説明

カーボンナノチューブ及びマイクロゲルを含む有機媒体

本発明は、少なくとも1つのマイクロゲルと、少なくとも1つのカーボンナノチューブと、少なくとも1つの有機媒体と、を含む複合材料に関する。前記有機媒体が、架橋化される又は架橋化されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ及びマイクロゲルを含む有機媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
修飾ゴム状ゲルを含むゴム状ゲルの周知の使用は、例えば、自動車タイヤの製造において転がり抵抗を改善するために、幅広い種類の異なるゴムとブレンドすることである(特許文献1−4参照)。ここでは、ゴム状ゲルが、常に、固体マトリックスに組み込まれている。
【0003】
最終的に印刷用インクを製造するために適した、微細分布した印刷用インク顔料の液体媒体中への組み込みもまた周知である(例えば、特許文献5(A2)及び特許文献5(A3)を参照)。ここで、100nmまでの粒径が達成される。
【0004】
分散に対し、ビーズミル、3ロールミル又はホモジナイザーのような、異なる分散ユニットを使用することが可能である。ホモジナイザーの使用及びこれらの作動方法が、例えば、主に乳濁液の均一化を目的とした非特許文献1に記載されている。
【0005】
引用されたこの文献では、1μmを大きく下回る粒径の超微細分散型のゴム状ゲル分散体の製造、及びホモジナイザーを用いたその均一化を目的とした、特定の粘度の架橋性有機媒体を含む混合物中における固体成分としてのゴム状ゲルの使用については記載されていない。
【0006】
非特許文献2には、高−エネルギー放射により完全に架橋化されたマイクロゲル、及びプラスチックの衝撃耐性を高めるためのその使用が記載されている。特定のエポキシ樹脂複合材料の調製において生じる中間体が、放射線−架橋化カルボキシル末端停止(end−stopped)ニトリル−ブタジエン マイクロゲルとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの混合物である。それ以外の液体マイクロゲル含有複合材料は、記載されていない。
【0007】
同様に、特許文献6では、強化熱−硬化樹脂複合材料が開示されており、その調製が、同じく、熱−硬化プレポリマーと放射線−架橋化マイクロゲル粒子を混合するステップを含む(特許文献7参照)。
【0008】
これらの開示文献において、マイクロゲル粒子の製造に対して言及されている好ましい放射源が、放射性コバルト源である。
【0009】
放射線架橋の使用が、極めて均一な架橋化ミクロ粒子を提供する。しかしながら、このタイプの架橋に特有の欠点は、実験室規模から工業規模プラントへのこのプロセスのスケールアップが、経済的観点及び職業上の安全面の考慮の両面から、非現実的であることである。高−エネルギー放射によって架橋化されないマイクロゲルは、引用された開示文献において使用されていない。さらに、完全に放射線−架橋化されたマイクロゲルが使用される場合、マトリックス相から分散相への係数の変化が急速である。突然の応力の場合には、これが、マトリックスと分散相との間のテアリング効果(tearing effects)を生じ、機械的特性、膨潤挙動及び応力腐食割れ等を悪化させる。
【0010】
引用された開示文献において、高−エネルギー放射によって架橋化されないマイクロゲルの使用への指針は示されていない。
【0011】
特許文献8及び9では、モノマーを含むゴム状粒子の分散体が開示されている。これらは、分散剤を添加したモノマーを含む水性ゴムラテックスを混ぜることにより製造される。また、これらの開示文献では、ラテックスから生じる水を除去する可能性について言及されている。しかしながら、無水分散体は記載されていない。無水である分散体は、実際には、このプロセスによって得ることが出来ない(特許文献10,第2頁,第10行目における確認事項も参照)。しかしながら、これは、多くの用途において欠点となる。さらに、この引用特許に記載された分散体が、水性及び有機相の均一な分散を達成するために、必ず分散剤又は乳化剤を含む。しかしながら、このような乳化剤及び分散剤の存在が、多くの用途において極めて厄介なものである。さらに、ここに記載されたゴム状粒子が、比較的粗い粒子を含む。
【0012】
特許文献11では、少なくとも1つの熱可塑性材料及び少なくとも1つのマイクロゲルを含む熱可塑性エラストマー複合材料が記載されており、高−エネルギー放射によって架橋化されず、ホモポリマー又はランダムコポリマーをベースとする。
【0013】
特許文献12では、例えば、ホモジナイザーを用いて、特定の粘度の架橋性有機媒体における高−エネルギー放射によって架橋化されないマイクロゲルを微細に分散させることが出来ることが記載されている。一次粒子(primary particle)範囲に至るまでの架橋性有機媒体中のマイクロゲルの分離が、特に、再生可能な方法において、例えば、プラスチック内への組み込みといった、多くの用途におけるマイクロゲルのナノ特性の実用性に対する必要条件である。
【0014】
しかしながら、このプロセスによって得ることが可能な複合材料は、十分なレオロジー特性を有さない。
【0015】
カーボンナノチューブ(CNTs)は、3から80nmの間の直径を有し、その長さが、その直径の数倍、少なくとも100倍である円筒型のカーボンチューブを意味すると主に理解される。これらのチューブは、規則的な炭素原子の層により構成され、モルフォロジーの観点から、異なるコアを有する。これらのカーボンナノチューブは、例えば、“カーボンフィブリル”又は“ホローカーボンファイバー”とも呼ばれる。それらの寸法およびそれらの特定の特性のために、カーボンナノチューブは、複合材料の製造において産業上重要である。エレクトロニクス用途、エネルギー用途及びさらなる用途において、さらに重要な可能性が存在する。
【0016】
カーボンナノチューブは、以前から周知な材料である。1991年において、飯島氏(非特許文献3)は、ナノチューブの発見者として一般的に認められているが、これらの材料、特に、複数のグラファイト層を有する繊維グライファイト材料が、長きにわたって知られている。例えば、早くも1970年代及び1980年代初期には、炭化水素の触媒分解による極めて細かな繊維状炭素の堆積が説明されている(特許文献13及び14)。しかしながら、短鎖炭化水素をベースとして製造された炭素フィラメントは、それらの直径に関してそれ以上詳細には特徴づけられていない。100nm未満の直径を有するカーボンナノチューブの製造が、とりわけ、特許文献15及び16に記載されている。カーボンナノチューブの製造に対して、この文献では、例えば、ライトアーク(light arc)プロセス、レーザーアブレーションプロセス及び触媒プロセスについて言及されている。触媒プロセスにおいて、担持触媒粒子上の堆積と、金属中心上の堆積とを区別することが可能であり、インサイチュで形成され、ナノメートル範囲の直径を有する(フロープロセスとして周知である)。
【0017】
ポリマーの機械的、熱的及び/又は電気的特性を高めるために、有機媒体、特にポリマーにおける、添加剤としてのカーボンナノチューブの使用が、多数の開示文献及び特許出願から知られている。しかしながら、カーボンナノチューブ及びマイクロゲルの組み合わせは、現在まで知られていない。
【0018】
プラスチックに変化されうる液体有機媒体への軟性マイクロゲルの添加が、しばしば、粘度の著しい増加をもたらし、結果として生じるプラスチックの硬さ及び弾性率の減少をもたらす。プラスチックに変化されうる液体有機媒体へのCNTsの添加が、しばしば、粘度の極めて著しい増加をもたらし、引張破断ひずみの減少をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許発明第4220563号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第1078400号明細書
【特許文献3】欧州特許第405216号明細書
【特許文献4】欧州特許第854171号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0953615号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0088036号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1262510号明細書
【特許文献8】独国特許発明第2910153号明細書
【特許文献9】独国特許発明第2910168号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第3742180号明細書
【特許文献11】国際公開第2005/033185号
【特許文献12】国際公開第2005/033186号
【特許文献13】英国特許出願公開第1469930号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第0056004号明細書
【特許文献15】欧州特許第0205556号明細書
【特許文献16】国際公開第86/03455号
【特許文献17】独国特許発明第19701489号明細書
【特許文献18】独国特許発明第19701488号明細書
【特許文献19】独国特許発明第19834804号明細書
【特許文献20】独国特許発明第19834803号明細書
【特許文献21】独国特許発明第19834802号明細書
【特許文献22】独国特許発明第19929347号明細書
【特許文献23】独国特許発明第19939865号明細書
【特許文献24】独国特許発明第19942620号明細書
【特許文献25】独国特許発明第19942614号明細書
【特許文献26】独国特許発明第10021070号明細書
【特許文献27】独国特許発明第10038488号明細書
【特許文献28】独国特許発明第10039749号明細書
【特許文献29】独国特許発明第10052287号明細書
【特許文献30】独国特許発明第10056311号明細書
【特許文献31】独国特許発明第10061174号明細書
【特許文献32】米国特許第5302696号明細書
【特許文献33】米国特許第5442009号明細書
【特許文献34】米国特許第2187146号明細書
【特許文献35】独国特許出願公開第102004054959号明細書
【特許文献36】独国特許発明第10257025号明細書
【特許文献37】欧州特許第1059266号明細書
【特許文献38】欧州特許出願公開第0205556号明細書
【特許文献39】独国特許出願公開第102004054859号明細書
【特許文献40】欧州特許出願公開第1428793号明細書
【特許文献41】独国特許発明第10345043号明細書
【特許文献42】米国特許第5013793号明細書
【特許文献43】米国特許第6399706号明細書
【特許文献44】欧州特許出願公開第0405216号明細書
【特許文献45】欧州特許出願公開第0854171号明細書
【特許文献46】独国特許出願公開第4220563号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】William D.Pandolfe及びPeder Baekgaard,“High−pressure homogenisers processes, product and applications”,APVホモジナイザーグループのマーケティング広報
【非特許文献2】Chinese Journal of Polymer Science,Volume 20,No.2,(2002),93−98
【非特許文献3】S.Iijima,Nature 354,56−58,1991
【非特許文献4】Rompp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998
【非特許文献5】H.G.Elias,Makromolekule,Volume 2,Technologie,5th edition,1992,99頁 ff
【非特許文献6】Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie [Methods of organic chemistry],4thedition,Volume 14/2,848頁
【非特許文献7】Boulら.(1999),Chem Phys.Lett.310,367
【非特許文献8】Bahrら.(2001),J.Am.Chem.Soc.123,6536
【非特許文献9】Bahrら.(2001),Chem.Mater.13,3823
【非特許文献10】Kooiら.(2002),Angew.Chem.Int.Ed.41,1353
【非特許文献11】Koshioら.(2001),Nano Lett.1,361
【非特許文献12】Holzingerら.(2001),Angew.Chem.Int.Ed.,40,4002
【非特許文献13】Georgakilasら.(2002),J.Am.Chem.Soc.124,760
【非特許文献14】Duesbergら.(1998),Appl.Phys.A67,117
【非特許文献15】Doomら.(2002),J.Am.Chem.Soc.,124,3169
【非特許文献16】Shimら.(2002),Nano Lett.2,285
【非特許文献17】Curranら.(1998),Adv.Mater.10,1091
【非特許文献18】Tangら.(1999),Macromolecules 32,2569
【非特許文献19】Colemanら.(2000),Adv.Mater.12,213
【非特許文献20】O’Connellら.(2001),Chem.Phys.Lett.342,265
【非特許文献21】Bandyopadhyayaら.(2002),Nano Lett.2,25
【非特許文献22】Starら.(2002),Angew.Chem.Int.Ed.41,2508
【非特許文献23】Chenら.(2002),J.Am.Chem.Soc.124,9034
【非特許文献24】Starら.(2002),Macromolecules 35,7516
【非特許文献25】Hamonら.(1999),Adv.Mater.11,834
【非特許文献26】Chenら.(2001),J.Phys.Chem.105,2525
【非特許文献27】Chattopadhyayら.(2002),J.Am.Chem.Soc.124,728
【非特許文献28】G.W.Becker,D.Braun,Kunststoff−Handbuch,Plastics handbook,Volume 10,“Duroplaste”[“Thermosets”] Carl Hanser Verlag,Munich,Vienna,1988,pages 1ff
【非特許文献29】Walter Krauss in Kittel,Lehrbuch der Lacke及びBeschichtungen,Textbook of lacquers and coatings,S.Hirzel Verlag Stuttgart,Leipzig,Volume 2,1998
【非特許文献30】Ullmanns Enzyklopadie der technischen Chemie,Verlag Chemie Weinheim,Volume 20,(1981)457ff.,504,507ff.,517/518,524
【非特許文献31】Brock,Thomas,Groteklaes,Michael,Mischke,Peter,Lehrbuch der Lacktechnologie,Textbook of coatings technology,Curt R.Vincentz Verlag Hanover,(1998) 93ff
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、有機媒体中のマイクロゲルを含み、マイクロゲル及び有機媒体を含む周知の複合材料と比較して、改善された機械的及びレオロジー特性を有する複合材料を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、従来技術から進んだ、架橋性及び/又は非架橋性有機媒体、マイクロゲル並びにカーボンナノチューブから構成された複合材料を開発することであり、ここで、良好な引張破断ひずみ等のマイクロゲルの有益な特性、高い強度及び導電性等のカーボンナノチューブの有益な特性が組み合わせられる。
【0023】
本発明のさらなる目的は、対応する複合材料を製造するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って、本発明が、適切な複合材料(調合物)の開発、並びに有機媒体中のカーボンナノチューブ及びマイクロゲルの最適な分散のためのプロセスの開発を提供する。架橋性有機媒体中のカーボンナノチューブとマイクロゲルとの一次粒子範囲までの分離が、例えば、プラスチック中への組み込みといった全ての使用における、例えば、特に、再現可能な方法での、カーボンナノチューブとマイクロゲルとのナノ特性の実用に対する必要条件である。
【0025】
この目的は、少なくとも1つのマイクロゲル(A)と、少なくとも1つのカーボンナノチューブ化合物(B)と、少なくとも1つの有機媒体(C)とを含む複合材料によって達成される。
【0026】
驚いたことに、ゴム状マイクロゲルのカーボンナノチューブ化合物への添加のおかげで、固体含有量が増加した場合であっても、硬さ、弾性率E、引張破断ひずみε、引張破断応力σ及び耐摩耗性を増加させ又は改善し、0.2s−1、5s−1及び100s−1のせん断速度γにおける流動性を改善することが可能であることが明らかになっている。1000s−1の極めて早いせん断速度においてのみ、増加した固体含有量の影響が現れる。マイクロゲルの添加によって、マイクロゲルを添加しない場合に可能であるCNT量よりも大量のCNTを液体有機媒体に導入することが可能となる。
【0027】
マイクロゲル(A)
本発明の複合材料に使用されるマイクロゲル(A)は、好ましくは、高エネルギー放射線によって架橋化されないマイクロゲルである。ここで、高エネルギー放射線は、適切には、0.1μm未満の波長の電磁放射線を意味する。
【0028】
実際は、工業規模で行うことは不可能であり、職業上の安全面の課題があるため、高エネルギー放射線によって全体的に均一に架橋化されたマイクロゲルの使用は都合が悪い。
【0029】
さらに、高エネルギー放射線によって全体的に均一に架橋化されたマイクロゲルを使用して製造された複合材料において、急な(abrupt)応力が、マトリックスと分散相との間のテアリング効果を生じ、機械的特性、膨潤挙動及び応力腐食割れ等を悪化させる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、マイクロゲル(A)の一次粒子が、実際は、球形状を有する。DIN53206:1992−08によると、一次粒子とは、コヒーレント位相に分散され、適切な物理的方法(電子顕微鏡)によって個別の種として識別可能であるマイクロゲル粒子をいう(例えば、非特許文献4を参照)。“実質的に球形”形状とは、この複合材料が例えば電子顕微鏡によって観察された場合に、マイクロゲルの分散した一次粒子が、見るからに、基本的に球状面に見えることを意味する。例えば、架橋化の過程において、マイクロゲルは、基本的に、有機媒体(C)中で形状が変化しないため、上記及び下記の見解は、例えば、有機媒体が架橋化される場合、本発明の複合材料を架橋化することによって得られるマイクロゲル含有複合材料にも等しく当てはまる。
【0031】
本発明の複合材料に存在するマイクロゲル(A)の一次粒子において、単一の一次粒子の直径の偏差は、好ましくは、250%未満であり、さらに好ましくは200%未満であり、さらにいっそう好ましくは100%未満であり、さらにいっそう好ましくは80%未満であり、さらにいっそう好ましくは50%未満であり、前記偏差は、[(d1−d2)/d2]×100として定義され、ここで、d1及びd2が、一次粒子のいずれの2つの直径であり、d1>d2である。
【0032】
マイクロゲルの一次粒子の好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%が、250%未満、さらに好ましくは200%未満、さらにいっそう好ましくは100%未満、さらにいっそう好ましくは80%未満、さらにいっそう好ましくは50%未満の直径の偏差を有し、前記偏差は、[(d1−d2)/d2]×100として定義され、ここで、d1及びd2が、一次粒子のいずれの2つの直径であり、d1>d2である。
【0033】
上記の単一の粒子の直径の偏差が、以下の方法によって測定される。第一に、本発明の複合材料の薄片が製造される。次に、透過電子顕微鏡写真が、例えば、10000又は200000の倍率で作られる。833.7nm×828.8nmの領域内で、10個のマイクロゲル一次粒子に対して手動で最大及び最小の直径がd1及びd2として測定される。分析されるマイクロゲル一次粒子の少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%に対して上に定義した偏差が、250%未満、さらに好ましくは100%未満、さらにいっそう好ましくは80%未満、さらにいっそう好ましくは50%未満の各ケースである場合、マイクロゲル一次粒子が、その偏差の上に定義された特徴を有する。
【0034】
可視であるマイクロゲル一次粒子の十分なオーバーラップが存在するほど、複合材料中のマイクロゲルの濃度が高い場合、分析サンプルの適切な希釈を先行させることによって、その評価性を改善することが可能である。本発明の複合材料において、マイクロゲル(A)の一次粒子が、好ましくは、5から500nmの、さらに好ましくは20から400nmの、さらに好ましくは20から300nmの、さらに好ましくは20から250nmの、さらにいっそう好ましくは20から99nmの、さらにいっそう好ましくは40から80nmの平均粒径を有する(DIN53206に対する直径値)。エマルション重合による特に細かなマイクロゲルの製造が、それ自体が周知である方法における反応パラメータを制御することにより達成される(例えば、非特許文献5参照)。
【0035】
本発明の複合材料の架橋化又は重合化においてマイクロゲルのモルフォロジーが、基本的に変化しないため、分散された一次粒子の平均粒径が、基本的に、重合化又は架橋化によって得られた複合材料における分散された一次粒子の平均粒径と対応する。
【0036】
本発明の複合材料において、マイクロゲル(A)が、少なくとも約70重量%の、さらに好ましくは少なくとも約80重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも約90重量%(ゲル含有量)の、23℃のトルエンに不溶性である割合を適切に有する。トルエンに不溶性である割合が、23℃のトルエン中で測定される。これは、250mgのマイクロゲルを、20mlのトルエンに膨潤させ、23℃で24時間の間振動させることにより行われる。20000rpmで遠心分離した後、不溶性である割合分が、除去され、乾燥される。ゲル含有量が、乾燥した残留物と開始重量との割合から計算され、重量パーセントで報告される。
【0037】
本発明の複合材料において、マイクロゲル(A)は、約80未満の、さらに好ましくは60未満の、さらにいっそう好ましくは40未満の、23℃のトルエンへの膨潤指数を適切に有する。例えば、マイクロゲル(Q)の膨潤指数が、さらに好ましくは、1と15の間であってよい。膨潤指数が、23℃で24時間の間トルエン中に膨潤された(20000rpmで遠心分離した後)マイクロゲルを含む溶媒の重さと乾燥マイクロゲルの重さとから計算される:Q=マイクロゲルの湿潤重量/マイクロゲルの乾燥重量である。
【0038】
膨潤指数を測定するために、24時間の間振動させながら、250mgのマイクロゲルを、25mlのトルエン中に膨潤させうる。このゲルが、遠心分離除去され、湿潤状態で重さが測定され、次に、70℃で一定重量まで乾燥され、再度重さが測定される。
【0039】
本発明の複合材料において、マイクロゲル(A)は、−100から120℃の、さらに好ましくは−100から100℃の、さらにいっそう好ましくは−80から80℃の、ガラス転移温度Tgを適切に有する。まれなケースにおいて、それらの架橋化の程度が高いために、ガラス転移温度を有さないマイクロゲルを使用することも可能である。
【0040】
マイクロゲル含有ポリマー複合材料において極めて実質的に影響を受けない硬さ及び引き裂き伝播抵抗を残すために、室温(20℃)未満のマイクロゲルのガラス転移温度が特に有利であり、一方で、重合化される複合材料のレオロジーが所望の方法において影響を受ける。
【0041】
マイクロゲル含有ポリマー複合材料において、改善された引き裂き伝播抵抗、優れた補強、硬さの増加を達成し、所望の方法で重合化される複合材料のレオロジーに影響を及ぼすために、室温(20℃)を超えるマイクロゲル(A)のガラス転移温度が特に有利である。
【0042】
さらに、本発明の複合材料に使用されるマイクロゲルが、5℃以上の、好ましくは10℃以上の、さらに好ましくは20℃以上のガラス転移の範囲を適切に有する。
【0043】
このような広い範囲のガラス転移を有するマイクロゲルが、全体的に均一に放射線−架橋化されたマイクロゲルとは対照的に、一般的に、不完全で均一に架橋化される。これによる効果は、本発明の複合材料から製造された架橋性又は重合化複合材料中のマトリックス相から分散相への係数の変化が、急速でないことである。結果として、これらの複合材料上の急な応力が、マトリックスと分散相との間のテアリング効果を引き起こさず、機械的特性、膨潤挙動及び応力腐食割れ等に有利な効果を及ぼす。
【0044】
マイクロゲルのガラス転移温度(Tg)及びガラス転移範囲(ΔTg)が、以下の条件下での異なる熱分析(DTA,DSC)によって測定される。
【0045】
Tg及びΔTgの測定のために、2つの冷却/加熱サイクルが実施される。第2の加熱サイクルにおいてTg及びΔTgが測定される。測定のために、10−12mgの選択されたマイクロゲルが、パーキンエルマー社から入手したDSCサンプル容器(標準的なアルミニウムパン)において使用される。第1DSCサイクルが、サンプルを、液体窒素で−100℃まで第一冷却し、次に、それを、20K/分の速度で150℃まで加熱することにより実施される。サンプル温度が150℃に達したらすぐにサンプルを急激に冷却することにより、第2DSCサイクルが、開始される。この冷却が、約320K/分の速度で達成される。第2加熱サイクルにおいて、サンプルが、第1サイクルにおけるように、再び150℃まで加熱される。第2サイクルにおける加熱速度もまた、20K/分である。Tg及びΔTgが、第2加熱操作のDSC曲線上に図式的に測定される。この目的のため、3つの直線が、DSC曲線に対して描かれる。第1直線が、Tg未満のDSC曲線の部分に対して描かれ、第2直線が、Tgを通過し、ターニングポイントを有する曲線の部分に対して描かれ、第3直線が、Tgを超えるDSC曲線の部分に対して描かれる。この方法において、2つの交差点を有する3つの直線が得られる。各交差点が、特性温度によって特徴づけられる。ガラス転移温度Tgが、これらの2つの温度の平均として得られ、ガラス転移範囲ΔTgが、2つの温度の差から得られる。
【0046】
高エネルギー放射線によって架橋化されず、本発明の複合材料に存在するマイクロゲルであって、好ましくは、ホモポリマー又はランダムコポリマーをベースとするマイクロゲルが、それ自体が周知の方法で製造されることが可能である(例えば、特許文献44,特許文献45,特許文献46,特許文献2,特許文献17,特許文献18,特許文献19,特許文献20,特許文献21,特許文献22,特許文献23,特許文献24,特許文献25,特許文献26,特許文献27,特許文献28,特許文献29,特許文献30,及び特許文献31を参照)。特許文献44,特許文献46及び特許文献2は、二重結合−含有ゴムを含む混合物中のCR,BR及びNBRマイクロゲルの使用を主張しており;特許文献17では、NR,SBR及びBRのような、二重結合−含有ゴムを含む混合物中のその後に改良されたマイクロゲルの使用が説明されている。この点において、上記特許(又は特許出願)の開示内容が、参照により本発明に組み込まれている。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の複合材料中のマイクロゲル(A)が、ゴムをベースとしている。本発明の関連において、“マイクロゲル”という用語は、適切に及び好ましくは、特に以下のゴムを架橋化することによって得られるゴム粒子を意味すると理解される。
【0048】
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/C1−4アルキルアクリレートコポリマー
IR:ポリイソプレン
SBR:1から90重量%、好ましくは5から50重量%のスチレン含有量を有するスチレン−ブタジエンコポリマー
X−SBR:カルボン酸スチレン−ブタジエンコポリマー
FKM:フッ素ゴム
ACM:アクリル酸ゴム
NBR:5から60重量%、好ましくは10から50重量%のアクリロニトリル含有量を有するポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー
X−NBR:カルボン酸ニトリルゴム
CR:ポリクロロプレン
IIR:0.5から10重量%のイソプレン含有量を有するイソブチレン/イソプレンコポリマー
BIIR:0.1から10重量%の臭素含有量を有する臭素化イソブチレン/イソプレンコポリマー
CIIR:0.1から10重量%の臭素含有量を有する塩素化イソブチレン/イソプレンコポリマー
HNBR:部分的及び全体的水素化ニトリルゴム
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー
EAM:エチレン/アクリレートコポリマー
EVM:エチレン/ビニルアセテートコポリマー
CO及びECO:エピクロルヒドリンゴム
Q:シリコーンゴム
AU:ポリエステルウレタンポリマー
EU:ポリエーテルウレタンポリマー
ENR:エポキシ化天然ゴム
又はこれらの混合物。
【0049】
非架橋化マイクロゲル開始材料が、適切に、以下の方法によって製造される:
1.エマルション重合
2.変異1を介して得ることが出来ないゴムの溶液重合
【0050】
例えば、天然ゴムラテックスといった天然起源のラテックスを使用することも可能である。本発明の複合材料において、使用されるマイクロゲル(A)が、好ましくは、エマルション重合及び架橋化によって得ることが可能なそれらである。
【0051】
エマルション重合によって本発明に従って使用されるマイクロゲルの調製において、例えば、以下のフリー−ラジカルの重合可能なモノマーが使用される:ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、アクリル及びメタクリル酸のエステル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン及び例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の二重結合−含有カルボン酸、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートである二重結合−含有ヒドロキシル化合物、アミン−官能性(メタ)アクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素及びN−アリルチオ尿素、及び、また、2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート及び2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等の第2級アミノ(メタ)アクリルエステル。ゴム状ゲルの架橋化が、下記のような後の架橋化又は架橋化多官能化合物との共重合などによって、エマルション重合の間に直接的に達成されることが可能である。直接的に架橋化されたマイクロゲルの使用が、本発明の好ましい実施形態を構成する。
【0052】
好ましい多官能コポリマーは、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタル酸、トリアリルシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリ−ブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トリレネビス(tolylenebis)(マレイミド)及び/又はトリアリルトリメリテート等の、少なくとも2つ、好ましくは2から4つの共重合化可能なC=C二重結合を有する化合物である。
【0053】
さらに、エチレングリコール、プロパンジオール−1,2、ブタンジオール、ヘキサンジオール、2から20の、好ましくは2から8のオキシエチレンユニットを含むポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、脂肪酸ジ−及びポリオールから形成された不飽和ポリエステル、及びまた、マレイン酸、フマル酸、及び/又はイタコン酸等のC2−C10−アルコール、多価の、好ましくは、ジ−からテトラハイドリックのメタクリレート及びアクリレートが有用である。
【0054】
高転換に至るまで重合を継続することにより、又は高内部転換での重合化によるモノマー供給プロセスにおいて、エマルション重合の間における特定のゴム状マイクロゲルの架橋化を達成することも可能である。また、他の可能性は、レギュレーターなしでエマルション重合を行うことである。
【0055】
エマルション重合後の架橋化されていない又は軽度に架橋化されたマイクロゲル開始剤の架橋化に対して、エマルション重合において得られたラテックスを使用することが最適である。原理上、この方法は、例えば、再沈殿といった他の方法で得ることが可能な非水ポリマー分散の場合に使用することも可能である。この方法で、天然ゴムラテックスを架橋化することも可能である。
【0056】
適当な架橋化化学物質は、例えば、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン、2,5−ジヒドロ−ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチル−ペルベンゾエートなどの有機過酸化物、並びに、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスシクロヘキサンニトリルなどの有機アゾ化合物、並びに、また、ジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジンなどのジ−及びポリメルカプト化合物、並びに、多硫化ナトリウムとのビスクロロエチル型のメルカプト−末端反応生成物のようなメルカプト−末端多硫化ゴムである。
【0057】
後(post)架橋化の性能に対する最適温度が、その性質上、架橋剤の反応性に依存し、室温から約180℃までの温度で、任意に、高圧下で、行われることが可能である(非特許文献6参照)。特に、好ましい架橋剤が過酸化物である。
【0058】
マイクロゲルとのC=C二重結合を含むゴムの架橋化が、分散又はエマルションと同時に生じる、特許文献32及び33に説明されるようなヒドラジン、又は、任意的な、例えば、有機金属ヒドリド錯体といった他の水素化剤によるC=C二重結合の部分的な又は完全な水素化において達成されることも可能である。
【0059】
後架橋化の前後、又は後架橋化の間、任意的に、凝集により粒子を増大させることが可能である。
【0060】
本発明に従って使用される調製プロセスにおいて、上記利点を有しうる、不完全な均一性の架橋化マイクロゲルが、常に、得られる。
【0061】
溶液重合によって調製されるゴムが、マイクロゲルの製造のための開始材料としての役割を果たすことも可能である。これらの場合、開始材料が、適当な有機溶媒中のこれらのゴムの溶液である。
【0062】
適当な粒径範囲内のゴムの分散が得られるような、マイクロゲルの所望のサイズが、適当なユニットによって、任意に、例えば、界面活性剤といった適当な界面−活性補助剤を添加した好ましくは水である液体媒体中のゴム溶液を混合することにより定められる。分散した溶液ゴムの架橋化のための手順は、エマルションポリマーの後の架橋化のための上記と同じである。適当な架橋剤は、上記の化合物であり、分散体の調製のために使用される溶液が、任意に、例えば、蒸留によって、架橋化の前に除去されることが可能である。
【0063】
本発明の複合材料を製造するために使用されるマイクロゲルが、特に表面において、基本的に反応基を有さない未修飾マイクロゲルか、特に表面において、官能基で修飾された修飾マイクロゲルのいずれかであってよい。後者は、C=C二重結合に対する化学反応を含む、既に架橋化されたマイクロゲルの化学反応によって調製されることが可能である。これらの反応性化学物質は、特に、マイクロゲルに対して、例えば、アルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ニトリル基などの化学結合極性基、及び、例えば、メルカプト、ジチオカルバメート、ポリスルフィド、キサントゲン酸塩、チオベンゾチアゾールといった硫黄−含有基、及び/又はジチオリン酸基、及び/又は不飽和ジカルボン酸基を補助することが可能な化合物である。これは、また、N,N’−m−フェニレンジアミンにも当てはまる。マイクロゲル修飾の目的は、本発明の複合材料が、マイクロゲルが組み込まれる後者のマトリックスを製造するために使用される場合に、又は、本発明の複合材料が、生成品中の良好な分散性及び良好な結合を達成するために、マトリックスに組み込まれるために使用される場合に、マイクロゲルの適合性を改善することである。
【0064】
特に好ましい修飾方法が、官能基モノマーを含むマイクロゲルのグラフティング、及び、低分子量剤との反応である。
【0065】
官能基モノマーを含むマイクロゲルのグラフティングのために、開始材料が、適切には、フリーラジカルエマルション重合の条件下で、極性モノマー及びまた第2級アミノ(メタ)アクリル酸エステルと反応する水性マイクロゲル分散体であり、前記極性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素、及びN−アリルチオ尿素などであり、前記第2級アミノ(メタ)アクリル酸エステルは、2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート及び2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミドなどである。この方法において、マイクロゲルが、コア/シェル モルフォロジを有して得られ、この場合、シェルが、マトリックスとの高い適合性を有するべきである。修飾ステップにおいて使用されるモノマーが、未修飾マイクロゲル上に極めて実質的に定量的にグラフトされることが望ましい。適切には、マイクロゲルが完全に架橋化される前に、官能基モノマーが計量される。
【0066】
また、原理上、考えられることは、非水システム中のマイクロゲルのグラフティングであり、この場合、イオン重合法によるモノマーを用いた修飾も可能である。
【0067】
低分子量剤でのマイクロゲルの表面修飾に対して、以下の試薬が特に有用である:元素硫黄、硫化水素、及び/又は1,2−ジメルカプトエタン又は1,6−ジメルカプトヘキサンなどのアルキルポリメルカプタン、及び、また、ジベンジルジチオカルバメート及び/又はジメチルジチオカルバメートのアルカリ金属塩のようなジアルキル及びジアルキルアリールジチオカルバメート、及び、また、カリウムエチルキサントゲン酸塩及びナトリウムイソプロピルキサントゲン酸塩のようなアルキル及びアリールキサントゲン酸塩、ジブチルジチオリン酸及びジオクチルジチオリン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩との反応物、及び、また、ドデシルジチオリン酸。上記反応は、有利には、硫黄の存在下で行われてもよく、この場合、硫黄も組み込まれて、ポリスルフィド結合を形成する。この化合物の添加に対して、有機及び無機過酸化物及び/又はアゾ開始剤のような、フリー−ラジカル開始剤を添加することが可能である。
【0068】
他の選択肢としては、例えば、オゾン分解による並びに塩素、臭素及びヨウ素を用いたハロゲン化による、二重結合マイクロゲルの修飾がある。
【0069】
また、例えば、エポキシ化マイクロゲルからのヒドロキシル基−修飾マイクロゲルの製造といった、修飾マイクロゲルの更なる反応が、マイクロゲルの化学的修飾として理解される。
【0070】
好ましい実施形態において、マイクロゲルが、特に、また、その表面において、ヒドロキシル基によって修飾される。無水酢酸との反応及びポリマーのmg KOH/gの次元でのヒドロキシル価として、DIN53240に対して、KOHでリリースされた酢酸の滴定により、マイクロゲルのヒドロキシル基含有量が、測定される。マイクロゲルのヒドロキシル価が、好ましくは、ポリマーの0.1から100mg KOH/gの間であり、さらに好ましくは、0.5から50mg KOH/gである。
【0071】
使用される修飾剤の量が、各場合における要求及びその効果に基づいて判断され、使用されるゴムマイクロゲルの総量をベースとして0.05から30重量%の範囲であり、特に、ゴムゲルの総量をベースとして0.5−10重量%とすることが好ましい。
【0072】
修飾反応が、0から180℃、好ましくは、20から95℃の温度で、任意には、1から30barの圧力下で実施されることが可能である。修飾が、物質中で又はその分散体の形状においてゴムマイクロゲル上で開始されることが可能であり、後者の場合、不活性有機溶媒又は他には水が、反応媒体として使用されることが可能である。修飾が、架橋化ゴムの水分散液中で行われることがさらに好ましい。
【0073】
例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンといった非極性熱可塑性材料、スチレン、ブタジエン及びイソプレン(SBR,SIR)をベースとしたブロックコポリマー、及び、また、水素化イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)及び通常の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE−O)及び熱可塑性エラストマー加硫物(TPE−V)等の形成を引き起こす架橋性媒体を含む本発明の複合材料の場合には、未修飾マイクロゲルの使用が、特に好ましい。
【0074】
例えば、ポリアミド(PA)、熱可塑性ポリアミド(TPE−A)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPE−U)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等の極性熱可塑性材料の形成を引き起こす架橋性媒体を含む本発明の複合材料の場合には、修飾マイクロゲルの使用が、特に好ましい。
【0075】
製造されたマイクロゲルの平均直径が、例えば、0.1マイクロメートル(100nm)±0.01マイクロメートル(10nm)の高精度で調整されることが可能であり、例えば、全マイクロゲル粒子の少なくとも75%が、0.095マイクロメートルから0.105マイクロメートルのサイズである粒径分布を達成する。特に、5から500nmの間の範囲である他の平均直径のマイクロゲルが、同じ精度で製造され(全粒子の少なくとも75%が、総合的な粒径分布曲線(光散乱によって測定される)の最大値の周囲であって、最大値の上下±10%の範囲内にある)、使用されることが可能である。これにより、本発明の複合材料内に分散されたマイクロゲルのモルフォロジーを、要求どおりに、実際上正確に調整することが可能となり、従って、本発明の複合材料の及び例えばそこから製造されるプラスチックの特性を定めることが可能となる。
【0076】
従って、好ましくは、BR,SBR,NBR,SNBR又はアクリロニトリル又はABRをベースとして製造されたマイクロゲルを、例えば、蒸発濃縮、凝集によって、さらなるラテックスポリマーとの共凝集(co−coagulation)によって、凍結凝集(freeze coagulation)によって(特許文献34参照)、又は噴霧乾燥によって、後処理(worked up)ることが可能である。噴霧乾燥によって後処理する場合、例えば、CaCO又はシリカである、通常の流動助剤を使用することも可能である。
【0077】
カーボンナノチューブ(B)
本発明の複合材料が、カーボンナノチューブを含む少なくとも1つの化合物を含む。本発明との関連において、カーボンナノチューブは、炭素から形成された、微視的に小さな管状構造(分子ナノチューブ)を意味すると理解される。フラーレンの壁又はグラファイトの面などのその壁が、基本的に、炭素のみから構成され、炭素原子が、各々が6角形で3つの結合相手を有するハニカム状構造をなす(sp混成によって規定される)。
【0078】
カーボンナノチューブが、しばしば、CNTsと略記される。
【0079】
カーボンナノチューブが、管状となるように巻かれたグラファイトの炭素面から得られ:炭素原子が、各々が六角形で3つの結合相手を有するハニカム状構造を形成する。理想的な六角形構造を有するチューブが、均一な厚さを有し、線形である;しかしながら、五角形の炭素環を含むねじれた又は狭いチューブも可能である。ハニカム状のグラファイトを巻き、管状(“真っすぐ”又は“斜め”)とする方法に従い、結果物が、らせん形構造(スクリューのように巻かれる)であり及び鏡面−対称ではない、すなわち、キラルではないものである。本文献において、インデックスの組(n,m)が、3つのクラスの間を区別するために使用される。これらは、アームチェア((n,n),アキラル,非−らせん形)、ジグザグ((n,0),アキラル,らせん形)、及びキラル((n,m)、キラル,らせん形)として周られている。最初の2つの名前が、C−C結合が、周辺に沿って続く場合に生じる線の形状と関連する。これらの全てのクラスが、本発明の複合材料に適している。
【0080】
本発明に従って提供されたチューブの直径が、好ましくは、0.1から250nm、さらに好ましくは、3から100nm、特に、5から50nmの範囲である。本発明に従って使用されるカーボンナノチューブの長さが、好ましくは、10nmから1mm、さらに好ましくは、50nmから100μm、特に、100nmから20μmである。
【0081】
アスペクト比が、好ましくは、100以上であり、さらに好ましくは、500以上であり、特に、3000以上である(L:D、すなわち、長さ:直径)。
【0082】
本発明の複合材料において、単層及び多層カーボンナノチューブを使用することが可能である。オープン又はクローズのチューブ、すなわち、フラーレン構造からの部分を有する1つ又は2つの蓋(lid)を備えたカーボンナノチューブを使用することも可能である。
【0083】
カーボンナノチューブは、0.1−2mmの粒径を有する粒子としての凝集構造である。有機媒体中のカーボンナノチューブの分散体において、粒子が、分離され、ナノチューブがマトリックス中で分離される。
【0084】
本発明との関連において、カーボンチューブの適当な構造の選択により、チューブ内に金属又は半導体のいずれかの電気伝導性を与えることが可能である;低温において超伝導であるカーボンチューブを使用することも可能である。
【0085】
本発明の複合材料において、1.0から2.0g/cm、さらに好ましくは、1.1から1.8g/cm、特に、1.5から1.75g/cmの密度を有するカーボンナノチューブを使用することが好ましい。
【0086】
本発明の複合材料は、好ましくは、20℃におけるDIN53018に対して、コーンプレート粘度計において、5s−1の速度で、25mPasから5000000mPasまでの、さらに好ましくは、200mPasから3000000mPasまでの粘度を有する。
【0087】
本発明に従う適したカーボンナノチューブを、多数の異なるプロセスによって得ることが可能である。これらのプロセスは、例えば、固定層反応器、管型反応器、ロータリーチューブ反応器、気泡−生成器(bubble−forming)、乱流又はジェット−アシスト流動層反応器、内部及び外部循環流動層反応器から構成された群から選択された装置内で実行されるプロセス段階を含む。
【0088】
カーボンナノチューブの適切な合成が、金属触媒(例えば、Fe,Co,Ni)の存在下においてグラファイトのライトアーク放電によって達成される。さらなる適したプロセスは、グラファイト、ニッケル及び/又はコバルトを含む混合物のレーザー−制御蒸発、異なる炭素源が使用されることが可能である化学気相成長法(CVDプロセス)、又は気相合成である。さらなる適したプロセスは、例えば、特許文献35−38、特許文献16、及びその中で引用された従来技術に記載されており、この問題についてのその開示は、本発明に組み込まれる。
【0089】
本発明に使用されるカーボンチューブは、特に、特許文献39に記載されているプロセスによって得られる。
【0090】
上記プロセスによって得ることが可能なカーボンチューブが、その製造直後において、適当な後処理によって除去することが可能な比較的大量の不純物又は側壁欠陥を未だ有する。生産物−関連の不純物が、主として、非晶質炭素、グラファイトによって包囲された金属粒子、グラファイト状材料及びフラーレンを含む。
【0091】
しかしながら、本発明との関連において、精製されていないカーボンナノチューブを使用することも可能である。従って、本発明の好ましい実施形態において、その製造後にいずれの精製又は後処理にさらされていない少なくとも1つのカーボンナノチューブが使用される。
【0092】
カーボンナノチューブを精製する場合、これが、それ自体が当業者に周知であり、液相及び/又は気相酸化を含む適当なプロセスによって達成されることが可能であり、任意的に、その後、溶媒抽出、超音波処理、遠心分離、クロマトグラフィ、及び/又はマイクロ波処理が続いてよい。液相酸化の過程において、主に、硝酸、硫酸及び/又は塩酸のような強酸が、過酸化水素H又は過マンガン酸カリウムKMnOのような対応する適当な酸化剤とともに使用される。
【0093】
しばしば、金属−含有不純物を除去するために、気相酸化が、液相酸化と組み合わされもする。カーボンナノチューブを精製するための適当なプロセスの概説が、特許文献40に記載されており、この問題についてその開示が、参照により、本発明に組み込まれる。
【0094】
本発明の複合材料において、未修飾(修飾されていない)カーボンナノチューブ又は官能基で修飾されたカーボンナノチューブを使用することが可能である。
【0095】
従って、本発明の一実施形態において、本発明の複合材料に使用されるカーボンナノチューブが、官能化されており、この場合、カーボンナノチューブが、共有又は非共有のいずれかで官能化されうる。
【0096】
官能化が、好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びアミン基から構成される群から選択される官能基によって達成される。
【0097】
共有官能化のための適当なプロセスの例が、上記酸化後処理及び/又は精製プロセスであり、通常、カルボキシル基のカーボンナノチューブへの導入を引き起こす。このカルボキシル基を用いて、次に、任意的に、例えば、カルボン酸の適当なアミンとの反応によるアミド形成といった、さらなる官能化を起こすことが可能である。このプロセスが、ナノチューブの炭素骨格にポリマーを付着させることも可能である。
【0098】
含酸素炭素結合及び金属原子による配位結合により、単層カーボンナノチューブに金属錯体を付着あせることも可能である。
【0099】
本発明の複合材料に使用されることが可能なカーボンナノチューブに対するさらなる共有官能化の例が、フッ素化カーボンナノチューブの側壁アルキル化(非特許文献7)、アリールジアゾニウム化合物との反応(非特許文献8−10)、塩化ベンゼン及びポリ(メチルメタクリレート)との超音波−誘導反応(非特許文献11)、ナイトレイン及び求核性カルベンの付加反応(非特許文献12)、及びアゾメチニリデン(azomethinylidene)の付加反応(非特許文献13)である。
【0100】
非共有の官能化が、通常、カーボンナノチューブの側壁上の分子の吸収によって達成される。この目的のために、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(非特許文献14、非特許文献15)又はトリトン界面活性剤(オクチルフェノールエトキシレートのクラスからの界面活性剤)である界面活性剤がしばしば使用される。トリトン界面活性剤を使用する場合、界面活性剤のアルコール単位が、さらなる共有官能化のために役立ちうる(非特許文献16)。
【0101】
非共有の方法で、ポリマーをカーボンナノチューブに結合させることも可能である(非特許文献17−24)。
【0102】
酸化により形成されたカルボン酸基と有機アミンとの間の塩形成も可能である(非特許文献25−27)。
【0103】
カーボンナノチューブの側壁上におけるピレン誘導体の吸収もさらに可能である。
【0104】
本発明との関連において、本発明の複合材料に使用されるカーボンナノチューブは、有機媒体(C)及び/又は架橋剤(D)に対して反応性又は非反応性であってよい。これが、例えば、カーボンナノチューブの官能化のタイプによって取り込まれる、例えば、成分のタイプによって制御されることが可能である。
【0105】
有機媒体(C)
本発明の複合材料が、少なくとも1つの有機媒体(C)を含む。本発明との関連において、“有機媒体”とは、媒体の化学構造が、少なくとも1つの炭素原子を含むことを意味する。
【0106】
本発明の複合材料に使用される媒体(C)が、架橋性(C1)又は非架橋性(C2)のいずれかである。架橋性(C1)又は非架橋性(C2)媒体の混合物を使用することも可能である。
【0107】
本発明の第一実施形態において、有機媒体(C)が架橋性である。
【0108】
本発明の複合材料が、少なくとも1つの有機媒体(C1)を含み、該有機媒体(C1)が、120℃の温度において、30000mPas未満の、好ましくは10000mPas未満の、さらに好ましくは1000mPas未満の、さらにいっそう好ましくは750mPas未満の、さらにいっそう好ましくは500mPas未満の粘度を有する。
【0109】
架橋性有機媒体の粘度が、120℃におけるDIN53018に対してコーンプレート測定システムを用いて5s−1の速度で測定される。
【0110】
室温(20℃)にて、このような媒体が、液体から固体であり、好ましくは液体又は自由流動性である。
【0111】
架橋性有機媒体(C1)が、好ましくは、ヘテロ原子又はC=C基を含む官能基によって架橋化可能であるものである。
【0112】
通常、これらの媒体が、上記粘度を有するが、本発明に従い、上記粘度を達成するために、高粘度の架橋性媒体を使用し、それらを、さらなる低粘度の架橋性媒体と混合することも可能である。
【0113】
使用される成分(C1)が、好ましくは、室温(20℃)において液体であり、通常、さらなる成分(D)と反応することにより、例えば、フリーラジカル開始剤の存在下での、フリーラジカル、特に過酸化物、架橋化によって、又はUV放射によって、重付加又は重縮合によって、硬化される架橋性媒体であり、下記のようなプラスチックを提供する。
【0114】
適当な架橋性有機媒体(C1)を架橋化するために適した成分(D)の選択が、それ自体が当業者に周知であり、関連する専門文献が参照される。
【0115】
本発明の複合材料の製造に適した液体の架橋性有機媒体(C1)が、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、又はポリエーテルポリエステルをベースとしたポリオール、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂である。ここで記載された、樹脂又は樹脂混合物及びそれらの硬化剤又は硬化剤混合物において、一成分が、好ましくは、2.0に近い官能性を有し、他の成分が、好ましくは、1.5から2.5の、さらに好ましくは2から2.5の官能性を有し、それを形成するポリマーが、直鎖型又は軽度にブランチされているが、化学的に架橋化されていない(この問題に関しては、非特許文献28参照)。1から約4、好ましくは1から3の官能性を有する単及び多官能性成分の添加物を使用することも可能であり、全体の結果物が、約1.5から2.5の官能性である。
【0116】
対応する架橋性有機媒体が、非特許文献29に記載されており、この問題に関して、その開示が、参照により本発明に組み込まれる。
【0117】
ポリエステルポリオールが、過量のジ−又はポリオールとのジカルボン酸の縮合によって調製され、又は、カプロラクトンをベースとしている。
【0118】
使用されるポリエステルポリオールが、好ましくは、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドをベースとしたものである。ポリオキシテトラメチレンも使用される。
【0119】
ジ−又はポリアミン上へのアルキレンオキシドの添加が、窒素−含有塩基性ポリエーテルを生じる。上記ポリマーが、好ましくは、TDI(トリレンジイソシアネート)又はMDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)などの芳香族イソシアネートと反応し、特定の場合においては、NDI(ナフタレン 1,5−ジイソシアネート又はTODI(3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル)及びその誘導体、同じベースでの芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族イソシアネート((HDI,IPDI,H12MDI(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)、HDTI(メチルシクロヘキシルジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、TMDI(トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)、DMI(ジメリルジイソシアネート))、又はHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)の又はIPDI(イソホロンジイソシアネート)のトリマーのような、同じベースでの脂肪族ポリイソシアネートと反応する。
【0120】
エポキシ樹脂が、アミニック(aminic)硬化剤、アミン付加物、アミン若しくはポリアミン、又は酸無水物で硬化される。
【0121】
エポキシ樹脂が、フェノール又はアルコールのエピクロルヒドリンとの反応によって調製される。量の観点から最も重要でもあるこの樹脂が、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、並んでビスフェノールFジグリシジルエーテルである。さらなるエポキシ樹脂が、ヘキサンジグリシジルエーテル、エポキシドノボラック、グリシジルエステル、グリシジルアミン、グリシジルイソシアヌレート及び脂環式エポキシドのような希釈剤である。
【0122】
重要なアミンが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、イソホロンジアミン(IPD)、m−キシリレンジアミン(MXDA)のような脂肪族及び脂環式アミン、メチレンジアニリン(MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)のような芳香族アミン、例えば、DETA−フェニルマンニッヒ塩基及びビスフェノールAジグリシジルエーテル及びTMDから形成されるアミン付加物、モノマー及びダイマー脂肪酸及びポリエチレンアミンからのアミド形成において形成されるようなポリアミノアミド、及びジシアンジアミドである。適当な低官能性を有するアミンが、対応するアルキル化型である。
【0123】
環状酸無水物が、例えば、無水フタル酸(PA)及びヘキサヒドロフタル酸無水物である。
【0124】
不飽和ポリエステル樹脂が、主に、マレイン酸又はフマル酸及び二価アルコールから形成された、直鎖型の可溶性重縮合生成物であり、通常、スチレンである、共重合可能なモノマー中に溶解し、過酸化物の添加によって重合化される。
【0125】
UP樹脂に使用される酸が、アジピン酸,フタル酸,無水フタル酸,テトラヒドロフタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,テトラクロロフタル酸,テトラブロモフタル酸,HET酸及びエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸であってよい。UP樹脂用に使用されるジオールが、主に、1,2−及び1,3−プロパンジオール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,及びトリメチロールプロパン及びグリセロールのモノアリルエーテルである。
【0126】
他の重合可能なモノマーに加えて使用されるモノマーが、例えば、スチレン,アルファ−メチルスチレン,メチルアクリレート,メチルメタクリレート及びビニルアセテートである。
【0127】
本発明の架橋性複合材料の架橋化が、好ましくは、過酸化物と共に、又はUV光又は電子ビームによって、実施される。
【0128】
不飽和ポリエステル樹脂と同様に、ビニルエステルが、Dow−Derakane及びDerakane Momentumによって調製される。
【0129】
また、本発明の複合材料の製造に適した液体架橋性有機媒体が、例えば、:
エチレングリコール,プロパンジオール,ブタンジオール,ヘキサンジオール,オクタンジオールなどの二官能性アルコールなどの多官能性アルコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール,ポリエチレンオキシドジオール及び/又はポリプロピレンオキシドジオールなどのポリアルキレンオキシドジオール,ポリヘキサメチレンカルボネートジオール,グリセリン,トリメチロールプロパンなどの多官能性アルコール,多官能性カルボン酸,環状カルボン酸無水物,TDI(トリレンジイソシアネート),MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート),NDI(ナフタレン 1,5−ジイソシアネート),TODI(3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート ビフェニル)及びその誘導体,HDI,IPDI,H12MDI(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート),HTDI(メチルシクロヘキシルジイソシアネート),XDI(キシリレンジイソシアネート),TMDI(トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート),DMI(ジメリルジイソシアネート)などの多官能性イソシアネート,HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)の又はIPDI(イソホロンジイソシアネート)のトリマーなどの同じベースでの脂肪族ポリイソシアネート,ポリイソシアネートプレポリマー,特に、オリゴマー化ジイソシアネート、キャップドポリイソシアネート、エチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,トリメチルヘキサメチレンジアミン,イソホロンジアミン,ドデシルジアミンなどの上記の多官能性アミン,カプロラクタム,ブチロラクタムなどのラクタム,ガンマ−ブチロラクトン,カプロラクトンなどのラクトン,テトラヒドロフランなどの環状エーテル,不飽和炭化水素,エチレン,プロピレン,ブタジエン,スチレン,メチルスチレン,アクリロニトリル,ビニルアセテート,ビニルプロピオネート,ビニルブチレートなどのビニルエステル,シクロペンテン,ノルボルネン,ジシクロペンテンなどを含む。
【0130】
さらに考えられる架橋性媒体が、メチルメタクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート又は過酸化物又はUV放射/電子ビームによって硬化されたアクリレート又はメタクリレートなどのコモノマーとの混合物である。
【0131】
特に好ましい架橋性有機媒体が、ポリオール、ポリエーテルポリオール,ポリエーテルジオール,ポリエステルジオール,ポリエーテルエステルジオール,ポリヘキサメチレンカルボネートジオール,ジイソシアネート,ポリイソシアネートプレポリマーである。ポリオールが特に適している。特に好ましい実施形態において、従って、有機媒体が、ポリオール、特に、ジオール、又は、ポリオールとジオールとの混合物である。
【0132】
さらに好ましい実施形態において、架橋性有機媒体(C1)が、少なくとも1つのポリオール、好ましくは、ジオール、又はポリオールとジオールとの混合物であり、架橋剤が、ポリイソシアネート、好ましくは、ジイソシアネート、又はポリイソシアネートとジイソシアネートとの混合物である。
【0133】
本発明との関連における架橋性媒体のように、通常、ポリマーシステムの架橋剤(D)と呼ばれる多官能性化合物を、マイクロゲル及びカーボンナノチューブと混合することも可能であり、結果として生じる複合材料を、架橋化されることになる対応成分と反応させることも可能である。
【0134】
原理上、マイクロゲル及び/又はカーボンナノチューブが、特に、これらが官能化される場合に、架橋性媒体と反応することが確保されなければならない(システム(C,D))。
【0135】
上記モノマーのコポリマー又はポリマーが、上記材料に溶解されることも可能である。
【0136】
UV放射/電子ビームを用いた硬化段階の間、使用されるモノマーが、特に、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA),ステアリルアクリレート,及び、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート400(PEG400DA)であるポリエーテルアクリレート,例えば、アクリル酸を用いてエステル化することよるポリエステルポリオール又は対応するポリオール/ポリカルボン酸混合物から調製されたポリエステルアクリレート,ウレタンアクリレート及びアクリレート化ポリアクリレートである。
【0137】
本発明の複合材料において、有機架橋性媒体(C1)及び架橋剤(D)が使用される場合、また、本発明が、空間的に分離された形で、本発明の複合材料及び架橋性有機媒体用の架橋剤(D)を含む複合材料又は架橋剤から構成された複合材料を含む形態を含む。
【0138】
さらなる実施形態において、本発明の複合材料が、非架橋性有機媒体(C2)を含む。
【0139】
この場合、120℃の温度において、好ましくは、100000mPas未満の、さらに好ましくは、1000mPas未満の、さらに好ましくは200mPas未満の、さらにいっそう好ましくは100mPas未満の粘度を有する。
【0140】
このような媒体が、室温(20℃)において液体から固体である。
【0141】
本発明との関連において、非架橋性媒体が、通常の方法でオリゴマー又はポリマーを形成するために、特に、通常、UVビームを用いて、熱的に、及び/又は架橋剤(例えばポリイソシアネート)の添加などにより、フリーラジカルにより重合されている又は架橋化されている通常のプレポリマー又はモノマーのような、特に、ヘテロ原子−含有官能基又はC=C基によって架橋可能となるいずれの基を含まない媒体を意味すると理解される。また特に、非架橋性媒体が、特に、DIN55945に準じた溶液である。
【0142】
非架橋性媒体(C2)が、好ましくは、室温(20℃)において非架橋性媒体液を含み、特に、炭化水素(1から200個の炭素原子を含む、直鎖型、ブランチ型、環式、飽和型、不飽和型及び/又は芳香族炭化水素であって、任意的に、塩素,フッ素などのハロゲン、ヒドロキシル,オキソ,アミノ,カルボキシル,カルボニル,アセト及びアミドから選択される1つ以上の置換基によって置換されうる),合成炭化水素、ポリエーテルオール、エステロール、リン酸エステル、シリコン含有油及びハロハイドロカーボン又はハロカーボンを含む(例えば、非特許文献30参照)。これらの非架橋性媒体(C2)が、40℃において、2から1500mm/s(cSt)の粘度に対して特に重要である。
【0143】
非架橋性媒体(C2)が、室温(20℃)において、特に、DIN55945に準じた溶液である、好ましくは、キシレン,溶媒ナフサ,メチルエチルケトン,メトキシプロピルアセテート,N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドなどの非架橋性媒体液を含む。
【0144】
合成炭化水素は、オレフィンの重合、オレフィン又はクロロパラフィンの芳香族化合物との縮合、又はクロロパラフィンの脱塩素縮合によって得られる。高分子油の例が、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、ポリブテン、高級オレフィンのポリマー、アルキル芳香族である。エチレンポリマーが、400から2000g/molの間の分子量を持つ。ポリブテンが、300から1500g/molの分子量を持つ。
【0145】
ポリエテロールの場合、脂肪族ポリエテロール、ポリアルキレングリコール、特に、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、そのコポリマー、モノ−及びジエーテル及びエステルエーテル及びそのジエステル、テトラヒドロフラン高分子油、ペルフルオロポリアルキルエーテル、及びポリフェニルエーテルが区別される。ペルフルオロポリアルキルエーテルが、1000から10000g/molのモル質量を有する。脂肪族ポリエテロールが、35℃において8から19500mm/sの粘度を有する。
【0146】
ポリフェニルエーテルが、アルカリ金属フェノール塩の、ハロベンゼンとの縮合によって調製される。ジフェニルエーテル及びそのアルキル誘導体も利用が見出されている。
【0147】
エステル油の例が、ビス(2−エチルヘキシル)セバシン酸塩、ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)セバシン酸塩又はアジピン酸塩、及びアジピン酸のアルキルエステルである。さらなるクラスが、フッ素化エステル油のものである。リン酸エステルの場合、トリアリール,トリアルキル及びアルキルアリールリン酸塩が区別される。例としては、トリ(2−エチルヘキシル)リン酸塩及びビス(2−エチルヘキシル)フェニルリン酸塩がある。
【0148】
シリコン−含有油が、シリコーン油(アルキル−及びアリールシロキサン系)及びケイ素を含むエステルである。
【0149】
ハロハイドロカーボン又はハロカーボンが、ヘキサフルオロベンゼン及びクロロトリフルオロエチレン高分子油などの塩化パラフィンを含む。
【0150】
DIN55945に準じた(非反応性)溶媒が、ヘキサン,分留工業用揮発油(special−boiling−point spirit),揮発油,キシレン,溶媒ナフサ,バルサムテレビン油(balsam terpentine oil),メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,メチルアミルケトン,イソホロン,ブチルアセテート,1−メトキシプロピルアセテート,ブチルグリコールアセテート,エチルジグリコールアセテート及びN−メチルピロリドンである(非特許文献31)。
【0151】
特に好ましい非架橋性媒体(C2)が、大きなクラスの炭化水素、ポリエーテル油、及びDIN55945に準じた溶媒である。
【0152】
複合材料
本発明の複合材料が、複合材料の総量をベースとして、好ましくは、0.5から90重量%、さらに好ましくは1から60重量%、さらに好ましくは1から40重量%、さらにいっそう好ましくは2から30重量%、さらにいっそう好ましくは5から25重量%のマイクロゲル(A)を含む。
【0153】
本発明の複合材料が、複合材料の総量をベースとして、好ましくは、0.1から90重量%、さらに好ましくは0.1から80重量%、特に好ましくは0.1から50重量%、特に0.5から40重量%、特に1から20重量%、さらには特に1から10重量%のカーボンナノチューブ(B)を含む。
【0154】
本発明の複合材料が、さらに好ましくは、10から99.9重量%、さらに好ましくは40から97重量%、さらに好ましくは30から95重量%、さらにいっそう好ましくは50から95重量%、さらにいっそう好ましくは60から95重量%の有機媒体(C)を含む。
【0155】
少なくとも1つのマイクロゲル(A)の、少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)に対する重量比が、0.1:100から100:0.1、さらに好ましくは1:90から90:1、特に10:90から90:10、特に10:50から50:10である場合がさらに好ましい。
【0156】
本発明のさらなる実施形態において、少なくとも1つのマイクロゲル(A)の、少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)に対する重量比が、0.1:99から99:0.1である。
【0157】
本発明の複合材料が、好ましくは、マイクロゲル、カーボンナノチューブ及び有機媒体、並びに任意的な架橋剤(D)から構成される。水の存在は好ましくない。本発明の複合材料が、好ましくは、0.8重量%未満、さらにいっそう好ましくは0.5重量%未満の水を含む。最も好ましくは、水の存在が、排除される(<0.1重量%)。
【0158】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の複合材料が、架橋性及び非架橋性有機媒体の混合物を含んでもよい。架橋性媒体容量(C1)の、非架橋性媒体容量(C2)に対する重量比が、0.1:99から99:0.1、さらに好ましくは10:90から90:10、特に10:50から50:10である場合がさらに好ましい。各溶媒のタイプに関して、各媒体(C1)及び(C2)に関しての上記見解が参照される。この場合にも、架橋剤(D)が、架橋性有機媒体(C1)のために使用される。
【0159】
任意に、本発明の複合材料が、付加的に、通常のフィラー及び添加剤、特に顔料を含んでよい。
【0160】
有機媒体、及びそこから製造されたマイクロゲル含有プラスチックを含む本発明の複合材料の製造のために、特に好ましい顔料及びフィラーが、例えば:無機及び有機顔料,カオリン,タルクなどのケイ酸塩フィラー,炭酸カルシウムなどの炭酸塩,ドロマイト,硫酸バリウム,酸化亜鉛,酸化カルシウム,酸化マグネシウム,酸化アルミニウムなどの金属酸化物,微粉シリカ(沈殿され、熱的に生成されたシリカ),水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物,ガラス繊維及びガラス繊維製品(バー,スタンド又はガラスマイクロビーズ),炭素繊維,熱可塑性繊維(ポリアミド,ポリエステル,アラミド),ポリクロロプレン及び/又はポリブタジエンをベースとしたゴム状ゲル,又は、架橋度が高く、5から1000nmの粒径を有する他の全ての上記ゲル粒子である。上記フィラーが、単体で又は混合物中で使用されてよい。
【0161】
本発明の複合材料が、架橋剤,反応促進剤,エージング安定剤,熱安定剤,光安定剤,オゾン安定剤,可塑剤,粘着付与剤,発泡剤,染料,ワックス,増量剤,有機酸,遅延剤,及び、また,例えば、トリメトキシシラン,ポリエチレングリコール,上記のような溶媒、又は当業界において周知である上記他のものであるフィラー活性剤,などのさらなる補助剤を含んでよい。
【0162】
補助剤が、他の要因の中での最終的な用途によって決定される通常の量で使用される。通常の量とは、例えば、使用される液体の架橋性媒体の量をベースとして、0.1から80重量%、好ましくは、0.1から50重量%の量である。
【0163】
本発明の複合材料の製造プロセス
本プロセスの特に好ましい実施形態において、1から30重量部のゴム状ゲルが使用され、任意に、0.1から40重量部のフィラー及び30から99重量部の有機媒体(C)がともに使用され、本発明の複合材料が製造される。
【0164】
本発明の複合材料が、好ましくは、25mPasから20000000mPasの、さらに好ましくは、25から2000000mPasの、特には、50から1000000mPasの粘度を有し、20℃におけるDIN53018に対するコーンプレートテストシステムにおいて5s−1の速度にて各場合において測定される。
【0165】
好ましい実施形態において、本発明の複合材料が、少なくとも1つの上記有機媒体と、少なくとも1つの上記カーボンナノチューブと、少なくとも1つの上記マイクロゲルと、を混合することにより製造される。好ましい実施形態において、少なくとも1つの乾燥マイクロゲル粉末(A)(好ましくは、1重量%未満の、さらに好ましくは、0.5重量%未満の、揮発性留分(成分(C)及び(B)を混合する場合に、マイクロゲルラテックスが使用されない))が使用される。混合が、好ましくは、ホモジナイザー、ノズルジェット分散機、ビーズミル、3ロールミル、シングル−シャフト又はマルチシャフト押出機スクリュー、ニーダー及び/又は溶解機によって、好ましくは、ホモジナイザー、ノズルジェット分散機、ビーズミル、3ロールミル又は溶解機によって達成される。溶解機が、主に、混合及び予備分散、及び成分の分散のための他のユニットのために役立つ。個々の固体成分の一連の添加が、要求通りである。しかしながら、架橋性有機媒体(C1)を使用する場合、成分(A)及び(B)を、成分(D)のみに組み込むこと、さらに好ましくは、成分(C1)のみに組み込むこと、さらにいっそう好ましくは、成分(C1)及び(D)に組み込むことが好ましいことが明らかとなっている。成分(C1)及び(D)への組み込みにより、高い全体の濃度を達成することが可能となる。
【0166】
ホモジナイザー又は3ロールミルを用いて、本発明の複合材料を均一化することが特に好ましい。
【0167】
本発明の複合材料を、ホモジナイザーを用いて均一化することが特に好ましい。
【0168】
液体媒体(C)中のマイクロゲル(A)の分散が、ホモジナイザーのホモジナイジングバルブで達成される(図1参照)。
【0169】
本発明に従って使用されるプロセスにおいて、凝集体が、凝集体及び/又は一次粒子に分離される。凝集体が、物理的に、ユニットに分離され、その分散が、一次粒径において、少しも変化しない。
【0170】
図1は、ホモジナイジングバルブがどのように機能するかを示す。
【0171】
均一化される製品が、低速でホモジナイジングバルブに入り、ホモジナイジングギャップ内に高速まで加速される。ホモジナイジングギャップの後で、製品の流れが、90°だけ曲げられる。分散が、主に、せん断(shear)、乱流(turbulence)、キャビテーションのために、ギャップを超えて達成される。
【0172】
ホモジナイザーに導入された状態の本発明の複合材料の温度が、約−40から140℃であり、好ましくは20から80℃である。
【0173】
均一化される本発明の複合材料が、ユニット中において、20から4000bar、好ましくは、100から4000bar、好ましくは、200から4000bar、好ましくは、200から2000bar、特に好ましくは、500から1500barの圧力下で適切に均一化される。要求される分散の質に応じて、経路の数が決められ、1から40の間、好ましくは、1から20の間、さらに好ましくは1から4の間の経路数で、変化することが可能である。
【0174】
さらに、本発明が、上記プロセスによって得ることが可能な複合材料を提供する。
【0175】
さらに、本発明が、マイクロゲル及びカーボンナノチューブを含むポリマーの製造のための本発明の複合材料の使用に関する。
【0176】
使用される架橋性成分が、熱可塑性ポリマーの形成を引き起こすそれらの成分である場合、熱可塑性エラストマーのように振舞うマイクロゲル含有ポリマーが得られることが分かっている。また、従って、本発明が、特に、本成分を含む本発明の複合材料の架橋又は重合によって得ることが可能な熱可塑性エラストマーに関する。
【0177】
また、さらに、本発明が、ポリマー又は架橋製品、特に、マイクロゲル及び架橋性成分を含む複合材料の架橋又は重合によって得ることが可能な熱可塑性エラストマーに関し、通常のプロセスによってそれから製造された成形品及びコーティングに関する。
【0178】
成形品又はコーティングが、本発明の複合材料を使用した成形又はコーティングによって製造される。
【0179】
さらに、本発明が、マイクロゲルと、カーボンナノチューブと、例えば、不飽和ポリエステル(UP),メラミン−ホルムアルデヒド(MF)及びフェノール−ホルムアルデヒド(PF)又はエポキシ(EP)樹脂である有機媒体とを含む熱硬化性物質の製造のための本発明の複合材料の使用を提供し、また、ポリウレタンをベースとした熱硬化性物質の製造のための本発明の複合材料の使用を提供する。
【0180】
例えば、特許文献41において記載されているような押出しプロセスによるポリマー中へのマイクロゲルの組み込み、又は、ゴム粒子が混合又は分散プロセス中に架橋化されるいわゆるインサイチュプロセスによるポリマー中へのマイクロゲルの組み込み(例えば、特許文献42)と比較して、本発明の複合材料が、特に、ポリマー中へのマイクロゲルの単純かつ均一な組み込みを可能とし、その結果として生じるポリマーが、驚くほど、改善された特性を有する。
【0181】
また、本発明が、本発明の複合材料の重合により、少なくとも1つのマイクロゲル及び少なくとも1つのカーボンナノチューブを含むポリマー複合材料を製造するプロセスに関する。特に、本発明によるプロセスが、少なくとも1つの上記有機媒体(C)、高エネルギー線によって架橋化されていない少なくとも1つのマイクロゲル(A)、及び少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)の混合、及び、任意の、その後の、架橋性媒体用の架橋剤(D)の添加、及び、任意の、その後の、複合材料の重合又は架橋化を含む。このプロセスによって、熱可塑性エラストマーとして周知の、すなわち、マイクロゲル相の存在により、低温(室温など)において、エラストマーのように振舞うが、高温において、熱可塑性物質のように処理されることが可能なポリマーを得ることが可能である。
【0182】
上記プロセスの好ましい実施形態において、有機媒体が、架橋性有機媒体(C1)であり、特に、ポリオール、さらに好ましくは、ジオール、又はその混合物であり、架橋剤(D)が、ポリイソシアネート、好ましくは、ジイソシアネート、又はそれらの混合物である。任意に、当業者に周知であるように、連鎖停止剤として知られている単官能基が存在することも可能である。
【0183】
本発明に従って製造された複合材料が、特に、ホモジナイザーを用いて達成される特定の微粒子分布を有し、これは、液体媒体の粘度を変化させるという観点からプロセスの適応性に関して、及び、結果として生じる複合材料及び必要な温度、及びまた分散の質の適応性に関して、また格別に有利である。
【0184】
さらに、本発明は、成形品の製造のための本発明の複合材料の使用、及び、本発明の複合材料から得ることが可能な成形品に関する。このような成形品の例には、:プラグソケット、ダンピング素子、特に、振動−ダンピング及び衝撃−吸収素子、防音素子、プロファイル、フィルム、特に、ダンピングホイル(damping foil)、フロアマット、ライニング、特に、靴の中敷き、靴、特に、スキーブーツ、靴底、電子部品、電子部品用ハウジング、ツール、装飾的な成形品、複合材料、自動車用成形品など、が含まれる。
【0185】
さらに、本発明は、レオロジー添加剤としての、成形品及びコーティングの製造のための、特に、増粘剤又はチキソトロピック剤としての、本発明の複合材料の使用を提供する。
【0186】
成形品及びコーティングの製造のための使用の場合、自動車用及びダンピング分野(damping sector)に対するものが好ましい。
【0187】
本発明の成形品が、2Kシステムを用いた吹き付け及び鋳造、溶融押出、カレンダー加工、射出成形(IM)、圧縮成形(CM)、及び反応射出成形(RIM)(rejection injection molding)などの、通常の処理方法によって本発明の複合材料から製造されることが可能である。
【発明の効果】
【0188】
いくつかの利点が、本発明の複合材料に付随する。
【0189】
微細分散のおかげで、再生可能な方法で、臨界的な性能特性を達成することが可能である。特定のマイクロゲル、カーボンナノチューブ、架橋性及び/又は非架橋性有機媒体を含む本発明の複合材料が、マイクロゲル又はカーボンナノチューブのそれら自体と接近しやすいものではないマイクロゲル又はカーボンナノチューブの多くの新たな用途を開発しうる。
【0190】
例えば、本発明の液体が、例えば、鋳造、吹き付け、コーティングといった、新たな可能性のある用途を開拓し、これが、必要条件として定義されたレオロジーの条件、及び液体状態を有する。
【0191】
架橋性有機媒体、カーボンナノチューブ(CNT)及びマイクロゲルを含む本発明の複合材料の重合により、例えば、全く新しい特性を有するプラスチックを得ることが可能である。本発明のマイクロゲル及びCNT−含有複合材料が、例えば、エラストマーのPUシステム(コールド−キャスティングシステム及びホット−キャスティングシステム)、及びまた、特定のレオロジー特性を有する熱及び電気伝導性システムにおける多数の分野でその使用が見出されうる。
【0192】
本発明のマイクロゲル及びCNT−含有複合材料において、本質的に不適合性の材料が、驚くことに、長期保管(6月)の間でさえ安定性を保つ均一な分散を形成する。
【0193】
本発明の複合材料において、極めて高い構造粘度又はチクソ性がしばしば見られる。他の特性と同じように、本発明の複合材料によるいずれの所望の液体複合材料の流動挙動を制御するために、これが、利用されることが可能である。例えば、沈殿する傾向があるフィラー含有複合材料において、これが、有利に、活用されうる。予期せぬ特性の組み合わせが、本発明の複合材料において見られ、:例えば、CNTへの軟性マイクロゲル粒子の添加が、驚いたことに、硬さ、弾性率E、引張破断ひずみε、引張破断応力σ及び耐摩耗性を増加又は改善し、;さらに、分析されたCNT繊維を含む対応するポリオール成分へのマイクロゲルの添加が、興味深い方法で、そのレオロジーに影響を及ぼす。
【0194】
驚いたことに、固体成分が増加されるにもかかわらず、CNT−含有ポリオール成分への5%のマイクロゲルの添加が、特定のせん断速度での動的粘度を下げる。CNTナノ繊維が比較的高い濃度で使用されることを可能とするために、これは望ましい。
【0195】
本発明が、以下の実施例によって詳細に説明される。当然ながら、本発明は、これらの実施例に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】ホモジナイジングバルブの機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0197】
実施例 RC−PUR KE8306におけるヒドロキシル基−修飾 SBR−マイクロゲルCNT組み合わせ
RC−PUR KE8306は、Rhein Chemie Rheinau GmbH社から入手したコールド−キャスティングプロセスにおけるPURの製造のための活性化ポリオールブレンドである。
【0198】
使用される架橋成分は、RC−DUR120、Rhein Chemie Rheinau GmbH社から入手した芳香族ポリイソシアネートである。
【0199】
OBR1283は、架橋された、SBRをベースとした表面−修飾ゴム状ゲルである。OBR1283の製造は、以下に記載する。
【0200】
下記試験のために、噴霧乾燥により水が除去されたラテックスが使用された。
【0201】
官能化マイクロゲルOBR1283(直接的に架橋化されたマイクロゲル)の製造及び特性評価
【0202】
マイクロゲルの製造のために、以下のモノマーが使用される:ブタジエン,スチレン,トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)及びヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)。
【0203】
OBR1283の製造:
長鎖アルキルスルホン酸のナトリウム塩1.48g(Mersolat(登録商標)H95 Lanxess Deutschland GmbH社から入手)が、10.762kgの水中に溶解され、初めに401オートクレーブでチャージされた。オートクレーブが、3回排出され、窒素でチャージされた。次に、4404gのブタジエン、489gのスチレン、186gのトリメチロールプロパントリメタクリレート(90%)、563gのヒドロキシエチルメタクリレート(96%)が、添加された。かき混ぜながら、反応混合物が、30℃まで加熱された。その後、95gの水、950mgのエチレンジアミン四酢酸(Merck−Schuchardt)、760mgの鉄(II)硫酸塩*7H20、1.95gのRongalit C(Merck−Schuchardt)及び2.95gの3ナトリウムリン酸塩*12H20から構成された水溶液が測定された。
【0204】
200gの水の中に、185gの水ですすがれた、3.15gのp−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox NT 50 Akzo−Degussa社から入手)を添加することにより、反応が開始された。2.5時間の反応後、反応温度が、40℃まで増加した。さらに1時間の反応後、1.25gのMersolat K30/95及び25gの水の水溶液中に溶解された、350mgのp−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox NT 50)で、再活性化がもたらされた。この時点で、重合温度が、50℃まで増加した。95%を超える重合転換率を達成すると、100gの水中に溶解された53gのジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を添加することにより、重合が停止された。その後、スチームでストリップすることにより、転換されていないモノマーが、ラテックスから除去された。
【0205】
ラテックスが、ろ過され、特許文献43の実施例2のように、安定剤と混合され、凝固され、乾燥された。
【0206】
ゲルが、超遠心分離法(直径及び特定の表面積)を用いるラテックス状態にあり、及び酸滴定(OH数及びCOOH数)による及びDSC(ガラス転移温度/Tg及びTgステージの範囲)を用いたトルエン中の溶解度に関して固体製品(ゲル容量,膨潤指数/SI)として、の両方にあることを特徴としていた。
【0207】
OBR1283の特徴的なデータが、以下の表にまとめられている:
【0208】
【表1】

【0209】
本発明の複合材料の製造のために、RC−PUR KE8306が、初めにチャージされる;OBR1283及びカーボンナノチューブが、かき混ぜながら溶解機中に添加される。この混合物が、少なくとも1日の間そのままにされ、減圧下で脱気され、ホモジナイザーを用いてさらに処理される。
【0210】
本発明の複合材料が、室温にて、ホモジナイザーに導入され、900から1000bar又は1900barでのバッチ式操作で、3度、ホモジナイザーを通過する(表1)。第1回目の通過(1000bar)において、マイクロゲルペーストが、約40℃まで加熱され、第2回目の通過において、約70℃まで加熱され、第3回目の通過において、約90℃まで加熱される。冷却した後、第5回目の通過が実現されるまで、均一化が、継続される。
【0211】
【表2】

【0212】
その後、本発明の複合材料が、RC−DUR120と反応し、コールドキャストエラストマーのクラスに属するポリマーを提供する(PUR−E)。
【0213】
混合物のショア硬さが、表2に示される。
【0214】
【表3】

【0215】
マイクロゲルのRC−PUR KE8306への添加が、ショアAに影響を及ぼさない;ショアDが、驚いたことに、軟性マイクロゲルの添加によって増加する。
【0216】
本発明の混合物に対する引張ひずみ試験の結果が、表3に示される。
【0217】
【表4】

【0218】
CNT繊維へのマイクロゲルの添加が、測定された弾性率E、引張破断ひずみε、引張破断応力σを増加させることが、表3から明らかである。
【0219】
軟性マイクロゲル粒子の添加が、弾性率Emax、引張破断ひずみε、引張破断応力σを減少させることが予期されるため、これは、驚くべきことである。
【0220】
本発明の混合物の摩耗が、DIN53516に対して測定された(表4)。
【0221】
【表5】

【0222】
また、軟性ナノ粒子のCNT−含有、ハードコールドキャストエラストマーへの添加により、摩耗が、驚くほどに減少する。
【0223】
要約すれば、軟性ナノ粒子、OBR1283,のCNT−含有、ハードコールドキャストエラストマー RC−PUR KE8306への添加が、硬さ、弾性率E、引張破断ひずみε、引張破断応力σ及び耐摩耗性を、驚くほど増加又は改善すると述べることが可能である。
【0224】
室温(RT)(約23℃)において、摩耗が、DIN53516をベースとして測定され、引張特性が、EN ISO527−1をベースとして測定され(DIN53504に従って調製されるS2標準試料)、ショアA硬さが、DIN53505をベースとして測定される。
【0225】
さらに、マイクロゲルの、CNT−含有コールドキャストエラストマー−ポリオール成分のレオロジーへの影響を測定するために、レオロジー研究が、本発明の複合材料において行われた(表5)。
【0226】
【表6】

【0227】
ポリオール成分をベースとした0.1%のCNT含有量の複合材料において、動的粘度に対する、マイクロゲル含有量の又はせん断速度の影響は、ほとんど観察されない。
【0228】
1%のCNT繊維を含むポリオール成分に対するマイクロゲルの添加が、興味深い方法でレオロジーに影響を与えることは表5から明らかである:1%のCNTを含むポリオール成分が、低いせん断速度において、極めて高い粘度(396Pas)を示す。CNTナノ繊維が、比較的高い濃度で使用されることを可能とするために、低い粘度が、望ましい。
【0229】
たとえ固体含有量が増加したとしても、5%のマイクロゲルのCNT−含有ポリオール成分RC−PUR KE8306の添加が、0.2s−1,5s−1,及び100s−1のせん断速度γでの動的粘度を驚くほど低下させる。
【0230】
1000s−1の極めて高せん断速度γにおいてのみ、増加した固体含有量の影響が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロゲル(A)と、少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)と、少なくとも1つの有機媒体(C)と、を含むことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機媒体が、架橋性又は非架橋性であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
使用される成分(C)が架橋性有機媒体であり、
前記複合材料が、架橋剤(D)をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記少なくとも1つのマイクロゲル(A)の、前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)に対する重量比が、0.1:99から99:0.1であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ(B)の一次粒子が、3から100nmの直径、50nmから100μmの長さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)が、修飾されていないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)が、修飾されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びアミン基から構成される群から選択された少なくとも一つの官能基によって修飾されていることを特徴とする請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)が、前記有機媒体(C)に対して非反応性であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)が、前記有機媒体(C)に対して反応性であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記マイクロゲル(A)が、ゴムをベースとしたものであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
少なくとも1つのマイクロゲル(A)と、少なくとも1つのカーボンナノチューブ(B)と、少なくとも1つの有機媒体(C)と、が、ホモジナイザー、ノズルジェット分散機、ビーズミル、3ロールミル、シングル−シャフト又はマルチシャフト押出機スクリュー、ニーダー及び/又は溶解機を用いて混合及び/又は分散されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項13】
成形品及びコーティングの製造のための、及びレオロジー添加剤としての、少なくとも1つのカーボンナノチューブと少なくとも1つのマイクロゲルとを含むポリマーの調製のための請求項1から11のいずれか一項に記載の複合材料の使用。
【請求項14】
自動車及びダンピング分野における成形品及びコーティングの製造ための請求項13に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−521063(P2011−521063A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509982(P2011−509982)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056165
【国際公開番号】WO2009/141391
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(509286422)ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー (13)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【出願人】(510308780)バイヤー・マテリアル・サイエンス・アーゲー (2)
【Fターム(参考)】