説明

ガスの加湿方法

【課題】 工業的に製造された絶乾ガスを文化財や食品類用の殺虫ガスとして使用する際、湿度変化に敏感な文化財や乾燥を嫌う食品類などが絶乾ガス曝露による急激な湿度変化によって、水分が奪われ、それによって材質の収縮、乾燥が起こるのを防止することを課題とする。
【解決手段】 本発明のガスの加湿方法は、水槽に絶乾ガスを供給し、水面と絶乾ガスが接触することにより、絶乾ガスを加湿する方法である。特に、水面と絶乾ガスの接触を良くするために水槽の気相部分に仕切り板を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの加湿方法に関するものであり、より詳細には、工業的に製造される絶乾ガスの加湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的に製造されるガス(炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス)などは、ほとんど水分を含まない絶乾ガスとして製造されている。これらのガスで湿度変化を嫌う文化財や食品類などの物品を殺虫などの目的で曝露すると物品が乾燥し、歪みやひび割れなどの悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0003】
このような現象を防止するために従来は、絶乾ガスを水中にバブリングして加湿する装置があった(例えば、特許文献1参照)。また、空気より酸素を選択的に吸着除去して窒素ガスを生成する窒素ガス発生装置に加湿装置を備えたものがあった。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
これらの加湿装置は、乾燥した絶乾ガスを2系統に分離し、一方はそのままで、他方は加湿器(水に絶乾ガスを流し、バブリングして加湿する装置)を通して100%加湿ガスとし、これら2系統のガスを混合して必要な湿度のガスを得ていた。しかし、精度の高い湿度のガスを得るには、それぞれの流量をマスフローメーター等の流量計を用いて調整する必要があった。
【0005】
また、これらの装置の加湿器側は、ほとんど100%加湿ガスであるため温度・流量等の小さな変化でも結露しやすく、特に配管等が冷えるたり、使い始めなどでは結露することがすることが多かった。また、大量のガスを流すと気化熱による温度低下や液面低下の大きくなり、安定した加湿ガスを得ることが難しかった。
【0006】
このように、精度良い加湿ガスを得るには、マスフローコントローラ等による2系統の流量管理、水槽・配管等の温度管理、水槽の液面管理が必要であり、コストがかかり、簡便な調湿方法ではなかった。
【特許文献1】 特許2777780号公報
【特許文献2】 特開H09−28520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の、従来のガス加湿装置における問題点を解決し、必要な流量や湿度に合わせて、絶乾ガスを所望の湿度に加湿し、そして必要量のガスを効率良く提供することを課題とする。又、本発明は、工業的に製造された絶乾ガス(露点温度が−50℃以下)を文化財や食品類用の殺虫ガスとして使用する際、湿度変化に敏感な文化財や乾燥を嫌う食品類などが絶乾ガスに曝露されることによる急激な湿度変化によって、水分が奪われ、それによって材質の収縮、乾燥が起こるのを防止することを課題とする。
【0008】
従来から使用されているバブリング方式では、液面からのバブリング位置によって、加湿の度合いが変化するので、常に液面からの距離を一定以上に保つ必要がある。又、水温によっても水分の添加量が変化するので、常に液面と水温を一定にする必要があった。このような工夫をしても、使い始めなどにおいては、バブリング槽の気相部分が100%になっており、対象物の温度が低いと文化財や食品類などの対象物を濡らすことがあった。また、配管が冷えると水分が凝縮して同じように文化財や食品類などの対象物を濡らすことがあった。
【0009】
100%加湿したガスと絶乾ガスを混合する方法においても、一定湿度のガスを得ることは難しく、バファータンクなどを用いて十分に加湿ガスと絶乾ガスを混合してから使用する必要があった。また、全体の必要流量が変化すると加湿側、絶乾ガス側、それぞれの流量を変えて、全体流量を調整する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガスの加湿方法は、水槽に絶乾ガスを供給し、水面と絶乾ガスが接触することにより、絶乾ガスを加湿する方法である。特に、水面と絶乾ガスの接触を良くするために水槽の気相部分に仕切り板を設けたものである。又、使い始めなどに高湿度のガスが供給されないようにフィルターを設けたガスの加湿方法である。そして、仕切り板によって2分割された水槽の調湿されたガスの滞留槽に攪拌ファンを設けたガスの調湿方法。
【0011】
特に、仕切り板は、水面より適度に離れており、これに絶乾ガスを流し、水面より水分が適度に供給されて加湿される。
【0012】
このガスの加湿方法の欠点として、使い始めになどにおいて、水槽内の空間にある高湿度のガスがそのまま出て行くことがあるので、水槽からの加湿ガス出口に調湿性のあるフィルター設置し、これを通すことにより、使い始めにおいても適度に加湿できるガスの加湿方法。
【0013】
安定した調湿ガスの供給する方法として、仕切り板で2分割された気相のうち、加湿されたガスが一次的に滞留する滞留槽に滞留する加湿ガスを攪拌する攪拌ファンを設置することにより、水分量が均一化された安定した調湿ガスが供給できるガスの加湿方法。
【0014】
加湿ガスの水分量は、水槽に供給される絶乾ガスの流量と水槽の温度によって決まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスの加湿方法を用いることによって、湿度変化を嫌う文化財や食品類などの物品を殺虫などの目的で曝露することによる物品の乾燥及び歪み並びにひび割れなどの悪影響を防止できる。
【0016】
本発明は、通気流量、通気時間、水量、水温を制御するだけで良く、コストがかからず管理も容易な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
特に、文化財保存に適した温度20〜25℃、相対湿度40〜60%である。このような調湿されたガスを供給するには、本発明のような加湿装置が必要となる。
【0018】
本発明の加湿装置の重要部分である水槽は、絶乾ガスが入る通気槽と加湿されたガスが滞留し、攪拌される滞留槽からなり、この2槽の仕切り板が水槽の水面から適度の離れていることにより、この隙間を絶乾ガスが通過することにより、絶乾ガスに適度の水分が添加され一定の湿度のガスが供給される。
【0019】
特に、通気流量と水温を制御することで調湿ガスの湿度を制御することができる。
【実施例1】
【0020】
炭酸ガスガスを流量10〜28m/h、3.5時間で97kg供給し、水槽の水温を25〜40℃に設定した時に供給される調湿ガスの温度と湿度を表1の示す。
【表1】

【0021】
供給される調湿ガスは、温度が23〜28℃、湿度36〜51%となっており、文化財の保存に適した調湿されたガスを供給することができた。また、ボンベ交換時などの一時的にガスの流れか止まると温度、湿度共に高くなる傾向にあるが加湿ガスの出口に調湿性のフィルターを用いることによって極端な温度、湿度の上昇がなく、穏やかな変化となっている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、適切な湿度を必要とする分野において、一定の湿度のガスを供給する方法として広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のガスの加湿方法の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ・・・炭酸ガスボンベ
2 ・・・気化器
3 ・・・減圧弁
4 ・・・バルブ
5 ・・・流量計
6 ・・・水槽
7 ・・・仕切り板
8 ・・・攪拌ファン
9 ・・・フィルター
10・・・ヒーター
11・・・乾湿センサー
12・・・庫内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の気相部分に仕切り板を設け、絶乾ガスを水面近くに通気して加湿し、滞留槽に攪拌ファンを設け、更に、加湿ガス出口にフィルターを設けたガスの加湿方法。
【請求項2】
仕切り板が気相部分に設置され、絶乾ガスの通気部分が水面近くにあることにより、水面から絶乾ガスに水分を供給する請求項1に記載のガスの加湿方法。
【請求項3】
絶乾ガスが炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガスなどの工業的に製造されたガスで、ほとんど水分を含まないガスからなる請求項1に記載のガスの加湿方法。
【請求項4】
滞留槽の攪拌ファンは、滞留槽内の加湿されたガスの水分量を均一化し、安定した調湿ガスが供給するための請求項1に記載のガスの加湿方法。
【請求項5】
加湿ガスの水分量の調整が水槽に供給される絶乾ガスの流量と水槽の温度によって決まる請求項1に記載のガスの加湿方法。
【請求項6】
フィルターが調湿性能のある請求項1に記載のガスの加湿方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−75082(P2007−75082A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299367(P2005−299367)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(591107034)液化炭酸株式会社 (17)
【Fターム(参考)】