説明

ガスセンサ

【課題】ガスセンサを被取付部に取り付ける場合、その取付作業を簡素化し、該ガスセンサと被取付部との接触部分のシール性能を向上させる。
【解決手段】検出機能を有するセンサ素子18と、該センサ素子18を被取付部に取り付けるための取付部20とを有するガスセンサにおいて、該取付部20は、シール部材24と該シール部材24に回転自在なボルト部材26とから構成されている。前記シール部材24と前記ボス42とが接触してシール部を構成し、該シール部材24に形成されるテーパ面28の水平方向に対するテーパ角度θ及び該ボス42に形成されるテーパ面36の水平方向に対するテーパ角度ψは、該シール部材24と該ボス42とが常に接触状態を呈する角度に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガスから所定のガス成分を検出するためのガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気管には、排気ガス中の所定のガス成分(例えば、NOx)を検出するために、各種のガスセンサが取り付けられている。この種のガスセンサは、一般に図5に示すように構成されている。
【0003】
すなわち、ガスセンサは、例えばNOxを検出する機能を有するセンサ素子1と、該センサ素子1に外装されるボルト部材2と、該ボルト部材2に固着されて該センサ素子1を保護するための保護カバー3とを備えている。また、排気管4には、前記ガスセンサを取り付けるためのナット部を具備するボス5が固着されている。
【0004】
前記ボルト部材2が、前記ボス5のナット部に螺合されることにより前記ガスセンサが排気管4に取り付けられる。この際、前記ボルト部材2と前記ボス5との接触面には、シール部材としてガスケット6が装着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記ガスセンサでは、センサ素子1と該センサ素子1を駆動させる駆動回路部(図示せず)とがコネクタを介してケーブル接続されているため、該コネクタから侵入した電磁波により駆動中の該ガスセンサはノイズの影響を受けていた。そこで、ノイズの影響を防止するために、前記センサ素子1と前記駆動回路部とをコネクタを介さずにケーブル接続した高性能の一体型構造のガスセンサが提供されるようになった。
【0006】
しかし、前記の一体型構造のガスセンサを排気管に取り付けようとした場合、駆動回路部を含むガスセンサ全体を回転させて排気管に固着されたボスにねじ込まなければならないという不具合があり、また、前記一体型構造のガスセンサと前記ボスとの中心位置の位置ずれが惹起し易く、取付精度が悪化する懸念があった。
【0007】
また、従来のガスセンサでは、該ガスセンサに備えられているボルト部材2と排気管4に固着されているボス5との接触面の面粗さの精度に起因して、シール性能が著しく変化してしまうため該接触面の面粗さの精度を向上させる必要があった。そのため製造コストが高騰するという不具合があった。
【0008】
さらに、従来のガスセンサにおいて、ボルト部材2のねじ込みによって発生する押さえ込み応力は、単にガスケット6をボス5に押しつけるようにだけ働いている。従って、前記ボルト部材2による締付力が強くなれば当然にシール性は良好となるが、該ボルト部材2の強度等の制約から、該締付力には制限があり、この制限下において、シール性が完全に保証されているわけではなかった。
【0009】
本発明は、センサ素子と駆動回路部とをケーブル接続して一体型構造にすることによりセンサ駆動中にノイズの侵入を防止するようにした高性能のガスセンサを排気管に取り付ける場合でも、その取付作業を簡素化させることができ、該ガスセンサに備えられているボルト部材と該排気管に固着されているボスとの接触部分のシール性能を向上できるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被測定ガスから所定のガス成分を検出するためのガスセンサにおいて、検出機能を有するセンサ素子と、前記センサ素子を被取付部に取り付けるための取付部とを有し、前記取付部と前記被取付部とは常に接触し、該取付部と被取付部との接触部分は互いにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
つまり、この発明においては、トライポロジーの考え方を採用している。具体的には、取付部と被取付部との接触部分をテーパ状に形成して角度をもたせることにより、取付部による締付力、即ち、押さえ込み応力によって接触部分に摩擦応力を発生させ、その摩擦応力により表面(接触部分)同士が擦れ合ったときに生成される削剥物が、表面粗さの空隙に入り込むなどして、接触部分同士の密着性が上がり、シール性が向上することになる。
【0012】
このように、本発明に係るガスセンサにおいては、該ガスセンサを自動車の排気管に取り付ける場合、その取付作業を簡素化させることができ、該ガスセンサに備えられている取付部と該排気管との接触部分のシール性能を向上させることができる。なお、取付部と被取付部との接触部分におけるテーパ角度は、摩擦応力が発生する角度であればすべての角度において有効である。
【0013】
そして、上述の構成を有するガスセンサにおいて、前記被取付部はナット部を有し、前記取付部は、前記被取付部と接触してシール部を構成するシール部材と、該シール部材に回転自在に取り付けられ、かつ前記ナット部に螺合するボルト部材とを有すると好適である。ガスセンサ全体を回転させることなく、該ガスセンサを排気管に取り付けることができるからである。
【0014】
また、前記ボルト部材が前記シール部材から離脱するのを防ぐための止め具を有するようにしてもよい。この場合、前記止め具の先端部に外方に向かって広がる返しを一体的に形成してもよい。
【0015】
さらに、前記センサ素子を保護するための保護カバーを取り付けるようにしてもよく、該センサ素子と該センサ素子を駆動する駆動回路部とをケーブルを介して一体的に接続するようにしてもよい。これにより、ノイズの影響を受けることなくガス成分を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、センサ素子と駆動回路部とをケーブル接続して一体型構造にすることにより、センサ駆動中にノイズの侵入を防止するようにした高性能のガスセンサを排気管に取り付ける場合でも、その取付作業を簡素化させ、取付精度を格段に向上させ、取付作業に要する時間を短縮できるという効果が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、ガスケットを挿入する従来の構造に比べ、接触面の面粗さの精度に関わらず高シール性を発揮でき、面粗さの精度を向上させる手間が著しく省け、製造コストの高騰を抑えられるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一体型構造のガスセンサの全体図である。
【図2】排気管に取り付けられた本発明に係るガスセンサの組立断面図である。
【図3】本発明に係るガスセンサにおける、取付部と被取付部との接触部分の拡大説明図である。
【図4】実験例における、取付部材の締付けトルク値と、取付部材とボスとの接触部分からのガスの漏れ量との関係を説明するグラフである。
【図5】排気管に取り付けられた従来型ガスセンサの組立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るガスセンサにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態に係るガスセンサ10は、図1に示すように、所定のガス成分(例えば、NOx等)を検出するためのガスセンサであり、このガスセンサ10を駆動させるための駆動回路部12と、ガスを検出する検出部14を有して構成されている。前記駆動回路部12と前記検出部14とはケーブル16で一体的に接続されている。よって、ガスセンサ駆動中にノイズの侵入がなく高精度な検出結果を得ることができる。また、前記駆動回路部12は図示しないケーブルにより自動車の電子制御装置に接続されている。
【0021】
図2に示すように、前記検出部14は、ガス検出機能を有するセンサ素子18と、該センサ素子18に外装されている取付部20とを有し、該取付部20の端部(前記駆動回路部12が接続されてない側)に該センサ素子18を保護するための保護カバー22が固着されている。また、排気管44にはナット部40を具備しているボス42が固着されている。
【0022】
前記取付部20は、前記ボス42と接触し、シール部を構成するシール部材24と、該シール部材24に回転自在に取り付けられたボルト部材26とから構成され、該ボルト部材26を前記ナット部40に螺合させることにより、前記ガスセンサ10が前記排気管44に取り付けられる。
【0023】
前記シール部材24に形成されたテーパ面28の水平方向に対するテーパ角度θ及び前記ボス42に形成されたテーパ面36の水平方向に対するテーパ角度ψは、該シール部材24と該ボス42とが常に接触状態を呈する角度に形成されている。本実施の形態においては、図3に示すように、テーパ角度θが、テーパ角度ψより小さく形成されている。一方、テーパ角度θが、テーパ角度ψより大きく形成されていてもよい。
【0024】
前記シール部材24は環状の載置面30を有し、該載置面30上に前記ボルト部材26が載置されている。前記ボルト部材26の前記載置面30に載置されていない側には、略円形の切り込み部32が形成されている。該切り込み部32には該ボルト部材26が前記シール部材24から離脱するのを防止するための金属製の止め具34が挿入されている。該止め具34の先端部には、外方に向かって広がるように形成された返し38が設けられている。
【0025】
次に、このように構成されるガスセンサ10を排気管44に取り付ける作業について説明する。
【0026】
ガスセンサ10を排気管44に取り付ける場合、まず取付部20を構成するボルト部材26の中心位置と、前記排気管44に固着されているボス42の中心位置とを合わせる。その状態を保持しながら、前記ボルト部材26を前記ボス42に具備されているナット部40にねじ込む。ここで、シール部材24に形成されているテーパ面28が、前記ボス42に形成されているテーパ面36に接触するまで前記ボルト部材26を締め付ける。
【0027】
この際、前記ボルト部材26を締め付ける締付力、即ち、押さえ込み応力によって前記シール部材24と該ボルト部材26との接触部分に摩擦応力が発生する。この摩擦応力によって、前記シール部材24と前記ボルト部材26との接触部分同士が擦れ合い削剥物が生成される。その削剥物が、前記接触部分の表面粗さの空隙に入り込むことにより該接触部分同士の密着性が高められる。従って、該シール部材24と該ボルト部材26との間のシール性能が向上することになり、排気ガスが、外部に漏洩することを可及的に阻止できる。
【0028】
ここで、従来のガスセンサでは、取付時に駆動回路部を含むガスセンサ全体を回転させる必要があるために手間が掛かり、また、取付部であるボルト部材の中心位置と、排気管に固着されているボスの中心位置との位置ずれが惹起され易く取付精度が悪化する懸念がある。
【0029】
これに対して、本実施の形態では、ボルト部材26は、シール部材24に対して回転自在であるため単独で可動することができ、駆動回路部12を含むガスセンサ10全体を回転させる必要がなく前記ボルト部材26のみを回転させるだけでねじ込み作業を行うことができる。これにより、本実施の形態においては、従来の構造に比べ取付作業が一挙に簡素化され、取付精度が格段に向上するとともに、取付作業に要する時間を短縮できるという効果が得られる。
【実施例】
【0030】
ここで、1つの実験例を示す。この実験例(図4参照)は、取付部材の締付けトルク値と、取付部材とボスとの接触部分からのガスの漏れ量との関係について、本実施の形態のガスセンサ(実施例1:実線A参照)と、シール部材としてガスケット6が装着されている従来の構造のガスセンサ(比較例1乃至比較例3)とを比較したものである。
【0031】
この中で、比較例1(破線B参照)は、ボルト部材とボスとの接触面の面粗さの精度が一番悪いものであり、比較例3(二点鎖線D参照)は、ボルト部材とボスとの接触面の面粗さの精度が一番良いものであり、比較例2(一点鎖線C参照)は、ボルト部材とボスとの接触面の面粗さの精度が比較例1と比較例3との中間の粗さを有するものである。
【0032】
前記実験例において、例えば締付けトルク値が20Nmの時、比較例3のガスセンサのガスの漏れ量が一番少なく、比較例1のガスセンサのガスの漏れ量が一番多くなっている。しかしながら、実施例1のガスセンサは、締付けトルク値に関わらずガスの漏れ量はほぼ0になっている。
【0033】
この実験結果から明らかなように、シール部材24とボス42との間に発生した摩擦力により削剥物が生成され、該削剥物によって該シール部材24と該ボルト部材26との間の密着性が高められた本実施の形態のガスセンサ(実施例1)は、ガスケット6を挿入する従来の構造のガスセンサ(比較例1乃至比較例3)に比べ、接触面の面粗さの精度に関わらず高シール性を発揮でき、面粗さの精度を向上させる手間が著しく省け、製造コストの高騰を抑えられる効果が得られる。また、締付けトルク値にシール性能が影響されないことも、取付作業に要する時間を短縮できる要因となっている。
【0034】
なお、この発明に係るガスセンサは、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0035】
10…ガスセンサ 12…駆動回路部
16…ケーブル 18…センサ素子
20…取付部 22…保護カバー
24…シール部材 26…ボルト部材
28…テーパ面 34…止め具
36…テーパ面 38…返し
40…ナット部 42…ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスから所定のガス成分を検出するためのガスセンサにおいて、
検出機能を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を被取付部に取り付けるための取付部とを有し、
前記取付部と前記被取付部とは常に接触し、該取付部と該被取付部との接触部分は互いにテーパ状に形成されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記被取付部はナット部を有し、
前記取付部は前記被取付部と接触してシール部を構成するシール部材と、該シール部材に回転自在に取り付けられ、かつ前記ナット部に螺合するボルト部材とを有していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記ボルト部材が前記シール部材から離脱するのを防ぐための止め具を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項3記載のガスセンサにおいて、
前記止め具の先端部には、外方に向かって広がる返しが一体的に形成されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記センサ素子を保護するための保護カバーが取り付けられることを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記センサ素子と該センサ素子を駆動する駆動回路部とがケーブルを介して一体的に接続されていることを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25947(P2010−25947A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245561(P2009−245561)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【分割の表示】特願2000−26846(P2000−26846)の分割
【原出願日】平成12年2月3日(2000.2.3)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】