説明

ガスケット及び電子機器

【課題】 汎用性が高く、かつ周囲に被覆されている金属織布を構成する金属繊維が飛散するのを抑制できるガスケット及びそれを使用した電子機器を提供する。
【解決手段】 ガスケット101の平面部102に、長手方向にそれぞれ所定間隔を置いて連続的にスリットを形成する。また、スリットを幅方向に2列設けるようにし、一方のスリットが形成されていない期間に他方のスリットが位置するように構成した。また、スリットに代えて、小径の穴を長手方向に所定間隔を置いて、長手方向に連続的に設けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電子機器等において、機器内部の電子回路を覆うカバーとこのカバーを取り付けるシャーシあるいは筐体間に配設されて、カバーとシャーシあるいは筐体間を電気的に結合し、機器内部で発生する電磁波が外部に放出されるのを防止するために用いられるガスケットに関する。また、本発明は、そのガスケットを適用した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の電子機器は、マイクロプロセッサあるいは信号処理LSI等、デジタル信号を扱う回路構成が広く適用されてきている。
【0003】
このような、デジタル信号処理回路では、高い周波数の信号を扱うために、それが外部に放射されて、他の電子機器に悪影響を及ぼすこともある。例えば、ラジオ受信器の近くで携帯電話を使用すると、ラジオの受信信号にノイズを重畳させてしまうことになる。
【0004】
したがって、電磁ノイズをできるだけ外部に放射させないようにしようという施策は、重要な事項であり、一般の電子機器では、機器外部を金属材料で覆って、電磁シールドを施すことが広く実行されている。
【0005】
すなわち、機器筐体そのものを金属で構成するとか、あるいは金属製のカバーを機器内部の金属シャーシと接触するように筐体に取り付けるような構成が採られる。
【0006】
金属製のカバーで、電磁シールド効果を得ようとする場合、機器内部の金属シャーシとの導電的接触をいかに確保するかということが重要になり、このため、ガスケットという部材を間に挟むようにして、金属カバーを内部金属シャーシに取り付けるようにするのが一般である。
【0007】
ガスケットは、可撓性を有しかつ圧縮等変形されることに対して復元性を有する例えばスポンジのような素材を、例えば鉄繊維の織布で覆ったものであり、電気的には鉄と同等の導電性を有し、機械的にはスポンジのような可撓性及び復元性を有する。
【0008】
通常、金属製のカバーを取り付けるには、ネジ止めによるものであり、ガスケットにも、ネジ止めの位置に対応して、ネジが通る穴を開ける必要がある。ガスケット自体が、素材としてネジも貫通可能なもので形成されているが、ネジが貫通する際に、表面を覆う織布が解体されて、鉄繊維が機器内部に飛散する現象が発生し、それが機器内部に配設された印刷配線基板の端子間に接触した場合には、回路をショートさせて故障を引き起こす原因になってしまうという問題がある。
【0009】
このため、ガスケットを電磁シールドの補助部材として利用するには、予め機器のカバー取り付けネジ穴に対応させて、穴を開けておく必要がある。したがって、事前の作業工程がそれだけ必要になりコストアップの要因になっていた。
【0010】
一般的なガスケットの構造については、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−111270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、以上の点に対処してなされたものであり、カバーの取付け穴に対応させて、事前に穴を開けておく作業を不要にし、かつ金属繊維が飛散するのを抑制することを可能にした高汎用性を有するガスケット及びこのガスケット用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るガスケットは、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数のスリットを連続的に形成したことを特徴とする。
【0013】
また本発明のガスケットは、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数の穴を連続的に形成したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のガスケットは、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、少なくとも一部が当該ガスケット本体の幅方向に重なるように、複数のスリットを形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の電子機器は、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数のスリットを連続的に形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする。
【0016】
本発明の電子機器は、本発明の電子機器は、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数の穴を連続的に形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする。
【0017】
本発明の電子機器は、可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、少なくとも一部が当該ガスケット本体の幅方向に重なるように、複数のスリットを形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、汎用性の高いガスケットを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明に係るガスケットの一実施の形態を示すものであり、図1(a)が、平面方向から見た図であり、図1(b)は図1(a)の断面図である。
【0020】
図1において、ガスケット101は、細長い帯形状を有しており、その平面部102には、長手方向に2列にそれぞれ所定間隔をおいて設けられた複数のスリット103,104が形成されている。
【0021】
スリット103は、図中上側の列を構成するように設けられるものであり、所定間隔を空けて、長手方向に連続的に形成されている。
【0022】
また、スリット104は、図中下側の列を構成するように設けられるものであり、それぞれスリット103が設けられていない位置に対応するように、長手方向に連続的に形成されている。
【0023】
図1(b)は、図1(a)に示すガスケット101を、図中上下方向の線で切断して、断面方向から見た図である。
【0024】
図1(b)に示すように、ガスケット101は、可撓性を有し、外圧を加えて圧縮等することにより、変形するが外圧を除くと基の形状に復元しようとする復元力を備えた例えば、スポンジ様の素材の芯部材105と、その周囲を覆う、例えば鉄繊維で織られた織布106と、一方の平面部102に設けられた粘着部材107で構成される。粘着部材107の表面は、例えば容易に剥がすことが可能なシートで被覆されている。
【0025】
このガスケット101を実際に適用するには、粘着部材107のシートを剥がして、機器内の金属シャーシに粘着部材107によって貼り付ける。その後、金属カバーをガスケット101の上に重ね、ネジによって金属シャーシに取り付けるものである。
【0026】
このときガスケット101には、スリット103,104が形成されているため、いずれかのスリットがネジに対応して、ネジを受け入れるべく変形(スリットを開く)してネジを通過させ、それによって金属カバーを金属繊維の飛散を抑制しつつ金属シャーシへの取り付けを完了することができるものである。
【0027】
図2乃至図4は、図1に示すガスケット101が適用される電子機器の実施形態を示す図である。図2乃至図4に示す実施の形態では、電子機器としてプラズマテレビジョン受像機に適用したものであり、図2は、テレビジョン受像機200を正面から見た図であり、図3は、図2に示すテレビジョン受像機200を、その金属性バックカバーを取り外して背面方向から見た図であり、図4は、金属性バックカバーそのものを背面側から見た図である。
【0028】
図2において、テレビジョン受像機200は、筐体201とプラズマ表示画面202と、テレビジョン受像機200を設置場所において支持する支持脚203を有している。
【0029】
図3は、図2のテレビジョン受像機200を、その金属製バックカバーを取り外した状態を、本発明を構成する部分を中心にして、他の大部分を省略して示すものである。
【0030】
すなわち、テレビジョン受像機200は、図示しない印刷配線基板等の回路部品の周囲を囲むように、金属シャーシ301が配設されている。金属シャーシ301は、筐体201に固定される取付け部302と、この取付け部302から、面と直交する方向に突出するように形成された植立部303と、植立部303の先端において、面と平行な方向に折曲されて形成された支持部304を有する。
【0031】
支持部304には、適宜その一部にネジ穴305が形成されている。ガスケット101は、支持部304にその粘着部材107によって貼り付けられる。
【0032】
なお、金属シャーシ204は、図示しない回路部品のアース電極に接続されている。
【0033】
また、テレビジョン受像機200の筐体201内部には、金属製バックカバーを取り付けるための取り付け部材306が所定位置に設けられている。
【0034】
図4は、金属製バックカバー401を背面方向から見た図であり、取付け部材306及び支持部304のネジ穴305に対応して取り付け穴402が形成されている。それぞれの取り付け穴402は、筐体201内部方向に突出するように形成されたしぼり部403の底部に形成されている。
【0035】
図5乃至図7を参照して、金属シャーシ301とガスケット101及び金属製バックカバー401についてさらに詳細に説明する。
【0036】
図5は、金属シャーシ301の一部を抽出して示すものであり、図3と動方向から見たものである。図5において、金属シャーシ301は、その取付け部302が筐体201の内面にネジ501によって固定されている。支持部304は、植立部303の長手方向に所定間隔を空けて設けられており、一部の支持部304には、ネジ穴305が形成されている。
【0037】
図6は、図5に示す金属シャーシ301の支持部304にガスケット101が貼り付けられた状態を示しており、この実施の形態では、ガスケット101は、ネジ穴305が形成された支持部304に対しては、その下側(筐体内部側)を通過し、ネジ穴305の設けられていない支持部304の上側(外部側)に粘着部材107によって貼り付けられる。
【0038】
図7は、図6に示すようにガスケット101が貼り付けられた金属シャーシ301に、金属製バックカバー401を取り付けた状態を側面側から見た図面である。
【0039】
図7に示すように、ネジ穴305が設けられていない支持部304は、ネジ穴305が設けられた支持部304に対して、植立部303の寸法が大きく(高く)なるように構成されており、ガスケット101は、それら支持部304の間隙からネジ穴305が設けられた支持部304の下側を通るように引き回される。
【0040】
ネジ穴305が設けられた支持部304は、金属製バックカバー401のしぼり部403が適合するようにその高さ寸法が設定されており、金属製シャーシ301に、金属製バックカバー401をネジ701で取り付けることで、ガスケット101は、ネジ穴305が形成されていない支持部304と、金属製バックカバー401間に強固に固定されることになる。
【0041】
なお、図7に示すように、ガスケット101をネジ穴305が形成された支持部304の下を通過させずに、他の支持部304と同様に、上を通過させて、金属製バックカバー401との間で挟むように構成することも可能である。この場合、前述のようにスリットによって、金属製織布の繊維が機器内部に飛散するというような悲惨な事態を招くことはない。その実施の形態を図8に示す。ネジ801によって金属製バックカバー401が強固に金属シャーシ301に取り付けられている。
【0042】
以上のように、本発明のガスケット101によれば、ガスケットに、その長手方向に所定間隔を空けて複数のスリットを形成するようにしたので、あらゆる電子機器の、取り付け穴に対応させて、ガスケット101を、金属繊維を飛散させることなく、支持部304と金属製バックカバー401で強固に挟持させることがと可能となるものある。
【0043】
なお、ガスケット101の構造としては、必ずしも図1に示すものでなくてはならないというものではなく、たとえば図9に示すように、スリット901を一列で、所定間隔を空けて連続的に構成するようにしてもよい。
【0044】
また、ガスケット101にスリットを設けるのではなく、図10に示すように、スリットでなくネジ305より小さい径の円形の穴1001を連続的に形成するように構成することもできるものである。
【0045】
以上のように、本発明のガスケットによれば、スリットあるいは小径の穴を所定の一定間隔をおいて、長手方向に連続的に形成するようにしたので、バックカバー取り付け穴の位置がどこであろうと、ガスケットの金属織布の繊維が飛散するのを抑えつつ、ガスケットを介して金属製バックカバーを金属シャーシに取り付けることができるものであり、電子機器の製造工程の簡略化及びコスト削減に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係わるガスケットの一実施の形態を示す図。
【図2】この発明に係わる電子機器としてのテレビジョン受像機を正面から見た図。
【図3】図2に示すテレビジョン受像機のバックカバーを取り外した状態を背面方向から見た図。
【図4】図2に示すテレビジョン受像機のバックカバーを示す図。
【図5】図2に示すテレビジョン受像機の要部の構成を説明するための図。
【図6】図2に示すテレビジョン受像機の要部の構成を説明するための図。
【図7】図2に示すテレビジョン受像機の要部の構成を説明するための図。
【図8】電子機器の他の実施の形態の要部の構成を説明するための図。
【図9】本発明に係わるガスケットの他の実施の形態を説明するための図。
【図10】本発明のガスケットのさらに他の実施の形態を説明するための画。
【符号の説明】
【0047】
101…ガスケット
102…平面部
103,104…スリット
105…芯部材
106…金属織布
107…粘着部材
200…テレビジョン受像機
201…筐体
202…ディスプレイパネル
203…支持脚
301…金属シャーシ
302…取り付け部
303…植立部
304…支持部
305…ネジ穴
306…取り付け部材
401…金属製バックカバー
402…取り付け穴
404…しぼり部
501…取り付けネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数のスリットを連続的に形成したことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数の穴を連続的に形成したことを特徴とするガスケット。
【請求項3】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、少なくとも一部が当該ガスケット本体の幅方向に重なるように、複数のスリットを形成したことを特徴とするガスケット。
【請求項4】
前記複数のスリットは、前記ガスケット本体の長手方向に複数列、それぞれ所定間隔を置いて連続的に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記ガスケット本体の一方の平面に粘着テープが設けられていることを特徴請求項1乃至4のいずれかに記載のとするガスケット。
【請求項6】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数のスリットを連続的に形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、所定の一定間隔を空けて複数の穴を連続的に形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
可撓性を有する帯状芯素材と、この帯状芯素材の周囲を覆うように設けられた導電性を有する金属織布とで構成されるガスケット本体に、少なくとも一部が当該ガスケット本体の幅方向に重なるように、複数のスリットを形成したガスケットを間に介在させて、金属シャーシに金属カバーを取り付けたことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
前記金属カバーは、前記ガスケットを間に介在させて前記金属シャーシにネジ止めされるものであることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−128495(P2006−128495A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316688(P2004−316688)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】