説明

カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法

【課題】カーテン塗布方法に特有の現象であるティーポット効果によるカーテン膜歪が回避できるとともに、カーテン膜の外乱による落下位置変動を抑制し、同時に薄膜化現象及び厚膜化現象を抑制することができるカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法の提供。
【解決手段】少なくとも1種以上の塗布液を一対のエッジガイドで両側端を支えて、塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布装置であって、エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入する補助水導入口を備え、エッジガイド補助水流下面は、上部に略平面形状の平面部を有し、該エッジガイド補助水流下面は、下部に、幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層以上の塗布液をスリットから吐出し、該吐出された塗布液をカーテン状に案内するカーテンエッジガイドで自由落下させ、連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテン塗布方法は、写真フィルム等の写真感光材料等の製造によく用いられる塗布方法である。例えば、図9に示すように、塗布液3をスロットカーテン塗布ヘッド1のノズルスリットから吐出し、該吐出された塗布液をカーテン状に案内するカーテンエッジガイド2で自由落下させ、連続走行するウェブ5上に衝突させながら塗布膜を形成させる方法及び、図10に示すように、塗布液をスリットから吐出し、該吐出された塗布液を端部をスライド部エッジガイド9で支持しながら、スライドカーテン塗布ヘッド7のスライド面8上を移動させ、その塗布液をカーテン状に案内するカーテンエッジガイド2で自由落下させ、連続走行するウェブ5上に衝突させながら塗布膜を形成させる方法が開示されている(特許文献1参照)。なお、図9及び図10において、バキューム装置が形成されている。
【0003】
また、多層塗布においては、各々の機能の違う塗布液を各々のノズルスリットから吐出し、該吐出された塗布液をカーテン状に案内するカーテンエッジガイドで自由落下させ、連続走行するウェブ上に衝突させながら塗布膜を形成させる方法及び、各々の機能の違う塗布液をスリットから吐出し、該吐出された塗布液をスライド面上で積層し、その積層した塗布液をカーテン状に案内するカーテンエッジガイドで自由落下させ、連続走行するウェブ上に衝突させながら塗布膜を形成させる方法がある。
【0004】
カーテン塗布方法によってウェブ上へ塗布する場合、自由落下するカーテン膜の不安定性は、生産性、製品品質に大きな影響を及ぼす。
カーテン膜の安定性を阻害する現象として、代表的なものに、カーテン膜の裏回り現象(以下、「ティーポット現象」と称することもある)、及びエッジガイド壁近傍におけるカーテン膜の薄膜化現象がある(非特許文献1参照)
ティーポット現象は、カーテン膜が鉛直下方に落下せずリップ後方に回り込もうとする現象であり、スライド面を流下する塗布液のリップ先端における運動量の不均衡によるものである。
ティーポット現象は、塗布液粘度の低下あるいは塗布量の増加、即ち、塗布液のレイノルズ数が比較的大きいときに顕著である。カーテン膜の両端はエッジガイドで支持されているため、ティーポット現象によるカーテン膜の自由な湾曲を許容することができずカーテン膜に歪が発生する。
結果として、カーテン膜幅方向に塗布量が不均一となり、良好な塗膜を得ることができない。
【0005】
ティーポット現象への対応策として、カーテン膜の形状に合わせて湾曲させたエッジガイドが提案されている(特許文献2参照)。
この方式でティーポット現象によるカーテン膜歪は、解消されるものの、ティーポット現象に起因したカーテン膜の変形の程度は、塗布液物性、流量等の操業条件によって大きく異なるため、条件毎にエッジガイドの形状を変更する必要があり、実用上充分なものではないという問題がある。
この問題を解決するために、平板型エッジガイドが提案されており、操業条件によって大きく異なるカーテン膜の湾曲量に対応できるようにエッジガイド補助水の流下面を平板型とし、かつ変形量に足りる幅を持たせている(特許文献3参照)。
しかし、エッジガイド補助水の流下面が平板であるため、カーテン塗布装置の周辺のわずかな気流又はウェブ同伴空気により、エッジガイド上のカーテン落下位置が変動し、変動量が大きい場合には、このカーテン膜がエッジガイド水流下面の幅方向端部に接触し、塗布膜厚の不均一不具合を発生するという問題がある。
更に、ウェブ上のカーテン落下位置が変動することで、塗布ムラが発生することがあるという問題がある。
【0006】
エッジガイド補助水の流下面が塗布幅方向中央に向かって、凸形状とするエッジガイドが提案されている(特許文献4参照)。
この方式によってエッジガイドの調心性は確保され、カーテン膜の外乱による落下位置変動に起因する塗布ムラの発生は抑制される。
しかし、この方式はエッジガイド補助水の流下凸面が上部から下部に渡り同一の曲率であるため、ティーポット現象に起因したカーテン膜の湾曲量が大きい場合には、3次元的液流動となり湾曲部が流下面凸形状の頂点から大きく外れ、エッジガイドの凸形状頂点からの後退部に塗布液が流れてしまう。
後退部に流れることはカーテン膜の幅が広がることになり、塗布液表面張力の増大によりカーテン幅方向中央にカーテン両端部が引っ張られ、この結果、カーテン膜は凸形状頂点に移動し、頂点上を落下することになるが、3次元的液流動の屈曲が塗膜耳部の膜厚不均一を引き起こすというという問題がある。
【0007】
カーテン膜の薄膜化現象は、エッジガイド近傍に発生し、エッジガイドから数mm〜10mm程度の間で発生し、その膜厚は、中央部の約60%〜95%であることが分かっている。
薄膜部はウェブ上に塗布され、塗膜両端内側に薄膜部を形成し、不均一塗布膜厚となり、塗布工程ロスを生んでいる。
薄膜化現象は、カーテン膜落下における自由落下部とエッジガイド部との流体摩擦による境界層の発達により、エッジガイド近傍のカーテン膜形成塗布液をカーテン幅方向の中央方向へ移動させ、また、塗布液中の界面活性剤の動的性質によるエッジガイド近傍とカーテン幅方向の中央部の定常流部との表面張力差は、同様に、カーテン膜形成塗布液をカーテン幅方向の中央方向へ移動させる。
【0008】
一方、エッジガイド部での塗布液が形成する塗布液から気相に向かう凹状メニスカスはカーテン膜形成塗布液をエッジガイド方向へ移動させる(非特許文献2参照)。
前記境界層の発達と表面張力差に起因する幅方向の中央方向へ向かう傾向と、凹状メニスカスに起因するエッジガイドに向かうカーテン膜形成塗布液の傾向とをバランスさせることで膜厚不均一を抑制する(特許文献5参照)。
塗布液粘度の水準とカーテン膜中央部とカーテン膜端部との表面張力差、及び、エッジガイドの接液部寸法を規定し前記のとおりバランス化している。
この方式で膜厚均一化することができるが、製品設計上、塗膜品質を達成するために塗布液物性等処方の制約があるなかで表面張力差を限定することは現実的に難しく、ごく限定された塗布液条件でしか実現できないという問題があった。
また、薄膜部のカーテン膜幅方向内側には厚膜部が存在する。しかし、薄膜部抑制方法とは異なり厚膜部抑制方法はこれまで明らかになっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、カーテン塗布方法に特有の現象であるティーポット効果によるカーテン膜歪を回避できるとともに、カーテン膜の外乱による落下位置変動を抑制し、同時に薄膜化現象及び厚膜化現象を抑制することができるカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも1種以上の塗布液を一対のエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布装置であって、前記エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入する補助水導入口を備え、該エッジガイド補助水流下面は、上部に、略平面形状の平面部を有し、該エッジガイド補助水流下面は、下部に、幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、該円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有することを特徴とするカーテン塗布装置である。
<2> 円弧形状部の曲率半径が2mm〜5mmである前記<1>に記載のカーテン塗布装置である。
<3> エッジガイド補助水流下面の上部における平面部から前記エッジガイド補助水流下面の下部における円弧形状部への形状変化が連続的である前記<1>から<2>のいずれかに記載のカーテン塗布装置である。
<4> エッジガイド補助水流下面の上部の平面部におけるエッジガイド補助水流下面の両端と、円弧形状部の幅方向中心線と、を結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺近傍が、円弧形状である前記<1>から<3>のいずれかに記載のカーテン塗布装置である。
<5> 補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離が、10mm〜35mmである前記<4>に記載のカーテン塗布装置である。
<6> 補助水の導入速度が、0.40m/秒間〜1.20m/秒間である前記<1>から<5>のいずれかに記載のカーテン塗布装置である。
<7> 補助水導入口の補助水の流下方向に関する最大間隔が、0.2mm〜0.5mmである前記<1>から<6>のいずれかに記載のカーテン塗布装置である。
<8> 少なくとも1種以上の塗布液をエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布方法であって、補助水導入口により、前記エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入することを含み、該エッジガイド補助水流下面は、上部に、略平面形状の平面部を有し、該エッジガイド補助水流下面は、下部に、幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、該円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有することを特徴とするカーテン塗布方法である。
<9> 円弧形状部の曲率半径が2mm〜5mmである前記<8>に記載のカーテン塗布方法である。
<10> エッジガイド補助水流下面の上部における平面部から前記エッジガイド補助水流下面の下部における円弧形状部への形状変化が連続的である前記<8>から<9>のいずれかに記載のカーテン塗布方法である。
<11> 平面部におけるエッジガイド補助水流下面の両端と、円弧形状部の幅方向中心線と、を結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺近傍が、円弧形状である前記<8>から<10>のいずれかに記載のカーテン塗布方法である。
<12> 補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離が、10mm〜35mmである前記<11>に記載のカーテン塗布方法である。
<13> 補助水の導入速度が、0.40m/秒間〜1.20m/秒間である前記<8>から<12>のいずれかに記載のカーテン塗布方法である。
<14> 補助水導入口の補助水の流下方向に関する最大間隔が、0.2mm〜0.5mmである前記<8>から<13>のいずれかに記載のカーテン塗布方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、カーテン塗布方法に特有の現象であるティーポット効果によるカーテン膜歪が回避できるとともに、カーテン膜の外乱による落下位置変動を抑制し、同時に薄膜化現象及び厚膜化現象を抑制することができるカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法を提供することができる。
【0012】
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示す概要図である。
【図2】図2は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示す正面図である。
【図3】図3は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示すA断面図である。
【図4】図4は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示すB断面図である。
【図5】図5は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示すC断面図である。
【図6】図6は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示す図である(その1)。
【図7】図7は、本発明のカーテン塗布装置におけるエッジガイドの一例を示す図である(その2)。
【図8】図8は、本発明のエッジガイドの一例を示す断面図である。
【図9】図9は、スロットカーテン塗布装置の一例を示す図である。
【図10】図10は、スライドカーテン塗布装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法)
本発明のカーテン塗布装置は、少なくとも1種以上の塗布液をエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布装置であって、少なくとも、補助水導入口を有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明のカーテン塗布方法は、少なくとも1種以上の塗布液をエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布方法であって、少なくとも、補助水導入工程を含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含んでなる。
【0015】
<補助水導入口、補助水導入工程>
前記補助水導入口は、エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入するものであり、前記補助水導入工程は、エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入する工程である。
【0016】
−エッジガイド補助水流下面−
前記エッジガイド補助水流下面は、上部に略平面形状の平面部を有し、下部に幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、該円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有する。
【0017】
−−円弧形状部−−
前記円弧形状部の曲率半径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mm〜5mmが好ましく、3mm〜4mmがより好ましい。前記曲率半径が、2mm未満であると、前記エッジガイド補助水の前記円弧形状部表面上での均一流下が困難であることがあり、5mmを超えると、前記円弧状部へのカーテン膜の保持力が低下することがある。一方、前記曲率半径がより好ましい範囲内であると、カーテン膜を前記エッジガイドの円弧部に保持し、安定した塗布が可能である点で有利である。
前記エッジガイド補助水流下面の上部における平面部から前記エッジガイド補助水流下面の下部における円弧形状部への形状変化が連続的である。
【0018】
前記エッジガイド補助水流下面の上部における平面部におけるエッジガイド補助水流下面の両端と、円弧形状部の幅方向中心線とを結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺近傍が、円弧形状である(図2参照)。
ここで、前記補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm〜35mmが好ましく、10mm〜25mmがより好ましい。
前記距離が10mm未満であると、カーテン膜がスライドダイ下端から自由落下する際の湾曲、所謂ティーポット現象に対して十分対応可能な距離とは言えず、カーテン膜に乱れが生じることがあり、35mmを超えると、前記ティーポット現象には対応できるが、前記補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離が長いため、前記補助水を均一に流下させることが困難となり、カーテン膜が不安定となることがある。一方、前記距離がより好ましい範囲内であると、前記ティーポット効果を回避し、前記補助水を均一に流下させる点で有利である。
スロットダイ型カーテンの場合は、前記ティーポット効果がないため、前記下向きの二等辺三角形状の平面部は必要なく、特に平面部を有していなくても問題ない。
【0019】
前記補助水の導入速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.40m/秒間〜1.20m/秒間が好ましく、0.6m/秒間〜1.0m/秒間がより好ましい。
前記導入速度が、0.40m/秒間未満であると、カーテン膜の前記エッジガイド近傍の落下速度への増速が不十分であるため、カーテン膜に前記エッジガイド近傍と中央部での落下速度差による境界層が発生し、カーテン膜の膜厚不均一を生じることがあり、1.20m/秒間を超えると、前記エッジガイド補助水の水量が多くなるため、前記二等辺三角形の平面部においてカーテン膜に乱れが生じることや、前記エッジガイドの下部において乱流が生じることがある。一方、前記導入速度がより好ましい範囲内であると、カーテン膜の膜均一化やカーテン膜の安定化の点で有利である。
【0020】
前記補助水導入口の補助水の流下方向に関する最大間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.20mm〜0.50mmが好ましい。
【0021】
以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明する。
図1に、本発明のエッジガイドの実施形態を示す。
本発明では、エッジガイド本体2の上部に下方に向ってエッジガイド補助水10を、エッジガイド補助水流下面23の幅方向に概ね均一に導入するスリット(補助水導入口)11を備える。
カーテン膜6は矢印の方向に落下し、エッジガイド本体2のエッジガイド補助水流下面23を落下するエッジガイド補助水10によりその両端を支持される。
【0022】
図2に本発明のエッジガイド補助水流下部の正面図を示し、上部のA断面を図3に、中部のB断面を図4に、下部のC断面を図5に示す。
図3に示すとおり、該エッジガイド補助水流下面23の上部は平面形状(平面部)12で、図5に示す通り、下部の断面形状は、幅方向中央が塗布幅中央に向って凸形先端円弧形状部13となっており、該凸形先端円弧形状部13は、所定の角度θ1の範囲を有し、該円弧部の両側に平面形状部15を有する。
図4において、斜辺凸円弧形状部14が形成されている。
凸形先端円弧形状部13と平面形状部15の接続部は、より滑らかであることが、エッジガイド補助水10の幅方向流下速度の均一性を確保する上で好ましい。前記接続部は、図6に示すような接続部17、又は、図7に示すように凸形先端円弧形状部13の円弧の接線の延長としての平面形状部15の端部でもよい。
【0023】
前記θ1の範囲は30度〜90度が好ましく、これより大きいとエッジガイド補助水流下面23上部の平面部12から凸形先端円弧形状部13への移行部でエッジガイド補助水10が両側に広がり、凸形先端円弧形状部13にエッジガイド補助水10が流れなくなってしまうことがある。
該エッジガイド補助水流下面23の上部平面部12は平面形状であることによって、ティーポット現象によるカーテン膜6の自由な湾曲を許容することができる。
【0024】
更に、該エッジガイド補助水流下面23の下部凸形先端円弧形状部13により、エッジガイドのカーテン膜の調心性能の問題が解決できる。
このように、該エッジガイド補助水流下面23の上部12を平面形状とし、併せて下部を凸形先端円弧形状13とすることで、既存エッジガイドの課題を同時に解決することができる。
【0025】
エッジガイド補助水流下面23の幅(W)に対し凸形先端円弧形状部13の弦長が小さいため、円弧部の両サイドの平面を設けることで、流下面の全幅に亘って概ね均一に流下するエッジガイド補助水10の落下速度を、流下面の上下全面に亘って概ね同一とすることができる。
この部分は、ティーポット現象によるカーテン膜6の大きな湾曲、又は、塗布部周囲の気流によりカーテン膜6の落下位置が大きく変動し、凸形先端円弧形状部13を外れた場合に一時的に支える機能を有する。
【0026】
エッジガイド補助水10の落下速度に幅方向分布があり、特に、エッジガイド補助水流下面の中央流速が小さく、両端側の落下流速が大きい場合には、エッジガイド補助水10に支えられたカーテン膜6が、中央と両サイドの速度差により両サイド側に引っ張られて、カーテン膜6を狙いの位置に正確に落下させることができなくなってしまうという問題がある。
反対にエッジガイド補助水流下面23の中央流速が大きく、両端側の落下流速が小さい場合には、カーテンの落下位置は安定するものの、エッジガイド補助水10の局部的過多によりウェブ5に塗布された塗布液による膜端部の付着量がばらつき、端部の直線性がなくなり、端部の塗布ロス発生の原因となってしまう。
【0027】
更に、エッジガイド補助水10の落下速度に幅方向分布がある場合には、ティーポット現象によって変形して落下するカーテン膜6が、幅方向の速度が速い側に引っ張られて変形し、この変形によりカーテン膜6の厚さムラを引き起こし、この結果、ウェブ5に塗布された塗布液による膜Aの付着量ムラを引き起こす場合がある。
以上のように、該エッジガイド補助水流下面の上部平面部12に設けられるスリット11の幅方向の吐出均一性は、重要である。
【0028】
本発明において、スリット11は、概ね平面部に設けられているためエッジガイド補助水10を幅方向の均一性よく吐出させることが容易となる。
図10に示すとおり、カーテンエッジガイド本体2に設けられたエッジガイド補助水10の流路は、いわゆるスロットダイ、カーテンダイの内部構造と基本的に同構造であって、内部幅は、図1のスリット11の吐出幅と概ね同一である。
図示しない入り口よりエッジガイド補助水10が、図8に示される第1マニホールド21に供給され、第2マニホールド19とスロット18、20により幅方向に整流されて、スリット11で吐出される。
マニホールドは、通常1段乃至2段とし、2段であればより幅方向の吐出均一性能が良好となる。
【0029】
特開2003−225602号公報に記載の流出口の形状では、エッジガイド補助水の吐出幅に対して内部流路の幅が狭く、また、流出口ギャップが0.5mm〜1.5mmと大きく、かつ出口付近で扇状に広がっているため、幅方向均一な流出条件は限定されてしまう。
スリットギャップを0.2mm〜0.5mm程度とすることで幅方向のスリット11の吐出均一性が得られる。
図10に示される例では第1マニホールド21の容量を大きくする、又は第1スロット20のギャップを小さくすることで幅方向の流速均一性が得られる。
第2マニホールド19を設けることで更なる均一性が得られる。
【0030】
図2の本発明のエッジガイド補助水流下部の正面図及び図5のC断面図は、前記エッジガイド補助水流下面上部の平面部12から、下部凸形先端円弧形状部13への形状変化を示し、前記エッジガイド補助水の流下平面部12の両端と、流下面下部凸形先端円弧状部13の幅方向中心線を結ぶ下向きの二等辺三角形を形成し、この二等辺三角形の斜辺を塗布幅中央方向に凸の円弧形状としている。
【0031】
図4のB断面は、図3のA断面から図5のC断面への移行区間の一部であって、図4の平面部12の幅WPは下方になるに従い小さくなり、“WP=0”となって図5のC断面形状となる。
B断面部は、下向きの二等辺三角形の斜辺でティーポット現象により湾曲したカーテン膜6の落下位置が凸形先端円弧形状部13の位置を外れた場合、カーテン膜6は落下位置が矯正されて、凸形先端円弧形状部13に案内される。
この移行区間がなく、平面部12から直接凸形先端円弧形状部13に変化すると、境界部の大きな段差でカーテン膜6が乱れ、塗膜端部の膜厚不均一の原因となってしまう。
この問題を避ける手段として、平面部12の長さを大きくすることで、ティーポット現象により湾曲したエッジガイド上のカーテン膜6端部の流れが鉛直方向に向かうまでの区間を取ることもできる。
この場合には、平面区間が長いことで塗布部周囲の気流などの外乱によって平面区間でカーテン膜6の位置が変動してしまい、安定して凸形先端円弧形状部13にカーテン膜6を案内することができなくなってしまう。
以上のように、B断面移行区間の斜辺部を、塗布幅中央方向に凸の円弧形状とすることで、カーテン膜6の調心性が増し、安定して操業することができ、塗布ロスを低減することができる。
【0032】
図2のθ2はできるだけ小さいほうが好ましい。
θ2は小さいことで、前記二等辺三角形の斜辺にトラップされたカーテン膜の落下の方向がより鉛直方向に近づき、カーテン膜の変形は小さいが、θ2が大きくなると前記斜辺にトラップされたカーテン膜が変形し易く、この結果カーテン膜のムラ及び塗布ムラを生じやすい。
これらの現象より、図2の上部LL寸法も小さいことが好ましい。
図2の頂部LT寸法の区間はエッジガイド補助水の流下がないため、カーテン膜の落下速度が小さい。これはカーテン膜端部の薄膜部化を促進することになるのでLT寸法は小さいことが好ましい。
【0033】
図2のエッジガイド補助水流下面上部の前記スリット11から前記下向きの二等辺三角形の頂点までの距離Lはカーテン膜6の湾曲の度合いによるが、10mm〜35mmが好ましい。
液粘度250mPa・s〜1,500mPa・s、液表面張力30mN/m〜40mN/mのアクリルエマルジョン系の粘着剤を、フローレイト1.25cc/cm・sec〜2.5cc/cm・sec、かつエッジガイド補助水10は、エッジガイド補助水流下面23の幅6.5mm当り100cc/min〜300cc/minの条件で、幅20mmつまりエッジガイド補助水流下面23の幅方向中心基準より10mmであれば、距離Lは概ね20mm程度である。
距離Lが35mmの場合は、ティーポット現象によるカーテン膜6の湾曲へ充分対応できるが、Lが大きすぎるため、塗布部周辺の風によるカーテン膜6の落下位置変動の影響を受けやすい。
【0034】
図5に示す凸円弧形状の曲率半径Rは2mm〜5mmが好ましい。
液粘度250mPa・s、液表面張力39mN/mのサーマルペーパ用感熱層液{固形部濃度S.C.29.9%、粘度250mPa・s、(B型粘度計)液表面張力39mN/m、(白金プレート法静的張力)}を、フローレイト2.5cc/cm・sec、かつエッジガイド補助水10は、エッジガイド補助水流下面幅6.5mm当り100cc/minの条件で、鉛直方向を基準として、塗布幅方向に対し直角面の方向にカーテンエッジガイド本体2を傾斜させてカーテン膜6の保持限界を調べた結果、曲率半径が2mmより小さい場合には、調心性の問題ではなく、エッジガイド補助水10の幅方向均一流下が困難であり、曲率半径は3mmが最も保持力が大きく、曲率半径5mmを超えると保持力は急激に低下した。
【0035】
前記下向きの二等辺三角形斜辺の凸円弧形状の曲率半径Rは、図5に示す凸円弧形状の曲率半径Rと同径程度とすることにより、加工製作上、容易となり、エッジガイド製作費を抑制することができる。
エッジガイド補助水流下面23の幅は、カーテン膜6の湾曲の度合いによるが、7mm〜20mmが好ましい。
液粘度250mPa・s〜1,500mPa・s、液表面張力30mN/m〜40mN/mのアクリルエマルジョン系の粘着剤を、フローレイト1.25cc/cm・sec〜2.5cc/cm・sec、かつエッジガイド補助水10は、エッジガイド補助水流下面23の幅6.5mm当り100〜300cc/minの条件で、幅20mm、つまりエッジガイド補助水流下面23の幅方向中心基準より10mmであれば、エッジガイド補助水流下面23の幅方向端部にカーテン膜6の接触はないが、幅7mm以下ではエッジガイド補助水流下面23の幅方向端部にカーテン膜6が接触してしまうことがあった。
【0036】
図8に示すエッジガイドの内部構造とすることで、スリット11での吐出速度を自在に設定することができ、エッジガイド本体2に支持されたカーテン膜6の両端の落下速度自在に設定できる。
【0037】
従来の方法は、エッジガイド補助水流下面の上部から下部に亘って概ね均一に補助水を吐出するタイプのため、エッジガイド近傍のカーテン膜の落下速度は自由落下するカーテン膜速度より最大30%程度小さいことが分かってきた。
従来の方法では、ポーラスガラスの細孔から約0.5cm/sec〜2.0cm/sec(吐出量50cc/min〜200cc/min、エッジガイド高さ150mm)と、カーテン幅方向中央部の落下速度1.6m/sec(落下高さ150mm)程度とを比較し、低速で補助水が吐出され、上部から吐出され、重力落下により加速され、落下速度が大きくなった補助水との混合となり、これが薄膜部形成の原因の一つとなっていると考えられる。
【0038】
本発明のエッジガイドとすることにより、前記エッジガイド補助水の流下吐出速度を40cm/sec〜120cm/secと自在に設定することができ、自由落下するカーテン幅方向中央部のカーテン膜厚に対し、エッジガイド近傍の薄膜部の膜厚を大きくすることができる。また、吐出速度を変えることにより薄膜部の厚さを制御できる。
これは、前記の境界層の発達とは無関係にエッジガイド近傍のカーテン膜落下速度を制御できるとともに薄膜化又は厚膜化を抑制することができる。
【0039】
エッジガイド補助水の流下吐出速度を40cm/秒間〜120cm/秒間としたことで、エッジガイド近傍のカーテン膜の落下速度が境界層とは無関係となり、薄膜化の原因となるカーテン膜表面の表面張力勾配による液流れが抑制された結果、厚膜化も同時に抑制できたと考える。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
<実験基本条件>
・塗布装置:図2に示す装置
・カーテン落下幅:250mm
・塗布液:アクリルエマルジョン系粘着剤の液粘度750mPa・s(B型粘度計)、液表面張力33mN/m(白金プレート法静的張力)、フローレイト1.25cc/cm・sec
・エッジガイド補助水:導入速度0.40m/秒間(エッジガイド補助水の9流下面の幅6.5mm当り100cc/min)、補助水導入口の隙間0.35mm
なお、エッジガイドの位置は、基材進行方向前後に移動ができ、カーテン落下位置をエッジガイド補助水流下面の幅方向中央になるよう調節した。
【0042】
前記実験基本条件でカーテンを形成し、下記項目(1)及び(2)について比較した。
(1)ティーポット効果によるエッジガイド部のカーテン膜歪発生の有無
(2)外乱風によるエッジガイド部のカーテン落下位置変動の有無
なお、前記外乱風として、小型ブロワーにより、風速3m/秒間(アネモマスター測定)の風をカーテン膜に吹き付けた。
【0043】
・図2に示すエッジガイドを用いた。
L=33mm
・図5に示すR=5mm
θ1=60度
θ2=90度
エッジガイド補助水流下面の幅W=14mm
エッジガイドの材質:SUS402J2
エッジガイド補助水流下面及びエッジガイド補助水流下面両端の側板を、サンドペーパー#1500でエッジガイド補助水流下方向に研磨した。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、特開2001−46939号公報に記載のスライド部をガラスに替えてSUS板とした平板型エッジガイドを用いた以外は、実施例1と同様にした。
・エッジガイド補助水流下面の幅W=14mm
・エッジガイドの材質:SUS402J2系
・エッジガイド補助水流下面及びエッジガイド補助水流下面両端の側板を、サンドペーパー#1500でエッジガイド補助水流下方向に研磨した。
【0045】
(比較例2)
実施例1において、国際公開WO2008/000507号公報に記載のエッジガイド(スイス国ポリタイプ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
・エッジガイド補助水流下面の凸形状先端円弧形状の曲率半径:5.5mm
・エッジガイド補助水流下面の幅:6.5mm
【0046】
【表1】

【0047】
図5に示すRの大きさの効果を明らかにするために、Rの大きさ及びエッジガイドを変えて調心性能を比較した。
エッジガイドの鉛直方向を基準として、塗布幅方向に対し直角面の方向にカーテンエッジガイド本体を傾斜させてカーテン膜の保持限界を調べた。
評価基準 : 傾斜角 10度以上 :○
傾斜角 6度以上10度未満 :△
傾斜角 6度未満 :×
・塗布液:サーマルペーパ用感熱層液{固形部濃度S.C.9.9%、粘度250mPa・s(B型粘度計)液表面張力39mN/m(白金プレート法静的張力*)*静的表面張力:FACE自動表面張力計CBVP−A3型(協和界面科学株式会社製)で測定}
・3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン・・・4質量部
・4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン・・・12質量部
・シリカ・・・6質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・16質量部
・水・・・41質量部
【0048】
(実施例2)
実施例1において、R=5mmからR=3mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、R=5mmからR=2mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、R=5mmからR=5.5mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0051】
(実施例5)
実施例1において、R=5mmからR=1.5mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0052】
【表2】

【0053】
エッジガイド補助水の流下面の両端と流下面下部幅形状部の幅方向中心線を結ぶ、下向きの二等辺三角形の頂点の位置の効果を明らかにした。
エッジガイド部のカーテン膜の落下状態を観察し、特に、前記二等辺三角形の斜辺の影響を確認した。
評価基準 : 凸形先端円弧形状部の頂部を垂直に落下:○
前記二等辺三角形の斜辺に約10mmの間トラップされてもよい
凸形先端円弧形状部のいずれかを垂直に落下:△
凸形先端円弧形状部を外れて落下 :×
【0054】
(実施例6)
実施例1において、エッジガイドの位置を基材進行方向上流側に2mm移動した以外は、実施例1と同様にした。
【0055】
(実施例7)
実施例1において、L=33mmからL=10mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0056】
(実施例8)
実施例1において、L=33mmからL=5mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0057】
(実施例9)
実施例1において、L=33mmからL=40mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0058】
(実施例10)
実施例1において、L=33mmからL=145mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
L=145mmの場合には、エッジガイド補助水の流下面の両端と、流下面下部凸形状部の幅方向中心線を結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺は、概ねエッジガイド上端より10mmから下端に渡る。
【0059】
【表3】

【0060】
エッジガイド補助水の吐出速度の効果を明らかにした。
吐出速度は、吐出流量とエッジガイド補助水吐出スリット断面積より算出した。
エッジガイドからの距離を5mm、15mm、及び125mmの位置で測定した。
【0061】
(実施例11)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.80m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0062】
(実施例12)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.20m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0063】
(実施例13)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.20m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0064】
(実施例14)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.60m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0065】
(実施例15)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.35m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0066】
(実施例16)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.25m/秒間に変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0067】
<<カーテン落下速度>>
カーテンダイリップ下端から140mmの位置で測定した。
・計測器:アクト電子,型式MODEL 1110A
エッジガイドからの距離125mmの位置の落下速度を100%とし、相対速度を比較した。
評価基準:相対速度95%以上 :○
95%未満から90%:△
90%未満: :×
【0068】
【表4】

表4の結果から、125mmの位置では、実施例、比較例に落下速度の差がないことが分かった。これは、カーテン膜の落下が重力落下に依存することによるものと考えられる。
【0069】
<<カーテン膜厚>>
・幅4mmの樋でカーテンの液量を測定し、落下速度より膜厚換算した。
・エッジガイドからの距離125mmの位置の落下速度を100%とし、相対膜厚を比較した。
・カーテンダイリップ下端から140mmの位置で測定した。
・評価基準 : エッジガイドから5mm位置 −20%未満:○
−20%以上:×
エッジガイドから15mm位置 +10%未満:○
+10%以上:×
更には、これに、カーテン安定性及びカーテン膜のムラ有無を加味して評価した。
・評価基準設定理由:塗布膜厚は、これまでの知見より、カーテン膜上端より140mm位置の測定でのカーテン膜厚分布がほぼそのまま基材に転写され、膜厚均一性又は膜厚不均一性として現れる。通常塗布膜厚均一性が±10%を超える場合塗布欠陥となるので、ここでは±10%で評価した。
・エッジガイドから距離設定理由:エッジガイドから5mm位置は、膜厚が薄くなる薄膜化部のほぼ中央位置であり、エッジガイドから15mm位置は、膜厚が厚くなる厚膜部で最も値が大きくなる位置であるため設定した。
【0070】
【表5】

表5の結果から、実施例13及び実施例15は、カーテン膜が切れ上りやすく不安定な場合があった。
また、実施例14及び実施例16は、カーテン膜にムラが発生する場合があり、塗膜にもムラが発生する場合があった。
【0071】
エッジガイド補助水の導入口の隙間を変えて、エッジガイド補助水導入口での均一吐出性及び幅方向均一流下状況を評価した。
エッジガイド補助水の導入速度は、下記2水準とした。
・エッジガイド補助水導入速度 0.8m/秒間、1.2m/秒間
カーテン膜の形成をせずに、エッジガイド補助水導入口での導入均一性及び補助水の流下状況のみ目視観察した。
評価基準 :全幅均一導入及び流下面全面で均一 :○
導入口又は流下面いずれかで不均一 :△
導入口及び流下面で不均一 :×
【0072】
(実施例17)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.80m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.2mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0073】
(実施例18)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.80m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.5mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0074】
(実施例19)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.80m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.1mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0075】
(実施例20)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から0.80m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.6mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0076】
(実施例21)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.2m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.2mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0077】
(実施例22)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.2m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.5mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0078】
(実施例23)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.2m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.1mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0079】
(実施例24)
実施例1において、補助水の導入速度を0.40m/秒間から1.2m/秒間に変え、エッジガイド補助水の導入口の隙間を0.35mmから0.6mmに変えた以外は、実施例1と同様にした。
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
表6及び表7の結果から、補助水の吐出速度の効果を明らかにしたが、導入口の隙間の大小によっては補助水が流下面の幅方向均一に流下しないことが分かった。
また、補助水の導入口の隙間の大きさが流下面幅方向の流下均一性への影響を明らかにした。
導入口の隙間が0.2mm〜0.5mmでは、導入速度0.8m/秒間及び1.2m/秒間において概ねエッジガイド補助水が流下面の全幅均一に流下したが、隙間0.1mmの実施例19及び実施例23では、エッジガイド補助水が導入口から均一に導入されず、一部の流れが斜め下方に向かって流下し、カーテン膜の流れがその影響を受け歪んだ場合があった。
また、隙間0.6mmの実施例20及び実施例24では、流下面下部でカーテン膜にエッジガイド補助水が流下面全幅に流下しない場合があった。
以上のように、補助水の導入口の隙間を0.2〜0.5mmとすれば、補助水は流下面を幅方向均一に流下することが明らかになった。
【符号の説明】
【0083】
1 スロットカーテン塗布ヘッド
2 カーテンエッジガイド本体
3 塗布液
4 バキューム装置
5 ウェブ
6 カーテン膜
7 スライドカーテン塗布ヘッド
8 スライド面
9 スライド部エッジガイド
10 エッジガイド補助水
11 スリット
12 平面部
13 凸形先端円弧形状部
14 斜辺凸円弧形状部
15 (両端)平面形状部
16 凸円弧形状部と平面部接続R
18 第2スロット
19 第2マニホールド
20 第1スロット
21 第1マニホールド
22 エッジガイド補助水流下面両端の側板
23 エッジガイド補助水流下面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特公昭49−35447号公報
【特許文献2】特開平9−253552号公報
【特許文献3】特開2001−46939号公報
【特許文献4】国際公開第2008/000507号パンフレット
【特許文献5】特許第2630512号公報
【非特許文献】
【0085】
【非特許文献1】S.F.Kistler、and Schweize“Liquid Film Coating”
【非特許文献2】J. Van Havenbergh、H.Bussmann、and P.Joos:Colloid Interface Sci.、101、462、(1984)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上の塗布液を一対のエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布装置であって、
前記エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入する補助水導入口を備え、
該エッジガイド補助水流下面は、上部に、略平面形状の平面部を有し、
該エッジガイド補助水流下面は、下部に、幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、該円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有することを特徴とするカーテン塗布装置。
【請求項2】
円弧形状部の曲率半径が2mm〜5mmである請求項1に記載のカーテン塗布装置。
【請求項3】
エッジガイド補助水流下面の上部における平面部から前記エッジガイド補助水流下面の下部における円弧形状部への形状変化が連続的である請求項1から2のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
【請求項4】
エッジガイド補助水流下面の上部の平面部におけるエッジガイド補助水流下面の両端と、円弧形状部の幅方向中心線と、を結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺近傍が、円弧形状である請求項1から3のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
【請求項5】
補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離が、10mm〜35mmである請求項4に記載のカーテン塗布装置。
【請求項6】
補助水の導入速度が、0.40m/秒間〜1.20m/秒間である請求項1から5のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
【請求項7】
補助水導入口の補助水の流下方向に関する最大間隔が、0.2mm〜0.5mmである請求項1から6のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
【請求項8】
少なくとも1種以上の塗布液をエッジガイドで両側端を支えて、該塗布液の自由落下塗布液膜を形成して連続走行する支持体上に塗布するカーテン塗布方法であって、
補助水導入口により、前記エッジガイドにおけるエッジガイド補助水流下面の上部より下部に向かって、補助水を前記エッジガイド補助水流下面の幅方向に略均一に導入することを含み、
該エッジガイド補助水流下面は、上部に、略平面形状の平面部を有し、
該エッジガイド補助水流下面は、下部に、幅方向中央に配設された円弧形状に突出する円弧形状部と、該円弧形状部の幅方向両側に配設された平面部とを有することを特徴とするカーテン塗布方法。
【請求項9】
円弧形状部の曲率半径が2mm〜5mmである請求項8に記載のカーテン塗布方法。
【請求項10】
エッジガイド補助水流下面の上部における平面部から前記エッジガイド補助水流下面の下部における円弧形状部への形状変化が連続的である請求項8から9のいずれかに記載のカーテン塗布方法。
【請求項11】
平面部におけるエッジガイド補助水流下面の両端と、円弧形状部の幅方向中心線と、を結ぶ下向きの二等辺三角形の斜辺近傍が、円弧形状である請求項8から10のいずれかに記載のカーテン塗布方法。
【請求項12】
補助水導入口から二等辺三角形の頂点までの距離が、10mm〜35mmである請求項11に記載のカーテン塗布方法。
【請求項13】
補助水の導入速度が、0.40m/秒間〜1.20m/秒間である請求項8から12のいずれかに記載のカーテン塗布方法。
【請求項14】
補助水導入口の補助水の流下方向に関する最大間隔が、0.2mm〜0.5mmである請求項8から13のいずれかに記載のカーテン塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−78966(P2011−78966A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198001(P2010−198001)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】