説明

カーテンエアバッグ

【課題】大幅な容量増大を伴うことなく、車外放出防止性能を向上させることが可能なカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【解決手段】カーテンエアバッグ100は、車室側面に沿って膨張可能な一連のチャンバを備え、一連のチャンバには、車室内側から外側を見る方向において、Bピラー122およびCピラー124それぞれの略全面とオーバラップする位置および形状で膨張する2つのピラー対応チャンバ142、148が含まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のロールオーバ(横転)時に車両乗員の車外放出を防止するカーテンエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のように、車両側面に沿って展開するカーテンエアバッグは、一連のチャンバを含む。これらチャンバが、車両に側面衝突が生じたときに乗員が受ける衝撃を緩和し、さらに車両がロールオーバしたときに、乗員が車外に放出されることを防止する。
【0003】
車外放出防止性能を向上させるためには、初期拘束位置(乗員が膨張したカーテンエアバッグに最初に接触する位置)を、より車室内側に片寄らせ、早期に拘束を開始することが望ましい。そこでカーテンエアバッグのチャンバの大きさを大きくすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開20002−301005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにカーテンエアバッグを構成するチャンバを大きくすれば、初期拘束位置が車室内側に片寄り、早期に乗員を拘束開始して、車外放出防止性能が向上する一定の効果が見込める。しかしカーテンエアバッグ全体の容量が増大するため、インフレータが大型化することは避けられない。またチャンバの大型化にも限界がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、大幅な容量増大を伴うことなく、車外放出防止性能を向上させることが可能なカーテンエアバッグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグの代表的な構成は、車室側面に沿って膨張可能な一連のチャンバを備え、一連のチャンバには、車室内側から外側を見る方向において、BピラーおよびCピラーそれぞれの略全面とオーバラップする位置および形状で膨張する2つのピラー対応チャンバが含まれていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、BピラーおよびCピラーという車室側面のなかで車室内側に最も突出している部位と、膨張する2つのピラー対応チャンバとが干渉する。ピラー対応チャンバの車室外側の面がBピラーおよびCピラーの車室内側の全面から反力を受け、カーテンエアバッグ全体の位置が車室内側方向に片寄る。これにより、乗員の初期拘束位置が車室内側に著しく片寄ることとなり、車外放出防止性能が向上する。
【0009】
上記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、BピラーおよびCピラーと延伸する方向が略一致しているとよい。かかる構成によれば、ピラーが傾斜していれば、2つのピラー対応チャンバの中心線もそれに合わせて傾斜し、斜め方向に延伸するチャンバとなる。Bピラー、Cピラーと各ピラー対応チャンバとの姿勢が一致することで、各ピラー対応チャンバは各ピラーからの反力をより効果的に受け、各ピラー表面を反力面にして、乗員を車内側へ押す効果をより高く発揮できる。つまり、チャンバを押し込むストロークが小さくても大きな反力を受け、乗員を車内側へより押す効果が高まる。
【0010】
上記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、BピラーおよびCピラーと中心線が略一致しているとよい。かかる構成によれば、各ピラー対応チャンバは、各ピラーの中心線から等分に膨張する。これにより、各ピラー対応チャンバは各ピラーからの反力をさらに効果的に受け、乗員の初期拘束位置が車室内側に移動する。
【0011】
上記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、BピラーおよびCピラーの前後のエッジと略一致する形状に膨張するとよい。かかる構成によれば、各ピラー対応チャンバの大きさは、みだりにエアバッグの容量を増大させることなくBピラーおよびCピラーの全面から反力を受ける、殆ど必要十分な形状となる。
【0012】
上記2つのピラー対応チャンバは、その他のチャンバよりも内容積を大きくしてよい。かかる構成によれば、ピラー対応チャンバとその他のチャンバとを比較したとき、容量が増大するのはピラー対応チャンバだけであるため、カーテンエアバッグの大幅な容量増大を回避できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大幅な容量増大を伴うことなく、車外放出防止性能を向上させることが可能なカーテンエアバッグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかるカーテンエアバッグの実施形態を例示する図である。
【図2】図1のカーテンエアバッグの形状および位置を示す図である。
【図3】図2の本実施形態と比較する比較例を例示する図である。
【図4】図2の本実施形態の各種変形例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(カーテンエアバッグ)
図1は、本発明にかかるカーテンエアバッグの実施形態を例示する図である。図1(a)はカーテンエアバッグ100の非展開時、図1(b)はカーテンエアバッグ100の展開時の透視図をそれぞれ例示する。以下、図1(a)および図1(b)に例示する車両102の右側面用のカーテンエアバッグ100を参照して説明を行うが、左側面用のカーテンエアバッグも同様の対称な構造を有する。
【0017】
図1(a)に例示するように、カーテンエアバッグ100はガス発生装置であるインフレータ104を備えている。そして、インフレータ104から供給される膨張展開用ガス(以下、単に「ガス」と記載する。)を受給し、膨張して乗員の保護を行う。
【0018】
カーテンエアバッグ100は、図1(a)のように巻回された状態で、または折り畳まれた状態(図示省略)で、車両室内の側面部上方のルーフサイドレール106に取り付けられて収納される。通常、ルーフサイドレール106はルーフトリムで覆われ、車両室内からは視認不能である。
【0019】
カーテンエアバッグ100は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。
【0020】
本実施形態ではカーテンエアバッグ100が実施される車両として、3列シート(車両前方から前部座席108、後部座席110および最後部座席112)を有する車両102を例示している。車両102の側面部には、車両前方からサイドウィンドウ114、116および118が設置されている。
【0021】
各サイドウィンドウの前後方向にはルーフ(天井)を支える複数のピラー(柱)が接続されている。これらは車両102の前方から、Aピラー120、Bピラー122、Cピラー124、Dピラー126と呼ばれる。
【0022】
カーテンエアバッグ100の上縁には、取付部材として複数のタブ(タブ136等)が設けられている。タブ136はエアバッグ100を車両102に取り付ける際に用いる帯状の部材である。
【0023】
車両102に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両102に備えられたセンサ(図示省略)による衝撃の感知に起因して、インフレータ104へ発火信号が発信される。すると、インフレータ104の火薬が燃焼し、発生したガスがカーテンエアバッグ100へ供給される。カーテンエアバッグ100は、インフレータ104からのガスを受給すると、図1(b)に例示するように、車室の側面部(サイドウィンドウ114等)に沿うように下方へ膨張展開し、乗員の保護を行う。
【0024】
(ピラー対応チャンバ)
図2は図1のカーテンエアバッグ100の形状および位置を示す図である。図2(a)(b)はそれぞれ、カーテンエアバッグ100を上から見た部分断面図と、車室内側から外側に向かって見た透視図である。図2(a)は図2(b)のA−A断面図になっている。
【0025】
図2(a)に例示するように、カーテンエアバッグ100は、車室側面に沿って膨張可能な一連のチャンバを備えている。本文ではこれら一連のチャンバを代表して、7つのチャンバ140、142、144、146、147、148、150を符号を用いて示している。これら一連のチャンバのうち、チャンバ142、148を特に「ピラー対応チャンバ」と呼ぶ。ピラー対応チャンバ142、148は、図2(b)のように車室内側から外側を見る方向において、Bピラー122およびCピラー124それぞれの略全面とオーバラップする位置および形状で膨張する。
【0026】
上記の構成によれば、図2(a)に例示するように、Bピラー122およびCピラー124という車室側面のなかで車室内側に最も突出している部位と、膨張する2つのピラー対応チャンバ142、148とが干渉する。ピラー対応チャンバ142、148の車室外側の面がBピラーおよびCピラーの車室内側の全面から反力を受け、カーテンエアバッグ100全体の位置が車室内側方向に片寄る。これにより、乗員の初期拘束位置(各チャンバの内側の面)が車室内側に移動し、早期に乗員の拘束を開始するため、車外放出防止性能が格段に向上する。
【0027】
従来、各ピラーに対しては乗員の衝突が想定されていなかったことから、従来のカーテンエアバッグでは、ピラー部分にチャンバが設けられていなかった。本発明の思想は、かかる技術常識を覆し、ピラー部分にピラー対応チャンバ142、148を設けたことである。
【0028】
仮に、たまたまピラーにチャンバが重なっている技術が存在したとしても、本発明のように、初期拘束位置を車室内側に片寄らせる意図をもって、Bピラー、Cピラーの両方をピンポイント的に狙い、これらピラーの略全面にチャンバをオーバラップさせているカーテンエアバッグは、従来、存在していない。
【0029】
図3は図2の本実施形態と比較する比較例を例示する図である。図3(a)は図3(b)のB−B断面図である。図3のカーテンエアバッグ10では、本実施形態と異なり、特にBピラー122、Cピラー124の全面とオーバラップする位置および形状のチャンバが設けられていない。エアバッグ10、100はそれぞれ、もともと、図2(a)、図3(a)に示す共通の架空の平面160、12を基準として車室内側および車室外側の両方に膨張するところ、本実施形態では、カーテンエアバッグ100全体の位置が車室内側方向に片寄る。そのため平面12より平面160のほうが車室内側に移動している。すなわち距離D1、D2を比較したとき、D1>D2となっている。
【0030】
したがって、既に述べたように、図2の本実施形態では、乗員の初期拘束位置が車室内側に著しく片寄ることとなり、車外放出防止性能が向上する。
【0031】
図3の比較例でも、チャンバ14、16、18、20は、Bピラー122やCピラー124と部分的にオーバラップしているが、これらチャンバはいずれも、1つのチャンバでピラーの略全面を覆う形状および位置にない。したがって平面12は平面160ほどには車室内側に移動せず、車外放出防止性能の向上が望めるものではない。
【0032】
また、図2(a)の実施形態では、2つのピラー対応チャンバ142、148は、その他のチャンバ140等よりも内容積が大きい。チャンバの容量を大きくすることは車外放出防止性能の向上の一助となるが、みだりに容量増大すると、出力の大きなインフレータが必要となってしまう。しかし本実施形態の構成によれば、容量が増大するのはピラー対応チャンバ142、148だけであり、初期拘束位置を車室内側に片寄らせるうえで最も効果的な部位のみを容量増大することとなる。したがって本実施形態では、カーテンエアバッグ全体を均等に容量増大する場合に比較して、容量増大を低減可能である。
【0033】
(ピラー対応チャンバの変形例)
図4は図2の本実施形態の各種変形例を例示する図である。図4ではBピラー122と、それに対応する各種ピラー対応チャンバの変形例を示している。図4(a)のように、ピラー対応チャンバ170が細くて、Bピラー122の全面から反力を受けられないと、初期拘束位置を車室内側に片寄らせることが困難である。したがって図4(a)の変形例よりは、図2のように、ピラー対応チャンバ142がBピラー122からはみ出す部分があったほうがよい。
【0034】
図4(b)に変形例として例示するピラー対応チャンバ172は、車室内側から外側を見る方向において、Bピラー123と延伸する方向が略一致している。このように傾斜したBピラー123(Bピラー122の変形例)の場合、それに合わせてピラー対応チャンバ172も傾斜し、斜め方向に延伸するチャンバとするとよい。Bピラー123とピラー対応チャンバ172との姿勢が一致することで、ピラー対応チャンバ172はBピラー123からの反力をより効果的に受け、各ピラー表面を反力面にして、乗員を車内側へ押す効果をより高く発揮できる。つまり、チャンバを押し込むストロークが小さくても大きな反力を受け、乗員を車内側へより押す効果が高まる。
【0035】
図4(c)に変形例として例示するピラー対応チャンバ174は、車室内側から外側を見る方向において、Bピラー123と中心線125が一致している。この場合、ピラー対応チャンバ174は、Bピラー123の中心線から等分な膨張に膨張する。これにより、ピラー対応チャンバ174はBピラー123からの反力をさらに効果的に受け、乗員の初期拘束位置が車室内側に移動する。
【0036】
図4(d)に変形例として例示するピラー対応チャンバ176は、車室内側から外側を見る方向において、Bピラー123の前後のエッジと略一致する形状に膨張する。この場合、ピラー対応チャンバ176の大きさは、Bピラー123の全面から反力を受ける、殆ど必要十分な形状となり、みだりにカーテンエアバッグの容量を増大させることがないため、最も理想的である。
【0037】
なお、図4(b)〜(d)に例示した変形例は、いずれも傾斜したBピラー123を用いているが、傾斜していないBピラー122に対応してこれらの変形例を適用してもよいことは言うまでもない。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0039】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両のロールオーバ(横転)時に車両乗員の車外放出を防止するカーテンエアバッグに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 …カーテンエアバッグ
102 …車両
114、116、118 …サイドウィンドウ
120 …Aピラー
122、123 …Bピラー
124 …Cピラー
126 …Dピラー
142、148、170、172、174 …ピラー対応チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側面に沿って膨張可能な一連のチャンバを備え、
前記一連のチャンバには、車室内側から外側を見る方向において、BピラーおよびCピラーそれぞれの略全面とオーバラップする位置および形状で膨張する2つのピラー対応チャンバが含まれていることを特徴とするカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、前記BピラーおよびCピラーと延伸する方向が略一致していることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、前記BピラーおよびCピラーと中心線が略一致していることを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記2つのピラー対応チャンバはそれぞれ、車室内側から外側を見る方向において、前記BピラーおよびCピラーの前後のエッジと略一致する形状に膨張することを特徴とする請求項3に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記ピラー対応チャンバは、その他のチャンバよりも内容積が大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30728(P2012−30728A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173200(P2010−173200)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】