説明

ガスセンサ

【課題】迅速に劣化判定が可能で、且つ、信頼性に優れたガスセンサを提供する。
【解決手段】互いに近接配置され、電圧を印加されるガス濃度検出用素子9aと監視用素子10aと、ガス濃度検出用素子9aの出力に基づいてガス濃度を判定する濃度判定部32と、両素子9a,10aの出力偏差に基づいてガス濃度検出用素子9aの異常を判定する異常判定部33と、検出モードと監視モードに切り換えるモード切換部31とを備え、検出モードでは、ガス濃度検出用素子9aに基準電圧を印加し、監視用素子10aには基準電圧よりも低い電圧を印加し、監視モードでは、ガス濃度検出用素子9aと監視用素子10aの両方に基準電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば燃料電池車両に搭載される水素センサ等のガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサには、2つのガス検出素子を備え、一方のガス検出素子を測定用素子として常時使用し、他方のガス検出素子を前記測定用素子の劣化を判定する劣化判定用素子として時々使用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3219855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のガスセンサにおいては、劣化判定用素子が劣化判定に供されていないときには劣化判定用素子は無通電状態であるため、劣化判定時に劣化判定用素子に通電を行ったときに、劣化判定可能な状態となるまでに時間が長くかかり、劣化判定を迅速に行うことができないという課題がある。
【0004】
また、劣化判定用素子が劣化判定に供されていないときには劣化判定用素子は無通電状態であるため、劣化判定用素子の温度が低下してしまい、ガスセンサが高湿な雰囲気下に設置されている場合に、劣化判定用素子に結露水や不純物が付着し易く、劣化判定時の基準素子としての信頼性が低下するという課題がある。
そこで、この発明は、迅速に劣化判定が可能で、且つ、信頼性に優れたガスセンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るガスセンサでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、互いに近接配置され、電圧を印加される一対のガス検出素子(例えば、後述する実施例におけるガス濃度検出用素子9a、監視用素子10a)と、前記ガス検出素子の出力に基づいてガス濃度を判定する濃度判定部(例えば、後述する実施例における濃度判定部32)と、前記一対のガス検出素子の出力の偏差に基づいて一方のガス検出素子の異常を判定する異常判定部(例えば、後述する実施例における異常判定部33)と、を備えるガスセンサ(例えば、後述する実施例における水素センサ100)において、前記一対のガス検出素子のうち一方をガス濃度検出用素子(例えば、後述する実施例におけるガス濃度検出用素子9a)、他方を監視用素子(例えば、後述する実施例における監視用素子10a)とし、前記ガス濃度検出用素子に印加する電圧よりも前記監視用素子に印加する電圧を低くする検出モードと、前記ガス濃度検出用素子と前記監視用素子に前記検出モードのときに前記ガス濃度検出用素子に印加した電圧と同じ電圧を印加する監視モードとに、切り替え可能に構成されていることを特徴とするガスセンサである。
このように構成することにより、検出モードにおいては、ガス濃度検出用素子に印加する電圧よりも低い電圧を監視用素子に印加することができるので、検出モードでは監視用素子を昇温しながらも、ガス濃度検出用素子よりも低い温度に保持することができる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度では該監視用素子が検出対象であるガスと反応しない値に設定されていることを特徴とする。
このように構成することにより、検出モードでは監視用素子が検出対象であるガスと反応しないので、監視用素子に被毒を発生させないようにすることができる。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度では該監視用素子が検出対象以外の不純物と反応しない値に設定されていることを特徴とする。
このように構成することにより、検出モードでは監視用素子が検出対象以外の不純物と反応しないので、監視用素子に被毒を発生させないようにすることができる。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度で結露が発生しない値に設定されていることを特徴とする。
このように構成することにより、検出モードのときに監視用素子において結露が発生しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、検出モードでは監視用素子を昇温しながらも、ガス濃度検出用素子よりも低い温度に保持することができるので、検出モードから監視モードに移行するときに、監視用素子をガス濃度検出用素子と同一温度まで迅速に昇温することができる。したがって、監視モードにおいて行う、ガス濃度検出用素子と監視用素子の出力の偏差に基づいてガス濃度検出用素子が異常か否かを判定する異常判定処理を迅速に行うことができる。
【0010】
請求項2および請求項3に係る発明によれば、検出モードのときに監視用素子に被毒を発生させないようにすることができるので、監視用素子の信頼性が向上し、ガス濃度検出用素子に対する異常判定の信頼性が向上する。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、検出モードのときに監視用素子において結露が発生しないようにすることができるので、監視用素子の信頼性が向上し、ガス濃度検出用素子に対する異常判定の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係るガスセンサの実施例を図1から図6の図面を参照して説明する。なお、この実施例におけるガスセンサは、燃料電池車両に搭載されて、例えば燃料電池のカソード極側から排出される酸化剤排ガス中に水素が漏洩していないことを確認するために使用される水素センサとしての態様である。
【0013】
この実施例における水素センサ100は接触燃焼式ガスセンサであり、初めに、図2および図3を参照して水素センサ100の検出部1の構成を説明する。
図2に示すように、検出部1は、例えばポリフェニレンサルファイド製のケース2を備え、ケース2内には樹脂で封止された回路基板3が設けられている。ケース2の下面からは、一対の筒状部4,5が突出形成されており、各筒状部4,5の下端にはそれぞれガス導入口6が開口形成されていて、各筒状部4,5の内部に形成されたガス検出室7に連なっている。ガス導入口6には通気性を有する例えばセラミックからなるフィルタ8が設けられている。
【0014】
各筒状部4,5の内部にはそれぞれ検出要素9,10が設けられており、検出要素9,10は回路基板3に接続されている。
筒状部4の検出要素9について説明すると、検出要素9は、ケース2の下面から等距離だけ離間して並んで設置された検出素子9aと温度補償素子9bとを備え、各素子9a,9bは通電用のリード線11、ステー12を介して回路基板3に接続されている。
【0015】
図3に示すように、検出素子9aは、電気抵抗に対する温度係数が高い白金等を含む金属線のコイル13の表面が、被検出ガスとされる水素に対して活性な貴金属等からなる触媒14を坦持するアルミナ等の坦体で被覆されて形成されている。
温度補償素子9bは、被検出ガスに対して不活性とされ、例えば検出素子9aと同等のコイル15の表面がアルミナ等の坦体で被覆されて形成されている。
そして、被検出ガスである水素が検出素子9aの触媒14に接触した際に生じる燃焼反応の発熱により高温となった検出素子9aと、被検出ガスによる燃焼反応が発生せず検出素子9aよりも低温の温度補償素子9bとの間に電気抵抗値の差が生ずることを利用し、雰囲気温度による電気抵抗値の変化分を相殺して水素濃度を検出することができるようになっている。
【0016】
例えば、検出素子9a(抵抗値R4)及び温度補償素子9b(抵抗値R3)が直列接続されてなる枝辺と、固定抵抗16(抵抗値R1)及び固定抵抗17(抵抗値R2)が直列接続されてなる枝辺とが、外部の電源18から供給される電圧に基づいて所定の電圧を印加する電圧発生回路20Aに対して並列に接続されてなるブリッジ回路において、検出素子9aと温度補償素子9b同志の接続点PSと、固定抵抗16,17同志の接続点PRとの間に、これらの接続点PS,PR間の電圧を検出する検出回路21Aが接続されており、さらに、検出回路21Aは出力回路22Aが接続されている。
【0017】
ここで、ガス検出室7内に導入された検査対象ガス中に被検出ガスである水素が存在しないときには、ブリッジ回路はバランスしてR1×R4=R2×R3の状態にあり、検出回路21Aの出力がゼロとなる。一方、水素が存在すると、検出素子9aの触媒14において水素が燃焼し、コイル13の温度が上昇し、検出素子9aの抵抗値R4が増大する。これに対して温度補償素子9bにおいては水素は燃焼せず、温度補償素子9bの抵抗値R3は変化しない。これにより、ブリッジ回路の平衡が破れて検出回路21Aに、水素濃度の増大変化に応じて増大傾向に変化する適宜の電圧が印加される。この検出回路21Aから出力される電圧の検出値は出力回路22Aへ出力され、出力回路22Aは入力された検出値を制御部30(図1参照)へ出力する。
【0018】
筒状部5の検出要素10は検出要素9と同様の構成であるので、詳細説明を省略するが、検出要素10は検出素子10aと温度補償素子10bとを備え、各素子10a,10bは通電用のリード線11、ステー12を介して回路基板3に接続され、ブリッジ回路に接続されている。該ブリッジ回路は電圧発生回路20Bと検出回路21Bに接続されていて、検出回路21Bで検出された検出値は出力回路22Bを介して制御部30へ出力される。
【0019】
そして、水素センサ100の検出部1は、筒状部4,5を例えば酸化剤排ガス配管内に挿入して該配管に設置され、該配管中を流通する酸化剤排ガス中の水素の検出に供される。
ただし、この実施例では、検出要素9の検出素子9aはガス濃度検出用の素子(以下、ガス濃度検出用素子9aという)とされ、検出要素10の検出素子10aは監視用の素子(以下、監視用素子10aという)とされており、ガス濃度検出用素子9aによって酸化剤排ガス中の水素の検出を常時行い、監視用素子10aは定期的にガス濃度検出用素子9aに異常がないか否かを検出するのに使用する。
【0020】
次に、図1のブロック図を参照して、水素センサ100の制御部30について説明する。
制御部30は、モード切換部31と、濃度判定部32と、異常判定部33とを備え、濃度判定部32は出力切換部34を備えている。
モード切換部31は、検出モードと監視モードを切り換える切換手段である。検出モードは、監視用素子10aに印加する電圧をガス濃度検出用素子9aに印加する電圧よりも低くし、ガス濃度検出用素子9aの出力に基づいて被検出ガスのガス濃度を検出するモードであり、監視モードは、検出モードのときにガス濃度検出用素子9aに印加した電圧と同じ大きさの電圧をガス濃度検出用素子9aと監視用素子10aに印加してガス濃度検出用素子9aの異常判定を行うモードである。
【0021】
モード切換部31は、図4のタイムチャートに示すように、燃料電池(図示略)を運転開始するときにON操作される始動スイッチ40がONされると、そのON信号をトリガーとして初めに検出モードに入り、一定時間毎に自動的に監視モードに入るように制御する。なお、実際には、始動スイッチ40がONされると、ガス濃度検出用素子9aに所定の基準電圧V1が常時印加されるように検出要素9の電圧発生回路21Aが制御され、モード切換部31から出力されるモード信号に応じて監視用素子10aに印加する電圧が、基準電圧V1、または、ゼロより大で基準電圧V1よりも低い監視電圧V2(V1>V2>0)となるように検出要素10の電圧発生回路21Bが制御される。
【0022】
ここで、基準電圧V1は、ガス濃度検出用素子9aおよび監視用素子10aの触媒14を駆動温度T1(例えば100〜400゜C)に昇温するために必要な電圧であり、駆動温度T1は被検出ガスである水素と反応するための活性温度に設定されている。
一方、監視電圧V2は、監視用素子10aの触媒14を活性温度より低く、且つ、触媒14が水素以外の不純物とも反応せず、且つ、結露を発生させない温度T2(例えば60〜90゜C)に昇温するために必要な電圧である。
【0023】
そして、検出モードおよび監視モードを問わず、ガス濃度検出用素子9aには常時、基準電圧V1が印加されるので、ガス濃度検出用素子9aの触媒14は常に活性温度に維持されており、したがって、酸化剤排ガス中に水素が存在するときにはガス濃度検出用素子9aの抵抗が変化し、この抵抗変化に基づいて検出される検出値に応じた出力が出力回路22Aから、制御部30の濃度判定部32および異常判定部33に出力される。
【0024】
一方、監視用素子10aには、検出モードでは基準電圧V1よりも低い監視電圧V2が印加されているため、監視用素子10aの触媒14は温度T2までは昇温するが、活性温度には至らない。
そして、監視モードになると、監視用素子10aにもガス濃度検出用素子9aに印加されているのと同じ基準電圧V1が印加されるので、監視用素子10aの触媒14も活性温度に昇温されて活性化され、酸化剤排ガス中に水素が存在するときには監視用素子10aの抵抗が変化し、この抵抗変化に基づいて検出される検出値に応じた出力S2が出力回路22Bから、制御部30の濃度判定部32および異常判定部33に出力される。
【0025】
異常判定部33において、ガス濃度検出用素子9aの出力回路22Aから入力した出力値S1と、監視用素子10aの出力回路22Bから入力した出力値S2とを比較し、その偏差ΔS(=S2−S1)が予め設定した閾値以内の場合にはガス濃度検出用素子9aは正常であると判定し、前記閾値を越えた場合にはガス濃度検出用素子9aは異常であると判定し、異常と判定した場合には異常判定信号を濃度判定部32および前記燃料電池制御装置等へ出力する。
【0026】
異常判定部によりガス濃度検出用素子9aが正常であると判定されているときには、濃度判定部32は、ガス濃度検出用素子9aの出力回路22Aから入力した出力値S1に応じて、水素濃度マップ等を参照して水素濃度を算出し、該水素濃度に応じた水素濃度信号を例えば図示しない燃料電池制御装置等へ出力する。
しかしながら、異常判定部によりガス濃度検出用素子9aが異常であると判定され、異常判定部33から異常判定信号を入力した場合には、監視モードにおいて監視用素子10aの出力回路22Bから入力した出力値S2に基づいて、前記水素濃度マップ等を参照して水素濃度を算出する。そして、出力切換部34は、異常と判定されたガス濃度検出用素子9a側の出力値S1に基づいて算出した水素濃度に代えて、監視用素子10a側の出力値S2に基づいて算出した水素濃度を採用し、該水素濃度に応じた水素濃度信号をセンサ出力として前記燃料電池制御装置等へ出力する。
【0027】
また、制御部30は、このように監視用素子10a側の出力値S2に基づいて算出した水素濃度をセンサ出力として出力しているときには、ガス濃度検出用素子9aが待機状態であることを示す信号を定期的に前記燃料電池制御装置等に出力する。
【0028】
次に、この実施例におけるモード切換制御について、図5のフローチャートに従って説明する。
図5のフローチャートに示すモード切換制御ルーチンは、電子制御装置によって繰り返し実行される。
まず、ステップS101において始動スイッチ40がONか否かを判定する。
ステップS101における判定結果が「NO」(始動スイッチ:OFF)である場合には、本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS101における判定結果が「YES」(始動スイッチ:ON)である場合には、ステップS102に進み、検出モードか否かを判定する。
【0029】
ステップS102における判定結果が「YES」(検出モード)である場合には、ステップS103に進み、ガス濃度検出用素子9aには基準電圧V1を印加し、監視用素子10aには監視電圧V2を印加し、さらにステップS104に進み、水素濃度の検出処理を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0030】
一方、ステップS102における判定結果が「NO」である場合には、監視モードであるので、ステップS105に進み、ガス濃度検出用素子9aおよび監視用素子10aに基準電圧V1を印加し、さらにステップS106に進み、水素濃度の検出処理を実行するとともに、ガス濃度検出用素子9aに対する異常判定処理を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0031】
このように構成された水素センサ100によれば次のような作用効果がある。
ガス濃度検出用素子9aの触媒14は活性温度の雰囲気において被検出ガスと燃焼反応が起こるが、その際に触媒14において燃焼反応を起こしている反応部に、被検出ガス以外の媒質(ガス、溶液、ミストなど)あるいは該媒質と反応して生成された物質が付着する、所謂被毒という現象が発生する。
【0032】
ここで、ガス濃度検出用素子9aには常時、基準電圧V1が印加されていて駆動温度T1に保持されるので、被毒が発生するのは避けられない。そして、被毒された反応部は活性が失われるため、ガス濃度検出用素子9aが徐々に劣化していくのは避けることはできない。
【0033】
しかしながら、監視用素子10aには、監視モードのときにはガス濃度検出用素子9aに印加されているのと同じ基準電圧V1が印加されるので、監視用素子10aの触媒14も活性温度まで昇温されて活性化されるが、検出モードのときには監視用素子10aには基準電圧V1よりも低い監視電圧V2が印加されるため、監視用素子10aの触媒14は温度T2までは昇温するが、活性温度(T1)には至らない。
ここで、検出モードの継続時間は極めて長く(例えば数十秒〜数分)、監視モードの継続時間は極めて短い(例えば数秒)ので、監視用素子10aでは被毒現象の発生が極めて少ない。したがって、監視用素子10aの信頼性が向上し、ガス濃度検出用素子9aに対する異常判定の信頼性が向上する。
【0034】
しかも、検出モードにおいて監視用素子10aに監視電圧V2が印加されていて、監視用素子10aの触媒14が温度T2に保持されているので、水蒸気が滞留するような場所に水素センサ100が設置されている場合にも、その水蒸気が監視用素子10aにおいて結露することがなく、監視用素子10aを常に安定な状態に保持することができる。したがって、監視用素子10aの信頼性が向上し、ガス濃度検出用素子9aに対する異常判定の信頼性が向上する。
また、検出モードのときに監視用素子10aが温度T2に保持されているので、検出モードから監視モードに移行したときに、監視用素子10aを迅速に温度T1まで上昇させることができ、ガス濃度検出用素子9aに対する異常判定処理を迅速に行うことができる。すなわち、モード切換時の応答性が高く、異常判定に要する時間を短縮することができる。
【0035】
なお、前述した実施例では温度補償素子9b,10bを備えた水素センサの態様で説明したが、温度補償素子9b,10bを備えない水素センサにもこの発明は適用可能である。図6に、温度補償素子9b,10bを備えない水素センサの検出部1の一例を示す。この場合には、単一の筒状部19内にガス濃度検出用素子9aと監視用素子10aを設ける。その他の構成は前述した筒状部4および検出要素9と同じであるので、同一態様部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、ガスセンサは水素センサに限るものではなく、水素以外の被検出ガスを検出するガスセンサであってもよい。また、実施例では検出素子を接触燃焼式としたが、素子を大気温度よりも高温に熱する方式であれば、半導体式、熱伝導式、プロトン導電体式、FET式などのガスセンサにも、この発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係るガスセンサの実施例におけるブロック図である。
【図2】前記実施例におけるガスセンサの検出部の断面図である。
【図3】前記実施例のガスセンサの回路図である。
【図4】前記実施例におけるタイムチャートの一例を示す図である。
【図5】前記実施例におけるモード切換制御を示すフローチャートである。
【図6】他の実施例におけるガスセンサの検出部の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
9a ガス濃度検出用素子(ガス検出素子)
10a 監視用素子(ガス検出素子)
31 モード切換部
32 濃度判定部
33 異常判定部
100 水素センサ(ガスセンサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接配置され、電圧を印加される一対のガス検出素子と、
前記ガス検出素子の出力に基づいてガス濃度を判定する濃度判定部と、
前記一対のガス検出素子の出力の偏差に基づいて一方のガス検出素子の異常を判定する異常判定部と、
を備えるガスセンサにおいて、
前記一対のガス検出素子のうち一方をガス濃度検出用素子、他方を監視用素子とし、
前記ガス濃度検出用素子に印加する電圧よりも前記監視用素子に印加する電圧を低くする検出モードと、前記ガス濃度検出用素子と前記監視用素子に前記検出モードのときに前記ガス濃度検出用素子に印加した電圧と同じ電圧を印加する監視モードとに、切り替え可能に構成されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度では該監視用素子が検出対象であるガスと反応しない値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度では該監視用素子が検出対象以外の不純物と反応しない値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記検出モードにおいて前記監視用素子に印加する電圧は、その電圧を印加して昇温される前記監視用素子の温度で結露が発生しない値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−19732(P2010−19732A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181434(P2008−181434)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】