説明

カーボンナノチューブの形成方法及びカーボンナノチューブの形成装置

【課題】パーティクルの発生を抑えつつ、カーボンナノチューブの成長速度の低下を抑制できるカーボンナノチューブの形成方法、及びカーボンナノチューブの形成装置を提供する。
【解決手段】アセチレンガスを熱分解してカーボンナノチューブ33を形成する際に、コバルトから構成される触媒金属層32に対して、窒素プラズマによる窒化処理を行い、窒化金属層32Nを形成する。次いで、アセチレンガスを熱分解する温度以下まで窒化金属層32Nを加熱して窒化触媒金属を微粒子化して微粒子膜32Pを形成する。その後、微粒子膜32Pをアセチレンガスが熱分解される温度にまで昇温して且つ該温度に維持することによって、アセチレンガスを熱分解して微粒子層32P上にカーボンナノチューブ33を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相成長法(CVD法)、特に熱CVD法を用いたカーボンナノチューブの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体装置の微細化や高集積化に伴い、半導体装置が有する金属配線の線幅が狭くなりつつある。現在は金属の中でも最も抵抗の低い金属のひとつである銅が配線材料として使用されている。しかし、配線の線幅が狭くなると配線の単位面積当りの電流量である電流密度が高くなるため、銅配線中の銅原子の拡散現象であるエレクトロマイグレーションが起こりやすくなる結果、銅配線の断裂を招く可能性が増している。しかし、半導体装置には更なる微細化が求められているため、銅が許容する電流密度以上の電流密度が必要とされる。そこで、銅等の金属材料に代わる配線材料として、許容する電流密度がより高いカーボンナノチューブが期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブを形成する方法の1つとして、例えば特許文献1に記載のように、触媒金属層を形成する第1の工程、触媒金属層を活性化する第2の工程、及びカーボンナノチューブを形成する第3の工程、それらが順に実行されている。
【0004】
まず第1の工程では、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらの合金等、カーボンナノチューブを成長させるための触媒金属の微粒子からなる触媒金属層が基板上に形成される。次いで第2の工程では、水素あるいはアンモニア等の水素含有ガスと、各種炭化水素及び一酸化炭素等の炭素含有ガスとのプラズマに曝されつつ、触媒金属層が室温から600℃にまで昇温される。このとき、プラズマ中のイオン種はプラズマと基板との間に配置された網部材に捕捉される。他方、基板に到達するラジカル種のうち、水素ラジカルが触媒金属の微粒子を還元するとともに、炭素ラジカルが触媒金属層の微粒子間に介在して触媒金属の凝集を抑制する。その結果、触媒金属が活性化される。そして、第3工程では、炭化水素ガスを用いたプラズマCVD法によってカーボンナノチューブが形成される。つまり、基板の温度が600℃に維持されつつ、活性化された触媒金属層が上述の水素含有ガス及び炭化水素ガスのプラズマに曝される。これによって、触媒金属の微粒子では、カーボンナノチューブの成長が促進されて、基板の表面に略垂直なカーボンナノチューブが形成される。同文献に記載の方法によれば、触媒金属の活性化に際して、プラズマに含まれるイオンが除去されて、ラジカル種のみが基板に到達するため、触媒金属が確実に活性化されつつ、基板の過度の温度上昇や損傷が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−252970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した第3の工程のようにプラズマCVD法を用いてカーボンナノチューブを形成する場合には、炭化水素ガスのプラズマが処理室のほぼ全域にわたって生成される。そのため、高い反応性を有した炭素ラジカルは、カーボンナノチューブの成長反応が起こる触媒金属の付近だけでなく、処理室内のほぼ全域にわたって供給される。触媒金属の付近に供給された炭素ラジカルは、カーボンナノチューブの成長反応に消費される一方、触媒金属の付近以外の領域に供給された炭素ラジカルは、処理室内に存在する他のラジカル等と反応して炭素化合物を形成する、あるいは、アモルファスカーボン等のカーボン
ナノチューブ以外の炭素の単体を形成してしまう。その結果、炭素ラジカルに起因するパーティクルが処理室内にて発生してしまい、ひいては、カーボンナノチューブを形成した半導体装置基板がパーティクルによって汚染される虞がある。
【0007】
そこで、カーボンナノチューブを形成する工程には、プラズマCVD法に代わり、熱CVD法を用いることが提案されている。熱CVD法では、プラズマを生成することなく、処理室内に導入された炭化水素ガス等を加熱によって励起するため、ヒータで加熱された基板上の触媒金属表面においてのみ炭化水素ガスが励起される結果、プラズマCVD法に比べてパーティクルの発生が抑えられる。
【0008】
一方、基板の熱エネルギーとプラズマのエネルギーとを用いてカーボンナノチューブの成長反応が進行するプラズマCVD法に対して、熱CVD法では基板の熱エネルギーのみによってカーボンナノチューブの成長反応が進行する。そのため、プラズマCVD法と同じ成長速度を熱CVD法で実現するためには、熱CVD法における基板の温度をプラズマCVD法における温度よりも大幅に高くする必要がある。しかしながら、半導体装置の製造工程に適用できる基板の温度には、例えば500℃以下という限りがあるため、熱CVD法における基板の温度も制限されることになる。その結果、カーボンナノチューブを形成する工程に熱CVD法を用いると、プラズマCVD法と比較して、カーボンナノチューブの成長速度が低くなる、あるいはカーボンナノチューブの成長そのものが起こらなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パーティクルの発生を抑えつつ、カーボンナノチューブの成長速度の低下を抑制できるカーボンナノチューブの形成方法、及びカーボンナノチューブの形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、炭化水素含有ガスに含まれる炭化水素を熱分解してカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブの形成方法において、鉄、ニッケル、及びコバルトの少なくとも1つを含む触媒金属の窒化物からなる微粒子膜を形成する工程と、前記微粒子膜の温度を前記炭化水素が熱分解される温度に維持して前記炭化水素を前記微粒子膜で熱分解することにより前記微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成する工程とを含み、前記微粒子膜を形成する工程では、窒素を含み、且つ水素を含まないガスである窒素含有ガスからなるプラズマによって前記触媒金属を窒化する窒化処理、及び、前記炭化水素を熱分解する温度未満に前記触媒金属を加熱して該触媒金属を微粒子化する微粒子化処理を実施することをその要旨とする。
【0011】
請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法では、微粒子膜の温度を炭化水素が熱分解される温度に維持して該微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成する工程に先立ち、以下の2つの処理を実施するようにしている。
【0012】
(a)窒素含有ガスからなるプラズマによって触媒金属を窒化する窒化処理。
(b)触媒金属を加熱によって微粒子化する微粒子化処理。
カーボンナノチューブの形成反応は、触媒金属の微粒子において起こるとともに、形成されるカーボンナノチューブの径の大きさは、上記微粒子の粒径に依存することが知られている。上述のように、請求項1に記載の発明によれば、上記(b)の微粒子化処理によって触媒金属が粒径の小さい微粒子になるため、微粒子の粒径に依存して成長するカーボンナノチューブは、このような微粒子化処理が実行されない方法と比較して、より高い密度で形成されることになる。
【0013】
また一般に、カーボンナノチューブの形成反応は、以下のように進行することが知られている。まず、炭素源である炭化水素ガスが、触媒金属の微粒子に吸着して分解する。そして、分解により生じた炭素が触媒金属の粒子中に溶解して触媒における炭素の溶解量が過飽和になると、グラファイト構造を有するカーボンナノチューブとして触媒金属の粒子の表面に炭素が析出する。本願発明者は、カーボンナノチューブの形成反応について鋭意研究する中で、触媒金属からなる微粒子が炭化水素の分解反応以前に窒化されていると、カーボンナノチューブの成長速度が高められることを見出した。そこで、上記請求項1に記載の発明のように、炭化水素を熱分解してカーボンナノチューブを形成する工程に先立って、上記(a)の窒化処理を実施することにより、上記形成工程におけるカーボンナノチューブの成長速度を高めることができる。
【0014】
加えて、請求項1に記載の発明では、カーボンナノチューブの形成工程に際して、炭化水素を熱分解する、いわゆる熱CVD法を用いている。そのため、炭化水素の励起種の存在する領域が微粒子膜上に限られることになり、気相中等で形成される炭素の単体あるいは炭素の化合物が減るため、プラズマCVD法と比較してパーティクルの発生量を抑制することが可能である。したがって、請求項1に記載の発明によれば、パーティクルの発生を抑えつつ、カーボンナノチューブの成長速度の低下を抑制することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、前記窒化処理が、前記触媒金属からなる金属膜を、前記窒素含有ガスからなるプラズマによって窒化する処理であり、前記微粒子化処理が、前記窒化処理によって窒化された金属膜を、前記炭化水素が熱分解される温度未満にまで加熱する処理であることをその要旨とする。
【0016】
本願発明者は、カーボンナノチューブの形成方法について鋭意検討する中で、触媒金属を加熱して微粒子化する以前に該触媒金属に対してプラズマ処理を施すと、プラズマ処理を施さない場合と比較して、加熱後に形成される微粒子の粒径が小さくなることを見出した。
【0017】
従って、請求項2に記載の発明によれば、触媒金属からなる金属膜を窒素含有ガスのプラズマで窒化した後に、該窒化された金属膜を加熱して微粒子化しているので、より粒径の小さい微粒子を形成することができる。また、カーボンナノチューブの密度も向上できるため、微粒子膜の単位面積当りのカーボンナノチューブの抵抗値を低下させることもできる。
【0018】
しかも、同方法によれば、触媒金属を窒化することと、微粒子の粒径を縮小することとが単一の処理にて可能となる。つまり、より密度の高いカーボンナノチューブを高い成長速度で形成することと、カーボンナノチューブの形成に必要とされる手順、及び装置の煩雑化を抑制することとの両立を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、前記窒化処理が、前記触媒金属からなるターゲットを前記窒素含有ガスからなるプラズマ中でスパッタして前記触媒金属の窒化物からなる窒化金属膜を形成する処理であり、前記微粒子化処理が、前記窒化処理によって形成された前記窒化金属膜を、前記炭化水素が熱分解される温度未満に加熱する処理であることをその要旨とする。
【0020】
請求項3に記載の発明では、触媒金属の窒化処理が、微粒子膜の前駆体である金属膜の形成と同時に行われる。これにより、触媒金属の窒化が均一に進行するため、触媒活性の向上も微粒子膜の全体にわたって均一になる。その結果、触媒金属の窒化物から形成されるカーボンナノチューブの長さのばらつきも抑制することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、前記微粒子化処理が、前記触媒金属からなる金属膜を、前記炭化水素を熱分解する温度未満に加熱して該触媒金属を微粒子化する処理であり、前記窒化処理が、前記微粒子化処理によって微粒子化された触媒金属を、窒素含有ガスからなるプラズマによって窒化する処理であることをその要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、カーボンナノチューブの形成反応に際して触媒金属を微粒子化した後に、該微粒子化された触媒金属を窒化するようにしている。これにより、微粒子化によって表面積が大きくなった触媒金属に対して窒化処理が行われることになるため、触媒金属と窒素プラズマとの反応が起こりやすくなる。それゆえに、触媒金属の窒化がより確実に行われることとなる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、表面に微粒子膜を有した形成対象を収容する真空槽と、炭化水素を含む炭化水素含有ガスを前記真空槽に供給する炭化水素含有ガス供給部と、前記形成対象を前記真空槽内で加熱する加熱部とを備え、前記加熱部によって加熱された前記微粒子膜で前記炭化水素を熱分解して前記微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブの形成装置において、窒素を含み、且つ水素を含まない窒素含有ガスを前記真空槽内でプラズマ化する窒素プラズマ生成部と、鉄、ニッケル、及びコバルトの少なくとも1つを含む触媒金属に対し、前記窒素プラズマ生成部を駆動して窒素プラズマによって前記触媒金属を窒化する窒化処理と、前記加熱部を駆動して前記炭化水素を熱分解する温度未満に前記触媒金属を加熱することにより該触媒金属を微粒子化する微粒子化処理とを実行して、窒化された触媒金属の微粒子によって前記微粒子膜を形成する制御部とを備えることをその要旨とする。
【0024】
請求項5に記載の発明では、微粒子膜の温度を炭化水素が熱分解される温度に維持して該微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成する工程に先立ち、以下の2つの処理を実施するようにしている。
(a)窒素含有ガスからなるプラズマによって触媒金属を窒化する窒化処理。
(b)触媒金属を加熱によって微粒子化する微粒子化処理。
【0025】
カーボンナノチューブの形成反応は、触媒金属の微粒子において起こるとともに、形成されるカーボンナノチューブの径の大きさは、上記微粒子の粒径に依存することが知られている。上述のように、請求項5に記載の発明によれば、上記(b)の微粒子化処理によって触媒金属が粒径の小さい微粒子になるため、微粒子の粒径に依存して成長するカーボンナノチューブは、このような微粒子化処理が実行されない方法と比較して、より高い密度で形成されることになる。
【0026】
また一般に、カーボンナノチューブの形成反応は、以下のように進行することが知られている。まず、炭素源である炭化水素ガスが、触媒金属の微粒子に吸着して分解する。そして、分解により生じた炭素が触媒金属の粒子中に溶解して触媒における炭素の溶解量が過飽和になると、グラファイト構造を有するカーボンナノチューブとして触媒金属の粒子の表面に炭素が析出する。本願発明者は、カーボンナノチューブの形成反応について鋭意研究する中で、触媒金属からなる微粒子が炭化水素の分解反応以前に窒化されていると、カーボンナノチューブの成長速度が高められることを見出した。そこで、上記請求項5に記載の発明のように、炭化水素を熱分解してカーボンナノチューブを形成する工程に先立って、上記(a)の窒化処理を実施することにより、上記形成工程におけるカーボンナノチューブの成長速度を高めることができる。
【0027】
加えて、請求項5に記載の発明では、カーボンナノチューブの形成工程に際して、炭化
水素を熱分解する、いわゆる熱CVD法を用いている。そのため、炭化水素の励起種の存在する領域が微粒子膜上に限られることになり、気相中等で形成される炭素の単体あるいは炭素の化合物が減るため、プラズマCVD法と比較してパーティクルの発生量を抑制することが可能である。したがって、請求項5に記載の発明によれば、パーティクルの発生を抑えつつ、カーボンナノチューブの成長速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】カーボンナノチューブの形成装置の概略構成を示す概略構成図。
【図2】カーボンナノチューブの形成に際して実施される処理の手順を示す図。
【図3】カーボンナノチューブの形成装置内に供給されるガス流量の変化を示すタイミングチャート。
【図4】(a)〜(d)カーボンナノチューブの形成に際して実施される処理の各々に対応する基板の一部断面形状を示す部分断面図。
【図5】窒化処理を実施する時間と形成されるカーボンナノチューブの長さとの関係を示すグラフ。
【図6】カーボンナノチューブ形成処理を実施する時間と形成されるカーボンナノチューブの長さとの関係を示すグラフ。
【図7】変形例にかかるカーボンナノチューブの形成に際して実施される処理と基板の温度との関係を示すグラフ。
【図8】変形例にかかるカーボンナノチューブの形成に際して実施される処理と基板の温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るカーボンナノチューブの形成方法、及びカーボンナノチューブの形成装置の一実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。まず、カーボンナノチューブの形成装置の概略構成を、図1を参照して説明する。
【0030】
カーボンナノチューブの形成装置が有する真空槽11の内部には、カーボンナノチューブを形成する基板P0を保持する基板ステージ12が設けられている。基板P0としては、例えば、半導体素子等が形成されたシリコン基板や酸化ケイ素等から構成される下地基板に、中間層としての窒化チタン(TiN)層と、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び鉄(Fe)の少なくとも1つを含む金属膜とがこの順に積層された基板が用いられる。
【0031】
基板ステージ12には、基板ステージ12を介して基板P0を加熱する加熱部としてのヒータ12aが内設されている。ヒータ12aには、ヒータ12aの温度を調節することによって基板ステージ12及び基板P0の温度を調整するヒータコントローラHCが接続されている。ヒータコントローラHCは、例えば基板ステージ12を所定の温度に昇温あるいは維持する電流をヒータ12aに供給することによって、基板ステージ12上に載置された基板P0の温度を調整する。
【0032】
また、真空槽11には、プラズマが生成されるとともに、生成されたプラズマを真空槽11内に供給する放電管13が接続されている。放電管13には、放電管13内に供給された各種ガスを励起するためのマイクロ波を出力するマイクロ波電源GEが、該マイクロ波電源GEからのマイクロ波を放電管13に導く導波管14を介して接続されている。また放電管13の開口部には、放電管13内で生成されたプラズマに含まれる各種粒子を基板P0に向けて拡散させるシャワープレート15が取り付けられている。そして放電管13内に供給された各種ガスは、マイクロ波電源GEが出力したマイクロ波を受けてプラズマ化された後、励起された粒子としてシャワープレート15から基板P0の表面に供給される。
【0033】
放電管13には、放電管13及びシャワープレート15を介して、真空槽11内に所定の単位流量で各種ガスを供給するマスフローコントローラMFC1、マスフローコントローラMFC2、及びマスフローコントローラMFC3が接続されている。これらマスフローコントローラMFC1,MFC2,MFC3はそれぞれ順に、窒素(N)を含有し、且つ水素を含有しないガスの1つである窒素(N)ガス、不活性ガスの1つであるアルゴン(Ar)ガス、炭化水素ガスの1つであるアセチレン(C)ガスを真空槽11に供給する。なお、マスフローコントローラMFC3によって炭化水素含有ガス供給部が構成されている。また、上記放電管13、導波管14、マイクロ波電源GE、及びマスフローコントローラMFC1によって、窒素プラズマ生成部が構成されている。
【0034】
真空槽11には、真空槽11内の圧力を調節する圧力調整部16を介して、真空槽11の内部を排気する排気部17が接続されている。カーボンナノチューブの形成装置にて各種処理が実施される際には、マスフローコントローラMFC1,MFC2,MFC3と、圧力調整部16とによって真空槽11内が所定の圧力に調整される。
【0035】
カーボンナノチューブの形成装置が有する制御部20は、真空槽11内で基板P0に施される各種処理に応じて、上記ヒータコントローラHC、マイクロ波電源GE、マスフローコントローラMFC1,MFC2,MFC3、圧力調整部16、及び排気部17の駆動態様を制御する。
【0036】
具体的には、制御部20は、基板P0の温度を調整するヒータコントローラHCに接続されている。そして制御部20は、例えば基板ステージ12の温度の検出値を示す検出信号に基づいて、基板ステージ12の温度を設定温度にするべく、基板P0に実施される処理毎にヒータコントローラHCの駆動態様を決定する。次いで制御部20は、決定した駆動態様に応じた出力信号をヒータコントローラHCに出力して基板ステージ12の温度を設定温度に制御する。
【0037】
また、制御部20は、放電管13内の各種ガスにマイクロ波を供給するマイクロ波電源GEに接続されている。そして制御部20は、基板P0に実施される処理毎の設定値に応じた出力信号をマイクロ波電源GEに出力して、マイクロ波電源GEの出力値を設定値に制御する。
【0038】
また、制御部20は、放電管13内に各種ガスを供給するマスフローコントローラMFC1,MFC2,MCF3に接続されている。そして制御部20は、基板P0に実施される処理毎の設定流量に応じた出力信号をマスフローコントローラMFC1,MFC2,MCF3に出力して、各種ガスの流量を設定流量に制御する。
【0039】
さらに、制御部20は、真空槽11内の圧力を調節する圧力調整部16、及び排気部17に接続されている。そして制御部20は、例えば真空槽11内の圧力の検出値を示す検出信号に基づいて、真空槽11内の圧力を設定圧力にするべく、基板P0に実施される処理毎に圧力調整部16の駆動態様を決定する。次いで制御部20は、決定した駆動態様に応じた出力信号を圧力調整部16に出力して真空槽11内の圧力を設定圧力に制御する。
【0040】
次に、上述のカーボンナノチューブの形成装置にて実施されるカーボンナノチューブ(CNT)の形成方法の詳細を、図2〜図4を参照して説明する。
図2は、カーボンナノチューブの形成工程を示している。カーボンナノチューブの形成に際しては、まず、シリコンや酸化ケイ素等からなる下地基板に形成された窒化チタン等の中間層上に、カーボンナノチューブ形成の触媒となる金属層が形成される(触媒金属層形成処理:ステップS11)。触媒金属としては、Ni、Co、及びFeの少なくとも1
つを含む金属が挙げられる。触媒金属層は、例えば、触媒金属層に応じた元素組成を有する金属ターゲットを備えるスパッタ装置を用いたスパッタリングによって形成される。これにより、カーボンナノチューブの形成の処理対象である基板P0が形成される。
【0041】
次いで、ステップS11にて形成した触媒金属層を窒化する処理が実施される(窒化処理:ステップS12)。窒化処理では、上述のカーボンナノチューブの形成装置を用いることによって、窒素含有ガスからなるプラズマ(Nプラスマ)が触媒金属層の表面に供給される。Nプラズマは、マスフローコントローラMFC1から放電管13に供給されたNガスがマイクロ波電源GEから出力されるマイクロ波によって励起されることで生成される。これにより、触媒金属層の全体に加え、中間層における触媒金属層側の一部が還元された後に窒化されることになる。
【0042】
なお、中間層が上述のような窒化チタン層である場合には、上記窒化処理によって触媒金属層のみが窒化される。他方、中間層が例えばアルミニウム、あるいはチタン等の金属層である場合には、窒化処理によって触媒金属層側の一部が窒化される。
【0043】
続いて、ステップS12にて形成された窒化金属膜の下層である下地基板及び中間層も含めて、窒化金属膜が加熱される(昇温処理:ステップS13)。昇温処理では、基板ステージ12内のヒータ12aによって基板P0が加熱される。このとき、基板P0の温度が、カーボンナノチューブの形成時にCが熱分解される温度未満となるように基板ステージ12の温度が設定される。そして、こうした昇温処理による粒界の移動によって触媒金属の窒化物が凝集する結果、窒化処理によって形成された窒化金属膜が、触媒金属の窒化物の微粒子から構成される微粒子層になる。
【0044】
その後、微粒子膜としての微粒子層を有する基板P0に、炭素源であるCガスを供給するとともに、基板P0の温度をCガスの熱分解温度以上に維持することで、カーボンナノチューブを形成する(カーボンナノチューブ形成処理:ステップS14)。なお、カーボンナノチューブ形成処理では、基板P0の温度が、Cの熱分解温度以上、且つ、基板P0に形成されている素子等の耐久温度以下、例えば450℃以下とされる。
【0045】
次に、上述した各種処理においてカーボンナノチューブの形成装置の駆動態様を以下に説明する。図3は、カーボンナノチューブの形成工程のうち、カーボンナノチューブの形成装置内での処理における各種ガスの供給態様、マイクロ波電源GEの駆動態様、及び基板P0の温度変化を示すタイミングチャートである。なお、カーボンナノチューブの形成装置内での処理には、上述のように、窒化処理(ステップS12)、昇温処理(ステップS13)、及びカーボンナノチューブ形成処理(ステップS14)が含まれる。
【0046】
まず、基板ステージ12内のヒータ12aには、基板ステージ12の温度が窒化処理における設定温度Taになるように所定電流が予め供給されている。なお、本実施の形態では、基板ステージ12の温度と、基板ステージ12に載置された基板P0とは同一の温度であると見なすことができる。そして、基板P0が基板ステージ12上に載置されると(タイミングt0)、設定温度Taに維持された基板ステージ12を介して、基板P0が加熱される。なお、真空槽11の圧力は、マスフローコントローラMFC2によって、Arガスを例えば500sccmの流量で供給することにより、1000Paに保たれている。
【0047】
次いで、基板P0の温度が設定温度Ta、例えば150℃に到達すると(タイミングt1)、マスフローコントローラMFC2によるArガスの供給を停止し、マスフローコントローラMFC1によって放電管13及び真空槽11へのNガスの供給が開始される。
このときのNガスの供給流量は、例えば500sccmである。次いで、導波管14を介した放電管13へのマイクロ波の供給がマイクロ波電源GEによって開始される。このときのマイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。この間、基板P0の温度は上記設定温度Taに維持される。
【0048】
上述した条件でのNガスの供給、マイクロ波の供給、及び基板温度の維持が、例えば30分という所定期間にわたり継続されると(タイミングt2)、マイクロ波電源GEがオフされるとともに、Nガスの供給が停止され、マスフローコントローラMFC2からArガスが供給されることによって、真空槽11内の圧力が1000Paに維持される。このときのArガスの供給流量は、例えば500sccmである。つまり、Nガスとマイクロ波とが供給されるタイミングt1からタイミングt2までの期間にわたり、上記窒化処理(ステップS12)が実施される。
【0049】
続いて、基板ステージ12内のヒータ12aには、基板ステージ12の温度がカーボンナノチューブ形成処理における設定温度Tdになるように、所定の電流が供給される。これによって、基板P0の温度が上昇し始める。そして、基板P0の温度が設定温度Td、例えば450℃に到達すると(タイミングt4)、マスフローコントローラMFC3によって放電管13及び真空槽11へのCガスの供給が開始される。なお、マスフローコントローラMFC2からは、Arガスが依然として供給されている。このときのArガスの供給流量は例えば500sccmであるとともに、Cガスの供給流量は例えば0.125sccmであって、Cガスは、Arガスによって0.025%に希釈される。Arガスの供給とCガスの供給とが45分等の所定期間にわたり継続されると(タイミングt5)、Arガスの供給、及びCガスの供給が停止されるとともに、基板P0が基板ステージ12から移動される。
【0050】
この際、Cガスの供給が開始される前に、基板P0の温度は、設定温度Taから設定温度Tdまで所定の時間で昇温される。つまり、タイミングt2からタイミングt4の期間にわたり、上記昇温処理(ステップS13)が実施される。ここで、窒化処理における設定温度Taよりも高い温度である凝集温度Tcにまで触媒金属層が加熱されると、触媒金属層における触媒金属の窒化物は結晶粒界の移動に合わせて凝集を開始して微粒子を形成する。そのため、基板P0の温度が凝集温度Tc以上となるタイミングt3からタイミングt4の間に、触媒金属層は、触媒金属の窒化物からなる微粒子が集合した微粒子層となる。なお、例えば触媒金属層がCoで構成されている場合、凝集温度Tcは300℃である。
【0051】
タイミングt4からタイミングt5までの間は、上述のように、基板P0の温度が設定温度Tdに維持されるとともに、Arガス及びCガスの供給が実施される。ここで、設定温度Tdとは、Cガスの熱分解反応が生じる温度であり、基板P0に供給されたCガスは、基板P0の表面に形成された微粒子層上で分解される。そして、Cガスの熱分解によって生じた炭素を材料として、カーボンナノチューブが形成される。つまり、タイミングt3からタイミングt4の期間にわたり、カーボンナノチューブ形成処理(ステップS14)が実施される。
【0052】
次に、基板P0を構成する各層の積層状態を上述した各種処理毎に以下に説明する。図4は、カーボンナノチューブの形成手順を模式的に示したものである。なお、図4(a)〜図4(d)は、基板P0の積層方向に垂直な断面の形状をそれぞれ示している。
【0053】
図4(a)に示されるように、触媒金属層形成処理(ステップS11)では、酸化ケイ素から構成される下地基板Sに積層された例えば窒化チタンから構成される中間層31上に、金属膜としての触媒金属層32が例えばスパッタ装置によって形成される。これによ
り、基板P0が形成される。例えば、触媒金属層32をCoで形成する場合、触媒金属層32は0.1〜2.0nmの厚さである。触媒金属層32の形成材料としては、Co単体の他に、Ni及びFeの単体、あるいは、Co、Ni、及びFeの少なくとも2つを含む合金を用いることができる。
【0054】
また、中間層31としては、窒化チタンの他に、チタンの単体、酸化物、及び炭化物を用いることができる。加えて、チタン以外にも、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、Zr(ジルコニウム)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)の単体、酸化物、窒化物、及び炭化物を用いることができる。また、チタンも含めて、これら金属元素の少なくとも2つを含む合金を中間層31の形成材料とすることもできる。つまり、中間層31を形成する材料とは、下地基板Sの表面と触媒金属層32とを物理的及び電気的に接続する機能を有した金属、あるいは金属化合物であればよい。例えば、中間層31を窒化チタンで形成する場合、中間層31は0.1〜20nmの厚さである。
【0055】
次いで、図4(b)に示されるように、カーボンナノチューブの形成装置で実施される窒化処理(ステップS12)では、窒素含有ガスとしてのNガスを用いたNプラズマが触媒金属層32の表面に供給されることによって、触媒金属層32の全体が窒化される。これにより、触媒金属の窒化物からなる窒化金属膜としての窒化金属層32Nが形成される。
【0056】
ちなみに、スパッタ装置からカーボンナノチューブの形成装置に基板P0が搬送される際には、触媒金属層32の表面が大気に含まれる酸素等の酸化源に曝されることになる。これによって触媒金属層32の表面は酸化されるが、上記Nプラズマの供給により、触媒金属層32の窒化が進行する。加えて、中間層31が各種金属の単体、酸化物、及び炭化物等の窒化物以外の材料で形成されている場合には、中間層31における触媒金属層32側の一部も併せて窒化される。これにより、窒化中間層31Nが形成される。
【0057】
その後、昇温処理(ステップS13)では、マスフローコントローラMFC2からArガスを例えば500sccmの流量で供給することによって、真空槽11内の圧力を1000Paとした状態で、基板P0が基板ステージ12により加熱される。そして、基板P0の温度と窒化金属層32Nの温度とが上記凝集温度Tc以上に昇温されることにより、図4(c)に示されるように、窒化金属層32Nが凝集して微粒子化される。その結果、窒化触媒金属の微粒子によって構成される微粒子層32Pが形成される。なお上述のように、触媒金属層32の形成材料がCoである場合には、凝集温度Tcは300℃である。なお、他の金属単体、金属化合物、あるいは合金を用いた場合、凝集温度Tcは、材料毎に固有の温度となるものの、カーボンナノチューブ形成時の触媒として使用することのできるCo、Fe、及びNiについては、凝集温度Tcが300〜400℃である。
【0058】
そして、カーボンナノチューブ形成処理(ステップS14)では、Arガスによって0.025%に希釈されたCガスが基板P0に供給された後、その供給されたCガスが微粒子層32P上で熱分解される。Cガスの熱分解によれば、炭素及び水素、あるいはCガスよりも炭素数及び水素数の少なくとも一方が少ない炭化水素が生じる。Cガスの分解によって生じた炭素は、微粒子層32Pを構成する各微粒子に吸着した後に微粒子中に溶解する。そして、微粒子中の炭素の濃度が、溶解可能な最高の濃度を超えた過飽和の状態になる。その結果、微粒子の外表面に炭素が析出して、グラファイト構造を有した有蓋筒状を呈するカーボンナノチューブ33が形成される。また、一旦、微粒子の外表面にカーボンナノチューブ33が形成されると、カーボンナノチューブ33の微粒子側の端部に新たな炭素が結合することで、カーボンナノチューブ33の長さLが大きくなる。つまり、図4(d)に示されるように、Cガスの熱分解が進行
するに連れて、カーボンナノチューブ33は、基板P0とは反対側に向けて微粒子層32Pから伸長する。このように、各カーボンナノチューブ33は、微粒子層32Pを構成する各微粒子に沿って形成され、且つ成長することから、カーボンナノチューブ33の直径は、微粒子の直径に略等しい大きさになる。なお、本実施の形態で形成されるカーボンナノチューブ33は、2層以上のグラフェン層によって構成されるいわゆるマルチウォールナノチューブ(MWNT)である。
【0059】
次に、上記窒化処理の実施時間とカーボンナノチューブの長さとの関係について以下に説明する。図5は、窒化処理(ステップS12)を実施する期間であるタイミングt1からタイミングt2の長さと、カーボンナノチューブ形成処置(ステップS14)によって形成されるカーボンナノチューブ33の長さLとの関係を示している。なお、カーボンナノチューブ33の長さLは、30本のカーボンナノチューブ33の長さLを平均したものである。また、図5は、窒化処理、昇温処理、カーボンナノチューブ形成処理を下記処理条件にて実施した結果を例示するものであるが、同図に示される傾向は、上述した各種の構成材料において概ね認められる傾向である。
(窒化処理条件)
・中間層31:チタン(Ti)
・触媒金属層32:Co
・Nガス流量:500sccm
・マイクロ波出力:500W
・基板温度:150℃
・圧力:1000Pa
(昇温処理条件)
・昇温速度:15℃/分
(カーボンナノチューブ形成処理条件)
・Arガス流量:500sccm
・Cガス流量を0.125sccm
・基板温度:450℃
・実施時間:45分
図5に示されるように、窒化処理を実施する時間が「0」である、つまり、窒化処理を実施しないときのカーボンナノチューブ33の長さLを基準長Lbasとするとき、窒化処理の実施時間が長くなる程、カーボンナノチューブ33の長さLは大きくなる。そして、窒化処理の実施時間が長くなることに相関して、カーボンナノチューブ33の長さLが大きくなる傾向は次第に収束する。その後、窒化処理の実施時間が、例えば30分等の飽和時間tsat以上になると、カーボンナノチューブ33の長さLの伸長が飽和長Lsat、例えば1.5μmで飽和することになる。
【0060】
このように、窒化処理が所定時間以上実施されると、窒化処理を実施しない場合と比較して、カーボンナノチューブ33の長さLが大きくなっていることが認められる。ここで、カーボンナノチューブを形成する時間は、窒化処理の実施時間に関わらず同一であることから、窒化処理を実施することにより、単位時間当りにカーボンナノチューブ33が伸長する量、つまり、カーボンナノチューブ33の成長速度が速くなっていると言える。これは、窒化された触媒金属によって微粒子層32Pを構成する微粒子が形成されることで、微粒子が触媒として機能する何らかの反応、例えば、Cガスの熱分解反応や、微粒子への炭素の溶解反応の速度が速くなるためと考えられる。なお、本実施の形態では、上記窒化処理が実施される期間は、上記飽和時間tsatに設定される。
[実施例1:Nプラズマ処理]
二酸化ケイ素(SiO)基板上に、スパッタリングによって窒化チタン層(TiN)を形成した後、TiN層上にスパッタリングによってCo層を形成することで、基板P0を形成した。なお、窒化チタン層の厚さは5nm、Co層の厚さは1nmである。
【0061】
基板をカーボンナノチューブの真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。その後、真空槽11内にArガスを500sccmmの流量で供給することによって、真空槽11内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板P0を150℃に加熱した。基板P0の温度が150℃に到達したところでArガスの供給を停止し、Nガスを供給した。こうして、基板P0の温度を150℃に維持しつつ、500sccmのNガスに対して500Wのマイクロ波を供給することにより生成したNプラズマをCo層に30分供給することによって、Co層を還元して窒化した。なお、Co層にNプラズマを供給する時間は、カーボンナノチューブ33の長さLが飽和する時間である飽和時間tsatに設定されている。
【0062】
次いで、Nガスの供給を停止して、Arガスを500sccmの流量で供給しつつ、基板P0の温度を150℃から450℃に20分で上昇させた。その後、同温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したCガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量はそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。そしてArガスとCガスとの供給を開始してから15分後、30分後、45分後に、それぞれ30本のカーボンナノチューブについて、長さ、直径、及び密度を測定した。カーボンナノチューブの長さの平均値を実施時間毎に図6に示すとともに、45分後における密度の平均値を表1に示し、また45分後における長さ及び直径の平均値を以下に示す。
【0063】
長さ:1.35μm
直径:5〜10nm
また、カーボンナノチューブの形成処理時における真空槽内のガス成分を赤外線吸収ガス分析計(大塚電子株式会社製)にて測定した結果、基板P0に形成されたカーボンナノチューブに含まれる炭素量と略等しい炭素量のCガスが分解していることが認められた。すなわち、分解されたCガスの略全てがカーボンナノチューブの形成に用いられているため、上記カーボンナノチューブの形成装置を利用した形成方法によってパーティクルが発生し難くなることが分った。
[実施例2:Nプラズマ処理]
SiO基板に、直径が200nmのビアホールを形成した後、スパッタリングによって厚さが5nmの窒化チタン層を形成した。そして、窒化チタン層上に、スパッタリングによって厚さが1.0nmのCo層を形成することで基板P0を形成した。
【0064】
基板P0をカーボンナノチューブの真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。その後、真空槽11内にArガスを500sccmの流量で供給することによって真空槽11内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板P0を150℃に加熱した。基板P0の温度が150℃に到達したところでArガスの供給を停止し、Nガスを供給した。そして、基板P0の温度を150℃に維持しつつ、500sccmのNガスに対して500Wのマイクロ波を供給することにより生成したNプラズマをCo層に60分供給することによって、Co層を還元して窒化した。
【0065】
次いで、Nガスの供給を停止し、Arガスを500sccmの流量で供給しつつ、基板P0の温度を150℃から450℃まで20分で上昇させた。その後、同基板P0の温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したCガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量はそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。そしてArガスとCガスとの供給を開始してから45分後に、ビアホール内に形成された10本のカーボンナノチューブについて、長さ、直径、及び密度を測定した。これら測定値の平均値を以下に示す。
【0066】
長さ:1.35μm
直径:5〜10nm
密度:1×1012本/cm
[比較例1:プラズマ処理無し]
実施例1と同じく、SiO基板上にTiN層とCo層とを形成することによって基板を形成した。次いで、基板をカーボンナノチューブ形成装置の真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。続いて、真空槽内にArガスを500sccmの流量で供給することによって、真空槽内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板の温度を室温から450℃まで30分で上昇させた。その後、同基板の温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したCガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量はそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。そしてArガスとCガスとの供給を開始してから15分後、30分後、45分後に、それぞれ30本のカーボンナノチューブについて、長さ、直径、及び密度を測定した。カーボンナノチューブの長さの平均値を実施時間毎に図6に示すとともに、45分後における密度の平均値を表1に示し、また45分後における長さ及び直径の平均値を以下に示す。
【0067】
長さ:0.33μm
直径:15〜20nm
[比較例2:水素(H)プラズマ処理]
実施例1と同じく、SiO基板上にTiN層とCo層とを形成することによって基板を形成した。次いで、基板をカーボンナノチューブの真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。続いて、真空槽内にArガスを500sccmの流量で供給することによって、真空槽内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板を150℃に加熱した。基板の温度が150℃に到達したところでArガスの供給を停止し、Hガスを供給した。そして、基板の温度を150℃に維持しつつ、500sccmの水素ガスに対して500Wのマイクロ波を供給することによって生成した水素プラズマをCo層に30分供給することによってCo層を還元した。
【0068】
次いで、Hガスの供給を停止し、Arガスを500sccmの流量で供給しつつ、基板の温度を150℃から450℃まで20分で上昇させた。その後、同基板の温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したCガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量をそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。そしてArガスとCガスとの供給を開始してから15分後、30分後、45分後に、それぞれ基板の表面を観察したところ、カーボンナノチューブの形成がほとんど認められなかった。
[比較例3:酸素(O)プラズマ処理]
実施例1と同じく、SiO基板上にTiN層とCo層とを形成することによって基板を形成した。次いで、基板をカーボンナノチューブの真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。続いて、真空槽内にArガスを500sccmの流量で供給することによって、真空槽内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板を150℃に加熱した。基板の温度が150℃に到達したところで、Oガスを供給した。そして、基板の温度を150℃に維持しつつ、2.5sccmの酸素ガス、及び500sccmのArガスに対して500Wのマイクロ波を供給することにより生成した酸素プラズマをCo層に30分供給することによってCo層を酸化した。つまり、酸素ガスをArガスによって200分の1に希釈したガスからなる酸素プラズマによってCo層を酸化した。
【0069】
次いで、Oの供給を停止して、基板の温度を150℃から450℃まで20分で上昇させた後に、同温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したC
ガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量をそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。ArガスとCガスとの供給を開始してから15分後、30分後、45分後に、それぞれ30本のカーボンナノチューブについて、長さ、直径、及び密度を測定した。カーボンナノチューブの長さの平均値を実施時間毎に図6に示すとともに、45分後における密度の平均値を表1に示し、45分後における長さ及び直径の平均値を以下に示す。
【0070】
長さ:0.60μm
直径:10〜20nm
[比較例4:Arプラズマ処理]
実施例1と同じく、SiO基板上にTiN層とCo層とを形成することによって基板を形成した。次いで、基板をカーボンナノチューブの真空槽に搬入した後、排気部によって真空槽内の圧力を2×10−5Paにまで減圧した。続いて、真空槽内にArガスを500sccmの流量で供給することによって真空槽内の圧力を1000Paに保持しつつ、基板を150℃に加熱した。そして、基板の温度を150℃に維持しつつ、500sccmのArガスに対して500Wのマイクロ波を供給することによって生成したArプラズマをCo層に30分供給した。
【0071】
次いで、基板の温度を150℃から450℃まで20分で上昇させた後に、同基板の温度を450℃に維持しつつ、Arガスで0.025%に希釈したCガスを真空槽に供給した。この際、ArガスとCガスとの流量をそれぞれ、500sccm、0.125sccmとした。そして、ArガスとCガスとの供給を開始してから15分後、30分後、45分後に、それぞれ30本のカーボンナノチューブについて、長さ、直径、及び密度を測定した。カーボンナノチューブの長さの平均値を実施時間毎に図6に示すとともに、45分後における密度の平均値を表1に示し、45分後における長さ及び直径の平均値を以下に示す。
【0072】
長さ:0.57μm
直径:10〜20nm
図6は、各実施例及び各比較例におけるカーボンナノチューブの長さとカーボンナノチューブ形成処理の実施時間との関係を示すものである。つまり、微粒子層32Pを構成する微粒子に対する処理が、カーボンナノチューブ33の成長速度にどのように影響するかを示すものである。
【0073】
図6に記載のように、Nプラズマで処理したときの長さL(実施例1)を黒丸(●)で示し、且つ、プラズマ処理を実施しなかったときの長さL(比較例1)を白四角(□)で示し、且つ、水素プラズマで処理したときの長さL(比較例2)を黒四角(■)で示している。また、酸素プラズマで処理したときの長さL(比較例3)を白三角(△)で示し、且つ、Arプラズマで処理したときの長さL(比較例4)を黒三角(▲)で示している。
【0074】
図6に示されるように、Nプラズマで触媒金属層32を処理した場合、カーボンナノチューブ形成処理の開始から15分後、30分後、及び45分後のカーボンナノチューブの長さLは順に、0.45μm、0.90μm、1.35μmである。これに対して、酸素プラズマ処理では、カーボンナノチューブ形成処理の開始から15分後、30分後、及び45分後のカーボンナノチューブの長さLは順に、0.21μm、0.39μm、0.60μmである。Arプラズマ処理では、カーボンナノチューブ形成処理の開始から15分後、30分後、及び45分後のカーボンナノチューブの長さLは順に、0.19μm、0.38μm、0.57μmである。プラズマ処理を実施しなかったときではカーボンナノチューブ形成処理の開始から15分後、30分後、及び45分後のカーボンナノチュー
ブの長さLは順に、0.10μm、0.22μm、0.33μmである。他方、水素プラズマで触媒金属層32を処理した場合、カーボンナノチューブ形成処理の開始時から終了時まで、カーボンナノチューブ33の形成及び成長が認められない。
【0075】
プラズマ、Oプラズマ、及びArプラズマによって処理をした場合には、プラズマ処理を実施しなかった場合と比較して、カーボンナノチューブ33の成長速度が高くなることから、プラズマ処理そのものによって成長速度が速くなると考えられる。このうち、Nプラズマによって処理をすると、他のプラズマで処理をした場合よりもカーボンナノチューブ33の成長速度が速くなることから、窒化による特有の効果、すなわち、上述のような窒化による成長反応の促進効果があると言える。他方、Hプラズマによって処理をした場合には、触媒金属層32が還元された後に、触媒金属層32の表面に位置する結合が、水素原子との結合によって終端される。これにより、触媒金属が有する触媒としての活性が失われるため、カーボンナノチューブ33の形成及び成長がほとんど起こらないと考えられる。
【0076】
表1に、上述の各種プラズマでの処理を実施したときのカーボンナノチューブの形成密度を示す。なお、水素プラズマ処理を実施した場合には、上述のように、カーボンナノチューブがほとんど形成されないことから、Hプラズマ処理を実施したときのカーボンナノチューブの形成密度は測定していない。また、先の図6と同様、昇温処理及びカーボンナノチューブ形成処理については、上述の条件にて実施している。
【0077】
【表1】

表1に示されるように、プラズマ処理を実施しないときの密度が、3×1011本/cmであるのに対し、Nプラズマによる処理、あるいはArプラズマによる処理を実施した場合はそれぞれ、1×1012本/cm、あるいは6×1011本/cmである。このように、Nプラズマ、あるいはArプラズマによって処理をした場合、プラズマ処理を実施しない場合と比較してカーボンナノチューブ33の形成密度が高くなっていることから、これらのプラズマで処理した場合には、より径が小さいより多くの微粒子によって微粒子層32Pが構成されていると言える。これは、以下のような理由によるものと考えられる。NプラズマやArプラズマに含まれる粒子が触媒金属層32に供給されることにより、触媒金属層32を構成する金属元素同士の結合が切断される。そのため、触媒金属層32における結晶粒界が細分化されることで、昇温処理の結果形成される微粒子の径が小さくなるからである。他方、Oプラズマによって処理をした場合のカーボンナノチューブの形成密度は、3×1011本/cmであり、プラズマ処理をしない場合と略同様である。これは、Oプラズマによって処理された場合、触媒金属層32における結晶粒界がプラズマによって細分化される一方、同結晶粒界が酸素によって架橋される等することによって、触媒金属層32を形成する金属元素の結合体が細分化されないためと
考えられる。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られるようになる。
(1)炭化水素ガスの1つであるCを熱分解してカーボンナノチューブ33を形成する処理に先立って、窒化された触媒金属の微粒子で構成される微粒子層32Pを形成する工程を実施するようにした。これにより、形成処理におけるカーボンナノチューブ33の成長速度を速めることができる。
【0079】
(2)カーボンナノチューブ33の形成処理に際して、Cガスを熱分解する、いわゆる熱CVD法を用いるようにした。そのため、例えばプラズマCVD法によってカーボンナノチューブ33を形成する工程と比較して、分解されたCの励起種の存在する領域が微粒子層上に限られることになる。そして、カーボンナノチューブ33の形成反応が起こる微粒子層32Pの近傍のみが励起種の存在領域となる。これにより、気相中等で形成される炭素の単体あるいは炭素の化合物が減るため、パーティクルの発生量を抑制することが可能である。
【0080】
(3)触媒金属層32をNガスのプラズマで窒化した後に、加熱して微粒子化するようにした。これにより、より粒径が小さい微粒子を形成することができる。しかも、同方法によれば、触媒金属を窒化しつつ、微粒子の粒径を縮小することが単一の処理にて可能となる。つまり、より密度の高いカーボンナノチューブ33を速い成長速度で形成することと、カーボンナノチューブ33の形成に必要とされる手順、及び装置の煩雑化を抑制することとの両立を図ることが可能となる。
【0081】
なお、上記実施の形態は、以下のように適宜変更して実施することも可能である。
・上記実施の形態では、触媒金属層32に窒化処理を施して窒化金属層32Nを形成した後に、昇温処理を施すことによって微粒子層32Pを形成するようにした。これを変更して、図7に示されるように、まず基板P0の温度を室温に維持しつつ、上述した各種触媒金属の形成に用いられるターゲットを、Nガスによってスパッタする反応性スパッタによって窒化金属膜を形成する。続いて、昇温処理とカーボンナノチューブ形成処理とを実施することによって、カーボンナノチューブを形成することができる。こうしたカーボンナノチューブの形成方法によれば、上記(1)及び(2)の効果に加えて、以下に記載する(4)の効果が得られるようになる。
【0082】
(4)金属微粒子の触媒活性を高める窒化処理が、微粒子層の前駆体である金属膜の形成と同時に行われる。これにより、金属膜の窒化が均一に進行するため、触媒活性の向上も微粒子膜の全体にわたって均一になる。その結果、触媒金属の窒化物から形成されるカーボンナノチューブの長さのばらつきも抑制することができる。
【0083】
・上記実施の形態では、窒化処理を実施した後に、昇温処理を実施するようにした。これを変更して、図8に示されるように、まず昇温処理を実施することによって触媒金属層から微粒子層を形成した後に、窒化処理を実施することによって微粒子膜を構成する微粒子の窒化を行うようにしてもよい。これにより、上記(1)及び(2)の効果に加えて、以下に記載する(5)の効果が得られるようになる。
【0084】
(5)微粒子化によって表面積が大きくなった触媒金属に対して窒化処理が行われることになるため、金属原子とNプラズマとの反応が起こりやすくなる。それゆえに、触媒金属の窒化がより確実に行われることになり、金属微粒子の触媒活性が高められやすくなる。
【0085】
・下地基板Sとしては、半導体素子が設けられたシリコン基板や酸化ケイ素基板に限らず、他の基板、例えば石英基板等を用いることができる。
・NガスやArガスからプラズマを生成する際のプラズマ源としてマイクロ波電源GEを用いるようにした。これを変更して、プラズマ源の出力する高周波がマイクロ波帯域以外の帯域であってもよい。その際には、容量結合型、あるいは誘導結合型等、プラズマ生成機構として公知の構成を採用すればよい。
【0086】
・Cガスを希釈するガスとしてArガスを用いるようにしたが、これに限らず、例えばヘリウム(He)ガス、キセノン(Xe)ガス、あるいはクリプトン(Kr)ガス等の不活性ガスを用いるようにしてもよい。
【0087】
・窒化処理にはNガスを用いるようにした。これに限らず、窒化処理にて用いるガスは、窒素を含有し、且つ水素を含有しないガスである窒素含有ガスであればよく、例えば三フッ化窒素(NF)ガス、酸化窒素(NO)ガス等を用いることができる。
【0088】
・下地基板と微粒子層との密着性が十分に得られる構成であれば、中間層31が割愛される構成であってもよい。
・触媒金属からなる金属層の表面と大気等との接触によって形成された触媒金属の酸化物が窒化処理の後に残存する構成であってもよい。このような構成であっても、触媒金属の窒化物が微粒子層に含まれる以上、上記(1)及び(2)に準じた効果を得ることが可能である。
【0089】
・触媒金属からなる金属層が窒化処理によって窒化される構成であれば、窒化中間層31Nが形成されない構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1)及び(2)と同様な効果を得ることが可能である。
【0090】
・炭化水素含有ガスは、例えば炭化水素ガスと希ガスとの混合ガスであってもよく、構成するガス種の中に熱分解によってカーボンナノチューブを形成する炭化水素が含まれるガスであればよい。
【符号の説明】
【0091】
11…真空槽、12…基板ステージ、12a…ヒータ、13…放電管、14…導波管、15…シャワープレート、16…圧力調整部、17…排気部、20…制御部、31…中間層、31N…窒化中間層、32…触媒金属層、32N…窒化金属層、32P…微粒子層、33…カーボンナノチューブ、HC…ヒータコントローラ、MFC1,MFC2,MFC3…マスフローコントローラ、GE…マイクロ波電源、P0…基板、S…下地基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有ガスに含まれる炭化水素を熱分解してカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブの形成方法において、
鉄、ニッケル、及びコバルトの少なくとも1つを含む触媒金属の窒化物からなる微粒子膜を形成する工程と、
前記微粒子膜の温度を前記炭化水素が熱分解される温度に維持して前記炭化水素を前記微粒子膜で熱分解することにより前記微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成する工程とを含み、
前記微粒子膜を形成する工程では、
窒素を含み、且つ水素を含まないガスである窒素含有ガスからなるプラズマによって前記触媒金属を窒化する窒化処理、及び、前記炭化水素を熱分解する温度未満に前記触媒金属を加熱して該触媒金属を微粒子化する微粒子化処理を実施する
ことを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、
前記窒化処理が、前記触媒金属からなる金属膜を、前記窒素含有ガスからなるプラズマによって窒化する処理であり、
前記微粒子化処理が、前記窒化処理によって窒化された金属膜を、前記炭化水素が熱分解される温度未満に加熱する処理である
ことを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、
前記窒化処理が、前記触媒金属からなるターゲットを前記窒素含有ガスからなるプラズマ中でスパッタして前記触媒金属の窒化物からなる窒化金属膜を形成する処理であり、
前記微粒子化処理が、前記窒化処理によって形成された前記窒化金属膜を、前記炭化水素が熱分解される温度未満に加熱する処理である
ことを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のカーボンナノチューブの形成方法において、
前記微粒子化処理が、前記触媒金属からなる金属膜を、前記炭化水素を熱分解する温度未満に加熱して該触媒金属を微粒子化する処理であり、
前記窒化処理が、前記微粒子化処理によって微粒子化された触媒金属を、窒素含有ガスからなるプラズマによって窒化する処理である
ことを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項5】
表面に微粒子膜を有した形成対象を収容する真空槽と、
炭化水素を含む炭化水素含有ガスを前記真空槽に供給する炭化水素含有ガス供給部と、
前記形成対象を前記真空槽内で加熱する加熱部とを備え、
前記加熱部によって加熱された前記微粒子膜で前記炭化水素を熱分解して前記微粒子膜上にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブの形成装置において、
窒素を含み、且つ水素を含まない窒素含有ガスを前記真空槽内でプラズマ化する窒素プラズマ生成部と、
鉄、ニッケル、及びコバルトの少なくとも1つを含む触媒金属に対し、前記窒素プラズマ生成部を駆動して窒素プラズマによって前記触媒金属を窒化する窒化処理と、前記加熱部を駆動して前記炭化水素を熱分解する温度未満に前記触媒金属を加熱することにより該触媒金属を微粒子化する微粒子化処理とを実行して、窒化された触媒金属の微粒子によって前記微粒子膜を形成する制御部とを備える
ことを特徴とするカーボンナノチューブの形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−246317(P2011−246317A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122871(P2010−122871)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】