説明

カーボンブラック分散液およびこれを用いた半導電性ポリイミドベルトの製造方法

【課題】カーボンブラック分散液の分散状態を安定化させ、かつ重合、ベルト化後のベルト内での分散状態を良好にし、良好な電気特性を有する半導電性ポリイミドベルトを得るためのカーボンブラック分散液、これを用いた半導電性ポリイミドベルトおよびその製造方法等を提供する。
【解決手段】本発明のカーボンブラック分散液は、帯電除去したカーボンブラック分散液であって、CPMG法により温度35℃で測定したスピン−スピン緩和時間(T)が200ms以下、分散液中のカーボンブラックの数平均粒子径が5〜250nmの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック分散液およびこれを用いた半導電性ポリイミドベルトの製造方法等に関し、特に、電子写真記録装置における像の中間転写ベルト等の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、その高い機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れ、電気・電子材料、耐熱材料等の各分野において幅広く使用されている。OA機器用部材においては、導電性フィラーを添加することによって、ポリイミドの耐熱性、機械特性を活かしつつ、ポリイミド樹脂組成物に中抵抗から高抵抗の間である半導電領域の電気抵抗を付与する試みが行われており、その電気抵抗を付与する材料の一つとしてカーボンブラックが挙げられる。中間転写ベルト等に用い得る半導電性ポリイミドベルトの一例として、ポリイミド系樹脂に導電性フィラーとしてファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックを分散してなる中間転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−311263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汎用カーボンブラックをポリイミド系樹脂に分散させた場合には、温度、湿度等の環境変化に対する電気抵抗値の変動は小さいが、カーボンブラックを均一に分散させることが非常に難しい。一般に、カーボンブラックは二次凝集を起こしやすく、凝集により導通経路が生じ、ベルト内での電気抵抗値のバラツキにつながる。そのようなベルトを電子写真記録装置の中間転写ベルトとして用いた場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラが生じるなどの問題がある。このように電気抵抗値のバラツキが中間転写に影響するのは、半導電性ベルトの帯電抑制能の不均一化や、導電抑制能の不均一化により、局所的な剥離放電や導電が生じやすくなるためと考えられる。
【0005】
一方、電子写真記録装置の中間転写ベルトや転写ベルトに限らず、半導電性ベルトに要求される帯電抑制能や導電抑制能は用途により程度に差があるものの、均一なものほど好ましい。また、同種のカーボンブラックを用いた場合でも、凝集を生じている場合、樹脂に対するカーボン配合量によるその抵抗値の変化が急激なものとなり、中間転写ベルトに要求される抵抗値領域での抵抗値制御が非常に困難なものとなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、カーボンブラック分散液の分散状態を安定化させ、かつ重合、ベルト化後のベルト内での分散状態を良好にし、良好な電気特性を有する半導電性ポリイミドベルトを得るためのカーボンブラック分散液、これを用いた半導電性ポリイミドベルトおよびその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カーボンブラックの分散に関して鋭意検討したところ、カーボンブラック分散液をポリ容器と金属容器でそれぞれ保存すると数ヵ月後に金属容器のみでパルス水素核磁気共鳴スペクトル分析で測定されるスピン−スピン緩和時間(T)が短縮することを突き止めた。そこで金属容器でアースを取りながら撹拌したところ、Tが経時で短縮することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のカーボンブラック分散液は、帯電除去したカーボンブラック分散液であって、CPMG法により温度35℃で測定したスピン−スピン緩和時間(T)が200ms以下、分散液中のカーボンブラックの数平均粒子径が5〜250nmの範囲であることを特徴とする。
【0008】
本発明のカーボンブラック分散液は、帯電除去によってカーボンブラック粒子が除電されているため、カーボンブラック粒子への分散剤の被覆率を高めたり、カーボンブラックの溶剤に対する濡れが向上することによって、カーボンブラックの分散性が安定し、かつ重合時のカーボンブラック凝集を抑制でき、電気特性の優れたポリイミドベルトを作製することができる。
【0009】
本発明のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、前記カーボンブラック分散液にテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分を溶解、重合させて得られることを特徴とする。本発明のポリアミド酸溶液は、カーボンブラックが均一に分散され、カーボンブラックの凝集も少ない。このため、本発明のポリアミド酸溶液を用いることにより、電気抵抗値のバラツキが小さく、帯電抑制能、導電抑制能の均一な、局所的な剥離放電や導電が生じにくい半導電性ポリイミドベルトを得ることができる。
【0010】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、前記ポリアミド酸溶液を用いて得られる、表面抵抗率の常用対数値が8〜14(logΩ/□)の範囲であることを特徴とする。本発明の半導電性ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散がよく、電気抵抗値のバラツキが小さく、ベルトの帯電抑制能や導電抑制能が均一である。このため、本発明のベルトを電子写真記録装置の中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラが生じることなく、良好な画像を転写することができる。
【0011】
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、カーボンブラック分散液の帯電を除去する工程を含むことを特徴とする。本発明の方法によれば、カーボンブラック粒子への分散剤の被覆率を高めることができ、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの分散性が安定化され、かつ重合時のカーボンブラック凝集を抑制することができる。このため、本発明の方法により半導電性ポリイミドベルトを製造すれば、カーボンブラック凝集の少ない、カーボンブラックが均一に分散し、電気特性に優れた半導電性ポリイミドベルトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、半導電性を得るためにカーボンブラックを含有する。本発明の半導電性ポリイミドベルトは、電子写真記録装置の中間転写ベルトとして用いられる場合、ベルトの表面抵抗率は常用対数値で8〜14(logΩ/□)の範囲であり、8〜13(logΩ/□)がより好ましい。
【0014】
本発明の半導電性ポリイミドベルトを製造するには、原料として本発明のカーボンブラック分散液を用いる。本発明のカーボンブラック分散液は、例えば次のようにして製造することができる。まず、有機極性溶媒中にカーボンブラックを分散させ、カーボンブラック分散液を作製する。
【0015】
本発明に用いる有機極性溶媒は、カーボンブラックの分散性を高めるものであれば特に制限されないが、カーボンブラックの分散用と重合反応の溶媒用として兼用できるN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド等が用いられる。
【0016】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で使用することもでき、また複数種類のカーボンブラックを併用してもよい。これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等の中抵抗から高抵抗域(表面抵抗10〜1014Ω/□)において制御が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられ、その用途によっては酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや溶媒への分散性を向上させたものを用いることが好ましい。
【0017】
カーボンブラックの含有量については、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、画像形成装置用機能性ベルトとしては、その機械的強度等から、ポリイミド樹脂固形分に対し3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。また分散液中のカーボブラックの含有量は、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜22重量%である。カーボンブラック含有量が高いほど分散が困難となり、またカーボンブラックの凝集・沈殿が発生しやすく保存安定性が著しく低下する。
【0018】
本発明のカーボンブラック分散液には、前記カーボンブラックと前記有機極性溶媒との親和性を高めるため分散剤を使用することが好ましい。前記分散剤は本発明の目的にかなうものであれば特に限定されないが、例えば高分子分散剤、界面活性剤、無機塩等の分散安定化剤が挙げられ、高分子分散剤が特に好ましい。
【0019】
前記高分子分散剤としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独または複数の高分子分散剤を添加することができる。
【0020】
前記界面活性剤としては、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型の陰イオン界面活性剤、第4級アンモニウム型、脂肪族アミン型、イミダゾリニウム型の陽イオン界面活性剤、エーテルアミンオキシド型、グリシン型、べタイン型の両性界面活性剤、エーテル型、エステル型、アミノエーテル型、エーテルエステル型、アルカノールアミド型の非イオン界面活性剤が挙げられ、単独または複数の界面活性剤を添加することができる。
【0021】
前記無機塩等の分散安定化剤としては、炭酸塩、ケイ酸塩、重炭酸塩等が挙げられる。
【0022】
前記分散剤の添加量は、カーボンブラックに対して0.01〜10wt%が好ましく、0.1〜5wt%がより好ましい。添加量が0.01wt%未満の場合も10wt%を超える場合も分散に対する効果が得られない。
【0023】
本発明のカーボンブラック分散液は、帯電除去したことを特徴とする。前記分散液の帯電を除去する方法は、本発明の目的にかなうものであれば特に限定されないが、アースにより帯電を除去する方法が好ましい。例えば、金属性の容器にカーボンブラック分散液を収容し、これを撹拌しながら、容器下に配置した電極をアースすることにより、カーボンブラック分散液の帯電を除去することができる。また、アースによる帯電除去は、1時間以上行うのが好ましく、3時間以上がより好ましい。アースによる帯電除去が1時間未満では、十分な除電効果が得られず、分散不安定でカーボンブラックの沈殿が生じる傾向にある。
【0024】
カーボンブラックの機械的分散方法としては、超音波、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ホモジナイザー等の公知の方法が挙げられ、前記分散剤は本発明の目的にかなうものであれば特に限定されない。また、前記帯電除去処理、分散処理を複数回繰り返すことにより、カーボンブラックの粒子径がより小さく、分散性の高いカーボンブラック分散液を得ることができる。
【0025】
本発明のカーボンブラック分散液中のカーボンブラックの数平均粒子径は、5〜250nmの範囲であり、より好ましくは5〜200nmの範囲である。前記粒子径が5nm未満であると比表面積の増加により分散安定性に問題が生じてカーボンブラックが再凝集しやすくなり、250nmを超えるとベルト化後、カーボンブラックの導通経路が形成されやすく、ポリイミドベルトの低抵抗化、抵抗低下などの問題が発生する。
【0026】
本発明のカーボンブラック分散液は、温度35℃でCPMG法から求めたスピン−スピン緩和時間(T)が200ms以下である。前記緩和時間(T)が200msを超えると、理由は明らかではないが、ベルト化後の表面抵抗率が低抵抗となる。
【0027】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、前記カーボンブラック分散液を用いて次のように作製することができる。まず、前記カーボンブラック分散液にテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分を溶解、重合させて本発明のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を作製する。
【0028】
前記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0029】
また、ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PDA)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−6−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0030】
重合反応の際のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、通常、5〜30重量%程度が好ましい。また反応温度は80℃以下、特に5〜50℃に設定することが好ましい。
【0031】
上記反応により得られたポリアミド酸溶液粘度は、その溶液粘度が上昇するが、そのまま加熱を行うとポリアミド酸溶液の粘度が低下する。この現象を利用して、ポリアミド酸溶液を所定の粘度に調整することができる。このときの加熱温度は50〜90℃が好ましい。
【0032】
このようにして得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて、本発明の半導電性ポリイミドベルトは、例えば次のように作製される。円筒金型内に上記ポリアミド酸溶液を供給し、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により均一に展開する。このとき溶液の粘度はB型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)が好ましい。これ以外の場合は、遠心成形の際、均一に展開することが困難であり、ベルトの厚みバラツキの原因となる。製膜後、80〜150℃にて加熱を行い、溶媒を除去する。次いで300〜450℃の高温で加熱することにより、閉環イミド化反応を進行させた後、金型から取り出す。この溶媒除去およびイミド化反応時の加熱は均等に行う必要がある。不均等であると、溶剤蒸発時においてもカーボンブラックの凝集バラツキが発生し、ベルトの抵抗値にバラツキが生じる。均等に加熱する方法としては、金型を回転させながら加熱する、熱風の循環を改善する等の方法や、低温で投入し、昇温速度を小さくするなどの方法がある。
【0033】
このようにして得られた半導電性ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散がよく、電気抵抗値のバラツキが小さく、電子写真記録装置の中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラが生じることなく、良好な画像を転写することが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。実施例等における評価項目は下記の方法に従い測定を行った。なお、本発明がかかる実施例、評価方法に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0035】
<評価方法>
1.表面抵抗率
R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METER(ADBANTEST社製)に接続したリングプローブをベルト表面に押し当て、印加電圧100V、10秒後の表面抵抗率を25℃、60HR%で測定した。
2.カーボンブラック分散液中のカーボンブラック数平均粒子径
動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所製 LB−500)を用いて測定温度25℃でカーボンブラック分散液中のカーボンブラック数平均粒子径を測定した。
3.スピン−スピン緩和時間(T
パルス核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 JNM−MU25)を用いた。測定核を水素核とし、測定温度35℃、周波数25MHz、90℃パルス幅2μsの測定条件で、CPMG法(Carr−Purcell Meiboom−Gill法)からスピン−スピン緩和時間(T)を求めた。
【0036】
<実施例1>
分散剤であるポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液4600g中にSpecial Black4(デグサ製)400gを添加して約1時間機械撹拌した後、この分散液を、アースを取りながら306時間撹拌した。その後、超音波で2時間処理し、再度アースを取りながら撹拌してカーボンブラック分散液を得た。この分散液のスピン−スピン緩和時間(T)を測定したところ44msであった。またカーボンブラックの数平均粒子径を測定したところ185nmであった。この分散液217gにNMPを185.43g加えて希釈し、次に、p−フェニレンジアミン(0.10mol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.10mol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(0.19mol)の順に添加した。増粘後、撹拌しながら加温し、カーボン18wt%、固形分20wt%の半導電性ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を、内径60mm、長さ850mmの円筒状金型の内面にディスペンサーで塗布し、1500rpmで10分間回転させ均一な塗膜面を得た。その後、40rpmで回転させながら130℃20分予備乾燥し、次いで340℃10分間加熱してイミド転化を行い、半導電性ポリイミドベルトを得た。このベルトを評価したところ、表面抵抗率ρs(logΩ/□)は9.09であった。
【0037】
<比較例1>
分散剤であるポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液4600g中にSpecial Black4(デグサ社製)400gを添加して約1時間ガラス棒で撹拌した後、カーボンブラック分散液を得た。この分散液のスピン−スピン緩和時間(T)を測定したところ273.2msであった。またカーボンブラックの数平均粒子径を測定したところ267nmであった。この分散液217gにNMPを185.43g加えて希釈し、実施例1と同様に重合し、カーボン18wt%、固形分20wt%の半導電性ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を、実施例1と同様にベルト化し、評価したところ、表面抵抗率ρs(logΩ/□)は6.28であった。
【0038】
<比較例2>
分散剤であるポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液4600g中にSpecial Black4(デグサ製)400gを添加して約1時間機械撹拌した後、この分散液を、アースを取りながら306時間撹拌してカーボンブラック分散液を得た。この分散液のスピン−スピン緩和時間(T)を測定したところ42msであった。またカーボンブラック数平均粒子径を測定したところ301nmであった。この分散液217gにNMPを185.43g加えて希釈し、実施例1と同様に重合し、カーボン18wt%、固形分20wt%の半導電性ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を、実施例1と同様にベルト化し、評価したところ、表面抵抗率ρs(logΩ/□)は6.66であった。
【0039】
<比較例3>
分散剤であるポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液4600g中にSpecialBlack4(デグサ製)400gを添加し、ガラス棒で攪拌した後、超音波洗浄器を用いて超音波を約2時間あててカーボンブラック分散液を得た。この分散液のスピン−スピン緩和時間(T)を測定したところ236msであった。またカーボンブラック数平均粒子径を測定したところ186nmであった。この分散液217gにNMPを185.43g加えて希釈し、実施例1と同様に重合し、カーボン18wt%、固形分20wt%の半導電性ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を、実施例1と同様にベルト化し、評価したところ、表面抵抗率ρs(logΩ/□)は6.14であった。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果が示すように、比較例1〜3のベルトに比べ、実施例1のベルトは高抵抗であり、カーボンブラック粒子が凝集することなくポリイミド樹脂中に均一に分散されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電除去したカーボンブラック分散液であって、CPMG法により温度35℃で測定したスピン−スピン緩和時間(T)が200ms以下、分散液中のカーボンブラックの数平均粒子径が5〜250nmの範囲であることを特徴とするカーボンブラック分散液。
【請求項2】
請求項1記載のカーボンブラック分散液にテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分を溶解、重合させて得られるカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液。
【請求項3】
請求項2記載のポリアミド酸溶液を用いて得られる、表面抵抗率の常用対数値が8〜14(logΩ/□)の範囲であることを特徴とする半導電性ポリイミドベルト。
【請求項4】
カーボンブラック分散液の帯電を除去する工程を含むことを特徴とする半導電性ポリイミドベルトの製造方法。

【公開番号】特開2007−137967(P2007−137967A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331490(P2005−331490)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】