説明

カンゾウ抽出物由来の抗菌性および抗炎症性の単離物

本発明は、一形態において、抗炎症性、抗菌性、抗真菌性および付着防止剤として有効な、新規の非自明的なグリキルリザ種の根の超臨界CO抽出物から作製された製品を提供するものであり、このような製品としては、これらに限定されないが、口腔ケアおよびボディケアのための製品が挙げられる。本発明はまた、その他の形態において、例えば、これらに限定されないが、口腔ケアおよびボディケアのための製品などの抗炎症性、抗菌性、抗真菌性および付着防止剤として有効な、グリキルリザ種の根の超臨界CO抽出物から単離された成分も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] カンゾウ属(グリキルリザ(Glycyrrhiza)種)の植物の根由来の抽出物は、香料に用いられており、このような抽出物は特に、いくつかある目的のなかでも特に、カンゾウ(licorice,liquorice)のフレーバーを付与するのに用いられる。現在の抽出方法では、熱水抽出法が用いられている。この方法は、植物の根の親水性成分を選択的に単離する。従来技術の抽出方法を用いて単離された主要な単一種の成分は、グリシルリジン酸である。グリシルリジン酸は、主に、甘味料および香料として用いられている。従来技術の抽出方法では、植物の根の疎水性または親油性成分をわずかしか除去しないか、または、まったく除去しない。
【背景技術】
【0002】
[0002] その他の従来技術の方法では、抽出工程中に有機溶媒が用いられる。これらの工程によって、より多くの植物の根の親油性成分が除去されるが、有機溶媒の使用に関連する主要な環境問題が生じる。さらにいずれの従来技術の抽出工程(熱水および有機溶媒)も、例えば廃棄物の発生および除去に関する有意な問題を有する。有機溶媒抽出物は、まさにそれらの本質のために、使用済みの有機物質を処理または再利用する問題を有する。親水性化合物の抽出には熱水抽出工程が好ましいが、親油性化合物の抽出において有効ではない。加えて、使用済みの水は、その環境の水源に戻す前に処理しなければならない。
【0003】
[0003] グリキルリザ種抽出物の様々な成分は、抗炎症性、抗菌性および付着防止作用を有することが示されている。しかしながら、従来技術の抽出物で観察されているこれらの作用は、ばらつきがあった。例えばある研究では、0.25〜0.5%のグリシルリジン酸(従来技術の抽出方法によって製造されたカンゾウ抽出物の主成分)を取り込ませても、歯垢の蓄積の除去または予防に効果がなかったことが報告されている(Goultschin等,J.Clin.Periodontol.18:210−212,1991)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Goultschin等,J.Clin.Periodontol.18:210−212,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004] 従って、植物の根に含まれる全ての利用可能な親油性成分のうちより多くを単離することによって、具体的には、植物の根の利用可能なプレニル化フラボノイドを全体でより高い割合で単離することによって、従来技術の抽出物よりも廃棄物の発生が少なく、環境への影響も少なく、同時に抗炎症性、抗菌性および付着防止特性の提供においてより高い効果を有する抽出物が得られるようなグリキルリザ種の根の抽出方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005] 本発明は、一形態において、新規で非自明的なグリキルリザ種の根由来の抽出物の製造方法を提供する。一実施態様において、本発明の抽出方法は、超臨界CO抽出工程を利用することを含む。以下の好ましい実施態様の説明において、本発明に係る工程の詳細を示す。本発明の方法は、抽出工程中の有機溶媒への必要性を大きく減少させるか、または、そのような必要性をなくすこと、および、プレニル化フラボノイド(例えば、イソフラバン、イソフラボノール、フラバノン、イソフラボン)が豊富な抽出物を提供すること、それと同時に、グリシルリジン酸が実質的に含まれない、または、グリシルリジン酸が含まれない(例えば、検出可能なグリシルリジン酸が含まれない)ようにすることによって、従来技術の抽出方法の問題を解決するものである。また本発明の方法は、親油性成分は抽出されるが、親水性成分はほとんど抽出されない。また本発明の方法は、抽出工程の結果として廃水ストリームの発生も大いに減少させるか、または、それらが生じないようにする。
【0007】
[0006] 本発明はさらに、本発明の抽出工程によって作製された抽出物に関する。一実施態様において、本発明の抽出物は、G.ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)由来の抽出物を含み、このような抽出物は、親油性成分として、主としてリコリシジン(licoricidin)、および、リコリソフラバンA(5−O−メチルリコリシジン)を含む。検出可能なグリシルリジン酸、植物の根の親水性成分は、本発明の抽出工程では回収されない。リコリシジンおよびリコリソフラバンAはいずれも、フラボノイドの特定のタイプの一つであるプレニル化イソフラバンである。リコリシジンに関して、分子量は、m/z=424である。リコリソフラバンAに関して:分子量は、m/z=438であり;UV(MeOH):λmax=283nmである。一実施態様において、本発明の抽出物は、抽出工程中の調節剤としてエタノールを用いないで単離される。この実施態様において、リコリシジンおよびリコリソフラバンAの濃度範囲は、いずれも約0.5〜6.0%である。その他の実施態様において、本発明の抽出物は、抽出工程中の調節剤としてエタノールを用いて生産される。この実施態様において、リコリシジンおよびリコリソフラバンAの濃度範囲は、リコリシジンの場合は、約2.0〜20.0%であり、リコリソフラバンAの場合は、1.0〜8.0%である。さらにその他の実施態様において、本抽出物中のグリシルリジン酸の濃度は、0.10%未満である。さらにその他の実施態様において、本抽出物中のグリシルリジン酸の濃度は、0.01%または0.001%未満である。さらに、本発明の超臨界CO抽出物はまた、有意な量の脂肪酸(具体的には、例えばパルミチン酸およびリノール酸)を含む。
【0008】
[0007] さらなる研究において、本発明のカンゾウの超臨界CO抽出物の所定の成分は、抗炎症性および抗菌作用を提供することにおいて意外にも非常によく適していることが発見された。これに関して、リコリシジンおよびリコリソフラバンAは、最大レベルの抗菌作用を提供する。加えて、これに関して、本発明は、抗菌性および抗炎症性作用の提供において有効な量のリコリシジンおよびリコリソフラバンAを含む口腔およびボディケア組成物を考慮する。
【0009】
[0008] その他のグリキルリザ種は、親油性の主成分がプレニル化フラボノイドである抽出物を提供するが、具体的にどのようなプレニル化フラボノイドが含まれるかは様々であってよい。例えば、本発明の抽出工程によって製造されたG.グラブラ(G.glabra)の抽出物は、主要なプレニル化フラボノイドとして、グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールを有すると予想される。
【0010】
[0009] 本発明の抽出工程中にエタノールが調節剤としてとして用いられる場合、エタノールは、約2.0〜10%の濃度である。その他の好ましい実施態様において、調節剤としてのエタノールは、約4.0〜6.0%である。エタノールの使用は、本発明の本抽出物を生産するのに必須ではない。エタノールは、低い親油性特性を有する化合物を、COを単独で用いるよりも最大の量で抽出できるようにする。
【0011】
[0010] 本発明はまた、前記抽出物から製造された製品に関する。本発明は、本発明の本抽出物に関するいかなる具体的な用途に限定されることはないが、その他の好ましい実施態様において、本抽出物は、口腔ケア製品に用いられる。本発明の抽出物を用いることができる適切な口腔ケア製品の例としては、これらに限定されないが、歯みがき剤(例えば、練り歯磨き、練り歯磨きのジェル、歯磨き粉、義歯洗浄剤および化合物、マウスウォッシュおよびマウスリンス、爪楊枝、デンタルフロス、チューインガム、パスティル(pastille)、ロゼンジ(lozenge)、溶解性錠剤、チュアブル錠など)が挙げられる。加えて、本発明の抽出物はボディケア製品で用いることもでき、このようなボディケア製品としては、これらに限定されないが、皮膚用クリーム、スキンローション、日焼け止め組成物、石鹸、乳児ケア製品、髭剃り用製品、消臭剤、シャンプーなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0011] 図1は、A)熱水抽出、B)エタノール抽出、C)酢酸エチル抽出、D)超臨界CO抽出、および、E)調節剤としてエタノールを用いた超臨界CO抽出を用いて生成したグリキルリザ・ウラレンシスの抽出物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図2】[0012] 図2は、リコリシジンおよびリコリソフラバンAの化学構造を示す(式中、リコリシジンの場合はR=Hであり、リコリソフラバンAの場合はR=Meである)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013] 本発明は、グリキルリザ種由来の抽出物に関し、本抽出物は、従来技術の抽出方法よりも環境への影響が少なく、さらに、親油性成分を従来技術の方法よりも高い割合で抽出し、同時に親水性成分をより少なく抽出したものである。本発明はまた、本発明の抽出物に関する使用に関する。その他の形態において、本発明は、超臨界CO抽出工程を利用するグリキルリザ種の抽出工程に関する。
【0014】
[0014] 抽出物は、グリキルリザ属の様々な種類ののマメ科植物のような植物の根から作製することができ、より具体的にはグリキルリザ・ウラレンシス種から作製することができる。これらの植物は、南ヨーロッパとアジアの一部地域に自生している。G.ウラレンシスは、伝統的な漢方医学において広く用いられている。それでもなお、本発明は、いかなる特定の植物源に限定されない。本発明に係る工程によって抽出物を作成できる可能性があるその他の既知のグリキルリザ種としては、これらに限定されないが、グリキルリザ・アカントカルパ(Glycyrrhiza acanthocarpa)、グリキルリザ・アスペラ(Glycyrrhiza aspera)、グリキルリザ・アストラガリナ(Glycyrrhiza astragalina)、グリキルリザ・ブカリカ(Glycyrrhiza bucharica)、グリキルリザ・エキナータ(Glycyrrhiza echinata)、グリキルリザ・エグランデュローサ(Glycyrrhiza eglandulosa)、グリキルリザ・フェティダ(Glycyrrhiza foetida)、グリキルリザ・フェティディッシマ(Glycyrrhiza foetidissima)、グリキルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリキルリザ・ゴンチャロヴィ(Glycyrrhiza gontscharovii)、グリキルリザ・イコニカ(Glycyrrhiza iconica)、グリキルリザ・コルシンスキー(Glycyrrhiza korshinskyi)、グリキルリザ・レピドータ(Glycyrrhiza lepidota)、グリキルリザ・パリディフローラ(Glycyrrhiza pallidiflora)、グリキルリザ・スクアムローサ(Glycyrrhiza squamulosa)、グリキルリザ・トリフィラ(Glycyrrhiza triphylla)、グリキルリザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)、および、グリキルリザ・ユナネンシス(Glycyrrhiza yunnanensis)が挙げられる。
【0015】
[0015] 超臨界二酸化炭素は、ある種の特別な特性を有する二酸化炭素を意味する。二酸化炭素は通常、空気中では気体としての挙動をとるか、または、ドライアイスのような固体として存在する。温度および圧力が両方とも増加すると、二酸化炭素は、気体と液体の中間の特性を得ることができる。二酸化炭素は、その臨界温度(31.1℃)および圧力(73atm=73.96bar)を超えると超臨界流体ような挙動をとり、気体のように膨張してその容器中に充満するが、密度は液体の密度と同様である。超臨界COを作製するのに必要な実際の温度は圧力に依存し、逆もまた同様である。例えば、圧力が高くなれば、超臨界状態に到達するのに必要な温度はより低くなる。同様に、温度が高くなれば、超臨界状態に到達するのに必要な圧力はより低くなる。
【0016】
[0016] ある種の例において、超臨界COはその他の物質のための抽出剤として用いられてきたが、これまで我々が知る限りにおいて、超臨界COは、特にグリキルリザ種の根を抽出するための抽出剤として用いられてはおらず、本発明おいて得られた抽出物は、主として、プレニル化フラボノイド(プレニル化イソフラバン)、および、特にG.ウラレンシス由来のリコリシジンおよびリコリソフラバンA(さらに加えて、プレニル化フラボノイドのグラブリジン、メチルグラブリジン、および、G.グラブラ由来のグラブロール)を含み、さらにグリシルリジン酸を実質的に含まないか、または、それらを含まない。本発明の方法および組成物は、経験的な実験によってのみ考え出され、実施できるようにまとめられたものである。本発明を考案して実施するために、および、本発明を考案して製造するために、本発明の構成要素を確認または開発し必要に応じてそれらを改変するように当業者を導いたであろう市場の圧力またはその他の市場の考察はなかった。本発明が概念的にまとめられて初めて、何らかの市場価値が認められたのである。
【0017】
[0017] 超臨界COを用いる環境面での利点のいくつかは、以下の通りである。第一に、本工程で用いられるCOは実質的に不変であり、繰り返し再利用することができる。第二に、実質的に廃棄物のストリームが生じることがなく、すなわち、処理を要する使用済みの溶媒、揮発性の有機化合物、汚染された廃水などが生じることがない。従って、本発明の抽出物は、従来技術の方法の抽出物よりも環境に優しい。
【0018】
[0018] 本発明の抽出物は、従来技術のグリキルリザ種抽出物とは異なる。本発明の抽出物は、プレニル化フラボノイドとして知られている化合物(例えば、リコリシジンおよびリコリソフラバンA)を豊富に含む。これらの化合物はいずれも、抗炎症性、抗菌性、付着防止性および抗真菌性作用を有する。例えば、本発明の抽出物は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、および、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)のようなグラム陽性菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス、および、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)のようなグラム陰性嫌気性細菌に対して有意な抗菌活性を有することが示されており、それに加えて、アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対して抗真菌活性を有することも示されている。加えて、本発明の抽出物は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で試験したところ、グリシルリジン酸を含まないか、または、実質的に含まない(以下の実験の章を参照)。グリシルリジン酸は、従来技術において甘味料およびフレーバーとして用いられているものであり、本発明の組成物では必須ではない。
【0019】
[0019] リコリシジンおよびリコリソフラバンAは、本発明の超臨界CO抽出物に含まれる成分のうちの2種である。これらはいずれも、虫歯の主要な起因物であるストレプトコッカス・ミュータンスに対して3.125μg/mlで抗菌活性(MIC)を示し、プレボテラ・インターメディアに対しては、リコリシジンおよびリコリソフラバンAはそれぞれ約0.78μg/mlおよび約1.56μg/mlで抗菌活性を示し、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)に対しては、リコリシジンおよびリコリソフラバンAはそれぞれ0.39μg/ml、および、0.78μg/mlで抗菌活性を示した。プレボテラ種およびポルフィロモナス・ジンジバリスは、歯周炎に関連する。いずれの構成要素も、抗炎症薬として優れた活性を示した。従って、一般的には上記抽出物、具体的にはこれらの化合物は、抗炎症剤、抗菌剤および抗真菌剤として作用する優れた能力を有することが観察できる(以下の実験の章を参照)。
【0020】
[0020] 上述したように、本発明に係る工程によって生産された抽出物は、それらの抗炎症性、抗菌性、付着防止性および抗真菌特性のために、例えば口腔ケア製品およびボディケア製品などの多くの製品で用いることができる。以下、我々は、本発明の抽出物を用いた用途として適したいくつかの製品を説明する。
【0021】
[0021] 口腔用組成物
[0022] フロス
[0023] 本発明のグリキルリザ種の根(すなわち、カンゾウ抽出物)は、デンタルフロスに配合することができる。例えば、デンタルフロス使用中に使用者の歯と接触した状態になるように、本発明の抽出物をデンタルフロス中に含浸させてもよい。本発明の抽出物がデンタルフロス組成物で用いられる場合、本発明の抽出物の濃度は、フロス材料をコーティングするのに用いられるワックス混合物の約0.1〜5.0重量%である。好ましい濃度は、フロス材料をコーティングするのに用いられるワックス混合物の約0.5〜3.0重量%である。デンタルフロスは、本発明の本抽出物が、述べられているその他の手段うちいずれかを用いても到達が困難な互いに向き合った歯の表面と十分に接触できるようにするために用いることができる。リコリシジンおよびリコリソフラバンAが本発明のフロスにおいて抗菌剤として用いられる場合、これらは、単独で、または、混合物として、約0.01wt%〜1.0wt%の合計濃度で、約0.05wt%〜0.5wt%の合計濃度で、または、約0.1wt%〜0.2wt%の合計濃度で用いてもよい。
【0022】
[0024] 本発明の所定の実施態様において、前記デンタルフロスは、以下で考察されるようにして製造される。当業者であれば、本発明のカンゾウベースの組成物に適合するデンタルフロス製造のためのその他の方法および組成物があるということを理解しているものとする。
【0023】
[0025] 本明細書において「デンタルフロス」という用語の意味は、デンタルフロスと歯科用テープとの両方を含み、加えてその他のあらゆる類似の物品も含むものと理解されることとする。さらに、本発明において用いられるデンタルフロスおよびテープは、あらゆる適切な、または、市販のデンタルフロスまたはテープを含み得る。これらのフロスおよびテープは、天然源または合成の源のいずれからでも製造することができ、このような源の例としては、これらに限定されないが、高テナシティおよび通常のテナシティのポリマーのフィラメントまたはヤーン、ゴアテックス(GoreTexTM)、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロカーボン化合物、ポリテトラフルオロエチレン、レーヨン、ダクロン、アクリル系樹脂、酢酸ポリマー、およびその他のプラスチックが挙げられ、これらは単独でもよいし、または、組み合わせてもよい。天然物質としては、これらに限定されないが、綿、羊毛、絹、亜麻繊維、麻、ダイズ、およびその他のステープルファイバーが挙げられ、これらは単独でもよいし、または、組み合わせてもよい。また、合成繊維と天然繊維とのブレンド用いでもよい。しかしながら、合成フィラメントは、天然繊維よりも擦り切れが少ない傾向がある。
【0024】
[0026] フロスの引張強度は、それらの全長にわたり均一に分布していなければならない。これは、繊維にとって重要なことであり、すなわち、繊維はそれらの最も弱いポイントで断裂すると予想されるため、バランスの取れた引張強度が重要である。従って、本発明のデンタルフロスは、高い引張強度を有するが、それでもなお歯間のクリーニングに使用できるような繊維に関連する。フロスまたはフロス繊維のデニールは、その重量、加えて引張強度の尺度である。デニールは、コーティングされていないフロス9,000メートルあたりの重量(グラム)と定義される。デニールの数値とフロスのストランドの厚みとの間に直接的な相関があり、すなわちこの値が増加すると、ストランドの厚さも増加する。従って、一般的に、デニールが大きくなればなるほど、他の全ての条件が同じならばより高い引張強度を示す。本発明の一実施態様において、円形のフロスのデニールは、約750〜950デニールであり、平坦なフロスでは、約950〜1150デニールである。
【0025】
[0027] また、フロスそれ自身の長さ、直径、構造またはデザインは、いかなる具体的なサイズ、形状、配置または外形に限定されることはなく、従って、あらゆる具体的な意図に見合うように製造することができる。フロスは、例えば複数の別個のフィラメントで構成することができ、これら別個のフィラメントが一緒になってより太い糸を形成するが、このような糸は歯間への挿入が可能なように十分に小さい直径を有している。またこのようなフロスは、押出し成形されたモノフィラメント、または、その他のマルチフィラメントのヤーンに接着された複合型のマルチフィラメントのヤーンを含んでいてもよい。また、一本の円形、四角形または長方形のモノフィラメント糸も有用である。さらにその他の適切なバリエーションも当業界公知であり、本明細書において開示された発明においてもそのようなものとして使用することができる。
【0026】
[0028] 本明細書において開示された発明において、本明細書においてこの開示によって特定された成分をデンタルフロスに結合させたり、または、別の方法で付着させたりするために、例えば結合剤が用いられる。またこれら結合剤は、デンタルフロスの摩擦係数を変更する能力や、加えて、フロスそれ自身を構成するそれぞれのフィラメントを一緒に結合させるのを補助する能力も提供する。その上、本明細書において用いられる多様な選択肢はいかなる特定のタイプまたは組成物に制限されることはないため、それらの配合、構造または構成は自由に選択することが可能である。従って、いくつかの適切な結合剤の例としては、これらに限定されないが、植物由来の天然ワックス(例えば、カルナウバワックス、ダイズワックス、および、ホホバワックス)、加えて、その他の水溶性もしくは非水溶性ワックス、または、ワックス様の化合物もしくは水溶性、または、非水溶性ポリマー、石鹸、ゴム類、樹脂(例えば、ミルラ樹脂および蜂蝋)、および当業界でよく知られているその他の物質が挙げられる。
【0027】
[0029] またフロスは、例えば1種またはそれより多くの可溶化剤を利用する可能性もある。可溶化剤の機能は、そのようなものとして、解離に役立つと予想される。従って適切な可溶化剤としては、これらに限定されないが、濾水、逆浸透水、蒸留水、および、脱イオン水が挙げられ、これらは単独でもよいし、または、組み合わせてもよい。しかしながら、なかでも特に、脱イオン水がが好ましいことがわかった。
【0028】
[0030] またフロスは、例えば1種またはそれより多くの矯味矯臭剤を利用することもできる。好ましくは、これらは、植物および果物から誘導された油または抽出物を含み、このような油または抽出物としては、例えば、柑橘類の油、果実の精油、ミント、ペパーミント油、スペアミント油、チョウジ油、ウインターグリーン油、アニス、サッサフラス、セージ、ユーカリ、マージョラム、桂皮、レモン、オレンジ、バナナ、サクランボ、フェンネル、リンゴ、パイナップル、ブドウ、イチゴ、および、ブルーベリーが挙げられる。当業者であれば理解していると思われるが、このような天然の矯味矯臭剤は、独立して用いてもよいし、または、あらゆる感覚的に許容できるブレンドで組み合わせて用いてもよい。本発明では、このような全てのフレーバーおよびフレーバーブレンドが考慮される。
【0029】
[0031] 消費者への魅力をより高めるために、フロスはさらに、例えば1種またはそれより多くの天然甘味剤を含んでいてもよい。このような天然甘味剤としては、これらに限定されないが、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリトリトール、スクロース、ラクトース、デキストロース、マルトース、デキストリン、フルクトース、ガラクトースなどが挙げられる。
【0030】
[0032] フッ化物は、これまでに、齲食病変または虫歯の発生を予防するのに役立つことが見出されている。虫歯は、歯が再石灰化する速度よりも速い速度で脱灰すると引き起こされ、ほとんどの脱灰は、酸を生産する歯垢によって引き起こされる。しかしながら、再石灰化は、カルシウムおよびリン酸塩によって促進され、主要な再石灰化を起こす物質は、唾液中にも見出されている。それゆえに、フッ化物をベースとした化合物は、歯の上で、または、歯の中で、リン酸カルシウムの沈殿をヒドロキシアパタイトの形態で促進するための触媒として作用することによって齲食病変または虫歯からの保護を提供する。しかしながら、これだけがフッ化物の役割ではない。フッ化物はまた、ある種の細菌の酵素の活性、および、それらの酸を生産する工程を阻害することもでき、さらに、極めて高い濃度では、フッ化物は所定の歯垢細菌を殺すこともできる。さらにより重要なことに、フッ化物は、酸による溶解をかなり起こしにくい無機物を形成するフッ素化ヒドロキシアパタイトまたは「フルオロアパタイト」としてアパタイトに包含されるようになりつつある。
【0031】
[0033] 従って、フロスは、例えば1種またはそれより多くのフッ化物をベースとした化合物を含んでいてもよい。これらの化合物はまた、わずかに水に可溶性であってもよく、または、完全に水溶性であってもよい。しかしながらこのような化合物は、まず第一に、それらの水中でフッ化物イオン放出する能力を有し、さらに、フロスのその他の化合物と望ましくない反応を起こすことがないという特徴を有する。このような物質としては、なかでも特に、多数のフッ化物ベースの化合物が挙げられ、これらは例えば、可溶性のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩などの無機フッ化物塩を含んでいてもよい。フッ化物のような化合物が用いられる場合、用いられる量は、大体において、フッ素含有化合物のタイプ、その溶解性、および、最終的に選択された配合および構造に依存する。そのようなものとして、一般的な配合であり、製薬上安全が守られていると観察される限りは、用いられる量または総計には実質的なゆとりが与えられる。その結果として、以下に列挙される配合にフッ化物をベースとした化合物が用いられる場合はいつも、このような化合物は、0.30パーセント(w/w)以下の量であることが予想される。しかしながら、最大の範囲を0.24パーセント(w/w)に設定することが好ましいことがわかり、0.22〜0.24パーセント(w/w)が、使用するのに最もよい総体的な範囲である。
【0032】
[0034] 歯みがき剤
[0035] また本発明のカンゾウの超臨界CO抽出物(グリキルリザ種の根の抽出物)は、練り歯磨き、歯磨き用ジェル、および、歯磨き粉と共に用いることもできる。本発明の一実施態様において、歯みがき剤で用いられる本発明の抽出物の濃度は、約0.002〜2.0重量%の範囲である。好ましい濃度において、その範囲は、0.02〜1.0重量%である。リコリシジンおよびリコリソフラバンAが本発明の歯みがき剤において抗菌剤として用いられる場合、これらは、単独で、または、混合物として、約0.01wt%〜1.0wt%の合計濃度で、約0.05wt%〜0.5wt%の合計濃度で、または、約0.1wt%〜0.2wt%の合計濃度で用いてもよい。
【0033】
[0036] 練り歯磨き、ジェル、液状ジェル、義歯洗浄のための液体およびペーストなどの形態の組成物は、一般的に、結合剤または増粘剤を含むと予想される。本明細書において使用するのに適した結合剤としては、カラギーナン(好ましい)、および/または、天然ゴム類、例えばカラヤガム、キサンタンガム(好ましい)、アラビアゴム(好ましい)が挙げられ、さらに、トラガカントゴムも使用することができ、加えて当業界でよく知られているその他の物質も使用することができる。質感をさらに改善するための増粘剤の一部として、コロイド状のケイ酸マグネシウムアルミニウム、または、微粉ケイ酸が使用できる。結合剤/増粘剤は、組成物総量の約0.1%〜約15.0%、好ましくは約1.0〜約12重量%の量で用いることができる。それらの活性物質はフッ化物および硝酸カリウムであり、それらのレベルは、それぞれそれらの虫歯予防および過敏に関するFDAの研究論文で説明されている。歯肉炎に関する活性物質については、現在でもなお研究論文で結論が出されていない。研磨剤は、炭酸カルシウム、重曹またはケイ酸である。
【0034】
[0037] このような組成物は、典型的には、1種またはそれより多くの甘味料および香料を含むと予想される。歯みがき剤に使用するのに適した甘味料および香料の例は、上記で考察した通りである。さらに、pHのバランスをとる物質(例えば、クエン酸、NaOH)、加えて界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、安息香酸、ソルビン酸)安定剤なども、歯みがき剤組成物で用いられることが多く、それらの例も上記で示した通りである。本発明の組成物は、植物性薬品も同様に含んでいてもよい。
【0035】
[0038] 歯みがき剤は、本発明のカンゾウ抽出物の取り込みに加えて、少量の、例えば0.01〜2重量%のその他の天然成分を含んでいてもよく、そのような成分としては、例えば抗酸化剤、保存剤、pH調節剤、知覚鈍麻剤、安定剤、ゲル化剤、フレーバーなどが挙げられる。好ましいゲル化または結合剤は、1種またはそれより多くのカラギーナン、または、キサンタンガムである。好ましい香料は、例えばペパーミント、スペアミント、アンズおよび桂皮などの天然の香料である。過敏な歯のためには、このような調合物は、過敏な歯を有する人々の痛みを軽減する物質を含んでいてもよい。この目的に好ましい成分は、硝酸カリウムである。本発明において分散剤を用いてもよい。好ましい分散剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、または、サポニンを含む植物抽出物である。
【0036】
[0039] また、空気に晒されても組成物が硬くならないようにするために、練り歯磨き中に1種またはそれより多くの潤滑剤(保湿剤)のような材料を含ませることも望ましい。好ましい潤滑剤は、グリセリン、および、ソルビトールである。また所定の潤滑剤は、練り歯磨き組成物に望ましい甘味を付与する可能性もある。また液状歯みがき剤およびマウスウォッシュも、所定量の潤滑剤を含んでいてもよい。適切な潤滑剤は当業界公知である。潤滑剤が存在する場合、潤滑剤は、一般的に、本発明の組成物の約10%〜約70重量%で存在する。
【0037】
[0040] 歯磨き粉は、練り歯磨きの成分のうち多くの同じ成分を利用することができるが、それらは、乾燥させた状態で(すなわち、乾式粉砕して)混合されるか、または、液体組成物として混合され、続いて例えば様々な既知の噴霧乾燥技術によって乾燥させなければならない。噴霧乾燥は、液状の組成物を熱く乾燥したチャンバーにミストとして噴霧すると、そこでミストの水性の部分がチャンバーの乾式加熱によって蒸発し、組成物の乾燥した成分だけが粉末化した形態で残ることと説明されている。本組成物の粉末化した形態は、約0.1%〜5%の含水量を有する。続いて歯磨き粉は、使用の際に水を加えて元に戻されるが、これは、使用時の水の添加(例えば、使用者が適用した水によって)、または、使用者の唾液のいずれかによってなされる。
【0038】
[0041] 溶解性錠剤
[0042] 本発明のその他の形態は、本発明のグリキルリザ種の超臨界CO抽出物を含む、溶解性の義歯洗浄のための錠剤である。本発明のさらにその他の形態は、例えば本発明の超臨界CO抽出物から単離したリコリシジンおよびリコリソフラバンAの一方または両方を含む溶解性の義歯洗浄のための錠剤である。
【0039】
[0043] このような錠剤は、固体でもよいし、多層構造でもよいし、中心に液体が充填された形態などでもよい。このような錠剤は、約1時間未満で、好ましくは約15分間未満で、完全に、または、ほぼ完全に水溶液中に溶解すると予想される。このような錠剤は発泡性であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0040】
[0044] 水溶性の義歯洗浄のための錠剤は、まず、適切な結合剤を用いて、例えば無水アルコール溶液中で、成分の顆粒化を行い、得られた顆粒を乾燥させることによって製造される。続いて、得られた顆粒状の混合物を0.4%またはそれ未満の含水量まで乾燥させ、篩にかけ、続いて、適切なブレンド装置中で、結合剤、充填剤、増量剤、色素、フレーバー、潤滑剤などと共に、望ましい活性成分と徹底的にブレンドする。最終的なブレンドを、パンチと型打ち式の錠剤成形プレスに供給し、そこで錠剤に圧縮する。その後このようにして形成された錠剤を放出して、包装する。
【0041】
[0045] マウスウォッシュおよびマウスリンス
[0046] 本発明のマウスウォッシュおよびリンスは、典型的には、例えば水/グリセリン溶液中に本発明のグリキルリザ種の超臨界CO抽出物を含み、さらに加えて、1種またはそれより多くのフレーバー、湿潤剤、甘味料、乳化剤(例えば、ポロキサマー)、および、着色剤を含んでいてもよい。本発明のさらにその他の形態は、例えば本発明の超臨界CO抽出物から単離したリコリシジンおよびリコリソフラバンAの一方または両方を含むマウスウォッシュである。
【0042】
[0047] マウスウォッシュは、グリセリンを、0〜60重量%、好ましくは0〜30重量%のレベルで含んでいてもよい。このようなマウスウォッシュ調製物のpH値は、一般的に約3.5〜約8.0であり、好ましくは約4.0〜約7.5である。pHが8.7より大きい場合、不快な口内での感触が生じると予想される。このような口腔用の液状製剤はまた、表面活性剤、すなわち界面活性剤を、約5.0%以下、より好ましくは約0.5〜2.0%の量で含んでいてもよく;および、フッ化物を供給する化合物を、製剤の約2.0重量%以下の量で含んでいてもよく、より好ましくは、フッ化ナトリウムの場合は約0.0442%で含んでいてもよく、または、0.025%のフッ化物イオンを含んでいてもよい。
【0043】
[0048] 本発明のマウスウォッシュおよびマウスリンスはまた、1種またはそれより多くのアルコールを含んでいてもよい。例えば、エタノールである。
[0049] パスティル、ロゼンジおよびチューインガム
[0050] 本発明のグリキルリザ種の超臨界CO抽出物を含むチューインガム組成物は、従来のチューインガムの形態であってもよいし、または、咀嚼に適しているその他のあらゆる製品の形態であってもよい。本発明のさらにその他の形態は、本発明の超臨界CO抽出物から単離されたリコリシジンおよびリコリソフラバンAの一方または両方を含むチューインガムである。適切な物理的形状としては、スティック、四角形および糖衣錠(すなわち、糖でコーティングされたガム;例えば、チクレット(ChicletsTM))が挙げられる。このようなチューインガムはまた、中心に液体が充填された形態であってもよく、ここで中心の液体は、カンゾウベースの組成物を含む(例えば、米国特許第6,280,780号を参照)。このようなチューインガムはまた、消化されやすい、または、咀嚼に適した溶解性のガムであり得る。チューインガムは、典型的には、成分が放出されるのに十分な時間口腔内に保持され、それにより、このような成分が口腔での目的のために実質的に全ての歯の表面および/または口腔組織と接触することができる。
【0044】
[0051] 用語「キャリアー材料」は、本明細書で用いられる場合、本発明のチューインガム組成物で用いられる、あらゆる安全で有効な補足的なチューインガム成分を意味する。このような材料としては、エラストマー、樹脂、可塑剤、脂肪、溶媒、ワックス、乳化剤、柔軟剤、充填剤、甘味料、吸収剤、口腔内で活性な金属イオン、カチオン性材料、フッ化物イオン源、追加の歯石防止剤、抗菌剤、緩衝液、ホワイトニング剤、アルカリ金属の炭酸水素塩、増粘させる材料、潤滑剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、矯味矯臭剤、キシリトール、着色剤、および、それらの混合物が挙げられる。
【0045】
[0052] 本発明のチューインガムは、当業界公知の方法で製造される。例えば、ガムのベースを45℃に加熱して柔らかくする。全混合工程中、ミキサー容器を45℃に維持し、本明細書で説明されているような添加剤、加えて本発明の抽出物を添加し、均一になるまで混合する。続いてこのガム混合物をスティック状、四角形などに成形し、包装し、冷却する。必要に応じて、このようなガムを糖中でコーティングするか、または、無糖のキャンデーでコーティングする。
【0046】
[0053] 本カンゾウ組成物はまた、ロゼンジおよびパスティル組成物で用いることもできる。ロゼンジおよびパスティルのためのキャリアーは、都合のよい形態としては、糖、例えばグルコース、ラクトース、もしくはスクロース、または、実質的に虫歯を発生させない材料、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、エリトリトール、もしくはソルビトールである。
【0047】
[0054] このような活性成分およびキャリアーに加えて、ロゼンジは、好ましくは、1種またはそれより多くの結合剤、例えばゼラチン(植物性のゴム、例えばアラビアゴムが好ましい)、または、液状のグルコースBPC1963を含み、これらは、合計で、ロゼンジの約0.5〜10重量%の量で存在することが都合がよい可能性がある。好ましい範囲は、約1〜5重量%である。
【0048】
[0055] ロゼンジは、加えて、ロゼンジの製造を容易にするために、潤滑剤、例えばステアリン酸、または、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムを含んでいてもよい。1種またはそれより多くの潤滑剤が存在する場合、それらのロゼンジ中の合計含量は、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0049】
[0056] ロゼンジは、従来のロゼンジの製造法によって製造してもよく、例えば、1,3−ビス(2−カルボキシクロモン−5−イルオキシ)−2−ヒドロキシプロパン、または、それらの塩を、アジュバント、希釈剤またはキャリアーと共に混合し、この混合物を圧縮することによって製造することができる。好ましい手法において、望ましくは、ロゼンジに圧縮する前に、まずビス−クロモン、および、アジュバント、希釈剤またはキャリアーを一緒に造粒する。顆粒工程は、好ましくは湿式造粒法による工程であり、潤滑剤は、望ましくは圧縮工程の直前に添加される。
【0050】
[0057] パスティル(場合によっては、ナツメのようなドロップ(jujube)、または、ソフトロゼンジとしても知られている)は、グリセリン、ゼラチン(またはその他の天然のゲル化剤)および水の混合物から作製された硬質のゼリー様の製剤であり、その中に本発明の抽出物が包含されている。フレーバーが添加されてもよい。グリコゼラチンのベースを穏やかに加熱することによって融解させてもよく、そこに全ての成分を添加する。続いて、温められたベースを鋳型に注入し、硬化させる。例えば、www.rpsgb.org.uk/pdfs/mussheet04.pdfを参照すること。
【0051】
[0058] ボディケア製品
[0059] 典型的なボディケア製品としては、例えば、ボディローション、皮膚用クリーム、石鹸、ヘアケア製品(例えば、シャンプーおよびコンディショナー)、日焼け止め、抗炎症性外用剤、脱毛用組成物、髭剃り用製品(例えば、シェービングクリーム、および、アフターシェーブローション)、消臭剤、乳児ケアなどが挙げられる。ボディケア製品は、一般的には外用トリートメント剤として、体の外部(例えば、皮膚、毛髪など)に用いられる製品である。
【0052】
[0060] 当業者は、このようなボディケア製品の配合方法について理解している。例えば、Silva等の米国特許第6,861,062号(この参照により開示に含まれる)は、皮膚用クリームの典型的な調合物および製造方法を開示している。スキンケア製品のための薬草系の組成物も、当業界でよく知られており(例えば、Fasanoの米国特許6,586,018号を参照、この参照により開示に含まれる)、典型的な調合物および製造方法が開示されている。
【0053】
[0061] 髭剃り用製品の組成物および製造方法もまた、当業界でよく知られている。例えば、Lucasの米国特許第7,179,454号(この参照により本発明に含まれる)、は、数種の典型的な調合物および製造方法を開示している。Tietjen等の米国特許第6,479,043号(この参照により開示に含まれる)は、脱毛剤の典型的な調合物および製造方法を開示している。
【0054】
[0062] 同様に、石鹸、日焼け止めローションおよび抗炎症性外用トリートメント剤の調合物および製造方法も、当業界でよく知られている。
[0063] 一実施態様において、本発明のボディケア製品は、実質的にグリシルリジン酸非含有の抽出物を含むグリキルリザ種植物の根の抽出物を含み、ここで抽出物の主成分は、プレニル化フラボノイドであり、上記根は、超臨界CO抽出工程によって抽出される。
【0055】
[0064] その他の実施態様において、本抽出物は、グリキルリザ・ウラレンシス由来であり、抽出物の主成分は、リコリシジンおよびリコリソフラバンAである。
[0065] その他の実施態様において、本抽出物は、グリキルリザ・グラブラ由来であり、抽出物の主成分は、グラブリジンである。
【0056】
[0066] 例えば、一実施態様において、本発明の消臭剤は本発明の抽出物を含み、それに加えて、抗酸化剤化合物と組み合わせて、好ましくはトコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、エリソルビン酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、および、ローズマリー抽出物からなる群より選択される成分を共に、より好ましくはアスコルビン酸およびそれらの塩を共に含む。さらに、本消臭剤は、不飽和ヒドロキシカルボン酸の所定の金属塩、好ましくはリシノール酸亜鉛を含んでもよい。その他の好ましい実施態様において、本発明の抽出物は、約0.01〜5.0重量%の濃度であり、より好ましい実施態様において、約0.05〜2.0重量%の濃度である。リコリシジンおよびリコリソフラバンAが本発明の消臭剤において抗菌剤として用いられる場合、これらは、単独で、または、混合物として、約10.01wt%〜1.0wt%の合計濃度で、約0.05wt%〜0.5wt%の合計濃度で、または、約0.1wt%〜0.2wt%の合計濃度で用いてもよい。
【0057】
[0067] ボディローション、皮膚用クリーム、石鹸、ヘアケア製品、日焼け止め、抗炎症性外用剤、脱毛用組成物、髭剃り用製品、乳児ケア製品の場合、本発明の抽出物の濃度は、約0.01〜2%の濃度であり、より好ましくは0.1〜1%の濃度である。リコリシジンおよびリコリソフラバンAが本発明のボディケア製品において抗菌剤として用いられる場合、これらは、単独で、または、混合物として、約0.01wt%〜1.0wt%の合計濃度で、約0.05wt%〜0.5wt%の合計濃度で、または、約0.1wt%〜0.2wt%の合計濃度で用いてもよい。
【実施例】
【0058】
[0068] 抽出工程:以下の実施例で用いられる、および、本発明の歯みがき剤の製造におけるカンゾウ抽出物を、新規の非自明的な超臨界CO抽出工程を用いて作製した。一実施態様において、本発明の抽出工程は以下の通りである。グリキルリザ・ウラレンシスの根を切断し、すりつぶし、粉末化して原材料を作った。この原材料を抽出チャンバー(抽出装置)に入れた。抽出チャンバーに液体COを供給した。液体COは、加工/貯蔵タンクから送られ、これらを冷却し、300bar、50℃で、96%エタノールを5%で添加しながら抽出チャンバーにポンプ注入した。続いてCO抽出物をエバポレーターを介して計量し、分離タンクに流した。
【0059】
[0069] 抽出装置中で確立された超臨界条件下で、COは、親油性成分に関しては溶媒特性を有するが、一方で気相中のCOは、溶媒の力がなくてもセパレーター中の条件(60bar、30℃)下にある。そのために、上記抽出物が沈殿し、分離タンク中で気体が再生した。続いてCOをコンデンサーに通過させて液化し、加工タンクに戻して再利用した。
【0060】
[0070] 本発明のカンゾウの超臨界CO抽出物と、従来技術の方法によって製造された抽出物との比較
[0071] 微量液体希釈法による最低阻害濃度:嫌気性菌の場合、0.075%システインを含む滅菌した予備還元したウィルキンス・チャルグレン(Wilkins Chalgren;WC)嫌気性菌用液体培地(190μL)を、96ウェルのプレート中の一連の試験用ウェルのうち第一のウェルに添加し、続いて4つの追加の試験用ウェルそれぞれに100μL添加した。エタノール中で40mg/mLになるように製造されたフィルター滅菌済みのカンゾウCO抽出物のストック溶液(10μL)を、一連のウェルのうち第一のウェルに添加した。第一のウェルの内容物を徹底的に混合し、一連のウェルの残りの4つのウェルを用いて連続的に希釈した(1:1);一連のウェル中の最終的なウェルから100μLを捨てた。約1×10cfu(コロニー形成単位)/mLに希釈したポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277、または、プレボテラ・インターメディアATCC25611の懸濁液を、試験用ウェルに100μLの量で添加した。適切な増殖促進剤および滅菌コントロールを加えた。増殖コントロールウェルに濁りが観察されるまで、プレートを37℃で嫌気的にインキュベートした。肉眼で観察した場合の試験微生物の増殖を阻害する最低濃度として、MIC(最小阻止濃度)を記録した。ストレプトコッカス・ミュータンスATCC25175を、試験培地としてトリプトンダイズ培地(TSB)を用い、プレートを37℃で5%COと共にインキュベートすることを含む類似の様式で試験した。試験培地としてトリプトンダイズ培地(TSB)を用い、プレートを37℃でインキュベートすることによって、スタフィロコッカス・アウレウスATCC6538を試験した。試験培地としてトリプトンダイズ培地(TSB)を用いて、室温(25℃)でインキュベートすることによって、アスぺルギルス・ニガーATCC16404を試験した。
【0061】
[0072] 結果を各細菌ごとに3連の実験で得られた最頻値として記録した。P.インターメディアおよびP.ジンジバリスは、歯周炎に関連するグラム陰性細菌である。ストレプトコッカス・ミュータンスは、虫歯の形成に関与する。両方の超臨界抽出物は、試験された抽出物の最低濃度で3種の病原菌の増殖を阻害することができた。本発明の超臨界カンゾウ抽出物は、調節剤としてエタノールを用いても、または用いなくても、12.5μg/mlの濃度でP.インターメディアを阻害することができた。調節剤としてエタノールを用いた抽出物は、クロルヘキシジンと同じレベルでP.ジンジバリスの増殖を阻害することができた。本発明の超臨界カンゾウ抽出物(エタノールを含む)は、齲蝕原性細菌であるS.ミュータンスの増殖を、12.5μg/mlの濃度で阻害することができた。本発明の超臨界カンゾウ抽出物(エタノールを含まない)は、31.25μg/mlのみ試験された。表1Aを参照すること。
【0062】
【表1】

【0063】
[0073] リコリシジンおよびリコリソフラバンAの抗菌活性
[0074] リコリシジンおよびリコリソフラバンAは、本発明の超臨界CO抽出物に含まれる成分のうちの2種である。これらはいずれも、表1Bで示されるように、虫歯の主要な起因物であるストレプトコッカス・ミュータンスに対して3.125μg/mlで抗菌活性を示し、プレボテラ・インターメディアに対しては、リコリシジンおよびリコリソフラバンAはそれぞれ約0.78μg/mlおよび約1.56μg/mlで抗菌活性を示し、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対しては、それぞれ0.39μg/mlおよび1.56μg/mlで抗菌活性を示した。ポルフィロモナス・ジンジバリスおよびプレボテラ種は、歯周炎に関連する。これらの濃度を、最小阻止濃度(MIC)とした。どちらの成分も抗炎症薬として優れた活性を示した。当業者によれば、MICは、一晩インキュベートした後に目で見てわかるような微生物の増殖を阻害すると予想される抗菌剤の最小濃度として定義される。当業者によれば、最小阻止濃度は、新しい抗菌剤の活性をモニターするために用いられる。本明細書においてポジティブコントロールとして用いられているクロルヘキシジンは、例えばマウスウォッシュにおいて抗菌剤としてよく使われているものである。
【0064】
[0075] 微量液体希釈法による最低阻害濃度を以下のようにして行った。エタノール中で1mg/mLになるように製造されたフィルター滅菌済みの純粋な化合物としてのリコリシジンまたはリコリソフラバンAのストック溶液(10μL)を、一連のウェルのうち第一のウェルに添加した。第一のウェルの内容物を徹底的に混合し、一連のウェルの残りの7つのウェルを用いて連続的に希釈した(1:1);一連のウェル中の最終的なウェルから100μLを捨てた。約1×10cfu(コロニー形成単位)/mLに希釈したポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277、または、プレボテラ・インターメディアATCC25611の懸濁液を、試験用ウェルに100μLの量で添加した。適切な増殖促進剤および滅菌コントロールを加えた。増殖コントロールウェルに濁りが観察されるまで、プレートを37℃で嫌気的にインキュベートした。肉眼で観察した場合の試験微生物の増殖を阻害する最低濃度として、MIC(最小阻止濃度)を記録した。ストレプトコッカス・ミュータンスATCC25175を、試験培地としてトリプトンダイズ培地(TSB)を用い、プレートを37℃で5%COと共にインキュベートすることを含む類似の様式で試験した。
【0065】
[0076] 結果を各細菌ごとに3連の実験で得られた最頻値として記録した。P.インターメディアおよびP.ジンジバリスは、歯周炎に関連するグラム陰性細菌である。ストレプトコッカス・ミュータンスは、虫歯の形成に関与する。いずれの化合物も、3種の病原菌の増殖を阻害することができた。
【0066】
【表2】

【0067】
[0077] バイオフィルム形成および生存能力:ヘミンおよびビタミンKが補充されたトッド・ヒューイット(Todd−Hewitt)培地(THB−HK)中でP.ジンジバリス(ATCC33277)を24時間培養したものを新しい液体培地で希釈したところ、655nm(OD655)での光学密度が0.07であった。サンプル(100μL)を、THB−HK中の滅菌植物抽出物の連続希釈液(0〜500μg/mL)100μLを含む96ウェルの組織培養プレートのウェルに添加した。抽出物を含まないコントロールウェルにも植え付けた。嫌気性条件下で37℃で48時間インキュベートした後に、使用済みの培地と浮遊している細菌を26Gの針を用いた吸引によって除去し、ウェルを蒸留水で3回洗浄した。P.ジンジバリスのバイオフィルムを0.4%クリスタルバイオレット(100μL)で15分間染色した。ウェルを蒸留水で4回洗浄し、未結合のクリスタルバイオレット色素を除去し、37℃で2時間乾燥させた。各ウェルに100μLの95%(v/v)エタノールを添加した後、プレートを10分間振盪して、バイオフィルムから染料を除去し、550nm(A550)における吸光度を記録した。分析を3連で行い、2回の独立した実験の平均±標準偏差を計算した。表2を参照すること。
【0068】
[0078] テトラゾリウムナトリウム3’−{1−[(フェニルアミノ)−カルボニル]−3,4−テトラゾリウム}−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物(XTT)還元分析を用いて、P.ジンジバリスの細胞生存能力に対する植物分画の作用を調査した。簡単に言えば、XTTを1mg/mLでPBSに溶解させ、アセトン中で1mMのメナジオンを製造した。XTT/メナジオン試薬は、1部のメナジオンに12.5部のXTT/を含んでいた。48時間のP.ジンジバリスのバイオフィルムを上述したようにして製造し、25μLのXTT/メナジオンを添加する前に、植物分画(0〜250μg/mL)で2時間処理した(嫌気生活、37℃)。37℃で1時間後、490nm(A490)における吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて読んだ。本発明のカンゾウ抽出物は、P.ジンジバリスの増殖を阻害することができ、さらにP.ジンジバリスの形成も阻害した。それに続いてP.ジンジバリスは、付着することができなくなった(付着防止性)。バイオフィルム形成後にカンゾウ抽出物を適用した場合、バイオフィルムの脱離は起こらなかったが、バイオフィルムの生存能力は減少し、これは、バイオフィルムは除去されなかったが、バイオフィルムを形成する細菌が死んだことを意味する。表2を参照すること。
【0069】
【表3】

【0070】
[0079] LPS調製物:アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)ATCC29522(別名:アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans))、および、P.ジンジバリスATCC33277をそれらの適切な培養培地中で増殖させた。我々の実験室で慣例的に用いられる方法によってLPSをこれらの菌株から単離した。
【0071】
[0080] マクロファージの処理:10%FBSおよび100μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシンが補充されたRPMI−1640(RPMI−FBS)中で、37℃で、5%COの雰囲気中で、ヒト単芽球性白血病細胞系U937細胞(ATCC CRL−1593.2)を培養した。単球(2×10細胞/ml)を、10ng/mlのミリスチン酸ホルボール(PMA)を含むRPMI−10%FBS中で48時間インキュベートし、付着性のマクロファージ様細胞への分化を誘導した。PMA処理後、培地を新しい培地と交換し、分化細胞を使用前に追加の24時間インキュベートした。付着性のマクロファージをRPMI−10%FBSに懸濁し、200×gで8分間遠心分離した。それらを洗浄し、RPMI−10%FBSに1×10細胞/mlの密度で懸濁し、37℃、5%CO雰囲気で、6ウェルのプレート中に植え付けた(2ml中に2×10細胞/ウェル)。
【0072】
[0081] 250μg/ml以下の濃度でマクロファージをカンゾウ抽出物で処理し、37℃、5%CO中で2時間インキュベートし、その後、最終濃度1μg/mlのLPSで刺激した。24時間インキュベートした後に(37℃、5%CO中)、培地の上清を回収し、使用するまで−20℃で保存した。カンゾウ抽出物を含む、または含まない培地中で細胞をインキュベートしたが、LPSで刺激しないものを、コントロールとして用いた。
【0073】
[0082] サイトカインレベルの測定:市販の酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)キット(R&Dシステムズ(R&D Systems),ミネアポリス,ミネソタ州,米国)を用いて、製造元のプロトコールに従って、無細胞培養上清中のIL−1β、IL−6、IL−8およびTNF−α濃度を定量した。450nmにおける吸光度を、550nmの波長補正設定を用いたマイクロプレートリーダーで読んだ。
【0074】
[0083] 統計的分析:分散の両側検定を行い、異なる条件の平均を比較した。0.05レベル(P値)で差が有意とみなした。
[0084] 抗炎症性作用
本発明の抽出物は、インビトロにおいて、濃度10μg/mlのアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスのLPSと濃度5μg/mlのインターロイキン6で刺激したヒト単芽球性白血病細胞系U937細胞から生産されたマクロファージによる、インターロイキン1β、インターロイキン8および腫瘍壊死因子αの生産の、有意な阻害を引き起こした。これらの結果は2回の独立した実験で確認された。
【0075】
[0085] カンゾウ抽出物は、インビトロにおいて、5〜10μg/mlの様々な濃度のP.ジンジバリスのLPSで刺激されたマクロファージによる、インターロイキン6、インターロイキン8および腫瘍壊死因子α(TNF−α)の生産の、有意な阻害を引き起こした。これらの結果は2回の独立した実験で確認された。
【0076】
[0086] 超臨界CO抽出物のHPLC解析
[0087] 本発明の抽出物、および、従来技術の方法によって生産された抽出物のサンプルを、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって解析した。用いられた手法の詳細は以下の通りである:
[0088] HPLCは、ゾルバックス(Zorbax)C−18ガードカラム(Guard Column)を備えた、ゾルバックス・エクリプス(Eclipse)XDB C−18(250×4.6mm、直径5μm,アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies,カリフォルニア州サンタクララ)製)で行われた:(カタログ番号:HP990967−902およびHP820950−925)。
【0077】
【表4】

【0078】
[0089] 図1に結果を示す。第一のクロマトグラム(A)は、熱水を用いた抽出物を示し、この抽出物は、親水性化合物のみを含む。4.5分後のピーク溶出は、グリシルリジン酸である。UVスペクトルおよび保持時間によれば、グリシルリジン酸は、熱水抽出物にのみ存在する。第二のクロマトグラム(B)は、100%エタノールの抽出物であり、クロマトグラム(C)は、酢酸エチル抽出物であり、いずれも組成が極めて類似しているが、例外的に、Bは、より多くの親水性化合物を含む(0〜4分で溶出)。CO抽出物の主成分は、リコリシジン(ピーク1、16.5分後に溶出)、および、リコリソフラバンA(ピーク2、21分後に溶出)であり、約18分の同定されていないフラボノイドのピーク3も共存する。調節剤としてエタノール(EtOH)を用いた超臨界抽出物は、より多くの親水性化合物を含み、調節剤を含まない超臨界抽出物は、最大量のリコリシジンおよびリコリソフラバンAを含む。その上、環境面の視点から、CO抽出物は、親水性化合物と親油性化合物との優れたバランスを達成するのにわずかな割合のエタノール(5〜10%)しか要しない。両方の超臨界抽出物において、リコリシジンおよびリコリソフラバンAは、高度に優勢な成分である。
【0079】
[0090] 以下のようにして、本発明の超臨界CO抽出物からリコリシジンおよびリコリソフラバンAを単離した。約433mgの量のカンゾウCO/EtOH抽出物を、ビュッヒ(Buchi)C−600MPLCシステム(ビュッヒ・アナリティカル(Buchi Analytical),フラウィル(Flawil),スイス)を備えた中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)に送り、ここで、ODSベースの(フェノメネックス(Phenomenex)ルナ(Luna)C−18(2)、100Å)固定相を用い、溶媒としてアセトニトリル−水(45:55)を用い、流速5ml/分を用いた。リコリシジン(32.8mg)およびリコリソフラバンA(21.5mg)を含む分画3を、分画7から得た。リコリシジンの純度は約89%であり、リコリソフラバンAの純度は約91%であった。本発明との関連において、本発明のリコリシジンおよびリコリソフラバンAに関して用語「単離した」が用いられる場合、約50%またはそれより大きい純度、約60%またはそれより大きい純度、約70wt%またはそれより大きい純度、約80wt%またはそれより大きい純度、約90wt%またはそれより大きい純度、約95wt%またはそれより大きい純度、または、約99wt%またはそれより大きい純度を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケアまたはボディケア組成物であって、該組成物は、グリキルリザ種の植物の根の抽出物を含み、実質的にグリシルリジン酸非含有の抽出物を含み、該抽出物の主成分は、プレニル化フラボノイドであり、該根は、超臨界CO抽出工程によって抽出される、上記組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、グリキルリザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)由来であり、前記抽出物の主成分が、リコリシジン、および、リコリソフラバンAである、請求項1に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項3】
前記抽出物が、グリキルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)由来であり、前記抽出物の主成分が、グラブリジンである、請求項1に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項4】
前記口腔ケア組成物が、歯みがき剤、練り歯磨き、義歯洗浄剤、デンタルフロス、爪楊枝、マウスウォッシュ、マウスリンス、パスティル(pastille)、チューインガム、溶解性錠剤、チュアブル錠、または、ロゼンジ(lozenge)からなる群より選択される、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記抽出物が、約0.002wt%〜約2.0wt%の濃度である、請求項4に記載の歯みがき剤。
【請求項6】
前記抽出物が、0.002wt%〜約2.0wt%の濃度である、請求項4に記載の義歯洗浄剤。
【請求項7】
前記抽出物が、0.002wt%〜約1.0wt%の濃度である、請求項4に記載のマウスウォッシュまたはマウスリンス。
【請求項8】
前記抽出物が、0.005wt%〜約10.0wt%の濃度である、請求項4に記載のパスティル、チューインガムまたはロゼンジ。
【請求項9】
前記抽出物が、0.01wt%〜約5.0wt%の濃度である、請求項4に記載の溶解性錠剤。
【請求項10】
前記抽出物が、前記デンタルフロスをコーティングまたは含浸するために用いられるワックス混合物の0.1wt%〜約5.0wt%の濃度である、請求項4に記載のデンタルフロス。
【請求項11】
前記超臨界CO抽出工程はさらに、エタノール調節剤を含む、請求項1に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項12】
前記エタノール調節剤が、約2.0wt%〜約10wt%の濃度である、請求項11に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項13】
前記プレニル化フラボノイドが、前記抽出物の約1.0wt%〜20wt%を構成する、請求項1に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項14】
前記プレニル化フラボノイドが、前記抽出物の約2.0wt%〜10wt%を構成する、請求項1に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項15】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、前記抽出物の約1.0wt%〜20wt%を構成する、請求項2に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項16】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、前記抽出物の約2.0wt%〜10wt%を構成する、請求項2に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項17】
前記抽出物が、グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールを含み、該グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールは、前記抽出物の約1.0wt%〜20wt%を構成する、請求項3に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項18】
前記抽出物が、グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールを含み、該グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールは、前記抽出物の約2.0wt%〜10wt%を構成する、請求項3に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項19】
前記抽出物が、グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールを含み、該グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールは、前記抽出物の約1.0wt%〜20wt%を構成する、請求項11に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項20】
前記抽出物が、グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールを含み、該グラブリジン、メチルグラブリジンおよびグラブロールは、前記抽出物の約2.0wt%〜10wt%を構成する、請求項11に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項21】
グリキルリザ種植物の根の抽出物から単離されたリコリシジンおよびリコリソフラバンAの1種またはそれより多くを含む、口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項22】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、グリキルリザ種植物の根の抽出物から単離され、該根は、超臨界CO抽出工程によって抽出される、請求項21に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項23】
前記グリキルリザ種植物の根の抽出物が、実質的にグリシルリジン酸非含有の抽出物を含み、該抽出物の主成分は、プレニル化フラボノイドである、請求項22に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項24】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、少なくとも90%の純度を有する、請求項21に記載の口腔ケアまたはボディケア組成物。
【請求項25】
前記口腔ケア組成物が、歯みがき剤、練り歯磨き、義歯洗浄剤、デンタルフロス、爪楊枝、マウスウォッシュ、マウスリンス、パスティル、チューインガム、溶解性錠剤、チュアブル錠、または、ロゼンジからなる群より選択される、請求項21に記載の口腔ケア組成物。
【請求項26】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAの1種またはそれより多くが、約0.01wt%〜2.0wt%の濃度である、請求項25に記載の歯みがき剤。
【請求項27】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAの1種またはそれより多くが、約0.01wt%〜2.0wt%の濃度である、請求項25に記載の義歯洗浄剤。
【請求項28】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、約0.01wt%〜2.0wt%の濃度である、請求項25に記載のマウスウォッシュまたはマウスリンス。
【請求項29】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、0.005〜10.0%の濃度である、請求項25に記載のパスティル、チューインガムまたはロゼンジ。
【請求項30】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAが、約0.01wt%〜5.0wt%の濃度である、請求項25に記載の溶解性錠剤。
【請求項31】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAの濃度が、前記デンタルフロスをコーティングまたは含浸するために用いられるワックス混合物の約0.1wt%〜約5.0wt%である、請求項25に記載のデンタルフロス。
【請求項32】
前記口腔ケア組成物が、ボディローション、皮膚用クリーム、石鹸、シャンプーおよびコンディショナー、日焼け止め、抗炎症性外用剤、脱毛用組成物、シェービングクリーム、アフターシェーブローション、または、消臭剤からなる群より選択される、請求項21に記載のボディケア組成物。
【請求項33】
前記リコリシジンおよびリコリソフラバンAの1種またはそれより多くが、約0.05wt%〜2.0wt%の濃度である、請求項32に記載のボディケア組成物。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−526067(P2010−526067A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506311(P2010−506311)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/005578
【国際公開番号】WO2008/137009
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508147647)トムズ・オブ・メイン・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】