ガイドチューブ、ならびにそれを有するシリンダヘッド
【課題】長手方向一端側が内燃機関のシリンダヘッド1におけるスパークプラグ装着領域を覆い囲むように、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバー2に設けられるプラグ挿抜孔2aと連通するようにそれぞれ配置され、かつ、シリンダヘッド1にスパークプラグ15を着脱する際、およびスパークプラグ15にダイレクトイグニッション20を着脱する際のガイドとされるガイドチューブ30において、スパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の着脱作業を行いやすくする。
【解決手段】ガイドチューブ30の長手方向途中に、膨出部33が設けられている。この膨出部33の内側には、ダイレクトイグニッション20を着脱する過程で姿勢を傾けるときに、ダイレクトイグニッション20のプラグ結合部24の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が確保されている。
【解決手段】ガイドチューブ30の長手方向途中に、膨出部33が設けられている。この膨出部33の内側には、ダイレクトイグニッション20を着脱する過程で姿勢を傾けるときに、ダイレクトイグニッション20のプラグ結合部24の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が確保されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、自動二輪車、農耕機、船舶等に用いられる内燃機関において点火系または燃料噴射系の棒状部材(例えばスパークプラグ、ダイレクトイグニッション、プラグキャップ、直噴インジェクタ等)の着脱時のガイドとなるガイドチューブに関する。また、本発明は、前記ガイドチューブを有するシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のうち主としてガソリンエンジン等では、各燃焼室に供給される混合気を点火燃焼させるために、スパークプラグを用いている。
【0003】
このスパークプラグの点火時期を最適に制御するために、一般的に公知のように、ダイレクトイグニッションシステムが用いられる(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
通常、スパークプラグは、その点火部を燃焼室内に露呈させるようにシリンダヘッドに取り付けられ、このスパークプラグにダイレクトイグニッションが取り付けられる。
【0005】
ダイレクトイグニッションは、一般的に公知であるが、円筒ケース内にコイル部を設け、この円筒ケース上端にイグナイター部を、また、円筒ケース下端にプラグ結合部を、それぞれ設けた構成になっている。
【0006】
一般的に、円筒ケースは、例えば比較的硬質な適宜の絶縁性合成樹脂等で形成されるが、この円筒ケースの下端には、前記プラグ結合部を覆い囲むように、例えば適宜のゴム等の絶縁性材料で形成される弾性カバーが設けられる。
【0007】
プラグ結合部は、スパークプラグのターミナルヘッドにスナップフィット状態で外嵌装着されるようになっており、弾性カバーは、ダイレクトイグニッションのプラグ結合部とスパークプラグのターミナルヘッドとの結合部分を外部から隠蔽して電気的に絶縁するようになっている。
【0008】
そして、スパークプラグおよびダイレクトイグニッションは、ガイドチューブで覆い囲まれている。このガイドチューブは、スパークプラグおよびダイレクトイグニッションをシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで囲む動弁機構配置空間から隔絶するとともに、シリンダヘッドにスパークプラグを装着する際、ならびにダイレクトイグニッションをスパークプラグに装着する際のガイドとされるものである。このガイドチューブは、一般的に、内径を長手方向で一定にした円筒形になっている。
【特許文献1】特開平5−280458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例のガイドチューブは、その本来のガイド機能を確保するために、内径寸法をダイレクトイグニッションの外径寸法より僅かに大きい程度とするのが望ましいとされるが、次のような状況では、ダイレクトイグニッションを取り外す作業が面倒で手間がかかることが指摘される。
【0010】
具体的に、例えば、シリンダヘッドカバーの上方の特にダイレクトイグニッションの上方に、内燃機関に関連する部品が配置されていて、この部品がダイレクトイグニッションの着脱時の障害物となる場合がある。
【0011】
そのような場合には、ダイレクトイグニッションをスパークプラグから分離してから取り出すときに、ダイレクトイグニッションを前記障害物に干渉させないようにする必要がある。
【0012】
そのためには、例えばダイレクトイグニッションを取り出しながら姿勢を傾けるようにすることによって、障害物との干渉を避けるようにすればよい。
【0013】
しかしながら、上記従来例のように、ガイドチューブの内径寸法をダイレクトイグニッションの外径寸法に可及的に近づけるように設定していると、ガイドチューブからダイレクトイグニッションを取り外す際に、ダイレクトイグニッションの姿勢を傾ける角度が小さくなってしまい、障害物の位置によっては、障害物に対するダイレクトイグニッションの干渉を避けることができなくなる。
【0014】
そのような場合、前記障害物を取り外してから、ダイレクトイグニッションを取り外すようにしなければならなくなり、手間や時間がかかることになる。ここに改良の余地がある。
【0015】
本発明は、点火系または燃料供給系の棒状部材の着脱作業を行いやすくするガイドチューブならびにシリンダヘッドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、長手方向途中の内側には、前記棒状部材の着脱時に当該棒状部材の装着方向先端側の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が設けられていることを特徴としている。
【0017】
なお、点火系または燃料噴射系の棒状部材としては、例えばスパークプラグ、ダイレクトイグニッション、プラグキャップ、直噴インジェクタ等が挙げられる。
【0018】
この構成によれば、例えばシリンダヘッドから棒状部材を取り外すにあたって、例えば棒状部材の取り外し側に障害物が存在することが原因で、棒状部材をガイドチューブの他端側から取り出しながら姿勢を傾ける必要がある場合に、この棒状部材の傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。
【0019】
そもそも、ガイドチューブが円筒形つまり長手方向全長にわたって同一内径である場合、棒状部材をシリンダヘッドから分離してからガイドチューブ内で姿勢を傾けると、棒状部材の装着方向先端縁が、ガイドチューブの中心側から径方向外向きに変位して、ガイドチューブの長手方向途中部分の内周面に当接するので、その傾きが制限される。
【0020】
そこで、ガイドチューブの内径を可及的に大きくして、その内周面と棒状部材の装着方向先端縁との対向間隔を大きくすれば、棒状部材を傾かせることに伴いその装着方向先端縁がガイドチューブの内周面に当接するまでの距離が延びることになり、その結果、棒状部材の傾き角度を大きくすることが可能になる。
【0021】
しかしながら、仮に円筒形のガイドチューブで内径を大きくすればする程、当然ながら、棒状部材をシリンダヘッドに装着する際においてそれらの芯合わせを行うためのガイドができなくなり、ガイドチューブ本来のガイド機能が損なわれる。
【0022】
このようなことから、ガイドチューブの長手方向途中にのみ逃げ空間を設けることで、棒状部材の装着時におけるガイドチューブのガイド機能を確保したうえで、棒状部材を取り外す際の傾き角度を可及的に大きくすることを可能にしているのである。
【0023】
好ましくは、前記長手方向他端側の内径は、前記長手方向一端側の内径より大きくされており、前記長手方向途中には、その内径を前記一端側より大きくするように径方向外向きに膨らんだ膨出部が設けられており、この膨出部の内径側に前記逃げ空間が確保されている。
【0024】
このように、逃げ空間を確保するために、ガイドチューブを、長手方向で異径にしたような形状に特定することができる。
【0025】
好ましくは、前記膨出部は、その長手方向中央の内径が最大とされるとともに、当該最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされている。
【0026】
この構成によれば、棒状部材を着脱するにあたって、その姿勢を傾ける必要がある場合に、棒状部材の取り出し初期あるいは取り付け後期等のように、ガイドチューブからの棒状部材の飛び出し代が少ない状況でも、その傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。これにより、棒状部材の着脱作業が簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0027】
好ましくは、前記膨出部をその長手方向に沿って断面にしたときの片半分の形状は、前記棒状部材を取り出しながら姿勢を傾かせる過程において当該棒状部材の装着方向先端縁が描く移動軌跡に対応して、長手方向に湾曲する曲線とされる。
【0028】
この構成によれば、棒状部材を着脱するときに、その姿勢を傾ける動作を円滑に行えるようになる。これにより、棒状部材の着脱作業が簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0029】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、長手方向途中の内側には、径方向外向きへ膨出する膨出部が設けられていることを特徴としている。
【0030】
本発明は、内燃機関の燃焼室内の混合気を燃焼させるスパークプラグと、このスパークプラグに取り外し可能に装着されて点火用の電圧を印加するダイレクトイグニッションと、前記スパークプラグと前記ダイレクトイグニッションとを覆い囲むように設けられるとともに前記スパークプラグ着脱時ならびに前記ダイレクトイグニッション着脱時のガイドとされるガイドチューブとを含むシリンダヘッドであって、前記ガイドチューブが、上述した構成とされていることを特徴としている。
【0031】
この構成によれば、上述した特徴を有するガイドチューブを用いるから、ダイレクトイグニッションを取り外す際に、それをガイドチューブから取り出しながら姿勢を傾けるという動作を行う場合において、傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。
【0032】
これにより、例えばダイレクトイグニッションの取り外し側に障害物が存在している場合においても、障害物を避けてダイレクトイグニッションを取り外すことが可能になって、事前に障害物を取り外さなくても済むようになる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のガイドチューブならびにシリンダヘッドによれば、点火系または燃料噴射系の棒状部材の着脱作業を行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態を図1から図8に示している。
【0035】
この実施形態では、DOHC式で一気筒あたり吸気バルブ二つ、排気バルブ二つとした内燃機関(例えばガソリンエンジン)に本発明を適用した例を挙げる。内燃機関の気筒数や気筒レイアウトは特に限定されるものではないが、説明をわかり易くするために、一気筒のみを図示している。
【0036】
図1および図2に示すように、シリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2との間の空間には、吸気用カムシャフト3および排気用カムシャフト4が配置されている。吸気用カムシャフト3は二つ一対の吸気バルブ5を、また、排気用カムシャフト4は二つ一対の排気バルブ6を、それぞれ上方向または下方向に変位させることによって、燃焼室11に開口される吸気ポート(図示省略)および排気ポート(図示省略)を閉塞または開放する。
【0037】
各カムシャフト3,4のカムロブ3a,4aは、それぞれロッカアーム7,8を介して各バルブ5,6に当接されており、各バルブ5,6は、共に、バルブスプリング9,10により閉側に付勢されるようになっている。
【0038】
シリンダヘッド1には、図2に示すように、各燃焼室11の中央位置にスパークプラグ15が取り付けられる。このスパークプラグ15は、図1に示すように、その点火部15aが燃焼室11内に露呈する状態で配置されている。
【0039】
この実施形態の内燃機関では、スパークプラグ15の点火時期を最適に制御するために、一般的に公知のダイレクトイグニッションシステムが用いられている。
【0040】
具体的に、スパークプラグ15には、ダイレクトイグニッション20が接続されている。
【0041】
このダイレクトイグニッション20は、一般的に公知であるが、例えば図1および図3に示すように、円筒ケース21内にコイル部22を設け、この円筒ケース21上端にイグナイター部23を、また、円筒ケース21下端にプラグ結合部24を、それぞれ設けた構成になっている。
【0042】
プラグ結合部24は、図1に示すように、スパークプラグ15のターミナルヘッド15bにスナップフィット状態で外嵌装着されるような構造になっていて、円筒ケース21の下端に一体形成される小径円筒部24aと、この小径円筒部24a内に配置されるコイルスプリング24bとで構成されている。
【0043】
円筒ケース21は、比較的硬質な適宜の絶縁性合成樹脂等で形成されるが、この円筒ケース21の下端には、小径円筒部24aを覆うように、弾性カバー25が一体に取り付けられている。この弾性カバー25は、例えば比較的柔軟な適宜の絶縁性ゴム等で形成され、プラグ結合部24とスパークプラグ15のターミナルヘッド15bとの結合した状態で当該結合部分を外部から隠蔽して電気的に絶縁するものである。
【0044】
これらスパークプラグ15およびダイレクトイグニッション20は、ガイドチューブ30で覆い囲まれている。
【0045】
このガイドチューブ30は、スパークプラグ15およびダイレクトイグニッション20をシリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2とで囲む動弁機構配置空間から隔絶するとともに、シリンダヘッド1にスパークプラグ15を装着する際、ならびにダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15に装着する際に芯合わせを容易とするためのガイドとされるものである。
【0046】
ここで、ダイレクトイグニッション20の着脱時における姿勢変更の自由度を拡大することを可能とするために、ガイドチューブ30を長手方向に異径となる形状にしているので、以下で詳しく説明する。
【0047】
具体的に、ガイドチューブ30は、例えば適宜の絶縁性合成樹脂や適宜の絶縁性ゴム等、あるいはそれら以外の絶縁性ならびに耐油性に優れた材料で形成される。
【0048】
このガイドチューブ30の下端側つまり長手方向一端側31は、シリンダヘッド1におけるスパークプラグ15の装着領域を覆い囲むように配置され、また、ガイドチューブ30の上端側つまり長手方向他端側32は、シリンダヘッドカバー2に設けられるプラグ挿抜孔(通孔)2aと連通するように配置される。
【0049】
このガイドチューブ30の他端側32は、シリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aの下方に配置されていて、ガイドチューブ30の他端側32の開口とシリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aとがシール12を介して連通連結されるようになっている。
【0050】
このシール12は、シリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aに位置決めされた状態で取り付けられているとともに、そのスカート部12aがガイドチューブ30の他端側32開口を覆い囲むように密着されている。
【0051】
つまり、このシール12は、シリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2とで作る動弁機構配置空間内の潤滑油がガイドチューブ30内に入ることを防止するとともに、ガイドチューブ30内に外部の水やゴミ等の異物が入ったときでもそれらが前記動弁機構配置空間内へ入ることを防止するものである。
【0052】
そして、ガイドチューブ30の一端側31の内径寸法は、シリンダヘッド1に対するスパークプラグ15の着脱時ならびにスパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の装着時の芯合わせを容易に行うといったガイド機能を確保するために、ダイレクトイグニッション20の外径寸法より僅かに大きい程度とされる。
【0053】
また、ガイドチューブ30の他端側32の内径寸法は、一端側31の内径寸法より適宜大きくされていて、このガイドチューブ30の長手方向途中には、径方向外向きに膨らんだ膨出部33が設けられている。
【0054】
この膨出部33は、その長手方向中央の内径寸法が最大とされていて、この最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされている。この膨出部33の最大内径部位の内径寸法は、長手方向両端側31,32より大きく設定されている。この膨出部33とダイレクトイグニッション20との対向空間が、請求項に記載の逃げ空間とされる。
【0055】
ところで、図1および図2に示すように、内燃機関の各気筒において二つの吸気バルブ5,5と二つの排気バルブ6,6とを縦横に配置していて、それらの中央にスパークプラグ15を配置した構成であるが、通常、各バルブ5,6が各気筒の中心に対し若干傾いた姿勢とされていて、各バルブ5,6のステムエンド側で囲む枠内面積が各バルブ5,6の傘部側で囲む枠内面積に比べて大きくなる関係より、各バルブ5,6で囲まれる枠内に、上述したような長手方向途中に膨出部33を設けたガイドチューブ30を配置することが可能になっている。
【0056】
このように、長手方向途中に膨出部33を設けたガイドチューブ30であっても、各バルブ5,6、ロッカアーム7,8ならびにコイルスプリング9,10の配置を特別に外側に離して配置する必要がないので、シリンダヘッド1のコンパクト化を損なうことはない。
【0057】
次に、スパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の着脱手順、ならびに、その際のダイレクトイグニッション20の挙動について、図3から図7を参照して説明する。
【0058】
ここでは、例えばシリンダヘッドカバー2の上方の特にダイレクトイグニッション20の上方に、内燃機関に関連する部品40が配置されていて、この部品40がダイレクトイグニッション20の着脱時の障害物となる場合を想定して説明する。
【0059】
そのような場合には、まず、図4に示すように、ダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15から分離する。このときに、ダイレクトイグニッション20を単に真っ直ぐに引っ張るのであるが、ダイレクトイグニッション20を前記障害物としての部品40に当接させないように僅かに取り出すようにする。
【0060】
この後、ダイレクトイグニッション20をガイドチューブ30から取り出すために、ダイレクトイグニッション20を真っ直ぐに引っ張ると、前記障害物としての部品40に当接するので、図5に示すように、ダイレクトイグニッション20の姿勢を所定角度θ傾ける必要がある。
【0061】
このようにして障害物としての部品40との干渉を避けておいて、図6や図7に示すように、ダイレクトイグニッション20を徐々に取り出しながら姿勢の傾き角度θを徐々に大きくする。なお、ダイレクトイグニッション20の傾き角度θは、図5から図7に移行するに従い大きくなり、最後に図3に示すようにダイレクトイグニッション20を完全に取り出せるようになる。
【0062】
ところで、ダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15に装着する際は、上記の動作を逆に行えばよいので、その説明は割愛する。
【0063】
以上、この実施形態では、上述した一連の取り外し作業において、ダイレクトイグニッション20の傾き角度を可及的に大きくすることを可能とするために、ガイドチューブ30における上端側つまり長手方向他端側32の内径寸法をダイレクトイグニッション20の外径寸法よりも可及的に大きく設定したうえで、ガイドチューブ30の長手方向途中に膨出部33を設けるようにしている。
【0064】
これにより、図5から図7に示すように、ダイレクトイグニッション20を傾かせたときのプラグ結合部24の端縁がガイドチューブ30の内周面に当接するまでの距離を延ばすことが可能になる。そのため、ガイドチューブ30からダイレクトイグニッション20を取り出す際に、ダイレクトイグニッション20の傾き角度を可及的に大きくすることが可能になって、ダイレクトイグニッション20を障害物としての部品40との干渉を避けて取り出すことができるようになる。
【0065】
したがって、従来例のように前記障害物としての部品40をわざわざ取り外すといった無駄がなくなるので、ダイレクトイグニッション20を簡単かつ迅速に取り外すことが可能になるのである。
【0066】
ところで、この実施形態のガイドチューブ30は、その下端側つまり長手方向一端側31のみの内径寸法を、ダイレクトイグニッション20の外径寸法に可及的に近づけるように設定しているから、シリンダヘッド1に対するスパークプラグ15の装着のためのガイド機能、ならびにスパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の装着のためのガイド機能を確保できる。
【0067】
以上説明したように、ガイドチューブ30の長手方向途中にのみ膨出部33を設けることにより、ガイドチューブ30本来のガイド機能を確保したうえで、ダイレクトイグニッション20の着脱時における傾き角度を可及的に大きくすることを可能にしている。
【0068】
このようなダイレクトイグニッション20の着脱動作を考慮して、ガイドチューブ30の膨出部33の形状を上述したように例えば樽形状としているのであるが、その形状を以下において詳しく説明する。
【0069】
つまり、ガイドチューブ30をその長手方向に沿って断面にした状態において、膨出部33の片半分の形状は、例えば図8に示すように、障害物としての部品40を避けるために、ダイレクトイグニッション20を取り出しながら傾かせる過程においてダイレクトイグニッション20の装着方向先端側に位置するプラグ結合部24の端縁が描く移動軌跡Xに対応して、長手方向に湾曲した曲線形状とするのが好ましい。
【0070】
なお、実際には、ダイレクトイグニッション20の弾性カバー25がガイドチューブ30の膨出部33の内周面に当接するのであるが、弾性カバー25が撓むために、ダイレクトイグニッション20のプラグ結合部24の端縁が実質的にガイドチューブ30の膨出部33の内周面に当接するものとして説明した。
【0071】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。
【0072】
(1)上記実施形態において、ガイドチューブ30の膨出部33の形状は特に限定されるものではなく、膨出部33の片半分の断面を、例えば図9に示すような三角形状としたり、あるいは例えば図10に示すような台形形状としたりすることが可能である。
【0073】
(2)上記実施形態において、ガイドチューブ30の膨出部33における最大内径部位の内径寸法は、ガイドチューブ30の上端側つまり長手方向他端側32の内径寸法以上に設定するのが好ましい。
【0074】
例えば図11に示すように、ガイドチューブ30の他端側32の内径寸法を、膨出部33の最大内径部位の内径寸法と同一として、他端側32から膨出部33の最大内径部位までの内径寸法を一定としてもよい。
【0075】
図11に示すガイドチューブ30の場合、ガイドチューブ30の他端側32とダイレクトイグニッション20との対向間隔を上記実施形態に比べて大きくできるので、例えばダイレクトイグニッション20の取り出し初期段階における傾き角度をさらに大きくすることが可能になる。
【0076】
(3)上記実施形態では、スパークプラグ15やダイレクトイグニッション20を棒状部材として例示したが、この棒状部材としては前記以外に一般的なプラグキャップや直噴インジェクタ等とすることができる。
【0077】
従来からガソリンエンジンやディーゼルエンジンにおいて、燃焼室に直接的に燃料を噴射するための直噴インジェクタを用いるものがある。そのなかでも、直噴インジェクタをシリンダヘッド1における燃焼室11の中央に配置するような場合には、上記実施形態で説明したようなガイドチューブ30を直噴インジェクタの着脱ガイドとなるガイドチューブとして用いることが可能である。
【0078】
(4)上記実施形態では、ガイドチューブ30の膨出部33について、ガイドチューブ30の長手方向途中の全周に径方向外向きに均等に膨出する形状とした例を挙げているが、円周方向の特定部分、つまり棒状部材の着脱時における逃げ空間を確保したい場所にのみ局部的に設けるようにしてもよい。
【0079】
(5)上記実施形態では、ガイドチューブ30をシリンダヘッド1と別体にしているが、シリンダヘッド1にガイドチューブ30のような筒状ガイド部を一体的に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図2の(1)−(1)線断面の矢視図である。
【図2】本発明に係るガイドチューブを用いるシリンダヘッドの一実施形態を示す平面図である。
【図3】図1においてダイレクトイグニッションを取り外した状態を示す図である。
【図4】図1のダイレクトイグニッションの取り外し初期段階を説明するための図である。
【図5】図4の続きを説明するための図である。
【図6】図5の続きを説明するための図である。
【図7】図6の続きを説明するための図である。
【図8】図1に示すガイドチューブにおける膨出部の断面形状を説明するための図である。
【図9】本発明に係るガイドチューブの他の実施形態で、図1に対応する図である。
【図10】本発明に係るガイドチューブのさらに他の実施形態で、図1に対応する図である。
【図11】本発明に係るガイドチューブのさらに他の実施形態で、図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0081】
1 シリンダヘッド
2 シリンダヘッドカバー
2a プラグ挿抜孔(通孔)
3 吸気用カムシャフト
4 排気用カムシャフト
5 吸気バルブ
6 排気バルブ
15 スパークプラグ
15a スパークプラグの点火部
15b スパークプラグのターミナルナット
20 ダイレクトイグニッション
21 ダイレクトイグニッションの円筒ケース
24 ダイレクトイグニッションのプラグ結合部
30 ガイドチューブ
31 ガイドチューブの一端側
32 ガイドチューブの他端側
33 ガイドチューブの膨出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、自動二輪車、農耕機、船舶等に用いられる内燃機関において点火系または燃料噴射系の棒状部材(例えばスパークプラグ、ダイレクトイグニッション、プラグキャップ、直噴インジェクタ等)の着脱時のガイドとなるガイドチューブに関する。また、本発明は、前記ガイドチューブを有するシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のうち主としてガソリンエンジン等では、各燃焼室に供給される混合気を点火燃焼させるために、スパークプラグを用いている。
【0003】
このスパークプラグの点火時期を最適に制御するために、一般的に公知のように、ダイレクトイグニッションシステムが用いられる(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
通常、スパークプラグは、その点火部を燃焼室内に露呈させるようにシリンダヘッドに取り付けられ、このスパークプラグにダイレクトイグニッションが取り付けられる。
【0005】
ダイレクトイグニッションは、一般的に公知であるが、円筒ケース内にコイル部を設け、この円筒ケース上端にイグナイター部を、また、円筒ケース下端にプラグ結合部を、それぞれ設けた構成になっている。
【0006】
一般的に、円筒ケースは、例えば比較的硬質な適宜の絶縁性合成樹脂等で形成されるが、この円筒ケースの下端には、前記プラグ結合部を覆い囲むように、例えば適宜のゴム等の絶縁性材料で形成される弾性カバーが設けられる。
【0007】
プラグ結合部は、スパークプラグのターミナルヘッドにスナップフィット状態で外嵌装着されるようになっており、弾性カバーは、ダイレクトイグニッションのプラグ結合部とスパークプラグのターミナルヘッドとの結合部分を外部から隠蔽して電気的に絶縁するようになっている。
【0008】
そして、スパークプラグおよびダイレクトイグニッションは、ガイドチューブで覆い囲まれている。このガイドチューブは、スパークプラグおよびダイレクトイグニッションをシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで囲む動弁機構配置空間から隔絶するとともに、シリンダヘッドにスパークプラグを装着する際、ならびにダイレクトイグニッションをスパークプラグに装着する際のガイドとされるものである。このガイドチューブは、一般的に、内径を長手方向で一定にした円筒形になっている。
【特許文献1】特開平5−280458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例のガイドチューブは、その本来のガイド機能を確保するために、内径寸法をダイレクトイグニッションの外径寸法より僅かに大きい程度とするのが望ましいとされるが、次のような状況では、ダイレクトイグニッションを取り外す作業が面倒で手間がかかることが指摘される。
【0010】
具体的に、例えば、シリンダヘッドカバーの上方の特にダイレクトイグニッションの上方に、内燃機関に関連する部品が配置されていて、この部品がダイレクトイグニッションの着脱時の障害物となる場合がある。
【0011】
そのような場合には、ダイレクトイグニッションをスパークプラグから分離してから取り出すときに、ダイレクトイグニッションを前記障害物に干渉させないようにする必要がある。
【0012】
そのためには、例えばダイレクトイグニッションを取り出しながら姿勢を傾けるようにすることによって、障害物との干渉を避けるようにすればよい。
【0013】
しかしながら、上記従来例のように、ガイドチューブの内径寸法をダイレクトイグニッションの外径寸法に可及的に近づけるように設定していると、ガイドチューブからダイレクトイグニッションを取り外す際に、ダイレクトイグニッションの姿勢を傾ける角度が小さくなってしまい、障害物の位置によっては、障害物に対するダイレクトイグニッションの干渉を避けることができなくなる。
【0014】
そのような場合、前記障害物を取り外してから、ダイレクトイグニッションを取り外すようにしなければならなくなり、手間や時間がかかることになる。ここに改良の余地がある。
【0015】
本発明は、点火系または燃料供給系の棒状部材の着脱作業を行いやすくするガイドチューブならびにシリンダヘッドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、長手方向途中の内側には、前記棒状部材の着脱時に当該棒状部材の装着方向先端側の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が設けられていることを特徴としている。
【0017】
なお、点火系または燃料噴射系の棒状部材としては、例えばスパークプラグ、ダイレクトイグニッション、プラグキャップ、直噴インジェクタ等が挙げられる。
【0018】
この構成によれば、例えばシリンダヘッドから棒状部材を取り外すにあたって、例えば棒状部材の取り外し側に障害物が存在することが原因で、棒状部材をガイドチューブの他端側から取り出しながら姿勢を傾ける必要がある場合に、この棒状部材の傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。
【0019】
そもそも、ガイドチューブが円筒形つまり長手方向全長にわたって同一内径である場合、棒状部材をシリンダヘッドから分離してからガイドチューブ内で姿勢を傾けると、棒状部材の装着方向先端縁が、ガイドチューブの中心側から径方向外向きに変位して、ガイドチューブの長手方向途中部分の内周面に当接するので、その傾きが制限される。
【0020】
そこで、ガイドチューブの内径を可及的に大きくして、その内周面と棒状部材の装着方向先端縁との対向間隔を大きくすれば、棒状部材を傾かせることに伴いその装着方向先端縁がガイドチューブの内周面に当接するまでの距離が延びることになり、その結果、棒状部材の傾き角度を大きくすることが可能になる。
【0021】
しかしながら、仮に円筒形のガイドチューブで内径を大きくすればする程、当然ながら、棒状部材をシリンダヘッドに装着する際においてそれらの芯合わせを行うためのガイドができなくなり、ガイドチューブ本来のガイド機能が損なわれる。
【0022】
このようなことから、ガイドチューブの長手方向途中にのみ逃げ空間を設けることで、棒状部材の装着時におけるガイドチューブのガイド機能を確保したうえで、棒状部材を取り外す際の傾き角度を可及的に大きくすることを可能にしているのである。
【0023】
好ましくは、前記長手方向他端側の内径は、前記長手方向一端側の内径より大きくされており、前記長手方向途中には、その内径を前記一端側より大きくするように径方向外向きに膨らんだ膨出部が設けられており、この膨出部の内径側に前記逃げ空間が確保されている。
【0024】
このように、逃げ空間を確保するために、ガイドチューブを、長手方向で異径にしたような形状に特定することができる。
【0025】
好ましくは、前記膨出部は、その長手方向中央の内径が最大とされるとともに、当該最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされている。
【0026】
この構成によれば、棒状部材を着脱するにあたって、その姿勢を傾ける必要がある場合に、棒状部材の取り出し初期あるいは取り付け後期等のように、ガイドチューブからの棒状部材の飛び出し代が少ない状況でも、その傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。これにより、棒状部材の着脱作業が簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0027】
好ましくは、前記膨出部をその長手方向に沿って断面にしたときの片半分の形状は、前記棒状部材を取り出しながら姿勢を傾かせる過程において当該棒状部材の装着方向先端縁が描く移動軌跡に対応して、長手方向に湾曲する曲線とされる。
【0028】
この構成によれば、棒状部材を着脱するときに、その姿勢を傾ける動作を円滑に行えるようになる。これにより、棒状部材の着脱作業が簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0029】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、長手方向途中の内側には、径方向外向きへ膨出する膨出部が設けられていることを特徴としている。
【0030】
本発明は、内燃機関の燃焼室内の混合気を燃焼させるスパークプラグと、このスパークプラグに取り外し可能に装着されて点火用の電圧を印加するダイレクトイグニッションと、前記スパークプラグと前記ダイレクトイグニッションとを覆い囲むように設けられるとともに前記スパークプラグ着脱時ならびに前記ダイレクトイグニッション着脱時のガイドとされるガイドチューブとを含むシリンダヘッドであって、前記ガイドチューブが、上述した構成とされていることを特徴としている。
【0031】
この構成によれば、上述した特徴を有するガイドチューブを用いるから、ダイレクトイグニッションを取り外す際に、それをガイドチューブから取り出しながら姿勢を傾けるという動作を行う場合において、傾き角度を可及的に大きくすることが可能になる。
【0032】
これにより、例えばダイレクトイグニッションの取り外し側に障害物が存在している場合においても、障害物を避けてダイレクトイグニッションを取り外すことが可能になって、事前に障害物を取り外さなくても済むようになる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のガイドチューブならびにシリンダヘッドによれば、点火系または燃料噴射系の棒状部材の着脱作業を行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態を図1から図8に示している。
【0035】
この実施形態では、DOHC式で一気筒あたり吸気バルブ二つ、排気バルブ二つとした内燃機関(例えばガソリンエンジン)に本発明を適用した例を挙げる。内燃機関の気筒数や気筒レイアウトは特に限定されるものではないが、説明をわかり易くするために、一気筒のみを図示している。
【0036】
図1および図2に示すように、シリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2との間の空間には、吸気用カムシャフト3および排気用カムシャフト4が配置されている。吸気用カムシャフト3は二つ一対の吸気バルブ5を、また、排気用カムシャフト4は二つ一対の排気バルブ6を、それぞれ上方向または下方向に変位させることによって、燃焼室11に開口される吸気ポート(図示省略)および排気ポート(図示省略)を閉塞または開放する。
【0037】
各カムシャフト3,4のカムロブ3a,4aは、それぞれロッカアーム7,8を介して各バルブ5,6に当接されており、各バルブ5,6は、共に、バルブスプリング9,10により閉側に付勢されるようになっている。
【0038】
シリンダヘッド1には、図2に示すように、各燃焼室11の中央位置にスパークプラグ15が取り付けられる。このスパークプラグ15は、図1に示すように、その点火部15aが燃焼室11内に露呈する状態で配置されている。
【0039】
この実施形態の内燃機関では、スパークプラグ15の点火時期を最適に制御するために、一般的に公知のダイレクトイグニッションシステムが用いられている。
【0040】
具体的に、スパークプラグ15には、ダイレクトイグニッション20が接続されている。
【0041】
このダイレクトイグニッション20は、一般的に公知であるが、例えば図1および図3に示すように、円筒ケース21内にコイル部22を設け、この円筒ケース21上端にイグナイター部23を、また、円筒ケース21下端にプラグ結合部24を、それぞれ設けた構成になっている。
【0042】
プラグ結合部24は、図1に示すように、スパークプラグ15のターミナルヘッド15bにスナップフィット状態で外嵌装着されるような構造になっていて、円筒ケース21の下端に一体形成される小径円筒部24aと、この小径円筒部24a内に配置されるコイルスプリング24bとで構成されている。
【0043】
円筒ケース21は、比較的硬質な適宜の絶縁性合成樹脂等で形成されるが、この円筒ケース21の下端には、小径円筒部24aを覆うように、弾性カバー25が一体に取り付けられている。この弾性カバー25は、例えば比較的柔軟な適宜の絶縁性ゴム等で形成され、プラグ結合部24とスパークプラグ15のターミナルヘッド15bとの結合した状態で当該結合部分を外部から隠蔽して電気的に絶縁するものである。
【0044】
これらスパークプラグ15およびダイレクトイグニッション20は、ガイドチューブ30で覆い囲まれている。
【0045】
このガイドチューブ30は、スパークプラグ15およびダイレクトイグニッション20をシリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2とで囲む動弁機構配置空間から隔絶するとともに、シリンダヘッド1にスパークプラグ15を装着する際、ならびにダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15に装着する際に芯合わせを容易とするためのガイドとされるものである。
【0046】
ここで、ダイレクトイグニッション20の着脱時における姿勢変更の自由度を拡大することを可能とするために、ガイドチューブ30を長手方向に異径となる形状にしているので、以下で詳しく説明する。
【0047】
具体的に、ガイドチューブ30は、例えば適宜の絶縁性合成樹脂や適宜の絶縁性ゴム等、あるいはそれら以外の絶縁性ならびに耐油性に優れた材料で形成される。
【0048】
このガイドチューブ30の下端側つまり長手方向一端側31は、シリンダヘッド1におけるスパークプラグ15の装着領域を覆い囲むように配置され、また、ガイドチューブ30の上端側つまり長手方向他端側32は、シリンダヘッドカバー2に設けられるプラグ挿抜孔(通孔)2aと連通するように配置される。
【0049】
このガイドチューブ30の他端側32は、シリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aの下方に配置されていて、ガイドチューブ30の他端側32の開口とシリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aとがシール12を介して連通連結されるようになっている。
【0050】
このシール12は、シリンダヘッドカバー2のプラグ挿抜孔2aに位置決めされた状態で取り付けられているとともに、そのスカート部12aがガイドチューブ30の他端側32開口を覆い囲むように密着されている。
【0051】
つまり、このシール12は、シリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2とで作る動弁機構配置空間内の潤滑油がガイドチューブ30内に入ることを防止するとともに、ガイドチューブ30内に外部の水やゴミ等の異物が入ったときでもそれらが前記動弁機構配置空間内へ入ることを防止するものである。
【0052】
そして、ガイドチューブ30の一端側31の内径寸法は、シリンダヘッド1に対するスパークプラグ15の着脱時ならびにスパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の装着時の芯合わせを容易に行うといったガイド機能を確保するために、ダイレクトイグニッション20の外径寸法より僅かに大きい程度とされる。
【0053】
また、ガイドチューブ30の他端側32の内径寸法は、一端側31の内径寸法より適宜大きくされていて、このガイドチューブ30の長手方向途中には、径方向外向きに膨らんだ膨出部33が設けられている。
【0054】
この膨出部33は、その長手方向中央の内径寸法が最大とされていて、この最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされている。この膨出部33の最大内径部位の内径寸法は、長手方向両端側31,32より大きく設定されている。この膨出部33とダイレクトイグニッション20との対向空間が、請求項に記載の逃げ空間とされる。
【0055】
ところで、図1および図2に示すように、内燃機関の各気筒において二つの吸気バルブ5,5と二つの排気バルブ6,6とを縦横に配置していて、それらの中央にスパークプラグ15を配置した構成であるが、通常、各バルブ5,6が各気筒の中心に対し若干傾いた姿勢とされていて、各バルブ5,6のステムエンド側で囲む枠内面積が各バルブ5,6の傘部側で囲む枠内面積に比べて大きくなる関係より、各バルブ5,6で囲まれる枠内に、上述したような長手方向途中に膨出部33を設けたガイドチューブ30を配置することが可能になっている。
【0056】
このように、長手方向途中に膨出部33を設けたガイドチューブ30であっても、各バルブ5,6、ロッカアーム7,8ならびにコイルスプリング9,10の配置を特別に外側に離して配置する必要がないので、シリンダヘッド1のコンパクト化を損なうことはない。
【0057】
次に、スパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の着脱手順、ならびに、その際のダイレクトイグニッション20の挙動について、図3から図7を参照して説明する。
【0058】
ここでは、例えばシリンダヘッドカバー2の上方の特にダイレクトイグニッション20の上方に、内燃機関に関連する部品40が配置されていて、この部品40がダイレクトイグニッション20の着脱時の障害物となる場合を想定して説明する。
【0059】
そのような場合には、まず、図4に示すように、ダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15から分離する。このときに、ダイレクトイグニッション20を単に真っ直ぐに引っ張るのであるが、ダイレクトイグニッション20を前記障害物としての部品40に当接させないように僅かに取り出すようにする。
【0060】
この後、ダイレクトイグニッション20をガイドチューブ30から取り出すために、ダイレクトイグニッション20を真っ直ぐに引っ張ると、前記障害物としての部品40に当接するので、図5に示すように、ダイレクトイグニッション20の姿勢を所定角度θ傾ける必要がある。
【0061】
このようにして障害物としての部品40との干渉を避けておいて、図6や図7に示すように、ダイレクトイグニッション20を徐々に取り出しながら姿勢の傾き角度θを徐々に大きくする。なお、ダイレクトイグニッション20の傾き角度θは、図5から図7に移行するに従い大きくなり、最後に図3に示すようにダイレクトイグニッション20を完全に取り出せるようになる。
【0062】
ところで、ダイレクトイグニッション20をスパークプラグ15に装着する際は、上記の動作を逆に行えばよいので、その説明は割愛する。
【0063】
以上、この実施形態では、上述した一連の取り外し作業において、ダイレクトイグニッション20の傾き角度を可及的に大きくすることを可能とするために、ガイドチューブ30における上端側つまり長手方向他端側32の内径寸法をダイレクトイグニッション20の外径寸法よりも可及的に大きく設定したうえで、ガイドチューブ30の長手方向途中に膨出部33を設けるようにしている。
【0064】
これにより、図5から図7に示すように、ダイレクトイグニッション20を傾かせたときのプラグ結合部24の端縁がガイドチューブ30の内周面に当接するまでの距離を延ばすことが可能になる。そのため、ガイドチューブ30からダイレクトイグニッション20を取り出す際に、ダイレクトイグニッション20の傾き角度を可及的に大きくすることが可能になって、ダイレクトイグニッション20を障害物としての部品40との干渉を避けて取り出すことができるようになる。
【0065】
したがって、従来例のように前記障害物としての部品40をわざわざ取り外すといった無駄がなくなるので、ダイレクトイグニッション20を簡単かつ迅速に取り外すことが可能になるのである。
【0066】
ところで、この実施形態のガイドチューブ30は、その下端側つまり長手方向一端側31のみの内径寸法を、ダイレクトイグニッション20の外径寸法に可及的に近づけるように設定しているから、シリンダヘッド1に対するスパークプラグ15の装着のためのガイド機能、ならびにスパークプラグ15に対するダイレクトイグニッション20の装着のためのガイド機能を確保できる。
【0067】
以上説明したように、ガイドチューブ30の長手方向途中にのみ膨出部33を設けることにより、ガイドチューブ30本来のガイド機能を確保したうえで、ダイレクトイグニッション20の着脱時における傾き角度を可及的に大きくすることを可能にしている。
【0068】
このようなダイレクトイグニッション20の着脱動作を考慮して、ガイドチューブ30の膨出部33の形状を上述したように例えば樽形状としているのであるが、その形状を以下において詳しく説明する。
【0069】
つまり、ガイドチューブ30をその長手方向に沿って断面にした状態において、膨出部33の片半分の形状は、例えば図8に示すように、障害物としての部品40を避けるために、ダイレクトイグニッション20を取り出しながら傾かせる過程においてダイレクトイグニッション20の装着方向先端側に位置するプラグ結合部24の端縁が描く移動軌跡Xに対応して、長手方向に湾曲した曲線形状とするのが好ましい。
【0070】
なお、実際には、ダイレクトイグニッション20の弾性カバー25がガイドチューブ30の膨出部33の内周面に当接するのであるが、弾性カバー25が撓むために、ダイレクトイグニッション20のプラグ結合部24の端縁が実質的にガイドチューブ30の膨出部33の内周面に当接するものとして説明した。
【0071】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。
【0072】
(1)上記実施形態において、ガイドチューブ30の膨出部33の形状は特に限定されるものではなく、膨出部33の片半分の断面を、例えば図9に示すような三角形状としたり、あるいは例えば図10に示すような台形形状としたりすることが可能である。
【0073】
(2)上記実施形態において、ガイドチューブ30の膨出部33における最大内径部位の内径寸法は、ガイドチューブ30の上端側つまり長手方向他端側32の内径寸法以上に設定するのが好ましい。
【0074】
例えば図11に示すように、ガイドチューブ30の他端側32の内径寸法を、膨出部33の最大内径部位の内径寸法と同一として、他端側32から膨出部33の最大内径部位までの内径寸法を一定としてもよい。
【0075】
図11に示すガイドチューブ30の場合、ガイドチューブ30の他端側32とダイレクトイグニッション20との対向間隔を上記実施形態に比べて大きくできるので、例えばダイレクトイグニッション20の取り出し初期段階における傾き角度をさらに大きくすることが可能になる。
【0076】
(3)上記実施形態では、スパークプラグ15やダイレクトイグニッション20を棒状部材として例示したが、この棒状部材としては前記以外に一般的なプラグキャップや直噴インジェクタ等とすることができる。
【0077】
従来からガソリンエンジンやディーゼルエンジンにおいて、燃焼室に直接的に燃料を噴射するための直噴インジェクタを用いるものがある。そのなかでも、直噴インジェクタをシリンダヘッド1における燃焼室11の中央に配置するような場合には、上記実施形態で説明したようなガイドチューブ30を直噴インジェクタの着脱ガイドとなるガイドチューブとして用いることが可能である。
【0078】
(4)上記実施形態では、ガイドチューブ30の膨出部33について、ガイドチューブ30の長手方向途中の全周に径方向外向きに均等に膨出する形状とした例を挙げているが、円周方向の特定部分、つまり棒状部材の着脱時における逃げ空間を確保したい場所にのみ局部的に設けるようにしてもよい。
【0079】
(5)上記実施形態では、ガイドチューブ30をシリンダヘッド1と別体にしているが、シリンダヘッド1にガイドチューブ30のような筒状ガイド部を一体的に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図2の(1)−(1)線断面の矢視図である。
【図2】本発明に係るガイドチューブを用いるシリンダヘッドの一実施形態を示す平面図である。
【図3】図1においてダイレクトイグニッションを取り外した状態を示す図である。
【図4】図1のダイレクトイグニッションの取り外し初期段階を説明するための図である。
【図5】図4の続きを説明するための図である。
【図6】図5の続きを説明するための図である。
【図7】図6の続きを説明するための図である。
【図8】図1に示すガイドチューブにおける膨出部の断面形状を説明するための図である。
【図9】本発明に係るガイドチューブの他の実施形態で、図1に対応する図である。
【図10】本発明に係るガイドチューブのさらに他の実施形態で、図1に対応する図である。
【図11】本発明に係るガイドチューブのさらに他の実施形態で、図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0081】
1 シリンダヘッド
2 シリンダヘッドカバー
2a プラグ挿抜孔(通孔)
3 吸気用カムシャフト
4 排気用カムシャフト
5 吸気バルブ
6 排気バルブ
15 スパークプラグ
15a スパークプラグの点火部
15b スパークプラグのターミナルナット
20 ダイレクトイグニッション
21 ダイレクトイグニッションの円筒ケース
24 ダイレクトイグニッションのプラグ結合部
30 ガイドチューブ
31 ガイドチューブの一端側
32 ガイドチューブの他端側
33 ガイドチューブの膨出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、
長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、
長手方向途中の内側には、前記棒状部材の着脱時に当該棒状部材の装着方向先端側の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が設けられていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項2】
請求項1において、前記長手方向他端側の内径は、前記長手方向一端側の内径より大きくされており、前記長手方向途中には、その内径を前記一端側より大きくするように径方向外向きに膨らんだ膨出部が設けられており、この膨出部の内径側に前記逃げ空間が確保されていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項3】
請求項2において、前記膨出部は、その長手方向中央の内径が最大とされるとともに、当該最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項4】
請求項2または3において、前記膨出部をその長手方向に沿って断面にしたときの片半分の形状は、前記棒状部材を取り出しながら姿勢を傾かせる過程において当該棒状部材の装着方向先端縁が描く移動軌跡に対応して、長手方向に湾曲する曲線とされることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項5】
内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、
長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、
長手方向途中の内側には、径方向外向きへ膨出する膨出部が設けられていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項6】
内燃機関の燃焼室内の混合気を燃焼させるスパークプラグと、このスパークプラグに取り外し可能に装着されて点火用の電圧を印加するダイレクトイグニッションと、前記スパークプラグと前記ダイレクトイグニッションとを覆い囲むように設けられるとともに前記スパークプラグ着脱時ならびに前記ダイレクトイグニッション着脱時のガイドとされるガイドチューブとを含むシリンダヘッドであって、
前記ガイドチューブが、請求項1から5のいずれかに記載の構成とされていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、
長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、
長手方向途中の内側には、前記棒状部材の着脱時に当該棒状部材の装着方向先端側の径方向外向きへの動きを許容するための逃げ空間が設けられていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項2】
請求項1において、前記長手方向他端側の内径は、前記長手方向一端側の内径より大きくされており、前記長手方向途中には、その内径を前記一端側より大きくするように径方向外向きに膨らんだ膨出部が設けられており、この膨出部の内径側に前記逃げ空間が確保されていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項3】
請求項2において、前記膨出部は、その長手方向中央の内径が最大とされるとともに、当該最大内径部位から長手方向両側へ向けて漸次縮径されることで樽形状とされていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項4】
請求項2または3において、前記膨出部をその長手方向に沿って断面にしたときの片半分の形状は、前記棒状部材を取り出しながら姿勢を傾かせる過程において当該棒状部材の装着方向先端縁が描く移動軌跡に対応して、長手方向に湾曲する曲線とされることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項5】
内燃機関のシリンダヘッドに点火系または燃料供給系の棒状部材をその長手方向一端側が燃焼室に露呈される状態で取り外し可能に装着する際のガイドとなるガイドチューブであって、
長手方向一端側がシリンダヘッドにおける棒状部材装着領域を覆い囲むように取り付けられ、また、長手方向他端側がシリンダヘッドカバーに設けられる通孔と連通するように取り付けられ、
長手方向途中の内側には、径方向外向きへ膨出する膨出部が設けられていることを特徴とするガイドチューブ。
【請求項6】
内燃機関の燃焼室内の混合気を燃焼させるスパークプラグと、このスパークプラグに取り外し可能に装着されて点火用の電圧を印加するダイレクトイグニッションと、前記スパークプラグと前記ダイレクトイグニッションとを覆い囲むように設けられるとともに前記スパークプラグ着脱時ならびに前記ダイレクトイグニッション着脱時のガイドとされるガイドチューブとを含むシリンダヘッドであって、
前記ガイドチューブが、請求項1から5のいずれかに記載の構成とされていることを特徴とするシリンダヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−182808(P2007−182808A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1571(P2006−1571)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591159055)トヨタテクノクラフト株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591159055)トヨタテクノクラフト株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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