説明

ガスの分離方法

HF、HCl又はHBr及び他の成分を含むガス混合物、特にカルボン酸フッ化物、C(O)F2又は5フッ化リン及びHCl及び場合によりHFを含むガス混合物が、イオン性液体を用いて分別できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、HCl、HF及び/又はHBr及び他の成分を含む混合物、特にC(O)F2、5フッ化リン又は特定の酸フッ化物及びHCl及び場合によりHFを含む混合物を分離する方法に関する。
【0002】
ガス状の有機酸フッ化物、例えばCF3C(O)F又はCHF2C(O)Fは、フッ素含有有機化合物、例えば樹脂又はエラストマーのためのコモノマーであるフルオロビニルエーテルのための出発材料である。CF3C(O)Fは、殺虫剤として提案された。酸フッ化物は、調製方法の結果として、HCl又はHBr、時にはHFも含み得る。
5フッ化リンは、リチウムイオン電池用の電解質塩の調製における中間体である。例えば、5フッ化リンは、フッ化リチウムと反応して、リチウムヘキサフルオロホスフェートを形成できる。5フッ化リンは、5塩化リン又は3塩化リン及び塩素及びさらにはフッ化水素から調製できる。この反応において、HClが形成され、かつ5フッ化リンから分離されなければならない。
フッ化カルボニルは、半導体技術における新規のエッチングガスとして、及びCVDリアクターの洗浄用に提案されてきた。欧州特許出願04005421.5(WO05/085129に対応する)は、CHClF2からC(O)F2を調製する光化学的な方法を記載する。ここで記載された方法は、酸素を用いたCHClF2の光酸化によるC(O)F2の調製を提供する。ここで、単一の波長ではなく、代わりに少なくとも50nmの範囲にわたるスペクトル範囲を有する(換言すれば、最も短い波長を有する光及び最も長い波長を有する光が少なくとも50nm離れている)光が放射される。
【0003】
ここに記載された方法において、反応器における圧力は、少なくとも環境気圧、換言すれば1000Pa(1bar)(絶対圧力)に好ましく対応する。該圧力は、これ以上であることもできる。該圧力は、好ましくは1000Pa(1bar)(絶対圧力)から11000Pa(11bar)(絶対圧力)の範囲である。温度は、好ましくは20から300℃の範囲、特に好ましくは30から300℃の範囲、及び特に30から90℃の範囲である。該圧力及び温度の条件を有利に選択して、反応混合物をガス状に維持する。
ここに記載された方法は、加圧を伴うことなくより特に好ましく行われる。ここで用語“加圧を伴うことなく”は、環境気圧(換言すれば約1000Pa(1bar))に加える付加的な圧力はかけられず、使用される酸素ガス(又は酸素含有ガス、なぜなら例えば空気又は酸素/不活性ガス混合物が使用できるからである)及びいくらかの塩素の輸送圧力並びに反応において形成される塩化水素ガスにより生じるいくらかの圧力が、反応混合物に対して加えられることを意味する。その結果、該反応器における合計圧力は、有利には絶対圧力で1500Pa(1.5bar)よりさらに低い輸送圧力に依存して、絶対圧力で2000Pa(2bar)より低いが、環境気圧よりは高い。
【0004】
該方法は、回分式又は好ましくは連続式で行うことができる。該好ましい方法は、出発材料(適切な供給原料、酸素又は酸素含有ガス、例えば空気又は純粋な酸素、及び適切な場合には塩素)を貫流装置中に連続的に供給し、及び供給した量に対応する量における反応生成物を連続的に取り出すことである。該反応容器における平均滞留時間は、有利には0.01から30分、好ましくは0.1から3分、特に好ましくは0.3から1.5分である。最適な平均滞留時間は、とりわけランプの種類、ランプの放射力及び照射装置の幾何学的媒介変数に依存し、生成物の流れの単純な試験及び分析、例えばガスクロマトグラフィーを用いて決定できる。反応混合物において、例えば反応器中の適切な内部装置を用いて、良好な乱流を発生させることも有利である。回分方法の場合における最適な滞留時間は、同じやり方で決定できる。
1態様は、塩素又は他のフリーラジカル開始剤又は活性剤がない場合の光酸化を提供する。例えば、該照射は、石英ガラスを通して行うことができる;光源及び反応混合物の間に位置しない反応器の他の部品は、いかなる材料、例えば放射の特別な構成部分をフィルターにかけるホウケイ酸塩ガラスで当然に製造できる(以下を参考にされたい)。適切なランプは、例えば250から400nmの範囲、又は最大で600nmまでの放射を照射する慣例のランプである(該スペクトルは該上限又は下限を超えることもできる)。
【0005】
さらに、この欧州特許出願における特に好ましい態様は、反応混合物中に存在するCHClF2の1質量部当たり最大で0.6質量部存在する元素状の塩素の存在下において、280nm以上の波長を有する光を用いた照射を提供する。CHClF21モル当たり、1から50mol%の塩素、より好ましくは5から20mol%の元素状の塩素を使用することが好ましい。
該反応が元素状の塩素の存在下で行われ、及び波長λ≧280nmを有する光を用いた活性化照射が使用された場合、転換、収量及び選択性は、ここで述べられた方法において特に高い。結果として、280nmより低い波長を有する振動数は、振動数スペクトルから実質的にマスクされる。これは、280nm以上の波長を有する光のみを放射する照射ランプを用いることにより、及び/又は照射された光から適切な振動数をマスクする手段を用いることにより達成できる。例えば、照射は、280nm以上の波長を有する光に対してのみ透過性であるガラスを通して、換言すれば放射のより短い波長の部分を除去して行うことができる。ホウケイ酸ガラスは、例えば、本目的に対して特に有用である。適切なガラスは、例えば、7から13%のB23、70から80%のSiO2、さらに2から7%のAl23及び4から8%のNa2O+K2O及びさらに0から5%のアルカリ土類金属酸化物を含む(それぞれの場合における%は質量による)。ホウケイ酸ガラスの公知のブランドは、Duran、Pyrex及びSolidexである。
【0006】
出発材料と酸素のモル比率は、上記欧州特許出願において説明した方法において広い範囲で変動できるが、該比率は、出発化合物の1モル当たり少なくとも0.4molの酸素を使用することが有利である。出発化合物と酸素のモル比率が、1:0.4から1:1の範囲に、特には1:0.4から1:0.6の範囲内である場合に、特に良好な結果が達成される。該酸素は、上記のように、空気の形態において使用できる。該酸素は、O2/不活性ガス混合物の形態において好ましく使用されるが、特に純粋な酸素として使用される。生成物の純度に関して、反応において非常に少ない水が存在することが望ましい(例えば30ppmより少ない)。所望の場合には、該反応物質は、公知の方法、例えばモレキュラーシーブを用いることにより、取り込まれた水を取り除くことができる。C(O)F2及びHClの分離が、例えば加圧蒸留により達成できる。
しかしながら、C(O)F2及びHClの沸点が共に近いと言う事実のため、蒸留による分離は費用がかかる。
HFを含む混合物は、例えばフッ化水素を用いたフッ素化反応の結果であり得る。従って、カルボン酸フッ化物が、カルボン酸塩化物及びHFの反応、又は光化学により調製できる(US−A6489510)。これら混合物は、多くの場合HClも含む。
【0007】
HCl/カルボン酸フッ化物、HF/カルボン酸フッ化物、HF/HCl/カルボン酸フッ化物、HCl/PF5又はHCl/C(O)F2の分離の上記問題に加えて、他の成分と共にHF、HCl又はHBrを含むガス混合物からHF、HCl若しくはHBrを分離すること、又はこれらガス混合物を分別してHF、HCl若しくはHBrにおいて激減し又は他の成分若しくは成分群において富化したガス混合物若しくは純粋なガスを与える事が一般的に望ましい。
欧州特許出願EP−A1394109は、酸フッ化物からのHF及び同様の酸を分離する方法を記載する。脱酸剤として、少なくとも50℃の沸点を有し、及びヘテロ原子又はヘテロ原子群として窒素を有するヘテロ芳香族化合物が推奨される。上記特許出願の説明において示されたように、該ヘテロ芳香族化合物は、アミン(アミン類は100℃より低い温度でさえ相当の蒸気圧を有する)、例えばイミダゾール若しくはピリジン、又はアミノ基例えばピリジン若しくはイミダゾール基を有する適切なイオン交換樹脂であり得る。該ポリマーの例は、ポリビニル(4−ピリジン)及びポリビニル(2−ピリジン)である。イオン性液体は使用されない。
【0008】
国際特許出願WO02/074718は、沸点の近い又は共沸性の混合物の分離のための選択的な添加剤としてイオン性液体を開示する。これら混合物は、液体又は濃縮されたガスであり、換言すれば該分離は液−液分離である。分離されるべき混合物として、アミン、テトラヒドロフラン、ギ酸、アルコール、アセテート、アクリレート、酢酸と水との混合物、アセトンとメタノールの混合物、又は沸点の近い混合物、例えばC4−、C3−炭化水素又はアルカン類/アルケン類の混合物が挙げられている。従って、該混合物は純粋に有機混合物であり、多くの場合は少なくとも3つの炭素原子を有する化合物の混合物又は水を含む混合物である。
米国特許出願2004/0035293は、ブレンステッド酸(Broensted−acid)特性を有する基、例えばスルホン酸基を有するイオン性液体を開示する。該イオン性液体は、ガスの分離用、例えばCO2又はCOSの分離又は移動用、アルケン、アルキン又はCOの分離用、又は触媒用に使用できる。
米国特許出願2002/0189444(=米国特許6579343)は、イオン性液体を用いたガスの精製方法を開示する。例えば、水、CO2、酸素等をガス混合物から分離できる。このようにして、天然ガス、空気又は酸素が精製できる。
【0009】
従って、本発明の目的は、実施が簡単な方法であってかつ該方法によってガス混合物からHF、HCl若しくはHBrを分離して、HF、HCl若しくはHBrにおいて激減させ又は他の成分若しくは成分群において富化したガス混合物を与えることができる方法を提供することである。
本発明の好ましい目的は、HClが激減したC(O)F2、5フッ化リン若しくはカルボン酸フッ化物を、C(O)F2若しくは5フッ化リン及びHClを含む混合物から得ることができる方法、又はC(O)F2若しくは5フッ化リンが、これらの混合物から富化された形態で得ることができる方法を提供することである。この目的は、本発明の方法により達成される。
広い意味で、本発明の目的はHF、HCl又はHBr及び1以上の他のガス状の成分を含むガス混合物から、HF、HCl又はHBrを分離する本発明の方法により達成され、この方法において、これらガス混合物を、HF、HCl又はHBr又は少なくとも一つのガス混合物の他の成分を異なる程度まで吸着する、1以上のイオン性液体と接触させる。どの場合でも水は添加されず、及び該イオン性液体は好ましくは実質的に水を含まず(例えば0.1質量%より少ない水含量を有する)、これによって該フッ化物の加水分解が、仮にあったとしてもほんの少しの程度で起こる。イオン性液体は、本発明の方法において最初に添加される。処理されるべきガス混合物中の他の成分として存在する化合物は、標準状態(25℃、1000Pa(1bar)絶対圧力)下でガス状である化合物、例えばトリフルオロアセチルフッ化物、トリフルオロアセチルフッ化物、PF5、C(O)F2等である。
【0010】
該分別されるべきガス混合物がイオン性液体を通過した場合、イオン性液体中に存在する水は、該ガス混合物の加水分解感受性の成分(フッ化カルボニル、酸フッ化物又はPF5)と反応することにより消費される。形成された成分は、ほとんど揮発性であり、イオン性液体から除去することが容易である。
該方法は、特にHClを分離するために適しており、及びこの点についてさらに述べられる。
該方法は、例えば、HCl及び標準状態下でガス状であるカルボン酸塩化物、例えば、トリフルオロアセチル塩化物(TFAC)又はジフルオロアセチル塩化物(DFAC)を含んだガス混合物に対して適している。この方法は、標準状態下でガス状であるカルボン酸フッ化物から、特にジフルオロアセチルフッ化物、トリフルオロアセチルフッ化物、C25C(O)F又はCH3C(O)Fから、HClを分離するためにも適用できる。この方法は、HBr及び他の成分を含むガス混合物に対しても適用できる。この方法は、2以下の炭素原子を有するカルボニルフッ化物又はカルボン酸塩化物又はカルボン酸フッ化物を精製するために好ましく使用される。HFが存在する場合、これも同様に分離される。
【0011】
先行技術に従った多くの方法が、液体成分又は濃縮されたガスの分離を提供する一方で、本発明の方法においては、ガス状の形態でイオン性液体と接触するガス混合物の分別を好ましく与え、換言すれば濃縮した状態においてイオン性液体と接触させないと言うことである。
C(O)F2及びHClを含むガス混合物の処理、カルボン酸フッ化物及びHF及び/又はHClを含むガス混合物の処理、又は5フッ化リン及びHClを含むガス混合物の処理の上記特別の目的は、HF又はHCl又はHF及びHClにおいて激減させ、又はC(O)F2、カルボン酸フッ化物又は5フッ化リンにおいて富化した、C(O)F2、カルボン酸フッ化物又は5フッ化リンの分離のための本発明の方法により達成される。この好ましい方法は、これらの混合物に対して、C(O)F2、カルボン酸フッ化物又は5フッ化リンを、HF、HCl又はHBrを吸収するのとは異なる程度まで吸収するイオン性液体を接触させることを提供する。HCl、HF又はHBrを通過し及び他の成分を吸収する事を許容するイオン性液体を選択することが可能ではあるが、通常の場合HCl、HF若しくはHBrがイオン性液体によってより強く吸収され、並びにHCl、HF及び/又はHBrにおいて激減したC(O)F2、カルボン酸フッ化物若しくは5フッ化リンが、イオン性液体を通過し及び分離でき、又は得られたガス若しくはガス混合物がC(O)F2、カルボン酸フッ化物若しくは5フッ化リンにおいて富化されている。本発明は、HCl及びC(O)F2を含む混合物に対するその好ましい適用に対してさらに説明される。
【0012】
本発明の目的に対して、イオン性液体はAngewandte Chemie2000,112,3926−3945においてWasserscheid及びKeimにより定義されたものである。イオン性液体は、例えば溶媒として使用できる。前記文書において記載したように、イオン性液体は比較的低温で溶融し及び非分子性、イオン特性を有する塩である。イオン性液体は、さらに比較的に低温で、例えば100℃より低い温度で液体であり、及び比較的低い粘度を有する。イオン性液体は、多くの有機、無機及びポリマー物質に対する非常に良好な溶媒性能を有する。
さらに、イオン性液体は、一般的に不燃性、非腐食性であり、及び低い粘度を有し、及びわずかな蒸気圧を示す。
本発明で使用できるイオン性液体のイオンは、1以上の正電荷又は負電荷を有することができ、一つの正電荷及び一つの負電荷を有するイオンが好ましい。
【0013】
物質の混合物の分離に対して適切であるイオン性液体は、WO02/074718において記載されている。これらは、カチオンとしてアンモニウム、グアニジニウム又はホスホニウムイオンを有するイオン性液体に基づく。一般的に、該イオン性液体は、分別されるべきガス混合物の成分を分解する化学反応を一切起こさないように選択される。これは、簡単な試験を用いて容易に確実にすることができる。水分に対して感受性である成分がガス混合物中に存在する場合、例えば反応器中で乾燥剤を用いて、又は乾燥した不活性ガスを用いてフラッシュすること等により、水分をほぼ排除することが有利である。酸素に対するいかなる感受性についても同様である。さらなるイオン性液体、例えばグアニジニウムカチオンを有する液体を利用することも可能である。
本発明の目的に対して、窒素を含むカチオンが好ましい。
適切なカチオン及びアニオンが、以下により詳細に述べられる;それぞれのカチオン/アニオンの組み合わせが利用可能なイオン性液体を与えるためには、100℃以下の温度で液体でなければならない生成物を与える必要があることが、当業者にとって本明細書において明らかであろう。室温(約20℃)で液体であるイオン性液体又はイオン性液体の混合物が、特に有利である。
【0014】
リン含有カチオン、特に同一又は異なる4つのアルキル基、例えばブチル、オクチル又はフェニル基を有したホスホニウムカチオンが、Wasserscheid及びKeimによる上記出版物において述べられた。
窒素含有カチオンが好ましい;本発明はこの態様に対してさらに詳細に説明される。
原理上は、アンモニウムカチオン上に少なくとも一つの有機置換基を有する、全ての公知のカチオンを使用することが可能である。一般的には、これらは1級、2級、3級及び4級アンモニウムカチオンである。該置換基は、例えば、直鎖又は分枝したアルキル基であり、例えば1から12の炭素原子を有するアルキル基である事ができる。同一又は異なるアルキル置換基が窒素原子上に存在することが可能である。該置換基は、芳香族基、例えば、所望の場合には1以上の置換基、例えば1以上のC1−C3基を有しても良いフェニル基であることができる。アリールアルキル置換基、例えばベンジル基も可能である。グアニジニウムカチオン及びイソウロニウムカチオンも、適切なカチオンである(該化合物はMerck Darmstadtから入手可能である)。窒素上の置換基は、水素、直鎖又は分枝したアルキル基又はアリール基であることができる。窒素、酸素及び硫黄原子上の置換基は、直鎖又は分枝したアルキル基又はアリール基であることができる。水素も、窒素上の置換基として存在できる。
【0015】
飽和した環状のアンモニウムカチオン、例えば公開されたドイツ出願DE10114565において述べられたカチオン、置換された又は置換されていない単環又は二環式の飽和したアンモニウムカチオン、例えばピペリジニウム又はヒドロキシル置換されたピペリジニウムを利用することも可能である。二環式アミンのカチオン、特に1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンのカチオン、並びに本明細書において述べたアミノ置換された環状アミン、例えばジアルキルアミノピペリジン及びジアルキルアミノピペラジン(アルキルがC1からC4)も、該カチオンの形態において使用できる。
【0016】
適切なカチオンは、少なくとも一つの窒素原子及び所望の場合には酸素又は硫黄原子を含み、及び上記WO02/074718の4から6ページにおいて述べられたヘテロ環状化合物も含む。これらは、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、1H−ピラゾール、3H−ピラゾール、4H−ピラゾール、1−ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、1−イミダゾリン、2−イミダゾリン、4−イミダゾリン、チアゾール、オキサゾール、1,2,4−トリアゾール(2又は4位の窒素原子で正電荷)、1,2,3−トリアゾール(2又は3位の窒素原子で正電荷)及びピロリジンの構造に基づいたカチオンである。該置換基の詳細は、WO02/074718の6から13ページにおいて見いだせる。N−アルキルイソキノリン、アルキルトリアゾリウム、N−アルキルイミダゾリンのカチオンが、同様に使用できる。これら構造は、水素により置換できる。1以上の水素原子を、例えば1から18個の炭素原子を有するアルキル基(C2−C18アルキル基が、該鎖内に1以上の酸素、硫黄原子又はイミノ基を含むこともできる)により、C6−C12アリール、C5−C12シクロアルキル又は5−若しくは6−員の酸素−、窒素−若しくは硫黄−含有ヘテロ環基により置き換えることもできる。2つの置換基が、1以上の酸素、又は硫黄原子又はイミノ基により割り込まれても良い、不飽和又は飽和した又は芳香族の環を形成することもできる。上記置換基は、同様に、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されてもよい。
【0017】
正電荷を有する窒素原子上の置換基は、例えば、C1−C18−アルキルカルボニル、C1−C18−アルキルオキシカルボニル、C5−C12−シクロアルキルカルボニル又はC6−C12−アリールカルボニルであることもできる;該置換基は、同様に、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されても良い。
5−員又は6−員環を有する該ヘテロ環のカチオンは、本発明の方法において好ましい。
特に良好に適したカチオンは、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、オキサトリアゾリウム、チアトリアゾリウム、ピリジニウム、ピラジジニウム(pyradizinium)、ピリミジニウム又はピラジニウムカチオンである。ここで、該炭素原子は、水素、C1−C12−アルキル又はヒドロキシ若しくはCN基により置換されたC2−C12−アルキルにより好ましく置換できる。正電荷を有する窒素原子は、アセチル、メチル、エチル、プロピル又はn−ブチルにより好ましく置換される。さらなる窒素原子が環中に存在する場合のように適切な場合には、窒素原子は、水素又はC1−C12−アルキル基により置換できる。C1−C12アルキルは、好ましくメチル、エチル、プロピル又はn−ブチルである。
【0018】
上記カチオンを含むオリゴマー及びポリマーを用いることも可能である(例えばM.Yoshizawa,W.Ogihara and H.Ohno,Polym.Adv.Technol.13,589−594,2002を参照されたい。)。しかしながら、モノマーのカチオンが、本発明の目的に対して好ましい。
非常に特に好ましいカチオンは、それぞれ1−24個の炭素原子を有する1、2又は3つの置換基により置換されたイミダゾリウムカチオンである;ここで、該置換基は、例えばアリール基により置換されてもよい。
以下のものが特に好ましい:1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ノニル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ウンデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム。カチオンとして1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(“EMIM”)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム及び1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(“BMIM”)を有するイオン性液体が、非常に適切である。
【0019】
特に適切なアニオンは、水素結合を形成できるアニオンである。強固に配位したアニオン、例えばアルキルサルフェート又はアリールサルフェートが、弱く配位したアニオン、例えばトリフルオロメタンスルホネート及び特にはヘキサフルオロホスフェート又はテトラフルオロボレートよりもより適切であり、それはこれらが多くの場合1段階の方法においてでさえ良好な精製結果を与えるためである。さらに適切なアニオンは、ハロゲン化物であるが、特に1塩基又は多塩基のオキソ酸のアニオン又はこれらの誘導体、例えばエステル又はアミド例えばスルホネート又はスルホンアミドである。さらに良好に適切なイオン性液体は、以下のアニオンを有するものである:
合計で2から8個の炭素原子を有するアルキルカルボキシレート、例えばアセテート;ハロゲン、特にはフッ素で置換されたアルキルカルボキシレート、例えばトリフルオロアセテート;サルフェート;ハイドロゲンサルフェート;ホスフェート;ハイドロゲンホスフェート;ジハイドロゲンホスフェート;例えばメチルサルフェート、エチルサルフェート、n−プロピルサルフェート、n−ブチルサルフェートからn−オクチルサルフェートである特定のアニオンを含む、直鎖又は分枝しても良いC1−C12−アルキル基を有するアルキルサルフェート;1又は2のC1−C12−アルキル基を有するアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェート、例えばメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、n−プロピルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、n−ブチルホスフェート、ジ−n−ブチルホスフェート;C1−C12−アルキルスルホネート、好ましくはC1−C4−アルキルスルホネート、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、n−ブチルサルフェート;1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素により置換されたC1−C12−アルキル基を有するスルホネート、例えばトリフルオロメチルスルホネート(トリフレート);アリールスルホネート、例えばトシレート;リンに直接結合したC1−C12−アルキル基を有するホスホネート、例えばメチルホスホネート、エチルホスホネート、n−プロピルホスホネート、n−ブチルホスホネート;1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素で置換され及びリンに直接結合したC1−C12−アルキル基を有するホスホネート、例えばトリフルオロメチルホスホネート;所望の場合には1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されても良い、C1−C12−アルキル基を有した上記ホスホネートのエステル;所望の場合にはアルキル基が1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素で置換されても良い、ビス(C1−C12−アルキルスルホネート)のイミド、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド。
【0020】
好ましいアニオンは、C1−C12−アルキルサルフェート、特に好ましくはC1−C4−アルキルサルフェート、特にメチルサルフェート及びエチルサルフェート、及びさらに以下に示すような、トリフレート及びトシレート及びこれらの混合物である。
科学的な説明を与えるために試みることなく、該結果は、イオン性液体の両極性は余り多くなく、逆にイオン性液体における強固に配位したアニオン、例えばHCl又はHBrの吸収に影響するメチルサルフェート及びエチルサルフェートの存在であることを示す。弱く配位した又は“全く配位していない”アニオン(S.H.Strauss,Chem.Rev.1993,93,927−942)、例えばSO3CF3及び特にPF6及びBF4のうち、負電荷が強固に非局在化されたものは、いかなる特に強力なHCl又はHBr吸収効果を示さない。一方で、SO3CF3アニオンを有するイオン性液体は、これらがHCl及びガス混合物の他の成分に対して非常に安定であると言う、プロセス工学の利点を有する。HClに対するいくらか低い親和性は、本明細書において高い安定性によりバランスが保たれる。所望の場合、アニオンとしてSO3CF3を有するイオン性液体を用いた吸収方法は、HClの所望の除去が達成されるまで、2回以上行われる。非常に有用であることが見出されたさらなるアニオンは、3つの異性体のトシレートアニオン(o−トルエンスルホネート、m−トルエンスルホネート及び特にはp−トルエンスルホネート)である。トシレートアニオンを有するイオン性液体は、室温で液体又は固形物の形態において存在できる。トシレートアニオンを有するイオン性液体は、所望の場合、融点がより低い他のイオン性液体との混合物の形態において使用できる(これはもちろん、所望よりもより高い融点を有する他のイオン性液体に対しても適用される)。トリフレート及びトシレート又は好ましくはこれらを、例えば0.1:1から10:1、好ましくは3:7から7:3のモル比率において含むアニオン混合物を含むイオン性液体が、激減及び安定性の効果の間の良好な妥協であり、及び0から60℃の範囲における充分に低い融点を有する。言及した混合物の存在は、トリフレート及びトシレート以外のアニオンを有するイオン性液体が存在しない事を意味する。
【0021】
好ましいイオン性液体は、多くの場合、20より大きい、好ましくは30より大きい、特には40より大きいET(30)値を有するものである。本値は、極性の大きさであり、Reichardt,Solvent Effects in Organic Chemistry,Weinheim VCH,1979,XI(Monographs in Modern Chemistry;3)ページ241を参照されたい。
本発明の方法において、唯一の化合物を含むイオン性液体を使用することが可能である。2、3又はそれ以上の異なるイオン性液体の混合物を使用することも可能である。このようにして、例えば分離特性、例えば極性又は分離されるべき化合物に対する親和性に影響を与えることが可能である;又は粘度又は該混合物が固形物となる温度に影響を与えることが可能である。後者は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフレート及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートにおいて利用される。
【0022】
処理されるべきガス混合物及びイオン性液体の間の接触は、気−液操作における慣例の方法により行うことができる。例えば、処理されるべきガス混合物を、イオン性液体に通過させることができる;適切なノズル、フリット又は混合装置が、接触領域を増加させることを可能にする。例えば、気泡塔における接触を生じさせることが可能である。所望の場合、該イオン性液体を固定、例えば支持体、例えばセラミック材料上で固定し、又はポリマー中に取り込むこともできる;この態様は余り好ましくない。
圧力は広い範囲で変わり得る;例えば圧力は環境気圧から最大で10000Pa(10bar)(絶対圧力)又はそれ以上の圧力であり得る。プロセス工学の表現において、環境気圧で又はわずかに加圧して接触を行い、ガス混合物をイオン性液体中に圧入することが、最も簡単である。
温度も同様に、広い範囲で変動し得る。温度は、粘度が所望の範囲にあるように有利に選択される。イオン性液体又はイオン性液体の混合物の、本質的に分解温度から固化温度まで広がる温度範囲、好ましくは100℃から固化温度までが可能である。分離されるべき混合物との接触におけるイオン性液体の温度は、イオン性液体の固化温度、例えば10℃から80℃までの範囲にあるのが好ましい。上記と同じように、固化温度から分解温度までの範囲が、原理上可能である。
【0023】
理想的に、HCl又はHFがイオン性液体中に保持され、及びC(O)F2、PF5又は酸フッ化物がイオン性液体を通過する。純度が充分な場合、該ガスは濃縮され、及びそれぞれの用途に送られても良い。いくつかの分離の問題がある場合、同様にイオン性液体を通過するさらなる成分が、ガス混合物中に存在し得る。CHClF2の光酸化からのC(O)F2及びHClのガス混合物の場合において、例えば出発材料も存在する可能性がある。イオン性液体中に保持されないガス混合物の成分は、慣例の方法、例えば分別蒸留又は濃縮により、イオン性液体を通過する前に分離できる。代替として、これらは処理されるべきガス混合物中に残し、及びイオン性液体との接触後に分離できる。例は、分別凝縮又は所望の場合に低温蒸留を続けても良い濃縮である。
イオン性液体中に保持された成分は、再調節において、例えば吸引、加熱、不活性ガスの通過等によりこれから物理的に回収することができ、所望の場合には2以上の該物理的な手段の組み合わせ、例えば温度の上昇及び吸引の適用を用いることもできる。イオン性液体からの該イオン性液体中に保持されたガス混合物の成分の分離は、同時に、その後再開した使用に対して適用可能なイオン性液体を再生する。脱離温度は、好ましくは100℃以下であるが、最大でイオン性液体の分解温度より低い温度まであげることができる。吸引の適用の場合、100Pa(1mbar)が、多くの場合技術的な理由に対して好ましい限界である。しかしながら、成功した実験が示すように、より低い圧力、例えば0.1Pa(10-3mbar)で作業することに問題は存在しない。脱離が、100℃以下から好ましくは40℃の温度でさえ非常に迅速に起こる(例えば1から2時間の間で)。対照的に、EP−A1394109において記載されているように、吸収された成分の除去には、150℃以上での加熱及び多くの時間が必要である。
【0024】
圧力の変更による脱離の場合、脱離は、負荷における圧力よりも低い圧力で行われる。該ガス混合物及びイオン性液体を大気圧を超える圧力で、例えば5000Pa(5bar)(絶対圧力)以上で接触させる場合、続く脱離は環境気圧と同じ又はそれよりわずかに高い圧力、例えば1000Pa又は1500Pa(1又は1.5bar)(絶対圧力)である圧力で達成できる。当然のことながら脱離は、大気圧より低い圧力下でも行う行うことができ、及び所望の場合、温度を上昇させてイオン性液体の再調節を完全にすることができる。
本発明はさらに、トリフレート及びトシレートイオンを含むイオン性液体の混合物を提供する。トシレートアニオンを含むイオン性液体とトリフレートアニオンを含むイオン性液体のモル比率が、0.1:10から10:0.1、好ましくは3:7から7:3である混合物が好ましい。トシレートはo−トシレート、m−トシレート、好ましくはp−トシレートである。
【0025】
異なり又は好ましくは同一であり、及びイミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、オキサトリアゾリウム、チアトリアゾリウム、ピリジニウム、ピラジジニウム(pyradizinium)、ピリミジニウム又はピラジニウム化合物に属し、及び特に1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIM)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム及び1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIM)から選択されるカチオンを有するイオン性液体の混合物が特に好ましい。
本発明の混合物において、トリフレート及びトシレートアニオンを有するイオン性液体の割合は、好ましくはイオン性液体の合計量の少なくとも75質量%である。100質量%へのバランスは、他のアニオン、例えばエチルサルフェートアニオンを有するイオン性液体により調整される。トリフレート及びトシレートアニオンを有するイオン性液体の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、より特に好ましくは100質量%である。特に好ましい混合物は、EMIMトリフレート及びEMIMトシレートを含み、又は前記二つの成分からなる。
【0026】
本発明の方法は、先行技術において知られていない新規の分離の問題に関する。無機成分(HCl、HBr、HF)が分離され又は加わる点、及び分離のために用いられるのがアミンではなく、代わりにイオン性液体である点で、本発明の方法は公知の方法と異なる。本発明の方法は、HCl、HF及びHBrが、簡単な方法で、混合物の他の加水分解感受性の成分、例えばガス状のカルボン酸塩化物及びカルボン酸フッ化物から、特に5フッ化リン又はC(O)F2から分離できると言う利点を有する。生成方法の結果として得られる、C(O)F2を有する混合物からHClを分離する能力は、特に有利である。例えば、アセトニトリルを分離剤として使用する公開されたUS3,253,029及びUS4,092,403におけるものよりも、より顕著に良好な程度の分離が本発明で達成される。さらには、イオン性液体の再調節は、有機溶媒、例えばアセトニトリル又はアミンの塩酸塩の再利用に対する顕著な利点を有する。HFを有するリン−塩化物化合物のフッ素化反応から、特にリン(III)塩化物又はリン(V)塩化物及びHF、及びさらに適切な場合にはCl2又はF2からのPF5の調製から生じる混合物を処理することも可能である。
以下の例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明する。
【0027】
(概要)
以下の例において、一部の例では、実験のために調製され及び互いから分離されるべき2つの成分のみを含む試験混合物が使用された。他の例については、光酸化実験から発生し及び分離されるべきC(O)F2及びHCl成分だけでなく、さらなる成分、特に出発化合物であるCHClF2も含む混合物が使用された。後者の化合物は、カルボニルフッ化物を共に有するイオン性液体を通過する。結果得られる混合物のさらなる精製は、蒸留により行うことができ、該さらなる成分はこの方法により分離される。代替として、精製、例えばさらなる成分を含んだ反応混合物の蒸留を用いた精製を最初に行って、あらかじめ反応成分を分離することができる;次いで結果得られたガス混合物は、続いてイオン性液体を用いて分離されるカルボニルフッ化物及びHClのみを含む。
該実験において、トシレートは常にp−トシレートである。
【0028】
例1:C(O)F2を有する混合物からのHClの分離
1.1.室温での1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェートの使用
C(O)F2/HClガス混合物が、今のところ公開されていない欧州特許出願04005421.5に上記の方法を用いてCHF2Clの光酸化により調製された。45%のC(O)F2、34%のHCl、6%のO2及びさらなる反応成分(出発材料等)の組成を有する粗ガス混合物を、0.8mol/hの流速及びわずかに上昇した圧力で、115g(0.49mol)の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート(“EMIMエチルサルフェート”)を含む洗浄瓶を通過させた。ガス混合物の加水分解感受性の成分(例えばC(O)F2)を得るために、装置中及びイオン性液体中における水分は、除去又は最小限とすることが有利である。これは、乾燥した窒素ガスを用いて装置をフラッシュすること、及びイオン性液体を加熱する間に排気する事により達成された。
実験の開始後すぐに、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーによって、洗浄瓶の下流で検出された:67%のC(O)F2、0.0%のHCl、9%のO2及び24%のさらなる反応成分。該ガス混合物中に存在する他の成分のパーセンテージは、該イオン性液体の通過において減少しない。
【0029】
1.2.アセトニトリルの使用(比較例)
該実験手順は、1.1で述べた通りのものであった。
47%のC(O)F2、30%のHCl、9%のO2及び14%のさらなる反応成分の組成を有する粗ガス混合物を、0.8mol/hの流速で、83g(2mol)のアセトニトリルを含む洗浄瓶を通過させた。実験の開始後すぐに、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーによって、洗浄瓶の下流で検出された:55%のC(O)F2、12%のHCl、15%のO2及び18%のさらなる反応成分。
【0030】
1.3.イオン性液体の再調節
イオン性液体又はイオン性液体の混合物の一つの特性が、小さな蒸気圧であるため、1000Pa(10mbar)以下の真空が、その再調節のために、負荷された液体に対して適用できる。
例1.1からのHClを負荷されたイオン性液体が、1000Pa(10mbar)の減圧下で1時間維持された。攪拌しながらの緩やかな加熱、例えば40℃の加熱が、室温で液体であるイオン性液体から、ガスの除去を促進した。ガスがそれ以上該イオン性液体から発せられなくなるまで、排気が継続された。
実験1.3は、100Pa(1mbar)及び0.1Pa(1-3bar)で繰り返され、いずれの場合も再度イオン性液体を再調節した。
例えば100℃への温度の上昇は、より短い時間において、再調節を伴う脱離の達成を同様に確実にするであろう。
ガスをイオン性液体に通過させる前及び後で、該イオン性液体の単純な質量バランスを用いて該イオン性液体が完全に再調節されるかどうか簡単に証明できる。
【0031】
1.4.0℃での1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェートの使用
例1.1におけるように、今回は40%のC(O)F2、32%のHCl及びさらなる反応成分を含む、CHClF2の光酸化からのガス混合物が使用された。該粗ガスを、わずかに上昇した圧力下の0.8mol/hの流速で、115gのEMIMエチルサルフェート(約50℃で真空を適用することにより最大限に水を除去した)を含んだ洗浄瓶(N2を用いて前もってフラッシュされた)を通過させた。導入を開始した後、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーを用いて洗浄瓶の下流で検出された:58%のC(O)F2、0%のHCl、42%の蒸留により分離できるさらなる反応成分。
【0032】
1.5.室温での1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(“EMIMトリフレート”)の使用
CHClF2の光酸化により再度得られ、及び40%のC(O)F2、32%のHCl及びさらなる反応成分を含んだガス混合物を使用した。該ガスを、わずかに上昇した圧力下の0.8mol/hの流速で、100g(0.38mol)のEMIMトリフレート(約50℃で真空を適用することにより最大限水を除去した)を含む洗浄瓶(再度N2を用いてフラッシュした)を通過させた。実験開始の後、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーを用いて洗浄瓶の下流で検出された:53%のC(O)F2、5%のHCl、42%のさらなる反応成分。
該HClの含量は、EMIMトリフレートを用いたさらなる接触により、さらに減少できる。
【0033】
1.6.60℃での1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトルエンスルホネート(“EMIMトシレート”)の使用
1.5.において使用された反応混合物を、N2を用いた装置の乾燥、及び100℃でのイオン性液体に対する真空の適用の後、100g(0.35mol)のEMIMトシレートを通過させた。該実験の開始後、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーを用いて洗浄瓶の下流で検出された:56%のC(O)F2、0%のHCl、44%のさらなる反応成分。
【0034】
1.7.0℃での、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトルエンスルホネートの混合物の使用
EMIMトリフレート及びEMIMトシレートが、1:1のモル比率において使用され、及びいかなる水も上記のように除去された。今回、CHClF2の光酸化からの41%のC(O)F2、32%のHCl及びさらなる反応成分を含んだ粗ガス混合物が使用された。該流速は、再度0.8mol/hであり、イオン性液体の合計量は100gであった。実験の開始後、以下のガス組成が、ガスクロマトグラフィーを用いて洗浄瓶の下流で検出された:63%のC(O)F2、2%のHCl、35%のさらなる反応成分。
この実験においてもまた、HCl含量は、イオン性液体の混合物と再度接触させる事によりさらに減少できる。
【0035】
例2:EMIMトリフレートを用いたPF5からのHClの分離
56%のPF5及び44%のHClを含む試験混合物を、適切な量のPF5及びHClのの濃縮により調製した。この混合物を、0.8mol/hの流速で、100gのEMIMトリフレートを含んだ洗浄瓶に、室温で15分の間通過させた。この時間の間、該イオン性液体はHClで負荷された。次いで、脱離を、100℃で30分間100Pa(1mbar)の真空の適用により行った。
PF5はガスクロマトグラフィーによって検出することが困難であるため(PF5はカラムのSiO2と反応する)、以下の方法を適用した:脱離からのオフガスの流れを、100gの0.1N NaOH溶液(Titrinorm,VWR)を含んだガス洗浄瓶に通過させた。得られた酸性洗浄溶液のイオンクロマトグラフィーが、95:5の塩素とフッ素の比率を示した。比較のため、出発混合物(44%のHCl、100%とするためのバランスのPF5)を100gの0.1N NaOH溶液に通過させた。イオンクロマトグラフィーは、60:40の塩素とフッ素の比率を示した。この比較は、HClが、PF5と比較して、イオン性液体により優先的に吸収されることを実証する。
完全な脱離は、脱離の前及び脱離の後のイオン性液体の質量バランスから結論づけられる。
【0036】
例3:EMIMトリフルオロメタンスルホネートを用いたトリフルオロアセチルフッ化物(TFAF)からのフッ化水素(HF)及び塩化水素(HCl)の分離
トリフルオロアセチル塩化物(TFAC)が、50℃のオートクレーブ中で一晩フッ化水素(HF)と攪拌された。結果得られたTFAF及びHClの混合物及び未反応のTFAC及びHFを、100gのEMIMトリフレートに通過させた。該イオン性液体を通過する前のガス混合物の組成は、ガスクロマトグラフィーにより決定された(56%のTFAF、34%のHCl、7%のTFAC)。ガス混合物中に存在するHFは、イオン性液体を通過する前に、ガラスの表面を腐食する観察により、定性的に検出された。
該イオン性液体の通過の後、ガス混合物の以下の組成が、ガスクロマトグラフィーにより検出された:86%のTFAF、2%のHCl、11%のTFAC。ハロゲンイオンで負荷されたイオン性液体の解析は、予想されるべき塩化物アニオンだけでなく、フッ化物アニオンも見出した。これらのイオンは、負荷されていないイオン性液体中には存在しない;さらに、該見出されたフッ化物の値は、例えばイオン性液体中の微量の水分によるTFAFの加水分解によって得られる量よりも顕著に多い。
イオン性液体を離れた該ガス混合物が、もはやガラス表面を腐食しない事も見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCl、HF又はHBr及び1以上の他のガス状の成分を含むガス混合物を、HCl、HF若しくはHBr又は該ガス混合物の少なくとも一つの他の成分を異なる程度吸収する1以上のイオン性液体と接触させる、該ガス混合物からHCl、HF又はHBrを分離する方法。
【請求項2】
C(O)F2及びHClを含む混合物からHClが激減したC(O)F2を分離する請求項1に記載する方法であって、該混合物をC(O)F2及びHClを異なる程度吸収する1以上のイオン性液体と接触させる方法。
【請求項3】
PF5及びHClを含んだ混合物からHClが激減したPF5を分離する請求項1に記載する方法であって、該混合物をPF5及びHClを異なる程度吸収する1以上のイオン性液体と接触させる方法。
【請求項4】
カルボン酸フッ化物及びHClを含む混合物からHClが激減したカルボン酸フッ化物を分離する請求項1に記載する方法であって、該混合物をカルボン酸フッ化物及びHClを異なる程度吸収する1以上のイオン性液体と接触させ、該混合物が同様に分離されるHFを含むことができる方法。
【請求項5】
カルボン酸フッ化物が、CH3C(O)F、CHF2C(O)F、CF3C(O)F又はC25C(O)Fである事を特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項6】
HCl若しくはHFよりもより強くカルボン酸フッ化物、C(O)F2若しくは5フッ化リンを吸収する1以上のイオン性液体を使用し、又はカルボン酸フッ化物、C(O)F2若しくは5フッ化リンよりもより強くHCl若しくはHFを吸収する1以上のイオン性液体を好ましく使用することを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載する方法。
【請求項7】
カチオンにおいて窒素を含むイオン性液体を使用する事を特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項8】
20より高いET(30)の値を有し、かつ配位することが可能であるアニオンを有するイオン性液体を使用することを特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項9】
該イオン性液体のアニオンが、スルホネート、スルホンアミド又は多塩基酸のエステルアニオンである、請求項1に記載する方法。
【請求項10】
該アニオンが、モノアルキルサルフェートアニオン、モノアリールサルフェートアニオン、エステル化されたホスフェート又はホスホネートアニオンであり、該アルキル、アリール又はエステル基が、所望の場合、1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子により置換されても良い、請求項6に記載する方法。
【請求項11】
該アニオンが、モノ−C1−C12−アルキルサルフェート、好ましくはC1−C4−モノアルキルサルフェートアニオンである事を特徴とする、請求項10に記載する方法。
【請求項12】
該イオン性液体が、アニオンp−トシレート、m−トシレート、o−トシレート及び/又はトリフレートを含む事を特徴とする、請求項10に記載する方法。
【請求項13】
該イオン性液体が、p−トシレートアニオン、o−トシレートアニオン及び/又はm−トシレートアニオンを有する少なくとも2つのイオン性液体の混合物、又はp−トシレートアニオン、o−トシレートアニオン若しくはm−トシレートアニオンを有する1以上のイオン性液体と、他のアニオン、好ましくはトリフレートアニオンを有する少なくとも一つのさらなるイオン性液体との混合物である事を特徴とする、請求項12に記載する方法。
【請求項14】
該カチオンが、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、オキサトリアゾリウム、チアトリアゾリウム、ピリジニウム、ピラジジニウム(pyradizinium)、ピリミジニウム及びピラジニウム化合物の群に属する事を特徴とする、請求項7に記載する方法。
【請求項15】
該カチオンが、それぞれ1−24個の炭素原子を有する、1、2又は3つの置換基で置換されたイミダゾリウムカチオンであり、該置換基が、例えばアリール基、例えばフェニルによりそれぞれ置換されても良い事を特徴とする、請求項14に記載する方法。
【請求項16】
該カチオンが、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム又は1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであることを特徴とする、請求項15に記載する方法。
【請求項17】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフレート又はこれらの混合物がイオン性液体として使用され、“トシレート”がo−トシレート、m−トシレート又はp−トシレート、好ましくはp−トシレートである事を特徴とする、請求項16に記載する方法。
【請求項18】
該イオン性液体に、処理されるべき混合物を、好ましくはガス状の形態で通過させる事を特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項19】
該イオン性液体が、固定した形態において存在する事を特徴とする、請求項11に記載する方法。
【請求項20】
該イオン性液体と分離されるべき混合物との接触が、10から80℃の範囲における温度で、及び1000から10000Pa(1から10bar)(絶対圧力)の圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項21】
イオン性液体中に吸収された成分が脱離されて、イオン性液体を回復し及び/又は吸収された成分を分離する事を特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項22】
脱離が、減圧、温度の上昇及び/又は不活性ガスのイオン性液体の通過により行われることを特徴とする、請求項21に記載する方法。
【請求項23】
C(O)F2の調製の目的のためのCHClF2の光酸化から生じる混合物、又はHFを用いたリン−塩素のフッ素化反応から、特にリン(III)塩化物若しくはリン(V)塩化物及びHF及びさらに、適切な場合にはCl2若しくはF2からのPF5の調製から生じる混合物、又は25℃及び1000Pa(1bar)(絶対圧力)でガス状であるカルボン酸フッ化物を調製するための方法、特にクロロフルオロアルカンの光酸化又はHFを用いたカルボン酸塩化物のフッ素化を含む方法であって、該カルボン酸フッ化物が、好ましくはCH3C(O)F、CHF2C(O)F、CF3C(O)F若しくはC25C(O)Fである方法から生じる混合物が処理されることを特徴とする、請求項2に記載する方法。
【請求項24】
方法が回分式又は好ましくは連続的に行われることを特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項25】
トリフレートイオン及びトシレートイオンを含むイオン性液体の混合物。
【請求項26】
トシレートアニオン及びトリフレートアニオンを有するイオン性液体のモル比率が、3:7から7:3である、請求項25に記載する混合物。
【請求項27】
該イオン性液体のカチオンが、異なり又は好ましくは同一であり、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、オキサトリアゾリウム、チアトリアゾリウム、ピリジニウム、ピラジジニウム(pyradizinium)、ピリミジニウム及びピラジニウム化合物の群に属する事を特徴とする、請求項25又は26に記載する混合物。
【請求項28】
該イオン性液体のカチオンが、異なり又は好ましくは同一であり、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム及び1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムから選択されることを特徴とする、請求項27に記載する混合物。
【請求項29】
トリフレート及びトシレートアニオンを有するイオン性液体の割合が、イオン性液体の合計量の少なくとも75質量%、好ましくは100質量%であることを特徴とする、請求項25に記載する混合物。

【公表番号】特表2008−517749(P2008−517749A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538309(P2007−538309)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011267
【国際公開番号】WO2006/045518
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506305344)ソルヴェイ フルオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】