説明

カーボンナノチューブバルク素材及びその製造方法

【課題】優れた機械的強度を有するカーボンナノチューブバルク素材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブバルク素材100は、マトリックスを構成するカーボンナノチューブ110と、上記カーボンナノチューブの間に介在される高分子結合剤120とを含み、上記高分子結合剤は、高分子バックボーンと、上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされ、且つ1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含む1つ以上の有機モイアティ(moiety)とを含む。カーボンナノチューブバルク素材の製造方法は、高分子結合剤を揮発性溶媒に溶解した高分子結合剤溶液を、カーボンナノチューブエアロゲルに浸透させる段階と、揮発性溶媒を除去し、カーボンナノチューブエアロゲルを緻密化させる段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブバルク素材及びその製造方法に関し、より詳細には、優れた機械的強度を有するカーボンナノチューブバルク素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、数十GPa級の高い強度と1TPa級の弾性係数を有し、既存の炭素繊維より優れた電気伝導度と熱伝導度を示すなどその特性が非常に優れている。カーボンナノチューブのバルク化工程に関する様々な研究が数年間行われてきた。特にカーボンナノチューブバルク素材中でも、カーボンナノチューブ繊維に関する研究が米国のR.H.Baughmanグループ(M. Zhang et al, Science 306, 1358 (2004))と中国のS.Fan研究グループ(X. Zhang et al, Adv. Mater. 18, 1505 (2006))によって進行されたが、カーボンナノチューブ間の脆弱な結合力に起因してカーボンナノチューブ固有の性質に至らない結果を得た。したがって、カーボンナノチューブ固有の優れた特性を発現することができるように、カーボンナノチューブバルク素材の性能改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、優れた機械的強度を有するカーボンナノチューブバルク素材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によるカーボンナノチューブバルク素材は、マトリックスを構成するカーボンナノチューブと、上記カーボンナノチューブの間に介在される高分子結合剤とを含み、上記高分子結合剤は、高分子バックボーンと、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基(芳香族官能基)を含み、且つ上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティ(moiety)とを含む。
【0005】
本発明の他の態様によるカーボンナノチューブバルク素材の製造方法は、カーボンナノチューブエアロゲルをマトリックスとして提供する段階と、高分子バックボーンと、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含み、且つ上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティとを含む高分子結合剤を揮発性溶媒に溶解した高分子結合剤溶液を提供する段階と、上記カーボンナノチューブエアロゲルに上記高分子結合剤溶液を浸透させる段階と、上記揮発性溶媒を除去し、上記カーボンナノチューブエアロゲルを緻密化させる段階と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるカーボンナノチューブバルク素材は、従来のカーボンナノチューブバルク素材の脆弱な結合力を解決し、非常に高い強度を有することができるので、宇宙エレベーター及び人工筋肉などのような超軽量高強度素材に使用されることができ、電子繊維(E-textile)、バイオセンサー、スーパーキャパシタ、電界放出ディスプレイ(FED)などに高強度機能性素材として使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例によるカーボンナノチューブバルク素材を示す概略図である。
【図2】カーボンナノチューブバルク素材の製造方法の一実施例を示す工程流れ図である。
【図3】本発明の実施例1によって製造されたカーボンナノチューブバルク素材の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】本発明の実施例2によって製造されたカーボンナノチューブバルク素材の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】本発明の実施例2及び比較例2で製造されたシート形状の垂直配向されたカーボンナノチューブバルク素材に対するX線光電子分光法(XPS)分析結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1及び比較例1で製造された紡績糸形状カーボンナノチューブバルク素材の引張試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施例によるカーボンナノチューブバルク素材を示す概略図である。図1を参照すれば、カーボンナノチューブバルク素材100は、マトリックスがカーボンナノチューブ110よりなり、カーボンナノチューブ110の間に介在された高分子結合剤120を含むことができる。
【0010】
カーボンナノチューブ110は、単一壁のカーボンナノチューブまたは多重壁のカーボンナノチューブを使用することができる。カーボンナノチューブ110は、電気放電法(arc-discharge)、レーザー蒸着法(laser evaporation)、プラズマ化学気相蒸着法(plasma enhanced chemical vapor deposition)、熱化学気相蒸着法(thermal chemical vapor deposition)、気相合成法(vapor phase growth)、電気分解法(electrolysis)などの方法で生成されることができ、3乃至40nmの直径及び数nm乃至数mmの長さを有することができる。
【0011】
高分子結合剤120は、高分子バックボーンと、上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティとを含むことができる。上記有機モイアティは、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含むことができる。上記高分子が具備する特定の地点(例えば、N、O)を通じて上記有機モイアティが上記高分子バックボーンにグラフトされることができる。上記高分子の重量平均分子量は、バルク素材の形成に適した粘度と作業性を有するものなら特に制限されないが、一般的に500乃至1,000,000、好ましくは1,000乃至100,000の範囲で選択されることができる。
【0012】
上記高分子は、親水性高分子を使用することができる。上記親水性高分子は、当業者に知られた任意の親水性高分子を含むことができる。上記親水性高分子は、非制限的に、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、及び鹸化ポリエチレン−ビニルアセテート共重合体を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0013】
高分子結合剤120は、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含む有機モイアティを有することができるので、カーボンナノチューブ110の間に介在される場合、カーボンナノチューブ110と高分子結合剤120との間にファンデルワールス引力より強い引力が作用することができる。さらに詳細には、上記引力は、上記有機モイアティ内のヒドロキシ基及び芳香族基によって、カーボンナノチューブとのπ−π相互作用、機能基化されたカーボンナノチューブのヒドロキシ基との水素結合及び共有結合を含むことができる。また、上記引力は、合成されたカーボンナノチューブに存在する触媒による金属結合を含むことができる。上記引力の作用によって、カーボンナノチューブ110と高分子結合剤120との間に強い結合が形成され、高分子結合剤120を媒介にしてカーボンナノチューブ110間の結合を強力にすることができる。つまり、カーボンナノチューブバルク素材100の機械的強度を高くすることができる。
【0014】
上記有機モイアティは、上記高分子内の特定の結合地点を通じて上記高分子バックボーンにグラフトされることができる。上記特定の結合地点は、例えば、上記高分子内の−OHや−NH、COHのような作用基になることができる。上記有機モイアティのグラフト割合(%)によって上記カーボンナノチューブバルク素材100の機械的強度が変わることができる。上記グラフト割合(%)は、高分子の全体作用基個数に対するグラフトされた上記有機モイアティの個数の割合であって、UV分光器またはH−NMRで測定されることができ、1乃至90%、好ましくは、1乃至50%、さらに好ましくは、25%であることができる。1%未満では、接着力が低く、90%を超過すれば、上記有機モイアティがドメインの形態で存在し、接着力が低い。上記高分子の重量平均分子量及び上記グラフト割合%によって高分子結合剤120の重量平均分子量も決定されることができる。
【0015】
上記有機モイアティが含むC−C24芳香族作用基は、C−C24アリール基またはC−C24ヘテロアリール基であることができる。上記C−C24アリール基は、1つ以上の芳香族環を含む6乃至24個の炭素原子を含むカルボサイクル芳香族系を意味する。上記C−C24ヘテロアリール基は、N、O、PまたはSのうち選択された1つ以上のヘテロ原子を含み、3乃至24個の炭素を含有する。上記芳香族環及びヘテロ芳香族環は、単一のシグマ結合によってペンダント方式で付着されるか、または、2つのシグマ結合によって融合されることができる。
【0016】
上記芳香族作用基の1つ以上の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されることができる。上記ヒドロキシ基による置換によって、C−C24芳香族作用基は、1つ以上のヒドロキシ基を有することができ、つまり、カーボンナノチューブ110と高分子結合剤120との接着力をさらに高くすることができる。上記1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基として、フェノール基、カテコール基、及びガロール基などを単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0017】
上記有機モイアティは、下記化学式1で示されることができる。
【0018】
(化学式1)
【化1】

【0019】
上記化学式1において、*は、上記高分子バックボーンとの結合地点を示すものである。
【0020】
上記Lは、−C(=O)−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−及び−NH−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−よりなる群から選択された連結基であることができる。
ここで、上記a、c、d及びfは、互いに独立的に、0乃至20の整数であり、上記b、eは、互いに独立的に、0または1の整数であることができる。
【0021】
上記Arは、C−C24アリール基またはC−C24ヘテロアリール基であることができる。上記C−C24アリール基の具体的な例として、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル及びテトラヒドロナフチルなどを挙げることができる。上記C−C24ヘテロアリール基の具体的な例として、ピリジン(pyridine)、ピロール(pyrrole)、ピリミジン(pyrimidine)、キノリン(quinoline)、イソキノリン(isoquinoline)、イミダゾール(imidazole)、チアゾール(thiazole)、ピペラジン(piperazine)、ピラゾール(pyrazole)、インドール(indole)、プリン(purine)、フラン(furan)、チオフェン(thiophene)などを挙げることができる。
【0022】
上記nは、上記Arに結合されることができるヒドロキシ基の個数であって、1乃至17の整数であることができる。
【0023】
例えば、上記有機モイアティは、下記化学式1a、1b及び1cのうちいずれか1つであることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
(化学式1a)
【化2】

【0025】
(化学式1b)
【化3】

【0026】
(化学式1c)
【化4】

【0027】
高分子結合剤120は、上記化学式1a乃至1cを含み、前述した有機モイアティがグラフトされた高分子であることができる。例えば、高分子結合剤120は、下記化学式2aまたは2bのような繰り返し単位を含むことができる。
【0028】
(化学式2a)
【化5】

【0029】
(化学式2b)
【化6】

【0030】
高分子結合剤120は、100質量部のカーボンナノチューブ110に対して1乃至100質量部、好ましくは、5乃至50質量部、さらに好ましくは、10乃至25質量部が使用されることができる。上記範囲で優れた接着力が実現されることができる。
【0031】
上記カーボンナノチューブバルク素材は、歪みゲージ(ゲージ長さ=1cm)を利用して0.1mm/分の速度で引張強度試験を行うとき、引張強度が800乃至1400MPa、モジュラスが80乃至140GPaであることができる。
【0032】
以下、本発明の一実施例によるカーボンナノチューブバルク素材の製造方法について説明する。
【0033】
図2は、カーボンナノチューブバルク素材製造方法の一実施例を示す工程流れ図である。図2を参照すれば、段階S1で、カーボンナノチューブエアロゲルをマトリックスとして提供する。上記カーボンナノチューブエアロゲルは、紡績糸形状またはシート形状の性状を有することができる。上記カーボンナノチューブエアロゲルは、様々な公知の方法で製造されることができる。例えば、カーボンナノチューブエアロゲルの1つであるカーボンナノチューブフォレスト(forest)の場合、シリコンウェーハ基板の上に触媒を蒸着した後、炭素原料ガスを供給し、化学気相蒸着を通じて製造されることができる。このように形成されたカーボンナノチューブフォレストをマトリックスにしてカーボンナノチューブバルク素材の合成に利用することができる。他の例として、カーボンナノチューブフォレストをドライ工程またはウェット工程を通じてカーボンナノチューブ繊維形態で形成し、これをカーボンナノチューブバルク素材の合成に使用することもできる。また、他の例として、上記カーボンナノチューブエアロゲルの例として、カーボンナノチューブ薄膜またはカーボンナノチューブバッキーペーパー(buckypaper)を使用することもできる。例えば、カーボンナノチューブを界面活性剤が入っている水溶液に分散させた後、真空濾過して水溶媒を除去し、濾紙上に生成されたフィルムを分離することによって、カーボンナノチューブバッキーペーパーを得て、これを使用することもできる。
【0034】
段階S2で、高分子結合剤を揮発性溶媒に溶解した高分子結合剤溶液を提供する。上記高分子結合剤は、高分子バックボーンと、上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティとを含む。上記1つ以上の有機モイアティは、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含む。上記揮発性溶媒は、上記高分子結合剤を溶解することができ、以後に除去が容易であれば、特に制限されないが、メタノール、エタノール、またはイソプロピルアルコールなどを使用することができる。上記揮発性溶媒に上記高分子結合剤を作業に適切な濃度、例えば、0.01乃至50質量%で溶解し、溶液を形成して使用することができる。
【0035】
段階S3で、上記カーボンナノチューブエアロゲルに上記高分子結合剤溶液を浸透させる。上記高分子結合剤溶液が上記カーボンナノチューブエアロゲルと接触すれば、毛細管効果によってカーボンナノチューブの間に浸透されることによって、前述したように、カーボンナノチューブの間に結合力が増大することができる。
【0036】
段階S4で、上記揮発性溶媒を除去し、上記カーボンナノチューブエアロゲルを緻密化させることによって、カーボンナノチューブバルク素材を得ることができる。例えば、真空オーブンで50〜90℃で1〜3時間乾燥させることによって、上記揮発性溶媒が除去されることができる。上記揮発性溶媒の蒸発によって、表面エネルギーによるカーボンナノチューブバルク素材の緻密化が可能である。
【0037】
緻密化段階を経て完成された上記カーボンナノチューブバルク素材は、前述したように多様なエアロゲルから形成されることができる。例えば、基板の上に生成されたカーボンナノチューブフォレストをマトリックスにして高分子結合剤溶液を浸透させて、シート形状の垂直配向されたカーボンナノチューブバルク素材を製造することもできる。他の例として、カーボンナノチューブフォレストからカーボンナノチューブ繊維を引き出して、これに高分子結合剤溶液を浸透させて、紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材を製造することもできる。さらに他の例として、カーボンナノチューブをスピンコーティング、スプレーコーティング、ラングミュア-ブロジェット(Langmuir-Blodgett)蒸着、真空濾過などの方式で形成したカーボンナノチューブ膜に高分子結合剤溶液を浸透させて、いわゆるカーボンナノチューブバッキーペーパーの形態を有するシート形状のカーボンナノチューブバルク素材を製造することもできる。
【0038】
上記カーボンナノチューブバルク素材の強度は、高分子の種類、上記高分子にグラフトされる上記有機モイアティの種類及びグラフト率、全体カーボンナノチューブバルク素材に含まれた上記高分子結合剤の質量部などによって変化することができる。
【0039】
前述したカーボンナノチューブバルク素材は、従来のカーボンナノチューブバルク素材の脆弱な結合力を解決し、非常に高い強度を有することができるので、宇宙エレベーター及び人工筋肉などのような超軽量高強度素材に使用されることができ、電子繊維(E-textile)、バイオセンサー、スーパーキャパシタ、電界放出ディスプレイ(FED)などに高強度機能性素材として使用されることができる。
【0040】
以下、本発明の実施例によりさらに詳しく説明するが、下記実施例は、理解を助けるために提示されるものであって、本発明の思想が下記実施例にのみ限定されるものではない。
【0041】
(製造例1)
下記のように混合物1、2及び3を準備した:
混合物1:41.2mgのジヒドロキシベンゼンプロパン酸(3、4-dihydroxybenzenepropanoic acid)を10mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。
混合物2:42.5mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride;EDC)を30mLのメタノールに溶解させた。
混合物3:1gのポリエチレンイミン(PEI)(Mwは、約25,000である)を30mLのメタノールに溶解させた。
【0042】
上記混合物1と2を混合し、ジヒドロキシベンゼンプロパン酸をEDCで30分間活性化させた後、これから得た結果物に上記混合物3を添加し、12時間反応させた。これから得た結果物をジエチルエーテルで2回沈殿させて得た沈殿物を脱イオン水(pHは約5以下に調節される)に溶解させた後、脱イオン水に対して24時間透析させた後、冷凍乾燥させて、サンプル1(ジヒドロキシベンゼンプロパン酸がグラフトされたPEIであり、グラフト割合=28%)を8.7g収得した。
【0043】
(製造例2)
上記混合物1のうちジヒドロキシベンゼンプロパン酸の含量を15mgに調節したことを除いて、上記製造例1と同一の方法を利用して、サンプル2(ジヒドロキシベンゼンプロパン酸がグラフトされたPEIであり、グラフト割合=7.47%)を8.3g収得した。
【0044】
(実施例1)
シリコンウェーハの上にスパッタリング装置を利用してAlバッファー層とFe触媒を3nm〜10nmの厚さで蒸着した後、化学気相蒸着法を使用して反応温度を650〜800℃に制御し、反応時間を15〜60分に調節して、カーボンナノチューブフォレスト(forest)を製造した。このように製造されたカーボンナノチューブフォレストからナノ繊維紡績糸を紡績(spinning)工程を通じて得た。メタノールに上記サンプル1を10質量%溶解した溶液を上記ナノ繊維紡績糸に浸透させて、紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材を製造した。
【0045】
(比較例1)
上記紡績工程後、メタノール溶媒のみを使用してナノ繊維紡績糸に浸透させて緻密化させることを除いて、上記実施例1と同一の方法で紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材を製造した。
【0046】
(実施例2)
上記実施例1と同一の製造工程によってカーボンナノチューブフォレストをシリコンウェーハの上に製造した。メタノールに上記サンプル2を20質量%溶解した溶液を上記カーボンナノチューブフォレストに浸透させて、シート形状の垂直配向された(super-aligned)カーボンナノチューブバルク素材を製造した。
【0047】
(比較例2)
メタノール溶媒のみを使用してカーボンナノチューブフォレストに浸透させて緻密化させることを除いて、上記実施例2と同一の方法でシート形状の垂直配向されたカーボンナノチューブバルク素材を製造した。
【0048】
(実施例3)
ラウリル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate;SDS)界面活性剤を1質量%濃度に溶解した水にカーボンナノチューブ(HiPCO、Carbon Nanotechnologies Incorporated)5mg/mLの濃度になるように投入した後、4時間超音波処理を行い、水に分散させて、カーボンナノチューブ水分散液を製造した。上記水分散液を真空濾過した後、2時間80℃で乾燥させることによって、濾過紙の上にカーボンナノチューブバッキーペーパーを製造した。エタノールに上記サンプル2を20質量%溶解した溶液を製造されたカーボンナノチューブバッキーペーパーに浸透させて、シート形状のカーボンナノチューブバルク素材を製造した。
【0049】
上記実施例1及び2により製造されたカーボンナノチューブバルク素材の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図3及び図4に各々示した。
【0050】
(実験例1)カーボンナノチューブバルク素材の組成分析
上記実施例2及び比較例2で製造されたシート形状の垂直配向されたカーボンナノチューブバルク素材の組成をX線光電子分光法(XPS)を通じて分析し、その結果を図5に示した。図5を参照すれば、高分子結合剤処理を実施した実施例2(結合エネルギー500eVでのカウントが高い方)のカーボンナノチューブバルク素材の場合、比較例2のカーボンナノチューブバルク素材に比べて炭素含量が高く現われるので、高分子結合剤がカーボンナノチューブバルク素材に均一に侵透していることを確認することができる。
【0051】
(実験例2)カーボンナノチューブバルク素材の引張強度測定
上記実施例1及び比較例1で製造されたエアロゲル状態の紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材の引張強度試験を行った。引張試験は、歪みゲージ(ゲージ長さ=1cm)を利用して0.1mm/分の速度で引っ張りながら測定した。図6は、実施例1及び比較例1で製造された紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材の引張試験結果を示すグラフである。図6を参照すれば、実施例1(工学的歪み0.005での工学的応力が高い方)の紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材の場合、引張強度は、1180MPaであり、モジュラスは、120GPaであって、比較例1の紡績糸形状のカーボンナノチューブバルク素材の引張強度320MPa、モジュラス28GPaより大きく増加することを確認することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 カーボンナノチューブバルク素材
110 カーボンナノチューブ
120 高分子結合剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスを構成するカーボンナノチューブと、
上記カーボンナノチューブの間に介在される高分子結合剤と、を含み、
上記高分子結合剤は、高分子バックボーンと、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含み、且つ上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティと、を含むカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項2】
上記マトリックスは、紡績糸形状またはシート形状のカーボンナノチューブエアロゲルであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項3】
上記高分子結合剤は、上記カーボンナノチューブ100質量部に対して1乃至100質量部が含まれることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項4】
上記高分子の重量平均分子量は、500乃至1,000,000であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項5】
上記高分子は、親水性高分子であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項6】
上記親水性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、及び鹸化ポリエチレン−ビニルアセテート共重合体よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項7】
上記1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基が、フェノール基、カテコール基、及びガロール基よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項8】
上記有機モイアティが下記化学式1で示されることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材:
(化学式1)
【化1】


上記化学式1において、*は、上記高分子バックボーンとの結合地点を示すものであり、
上記Lは、−C(=O)−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−及び−NH−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−よりなる群から選択された連結基であることができる。
ここで、上記a、c、d及びfは、互いに独立的に0乃至20の整数であり、上記b、eは、互いに独立的に0または1の整数であり、
上記Arは、C−C24アリール基またはC−C24ヘテロアリール基であり、
上記nは、1乃至17の整数である。
【請求項9】
上記高分子結合剤は、下記化学式2aまたは2bの繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
(化学式2a)
【化2】


(化学式2b)
【化3】

【請求項10】
上記有機モイアティのグラフト割合は、1乃至90%であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項11】
歪みゲージ(ゲージ長さ=1cm)を利用して0.1mm/分の速度で引張強度試験を行うとき、引張強度が800乃至1400MPa、モジュラスが80乃至140GPaであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のカーボンナノチューブバルク素材。
【請求項12】
カーボンナノチューブエアロゲルをマトリックスとして提供する段階と、
高分子バックボーンと、1つ以上のヒドロキシ基が結合されたC−C24芳香族作用基を含み、且つ上記高分子バックボーンの末端または側面にグラフトされる1つ以上の有機モイアティと、を含む高分子結合剤を揮発性溶媒に溶解した高分子結合剤溶液を提供する段階と、
上記カーボンナノチューブエアロゲルに上記高分子結合剤溶液を浸透させる段階と、
上記揮発性溶媒を除去し、上記カーボンナノチューブエアロゲルを緻密化させる段階と、を含むカーボンナノチューブバルク素材の製造方法。
【請求項13】
上記有機モイアティが下記化学式1で示されることを特徴とする請求項12に記載のカーボンナノチューブバルク素材の製造方法:
(化学式1)
【化4】


上記化学式1において、*は、上記高分子バックボーンとの結合地点を示すものであり、
上記Lは、−C(=O)−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−及び−NH−(CHCHO)−(C(=O)NH)−(CH−よりなる群から選択された連結基であることができる。
ここで、上記a、c、d及びfは、互いに独立的に0乃至20の整数であり、上記b、eは、互いに独立的に0または1の整数であり、
上記Arは、C−C24アリール基またはC−C24ヘテロアリール基であり、
上記nは、1乃至17の整数である。
【請求項14】
上記揮発性溶媒は、メタノール、エタノール、またはイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項12に記載のカーボンナノチューブバルク素材の製造方法。
【請求項15】
上記高分子結合剤溶液の濃度は、0.01乃至50質量%であることを特徴とする請求項12に記載のカーボンナノチューブバルク素材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275178(P2010−275178A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25320(P2010−25320)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】