説明

カーボンナノチューブ並走集合体、炭素系電極、蓄電デバイスおよびカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法

【課題】欠損状細孔を側面に有するカーボンナノチューブで形成されたカーボンナノチューブ並走集合体、その製造方法、炭素系電極および蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ並走集合体は、同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させて形成されている。カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えている。I/I比率は0.80以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のカーボンナノチューブの向きが同じ方向に揃うように集合されたカーボンナノチューブ並走集合体、カーボンナノチューブ並走集合体を備える炭素系電極、蓄電デバイス、および、カーボンナノチューブ並走集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、近年着目されている炭素材料である。特許文献1には、基板温度を675〜750℃にした状態で、CVD処理することにより、多数個のカーボンナノチューブを並列させつつ基板に対してほぼ垂直となるように基板の表面に成長させたカーボンナノチューブ並走集合体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、基板の表面に植毛状に形成された多数個のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ群と、カーボンナノチューブ群のうち基板側の根元を連結する金属膜とを有するカーボンナノチューブ並走集合体が開示されている。このものによれば、カーボンナノチューブの成長温度よりも高い融点をもつ金属の膜を形成し、この金属膜の上に触媒を設け、この状態で、原料ガスによりカーボンナノチューブを基板の表面において成長させ、次に、カーボンナノチューブの成長温度よりも高い温度で金属を溶融させ、その後固化させ、これによりカーボンナノチューブの根元部を金属で被覆固定させることにしている。特許文献3には、シリコン基板の表面に対して垂直の配向を維持させつつ多数のカーボンナノチューブをシリコン基板の表面に超高密度に集合させた多層カーボンナノチューブの集合構造が開示されている。
【0004】
特許文献4には、成長させたカーボンナノチューブの集合体を圧密化二次加工として水等の液体に晒した後に、乾燥させることによりカーボンナノチューブ並走集合体を圧縮させる圧縮工程を経て高密度化させるカーボンナノチューブ並走集合体の製造技術が開示されている。このものによれば、カーボンナノチューブを成長させた後に圧密化二次加工すれば、カーボンナノチューブ並走集合体を高密度化させることができるとしている。更に、特許文献4には、機械的な外部圧力を加えて圧縮させる圧縮加工を圧密化二次加工としてカーボンナノチューブ並走集合体に作用させて高密度化させる技術も開示されている。
【0005】
更に、特許文献5には、カーボンナノ構造体を形成し、その後、カーボンナノ構造体に液状溶媒に分散させた状態において後処理として超音波を3〜6時間程度カーボンナノ構造体に照射させることにより、カーボンナノ構造体のグラファイト層である炭素六員環配列構造(グラフェンシート)に、欠陥として欠損状細孔を積極的に形成する技術が開示されている。このものによれば、カーボンナノ構造体のグラファイト層を他の成分を付加させる修飾を効果的に行い得る旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−220674号公報
【特許文献2】特開2007−76925号公報
【特許文献3】特開2008−120658号公報
【特許文献4】特開2007−182352号公報
【特許文献5】特開2003−205499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、カーボンナノチューブは、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、リチウムイオン電池等の電池に代表される蓄電デバイスにおける炭素系電極として利用することが考えられている。更に、カーボンナノチューブを更なる用途に適用する試みがなされている。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、多数のカーボンナノチューブを同じ方向に並設状態に揃えた並走配向性を有するカーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブの側面に欠損状細孔を積極的に形成させることにより、カーボンナノチューブ並走集合体の更なる用途開発に貢献できるカーボンナノチューブ並走集合体、炭素系電極、蓄電デバイス、および、カーボンナノチューブ並走集合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の様相1に係るカーボンナノチューブ並走集合体は、同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体であって、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成する各カーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えており、I/Iは0.80以上であることを特徴とする。ここで、Iは、ラマン分光法のラマンスペクトルにおいて、D-bandにおける散乱光の強度(Intensity)を示し、Iは、G-bandにおける散乱光の強度(Intensity)を示す。カーボンナノチューブは、炭素−炭素結合で形成されたグラフェンシートが筒形状をなしているカーボンナノ構造体である。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが単層である単層カーボンナノチューブ、グラフェンシートが筒状に同軸的に複数積層された多層カーボンナノチューブ、グラフェンシートが円錐筒状のカーボンナノホーンが挙げられる。欠損状細孔は、カーボンナノチューブを構成するグラフェンシートにおいて、炭素−炭素結合において存在するはずの炭素原子が存在していない欠陥部位をいう。欠損状細孔は、グラフェンシートをこれの厚み方向に貫通していても良いし、多層カーボンナノチューブの場合には、炭素原子が欠損しているものの欠損状細孔が貫通していなくても良い。グラフェンシートは炭素六員環配列構造をいい、場合によっては、炭素六員環配列構造に炭素五員環配列構造または炭素七員環配列構造を部分的に含むものでも良い。欠損状細孔の径サイズおよび深さは特に制限されない。
【0010】
カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(as-grownの状態,カーボンナノチューブを成長完了させた時点)において、即ち、欠損状細孔をカーボンナノチューブの側面に積極的に形成させる後処理(例えば超音波照射等)が実行されていない状態で、結晶性を示す(I/I)比率は0.80以上であり、結晶性が低いグラフェンシートでカーボンナノチューブは形成されている。従って、カーボンナノチューブの側面には、欠陥として欠損状細孔が形成されている頻度が高い。これは図3のTEM写真からも確認されている。
【0011】
本様相によれば、I/Iが0.80未満であると、カーボンナノチューブのグラファイト化度は高く、カーボンナノチューブの側面には、欠陥の一種である欠損状細孔が形成されている頻度は少ない。カーボンナノチューブの結晶性が良好過ぎ、カーボンナノチューブの側面に形成されている欠損状細孔が少な過ぎる。従って本様相によれば、I/I比率は0.80以上、0.90以上にでき、更に、1.00以上、1.10以上にできる。上限値としては1.20を例示できる。I/I比率が1.20よりも大きいと、カーボンナノチューブの側面に形成されている欠損状細孔が過剰過ぎ、カーボンナノチューブの劣化が激しい。なお、後述する比較例1では、カーボンナノチューブの結晶性は高く、I/I比率が0.09であり、カーボンナノチューブの側面には、グラフェンシートにおける欠陥の一種である欠損状細孔がほとんど形成されていない。これは図7のTEM写真からも確認されている。カーボンナノチューブ並走集合体の密度は、100mg/cm以上と高密度化されていることが好ましい。この場合、カーボンナノチューブ並走集合体は高密度化されているため、比表面積、集電性および導電性の増加などを期待できる。このようなカーボンナノチューブ並走集合体は、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、あるいは、リチウムイオン電池等の電池に代表される蓄電デバイスにおける炭素系電極(負極あるいは正極)として利用するのに適する。
【0012】
(2)本発明の様相2に係る炭素系電極は、同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体で形成された炭素系電極であって、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えており、I/I比率は0.80以上であることを特徴とする。様相1についての説明を準用する。さらに、カーボンナノチューブ並走集合体の密度は、100mg/cm以上と高密度化され、カーボンナノチューブの本数密度が高くされているが好ましい。
【0013】
(3)本発明の様相3に係る蓄電デバイスは、正極と、負極と、正極および負極間に介在する電解質物質と、正極と負極との間に配置されると共に電解質物質を透過させ且つ正極と負極との電気的短絡を抑えるセパレータと、正極、負極、電解質物質、セパレータを収容する容器とを具備しており、負極および正極のうちの少なくとも一方は、様相1(請求項1または2)に係るカーボンナノチューブ並走集合体を備えていることを特徴とする。カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(as-grownの状態,カーボンナノチューブを成長完了させた時点)において、即ち、欠損状細孔をカーボンナノチューブの側面に形成させる後処理が実行されていない状態で、I/I比率は0.80以上であり、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成されている頻度が高い。I/I比率は0.85以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上にできる。上限値としては1.20を例示できる。カーボンナノチューブ並走集合体の密度は100mg/cm以上と高密度化されていることが好ましい。この場合、カーボンナノチューブ並走集合体は高密度化されているため、比表面積、集電性および導電性の増加などを期待できる。このようなカーボンナノチューブ並走集合体を用いる蓄電デバイスとしては、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタが例として挙げられ、あるいは、リチウムイオン電池等の電池が例として挙げられる。Liイオンを含む電解質物質を有するリチウムイオンキャパシタである蓄電デバイスを採用できる。Caイオン等の二価のイオンを含む電解質物質を有する電気二重層キャパシタである蓄電デバイスを採用でき、蓄電デバイスはリチウムイオンキャパシタでも良い。Caは2価のアルカリ土類金属であるため、電気エネルギの増加を期待できる。Caイオンを含む電解質物質では、基本的には、カルシウム1原子あたり2個の電子が反応に関与する。すなわち、1モル原子のカルシウムの反応では、2モル電子(2ファラデーの電気量)が反応に関与し、キャパシタ等の蓄電デバイスから取り出し得る電気エネルギの増加を期待できる。
【0014】
(4)本発明の様相4に係るカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法は、触媒を基体の表面に形成する工程と、カーボンナノチューブ形成前に、基体をこれの初期温度から600〜650℃に昇温させる昇温工程と、その後、基体の表面に炭素原料ガスを導入させてCVD処理によりカーボンナノチューブ形成反応を発生させてカーボンナノチューブ並走集合体を基体の表面に形成させるカーボンナノチューブ形成工程とを順に実施するカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法であって、カーボンナノチューブ形成工程は、多数のガス導入孔を備えるガス導入部材が基体の表面に対向している状態において、基体の温度を600〜650℃範囲に維持しつつ、多数のガス導入孔から炭素原料ガスを、基体のうち触媒を有する表面に対して交差する方向から表面に衝突させ、当該表面付近において炭素原料ガスの乱流化を促進させつつ、基体の表面に対して立設しつつ同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有すると共に側面に欠損状細孔を形成させ且つI/I比率が0.80以上(超音波等の照射といった後処理無しで、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において)である多数のカーボンナノチューブからなる。
【0015】
本様相によれば、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(as-grownの状態,カーボンナノチューブを成長完了させた時点)において、即ち、欠損状細孔をカーボンナノチューブの側面に形成させる後処理が実行されていない状態で、I/I比率は0.80以上であり、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成されている頻度が高い。I/I比率は0.85以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上にできる。
【0016】
/I比率が0.80よりも低いと、カーボンナノチューブの結晶性は高く、カーボンナノチューブの側面には、欠陥の一種である欠損状細孔が形成されている頻度は少ない。I/I比率の上限としては1.20を例示できる。I/I比率が0.09である後述する比較例1では、カーボンナノチューブの結晶性は高く、カーボンナノチューブの側面には、欠陥の一種である欠損状細孔がほとんど形成されていない。なお、触媒を基体の表面に形成する前に、基体の表面にアルミニウムまたはアルミニウム合金の下地層を形成することが好ましい。この場合、同じ方向に沿って並走しつつ配向する並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを得るのに有利である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の様相1に係るカーボンナノチューブ並走集合体は、同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させて形成されている。このためカーボンナノチューブ並走集合体においてカーボンナノチューブの高密度化に貢献でき、カーボンナノチューブの本数密度の高密度化に貢献できる。本発明に係るカーボンナノチューブ並走集合体によれば、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成されている頻度が高い。この場合、欠損状細孔を介してイオン等がカーボンナノチューブに取り込まれることを期待できる。
【0018】
本発明に係るカーボンナノチューブ並走集合体によれば、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、リチウムイオン電池等の電池等に代表される蓄電デバイスの電極として使用される炭素材料に利用することができる。
【0019】
本発明の様相2に係る炭素系電極は、様相1に係るカーボンナノチューブ並走集合体で形成されている。従って、炭素系電極は、同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させて形成されている。このためカーボンナノチューブ並走集合体においてカーボンナノチューブの高密度化に貢献でき、カーボンナノチューブの本数密度の高密度化に貢献できる。本発明に係る炭素系電極によれば、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成されている頻度が高いため、欠損状細孔を介してイオン等がカーボンナノチューブに取り込まれることを期待できる。本発明に係る炭素系電極によれば、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、リチウムイオン電池等の電池等に代表される蓄電デバイスの電極として使用される炭素材料に利用することができる。
【0020】
様相3に係る蓄電デバイスによれば、負極および正極のうちの少なくとも一方は、様相1(請求項1)に係るカーボンナノチューブ並走集合体を備えている。このためカーボンナノチューブ並走集合体においてカーボンナノチューブの高密度化に貢献でき、カーボンナノチューブの本数密度の高密度化に貢献できる。更に、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成されている頻度が高いため、欠損状細孔を介してイオン等がカーボンナノチューブに取り込まれることを期待できる。本発明の様相4に係るカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法によれば、上記した数々の利点をもつ様相1に係るカーボンナノチューブ並走集合体を良好に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体の概念を示す図である。
【図2】実施例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体を示すSEM写真である。
【図3】実施例1に係り、1本のカーボンナノチューブの側面に細孔が形成されている状態を示すTEM写真である。
【図4】実施例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体を製造する製造装置を示す断面図である。
【図5】実施例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体を形成させるための炭素原料ガスの導入の過程を示すグラフである。
【図6】実施例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体の細孔分布を示すグラフである。
【図7】比較例1に係り、1本のカーボンナノチューブを示すTEM写真である。
【図8】比較例1に係り、カーボンナノチューブ並走集合体の細孔分布を示すグラフである。
【図9】実施例2に係り、キャパシタを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
カーボンナノチューブ並走集合体は、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させた基体と共に使用しても良いし、或いは、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させた基体から離脱させた状態で使用しても良い。
【0023】
本発明でいうカーボンナノチューブ(CNT)は、多層カーボンナノチューブでも良いし、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンでも良い。カーボンナノチューブの長さは特に制限されるものではないが、10〜2000マイクロメートル、10〜1000マイクロメートルが例示される。カーボンナノチューブ並走集合体は、同じ方向に延びる複数のカーボンナノチューブが並列している構造でも良いし、あるいは、同じ方向に延びる複数のカーボンナノチューブが並列しているカーボンナノチューブ束が複数束として並設されている構造でも良い。
【0024】
図1に概念図を示すように、カーボンナノチューブ並走集合体のカーボンナノチューブ並走集合体(1)は、基体(3)の表面(30)に搭載されている。カーボンナノチューブ並走集合体(1)は、基体(3)の表面(30)に対して立設する方向に沿って延びる並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブ(CNT)を並設させつつ束ねたカーボンナノチューブ束(2)を、基体(3)の平坦な表面(30)に対して垂直配向させつつ多数並設させて高密度化され、カーボンナノチューブの本数密度が高くされている。このようなカーボンナノチューブ並走集合体(1)の密度としては、100mg/cm以上、200mg/cm以上、更には、300mg/cm以上、400mg/cm以上の高密度化が可能である。基体は金属またはシリコンで形成されていることが好ましい。基体を構成する金属は、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、シリコンのうちの少なくとも1種とすることができる。鉄合金は、鉄−クロム系合金、鉄−ニッケル系合金、鉄−クロム−ニッケル系合金が例示される。基体が金属であれば、基体の集電性および導電性を利用できる。
【0025】
製造方法において、カーボンナノチューブと基体との間には触媒が存在していることが好ましい。上記した触媒としては、通常、遷移金属が用いられる。特に、V〜VIII族の金属が好ましい。カーボンナノチューブ並走集合体の密度の目標値等に応じて、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、銅、クロム、バナジウム、ニッケルバナジウム、チタン、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、金、これらの合金が例示される。触媒は単体触媒である場合よりも合金である場合には、CVD処理等の加熱時における触媒粒子の凝集が抑制され、触媒粒子の微細化に有利であり、カーボンナノチューブ並走集合体の高密度化に有利であると考えられている。カーボンナノチューブ並走集合体の高密度化を図るには、基体と触媒との間に下地層を形成することが好ましい。従って、基体に下地層を積層させた後に、その下地層に触媒を担持させることが好ましい。加熱時における触媒粒子の凝集化を抑制できるためと考えられる。下地層は例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金の薄膜で形成できる。下地層の厚みは5〜100ナノメートル、10〜40ナノメートルにできる。このようにカーボンナノチューブ並走集合体と基体との間には、触媒が存在しており、更に、触媒と基体との間にはアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された下地層が存在することが好ましい。
【0026】
触媒はA−B系の合金であることが好ましい。ここで、Aは鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも1種であり、Bはチタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタルのうちの少なくとも1種であることが好ましい。この場合、鉄−チタン系合金、鉄−バナジウム系合金のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。更に、コバルト−チタン系合金、コバルト−バナジウム系合金、ニッケル−チタン系合金、ニッケル−バナジウム系合金、鉄−ジルコニウム系合金、鉄−ニオブ系合金が挙げられる。鉄−チタン系合金の場合には、質量比でチタンが5%以上、10%以上、20%以上、40%以上(残部は実質的に鉄)、50%以下が例示される。鉄−バナジウム系合金の場合には、質量比でバナジウムが5%以上、10%以上、20%以上、40%以上(残部は実質的に鉄)、50%以下が例示される。触媒が合金であるときには、単体金属の触媒に比較して、加熱時における触媒粒子の凝集が抑制され、カーボンナノチューブの密集化に有利であると考えられる。触媒の粒子のサイズとしては、2〜100nmの範囲、2〜70nmの範囲、2〜40nmの範囲が例示される。
【0027】
カーボンナノチューブ形成反応においては、炭素原料ガスおよびプロセス条件は特に限定されるものではない。但し、カーボンナノチューブ並走集合体が形成される基体の温度は600〜650℃の範囲が好ましい。600℃未満であると、カーボンナノチューブ並走集合体が形成されにくい。650℃よりも高温であると、カーボンナノチューブのI/I比率が低くなり過ぎ、即ち、カーボンナノチューブの結晶性が高くなり過ぎ、カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔が形成される頻度が低下する。カーボンナノチューブを形成させる炭素を供給させる炭素源となる炭素原料ガスとして、アルカン、アルケン、アルキン等の脂肪族炭化水素、アルコール、エーチル等の脂肪族化合物、芳香族炭化水素等の芳香族化合物が挙げられる。従って、炭化水素系の炭素原料ガス、アルコール系の炭素原料ガス、を用いるCVD法(CVD,プラズマCVD、リモートプラズマCVD法等)が例示される。様相1に係るカーボンナノチューブ並走集合体アルコール系の炭素原料ガスとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のガスが例示される。更に炭化水素系の原料ガスとしてはメタンガス、エタンガス、アセチレンガス、エチレンガス、プロパンガス等が例示される。カーボンナノチューブ形成反応においては、CVD装置の反応容器内の圧力は100Pa〜0.1MPa程度にできる。
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0029】
(実施例1)
(基板)
本実施例では、基体として機能する基板としては、合金鋼であるステンレス鋼(SUS304)を使用した。すなわち、基板の厚みは0.5ミリメートルとしたる基板の表面は研磨されており、基板の表面粗さはRaで5ナノメートルであった。基板はCVD装置の反応容器内に配置される。
【0030】
(前処理,第1層)
前処理として、反応容器内においてスパッタリング法を実施し、アルミニウム薄膜の下地層(厚み:7ナノメートル)を第1層として基板の表面に形成した。この場合、アルゴンガスを用い、反応容器内の圧力を0.6Paとし、基板の温度を常温域(25℃)とし、スパッタリングを行った。
【0031】
(前処理,第2層)
更に、第1層の上に第2層を積層させる前の前処理として、基板の表面を撥水処理した。撥水処理液として、溶媒(トルエン)にヘキサメチルオルガノシラザンを5体積%の濃度で配合したものを用いた。この場合、下地層を有する基板を大気中で撥水処理液に所定時間(30分間)浸漬させた。その後、基板を撥水処理液から引き上げ、自然乾燥させた。次に、大気中において、上記した基板をディップコーターによりコーティング液に30秒間浸漬した。コーティング液については、溶媒(ヘキサン)に鉄−チタン合金粒子を分散させて形成した。鉄−チタン合金粒子については、平均粒径4.0nmであり、質量比で鉄80%,チタン20%であり、鉄含有量はチタン含有量よりも多かった。触媒が合金であれば、触媒の粒子の凝集を抑え、カーボンナノチューブ並走集合体の高密度化に有利であると考えられる。鉄−チタン合金粒子の平均粒径については、TEM観察により判定した。平均粒径は単純平均とした。コーティング液については、可視光度計(WPA社製:CO7500)にて波長680ナノメートルの測定条件で、吸光度が0.3となるように濃度調整した。鉄−チタン合金はカーボンナノチューブの高密度化に有利であると考えられる。その後、大気雰囲気において、常温下で、基板をコーティング液から3ミリメートル/分間の速度で引き上げた。その後、コーティング液が基板の表面に付着した状態で、その基板を引き上げ後、自然乾燥にてヘキサンを乾燥させた。これにより鉄−チタン合金の薄膜(厚み:33ナノメートル)を第2層として基板の下地層の上に形成した。第2層の厚みは下地層よりも厚かった。その後、カーボンナノチューブ形成方法を実施した。
【0032】
(カーボンナノチューブ形成方法)
図4に示すCVD装置5を用いてカーボンナノチューブ並走集合体を基板の表面に形成した。図5はカーボンナノチューブ並走集合体形成にあたり炭素原料ガスの導入過程を示す。この場合、カーボンナノチューブの形成に先立ち、予め、基板5を常温から所定の温度(650℃)まで5分間昇温させた。即ち、あらかじめ10Paに真空引きされた反応容器中にキャリヤガスとして窒素ガスを5000cc/分の流量で導入し、反応容器内の圧力を1×10Paに調整した状態において、基板の温度を常温域(初期温度)から650℃まで5分間で速やかに昇温させた。昇温速度は120℃/分であった。このように短時間で昇温させるため、基板上における触媒粒子の凝集が抑制され、カーボンナノチューブ並走集合体の高密度化に貢献でき、単位面積あたりにおけるカーボンナノチューブの本数密度を高めることができる。
【0033】
上記したように昇温させた後、基板温度650℃において、アセチレン(C)と窒素(N)とが混合した原料ガス(C/C+N=モル比で9%)を反応容器内に供給し、CVD処理を行った。このように原料ガスの導入時から反応終了まで基板の温度を維持させつつカーボンナノチューブを形成させた。原料ガスについては、CVD処理時間として、アセチレンガス5500cc/分を6分間導入した。その後、反応容器内を排気させた。これにより多数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ並走集合体を、基板の表面の鉄−チタン合金の触媒の上に形成した。成長したカーボンナノチューブの多くは、多層のカーボンナノチューブであった。実施例1によれば、形成されたカーボンナノチューブの長さは140〜150マイクロメートル、平均直径は9.5ナノメートル、密度は520mg/cmであり、単位面積あたりのカーボンナノチューブの本数密度は極めて高かった。この密度は、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(カーボンナノチューブ並走集合体を成長完了させた時点)における密度に相当する。CNTの密度を高めるためにはCVD処理時間が長い方が好ましいが、CNTの結晶性も高くなる。このためCVD処理時間を10分以下、8分以下とすることが好ましい。
【0034】
密度については、電子天秤による重量差法(カーボンナノチューブ並走集合体の形成前後における基板の重量差に基づいて求めた。即ち、カーボンナノチューブ並走集合体を基板の表面に形成させる前後の重量測定により、カーボンナノチューブ並走集合体それ自体の重量W[g]を測定した。基板のうちカーボンナノチューブ並走集合体を形成している面積Sで重量W[g]を除算した。これにより単位面積あたりのカーボンナノチューブ目付量W/S[g/cm]を算出した。更に、カーボンナノチューブ並走集合体の断面をSEM観察し、カーボンナノチューブ並走集合体の膜厚[μm]を測定した。これにより膜厚を考慮し、カーボンナノチューブ並走集合体の密度[g/cm]を算出した。
【0035】
同様に、比較例1についてもカーボンナノチューブ並走集合体を基板の表面に形成した。比較例1の製造方法は基本的には実施例1と同じである。但し、原料ガスを反応容器内に導入する前の基板の予熱温度、カーボンナノチューブ形成工程における基板の温度は750℃に設定した。比較例1によれば、カーボンナノチューブの長さは140〜150マイクロメートル、平均直径は6〜7ナノメートル、密度は180mg/cmであった。この密度は、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(カーボンナノチューブ並走集合体を成長完了させた時点)における密度に相当する。
【0036】
CVD装置について説明を加える。図4はCVD装置5を示す。CVD装置5は、チャンバー室50をもつ反応容器51と、チャンバー室50に配置されたガス導入部52と、ガス導入部52に接続されたガス配管53と、チャンバー室50に配置され基板3を水平方向に沿って保持するホルダ54と、ホルダ54に設けられたヒータ装置55とを有する。図4に示すように、ガス導入部52は、基板3の表面30に接近しつつ対面する多数の小孔状のガス導入孔520(内径:1ミリメートル)からなるガス導入孔群521を備える水平方向に配置された平板状のガス導入部材523と、ガス導入部材523と壁524とで形成されたガス導入室525とを有する。ガス導入室525はガス導入配管53に繋がれている。ヒータ装置55は炭素原料ガスの熱分解を促進させるためのものである。基板3のうちカーボンナノチューブ並走集合体が形成される表面30と反対側の裏面32から基板3に対向しつつ基板3を加熱させるように、複数の電気ヒータ部56が設けられている。基板3の均一加熱等のため、電気ヒータ部56は間隔を隔てて複数個並設されている。
【0037】
ガス導入部材523側にはヒータ装置は配置されていない。つまり基板3の上側にはヒータは設けられていない。ガス導入部材523は基板3の表面30に対して平行に配置されており、基板3の表面30に接近しつつ対面している。従って、基板3の表面30とガス導入孔520との最短距離は、全部のガス導入孔520にわたり、基本的には同一距離である。従って、カーボンナノチューブ並走集合体の成長の均一化に貢献できる。ここで、基板3の表面30とガス導入孔520との最短距離HA(図4参照)は20〜30ミリメートル(25ミリメートル)とされている。多数の小孔状のガス導入孔520から炭素原料ガスが分流されつつ、基板3の表面30に向けてほぼ垂直に衝突する。隣り合うガス導入孔520から吹き出された炭素原料ガスは、基板3の表面30にほぼ垂直に衝突した後、互いに衝突すると考えられる。このため、基板3のうち触媒が担持されている表面30において炭素原料ガスの乱流化が効果的に促進される。更に、基板3の温度も650℃と低めとされている。このような本実施形態によれば、基板3の表面30における炭素原料ガスの乱流化、基板3の表面30の温度が低めであることは、基板3の表面30にカーボンナノチューブ並走集合体を形成させるにあたり、カーボンナノチューブの結晶化を抑え、カーボンナノチューブの側面のグラフェンシート(炭素六員環配列構造)に欠陥としての欠損状細孔が形成される頻度を高めるのに有利と考えられる。
【0038】
図1は、基板3の表面30に得られたカーボンナノチューブ並走集合体1を模式的に示す。図2は基板3の表面30に得られたカーボンナノチューブ(CNT)集合体のSEM写真を示す。図1および図2から理解できるように、基板3の表面30に立設する方向に沿って同じ方向に延びる並走配向性(垂直配向性)を有する多数のカーボンナノチューブを並設させつつ集合させたカーボンナノチューブ(CNT)束2が多数、基板3の表面30に高密度で植毛状に形成されている。これによりカーボンナノチューブ並走集合体1が基板3の表面30において形成されている。カーボンナノチューブ束2も、基板3の表面30からほぼ垂直方向に配向していた。ここで、カーボンナノチューブ束2とは、カーボンナノチューブの長さ方向と直交する方向に複数のカーボンナノチューブを並列させつつ束状に束ねた群の状態をいう。SEM観察を示す図2から理解できるように、高密度のカーボンナノチューブの集合体が形成されている。カーボンナノチューブの長さは約143マイクロメートル(約140〜150マイクロメートル)であった。このカーボンナノチューブ並走集合体の密度については520ミリg/cmであり、カーボンナノチューブの本数密度は極めて高かった。この密度は、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態の密度(カーボンナノチューブ並走集合体を成長完了させた時点の密度)に相当する。換言すると、この密度は、特許文献4とは異なり、水への晒しおよび乾燥といった圧密化二次加工、あるいは、外部力でカーボンナノチューブを圧縮させるといった圧密化二次加工を経ていない値である。
【0039】
上記した本実施例によれば、カーボンナノチューブ並走集合体を高密度化できるのは、触媒の凝集抑制、基体の温度の安定化、触媒の安定化を図り得るためと推察される。即ち、前述したように、カーボンナノチューブの原料ガスを導入する前において、触媒の凝集が抑制される温度まで基板を高速昇温させるため、基板の高温化に起因する基板上の触媒の凝集を防ぎ、ひいては、触媒の活性度のばらつきを低減するためと推測される。TEM観察によれば、1本1本のカーボンナノチューブは、ほぼ同軸的に複数積層された多層構造のカーボンナノチューブであった。この細いカーボンナノチューブが高密度に敷き詰められたカーボンナノチューブの集合体は前述したように高密度であった。図3は実施例1で形成されたカーボンナノチューブ並走集合体のうち1本のカーボンナノチューブを撮影したTEM写真を示す。図3に示すように、カーボンナノチューブはグラフェンシートが筒形状に同軸的に複数形成された多層構造であること、更に、1本のカーボンナノチューブの側面には欠損状細孔が高い頻度で形成されていることが視認される。図3によれば、1本のカーボンナノチューブのうち側面には、互いに対向するように欠損状細孔が高い頻度で形成されている。このように本実施例で形成されたカーボンナノチューブによれば、側面のうち互いに互いに対向部位に、複数の欠損状細孔が互いに対向するように形成されている領域が存在する。上記したように実施例1によれば、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態(as-grown)において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブの側面には欠損状細孔が高い頻度で形成されており、グラファイト化度(I/I)は0.80以上である。実施例1のカーボンナノチューブのグラファイト化度(I/I)は具体的には1.03であった。
【0040】
さて、(I/I)の定義について説明を加える。カーボンナノチューブの場合、炭素が結合されたグラフェンシート(6員環配列構造)に欠陥(=六員環配列構造における炭素−炭素結合が切れたところ)が多いほど、グラフェンシートの結晶化度つまりグラファイト化度が低く、I/Iの値は大きくなる。グラファイト化度は次のようにレーザラマン分光法(レーザラマン分光装置:堀場ジョバンイボン株式会社,型式:T-64000)に基づいて測定した。すなわち、カーボンナノチューブ並走集合体だけを基板から引き剥がして測定した。マクロモードにて励起光源を単色光のレーザビーム(514.5ナノメートル)とし、試料表面でのスポット径を100マイクロメートルとし、照射全領域から平均的な情報を得た。ここで、レーザラマン分光法は、ラマン散乱光の振動数と入射光の振動数の差(ラマンシフト)が物質の構造に特有の値をとることから、ラマン効果は赤外分光法と同様に分子の構造や状態を知るための非破壊分析法として利用されている。レーザラマン分光法におけるラマンスペクトル(横軸:波長,縦軸:散乱光の強度(Intensity))において、1350cm-1の付近の散乱光のピーク構造をD(欠陥)-bandという。1580cm-1の付近の散乱光のピーク構造をG(グラファイト)-bandという。炭素の六員環配列構造が連なったグラフェンシートについてのグラファイト化度については,D-bandにおける散乱光の強度(Intensity)と、G-bandにおける散乱光の強度(Intensity)との比であるI/I比率に基づいて判断できる。I/I比率が小さいほど、結晶化が進んでいる。I/I比率が大きいほど、結晶化が進んでおらず、グラフェンシートの結晶性が低下している。ラマンスペクトルのI/I比率は、実施例1に係るカーボンナノチューブでは1.03であった。これに対して比較例1に係るカーボンナノチューブでは0.09であった。図7は、比較例1に係る1本のカーボンナノチューブのTEM写真を示す。図7に示すように、比較例1に係るカーボンナノチューブの側面には細孔が形成されていない。これに対して,実施例1に係るカーボンナノチューブによれば、図3に示すように、カーボンナノチューブ側面に欠陥である欠損状細孔が多く形成されている。
【0041】
図6は実施例1のカーボンナノチューブ並走集合体の細孔分布(窒素ガス吸着法)を示す。細孔分布測定装置として株式会社島津製作所、型式:ASAP-2010N2を用いた。図6の横軸は細孔径(オングストローム,1オングストローム=0.1ナノメートル)を示し、縦軸は細孔体積(cm/g)を示す。特性線W1は細孔体積を示す。特性線W1に示すように、30オングストローム(3ナノメートル)付近においてピークP1が発生していた。TEM観察に基づけば、ピークP1は、カーボンナノチューブの側面に形成されている細孔の一部と考えられる。400〜700オングストローム(40〜70ナノメートル)付近において別のピークが発生していた。TEM観察に基づけば、このピークは、隣接する1本のカーボンナノチューブと1本のカーボンナノチューブとの間における空間と考えられる。ここで、リチウムイオンは電解液において単独で存在するのではなく、リチウムイオンに溶媒が付着している溶媒和の状態で存在し、リチウムイオンが移動するときにも溶媒和の状態で溶媒を引き連れて移動すると考えられている。この場合、溶媒和状態のリチウム溶媒粒子の直径は30オングストローム(3ナノメートル)と推定される。このため、リチウムイオンに溶媒が付着している状態のリチウム溶媒粒子は、カーボンナノチューブの中央孔内に出入りすることが期待される。
【0042】
図8は比較例1のカーボンナノチューブ並走集合体の細孔分布を示す。図8の横軸は細孔径(オングストローム,1オングストローム=0.1ナノメートル)を示し、縦軸は細孔体積(cm/g)を示す。特性線W10は細孔体積を示す。特性線W10に示すように、30オングストローム(3ナノメートル)付近においてピークが発生しておらず、むしろ底領域B10が発生している。図8に示す比較例1に係る細孔分布からも、比較例1のカーボンナノチューブの側面には細孔が形成されていないことが裏付けられる。
【0043】
(実施例2)
実施例1に基づいて製造したカーボンナノチューブ並走集合体を用いてリチウムイオンキャパシタ(以下、LICともいう)を作製した。リチウムイオンキャパシタ(LIC)は、図9に模式的に示すように、炭素材料として機能する活性炭で形成された正極電極材を有する正極201と、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=1.03、密度:520mg/cm)で形成された負極電極材で形成された負極202と、正極201および負極202の間に配置されたセパレータ203と、正極201および負極202の間に配置された電解液204と、これらを収容する容器205とを有する。負極202を形成する負極電極材にはリチウムイオンがドープされている。電解液204としては、リチウム塩を非水系の有機溶媒に溶解させて形成できる。リチウム塩としては過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが例示される。溶媒としては環状炭酸エステル(EC,PC,BC)、鎖状炭酸エステル(DMC,EMC,DEC)、環状エーテル(THF,DOXL)などが例示される。セパレータ203は、イオン透過性を有すると共に正極201と負極202との電気的短絡を防止するものであり、多孔質の織物、不織物を採用できる。本実施例に係る負極202の負極電極材を構成するカーボンナノチューブ並走集合体は高い密度をもち、大きな比表面積をもち、更に多孔質であるため、負極202に使用されるとき、集電容量の増加を期待でき、キャパシタの能力を向上できる。
【0044】
ここで、図9から理解できるように、負極202と正極201とを結ぶ仮想線PWに沿って、カーボンナノチューブの長さ方向が延設するようにカーボンナノチューブが配向されていることが好ましい。この場合、キャパシタ内に収容されている電解液がカーボンナノチューブの長さ方向に沿って流動し易い。よって正イオンおよび負イオンはカーボンナノチューブに沿って移動しやすいことが期待される。但し、場合によっては、負極202と正極201とを結ぶ仮想線PWに沿って、カーボンナノチューブの長さ方向が交差するようにカーボンナノチューブが配向されている場合であっても良い。カーボンナノチューブ並走集合体が高密度であるため、キャパシタの出力密度(低抵抗)および容量密度(高表面積)を向上させることができる。更に、負極202を形成するカーボンナノチューブ並走集合体を形成するカーボンナノチューブの側面には欠損状細孔が高頻度で形成されている。このため、カーボンナノチューブに対してリチウムイオンの取り込み量の増加を期待でき、更にカーボンナノチューブの内部に対するリチウムイオンの出入を期待でき、蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタの容量の増加を図り得る。
【0045】
(実施例3)
実施例1に基づいて製造したカーボンナノチューブ並走集合体を用いて電気二重層キャパシタ(EDLC)を作製した。電気二重層キャパシタ(EDLC)は、図9を準用して示されている。図9に模式的に示すように、炭素材料として機能する活性炭で形成された正極電極材を有する正極201と、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=1.03、密度:520mg/cm)で形成された負極電極材で形成された負極202と、正極201および負極202の間に配置されたセパレータ203と、正極201および負極202の間に配置された電解液204と、これらを収容する容器205とを有する。負極202を形成する負極電極材にはリチウム金属イオンがドープされていない。本実施例に係るカーボンナノチューブ並走集合体は高い密度をもち、大きな比表面積をもち、更に多孔質であるため、負極202に使用されるとき、集電容量の増加を期待でき、キャパシタの能力を向上できる。ここで、負極202と正極201とを結ぶ仮想線PWに沿って、カーボンナノチューブの長さ方向が延設するようにカーボンナノチューブが配向されていることが好ましい。この場合、キャパシタ内に収容されている電解液がカーボンナノチューブの長さ方向に沿って流動し易い。よって正イオンおよび負イオンはカーボンナノチューブに沿って移動しやすいことが期待される。カーボンナノチューブ並走集合体が高密度であるため、キャパシタの出力密度(低抵抗)および容量密度(高表面積)を向上させることができる。更に、負極202を形成するカーボンナノチューブ並走集合体を形成するカーボンナノチューブの側面には欠損状細孔が高頻度で形成されている。このため、カーボンナノチューブに対するイオンの取り込み量の増加を期待できる。更に、細孔の大きさにもよるが、カーボンナノチューブの内部に対してイオンの出入を期待できる。なお、カーボンナノチューブ並走集合体の密度は520mg/cmとされているが、200mg/cm以上、300mg/cm以上でも良い。本実施例では正極電極材は活性炭で形成されているが、これに限らず、場合によっては、カーボンナノチューブ並走集合体で形成しても良い。
【0046】
(試験例LIC)
本発明に係る試験例LICとして、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=1.03,密度:520mg/cm)を負極として備える実施例2に係るリチウムイオンキャパシタ(LIC)を作製した。まず、直径15.5ミリメートルの円形状の正極電極材(宝泉株式会社製)と、カーボンナノチューブ並走集合体で形成した円形状の負極電極材と、円形状のセパレータ(材質:セルロース製、商品名:TF40ニッポン高度紙工業株式会社製)とを用意した。これらを2極式の容器(商品名:HSセル,宝泉株式会社製)に、露点−30℃以下の環境において組み込むことにより、リチウムイオンキャパシタ(LIC)を蓄電デバイスとして形成した。電解液については、セル容器内を1MPaまで真空引きを行った後、直ちに大気圧に戻して正極電極材、負極電極材およびセパレータに浸透させた。電解液については、電解質はリチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)の非水系の混合溶媒(EC:DEC=1:1v/v%)とし、濃度は1mol/Lとした。リチウムイオンキャパシタ(LIC)の放電電流については、電池充放電装置(商品名:HJ−201B,北斗電工株式会社製)で、充電電圧3.8V、充電電流0.96mA、充電時間30分、放電電流0.96mAの条件で、放電時の電圧−容量曲線の3.4〜2.4V間の接線の傾きに基づいて静電容量を求めた。データは3サイクル目の値を採取した。
【0047】
(試験例EDLC)
本発明に係る試験例EDLCとして、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=1.03,密度:520mg/cm)を負極として備える電気二重層キャパシタ(EDLC)を作製した。電気二重層キャパシタ(EDLC)の主な構造は、前記した図9と基本的には同様である。試験例EDLCはコイン型であり、活性炭(比表面積:2100m/g)で形成された正極電極材と、セパレータと、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体で形成された負極電極材と、電解液と、これらを収容する容器とを有する。この場合、直径15.5ミリメートルの円形状の正極電極材(宝泉株式会社製)と、カーボンナノチューブ並走集合体で形成した円形状の負極電極材と、円形状のセパレータ(材質:セルロース製、商品名:TF40ニッポン高度紙工業株式会社製)とを用意した。これらを2極式の容器(商品名:HSセル,宝泉株式会社製)に、露点−30℃以下の環境において組み込むことにより、電気二重層キャパシタ(EDLC)を蓄電デバイスとして形成した。この場合、電解液については、セル容器内を1MPaまで真空引きを行った後、直ちに大気圧に戻して正極電極材、負極電極材およびセパレータに浸透させた。
【0048】
電解液はCa電解液とした。Caは2価のアルカリ土類金属であるため、電気エネルギの増加を期待できる。Ca電解液では、カルシウム1原子あたり2個の電子が反応に関与する。すなわち、1モル原子のカルシウムの反応では、2モル電子(2ファラデーの電気量)が反応に関与し、キャパシタから取り出し得る電気エネルギの増加を期待できる。Ca電解液の製造方法については、次のように作製した。出発原料としては、溶媒は環状エステル(γ-ブチロラクトン(GBL))とし、電解質は過塩素酸カルシウム(Ca(ClO42)とした。混合手順、配合量については、環状エステル(γ-ブチロラクトン(GBL)、キシダ化学社製)28ml中に4.35gの過塩素酸マグネシウム(Ca(ClO42、キシダ化学社製)を溶解させた後、常温で1日間撹拌して調製した。放電電流は、電池充放電装置(商品名「HJ−201B」北斗電工株式会社製)で、充電電圧2.5V、充電電流0.24mA、充電時間30分、放電電流0.24mAの条件で、放電時の電圧−容量曲線の2.5−1.0V間の接線の傾きから、算出した。データは、3サイクル目の値を採取した。
【0049】
(重量エネルギ密度)
(i)上記した試験例LICに係るリチウムイオンキャパシタと、上記した試験例EDLCに係る電気二重層キャパシタとについて、前述のように放電電流試験を行い、放電電流の実測値に基づいて重量エネルギ密度を計算で求めた。重量エネルギ密度は蓄電デバイスの単位重量あたりのエネルギを意味する。リチウムイオンキャパシタにおける重量エネルギ密度については、下記の計算式Aに基づいて求めた。*は乗算の記号である。
【0050】
比較例Aに係るリチウムイオンキャパシタについては、エネルギ密度は0.92Wh/Kgであり、低かった。ここで、比較例Aに係るリチウムイオンキャパシタは、基本的には、試験例LICに係るリチウムイオンキャパシタと同じ構造、同じ材料を用いて作製されている。但し、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体ではなく、比較例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=0.09,密度:180mg/cm)が負極電極材として用いられている。これに対して、試験例LICに係るリチウムイオンキャパシタについては、重量エネルギ密度は4.76Wh/Kgであり、比較例Aに係るリチウムイオンキャパシタに対して約5倍(4.76/0.92≒5.17)であった。
【0051】
計算式A…エネルギ密度(Wh/Kg)=[(実質上限電圧+下限電圧)/2]*Ah/Kg
ここで、Ahは合計放電電流量を意味する。Kgはキャパシタの重量(単位:kg)を意味する。
試験例LIC:[(3.7982+2.2076)/2]*0.0001/0.000062968
=4.76Wh/Kg
比較例A:[(3.6294+2.2031)/2]*0.00002/0.000063248
=0.92Wh/Kg
(ii)試験例EDLCに係る電気二重層キャパシタについて放電電流試験を行い、放電電流の実測値に基づいてエネルギ密度を計算で求めた。重量エネルギ密度については計算式Bに基づいて求めた。比較例Bに係る電気二重層キャパシタについても同様にした。比較例Bに係る電気二重層キャパシタは、基本的には、試験例EDLCに係るキャパシタと同じ構造、同じ材料を用いて作製されている。但し、実施例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体ではなく、比較例1に係るカーボンナノチューブ並走集合体(I/I=0.09,密度:180mg/cm)が負極電極材として用いられている。比較例Bに係る電気二重層キャパシタについては、エネルギ密度は0.81Wh/Kgと低かった。これに対して、本発明品に相当する試験例EDLCに係る電気二重層キャパシタについては、重量エネルギ密度は2.30Wh/Kgであり、比較例Bに係る電気二重層キャパシタに対して約2.8倍(2.30/0.81≒2.84)であった。
計算式B…重量エネルギ密度(Wh/Kg)=[実質上限電圧/2]*Ah/Kg
実施例B:[2.2755/2]*0.00013/0.000064388
=2.30W/Kg
比較例B:[2.0609)/2]*0.00005/0.000063848
=0.81Wh/Kg
重量エネルギー密度について説明を加える。ある一定の出力値W(ワット)で蓄電デバイスを放電したとき、その放電の持続時間h(アワー)とすると、そのとき取り出せるエネルギー量Eは、E=W×hと表わされる。これらの値は蓄電デバイスの大きさによって異なるので、その能力を標準化して比較するために、それぞれの値を蓄電デバイス(セル容器の重量も含む)の重量で除した数字を、重量エネルギー密度という。
【0052】
(その他)
上記した実施例1によれば、触媒として、鉄−チタン系合金が使用されているが、これに限らず、コバルト−チタン系合金、コバルト−バナジウム系合金、ニッケル−チタン系合金、ニッケル−バナジウム系合金、鉄−ジルコニウム系合金、鉄−ニオブ系合金とすることもできる。実施例1によれば、基板を650℃に加熱させているが、600℃、630℃でも良い。実施例2,3によれば、カーボンナノチューブ並走集合体については、密度を200mg/cm以上、300mg/cm以上、400mg/cm以上、600mg/cm以上とし、カーボンナノチューブの本数密度を高めることができ、更に、I/I比率を0.80〜1.20の範囲、0.90〜1.10の範囲、1.00〜1.10の範囲とすることもできる。本発明は上記した実施例、試験例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。
【0053】
本明細書から次の技術的事項が把握される。
[付記項1]カーボンナノチューブの側面に欠損状細孔を備えていることを特徴とするカーボンナノチューブ。カーボンナノチューブのI/I比率は0.80以上が好ましい。カーボンナノチューブの密度は100mg/cm以上が好ましい。
[付記項2]同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体であって、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えていることを特徴とするカーボンナノチューブ並走集合体。カーボンナノチューブ並走集合体のI/I比率は0.80以上が好ましい。カーボンナノチューブ並走集合体の密度は100mg/cm以上が好ましい。
[付記項3]同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体で形成された炭素系電極であって、カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、カーボンナノチューブ並走集合体を構成するカーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えていることを特徴とする炭素系電極。カーボンナノチューブ並走集合体のI/I比率は0.80以上が好ましい。密度は100mg/cm以上が好ましい。
[付記項4]正極と、負極と、正極および負極間に介在する電解質物質と、正極と負極との間に配置されると共に電解質物質を透過させ且つ正極と負極との電気的短絡を抑えるセパレータと、正極、負極、電解質物質、セパレータを収容する容器とを具備しており、負極および正極のうちの少なくとも一方は、付記項1,2に係るカーボンナノチューブを備えていることを特徴とする蓄電デバイス。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るカーボンナノチューブ並走集合体は、例えば比表面積、集電性および導電性が大きいことが要請される炭素材料に利用することができる。例えば、キャパシタ、二次電池、湿式太陽電池、燃料電池等の各種電池に使用される炭素材料等に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
201は正極、202は負極、203はセパレータ、204は電解液、205は容器を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体であって、
前記カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、前記カーボンナノチューブ並走集合体を構成する各前記カーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えており、I/I比率は0.80以上であることを特徴とするカーボンナノチューブ並走集合体。
ここで、Iは、ラマン分光法のラマンスペクトルにおいて、D-bandにおける散乱光の強度(Intensity)を示し、Iは、G-bandにおける散乱光の強度(Intensity)を示す。
【請求項2】
請求項1において、密度は100mg/cm以上とされていることを特徴とするカーボンナノチューブ並走集合体。
【請求項3】
同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有する多数のカーボンナノチューブを集合させたカーボンナノチューブ並走集合体で形成された炭素系電極であって、
前記カーボンナノチューブ並走集合体を成長させたままの状態において、前記カーボンナノチューブ並走集合体を構成する前記カーボンナノチューブは、側面に欠損状細孔を備えており、I/I比率は0.80以上であることを特徴とする炭素系電極。
【請求項4】
請求項3において、密度は100mg/cm以上とされていることを特徴とするカーボンナノチューブ並走集合体で形成された炭素系電極。
【請求項5】
正極と、負極と、正極および負極間に介在する電解質物質と、正極と負極との間に配置されると共に前記電解質物質を透過させ且つ前記正極と前記負極との電気的短絡を抑えるセパレータと、前記正極、前記負極、前記電解質物質、前記セパレータを収容する容器とを具備しており、前記負極および前記正極のうちの少なくとも一方は、請求項1または2に係るカーボンナノチューブ並走集合体を備えていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項5において、Liイオンを含む電解質物質を有するリチウムイオンキャパシタであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項5において、Caイオンを含む電解質物質を有する電気二重層キャパシタであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項8】
触媒を基体の表面に形成する工程と、
カーボンナノチューブ形成前に、前記基体をこれの初期温度から600〜650℃に昇温させる昇温工程と、
その後、前記基体の表面に炭素原料ガスを導入させてCVD処理によりカーボンナノチューブ形成反応を発生させてカーボンナノチューブ並走集合体を前記基体の前記表面に形成させるカーボンナノチューブ形成工程とを順に実施するカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法であって、
前記カーボンナノチューブ形成工程は、
多数の前記ガス導入孔を備えるガス導入部材が前記基体の前記表面に対向している状態において、前記基体の温度を600〜650℃範囲に維持しつつ、
多数のガス導入孔から炭素原料ガスを、前記基体のうち前記触媒を有する前記表面に対して交差する方向から前記表面に衝突させ、前記表面付近において炭素原料ガスの乱流化を促進させつつ、
前記基体の前記表面に対して立設しつつ同じ方向に沿って並走しつつ配向している並走配向性を有すると共に側面に欠損状細孔を形成させ且つI/I比率は0.80以上である多数のカーボンナノチューブからなる前記カーボンナノチューブ並走集合体を製造するカーボンナノチューブ並走集合体の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−1612(P2013−1612A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135403(P2011−135403)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】