの小滴を種々の媒体上に沈着させて所望の画像を形成する非衝撃印刷方法である。小滴は、マイクロプロセッサーによって発生する電気信号に応答してプリントヘッドから吐出する。用いられるインクは、例えば、良好な分散安定性、吐出安定性および媒体への良好な定着を含む厳しい要求を受ける。
【0004】
インクジェットプリンタは低コストで高品質の印刷を提供し、レーザプリンタなどの他のタイプのプリンタの一般的な代替品になってきた。しかし、インクジェットプリンタは、レーザプリンタの速度およびレーザ印刷画像の耐久性に匹敵できない。高い耐久性を有するインクジェットプリントは非常に有利であろう。
【0005】
少なくとも2種のインクを含む反応性インクジェットインクセットの使用は、インクジェットプリントの耐久性を高めることが可能である。第1のインクは少なくとも1個の反応性カルボニル基を有する化学種を含有し、第2のインクは少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種を含有する。
【0006】
こうした反応性インクセットの利点は、米国特許公報(特許文献1)(2006年3月9日出願)に完全に記載されており、2種のインクが重なり状態で基材上に印刷される時に最良に実現することが可能である。こうして、反応性化学種の両方のタイプは基材上で近傍にあり、架橋は容易に起きて、それによってプリントの耐久性を高めることが可能である。インクの印刷は、いかなる順序でも、または同時に起きることが可能である。反応性カルボニル基と反応性アミン基の架橋反応を促進するために、印刷された基材を加熱することが有利な場合がある。この目的のために有用な温度は、典型的には約60℃〜約150℃である。
【0007】
適合性で安定性であるとともに反応性インクセットに容易に導入して性能を最適化できる反応性化学種の選択を広げるために新規の化学品がなお必要とされている。従って、インクジェット印刷のために適する反応性カルボニル基含有自己分散性顔料が必要とされ、本発明の目的は、こうした顔料を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/780,706号明細書
【特許文献2】米国特許第6,852,156号明細書
【特許文献3】米国特許第6,723,161号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0103822号明細書
【特許文献5】米国特許第5,718,746号明細書
【特許文献6】米国特許第5,846,307号明細書
【特許文献7】米国特許第5,861,447号明細書
【特許文献8】米国特許第6,468,342号明細書
【特許文献9】米国特許第6,480,753号明細書
【特許文献10】米国特許第6,831,194号明細書
【特許文献11】米国特許第6,660,075号明細書
【特許文献12】米国特許第6,758,891号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0138342号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2001/0036994号明細書
【特許文献15】米国特許第5,922,118号明細書
【特許文献16】米国特許第5,900,029号明細書
【特許文献17】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献18】米国特許第5,895,522号明細書
【特許文献19】米国特許第5,885,335号明細書
【特許文献20】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献21】米国特許第5,837,045号明細書
【特許文献22】米国特許第6,398,858号明細書
【特許文献23】米国特許第6,494,943号明細書
【特許文献24】米国特許第6,506,245号明細書
【特許文献25】米国特許第5,713,988号明細書
【特許文献26】米国特許第6,336,965号明細書
【特許文献27】米国特許第6,432,194号明細書
【特許文献28】特開平第11323176号公報
【特許文献29】特開平第11323178号公報
【特許文献30】特開平第11323229号公報
【特許文献31】特開平第11323179号公報
【特許文献32】特開平第11323222号公報
【特許文献33】特開平第11335586号公報
【特許文献34】特開平第11335587号公報
【特許文献35】米国特許第6,150,433号明細書
【特許文献36】米国特許第6,323,257号明細書
【特許文献37】米国特許第6,723,783号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ツボカワ(Tsubokawa)、Prog.Polym.Sci、17巻、417〜470頁(1992年)
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jpn.、75、2115〜2136頁(2002)
【非特許文献3】ハウエル(Howell)およびリウ(Liu)、Thermochimica Acta、243、(1994年)、169〜192頁
【非特許文献4】ワン(Wang)ら、Dyes and Pigments、41(1999年)、35〜39頁
【非特許文献5】Tetrahedron、36巻、1753頁(1980年)
【非特許文献6】Tetrahedron Letters、28巻、4255〜4258頁、1987年
【非特許文献7】ツボカワ、Reactive and Functional Polymers、27、75〜81頁(1995年)
【非特許文献8】M.クニシマ(M.Kunishima)、Tetrahedron、57、1551〜1558頁(2002年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、(a)液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基および(b)少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を有する顔料粒子を含む自己分散性顔料に関する。
【0011】
本発明は、液体ビヒクルと顔料とを含み、顔料が、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含む、インクジェットインクを更に提供する。
【0012】
本発明は、少なくとも第1のインクと第2のインクとを含むインクジェットインクセットであって、
(a)第1のインクが液体ビヒクルと顔料とを含み、顔料が、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含み、
(b)第2のインクが液体ビヒクルと、少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種とを含む
インクジェットインクセットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施において有用なカルボニル基含有自己分散性のカーボンブラック粒子または有機顔料粒子を製造するために使用できる7つの合成経路の例を図で示している(得られた顔料粒子をそれぞれ粒子11〜17と呼ぶ)。
【図2】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子11を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体の調製を示している。
【図3】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子12を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体の調製およびカルボニル自己分散性顔料粒子12の類似体を調製するための代替アルキル化試薬を示している。
【図4】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子13を製造する反応において用いられるアミン前駆体の調製を示している。
【図5】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子15および16を製造する反応において用いられるベータケトアミド前駆体の調製を示している。
【図6】図1のカルボニル自己分散性顔料粒子17を製造する反応において用いられるジケトン前駆体の調製を示している。
【図7】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を形成するために使用できる3つの追加の合成経路を例示している。
【図8】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造する他の3つの反応の例を示している。
【図9】D基にカルボニル基を結合することにより本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するために使用できる2つの更なる反応の例を示している。
【図10】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性のカーボンブラックまたは有機顔料へのもう1つの合成経路の例を示している。
【図11】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性無機顔料を製造するための合成経路の例を示している。
【図12】本発明の実施において有用なカルボニル自己分散性無機顔料を製造するための合成経路の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、カルボニル自己分散性顔料、すなわち、液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを含有する顔料粒子を有する顔料を提供する。顔料粒子は、液体中で顔料の安定分散体を形成するのを可能にするのに十分な数の共有結合した安定化基を含有し、そして少なくとも1個の共有結合した外部反応性カルボニル基を含有する。好ましくは、顔料粒子は、2つ以上の外部反応性カルボニル基を含有する。カルボニル自己分散性顔料は、インクセット中のもう1つのインクが反応性アミン基を有する化学種を含有する時にインクジェットセットインク中で特に有用である。
【0015】
当該技術分野で一般に理解され、本明細書において用いられる「自己分散性」という用語は、他のいかなる分散剤も存在しない状態で液体中で顔料粒子が安定分散体を形成するように、顔料粒子の表面に共有結合した安定化基を有する顔料を意味する。液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする共有結合した安定化基は、本明細書で「D」基、すなわち、分散性基と呼ぶ。
【0016】
本発明によると、新規の自己分散性顔料が所望の架橋反応に参加できるように、新規の自己分散性顔料に反応性カルボニル基も提供される。一般に、架橋において有効である反応性カルボニル基は分散において有効ではなく、従って、本自己分散性顔料上の共有結合した分散性基および共有結合した反応性カルボニル基は、典型的には別個で異なる化学種である。共有結合した分散性基を有する自己分散性顔料は当該技術分野で周知されているが、共有結合した分散性基と反応性カルボニル基の両方を有する自己分散性顔料は新規で独特である。
【0017】
カルボニル基は、a)カルボニル基が顔料分子式の一部ではなく、顔料粒子の表面で実質的に顔料分子のみに結合されている、b)カルボニル基が外部末端、すなわち、顔料粒子に共有結合されている実体の顔料粒子に共有結合されていない末端における末端基であるという意味で「外部」基である。カルボニル基が反応性アミン基と反応できる、すなわち、反応性アミン基により架橋できるので、カルボニル基は「反応性」と呼ばれる。これらのカルボニル基の反応性は、顔料粒子に共有結合されている実体の外部末端におけるカルボニル基の位置の結果として高められる。種々のアルキル基またはアリール基あるいは水素をカルボニル基に結合させて、ケトンまたはアルデヒドを形成することが可能である。カルボニル基の反応性は、メチル基または水素をカルボニル基に結合させる時に最高であると予想される。外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、顔料粒子に直接共有結合することが可能であるか、顔料粒子に共有結合されている他の基に結合させることが可能であるか、または顔料粒子に共有結合されているポリマー鎖に付加することが可能である。
【0018】
顔料粒子は、カーボンブラック粒子、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子であることが可能である。乾燥形態を取った代表的な商用顔料には、以下の顔料が挙げられる。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
水−湿りプレスケーキの形態を取って入手できる代表的な商用顔料には、「ヒューコフタル(Heucophthal)」(登録商標)Blue BT−585−P、「トルイジン(Toluidine)」Red Y(C.I.ピグメントレッド3)、「キンド(Quindo)」(登録商標)Magenta(ピグメントレッド122)、「マゼンタ(Magenta)」RV−6831プレスケーキ(ニュージャージー州ハレドンのモベイ・ケミカル、ハーモンディビジョン(Mobay Chemical,Harmon Division(Haledon,NJ)))、「サンファスト(Sunfast)」RTM Magenta122(オハイオ州シンシナティのサンケミカル(Sun Chemical Corp.(Cincinnati,OH)))、「インド(Indo)」(登録商標)Brilliant Scarlet(ピグメントレッド123)、C.I.No.71145)、「トルイジン(Toluidine)」Red B(C.I.ピグメントレッド3)、「ワトチュング(Watchung)」(登録商標)Red B(C.I.ピグメントレッド48)、「パーマネントルビン(Permanent Rubine)」F6B13−1731(ピグメントレッド184)、「ハンサ(Hansa)」(登録商標)Yellow(ピグメントイエロー98)、「ダラマール(Dalamar)」(登録商標)Yellow YT−893−P(ピグメントイエロー74、C.I.No.11741)、「サンブライト(Sunbrite)」(登録商標)Yellow17(オハイオ州シンシナティのサンケミカル(Sun Chemical Corp.(Cincinnati,Ohio)))、「トルイジン(Toluidine)Yellow G(C.I.ピグメントイエロー1)、Pigment Scarlet(C.I.ピグメントレッド60)、Auric Brown(C.I.ピグメントブラウン6)などが挙げられる。カーボンブラックなどのブラック顔料は、一般に水性プレスケーキの形態を取っては入手できない。
【0023】
インクジェットインクの液体ビヒクルキャリアは水性または有機であることが可能である。
【0024】
「水性液体」または「水性ビヒクル」という用語は、水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶媒(共溶媒)の混合物を意味する。適する混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択された着色剤、インクの乾燥時間およびインクを上に印刷する基材のタイプなどの特定の用途の要件に応じて異なる。水と水溶性溶媒の混合物を用いる場合、水性ビヒクルは、典型的には約30%〜約95%の水を含有し、残り(すなわち、約70%〜約5%)は水溶性溶媒である。好ましい組成物は、水性ビヒクルの全重量を基準にして約60%〜約95%の水を含有する。
【0025】
「有機液体」または「有機ビヒクル」は、実質的に非水性であるとともに有機溶媒または有機溶媒の混合物よりなる液体またはビヒクルを意味する。これらの溶媒は極性および/または非極性であることが可能である。極性溶媒の例には、アルコール、エステル、ケトンおよびエーテル、特に、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのモノメチルエーテル、およびエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールおよびポリグリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。非極性溶媒の例には、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素、ならびに製油所蒸留製品および製油所蒸留副生物を含むそれらの混合物が挙げられる。水を有機ビヒクルに故意に添加しない時でさえ、偶発的な多少の水は配合物に運ばれ得るが、一般に、これは、約2〜4%以下である。本明細書で用いられる有機ビヒクルは、非水性ビヒクルの全重量を基準にして約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下の水を有する。
【0026】
水性ビヒクルまたは有機ビヒクル中で粒子を安定化させる、すなわち、粒子を自己分散性にする共有結合した安定化基により顔料を官能化させる多くの方法を開示してきた。水性液体のための共有結合した安定化基は、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基あるいはこれらの安定化基を含有する共有結合したポリマーであることが可能である。
【0027】
これらの共有結合した基は、調製されたままで、または酸性基を塩基で中和してアニオンを形成するか、あるいは塩基性基を酸で中和してカチオンを形成することにより、顔料粒子が安定分散体を形成することを可能にするのに十分な量で存在する必要がある。
【0028】
吸着されたカチオンまたはアニオンによって、または水性液体のための共有結合アニオン基または共有結合カチオン基によって、分散液を形成するために無機酸化物粒子を安定化させることが可能であるか、または有機液体中で分散可能であるように無機酸化物粒子を安定化させることが可能である。本明細書で用いられる共有結合した安定化基は、共有結合アニオン基または共有結合カチオン基のみでなく、これらの吸着されたカチオンまたはアニオンも含む。
【0029】
有機液体に関して、有機液体に適合する共有結合した安定化基が用いられる。有機液体中の安定化基は、結合された酸基または塩基性基の有機溶媒適合性塩であることも可能である。
【0030】
粒子の表面の酸化によって生成するカルボキシレート基によって安定化された自己分散性カーボンブラック粒子分散液は多くの特許において開示されている。媒体ミル内でのカーボンブラックのオゾン化および粉砕によって調製された自己分散性カーボンブラックは米国特許公報(特許文献2)において開示されている。超音波エネルギーおよび過酸化水素によるか、または熱および一過硫酸塩によるカーボンブラックの処理によってカーボンブラック分散液を調製する方法は、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)において開示されている。一連の特許、米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)には、カーボンブラックを酸化させるために低酸化岩塩試薬を用いる安定分散液の調製が開示されている。
【0031】
米国特許公報(特許文献10)には、炭素粒子と環式アルデヒドおよびAlCl3触媒との反応による炭素粒子の表面改質および安定水性分散液の形成が開示されている。
【0032】
米国特許公報(特許文献11)には、カルボニル基によって活性化された二重結合および三重結合を含有する試薬、例えば、無水マレイン酸による炭素粒子の表面改質が開示されている。この化学作用を用いて、水性環境(アニオン基およびカチオン基)または有機環境において粒子を安定化させることができる様々な基を粒子に共有結合させることが可能である。
【0033】
米国特許公報(特許文献12)には、水性環境における分散安定性のためのカルボキシレート、スルホネート、アミンまたは第四級基あるいは有機環境において粒子の分散液を安定化させる有機基により炭素粒子を官能化するための一般式の有機化合物と炭素粒子の反応が開示されている。
【0034】
米国特許公報(特許文献13)には、炭素粒子を安定な水性分散液にすることができる一般式R1−N=N−R2(式中、Rは、置換されていないか、またはアクセプタ置換基またはドナー置換基で置換されているアリール基である)の化合物と反応させた炭素粒子が記載されている。
【0035】
米国特許公報(特許文献14)には、一般式R1−Sx−R2の化合物とカーボンブラック粒子との反応によってスルフィド連結またはポリスルフィド連結を経由して結合される有機基により変性されたカーボンブラック粒子が記載されている。
【0036】
米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)および米国特許公報(特許文献21)には、有機安定化基がジアゾニウム塩の一部であるジアゾニウム反応を経由してカーボンブラックに有機安定化基を結合させる方法が開示されている。安定化基には、水性媒体中で粒子の分散を安定化させるカルボキシレート、スルホネート、アミンおよび第四級アミンならびに有機媒体中で粒子を安定化させる有機基が挙げられる。米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)および米国特許公報(特許文献24)には、着色有機顔料に安定化基を結合する類似の方法が記載されている。米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)および米国特許公報(特許文献27)には、有機ビヒクルまたは水性ビヒクル中で顔料を安定化させる非イオン安定化基(および任意にイオン基)を含有するジアゾニウム塩により官能化されたカーボンブラックが記載されている。
【0037】
カーボンブラック粒子は、水性ビヒクルまたは有機ビヒクル中で粒子の分散を安定化させるラジカル含有基の付加によって変性することが可能である。こうした分散液はインクジェットのために適することが可能である。(特許文献28)には、一般式(X)(Y)(CN)C−N=N−C(CN)(Y)(X)(式中、XおよびYは疎水性基または親水性基を含有することができる置換基である)のアゾニトリル化合物により官能化されたカーボンブラックが記載されている。親水性基による好ましいラジカル形成試薬の例は4,4’−アゾビス(4−シアノペンタンカルボン酸)である。
【0038】
(特許文献29)には、一般式A1−O−N=N−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のハイポニトリルエステルにより官能化された炭素粒子が開示されている。
【0039】
(特許文献30)には、一般式A1−N=N−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のアゾ化合物により官能化された炭素粒子が開示されている。水性分散性を与えるアゾラジカル形成化合物には、下記が挙げられる。
【0040】
【化1】
【0041】
(特許文献31)には、一般式A1−O(O=)C−O−O−C(=O)O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシジカーボネート化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0042】
(特許文献32)には、一般式A1−O−O−H(式中、A1は、親水性基または疎水性基を含有することができる、置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のヒドロペルオキシド化合物により官能化された炭素粒子が開示されている。
【0043】
(特許文献33)には、一般式A1(O=)C−O−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、同じかまたは異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシエステル化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0044】
(特許文献34)には、一般式A1−O−O−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のペルオキシエステル化合物により官能化された炭素粒子が記載されている。
【0045】
(特許文献34)には、一般式A1−C(O=)−O−O−C(O=)−A2(式中、A1およびA2は、親水性基または疎水性基を含有することができる、異なる置換された線状、分岐または環式の炭化水素基である)のジアシルペルオキシドにより官能化された炭素粒子が記載されている。
【0046】
ポリマーの表面グラフト化によるカーボンブラックの安定化は、(非特許文献1)および(非特許文献2)によって広範囲にわたり精査された。グラフト化の主要な3つの方法の内、カーボンブラック表面上への成長ポリマー鎖の停止反応はグラフト鎖の最低%を提供した。カーボンブラック粒子の表面に結合された開始基によるグラフト化ならびに官能基を含有する予備成形されたポリマーおよびオリゴマーと炭素表面に既に結合された官能基との反応は良好な結果を提供している。
【0047】
共有結合したポリマーを導入するインクジェット用途における使用のための自己分散性顔料の調製は、米国特許公報(特許文献35)および米国特許公報(特許文献36)に記載されている。調製は、ビニル不飽和を有する基が結合される、水分散性のために変性された顔料で開始する。これらの不飽和サイトにグラフトさせて、ポリマー鎖を形成するために広範囲のモノマーが開示されている。
【0048】
カルボニル自己分散性有機顔料およびカルボニル自己分散性カーボンブラック顔料を様々な方法で調整することが可能である。少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種をインクジェットインク用途のために適する自己分散性顔料粒子に共有結合させることが可能である。少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種を共有結合させる前に安定化基を付加するのは、カルボニル基の付加の前に適切な顔料粒子サイズを達成するとともに確実なものにすることが可能である点で有利であり得る。あるいは、安定化基および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種を単一プロセスで顔料粒子に共有結合させることが可能である。
【0049】
少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、ケトン、ベータジケトン、ベータケトエステル基、それらのイミン形態およびエナミン形態ならびにそれらのアルデヒド類似体であることが可能である。イミン形態およびエナミン形態は、アミンがカルボニル入り溶液中に存在する時にカルボニルと平衡にあることが可能である。種々の化学種を次の通り示す。
−C(=O)R(式中、Rはケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒドに関してRはHである)
−C(=NR1)R(式中、Rはイミンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基である)
−C=C(=NR1R2)R(式中、Rはエナミンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHであり、R1およびR2は同じかまたは異なるC1〜C10のアルキル基またはアリール基である)
−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−R(式中、Xはベータジケトンに関してCH2であり、ベータケトエステルに関してXはOまたはNHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rはケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−R(式中、XはCH2、OまたはNHであり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは上のジケトンおよびエステルのイミン形態類似体に関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−R(式中、XはCH2、OまたはNHであり、R1およびR2は同じかまたは異なるC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは上のジケトンおよびエステルのエナミン形態類似体に関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アルデヒド類似体に関してRはHである)
【0050】
少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、電子吸引性基(EWD)によって活性化されたケトン基およびアルデヒド基も含む。EWDは、CN基、SO基、SO2基、SO3基、SO2NH基、PO基、PO3基またはPO2NH基であることが可能である。顔料粒子または顔料粒子化学種に共有結合された実体へのこれらの化学種の結合の点は、原子価が許せば、反応性カルボニルとEWDとの間のアルファ炭素を通して、またはEDWを通してのいずれかであることが可能である。種々の化学種を次の通り示す。
【0051】
【化2】
【0052】
式中、EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基であり、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rは活性化ケトンに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、活性化アルデヒドに関してRはHである。
【0053】
化学種は、ケタール、アセタール、環式ケタールまたは環式アセタール基であることも可能である。ケタールおよびアセタールは中性において安定であるか、または僅かにアルカリ性溶液であるが、酸の存在下で反応性ケトンまたは反応性アルデヒドに戻る。種々の化学種を次の通り示す。
−C(−OR1)2R(式中、R1はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、Rはケタールに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、アセタールに関してRはHである)
【0054】
【化3】
【0055】
(式中、Rは環式ケタールに関してC1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、環式アセタールに関してRはHである)
【0056】
上の化学種のすべてにおいて、Rがメチル基またはHであることが好ましい。
【0057】
要約すると、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する化学種は、ケトン、アルデヒド、ベータジケトン、ベータケトエーテル;ケトン、アルデヒド、ベータジケトンおよびベータケトエーテルのイミン形態およびエナミン形態、ケタール、アセタール、環式ケタール、環式アセタール、電子吸引性基で活性化されたケトン、電子吸引性基で活性化されたアルデヒドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書で用いられるケトンまたはアルデヒド基は、これらの基のすべてを含む。
【0058】
図面をここで参照すると、参照番号11〜17によって特定されている所望のカルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子をもたらす、参照番号10によって特定されたカーボンブラック顔料または有機顔料粒子とジアゾ化試薬との反応の7つの例が図1で例示されている。図示されているカーボンブラック顔料粒子または有機顔料粒子10は、水性ビヒクル中で安定分散体の形成を可能にするためにD基を含有するように表面官能化されている。分散性D基は、所定の顔料のために適切である上述した方法のいずれかによって導入することが可能である。顔料粒子表面への反応性ケトン基または反応性アルデヒド基の共有結合はジアゾ化試薬により行われる。
【0059】
カルボニル自己分散性顔料粒子11を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体は、水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化され得る市販の化合物であるパラアミノアセトフェノンを用いて図2に示したように調製される。その後、ジアゾ化前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0060】
カルボニル自己分散性顔料粒子12または14を製造する反応において用いられるジアゾ化前駆体を調製するために用いられるアミノケトンは、顔料粒子12に関して図3で示したように(非特許文献3)によって記載された合成戦略に似た合成戦略を用いて製造することが可能である。p−クロロニトロベンゼン上のクロロ基はメチルアセトアセテートアニオンで置換され、その後、ニトロ基を還元し、加水分解し、脱カルボキシル化してアミンをもたらし、アミンを水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化することが可能である。その後、ジアゾ化前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、反応性脂肪族ケトン基を有する所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。このケトンの類似体、例えば、図1に示した所望のカルボニル自己分散性顔料粒子14を製造する反応において用いられる類似体は、図3に示したアルキル化剤などの代替アルキル化剤を用いることにより調製することが可能である。
【0061】
カルボニル自己分散性顔料粒子13を製造する反応において用いられるアミン前駆体は、図4に示した(非特許文献4)によって記載された合成経路に似た合成経路によって調製することが可能である。市販されているスルフィン酸のナトリウム塩をクロロアセトンと反応させることが可能であり、その後、アセチル基を開裂してアミンを形成し、その後、ジアゾ化する。その後、アミン前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0062】
カルボニル自己分散性顔料粒子15および16を製造する反応において用いられるベータケトアミド前駆体は、15の場合p−ニトロベンジルアミンまたは16の場合p−ニトロアニリンを図5に示した2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと反応させることにより調製することが可能である。その後、ニトロ基を図示したようにアミンに還元し、各々を水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化する。その後、ベータケトアミド前駆体を図1に示した分散顔料粒子と反応させて、反応性ベータケトン基を有する所望のカルボニル自己分散顔料粒子を提供する。
【0063】
カルボニル自己分散性顔料粒子17を製造する反応において用いられるジケトン前駆体は、アセチルアセトンアニオンと反応させる遮断ビニルスルホンのスルフェートエステルで出発することにより図6に示したように調製することが可能である。この後にアミンを保護するアセチル基を開裂させる。得られたアミンを水性HCl中で亜硝酸ナトリウムによりジアゾ化することが可能である。その後、ジケトン前駆体を分散顔料粒子と反応させて、反応性ベータジケトン基を有する所望のカルボニル自己分散性顔料粒子を提供する。
【0064】
反応性カルボニル基を有する自己分散性カーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するためのもう1つの経路の3つの例を図7で例示している。カーボンブラック顔料または有機顔料粒子20は、水性ビヒクル中で安定分散体の形成を可能にするためにD基を含有するように表面官能化されている。再び、所定の顔料のために適切である上述した方法のいずれかによって分散性D基を導入することが可能である。カルボニル基および活性化二重結合を含有する試薬を顔料粒子20と反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子21、22および23を製造する。粒子22へのケトン前駆体をジケテンとフタルイミドとの間の反応によって調製することが可能である。粒子22および23のためのケトン試薬前駆体は市販されている。
【0065】
反応性カルボニル基を有する自己分散性カーボンブラックまたは有機顔料粒子を製造するためのなおもう1つの経路の3つの例を図8で例示している。カーボンブラックまたは有機顔料粒子30は、D基を含有するように表面官能化されている。ラジカルに切断できるとともに反応性カルボニル基を含有する試薬を顔料粒子30と反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子31、32および33を製造する。31、32および33のためのアゾケトン前駆体の調製は、(非特許文献5)および(非特許文献6)に記載されている。
【0066】
安定化基または既に顔料表面に結合されている他の基上での適切な反応によってカルボニル自己分散性顔料を調製することが可能である。(非特許文献7)は、すべて粒子表面に付加されたカルボキシル基から誘導されたアシルアジ化物、無水物、アシルイミダゾール、p−ニトロフェニルエステルおよびペンタクロロフェニルエステルにより官能化されたカーボンブラックに末端アミンまたはヒドロキシル基によりポリマーおよびオリゴマーを結合させることを開示した。アミンと反応性カルボニルの両方あるいはアセタールまたはケタールとしてのカルボニルを含有する試薬をカルボキシ化カーボンブラックおよび他の有機顔料に同じ方式で付加して、カルボニル自己分散性顔料を形成することが可能である。
【0067】
(非特許文献8)は、水溶液中で70%以上の収率でカルボン酸またはカルボン酸エステルのアミドを調製するために4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)の使用を記載している。活性化エステルを形成する反応はアミンの存在下で行うことが可能である。この化学作用は、図9で例示したように水相中で直接カルボキシ化顔料のD基にケトンまたはアルデヒドを含有する試薬をアミン基により付加するために良く適合する。カルボキシ化分散顔料粒子40をDMTMMと反応させて活性化エステル41を生成させる。図示したように、その後、アルデヒドまたはケトンを含有する試薬を活性化エステルと反応させて、カルボニル自己分散性顔料粒子42および43を生成させる。
【0068】
米国特許公報(特許文献37)には、ジアゾ化2−(4−アミノフェニルスルホニル)エチル水素スルフェートと反応させて、水相中にありつつアミン含有試薬と更に反応させることが可能である自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子をもたらした炭素粒子が開示されている。これらの顔料粒子をポリアミン化学種と反応させて、ポリマー変性粒子を調製する。本発明の目的のために、これらの顔料粒子をアミンとまたはカルボニルを含有する他の求核性試薬と反応させて、カルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料を生成させることが可能である。図10で例示したように、カーボンブラック顔料粒子または有機顔料粒子50は、スルフェート基のすべてが置換された後にカーボンブラック顔料または有機顔料粒子50が自己分散性のままであるように別個の分散基、例えば、カルボキシルを有することが可能であり、こうしたD基を図10に示している。ジアゾ化2−(4−アミノフェニルスルホニル)エチル水素スルフェートとの反応は自己分散性顔料粒子51をもたらす。前駆体求核性試薬は市販されている材料である。それらと顔料粒子51との反応は、カルボニル自己分散性カーボンブラック顔料または有機顔料粒子52、53および54をもたらす。
【0069】
カルボニル自己分散性無機顔料は本発明のもう1つの実施形態である。酸化物顔料、例えば、TiO2または酸化鉄は好ましい。顔料は、1つまたは複数の金属酸化物表面被膜も保持してよい。これらの被膜は、当業者によって知られている技術を用いて被着させてもよい。金属酸化物被膜の例には、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリカおよびジルコニアが挙げられる。これらの酸化物粒子の表面は、反応性ケトン基を含有するシロキサン試薬により表面を官能化することを可能にするヒドロキシル基を含有する。カルボニル自己分散性酸化物顔料をもたらす異なるシロキサン試薬と酸化物顔料粒子の5つの反応の例を図11で例示している。酸化物粒子60をそれぞれのシロキサンと反応させて、カルボニル自己分散性酸化物顔料61〜65を生成させる。図12は、図11に示した反応において用いられる5種のシロキサン試薬への合成経路を例示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする1つまたは複数の共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する1つまたは複数の共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含むことを特徴とする自己分散性顔料。
【請求項2】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C10およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C(=NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(=NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C−(OR1)2Rであり、
(C8)は
【化1】
であり、
(C9)は
【化2】
であり、
(C10)は
【化3】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項1に記載の顔料。
【請求項3】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項4】
前記共有結合した安定化基が、水性液体中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項5】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項6】
前記顔料粒子が、酸化されて表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項7】
液体ビヒクルと自己分散性顔料とを含み、自己分散性顔料が、前記液体ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする共有結合した安定化基と少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項8】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C10のいずれか1つおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C=C(NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C(−OR1)2Rであり、
(C8)は
【化4】
であり、
(C9)は
【化5】
であり、
(C10)は
【化6】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項7に記載の顔料。
【請求項9】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記液体ビヒクルが水性ビヒクルであり、前記共有結合した安定化基が、水性ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項12】
前記顔料粒子が、酸化された表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項13】
少なくとも第1のインクと第2のインクとを含むインクジェットインクセットであって、
(a)前記第1のインクが液体ビヒクルと自己分散性顔料とを含み、自己分散性顔料が、前記液体ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する少なくとも1つの共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含み、
(b)前記第2のインクが液体ビヒクルと、少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種とを含む
ことを特徴とするインクジェットインクセット。
【請求項14】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C8のいずれか1つおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C=C(NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C(−OR1)2Rであり、
(C8)は
【化7】
であり、
(C9)は
【化8】
であり、
(C10)は
【化9】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項13に記載のインクジェットインクセット。
【請求項15】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項16】
前記第1のインクの前記液体ビヒクルが水性ビヒクルであり、前記共有結合安定化基が、水性ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にするカルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項17】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項18】
前記顔料粒子が、酸化されて表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項1】
液体中で顔料の安定分散体の形成を可能にする1つまたは複数の共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する1つまたは複数の共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含むことを特徴とする自己分散性顔料。
【請求項2】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C10およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C(=NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(=NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C−(OR1)2Rであり、
(C8)は
【化1】
であり、
(C9)は
【化2】
であり、
(C10)は
【化3】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項1に記載の顔料。
【請求項3】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項4】
前記共有結合した安定化基が、水性液体中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項5】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項6】
前記顔料粒子が、酸化されて表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項2に記載の顔料。
【請求項7】
液体ビヒクルと自己分散性顔料とを含み、自己分散性顔料が、前記液体ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする共有結合した安定化基と少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項8】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C10のいずれか1つおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C=C(NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C(−OR1)2Rであり、
(C8)は
【化4】
であり、
(C9)は
【化5】
であり、
(C10)は
【化6】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項7に記載の顔料。
【請求項9】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記液体ビヒクルが水性ビヒクルであり、前記共有結合した安定化基が、水性ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする、カルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四級化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項12】
前記顔料粒子が、酸化された表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項13】
少なくとも第1のインクと第2のインクとを含むインクジェットインクセットであって、
(a)前記第1のインクが液体ビヒクルと自己分散性顔料とを含み、自己分散性顔料が、前記液体ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にする共有結合した安定化基と、少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する少なくとも1つの共有結合した化学種とを有する顔料粒子を含み、
(b)前記第2のインクが液体ビヒクルと、少なくとも1個の反応性アミン基を有する化学種とを含む
ことを特徴とするインクジェットインクセット。
【請求項14】
前記少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合した化学種が、C1〜C8のいずれか1つおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ここで、
(C1)は−C(=O)Rであり、
(C2)は−C(=NR1)Rであり、
(C3)は−C=C(NR1R2)Rであり、
(C4)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=O)−Rであり、
(C5)は−X−C(=O)−C(R1)H−C(=NR1)−Rであり、
(C6)は−X−C(=O)−C(R1)H=C(NR1R2)−Rであり、
(C7)は−C(−OR1)2Rであり、
(C8)は
【化7】
であり、
(C9)は
【化8】
であり、
(C10)は
【化9】
であり、
式中、
Rは、C1〜C10のアルキル基またはアリール基あるいはHであり、
R1は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
R2は、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であり、
Xは、CH2、OまたはNHであり、
EWDは、CN、SO、SO2、SO3、SO2NH、PO、PO3またはPO2NH基である
ことを特徴とする請求項13に記載のインクジェットインクセット。
【請求項15】
Rがメチル基またはHであることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項16】
前記第1のインクの前記液体ビヒクルが水性ビヒクルであり、前記共有結合安定化基が、水性ビヒクル中で顔料が安定分散体を形成するのを可能にするカルボキシレート、アミン、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、アミン、第四化アミンまたはエトキシレートオリゴマー基から選択されることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項17】
前記顔料粒子が、有機着色顔料粒子または無機顔料粒子からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【請求項18】
前記顔料粒子が、酸化されて表面上にカルボキシレート安定化基が形成され、および少なくとも1個の外部反応性カルボニル基を含有する共有結合化学種を含有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項14に記載のインクジェットインクセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−540051(P2009−540051A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514351(P2009−514351)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/013288
【国際公開番号】WO2007/145980
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/013288
【国際公開番号】WO2007/145980
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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