説明

ガスケット用フッ素樹脂シート、その製造方法及びシートガスケット

【課題】シール性が良好で高温における応力緩和率の良好な充填材入りガスケット用フッ
素樹脂シート、その製造方法及びシートガスケットを提供することにある。
【解決手段】フッ素樹脂と充填材を含有するガスケット用シートであって、該充填材の平
均粒径が2〜30μmであり、且つ該充填材の含有量が該ガスケット用シート中、30〜
46容量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油化学プラント、各種工業用機械装置、自動車、家電などの広範囲な分野
で使用されるガスケットの基材として用いられるフッ素樹脂シート、その製造方法及びシ
ートガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスケット用フッ素樹脂シートは、フッ素樹脂に充填材を配合してシート状に
加工したものであり、フッ素樹脂、充填材、石油系炭化水素溶剤等の助剤をミキサーで混
合・予備成形し、間隔を調整した2軸ロール間に複数回通すことで圧延して得られるシー
トを乾燥、焼成すること等で製造される。
【0003】
このガスケット用フッ素樹脂シートはフッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性、非粘着性に
加えて、充填材が配合されているため、フッ素樹脂の欠点である耐クリープ性が改善され
ている。このため、このフッ素樹脂シートを打抜き加工して得られたガスケットは、石油
精製・石油化学プラントの配管や機器用のシール材として広く用いられている。
【0004】
近年、石綿ジョイントシートの使用が原則として禁止されたことを受けて、本シートガ
スケットを石綿ジョイントシート代替として使用することが検討されているが、このため
には、高温における応力緩和やシール性を改良する必要があった。また、ガスケットの破
断や変形を防ぐために、シートの引張強さを増大させることが要望されていた。
【0005】
このようなフッ素樹脂シートとしては、フッ素樹脂と、シリカを20重量%以上含有す
る充填材と、加工助剤とを含有するシート形成用樹脂組成物を、ロール温度を40〜80
℃として圧延する工程を含み、該加工助剤が、分留温度が120℃以下である石油系炭化
水素溶剤を30質量%以上含んでなる製造方法から得られた充填材入りフッ素樹脂シート
が知られている(特開2008―7607号公報)。また、一般に充填材入りフッ素樹脂
シートガスケットは、配合中の充填材の比率が増えるほど応力緩和率は良好となるが、シ
ール性が低下することが知られている。特開2008―7607号公報のフッ素樹脂シー
トは、ロール温度を高めとし、加工助剤を分留温度の低い溶剤を使用することで、フッ素
樹脂の充填率が低く充填材の充填率が高い場合であっても、高い応力緩和特性と高い気密
特性とを両立させたものである。
【特許文献1】特開2008―7607号公報(請求項1、請求項5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2008―7607号公報のフッ素樹脂シートであっても、応力緩
和特性、シール特性及び引張り強度については未だ十分であるとは言えず、更に改良され
たガスケット用フッ素樹脂シートの開発が望まれていた。さらに、アルカリ性流体でも使
用できるシートガスケットが望まれていた。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、シール性が良好で高温における応力緩和率の良好な充填材
入りガスケット用フッ素樹脂シート、その製造方法及びシートガスケットを提供すること
にある。また、引張強さが大きく、内部流体がアルカリ性流体であっても長期的にシール
できるガスケット用フッ素樹脂シート、その製造方法及びシートガスケットを提供するこ
とにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、平均粒子径が2〜30μm
の充填材をフッ素樹脂に配合する際、配合量46容量%を閾値としてシール性が急激に低
下すること、当該充填材の配合量が30〜46容量%であれば、良好な応力緩和率を維持
しつつシール性を低下させないこと、酸化アルミニウムを充填材中、13容量%以上配合
すれば、耐アルカリ性に優れ、引張り強度が顕著に高くなることなどを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決したものであって、フッ素樹脂と充填材を
含有するガスケット用シートであって、該充填材の平均粒径が2〜30μmであり、且つ
該充填材の含有量が該ガスケット用シートガスケット中、30〜46容量%であるガスケ
ット用フッ素樹脂シートを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記ガスケット用フッ素樹脂シートを加工して得られるフッ素樹脂シ
ートガスケットを提供するものである。
【0011】
また、本発明はフッ素樹脂、充填材及び助剤を含む混合物を2軸ロール間に複数回通す
圧延工程と、圧延工程から得られたシートを乾燥する工程と、乾燥されたシートを焼成す
る工程と、を有し、該充填材が平均粒径2〜30μm、該充填材の含有量が該シートガス
ケット中、30〜46容量%であり、該助剤が引火点40℃以上の石油系炭化水素溶剤で
あるガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスケット用フッ素樹脂シート及びシートガスケットによれば、シール性と応
力緩和率が共に、顕著に良好である。また、引張強さが大きく、内部流体がアルカリ性流
体であっても長期的にシールできる。本発明のガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法
によれば、安全で且つ加工助剤の配合量の制御が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のガスケット用フッ素樹脂シートは、フッ素樹脂と充填材を含有するガスケット
用シートであって、該充填材の平均粒径が2〜30μmであり、且つ該充填材の含有量が
該ガスケット用シート中、30〜46容量%である。
【0014】
フッ素樹脂は繊維状としてシート中に存在する。フッ素樹脂としては、従来より公知の
フッ素樹脂が使用でき、例えばテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、変性PTFE
、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフル
オロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロト
リフルオロエチレン(PCTEF)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、ポリふっ化ビ
ニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−
クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられる。
【0015】
充填材は、応力緩和性を付与するために添加され、平均粒径が2〜30μmのものがフ
ッ素樹脂の繊維間に均一に存在する。本発明は充填材の平均粒径が2〜30μmの場合に
応力緩和率とシール性を共に顕著に満足する充填材の配合割合を見出したものである。平
均粒径が2μm未満の充填材を配合すると、助剤が圧延後のシート中に多く含まれるため
、焼成後のシートの密度が小さくなり、また平均粒径が30μmを超える充填材を配合し
た場合も、充填材の粒子間の隙間が多くなり、焼成後のシートの密度が小さくなって、い
ずれもシール性と応力緩和率に悪影響する。
【0016】
また、充填材は粒子径が2μmから30μmの間に全粒子の90%以上が存在するもの
がよい。充填材の平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて行えばよい。レー
ザ回折式粒度分布測定方法は、被測定粒子群を媒体中に分散させ、その分散状態の被測定
粒子群にレーザ光を照射することによって得られる回折/散乱光の強度分布を測定し、そ
の測定結果からフラウンホーファ回折理論ないしはミー散乱理論に基づく演算によって被
測定粒子群の粒度分布を求める方法である。
【0017】
充填材の含有量は、ガスケット用シート中、30〜46容量%である。充填材の含有量
が、ガスケット用シート中、30容量%未満では応力緩和性が低下する点で好ましくなく
、一方46容量%を超えるとシール性が顕著に悪くなる。平均粒径が2〜30μmの充填
材がガスケット用シート中、46容量%を閾値としてシール性が良好な領域とシール性不
良の領域が存在する理由としては、明確ではないが、ガスケット用シート中の細孔分布の
影響と思われ、この細孔分布が46容量%を境にシール性不良な大きな細孔が増加するた
めと推測される。
【0018】
充填材としては、ケイ素およびアルミニウムを主体とし、マグネシウム、鉄、アルカリ
土類金属、アルカリ金属などを含むケイ酸塩鉱物又は珪石、ワラストナイトなどの天然鉱
物、シリカ、酸化アルミニウム、ガラス、ジルコン、酸化チタン、酸化鉄などの酸化物、
硼化ジルコン、二硫化モリブデンなどの含硫黄化合物、カーボン等が挙げられる。これら
の充填材の中、珪石又は酸化アルミニウムのいずれか一方の使用又は珪石と酸化アルミニ
ウムの併用が好ましい。
【0019】
珪石は、例えば、SiO 96.85%、Al 1.55%、Fe
.1%、TiO 0.08%、CaO 0.03%、MgO 0.01以下、Na
0.06%、KO 1.04%、その他0.15%の組成ものが例示される。
【0020】
酸化アルミニウムは、充填材中、13容量%以上含ませると、耐アルカリ性に優れるう
えに、シール性と引張り強度が著しく向上する点で好ましい。酸化アルミニウムの配合に
よりシール性と引張り強度が著しく向上する理由は、混合時、予備成型時及び圧延時にフ
ッ素樹脂が硬い酸化アルミニウムの粒子により適度に繊維化されるためである。酸化アル
ミニウムとしては、α、β、γの酸化アルミニウムが使用できるが、α型が化学的に安定
である点で好ましい。
【0021】
本発明のガスケット用フッ素樹脂シートは、シール性と応力緩和率が共に、顕著に良好
で、引張強さが大きい。本発明のガスケット用フッ素樹脂シートのシール性は、JIS1
0K25Aのフランジに規格サイズに打ち抜いたシートを面圧35MPaで締付け、内圧
0.98MPaの窒素ガスを10分間負荷したときの漏れ量(水上置換法)が0〜1.0
cm/分であり、JIS R3453に準拠した100℃における応力緩和率は18.
0〜25.0%であり、JIS K7127(試験片5)に準拠した引張り強さは、酸化
アルミニウム無配合で6MPa以上、好ましくは10MPa以上であり、酸化アルミニウ
ム配合で16MPa以上である。
【0022】
次に、本発明のガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法について説明する。本発明の
ガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法としては、フッ素樹脂、充填材及び助剤を含む
混合物を2軸ロール間に複数回通す圧延工程と、圧延工程から得られたシートを乾燥する
工程と、乾燥されたシートを焼成する工程と、を有し、該充填材が平均粒径2〜30μm
、該充填材の含有量が該フッ素樹脂シート中、30〜46容量%である方法が挙げられる
。以下に好適な製造方法について説明する。
【0023】
本発明の製造方法で使用するフッ素樹脂は、本発明のガスケット用フッ素樹脂シートの
ものと同様のものが挙げられる。使用するフッ素樹脂は粉末状のものを使用すればよいが
、乳化重合によって得られたPTFEが、加工性が良好なため成型工程及び圧延工程を行
い易くなる点で好ましい。
【0024】
本発明の製造方法で使用する充填材は前述したものが挙げられる。充填材は、最終のシ
ートガスケット中、30〜46容量%となるように配合する。すなわち、固形分としてフ
ッ素樹脂と充填材を使用する場合、固形分合計量中、充填材を30〜46容量%となるよ
うに配合すればよい。なお、原料の混合段階で、固形分合計量中、充填材を30〜46容
量%と配合すれば、最終のシートガスケット中の充填材の配合量も概ね30〜46容量%
となる。
【0025】
助剤(加工助剤)はフッ素樹脂を膨潤させ、繊維化させると共に、混合工程及び成形工
程を行い易くするために使用される。助剤としては、パラフィン系溶剤等の炭化水素系有
機溶剤が使われる。市販品ではアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパー
L、アイソパーM(エクソンモービル社製)が知られている。これらの助剤は単独、また
は複数を混合して使用できる。
【0026】
好適な助剤は、引火点が40℃以上の炭化水素系有機溶剤である。引火点が40℃未満
のものは常温で爆発する可能性があるため安全面に不安があるうえに、予備成型体の溶剤
含有率が変動し易い点で好ましくない。また、引火点の上限値は好適には60℃である。
引火点が高すぎるものも予備成型体の乾燥が遅くなる点で好ましくない。好適な助剤とし
ては、引火点が40〜60℃のアイソパーG、アイソパーHである。
【0027】
助剤の使用量は、フッ素樹脂、充填材及び助剤の混合物に対して、1〜10容量倍、好
ましくは3〜7容量倍である。助剤の使用量がこの範囲であると、攪拌又は混合により短
時間で均一な混合物が得られ、またフッ素樹脂を適度に膨潤させ繊維化できると共に、予
備成形工程及び圧延工程を円滑に行なうことができる。
【0028】
好適なフッ素樹脂シートの製造方法は、混合工程、予備成形工程、圧延工程、乾燥工程
、焼成工程を経て製造される。混合工程はフッ素樹脂、充填材及び助剤を混合する工程で
あり、フッ素樹脂、充填材及び助剤をミキサー内で攪拌混合する。混合後に余分な助剤を
ろ過等により除去することもできる。
【0029】
予備成形工程は、混合工程で得られた混合物をハンドプレス等で圧縮成形したり、押出
成形したりして予備成形物を得る工程である。予備成形工程は常温下で行い、助剤を積極
的に揮発させる必要はない。予備成形物の形状としては、特に制限されず、板状や丸棒状
でよい。
【0030】
圧延工程は予備成形物を2軸ロール間にロール間隙を変えながら、複数回通し、シート
に成形する工程である。圧延は繰り返し行うことで、フッ素樹脂の繊維化が促進され、シ
ート内部が緻密化し、引張強さが強くなっていく。特に、酸化アルミニウムを充填材中、
13容量%以上使用したものは、フッ素樹脂の繊維化を更に促進するため、引張り強さを
更に高めることができる。また、充填材が繊維間に均一に存在してシートの応力緩和性を
高めることができる。ロール温度は、常温、すなわち10〜30℃の室温下でよく、この
圧延工程においても助剤を完全に揮発させる必要はない。
【0031】
乾燥工程は、圧延されたシートを常温で放置するか、助剤の沸点以下の温度で加熱する
ことにより、助剤を除去する工程である。
【0032】
焼成工程で、乾燥したシートをフッ素樹脂の融点以上の温度で、加熱、焼結させる工程
である。加熱時にはシート全体に均一に温度をかける必要があり、フッ素樹脂の種類にも
よるが、加熱温度としては、340〜370℃が適当である。
【0033】
焼成工程で得られたフッ素樹脂シートは、打ち抜き加工などの加工処理が行われてガス
ケットシートとなる。得られたガスケットシートのシール性、応力緩和率及び引張り強さ
は前記フッ素樹脂シートと同様である。このガスケットシートは石油化学プラント、各種
工業用機械装置、自動車、家電などの広範囲な分野において、ガスケットとして使用され
る。特に、充填材として酸化アルミニウムを使用したガスケットは、内部流体がアルカリ
性流体であっても、長期的にシールできる。
【0034】
実施例
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発
明を制限するものではない。
【0035】
参考例1
密度2.2g/cmの粉末状のPTFEと密度3.9g/cmの平均粒子径5μmの
充填材を、容量比100〜12:0〜88.0の範囲で配合比を変えたサンプルのそれぞ
れについて、助剤として約5倍容量のアイソパーG(引火点42℃)を加えてミキサーで
5分間混合し、ろ過後、ハンドプレスで約700mm×700mm、高さ20mmとなる
まで圧縮して予備成形体を得た。得られた予備成形体をロール径610mm、ロール温度
20℃、ロール間隔10mmの2軸ロールにロール速度5m/分で通し圧延した。続いて
ロール間隔を5mm、3mmと順次間隔を小さくし、最終的にはシートが1.5mm厚と
なるようにロール間隙を調整しシートを作製した。このシートを室温で24時間以上放置
し、助剤を除去した後、電気炉内で、350℃で3時間焼成し、厚さ1.5mmの充填材
入りフッ素樹脂シートを作製した。得られたフッ素樹脂シートは下記方法により応力緩和
率とシール性を測定した。その結果を表1及び表2に示した。表1及び表2中、同じ組成
のものは再現性及び繰り返し性を評価したものである。また、シール性の結果を図1に、
応力緩和率の結果を図2に示した。表1及び表2の密度はシートの密度を言う。
【0036】
(密度の測定)
JIS K 7112のプラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法
のA法(水中置換法)に準じて測定した。
【0037】
(シール性試験)
JIS 10K25Aのフランジに規格サイズに打ち抜いたシートを面圧35MPaで
締め付け、内圧0.98MPaの窒素ガスを10分間負荷してそのときの漏れ量を水上置
換法にて測定した。漏れ量(シール性)はcm/分で示す。
【0038】
(応力緩和性)
JIS R3453のジョイントシートの100℃における応力緩和の測定に準じて測
定した。応力緩和は%で示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
参考例2
密度3.9g/cmの平均粒子径5μmの充填材に代えて、密度2.7g/cmの平
均粒子径13μmの充填材を使用した以外は、参考例1の番号9及び番号21と同様の方
法で厚さ1.5mmの充填材入りフッ素樹脂シートを作製し、同様の評価を行った。その
結果を表3に示した。
【0042】
【表3】

【0043】
表1〜表3及び図1から明らかなように、フッ素樹脂100容量%、充填材0容量%の
ものは優れたシール性を示した。また、平均粒径が5μm及び13μmの充填材を使用し
た場合、フッ素樹脂54容量%、充填材46容量%を閾値として、それより充填材の量が
多いとシール性は顕著に低下し、それより少ないとシール性は顕著に優れた。また、表1
〜表3及び図2から充填材の配合が30容量%以上であれば、応力緩和性が優れたもので
あった。従って、これらの結果から、フッ素樹脂シート中、充填材の配合量が30〜46
容量%のものであれば、優れたシール性と応力緩和性を両立させることが可能となる。
【実施例1】
【0044】
助剤配合前の混合物を、表4の実施例1の容積割合でPTFEと充填材の合計量が10
kgになるように材料を計量したものを使用した以外は、参考例1と同様の方法で厚さ1
.5mmの充填材入りフッ素樹脂シートを作製した。得られたフッ素樹脂シートについて
、上記方法に従い、密度、シール性試験及び応力緩和率を測定し、下記方法に従い、引張
り強さ及び耐アルカリ性のシール試験を行った。その結果を表4に示す。
【0045】
(引張強さ)
JIS K 7127のプラスチック-引張特性の試験方法に準じて、試験片タイプ5で
測定した。
【0046】
(耐アルカリ性シール試験)
50重量%の水酸化ナトリウムに7日間浸漬したシートについて、上記シール試験を行い
評価した。
【0047】
実施例2〜8及び比較例1〜6
表4及び5に示した配合とした以外は、実施例1と同様の方法で行い、同様の評価を行
なった。実施例2〜8の結果を表4に、比較例1〜6の結果を表5に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
その結果、実施例1〜8は、比較例1に比べて応力緩和が良好で、比較例2〜4及び比
較例6に比べてシール性が良好であった。また、酸化アルミニウムを配合した実施例1〜
4は酸化アルミニウム以外の充填材を配合した実施例5〜7よりも耐アルカリ性が良好で
あった。実施例8のように硫酸バリウムを配合すると耐アルカリ性は良好であるが、引張
強さが小さく、内部圧力が高いとガスケットが破断する可能性がある。また、アイソパー
G(引火点42℃)に代えて、アイソパーC(引火点−8℃)を使用した以外は実施例1
と同様の方法でフッ素樹脂シートを作製し、同様の評価を行った結果、密度、引張り強さ
、応力緩和、シール性及び耐アルカリ性試験の結果は実施例1と同様であるが、着火試験
で着火が確認され爆発の恐れがあった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】参考例におけるPTFE配合量と漏れ量との関係を示す図。
【図2】参考例におけるPTFE配合量と応力緩和率との関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と充填材を含有するガスケット用シートであって、該充填材の平均粒径が2
〜30μmであり、且つ該充填材の含有量が該ガスケット用シート中、30〜46容量%
であることを特徴とするガスケット用フッ素樹脂シート。
【請求項2】
酸化アルミニウムが該充填材中、13容量%以上含まれることを特徴とする請求項1記
載のガスケット用フッ素樹脂シート。
【請求項3】
請求項1又は2のガスケット用フッ素樹脂シートを加工して得られるフッ素樹脂シート
ガスケット。
【請求項4】
フッ素樹脂、充填材及び助剤を含む混合物を2軸ロール間に複数回通す圧延工程と、圧
延工程から得られたシートを乾燥する工程と、
乾燥されたシートを焼成する工程と、を有し、
該充填材が平均粒径2〜30μm、該充填材の含有量が該フッ素樹脂シート中、30〜4
6容量%であることを特徴とするガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
酸化アルミニウムが該充填材中、13容量%以上含まれることを特徴とする請求項4記
載のガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
該助剤が引火点40℃以上の石油系炭化水素溶剤であることを特徴とする請求項4又は
5に記載のガスケット用フッ素樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117676(P2012−117676A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4830(P2012−4830)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2008−249828(P2008−249828)の分割
【原出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】