説明

カートリッジ及び自動分析方法

【課題】ポイント・オブ・ケア・テスティングに適した自動検査装置は、一般に、一般生化学項目以外の検査に対応していない。
【解決手段】試薬キュベットと、測光キュベットと、反応ウェルを一体的に有するカートリッジにおいて、反応ウェルの内壁面に標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い表面層を形成する。因みに、表面層は、抗体又は抗原の固相化層として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料内の標的タンパク質との親和性の高い表面層を内壁面に有するカートリッジに関する。また、本発明は、当該カートリッジを用いて試料を自動的に分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、診療の現場では、迅速、簡便に、しかも高い精度で検査結果を取得可能な臨床検査装置の採用が進んでいる。この種の検査は、ポイント・オブ・ケア・テスティング(POCT)とも呼ばれ、検査の必要性が生じた「その時」に「その場所」で迅速に検体を検査することを目的とする。現在のこの種の検査に適した小型の自動分析装置として特許文献1に開示された装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−220494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているような装置やカートリッジは、一般生化学項目(例えば糖尿病、動脈硬化、腎・肝疾患等)の検査に特化されており、アレルギー検査、腎・肝疾患検査、糖尿病検査等の免疫反応を検査項目に備えていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、ポイント・オブ・ケア・テスティングに適した自動分析装置においても、これらの検査を可能とする専用のカートリッジと当該検査に最適化された自動分析方法を提案する。
【0006】
具体的には、試薬キュベットと、測光キュベットと、反応ウェルを一体的に有するカートリッジにおいて、反応ウェルの内壁面に標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い表面層を有するものを提案する。
【0007】
また、ローターに装着されたカートリッジの種類を情報提示部から読み取り、装着されたカートリッジが反応ウェルの内壁面に標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い表面層を有する場合、当該カートリッジを使用する免疫反応の検査モードを自動的に起動する方法を提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポイント・オブ・ケア・テスティングの使用範囲を一段と拡大させることができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1のカートリッジの例を示す斜視図。
【図2】第1のカートリッジの側断面図。
【図3】第1のカートリッジの製造方法の一例を概念図。
【図4】第1のカートリッジの側面図。
【図5】第2のカートリッジの例を示す斜視図。
【図6】第2のカートリッジの側断面図。
【図7】自動分析装置の全体構成例を示す図。
【図8】自動分析装置のローター付近の平面構成を示す図。
【図9】自動分析装置の制御系を示すブロック図。
【図10】検査モード自動開始手順を示すフローチャート。
【図11】検査モード自動開始条件を説明する図。
【図12】検査モード自動開始条件を説明する図。
【図13】吸引時のプローブ制御条件を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0012】
<検査方法(原理)>
本形態例においては、一般生化学項目だけでなく、免疫検査項目についても分析又は検査可能なポイント・オブ・ケア・テスティング用の自動分析装置について説明する。なお、当該自動分析装置は、酵素免疫吸着分析(ELISA:Enzyme Linked ImmunoSorbent Assay)法を使用し、試料中に含まれる抗体又は抗原の濃度の検出・定量を行う。
【0013】
ELISA法は、抗原抗体反応と酵素基質反応の2つの原理反応を組み合わせた検査手法であり、試料中の標的抗原と反応した酵素抗体の発色濃度や蛍光強度の検出を通じて標的抗原を定量する方法である。より具体的には、ある抗原タンパク質に結合する抗体若しくはその断片、又は抗原タンパク質若しくはその断片を固相担体に固定し、当該抗体等及び抗原タンパク質等との免疫学的反応を酵素的に検出する方法である。
【0014】
ELISA法には、サンドイッチ法、直接法、競合法等の方法が知られているが、本発明にはいずれの方法も使用することができる。
【0015】
サンドイッチ法は、固相担体に固定した第1抗体(固相化抗体)を抗原と結合させた後、第1抗体とは異なるエピトープを認識する第2抗体を加えて抗原と結合させ、続いて、第2抗体が標識された標識抗体の場合にはその標識を、第2抗体が無標識の一次抗体の場合には標識化された第3抗体(二次抗体)を用いて、目的とする抗原を高感度に検出する方法である。
【0016】
競合法は、固相担体に固定した抗原(固相化抗原)と第1抗体とを結合させた後、第1抗体が標識された標識抗体の場合にはその抗体を用い、第1抗体が無標識の一次抗体の場合には標識化され、抗原に結合された第2抗体(二次抗体)を用いて、目的とする抗原を高感度に検出する方法である。
【0017】
ELISA法の測定方法の詳細については、公知の文献(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」、臨床病理刊行会、1983年、石川榮治ら編「酵素免疫測定法」、第3版、医学書院、1987年、北川常廣ら編「タンパク質核酸酵素別冊No.31酵素免疫測定法」、共立出版、1987年、入江實編「ラジオイムノアッセイ」、講談社サイエンティフィク、1974年)等に記述されている。
【0018】
<カートリッジ>
以下、試料内に含まれる微量なアレルゲン(抗原)を自動分析装置で定量化するために新たに提案するカートリッジの構造例を説明する。後述するように、検査の自動化のため2種類のカートリッジを用意する。以下、これら2種類のカートリッジを第1のカートリッジ及び第2のカートリッジと呼ぶ。
【0019】
図1〜図4を用いて第1のカートリッジ101の構造例を説明する。図1は、第1のカートリッジ101を斜め上方から見た斜視図である。図2は、第1のカートリッジ101を図1の破線位置で破断して示す側断面図である。図3は、第1のカートリッジ101の製造方法の一例を概念的に示す図である。図4は、第1のカートリッジ101を図1の(A)の方向から見た側面図である。
【0020】
第1のカートリッジ101は例えばポリプロピレン製であり、一体成型により製造される。図1に示すカートリッジ101は、測光キュベット102、試薬キュベット103、反応ウェル104の3つの容器で構成される。これら3つの容器は一列に配置され、それらの中央に測光キュベット102が配置される。図1の場合、カートリッジ101は3つの容器で構成されているが、試薬キュベット103を2つの容器に分割した構成を採用しても良い。
【0021】
この形態例の場合、試薬キュベット103にのみアレルゲン(抗原)の検査に必要な二次抗体試薬が200μl注入されており、その他の容器には何も注入されていない。なお、反応ウェル104の内壁面には、標的とするアレルゲン(抗原)を捕獲する固相化抗体(一次抗体)層107が形成されている。この形態例の場合、反応ウェル104の底面は、下に凸の円錐形状に加工されている。すなわち、外周側から中心方向に向かって径が小さくなる窪み形状を有している。
【0022】
図2に、固相化抗体層107の形成イメージを示す。図2の場合、固相化抗体層107は内壁面のうち底面表面を覆うように形成されている。しかし、固相化抗体層107は底面(内壁面の一部)だけでなく、内壁面の全体を覆っても良い。固相化抗体層107の生成に使用する表面処理方法には、UV処理法、プラズマ処理法、ポリマー処理法等を用いることができる。なお、図3に示すように、固相化抗体層107を内表面に形成した単一の反応ウェル108を、カートリッジ101の反応ウェル104に嵌め込むことにより形成しても良い。
【0023】
因みに、出荷後のカートリッジ101の上面は、フィルムにより全体が密閉される。フィルムの表面には、その試薬カートリッジで検査できる検査項目等が印字される。また、試薬キュベット103の背面側にはパネル105が配置され、パネル105の表面には図4に示すようなドットコード(2次元コード)を印刷したシール106が貼りつけられている。情報提示部としてのシール106には、(1)製造年月日及び有効期限、(2)シリアル番号、(3)検査用途、(4)検体種別、(5)試料の必要量と分注タイミング、(6)試薬の必要量と分注タイミング、(7)測光方式、(8)測光タイミング、(9)測光の主波長/副波長、(10)吸光度から濃度への変換式等がコード化されて記録されている。
【0024】
図5〜図6を用いて第2のカートリッジ111の構造例を説明する。図5は、第2のカートリッジ111を斜め上方から見た斜視図である。図6は、第2のカートリッジ111を図5の破線位置で破断して示す側断面図である。
【0025】
第2のカートリッジ111もポリプロピレン製であり、一体成型により製造される。第2のカートリッジ111の外径寸法と第1のカートリッジ101の外形寸法は同じである。図5に示すカートリッジ111は、試薬キュベット112と試薬キュベット113の2つの容器で構成される。同じく、試薬キュベット113の背面側にはパネル105が配置され、その表面にはドットコード(2次元コード)を印刷したシール106が貼りつけられている。
【0026】
この形態例の場合、試薬キュベット112には洗浄用の緩衝液が850μl注入されている。一方、試薬キュベット113には発色試薬が250μl注入されている。やはり、出荷後のカートリッジ111の上面は、フィルムにより全体が密閉される。
【0027】
<自動分析装置>
図7に、本形態例で使用する自動分析装置の全体構成例を示し、図8に自動分析装置のローター付近の平面図を示す。図9に、自動分析装置の制御系のブロック図を示す。
【0028】
自動分析装置は商用電源に接続され、電源スイッチ(図示せず)をオンにすることで自動分析装置に電源が投入される。メイン制御部200は自動分析装置全体の動作を制御する。メイン制御部は、主に、CPU、ROM、RAM、リアルタイムクロックで構成される。ROMは、自動分析装置の制御プログラム等の格納領域として使用され、RAMは一次記憶領域として使用される。
【0029】
自動分析装置は、溶液の吸引と吐出に使用するプローブ201を1つ有する。プローブ201は、アーム202の先端から垂直方向に取り付けられている。プローブ201による吸引・吐出・位置決め・温度管理等は、プローブ駆動部及びアーム駆動部により制御される。プローブ駆動部及びアーム駆動部は、吸引・吐出制御部、アーム回転制御部、アーム垂直制御部、プローブヒータ制御部により構成される。
【0030】
吸引・吐出制御部は、プローブ201の先端開口に負圧又は正圧を発生させる吸引・加圧ポンプ203bと、当該ポンプを駆動制御する吸引・吐出制御回路203aで構成される。アーム回転制御部は、アーム202を回転駆動するステッピングモータ204bと、当該モータを駆動制御するアーム回転制御回路204aで構成される。ステッピングモータ204bは、アーム202の回転軸を時計周りと反時計周りの両方向に回転させる。ここで、アーム202の長さが回転半径を与える。
【0031】
アーム垂直制御部は、アーム202を垂直方向に駆動するステッピングモータ205bと、当該モータを駆動制御するアーム垂直制御回路205aで構成される。ステッピングモータ205bは、アーム202の回転軸を垂直方向に上下動させる。プローブヒータ制御部は、プローブ201に対する熱源となるプローブヒータ206bと、プローブ201の検出温度に応じてプローブヒータ106bの発熱量を制御するプローブヒータ制御回路206aで構成される。なお、検査に使用されていない場合、プローブ201はハウジング207に格納される。
【0032】
メイン制御部200は、これら個別の制御部を通じ、プローブ201の位置決め、溶液の吸引・吐出、廃棄を制御する。
【0033】
自動分析装置は、試料容器(不図示)を保持する試料ホルダ208a〜208dを有している。図7に示す自動分析装置は、4個の試料容器を一度に保持することができる。これらホルダは、プローブ201の回転半径209上に配置される。この回転半径209上には、プローブ201の内表面及び外表面を洗浄する洗浄槽210も配置される。なお、洗浄槽210はポンプ部211と配管を通じて接続されている。洗浄に使用される純水又は洗浄水は、ポンプ部211により水タンク212からくみ上げられる。なお、廃水は不図示の廃液槽に送られる。
【0034】
自動分析装置は、第1のカートリッジ101、第2のカートリッジ111その他のカートリッジを円周方向に複数保持することが可能なローター220を有している。本形態例におけるローター220は円盤状であり、その外周に沿って40個のカートリッジホルダ221(カートリッジを嵌め込み可能な穴が形成されている)が配置されている。
【0035】
図8では、第1のカートリッジ101及び第2のカートリッジ111をローター220に装着した状態での各カートリッジを構成する容器のローター220の半径方向の位置を破線で示している。図8では、3つの円を描いている。図8に示すように、各円はプローブ201の回転半径209と3つ黒丸の位置で交差する。このように、溶液を出し入れする容器毎に、プローブ201と交差する位置が異なる。従って、溶液を出し入れする際には、対象とする容器の位置に応じ、プローブ201とローター220の回転位置をそれぞれ制御する。
【0036】
ローター220は、ローター駆動部により制御される。ローター駆動部は、ローター220を時計周りと反時計周りの両方向に回転駆動できるステッピングモータ222bと、当該モータを駆動制御するローター制御回路222aとで構成される。なお、ローター220、アーム202、プローブ201、ハウジング207、試料ホルダ208a〜208dは、開閉可能なケース(不図示)で覆われている。フタの近傍にはケース開検出スイッチ(図示せず)及びケースロック機構223が取り付けられている。ケースが開くとケース開検出スイッチがオンとなり、検出信号をメイン制御部200に送る。また、メイン制御部200からの制御によりケースロック機構223が作動し、ケースをロックすることができる。
【0037】
この他、自動分析装置は、ローター220に装着されたカートリッジの情報を、カートリッジのシール106から読み取る情報読み取り部224を有する。情報読み取り部224は、イメージセンサ及びプロセッサ等で構成される。情報読み取り部224から読み出された情報はメイン制御部200に与えられると共に、記憶装置225に格納される。この他、記憶装置225には、分析結果、患者ID、分析日時も格納される。記憶装置225は、過去の分析結果の格納にも使用される。
【0038】
また、自動分析装置は、吸光度を測定するための光源226、光学系227及び光検出器228を有している。これらのデバイスは、測光キュベット102に注入された検査対象溶液の吸光度を測定するために使用される。光源226には、例えばタングステンランプが用いられる。光源226は、自動分析装置に電源が投入されている間、基本的に点灯している。ただし、電源投入後も、不使用状態が所定時間を越えて継続するた場合、には、光源226は消灯される。光学系227は、回転式波長選択フィルター、レンズ、スリットを備える。メイン制御部200により回転式波長選択フィルターを回転して、光軸上に所望のフィルターを配置することができる。回転式波長選択フィルターにより選択できる波長は、例えば340nm、380nm、415nm、450nm、480nm、508nm、546nm、576nm、600nm、620nm、660nm、700nm、800nmとする。光検出器228は、フォトダイオード及び増幅器を備える。フォトダイオードにより検出された光量は電圧として出力され、増幅器により増幅される。増幅されたアナログ電圧値はA/Dコンバータによりデジタルデータに変換され、メイン制御部200に取り込まれる。
【0039】
自動分析装置には、表示・操作部230が設けられている。表示・操作部230は、タッチパネルセンサ、LCDユニット、スタートボタン、ストップボタンを備える。表示・操作部230を用いることにより、ユーザーはメッセージや分析結果の認識できると共に、メイン制御部200に対する指示を与えることができる。スタートボタンは、分析動作の開始を手動で指示するために使用される。ストップボタンは分析動作の途中で処理動作を中断するために使用される。
【0040】
また、自動分析装置には、プリンタI/F回路経由で外部プリンタ231が接続される。外部プリンタ231はオプションであり、分析結果のプリントアウトに使用される。
【0041】
<検査動作>
続いて、当該自動分析装置を用いた、アレルゲン(抗原)の検査動作を説明する。以下に示す動作は、メイン制御部200の制御を通じて実行される。
【0042】
まず、電源スイッチがユーザーによってオン操作される。このオン操作により、メイン制御部200が動作可能になる。動作可能になったメイン制御部200は、表示・操作部230にメインメニューを表示する。
【0043】
この状態で、ユーザーは不図示の本体カバーを装置本体から取り外し、検査に必要なカートリッジをローター220に装着する。形態例に係る自動分析装置は、免疫反応検査だけでなく、一般生化学検査にも使用できるため、検査目的に応じたカートリッジを装着可能である。自動分析装置は、電源の投入後、ケースが開いている間、図10に示す処理ルーチンを起動する。なお、図10に示す処理ルーチンは、カートリッジの装着完了が指示されるまでの間、個々のカートリッジに対して実行される。
【0044】
メイン制御部200は、情報読み取り部224を用い、ローター220へのカートリッジの装着を監視する。メイン制御部200は、情報読み取り部224の出力がカートリッジの情報であると判定されるまで、同じ判定処理を繰り返す(ステップS1)。カートリッジから読み出された情報であることが確認されると、メイン制御部200は、ローター220に装着されたカートリッジの種類を識別する(ステップS2)。
【0045】
メイン制御部200は、読み出した検査用途や試薬の種類等の情報より装着されたカートリッジの種類を判定する。この形態例の場合、免疫反応用のカートリッジ101が装着されたか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、反応ウェル104の内壁面に固相化抗体層107が形成された第1のカートリッジ101が、図11に示すように装着されたか否かを判定する。肯定結果が得られると、メイン制御部200は、装置の検査モードを自動的に免疫反応検査に自動設定する(ステップS4)。具体的には、シール106に記された検査用途や試薬の種類等により特定されるIgE検査モードに設定する。この設定により、ユーザーによる設定を不要にできる。また、ユーザーによる誤設定を避けることができる。
【0046】
なお、この設定は、図12に示すように、第1のカートリッジ101と第2のカートリッジ111が隣り合う2つのカートリッジホルダ221に装着されたことを検出条件とすることもできる。後述するように、免疫反応検査には第2のカートリッジ111の存在が不可欠であるためである。、第1のカートリッジ101と第2のカートリッジ111の装着だけを条件とし、必ずしも第1のカートリッジ101と第2のカートリッジ111が隣り合う2つのカートリッジホルダ221に装着されることを条件としなくても良い。
【0047】
一方、ステップS3の判定処理において否定結果が得られた場合、メイン制御部200は、検査モードを一般生化学検査に自動設定する(ステップS5)。
【0048】
次に、ユーザーは、測定試料(例えば血液)の入った試料容器を試料ホルダ208a〜208dのいずれかに装着する。この後、ユーザーは本体カバーを取り付け、表示・操作部230のスタートボタンを押す。この後、表示・操作部230の画面には、測定項目が表示される。測定を確認したユーザーが測定実行ボタンを押すと、測定が開始される。この形態例の場合、アレルゲン検査としての特異IgE分析が以下の手順で実行される。
【0049】
(1)血清試料50μlと第の1カートリッジ101の試薬キュベット103内の2次抗体試薬120μlをプローブ201で吸引し、第1のカートリッジ101の反応ウェル104に吐出する。
(2)処理(1)から15分後に、第1のカートリッジ101の反応ウェル104内の溶液全量をプローブ201で吸引し、第1のカートリッジ101の試薬キュベット103内に吐出する。
【0050】
(3)第2のカートリッジ111の試薬キュベット112内の洗浄用緩衝液200μlをプローブ201で吸引し、第1のカートリッジ101の反応ウェル104に吐出する。
(4)第1のカートリッジ101の反応ウェル104内の溶液全量をプローブ201で吸引し、装置の洗浄槽210へ吐出する。
(5)処理(3)−処理(4)の操作をあと2回繰り返す。
【0051】
(6)第2のカートリッジ111の試薬キュベット113内の発色試薬180μlをプローブ201で吸引し、第1のカートリッジ101の反応ウェル104に吐出する。
(7)処理(6)から5分後、第1のカートリッジ101の反応ウェル104内の溶液175μlをプローブ201で吸引し、第1のカートリッジ101の測光キュベット102に吐出する。
【0052】
(8)例えば主波長450nm/副波長620nmにて吸光度測定を行う。
(9)測定された吸光度を、シール106に格納されている吸光度から濃度への変換式に代入して、特異IgE濃度を得る。
(10)測定結果を表示・操作部230に表示する。
【0053】
以上が、ポイント・オブ・ケア・テスティングに適した自動分析装置において実現される特異IgE検査処理の内容である。
【0054】
なお、処理(2)や処理(4)における溶液の全量吸引に際しては、プローブ201が反応ウェル104の底面に接触して破損する事態を避ける必要がある。一般に、自動分析装置には、プローブ201とグランド電位間の静電容量の変化の検出により液面を検知する機能が搭載されているが、この形態例ではより安全性を高めるため、反応ウェル104の底面から上方へ3mm以内に定めた目標位置でプローブ201を自動停止する。目標位置は、カートリッジの取り付け誤差や製造誤差を考慮して定める。なお、目標位置に達したことは、アーム垂直制御回路205aが、アーム202の垂直方向の駆動量を監視することで検出する。当該停止機能の搭載により、プローブ201の先端と反応ウェル104の底面との間の非接触が確保される。なお、自動停止後は、プローブ201の先端と反応ウェル104の底面との間に隙間が生じるが、溶液の表面張力を利用して全ての溶液を吸引することができる。
【0055】
因みに、免疫反応用のカートリッジ101だけでなく、一般生化学検査用のカートリッジも自動分析装置に装着されている場合には、前述した免疫反応検査と同時並行的に一般生化学検査も実行される。
【0056】
<他の形態例>
なお、本発明は上述した形態例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した形態例では、特異IgEの自動分析を例に説明したが、総IgEの自動分析、感染症や癌(クラミジアやPSA等)の自動分析、甲状腺ホルモン(TSH、FT4等)の自動分析、その他の免疫反応検査にも応用することができる。
【0057】
また、上述した形態例は、発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、実製品においては、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限らない。また、ある形態例の一部を他の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある形態例の構成に他の形態例の構成を加えることも可能である。また、各形態例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
【0058】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0059】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0060】
101…第1のカートリッジ
102…測光キュベット
103…試薬キュベット
104…反応ウェル
105…パネル
106…シール
107…固相化抗体層
111…第2のカートリッジ
112…試薬キュベット
113…試薬キュベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬キュベットと、測光キュベットと、反応ウェルを一体的に有するカートリッジにおいて、
前記反応ウェルの内壁面は、標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い表面層を有する
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジにおいて、
前記表面層は、抗体又は抗原の固相化層である
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のカートリッジにおいて、
前記表面層は、標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質との親和性の高い内壁面を有する容器を、前記反応ウェルに嵌め込み加工することで形成されている
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項4】
請求項2に記載のカートリッジにおいて、
前記反応ウェルの底面は、外周側から中心方向に径が小さくなるように窪んだ内壁面を有する
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項5】
請求項2に記載のカートリッジにおいて、
前記表面層は、UV処理により形成する
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項6】
請求項2に記載のカートリッジにおいて、
前記表面層は、プラズマ処理により形成する
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項7】
請求項2に記載のカートリッジにおいて、
前記表面層は、ポリマー処理により形成する
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
液体の吸引と吐出に使用する1本のプローブと、前記プローブを駆動するプローブ駆動部と、試料容器を複数保持する試料ホルダと、情報提示部を有するカートリッジを円周方向に複数保持するローターと、前記ローターを回転駆動するローター駆動部と、前記情報提示部からカートリッジの情報を読み取る情報読み取り部と、光源と光検出器を備える光学測定部と、前記情報読み取り部によって読み取った情報を記憶する記憶部と、装置各部を制御する制御部とを備える自動分析装置の自動分析方法において、
前記制御部が、
前記情報読み取り部から読み出した情報に基づき、標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い表面層を内壁面に有する反応ウェルを含む第1のカートリッジが前記ローターに装着されたか否かを判定するステップと、
装着が確認された場合、当該第1のカートリッジを使用する免疫反応の検査モードを自動的に起動するステップと
を有することを特徴とする自動分析方法。
【請求項9】
請求項8に記載の自動分析方法において、
前記制御部は、前記第1のカートリッジの装着に加え、洗浄用のバッファ液が収容された第2のカートリッジが前記ローターに装着されたことが検出された場合に、前記検査モードを起動制御する
ことを特徴とする自動分析方法。
【請求項10】
請求項9に記載の自動分析方法において、
前記制御部は、前記第1及び第2のカートリッジがローター上で隣り合って装着された場合に、前記検査モードを起動制御する
ことを特徴とする自動分析方法。
【請求項11】
請求項8に記載の自動分析方法において、
前記制御部は、前記ローターに装着された、標的タンパク質の表面層又は当該タンパク質と親和性の高い内壁面を有する反応ウェルを含むカートリッジからの溶液の吸引時、前記プローブの先端の降下を、当該反応ウェルの底面から3mm以内の前記底面と接触しない所定の高さ位置で自動停止させる
ことを特徴とする自動分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の自動分析方法において、
前記反応ウェルの底面は、外周側から中心方向に径が小さくなるように窪んだ内壁面を有する
ことを特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−159405(P2012−159405A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19650(P2011−19650)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】