説明

カーゴタンクの支持構造、浮体構造物及びカーゴタンクの支持方法

【課題】支持部材の数量及び配置箇所を削減することができ、建造工事に要する時間を低減することができ、建造コストを削減することができるカーゴタンクの支持構造、浮体構造物及びカーゴタンクの支持方法を提供する。
【解決手段】カーゴタンク2の支持構造は、カーゴタンク2の底部2aに分散配置された複数の第一支持部3と、浮体構造物1の長手方向に沿って連続的に形成されるとともにカーゴタンク2の底部2aに配置された第二支持部4と、収容部11の底部11a側に第二支持部4の長手方向に沿って形成されるとともに第二支持部4と係止可能な係止部5と、を有し、少なくとも第一支持部3によりカーゴタンク2の垂直荷重Fzを支持し、少なくとも第二支持部4と係止部5とによりカーゴタンク2の水平荷重(第一水平荷重Fy)を支持し得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーゴタンクの支持構造、浮体構造物及びカーゴタンクの支持方法に関し、特に、浮体構造物に搭載されるカーゴタンクの垂直荷重及び水平荷重を支持するための支持構造、該支持構造を備えた浮体構造物及び前記カーゴタンクの支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、LPG(液化石油ガス)、LNG(液化天然ガス)等の液体貨物を運搬又は貯蔵する運搬船や洋上浮体設備等の浮体構造物では、これらの液体貨物を収容するカーゴタンクを浮体構造物から独立させた独立タンク方式のものが広く使用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
また、航海中又は停泊中の浮体構造物には、波の影響により、上下に直線的に揺れるヒービング、左右に直線的に揺れるスウェイイング、前後に直線的に揺れるサージング、中央部を中心に頭尾が上下に振動するピッチング、中央部を中心に頭尾が左右に振動するヨーイング、中心線を軸に側部が上下に振動するローリング、の運動が生じ、実際にはこれらの運動が絡み合った複雑な運動が生じる。したがって、浮体構造物に対して相対移動可能な独立タンク方式のカーゴタンクでは、カーゴタンクを安定的に支持することが重要となる。
【0004】
特許文献1の図5及び図6には、ベアリングシート、フローティングチョック及びローリングチョックによって、カーゴタンクを支持する構造が開示されている。ここで、ベアリングシートは、カーゴタンクの垂直荷重を支持する支持構造であり、ローリングチョックは、船体のローリングによりカーゴタンクが横方向に振れた場合の水平荷重を支持する支持構造であり、フローティングチョックは、浸水時におけるカーゴタンクの浮き上がりを抑制する支持構造である。したがって、浮体構造物の自重及び上述した波の影響によって生じる浮体構造物の運動による荷重は、主に、ベアリングシート及びローリングチョックによって支持される。そして、特許文献1に記載されたように、ベアリングシートは船体の底部に配置され、ローリングチョックは船体の天井部及び底部に配置される。
【0005】
特許文献2の図6には、独立タンクを支持する支持部材を、各支持部材の反力の大きさに応じて粗又は密に配置した構造が開示されている。なお、特許文献2に開示された支持構造では、カーゴタンクの垂直荷重の分布に着目した発明であり、特許文献1のベアリングシートに相当する支持構造のみが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−177681号公報、図5及び図6
【特許文献2】実開昭59−5492号公報、図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたカーゴタンクの支持構造では、カーゴタンクの垂直荷重を支持する支持部材(ベアリングシート)と、カーゴタンクの水平荷重を支持する支持部材(ローリングチョック)と、を有するとともに、水平荷重を支持する支持部材が、浮体構造物の天井部にも配置されているため、該支持部材が底部と天井部とに分散しており、浮体構造物及びカーゴタンクの両方の建造工事に多くの時間を要するという問題があった。また、支持部材によりカーゴタンクが支持される部分には、その反力を受けるために、カーゴタンクの内側に補強部材を配置する必要があり、支持部材の数量が多かったり、配置箇所が分散したりしている場合には、カーゴタンクの建造工事にさらに多くの時間を要することとなり、製造コストが増大していた。
【0008】
特許文献2に記載されたカーゴタンクの支持構造では、各支持部材に生じる反力を浮体構造物毎に計測して支持部材の配置箇所や形状を個別に設計しなければならず、設計作業に時間を要するという問題があった。また、支持部材に生じる反力を支持するだけでは、浮体構造物のローリング、スウェイイング、ヨーイング等の運動により生じる大きな水平荷重を支持することは困難であり、特許文献1に記載されたローリングチョックのような水平荷重を支持する支持部材を配置する必要があり、その結果、特許文献1と同様の問題を生じる。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、支持部材の数量及び配置箇所を削減することができ、建造工事に要する時間を低減することができ、建造コストを削減することができるカーゴタンクの支持構造、浮体構造物及びカーゴタンクの支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、浮体構造物に形成された収容部に搭載されるカーゴタンクの支持構造において、前記カーゴタンクの底部に分散配置された複数の第一支持部と、前記浮体構造物の長手方向に沿って連続的に形成されるとともに前記カーゴタンクの底部に配置された第二支持部と、前記収容部の底部側に前記第二支持部の長手方向に沿って形成されるとともに前記第二支持部と係止可能な係止部と、を有し、少なくとも前記第一支持部により前記カーゴタンクの垂直荷重を支持し、少なくとも前記第二支持部と前記係止部とにより前記カーゴタンクの水平荷重を支持し得るように構成した、ことを特徴とするカーゴタンクの支持構造が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されカーゴタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物であって、前記カーゴタンクの支持構造は、前記カーゴタンクの底部に分散配置された複数の第一支持部と、前記浮体構造物の長手方向に沿って形成されるとともに前記カーゴタンクの底部に配置された第二支持部と、前記収容部の底部側に前記第二支持部の長手方向に沿って形成されるとともに前記第二支持部と係止可能な係止部と、を有し、少なくとも前記第一支持部により前記カーゴタンクの垂直荷重を支持し、少なくとも前記第二支持部と前記係止部とにより前記カーゴタンクの水平荷重を支持し得るように構成した、ことを特徴とする浮体構造物が提供される。
【0012】
上述したカーゴタンクの支持構造及び浮体構造物において、前記第二支持部は、前記長手方向の中心線に沿って配置されていてもよい。また、前記収容部は、前記カーゴタンクを覆う天井部を有し、該天井部は、前記カーゴタンクの水平荷重を支持する支持部を有しないようにしてもよい。
【0013】
また、前記第二支持部により前記カーゴタンクの垂直荷重を支持するように構成してもよい。さらに、前記収容部の底部に配置され前記第一支持部を摺動可能に支持する第一台座部と、前記収容部の底部に配置され前記第二支持部を支持する第二台座部と、を有し、前記係止部は、前記第二台座部に形成されていてもよい。
【0014】
また、前記水平荷重を、前記浮体構造物の短手方向に生じる第一水平荷重と、前記浮体構造物の長手方向に生じる第二水平荷重と、に分離し、前記第一水平荷重を前記第二支持部と前記係止部とにより支持し、前記第二水平荷重を前記第一支持部により支持し得るように構成してもよい。
【0015】
また、前記収容部の底部側に前記浮体構造物の短手方向に沿って形成されるとともに前記第一支持部と係止可能な係止部を有し、該係止部と前記第一支持部とにより前記第二水平荷重を支持するようにしてもよい。
【0016】
また、前記第一支持部及び前記第二支持部は、下方が開放された凹部を有する枠体部と、該枠体部から下方に突出するように前記凹部に固定される支持ブロックと、を有していてもよい。
【0017】
また、前記カーゴタンクは、その底部の内側に前記長手方向に沿って並列配置される複数の補強部材を有し、前記支持ブロックは、隣り合う前記補強部材の間隔よりも狭い幅に形成されていてもよい。
【0018】
また、本発明によれば、浮体構造物に形成された収容部に搭載されるカーゴタンクの支持方法において、前記カーゴタンクの垂直荷重及び水平荷重を支持する支持部を前記収容部の底部側に集約して配置した、ことを特徴とするカーゴタンクの支持方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明に係るカーゴタンクの支持構造、浮体構造物及びカーゴタンクの支持方法によれば、カーゴタンクの垂直荷重及び水平荷重を支持する支持部を収容部の底部に集約するとともに、浮体構造物の長手方向に沿って連続的に形成された第二支持部で水平荷重を支持し得るようにしたことにより、カーゴタンクの垂直荷重及び水平荷重を支持することができることは勿論のこと、支持部の数量及び配置箇所を削減することができ、建造工事に要する時間を低減することができ、建造コストを削減することができる。また、天井部におけるチョックを省略することにより、船体からの独立性を高めることができ、船体上甲板の設計や建造の自由度を高めることができ、コスト削減とともに幅広い適用を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した支持構造の部分拡大図であり、(a)は第一支持部、(b)は第二支持部、を示している。
【図3】図1に示した支持構造の配置図であり、(a)はカーゴタンクの底面、(b)は収容部の底面、を示している。
【図4】水平荷重の支持方法に関する説明図であり、(a)は従来技術におけるカーゴタンクの底部、(b)は従来技術におけるカーゴタンクの上部、を示している。
【図5】本発明の他の実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、(d)は第五実施形態、を示している。
【図6】本発明の他の実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す図であり、(a)は第六実施形態、(b)は第七実施形態、を示している。
【図7】本発明の実施形態に係る浮体構造物を示す全体概略構成図であり、(a)は船舶、(b)は洋上浮体設備、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1〜図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す断面図である。また、図2は、図1に示した支持構造の部分拡大図であり、(a)は第一支持部、(b)は第二支持部、を示している。また、図3は、図1に示した支持構造の配置図であり、(a)はカーゴタンクの底面、(b)は収容部の底面、を示している。なお、図1〜図3において、説明の便宜上、浮体構造物1の長手方向をX軸、短手方向をY軸、高さ方向をZ軸、として座標を設定している。
【0022】
本発明の第一実施形態に係るカーゴタンクの支持構造は、図1〜図3に示したように、浮体構造物1に形成された収容部11に搭載されるカーゴタンク2の支持構造であって、カーゴタンク2の底部2aに分散配置された複数の第一支持部3と、浮体構造物1の長手方向Xに沿って連続的に形成されるとともにカーゴタンク2の底部2aに配置された第二支持部4と、収容部11の底部11a側に第二支持部4の長手方向Xに沿って形成されるとともに第二支持部4と係止可能な係止部5と、を有し、少なくとも第一支持部3によりカーゴタンク2の垂直荷重Fzを支持し、少なくとも第二支持部4と係止部5とによりカーゴタンク2の水平荷重(特に、第一水平荷重Fy)を支持し得るように構成されている。なお、水平荷重は、浮体構造物1の短手方向Yに生じる第一水平荷重Fyと、浮体構造物1の長手方向Xに生じる第二水平荷重Fxと、に分離することができる。
【0023】
前記浮体構造物1は、例えば、自立角型方式のLNG船である。自立角型方式のLNG船(浮体構造物1)は、図1に示したように、二重隔壁の船体12を有し、その内側にカーゴタンク2を収容する空間を形成する収容部11を有している。ここでは、カーゴタンク2が角型を有しているため、収容部11も角型の空間を有している。かかる収容部11は、カーゴタンク2の底部2aと対峙する底部11a及びカーゴタンク2の上部を覆う天井部11bを有する。そして、本実施形態において、天井部11bは、カーゴタンク2の水平荷重を支持する支持部を有しておらず、かかる支持部は、後述するように、底部2aに集約されている。
【0024】
前記カーゴタンク2は、例えば、石油、LPG、LNG等の液体貨物を収容するタンクである。ここでは、LNGを収容する場合を想定している。LNGは、気体の天然ガスを−162℃以下の温度に冷却して液体にしたものであり、低温に維持する必要がある。そこで、カーゴタンク2の外周には、パネル状の断熱材21が張り巡らされている。かかるカーゴタンク2は、船体12から独立して建造された独立タンクであり、収容部11の内部に載置される。このとき、カーゴタンク2の自重を支えるとともに、船体12からの伝熱を抑制するために、カーゴタンク2の底部2aに支持部材(例えば、第一支持部3及び第二支持部4)が配置され、かかる支持部材を介して収容部11の底部11a上に載置される。本発明は、かかるカーゴタンク2の支持構造に特徴を有する発明である。なお、カーゴタンク2の内側には種々の補強部材が配置されているが、図1には、船体12の長手方向Xに沿って並列配置される補強部材22のみを図示している。
【0025】
前記第一支持部3は、カーゴタンク2の自重、すなわち、垂直荷重Fzを支持する支持部材である。図2(a)に示すように、第一支持部3は、下方が開放された凹部を有する枠体部31と、枠体部31から下方に突出するように凹部に固定される支持ブロック32と、を有する。支持ブロック32は、枠体部31の凹部に嵌合されており、枠体部31に固定される。支持ブロック32は、例えば、角型の木材により構成され、枠体部31に押し込まれることにより固定される。勿論、支持ブロック32は、固定金具により枠体部31に固定してもよい。また、枠体部31の外周には、適宜、補強材31aが配置される。なお、支持ブロック32には、従来の支持ブロックと同様のものを適宜使用することができ、例えば、ゴムや樹脂等の熱伝導率が低く弾性力を有する素材により構成されたものや、これらの素材を角材の表面に固定したものを使用してもよい。
【0026】
また、図2(a)に示すように、第一支持部3と対峙する収容部11は、底部11aに配置され第一支持部3を摺動可能に支持する第一台座部13を有する。第一台座部13は、中空、中実又は井桁状の金属部品により構成されており、上面が略平板状に形成されている。また、第一台座部13の外周には、適宜、補強材13aが配置される。そして、第一台座部13の上面に第一支持部3の支持ブロック32が摺動可能に載置される。なお、第一台座部13は、収容部11の底部11aそのものを凹凸形状に形成することによって構成してもよいし、不要な場合には省略して支持ブロック32を底部11aで直に受けるようにしてもよい。
【0027】
また、図3(a)に示すように、第一支持部3は、浮体構造物1の中心線Lを挟んだ両側部に配列され、カーゴタンク2の底部2aに分散配置される。ここでは、第一支持部3は、右舷側と左舷側のそれぞれに二行八列に配置されている。一方、第一台座部13は、図3(b)に示すように、第一支持部3と対応する位置に配置される。
【0028】
ここで、第一水平荷重Fyを第二支持部4と係止部5とにより支持し、第二水平荷重Fxを第一支持部3により支持し得るように構成してもよい。具体的には、図3(b)に示すように、図の左から二列目の第一台座部13には、後述する係止部5と同様の形状の係止部15が形成される。かかる係止部15は、収容部11の底部11a側に浮体構造物1の短手方向Yに沿って形成されるとともに第一支持部3と係止可能であって、係止部15と第一支持部3とにより第二水平荷重Fxを支持する。かかる係止部15を配置することにより、種々の水平荷重を支持することができる。なお、係止部15の配置は任意であり、図示した個数よりも増やしてもよいし、異なる場所に配置してもよいし、第二水平荷重Fxが第一水平荷重Fyと比較して無視できる程度に小さい値の場合には係止部15を省略してもよい。
【0029】
前記第二支持部4は、少なくともカーゴタンク2に生じる水平荷重(第一水平荷重Fy)を支持する支持部材である。航海中又は停泊中の浮体構造物1には、波の影響により種々の運動(ヒービング、スウェイイング、サージング、ピッチング、ヨーイング、ローリング)が生じるため、カーゴタンク2には、船体の長手方向X及び短手方向Yの荷重、すなわち、第一水平荷重Fy及び第二水平荷重Fxが生じる。第二支持部4は、この第一水平荷重Fyを支持する機能を有する。特に、LNG船のような細長い船体12の場合には、短手方向Yに大きな荷重がかかることが多く、第一水平荷重Fyは第二水平荷重Fxよりも大きな値となる。
【0030】
かかる第二支持部4は、図2(b)に示すように、下方が開放された凹部を有する枠体部41と、枠体部41から下方に突出するように凹部に固定される支持ブロック42と、を有する。支持ブロック42は、枠体部41の凹部に嵌合されており、枠体部41に固定される。支持ブロック42は、例えば、角型の木材により構成され、枠体部41に押し込まれることにより固定される。勿論、支持ブロック42は、固定金具により枠体部41に固定してもよい。また、枠体部41の外周には、適宜、補強材41aが配置される。なお、支持ブロック42には、従来の支持ブロックと同様のものを適宜使用することができ、例えば、ゴムや樹脂等の熱伝導率が低く弾性力を有する素材により構成されたものや、これらの素材を角材の表面に固定したものを使用してもよい。
【0031】
また、図2(b)に示すように、第二支持部4と対峙する収容部11は、底部11aに配置され第二支持部4を支持する第二台座部14を有する。第二台座部14は、中空、中実又は井桁状の金属部品により構成されており、上面が略平板状に形成されている。また、第二台座部14の外周には、適宜、補強材14aが配置される。かかる第二台座部14は、第一台座部13と高さを揃えるための部品である。そして、第二台座部14の上面には、第二支持部4の支持ブロック42が載置される。かかる構成によれば、第二支持部4によりカーゴタンク2の垂直荷重Fzを支持することもできる。第二支持部4に垂直荷重Fzを支持させることにより、第一支持部3の負担が軽減され、第一支持部3の個数を減らしたり、第一支持部3の大きさを小さくしたりすることができる。
【0032】
前記係止部5は、図2(b)に示すように、第二台座部14に形成されている。かかる係止部5は、例えば、断面L字状の鋼材や平板状の鋼材等により形成され、第二台座部14の両側部に長手方向Xに沿って溶接等により固定される。係止部5は、第二台座部14の上面に配置されていてもよいし、側面に配置されていてもよい。かかる係止部5を配置することにより、第二台座部14上に載置された支持ブロック42の短手方向Yの移動を拘束することができ、第一水平荷重Fyを支持することができる。
【0033】
また、図3(a)に示すように、第二支持部4は、浮体構造物1の長手方向Xの中心線Lに沿って配置されている。同様に、図3(b)に示すように、第二台座部14及び係止部5も浮体構造物1の長手方向Xの中心線Lに沿って配置されている。このように、長手方向Xに長く第二支持部4及び係止部5を形成することにより、第一水平荷重Fyの支持に必要な受圧面積を十分に確保することができる。ここでは、第二台座部14の長手方向Xの全長に渡って係止部5を配置しているが、支持したい第一水平荷重Fyの大きさによって、係止部5の長さを任意に調整することができ、長手方向Xに分割して配置するようにしてもよい。
【0034】
ここで、図4は、水平荷重の支持方法に関する説明図であり、(a)は従来技術におけるカーゴタンクの底部、(b)は従来技術におけるカーゴタンクの上部、を示している。
【0035】
図4(a)及び図4(b)に示すように、従来技術におけるカーゴタンク20の支持構造は、一般に、カーゴタンク20の底部20aに分散配置された複数のタンクサポート30と、カーゴタンク20の上部20bに船体の中心線Lに沿って配置された複数のローリングチョック40と、を有する。カーゴタンク20は、収容部の底部にタンクサポート30を介して載置されるとともに、収容部の天井部に配置された係止部にローリングチョック40が係止される。したがって、カーゴタンク20の垂直荷重はタンクサポート30により支持され、水平荷重はローリングチョック40及び一部のタンクサポート30により支持される。なお、カーゴタンク20の頂部には、LNGの搬出入口やメンテナンス時の出入口を構成するタンクドーム20cが形成されている。
【0036】
上述した従来技術では、支持部材(タンクサポート30及びローリングチョック40)が底部20aと上部20bとに分散しており、浮体構造物及びカーゴタンク20の両方の建造工事に多くの時間を要する等の問題があった。そこで、本実施形態では、上述したように、ローリングチョック40の機能をカーゴタンク2の底部2aに集約している。すなわち、本実施形態は、浮体構造物1に形成された収容部11に搭載されるカーゴタンク2の支持方法であって、カーゴタンク2の垂直荷重Fz及び水平荷重(第一水平荷重Fy及び第二水平荷重Fx)を支持する支持部を収容部11の底部11a側に集約して配置したものである。したがって、本実施形態によれば、カーゴタンク2の水平荷重(第一水平荷重Fy及び第二水平荷重Fx)を支持する支持部をカーゴタンク2の上部側に配置する必要がなく、支持部材の配置箇所を削減したり、支持部材の大きさを縮小したりすることができ、建造工事に要する時間を低減することができる。
【0037】
また、図3(a)に示したように、第二支持部4を長手方向Xに連続した一列の繰返し構造とすることにより、従来技術において第二支持部4の位置に島状に分散配置されていたタンクサポート30の外周に配置していた断熱材21の配置を簡素化することができ、建造工事に要する時間を低減することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態に係るカーゴタンクの支持構造について説明する。ここで、図5は、本発明の他の実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、(d)は第五実施形態、を示している。また、図6は、本発明の他の実施形態に係るカーゴタンクの支持構造を示す図であり、(a)は第六実施形態、(b)は第七実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図5(a)〜(d)に示した第二〜第五実施形態は、第一支持部3及び第二支持部4の配置を変更したものである。また、図5(a)〜(d)に示した図は、図3(a)と同様に、カーゴタンク2の底部2aを図示したものである。
【0040】
図5(a)に示した第二実施形態は、第二支持部4を複数に分割したものである。ここでは、第二支持部4を二分割した場合を図示したが、これに限定されるものではなく、三分割以上に分割するようにしてもよい。このように、第二支持部4を分割することにより、第二支持部4の両側を往来するための通路を形成することができ、メンテナンス等の際に便利である。
【0041】
図5(b)に示した第三実施形態は、第二支持部4を長手方向Xの中心線Lから外れた場所に配置したものである。第二支持部4は、一般的には、中心線L上に配置されることが好ましいが、第三実施形態のように第二支持部4を配置することにより、船種、積荷状態、航路等による水平荷重の発生条件や傾向に合わせて第二支持部4を任意の列に配置することができる。
【0042】
図5(c)に示した第四実施形態は、第二支持部4を長手方向Xの中心線L以外の場所にも配置したものである。ここでは、第二支持部4を三つに分割し、中央の第二支持部4をカーゴタンク2の底部2aの縁部に配置し、両端の第二支持部4を中心線L上に配置している。このように、第二支持部4を分散配置することにより、船種、積荷状態、航路等による水平荷重の発生条件や傾向、配置の制限がある船体の状態等に合わせて第二支持部4を任意に配置することができる。
【0043】
図5(d)に示した第五実施形態は、第一支持部3を略長方形に構成したものである。ここでは、第一支持部3の短手方向Yの長さが長手方向Xの長さよりも大きくなるように形成しているが、第一支持部3の長手方向Xの長さが短手方向Yの長さよりも大きくなるように形成してもよい。このように、従来の第一支持部3の複数個を一つに集約する、すなわち、正方形から長方形に変更することにより、垂直荷重Fzを支持可能な受圧面積を確保しつつ、第一支持部3の数量を低減することができ、建造工事に要する時間を低減することができる。
【0044】
図6(a)及び(b)に示した第六実施形態及び第七実施形態は、第二支持部4の構造を変更したものである。また、図6(a)及び(b)に示した図は、図2(b)と同様に、第二支持部4を図示したものである。
【0045】
図6(a)に示した第六実施形態は、第二台座部14を省略したものである。例えば、 第一台座部13が省略されている場合や第二支持部4で垂直荷重Fzを支持しない場合には、第二台座部14を省略することができる。この場合、図示したように、係止部5は、収容部11の底部11aに直に配置される。係止部5の外面には、補強材5aを配置するようにしてもよい。なお、ここでは、第二支持部4が垂直荷重Fzを支持しない場合(第一支持部3のみで垂直荷重Fzを支持する場合)、すなわち、支持ブロック42が収容部11の底部11aに接触しない状態を図示しているが、支持ブロック42を底部11aに接触させて垂直荷重Fzを支持できるようにしてもよい。
【0046】
図6(b)に示した第七実施形態は、カーゴタンク2が、底部の内側に長手方向Xに沿って並列配置される複数の補強部材22を有し、支持ブロック42を、隣り合う補強部材22,22の間隔Ygよりも狭い幅Ybに形成したものである。かかる構成によれば、カーゴタンク2の断熱材21により覆われていない部分を低減することができ、保冷効果を向上させることができる。また、パネル状の断熱材21を使用した場合には、パネル間の隙間に第二支持部4を容易に配置することができ、断熱材21の不連続の部分を低減することができるとともに、断熱材21の張付工事を容易に行うことができる。なお、かかる実施形態は、第一支持部3にも適用することができる。
【0047】
最後に、本発明に係る浮体構造物1の実施形態について説明する。ここで、図7は、本発明の実施形態に係る浮体構造物を示す全体概略構成図であり、(a)は船舶、(b)は洋上浮体設備、を示している。
【0048】
図7(a)及び(b)に示した浮体構造物1は、浮力により水上に支持される本体部1aと、本体部1aに形成されカーゴタンク2が搭載される収容部11と、を有する。具体的には、図7(a)に示した浮体構造物1は、自立角型方式のLNG船であり、本体部1aは船体12に相当する。なお、浮体構造物1は、自立角型のカーゴタンク2を有する船舶であれば、石油輸送船、LPG船、ケミカルタンカー等であってもよい。
【0049】
また、図7(b)に示した浮体構造物1は、自立角型方式のLNG洋上浮体設備である。かかるLNG洋上浮体設備は、例えば、FPSO(Floating Production, Storage and Offloading system)である。FPSOは、係留索1bにより洋上に係留された浮体構造物1であって、デッキ上にLNGを生産する生産設備1cを有し、生産したLNGを設備内のカーゴタンク2に貯蔵し、輸送船に積出を行う設備である。かかるFPSOは、石油やLPGに使用されるものであってもよい。また、これらの燃料の生産を行わない場合には、浮体構造物1は、生産設備1cを有しない洋上浮体設備であるFSO(Floating Storage and Offloading system)であってもよい。FSOは、燃料の貯蔵及び積出のみを行う。
【0050】
そして、上述した浮体構造物1は、本体部1aから独立したカーゴタンク2を有し、かかるカーゴタンク2は、上述した本発明に係る第一実施形態〜第七実施形態を適宜採用した支持構造により支持されている。したがって、カーゴタンク2の垂直荷重Fz及び水平荷重(第一水平荷重Fy及び第二水平荷重Fx)を支持する支持部を収容部11の底部11a側に集約したことにより、支持部材の数量及び配置箇所を削減することができ、浮体構造物1の建造工事に要する時間を低減することができ、浮体構造物1の建造コストを削減することができる。
【0051】
なお、上述したカーゴタンク2の支持構造、浮体構造物1及びカーゴタンク2の支持方法に関する説明において、「垂直荷重」とは、浮体構造物1が静止水面上に支持されている場合に鉛直方向に作用する荷重を意味し、「水平荷重」とは、浮体構造物1が静止水面上に支持されている場合に水平方向に作用する荷重を意味し、これらの荷重が作用する方向を示す座標は、浮体構造物1の揺動に対応して変化する相対座標であってもよいし、浮体構造物1の揺動に対応して変化しない絶対座標であってもよい。
【0052】
本発明は上述した実施形態に限定されず、フローティングチョックを有する浮体構造物1に適用してもよい、カーゴタンク2の上部に収容部11の天井部11bを有しない浮体構造物1に適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 浮体構造物
1a 本体部
2 カーゴタンク
2a 底部
3 第一支持部
4 第二支持部
5 係止部
11 収容部
11a 底部
11b 天井部
13 第一台座部
14 第二台座部
15 係止部
22 補強部材
31,41 枠体部
32,42 支持ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物に形成された収容部に搭載されるカーゴタンクの支持構造において、
前記カーゴタンクの底部に分散配置された複数の第一支持部と、
前記浮体構造物の長手方向に沿って連続的に形成されるとともに前記カーゴタンクの底部に配置された第二支持部と、
前記収容部の底部側に前記第二支持部の長手方向に沿って形成されるとともに前記第二支持部と係止可能な係止部と、を有し、
少なくとも前記第一支持部により前記カーゴタンクの垂直荷重を支持し、少なくとも前記第二支持部と前記係止部とにより前記カーゴタンクの水平荷重を支持し得るように構成した、ことを特徴とするカーゴタンクの支持構造。
【請求項2】
前記第二支持部は、前記長手方向の中心線に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項3】
前記収容部は、前記カーゴタンクを覆う天井部を有し、該天井部は、前記カーゴタンクの水平荷重を支持する支持部を有しない、ことを特徴とする請求項1に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項4】
前記第二支持部により前記カーゴタンクの垂直荷重を支持するように構成した、ことを特徴とする請求項1に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項5】
前記収容部の底部に配置され前記第一支持部を摺動可能に支持する第一台座部と、前記収容部の底部に配置され前記第二支持部を支持する第二台座部と、を有し、前記係止部は、前記第二台座部に形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項6】
前記水平荷重を、前記浮体構造物の短手方向に生じる第一水平荷重と、前記浮体構造物の長手方向に生じる第二水平荷重と、に分離し、前記第一水平荷重を前記第二支持部と前記係止部とにより支持し、前記第二水平荷重を前記第一支持部により支持し得るように構成した、ことを特徴とする請求項1に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項7】
前記収容部の底部側に前記浮体構造物の短手方向に沿って形成されるとともに前記第一支持部と係止可能な係止部を有し、該係止部と前記第一支持部とにより前記第二水平荷重を支持する、ことを特徴とする請求項6に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項8】
前記第一支持部及び前記第二支持部は、下方が開放された凹部を有する枠体部と、該枠体部から下方に突出するように前記凹部に固定される支持ブロックと、を有することを特徴とする請求項1に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項9】
前記カーゴタンクは、その底部の内側に前記長手方向に沿って並列配置される複数の補強部材を有し、前記支持ブロックは、隣り合う前記補強部材の間隔よりも狭い幅に形成されている、ことを特徴とする請求項8に記載のカーゴタンクの支持構造。
【請求項10】
浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されカーゴタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物であって、
前記カーゴタンクの支持構造は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のカーゴタンクの支持構造により構成されている、ことを特徴とする浮体構造物。
【請求項11】
浮体構造物に形成された収容部に搭載されるカーゴタンクの支持方法において、
前記カーゴタンクの垂直荷重及び水平荷重を支持する支持部を前記収容部の底部側に集約して配置した、ことを特徴とするカーゴタンクの支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−45980(P2012−45980A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187181(P2010−187181)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】