説明

ガイドワイヤ

【課題】
本発明は、破損しにくいガイドワイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のガイドワイヤは、先端部及び後端部を有するコアシャフトと、上記先端部が内部に挿入されるらせんコイルと、上記先端部及び上記らせんコイルを接合するロウ付け部とを含んで形成されたガイドワイヤであって、上記らせんコイルを形成する素線の表面には、複数の溝部が形成されており、上記複数の溝部は、上記素線の外周方向よりも上記素線の軸方向に沿ってより多く形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経皮的冠動脈形成術(以下、単にPTCAともいう)に使用される医療用機械器具の一つとして、バルーンやステント等のデバイスを病変部まで導くために使用されるガイドワイヤが知られている。
【0003】
このようなガイドワイヤとして、例えば、特許文献1には、先端部及び後端部を有するコアシャフトと、コアシャフトの先端部を覆っているらせんコイルと、コアシャフト及びらせんコイルを接合しているロウ付け部と、らせんコイルの表面に形成された樹脂被覆層とを有するガイドワイヤが開示されている。
【0004】
なお、ガイドワイヤにおいては、コアシャフトの先端部側がガイドワイヤの遠位部であり、コアシャフトの後端部側がガイドワイヤの近位部となる。
ガイドワイヤの遠位部は体内に挿入され、ガイドワイヤの近位部は医師等の手技者によって操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来のガイドワイヤでは、らせんコイルを形成している素線の表面に粗化処理が施されており、らせんコイルと樹脂被覆層との密着性が高いとされている。
【0007】
しかしながら、係る従来のガイドワイヤは、らせんコイルとロウ付け部との接合強度が充分に高いとはいえず、使用時において引張力等の外力が加えられた場合には、らせんコイルが脱落しやすいという問題がある。
【0008】
特に、タングステンを含んでなる素線から形成されたらせんコイルを用いてガイドワイヤを製造する場合には、らせんコイルとロウ付け部とが接合されにくく、製造されたガイドワイヤでのらせんコイル及びロウ付け部の接合強度がさらに低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、素線の表面に複数の溝部が特定方向に沿って形成されたらせんコイルを採用することにより、らせんコイルの脱落を防止することができることを見出し、本発明のガイドワイヤを完成させた。
【0010】
即ち、本発明のガイドワイヤは、先端部及び後端部を有するコアシャフトと、
上記先端部が内部に挿入されるらせんコイルと、
上記先端部及び上記らせんコイルを接合するロウ付け部とを含んで形成されたガイドワイヤであって、
上記らせんコイルを形成する素線の表面には、複数の溝部が形成されており、
上記複数の溝部は、上記素線の外周方向よりも上記素線の軸方向に沿ってより多く形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のガイドワイヤの構成及び効果について、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るガイドワイヤをその長手方向に沿って切断した状態を模式的に示す断面図である。
図2(a)は、図1に示すガイドワイヤを形成しているらせんコイルを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すらせんコイルを引き伸ばすことにより素線とした状態を模式的に示す斜視図であり、図2(c)は、図2(b)に示す素線をその長手方向に対して垂直に切断した切断面を模式的に示す垂直断面図である。
図3は、図1に示すガイドワイヤの後端ロウ付け部近傍を拡大して示す拡大断面図である。
なお、以下の説明では、ガイドワイヤの遠位部とコアシャフトの先端部とをともに同じ符号で示し、ガイドワイヤの近位部とコアシャフトの後端部とをともに同じ符号で示すこととする。また、らせんコイルの一部を破線で示すことにより、らせんコイルの一部の図示を省略することがある。
【0013】
図1に示す本発明のガイドワイヤ1は、先端部2a及び後端部2bを有するコアシャフト2と、先端部2aが内部に挿入されるらせんコイル3と、先端部2a及びらせんコイル3を接合するロウ付け部4a、4b及び4cとを含んで形成されている。なお、図1で示す例では、先端ロウ付け部4a、中間ロウ付け部4b及び後端ロウ付け部4cからロウ付け部が形成されているが、ロウ付け部の個数は3個に限定されるものではなく、先端ロウ付け部及び後端ロウ付け部のみが形成されていてもよいし、2個以上の中間ロウ付け部が形成されていてもよい。
【0014】
図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、らせんコイル3を形成する素線3aの表面には、複数の溝部3bが形成されている。
複数の溝部3bは、素線3aの外周方向Dよりも素線3aの軸方向Lに沿ってより多く形成されている。
【0015】
本明細書では、らせんコイルを形成する素線の軸方向に沿って仮想直線を引いた場合において、その形成方向が該仮想直線に平行であるか又は該仮想直線に傾きがより近い溝部のことを、素線の軸方向に沿って形成された溝部ということとする。
また、該仮想直線に対して垂直に仮想垂線を引いた場合において、その形成方向が該仮想垂線に平行であるか又は該仮想垂線に傾きがより近い溝部のことを、素線の外周方向に沿って形成された溝部ということとする。
また、複数の溝部が、素線の外周方向よりも素線の軸方向に沿ってより多く形成されているとは、素線の軸方向に沿って形成された溝部の個数が、素線の外周方向に沿って形成された溝部の個数よりも多いことをいう。
なお、溝部の形成方向及び個数については、例えば、目視による観察、光学顕微鏡による拡大観察、又は、走査型電子顕微鏡写真による拡大観察等によって確認することができる。
【0016】
上記構成を有するらせんコイル3とコアシャフト2の先端部2aとがロウ付け部4a、4b及び4cにより接合された本発明のガイドワイヤ1では、ロウ付け部4a、4b及び4cのロウがらせんコイル3の溝部3bに浸透しており、らせんコイル3とロウ付け部4a、4b及び4cとの接合強度が高い(例えば、後端ロウ付け部4c近傍の拡大図(図3)参照)。
【0017】
さらに、図3に示すように、ガイドワイヤ1の長手方向Xと、その方向に沿ってより多くの溝部3bが形成されている素線3aの軸方向Lとが90°により近い角度で交差するように形成されているので、ガイドワイヤ1の長手方向Xに沿って外力が加えられた場合であっても、外力が加えられる方向に略直交するように形成された溝部と溝部に浸透したロウとにより、上記外力に抗するアンカー効果が生じる。
なお、ここでは、後端ロウ付け部4cを例にして説明したが、他のロウ付け部(例えば、先端ロウ付け部4a、中間ロウ付け部4b)でも同様に、らせんコイル3とロウ付け部との接合強度が高く、複数の溝部3bと溝部3bに浸透したロウとがアンカー効果を発揮することができる。
【0018】
ここで、従来のガイドワイヤにおける遠位部が病変部にはまり込むなどした際に、手技者がガイドワイヤの引張操作を行った場合には、主にガイドワイヤの長手方向に沿って引張力が加えられるので、らせんコイルが脱落しやすい。
【0019】
しかしながら、本発明のガイドワイヤ1は、特定方向により多く形成された複数の溝部3bにより、らせんコイル3とロウ付け部4a、4b及び4cとの接合強度が高く、複数の溝部3b及び溝部3bに浸透したロウがアンカー効果を発揮することができるので、ガイドワイヤ1の長手方向Xに沿って引張力が加えられた場合であっても、らせんコイル3が脱落しにくい。
【0020】
本発明のガイドワイヤでは、上記素線がタングステンを含んでなることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るガイドワイヤをその長手方向に沿って切断した状態を模式的に示す断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すガイドワイヤを形成しているらせんコイルを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すらせんコイルを引き伸ばすことにより素線とした状態を模式的に示す斜視図であり、図2(c)は、図2(b)に示す素線をその長手方向に対して垂直に切断した切断面を模式的に示す垂直断面図である。
【図3】図1に示すガイドワイヤの後端ロウ付け部近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明のガイドワイヤを模したモデルに係るらせんコイルを形成しているタングステン素線を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真であり、図4(b)は、図4(a)に示すタングステン素線を用いたモデルの先端部の拡大写真である。
【図5】図5(a)は、従来のガイドワイヤを模したモデルに係るらせんコイルを形成しているタングステン素線を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真であり、図5(b)は、図5(a)に示すタングステン素線を用いたモデルの先端部の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、本発明のガイドワイヤの一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のガイドワイヤは、上述した本発明のガイドワイヤと同様の構成を有しているため、以下の説明では、図1〜図3を参照しながら説明する。
なお、本発明のガイドワイヤに係る説明と重複する事項については、説明を省略することもある。
【0023】
図1〜図3に示す本実施形態のガイドワイヤ1は、先端部2a及び後端部2bを有するコアシャフト2と、先端部2aが内部に挿入されるらせんコイル3と、先端部2a及びらせんコイル3を接合する先端ロウ付け部4a、中間先端ロウ付け部4b及び後端ロウ付け部4cとから形成されている。
【0024】
また、図2(a)、図2(b)及び図2(c)を示して既に説明したとおり、らせんコイル3を形成する素線3aの表面には複数の溝部3bが形成されており、複数の溝部3bは素線3aの外周方向Dよりも素線3aの軸方向Lに沿ってより多く形成されている。
以下、本実施形態のガイドワイヤ1の各構成について詳述する。
【0025】
(コアシャフトの構成)
図1に示す後端部2bの形状は、コアシャフト2の最先端側に向かって縮径したテーパー形状である。また、後端部2bの最後端には、延長用のガイドワイヤ等を取り付ける連結部2cが形成されている。なお、後端部2bの形状は、略均一の直径を有する円筒状であってもよい。
【0026】
後端部2bの先端は、コアシャフト2の最先端側に向かってより縮径したテーパー形状の先端部2aと結合している。
【0027】
このように、コアシャフト2は、後端部2bから先端部2aに向かって縮径しているため、後端部2bから先端部2aにいくにつれて徐々に柔軟になっている。
【0028】
コアシャフト2の材質としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、ステンレスであることが望ましく、オーステナイト系ステンレスであることがより望ましく、特にSUS304、SUS316又はSUS316Lであることがさらにより望ましい。
【0029】
(らせんコイルの構成)
図2(a)に示すらせんコイル3は、単一又は複数の素線3aをらせん状に巻回することにより形成されており、内部に貫通孔を有する管状体である。
【0030】
らせんコイル3を形成する素線3aの表面の略全面には複数の溝部3bが形成されており、複数の溝部3bは、素線3aの外周方向Dよりも素線3aの軸方向Lに沿ってより多く形成されている。
【0031】
溝部3bの最大深さについては、例えば、1.0〜100μmであってもよく、溝部3bの長さについては、例えば、1.0〜10mmであってもよい。
【0032】
素線3aの材質としては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス又は析出硬化ステンレス等のステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、X線不透過性金属である白金、金、タングステン、タンタル、イリジウム又はこれらの合金等が挙げられる。
これらの中では、タングステン又はタングステン合金であることが望ましい。
【0033】
図1に示すように、らせんコイル3の内部には先端部2aが挿入されており、らせんコイル3は先端部2aを覆っている。なお、先端部2aとらせんコイル3の内壁とは、所定の間隔をあけて離間している。
【0034】
隣り合う素線3a同士は、らせんコイル3の先端3cから後端3dまでの全体にわたって、互いに接触している。そのため、らせんコイル3は、その全体にわたって略均一な曲げ特性を有している。
なお、らせんコイルの先端近傍では、隣り合う素線間にピッチが形成されていてもよい。この場合には、らせんコイルの先端近傍の柔軟性がより高くなる。
それとは反対に、らせんコイルの後端近傍では、隣り合う素線同士が互いに接触しており、密巻きとなっていてもよい。
らせんコイルの後端近傍にねじれ力が加わってもねじれにくくなり、ガイドワイヤの近位部を回転させた場合に生じるトルクを遠位部の最先端方向に効率よく伝えることができるからである。
【0035】
らせんコイル3の先端3cと先端部2aの最先端とは、半球状の先端ロウ付け部4aにより互いに固着している。
らせんコイル3の先端3cから後端3d側に離間した中間位置では、らせんコイル3と先端部2aとが中間ロウ付け部4bにより互いに固着している。
らせんコイル3の後端3dと先端部2aの最後端とは、後端ロウ付け部4cにより互いに固着している。
【0036】
先端ロウ付け部4a、中間ロウ付け4b部及び後端ロウ付け部4cを形成するロウの材料としては、例えば、アルミニウム合金、Ag、Au、Zn、Sn−Pb合金、Sn−Au合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag合金等の材料が挙げられる。
これらの中では、Au、Sn−Au合金、Sn−Ag合金が特に好ましい。ロウ付け部の接合強度がより高くなるからである。
【0037】
(ガイドワイヤの製造方法)
本実施形態のガイドワイヤは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0038】
(1)上述した所定形状となるように線材に対してテーパー加工やプレス加工等を施すことにより、コアシャフトを作製する。
【0039】
(2)らせんコイルとなる素線に対して粗化処理を行う。
粗化処理は、例えば、高温のアルカリ溶液中に素線を浸漬させたり、アルカリ溶液中で素線を電解研磨したり、素線の軸方向に沿って所望の番手の研磨紙を往復移動させて素線を研磨すること等により行ってもよい。
【0040】
(3)粗化処理を施した単一又は複数の素線をらせん状に巻回することにより、らせんコイルを作製する。
【0041】
(4)作製したコアシャフトの先端部をらせんコイルに挿入した後、コアシャフトとらせんコイルとを所定の位置でロウ付けすることにより、本実施形態のガイドワイヤを製造する。
【0042】
本実施形態のガイドワイヤの作用効果を以下に列挙する。
【0043】
(1)本実施形態のガイドワイヤは、らせんコイルを形成する素線の表面に複数の溝部が形成されており、複数の溝部が素線の外周方向よりも素線の軸方向に沿ってより多く形成されているので、らせんコイルとロウ付け部との接合強度が高く、複数の溝部と溝部に浸透したロウとがアンカー効果を発揮することができる。
従って、ガイドワイヤの長手方向に沿って引張力が加えられた場合であっても、らせんコイルが脱落しにくい。
【0044】
(2)らせんコイルを形成する素線がタングステンを含んでなる場合であっても、タングステンと比較的なじみにくい性質を有するロウが溝部に沿って浸透するため、らせんコイルとロウ付け部との接合強度が高くなる。特に、タングステンを含んでなる素線と、Sn−Ag合金からなるロウとを使用した場合には、上記効果を好適に享受することができる。
これに対して、上記溝部が形成されていないタングステンを含んでなる素線を使用した場合には、素線とロウとが弾き合うような挙動を示し、らせんコイルとロウ付け部とが接合されにくく、接合強度が低くなる。
【0045】
(3)らせんコイルを形成する素線がタングステンを含んでなる場合には、X線不透過性金属の中では強度が高いので破損しにくく、比較的安価であり、らせんコイル作製時の環境負荷が少なくなる。
【実施例】
【0046】
(試験例1)
本実施形態のガイドワイヤを模したモデル1を、以下の工程を経ることにより作製した。
【0047】
コアシャフトを模したステンレス棒(直径0.081mm×長さ200mm)と、タングステン素線(素線径0.081mm)をらせん状に巻回してなるらせんコイル(タングステンコイル)(外径0.342mm×内径0.180mm×長さ120mm)と、Sn−Ag合金ロウとを準備した。
【0048】
上記タングステン素線としては、予め粗化処理(NaOH水溶液、600度、20秒)を行ったものを使用した。
【0049】
粗化処理後のタングステン素線の表面状態については、走査型電子顕微鏡により1800倍で確認した。
図4(a)は、本発明のガイドワイヤを模したモデルに係るらせんコイルを形成しているタングステン素線を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0050】
図4(a)に示すように、粗化処理後のタングステン素線の表面状態においては、素線の表面に複数の溝部が形成されており、複数の溝部が素線の外周方向(図4(a)の左右方向)よりも素線の軸方向(図4(a)の上下方向)に沿ってより多く形成されていることが確認された。
【0051】
モデル1の作製工程について、引き続き説明する。
準備したステンレス棒を、らせんコイルの内部に挿入した。
その後、ステンレス棒とらせんコイルとをSn−Ag合金ロウで接合した。
以上の工程を経ることにより、モデル1を作製した。
【0052】
作製したモデル1について、ロウ付けの状態を確認した。
図4(b)は、図4(a)に示すタングステン素線を用いたモデルの先端部の拡大写真である。
【0053】
図4(b)に示すように、モデル1では、らせんコイル(タングステンコイル)の素線間にロウが浸透し、外部にはみ出しておらず、らせんコイルとロウ付け部とがよく接合されていることが確認できた。そのため、らせんコイルとロウ付け部との接合強度が高いものと推定される。
【0054】
(比較例1)
粗化処理を行わなかったこと以外は、試験例1と同様にして、モデル2を作製した。
【0055】
粗化処理を行っていないタングステン素線の表面状態について、走査型電子顕微鏡により1800倍で確認した。
図5(a)は、従来のガイドワイヤを模したモデルに係るらせんコイルを形成しているタングステン素線を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0056】
図5(a)に示すように、粗化処理を行っていないタングステン素線の表面状態においては、素線の表面に溝部がほとんど形成されていない。
【0057】
作製したモデル2について、ロウ付けの状態を確認した。
図5(b)は、図5(a)に示すタングステン素線を用いたモデルの先端部の拡大写真である。なお、図5(b)では、らせんコイルの中間部分を省略し、らせんコイルの後端近傍と先端近傍とを表示している。
【0058】
図5(b)に示すように、モデル2では、らせんコイルの素線間にロウが浸透しておらず、その多くが外部にはみ出していることが確認できた。そのため、らせんコイルとロウ付け部との接合強度が低いものと推定される。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明のガイドワイヤにおいて、素線の外周方向よりも素線の軸方向に沿ってより多く形成された複数の溝部は、素線の表面の略全面に形成されていてもよく、ロウ付け部により接合される箇所の表面にのみ形成されていてもよい。
【0060】
本発明のガイドワイヤにおいて、らせんコイルの形状は、らせんコイルの後端から先端に向かって縮径するテーパー形状であってもよい。
係るらせんコイル形状を有するガイドワイヤは、慢性完全閉塞病変部等の硬い病変部への食い込みに優れるので望ましい。
【0061】
本発明のガイドワイヤにおいて、ガイドワイヤの外表面には、親水性材料が被覆されていてもよい。
ガイディングカテーテル内、管状器官内又は体内組織内におけるガイドワイヤの摺動抵抗を低減させ、ガイドワイヤをスムーズに移動させることができるからである。
【0062】
上記親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、ヒアルロン酸塩がより望ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
2a 先端部
2b 後端部
3 らせんコイル
3a 素線
3b 溝部
D 素線の外周方向
L 素線の軸方向
4a、4b、4c ロウ付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部及び後端部を有するコアシャフトと、
前記先端部が内部に挿入されるらせんコイルと、
前記先端部及び前記らせんコイルを接合するロウ付け部とを含んで形成されたガイドワイヤであって、
前記らせんコイルを形成する素線の表面には、複数の溝部が形成されており、
前記複数の溝部は、前記素線の外周方向よりも前記素線の軸方向に沿ってより多く形成されていることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記素線がタングステンを含んでなる請求項1に記載のガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210292(P2012−210292A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76947(P2011−76947)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】