説明

ガスセンサ

【課題】よりシール性の向上を図ることのできるガスセンサを得る。
【解決手段】ガスセンサ1は、ガス成分を検出する検出素子2と、検出素子2を嵌挿する挿入孔4aを有するホルダ4と、挿入孔4aの内周に設けられたシール材収納スペース4g内に充填される粉末状のシール材12と、シール材収納スペース4gのシール材装填口4j側に配置され、シール材12を圧縮して検出素子2の外周2eとホルダ4との間をシールする押圧部材13と、を備えている。そして、シール材収納スペース4gの底部4kに、外周部に位置し、検出素子2に向かうにつれて深くなる方向に傾斜する受圧傾斜面4lと、内周部に位置し、検出素子2に対して略垂直となる受圧平坦面4mと、を形成し、押圧部材13のシール材押圧面13aに傾斜面201を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスセンサとして、ガスの検出素子と当該検出素子を嵌挿したホルダとの間に、タルク粉末を充填するスペースを設け、押圧部材によってタルク粉末を押圧して圧縮することで、検出素子の外面とホルダの内周面との間をシールするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、スペースの底部に、外周部に位置し、検出素子に向かうにつれて深くなる方向に傾斜した受圧傾斜面と、内周部に位置して検出素子に対して略垂直に延在する受圧平坦面と、が形成されている。
【0004】
このように、スペースの底部に受圧傾斜面と受圧平坦面とを形成すれば、押圧部材によるタルク粉末の圧縮時にタルク粉末が流動しやすくなり、受圧傾斜面を設けない場合に比べてシール性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−286684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のガスセンサでは、押圧部材の押圧面が検出素子の軸に対して略垂直に延在する平坦面となっているため、当該平坦面でタルク粉末を押圧すると、検出素子の軸方向の押圧力がタルク粉末に作用することとなる。このように、検出素子の軸方向のみに押圧力を作用させた場合、受圧傾斜面近傍のタルク粉末に押圧部材による押圧力が伝わりにくかった。そのため、スペース内のタルク粉末が効率よく流動せず、検出素子の外面とホルダの内周面との間のシール性が悪化してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、よりシール性の向上を図ることのできるガスセンサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シール材収納スペースのシール材装填口側に配置され、シール材収納スペース内に充填されたシール材を圧縮することで検出素子の外周とホルダとの間をシールする押圧部材のシール材押圧面に、傾斜面を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押圧部材のシール材押圧面に傾斜面を設けたため、押圧部材でシール材を圧縮した際に、傾斜面によって検出素子の軸方向と交差する方向への押圧力を作用させることができる。その結果、従来の構造と比べ、押圧部材による押圧力をシール材収納スペースの底部近傍のシール材に伝達させることができるようになる。そのため、シール材収納スペース内に充填された粉末状のシール材をより効率よく流動させることができ、検出素子の外面とホルダの内周面との間のシール性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる酸素センサを排気管に取り付けられた状態で示す側面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態にかかる酸素センサの断面図(軸方向に沿った断面図)である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態にかかる検出素子の要部を拡大して示す断面図(軸方向に沿った断面図)である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態にかかる検出素子を示す図であって、(a)は、検出素子の側面図、(b)は、図4(a)のA−A断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態にかかる酸素センサのワッシャを示す図であって、(a)は平面図、(b)は、図5(a)のB−B線断面図である。
【図6】図6は、本発明の比較例として示す従来の酸素センサの要部断面図である。
【図7】図7は、本発明の比較例として示す従来のワッシャを用いて押圧した際に、充填剤に作用する応力を模式的に示す応力分布図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態にかかるワッシャを用いて押圧した際に、充填剤に作用する応力を模式的に示す応力分布図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態にかかる酸素センサの要部拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態にかかる酸素センサのワッシャを示す図であって、(a)は平面図、(b)は、図8(a)のC−C線断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態にかかるワッシャを用いて押圧した際に、充填剤に作用する応力を模式的に示す応力分布図である。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態にかかる酸素センサの要部拡大断面図である。
【図13】図13は、本発明の第3実施形態にかかるワッシャを用いて押圧した際に、充填剤に作用する応力を模式的に示す応力分布図である。
【図14】図14は、本発明の第4実施形態にかかる酸素センサの要部拡大断面図である。
【図15】図15は、本発明の第4実施形態にかかるワッシャを用いて押圧した際に、充填剤に作用する応力を模式的に示す応力分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具現化した実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、内燃機関を搭載した自動車や2輪車等の車両の排気管に装着された空燃比検出用の酸素センサを例示する。
【0012】
なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる酸素センサ(ガスセンサ)1は、図1に示すように、エンジン101に接続された排気管102における触媒103とエンジン101との間の位置(触媒103の上流側)もしくは触媒の下流側に設けられるものである。
【0014】
また、図2に示すように、本実施形態にかかる酸素センサ1は、外面に段付きの外形略円柱状をなしている。
【0015】
この酸素センサ1は、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出する検出素子2と、検出素子2が挿通されている筒状のホルダ4と、このホルダ4と検出素子2との間をシールし、且つ、検出素子2をホルダ4内に位置決めするシール部5と、を備えている。さらに、酸素センサ1は、検出素子2に接続された端子6と、ホルダ4の軸方向の一端部(上端部)側に配置され、端子6を支持している絶縁体である碍子7と、ホルダ4の軸方向の一端部(上端部)側に配置され、碍子7の外面を覆っているケーシング8と、ホルダ4の他端部(下端部)に固定されるとともにホルダ4より突出し、検出素子2の外面を覆うプロテクタ9と、を備えている。
【0016】
図2ないし図4に示すように、本実施形態に示す検出素子2は、断面略円柱状をした棒状に形成され、その軸方向の一端部(上端部)には、後述する出力電極25a、およびヒータ電極22aを有する接続部2aが形成され、その軸方向の他端部(下端部)には酸素検知部2bが形成されている。詳しくは、検出素子2は、接続部2aを有する小径円柱部2cとこの小径円柱部2cの外径D1よりも略大径に形成された大径円柱部2dとを有する段付き円柱状に形成されて小径円柱部2cに接続部2aが形成され、大径円柱部2dに酸素検知部2bが形成されている。小径円柱部2cの先端は、その全周に亘って面取りが施されている。
【0017】
出力電極25aは、検出素子2の外部に対して露出しており、出力電極25aと酸素検知部2bとは、相互に電気的に接続されている。検出素子2では、酸素検知部2bが被測定ガスである排ガスに含まれる特定ガス成分として酸素を検出し、その検出結果として酸素濃度を出力電極25aから電気信号で出力するようになっている。
【0018】
そして、図2および図3に示すように、ホルダ4には、検出素子2が挿入されている素子挿入孔4aが形成されている。この素子挿入孔4aに挿入された検出素子2は、その酸素検知部2bがホルダ4の軸方向の他方側に露出している一方、接続部2aがホルダ4の軸方向の一方側に露出している。
【0019】
ホルダ4は、その上部に上方から見て六角形状を有する六角部4bを有し、この六角部4bに工具を嵌合してホルダ4に回転トルクを容易に作用させることができるようになっている。ホルダ4の下部の外面には、ネジ部4cが形成されている。ホルダ4の六角部4bとネジ部4cとの間には、ガスケット35が配置されている。
【0020】
また、ホルダ4の六角部4bの上面には、凸部4dが形成されている。凸部4dの上面は、碍子7の下端面7aと当接し碍子7におけるホルダ4側の端部(下端部)を支持する位置決め面4hとなっている。この凸部4dには、溝部4eが形成されている。そして、この溝部4eの内周壁が折り曲げられて加締め部4fとなっている。このホルダ4は、ステンレス等の金属によって形成されて、導電性を有している。
【0021】
シール部5は、素子挿入孔4aの軸方向の一端部に位置する粉充填スペース(シール材収納スペース)4gと、この粉充填スペース4gの近傍に設けられた加締め部4fとを有している。粉充填スペース4gは、素子挿入孔4aの一部がホルダ4の先端側(酸素検知部2b側)からホルダ4の後端側(接続部2a側)へ向けて拡径されることで形成されている。
【0022】
具体的には、図3に示すように、粉充填スペース4gの底部4kに、外周部に位置して検出素子2に向かうにつれて深くなる方向に傾斜(図3において内周かつ下方に向けて傾斜)する受圧傾斜面4lと、内周部に位置して検出素子2に対して略垂直に延在する受圧平坦面4mと、が形成されている。このように、本実施形態では、粉充填スペース4gの底部4kは、断面逆台形状のすり鉢状に形成されている。
【0023】
そして、粉充填スペース4gには、粉末状の充填剤(シール材)12がシール材装填口4jから充填されるとともに、充填剤12を押圧するワッシャ(押圧部材)13が収容されている。すなわち、ワッシャ(押圧部材)13は、粉充填スペース4gのシール材装填口4j側に配置されている。そして、シール部5は、検出素子2の径方向で、検出素子2の中心へ向かう方向へ全周加締め等の手段を用いて曲げ加工することで加締め変形した加締め部4fによってワッシャ13を圧縮し、この圧縮力で充填剤12を圧縮状態で充填することによって検出素子2の外面2eとホルダ4の内周面4iとの間をシールし、且つ、検出素子2をホルダ4に位置決めしている。つまり、充填剤12は、検出素子2をホルダ4に位置決めし、ワッシャ13は、充填剤12を押圧して充填剤12に検出素子2の位置決めをさせている。
【0024】
このシール部5による検出素子2の外面2eとホルダ4の内周面4iとの間のシールによって、ホルダ4の内部に外部の水分等が浸入するのが遮断されるとともに、排気管102の内部の排気ガス等がケーシング8の内部に浸入するのが遮断される。
【0025】
また、本実施形態では、充填剤12として未焼結のタルクを用い、当該充填剤12をワッシャ13により押圧することでシール部5を形成している。なお、タルクの替わりにステアタイト等のセラミック粉を用いることも可能である。
【0026】
本実施形態における端子6は、検出素子2の出力電極25a、アース電極(図示せず)および一対のヒータ電極22aに対応して4つ設けられている。これら4つの端子6は、酸素センサ1の軸心周りに略90度間隔に配置されている。この端子6は、板素材を折り曲げ加工等することにより形成されており、その一端部には、略板状の接触部6aが形成されている。端子6の他端部は、ばね性を有する形状に形成されている。具体的には、端子6の他端部には、板ばねである鉤状のばね部6bが形成されている。このばね部6bは、板素材を折返し加工することによって形成される。
【0027】
端子6は、ホルダ4の一端部側に配置されている。そして、ホルダ4の軸方向の一方にホルダ4から露出した検出素子2の出力電極25a、アース電極(図示せず)および一対のヒータ電極22aに対して、ばね部6bがそのばね性を利用して圧接している。
【0028】
端子6の接触部6aは、結合部14を介してハーネス15の後述する芯線15aに接続されている。接触部6aは、結合部14に例えばスポット溶接によって固着されている。ここで、結合部14は、金属材料などの導電性を有する材料によって形成されている。よって、検出素子2の酸素検知部2bは、出力電極25a、アース電極(図示せず)、端子6および結合部14を介して、ハーネス15の芯線15aと電気的に接続されている。
【0029】
ハーネス15は、検出素子2の出力電極25aおよび一対のヒータ電極22aに対応して3つ設けられている。ハーネス15は、芯線15aとこの芯線15aを被覆している被覆材15bとから構成されている。芯線15aの端部は被覆材15bから露出しており、この芯線15aの露出部分が結合部14に接続されている。
【0030】
ケーシング8は、碍子7を覆う筒状に形成されている。このケーシング8の軸方向一端部の内側には、シーリングラバー16が配置され、このシーリングラバー16を介してハーネス15がケーシング8の内部から外部に導き出されている。シーリングラバー16は、ケーシング8の加締め部8aによる加締めによって、径方向であってシーリングラバー16の中心部に向かう方向に縮径された状態でケーシング8に固定されている。この加締めによってシーリングラバー16とハーネス15との間、およびシーリングラバー16とケーシング8との間のシール性(気密性)が確保されている。シーリングラバー16は、フッ素ゴム等の耐熱性を有する材質から構成されている。
【0031】
ケーシング8の軸方向の他端部は、ホルダ4に嵌着されるとともに、例えばレーザ溶接等の溶接(例えば、全周溶接)によってホルダ4に固定されている。この溶接によってケーシング8とホルダ4との間のシール性が確保されている。なお、この溶接部分は、図2中に符号17で示している。ケーシング8の内形は、碍子7の外形よりも十分に大きく形成され、これによってケーシング8と碍子7との間には、空隙部36が形成されている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態による碍子7は、外形略円柱状に形成されてホルダ4の位置決め面4hに起立状態で配置されている。この碍子7は、絶縁材料からなり、その絶縁材料は、例えばセラミックである。
【0033】
碍子7の下端面(他端面)7aには、軸方向一方側に向けて凹む凹部7dが形成されている。この凹部7dの内周面7eに沿って、複数の端子6のばね部6bが配置され、これら複数の端子6の間に検出素子2の接続部2aが嵌合されるようになっている。すなわち、検出素子2と碍子7とが組み付けられた状態では、端子6のばね部6bが、碍子7の凹部7dの内周面7eと検出素子2の接続部2aの外面との間に形成される空間Sに配置され、当該凹部7dの内周面7eと検出素子2の接続部2aとに挟持されるようになっている。このように挟持された端子6は、当該挟持によってばね部6bに生じる反発力により検出素子2の接続部2aに圧接し、以て、当該接続部2aと電気的に接続する。
【0034】
凹部7dの天井部7f(碍子7の上部)には、端子6が貫通挿入される取付孔7gが周方向に間隔をもって複数形成されている。本実施形態における端子6は、検出素子2の出力電極25a、アース電極(図示せず)および一対のヒータ電極22aに対応して4つ設けられており、これらの端子6を碍子7の周方向に、例えば等配置した場合には、これらの端子6に挟持される検出素子2を凹部7dの略中心に配置しやすくなる。
【0035】
ここで、碍子7と検出素子2の接続部2aとの間に形成された空間Sは、シール部5、シーリングラバー16およびケーシング8とホルダ4との溶接部分17によって略気密性が保持されるが、ハーネス15における芯線15aと被覆材15bとの微小な隙間のみを介して外部と連通しており、かかる連通によって、ケーシング8の内部に酸素濃度検出に用いる基準大気が導入されるようになっている。
【0036】
碍子7におけるホルダ4側とは反対側の端部である上端部7hにおいては、その外周面に、周方向が該碍子7の周方向に沿った円環状の段差部7bが形成されている。この段差部7bには、弾性部材37が外嵌されている。ここで、この段差部7bに対応してケーシング8にも円環状の段差部8bが形成されており、碍子7の段差部7bとケーシング8の段差部8bとによって弾性部材37が圧縮状態で挟持されている。弾性部材37は、例えばCリング状やOリング状に形成されている。かかる構造は、弾性部材37の弾性力によって碍子7をホルダ4へ押し付けるとともに、碍子7の振動を抑制している。また、酸素センサ1が外力によって振動した場合、弾性部材37が弾性変形することで、碍子7の振れが吸収または抑制されるので、酸素センサ1の耐振性を向上させることができる。
【0037】
プロテクタ9は、有底筒状で、且つ、2重構造に形成されている。プロテクタ9とホルダ4との固定は、例えばレーザ溶接等による全周溶接または部分溶接や全周加締め、部分加締め等によってなされている。図2中には、当該固定が溶接の場合の溶接箇所19が示されている。
【0038】
プロテクタ9は、内側プロテクタ9aおよび外側プロテクタ9bを有している。これら内側プロテクタ9aおよび外側プロテクタ9bは、例えば金属材料、セラミック材料等によって形成されている。プロテクタ9の内部には、ホルダ4から下方に突出した検出素子2の酸素検知部2bが挿入されている。かかる構造のプロテクタ9は、検出素子2の酸素検知部2bを覆うことで、酸素検知部2bを排気ガス中の異物等から保護する。
【0039】
プロテクタ9には、ガス流通用の流通孔9cが形成されており、検出ガスは、流通孔9cを経由してプロテクタ9の内部に進入して、酸素検知部2bに至る。
【0040】
かかる構成の酸素センサ1は、ホルダ4のネジ部4cを排気管102のネジ孔102aに螺入することにより排気管102に固定され、プロテクタ9で覆われた箇所が排気管102内に突出された状態で配置される。酸素センサ1と排気管102との間の気密および液密は、ガスケット35によって保持される。
【0041】
このような構成の酸素センサ1において、排気管102内を流通するガスがプロテクタ9の流通孔9cより内部に流入すると、そのガス内の酸素が検出素子2の酸素検知部2bに入り込む。すると、酸素検知部2bがガスの酸素濃度を検出し、この検出した酸素濃度を電気信号に変換する。この電気信号の情報が端子6およびハーネス15を経て外部に出力される。
【0042】
次に検出素子2にかかる構成について説明する。
【0043】
検出素子2は、図4に示すように、絶縁材料であるアルミナ等のセラミック材料により形成される細長い円柱ロッド状の基体21を有し、この基体21に接続部2aを構成する出力電極25aや、酸素検知部2bが形成されている。検出素子2は、このように基体21をロッド状に形成することにより、酸素センサ1をよりコンパクトな構成とすることができるとともに、取り付け時の方向やガスの流れ方向等による影響を受けなくすることができる。
【0044】
基体21の表面21a上には、ヒータパターン22が形成されており、このヒータパターン22は、絶縁層23によって被覆されている。そして、この基体21は、ヒータパターン22および絶縁層23とともに、ヒータ部28を構成している。
【0045】
ヒータパターン22は、例えばアルミナを混合した白金等の発熱性導体材料からなり、基体21の表面21aに曲面印刷等の手段を用いて形成されている。また、ヒータパターン22には、基体21の先端側から基体側に向けて延びる一対のリード部(図示せず)が一体的に連設されている。これらのリード部における基体21の基端側はヒータ電極22aとなっており、これらのヒータ電極22aが、図2に示すように端子6に接続されている。そして、ヒータパターン22は、外部のヒータ電源(図示せず)から各リード部を介して給電されることにより、例えば720〜800℃程度の温度に基体21を加熱する。
【0046】
絶縁層23は、ヒータパターン22をリード部と一緒に径方向外側から保護するために、例えばアルミナ等のセラミック材料を曲面印刷等の手段で基体21の外周側に厚膜印刷することにより形成されている。
【0047】
また、基体21の表面21a上には、ヒータパターン22とは別の位置に機能層30および当該機能層30の外面を覆う保護層31等が曲面印刷等の手段を用いて積層化するように形成されている。本実施形態では、この機能層30および保護層31は、ヒータパターン22に対して基体21の表面21a上における径方向の対向位置に設けられている。
【0048】
機能層30は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層24と、この固体電解質層24の基体21側に位置する参照電極層25と、この参照電極層25に対して固体電解質層24の反対側に位置する検出電極層26と、固体電解質層24の基体21側に位置し、固体電解質層24に向けて基準ガスである外気(大気)を導く空気通過層27を含んで構成されている。
【0049】
固体電解質層24は、例えばジルコニアの粉体中に所定重量%のイットリアの粉体を混合させてペースト状物により形成される。そして、固体電解質層24は、参照電極層25と検出電極層26との間で、周囲の酸素濃度差に応じた起電力を発生させ、その厚さ方向に酸素イオンを輸送する。
【0050】
これにより、固体電解質層24と一対の電極層である参照電極層25および検出電極層26とによって、酸素濃度を電気信号として取り出す酸素測定部29を形成する。
【0051】
また、固体電解質層24の一部は、空気通過層27に接している。すなわち、空気通過層27は、少なくとも基体21と固体電解質層24との界面に形成されている。
【0052】
参照電極層25および検出電極層26は、それぞれ白金等からなる導電性で、かつ酸素が通過できる材料により形成されている。そして、参照電極層25および検出電極層26にはそれぞれリード部(図示せず)が一体的に延設されており、これらのリード部を用いて参照電極層25と検出電極層26との間に現れた出力電圧を検出できるようになっている。詳しくは、これらリード部における参照電極層25および検出電極層26側とは反対側の端部が、電極部としての出力電極25a、アース電極(図示せず)となっている。アース電極および出力電極25aは、基体21の軸方向の一端側に保護層31よりも延出して外部に露出している(図示せず)。即ち、アース電極および出力電極25aは、検出素子2の外周に設けられている。
【0053】
空気通過層27は、例えばアルミナの粉体(所定重量%のジルコニアの粉体を混合してもよい)からなるペースト状物を曲面印刷等の手段を用いて基体21の表面21aの外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0054】
そして、空気通過層27は、連続気泡からなる空孔を有した多孔質構造に形成され、検出素子2の周囲を流れる被測定ガスの一部を、空気通過層27における検出素子2の軸方向の一端側(図2中上側)の端面から当該軸方向へと空気通過層27の内部に拡散させつつ、この被測定ガスを参照電極層25に向けて透過させる機能を有している。
【0055】
また、本実施形態では、空気通過層27の固体電解質層24と対向する領域は、固体電解質層24の面積よりも小さく形成されて、絶縁性材料(例えばアルミナ)と固体電解質(例えばジルコニア)とのセラミック混合体により形成されることで、固体電解質層24の焼結時において固体電解質層24と基体21との間の応力差を緩和する機能も備えている。
【0056】
また、空気通過層27の固体電解質層24と対向する領域を、参照電極層25の領域よりも大きい面積で構成することで、拡散された被測定ガスを参照電極層25へ良好に透過させることができるようにしている。
【0057】
また、空気通過層27は、充填剤12によって圧縮される。詳しくは、粉充填スペース4gがホルダ4の素子挿入孔4aの全外周に配置されており、ワッシャ13を加締め部4fによって検出素子2の径方向内側へ向けて全周加締め等の手段を用いて曲げ加工することで、充填剤12が加圧状態で充填され、検出素子2をホルダ4に位置決めすることができる。この加圧状態で充填された充填剤12は、ホルダ4と検出素子2との間の隙間等を塞ぎ、ホルダ4内に外部の水分等が浸入するのを遮断するとともに、排気管内の排気ガス等がケーシング8側に侵入するのを遮断する機能を有している。そして、当該構造によって、充填剤12が充填される部分に対応する空気通過層27の受圧部分2fが圧縮される。
【0058】
さらに、固体電解質層24を除いた機能層30の外面には、保護層31が形成されており、この保護層31と絶縁層23の外面には、拡散層32が保護層31や固体電解質層24を覆うように形成されており、この拡散層32の外面には、スピネル保護層33が拡散層32の外面を含めた領域を覆うように形成されている。
【0059】
保護層31は、被測定ガス中の酸素が内面側に透過できない材料、例えば、アルミナ等のセラミック材料より形成されている。そして、この保護層31は、固体電解質層24の一部外面および両電極層25,26の領域を除いて、例えば検出電極層26が露出するように形成されている。
【0060】
拡散層32は、測定ガス中の有害ガス、ダスト等は内面側に通過できないが、測定ガス中の酸素は通過できる材質、例えば、アルミナと酸化マグネシウムの混合物の多孔質構造体によって形成されている。
【0061】
スピネル保護層33は、保護層31、拡散層32とともに、機能層30,ヒータ部28の外面を覆っており、測定ガス中の酸素を通過できる多孔質構造をしており、保護層31より粗い多孔質体によって形成されている。
【0062】
ところで、上述したように、粉充填スペース4gの底部4kには、外周部に位置して検出素子2、すなわち、中心に向かって深くなる方向に傾斜する受圧傾斜面4lと、内周部に位置して検出素子2に対して略垂直に延在する受圧平坦面4mと、が形成されている。
【0063】
このように、粉充填スペース4gの底部4kの外周側に受圧傾斜面4lを形成することで、充填剤12がワッシャ13によって押圧された際に、底部4kの外周部(受圧傾斜面4l)近傍の充填剤12を中心部方向、つまり検出素子2に向かう方向に押しやることができるようにしている。
【0064】
しかしながら、従来のシール部5Uのように、ワッシャ13の充填剤12を押圧する面が、検出素子2に対して垂直となる平坦面aとなっている場合、ワッシャ13を押圧力Fで押圧すると、充填剤12が平坦面aによって押圧されるため、充填剤12には検出素子2の軸方向(図6中上下方向)の押圧力が作用する。このように、検出素子2の軸方向のみに押圧力Fを作用させた場合、図7に示すように、ワッシャ13による押圧力が粉充填スペース4gの底部4k近傍の充填剤12まで伝わりにくい。そのため、シール部5U内に充填された粉末状の充填剤12は、あまり効率よく流動せず、シール部5U内に、図6に示すような空洞部Hが形成されるおそれがある。
【0065】
このように、シール部5U内に空洞部Hが形成されると、時間と共にシール部5のシール性が劣化し、排気管102内のハイドロカーボンがシール部5U内に浸入するおそれがある。そして、浸入したハイドロカーボンが、エンジン始動時等に酸素センサ1内部に入り込むことで、センサの精度が低下してしまうという問題があった。
【0066】
さらに、シール部5U内に空洞部Hが形成されると、排気管102内のハイドロカーボンがシール部5U内に浸入し、空洞部Hに吸着されるおそれがある。そして、空洞部Hに吸着されて溜まったハイドロカーボンが、エンジン始動時等に酸素センサ1内部に入り込むことで、センサの精度が低下してしまう上、シール部5のシール性が悪化してしまうという問題があった。
【0067】
また、空洞部Hの形成を抑制するために、ワッシャ13による充填剤12の押圧力Fを高めると、検出素子2への負担が大きくなり、場合によっては検出素子2が破損してしまうおそれがある。
【0068】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、粉充填スペース4gのシール材装填口4j側に配置されたワッシャ13のシール材押圧面13aに、第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を設けるようにした。
【0069】
具体的には、外周から中心に向かうにつれて厚さが増すようにワッシャ13を形成することで、ワッシャ13の外周部に第1の押圧傾斜面201を形成した。また、ワッシャ13の内周部には面取部202を形成し、第1の押圧傾斜面201と面取部202との間(第1の押圧傾斜面201の内周側)に、検出素子2に対して略垂直に延在する第1の押圧平坦面203を形成した。そして、加締め部4fの加締めによりワッシャ13を圧縮した際に、第1の押圧傾斜面201、面取部202および第1の押圧平坦面203で充填剤12を押圧するようにした。
【0070】
このように、本実施形態では、ワッシャ13のシール材押圧面13aは、受圧傾斜面4lと同方向に傾斜する第1の押圧傾斜面201と、受圧平坦面4mと略平行な第1の押圧平坦面203と、面取部202と、を有している。
【0071】
このとき、シール材押圧面13aのうち第1の押圧傾斜面201が占有する領域を、面取部202や第1の押圧平坦面203の占有する領域よりも十分に広く設定するのが好適である。こうすれば、シール部5内のより広い領域に、検出素子2の軸方向と交差する方向の押圧力を作用させることができるようになる。
【0072】
また、図3に示すように、第1の押圧傾斜面201の傾き、すなわち、第1の押圧傾斜面201の検出素子2の軸に垂直な垂直面に対する傾斜角度をθ1とし、受圧傾斜面41の傾き、すなわち、垂直面に対する底部4kの受圧傾斜面4lの傾斜角度をθ2とした場合、第1の押圧傾斜面201の傾きが、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ1≦θ2)設定するのが好適である。こうすれば、シール部5に作用する押圧力がシール部5の外周側に向きすぎてしまうのを抑制することができる。すなわち、第1の押圧傾斜面201によって充填剤12を受圧傾斜面41に向けて押圧することができる。そのため、ワッシャ13による押圧力をより効率的に底部4k近傍の充填剤12に伝達させることができ、底部4k近傍の充填剤12を中心部方向へ流動させることができる。
【0073】
また、ワッシャ13は、図5に示すように、中心部に検出素子2を挿通する中央開口部13bを有するリング状に形成されている。そして、ワッシャ13の加締め部4fによる加締め力が入力される一端13c側の内周部および外周部には、それぞれ面取部13d、13eが形成されている。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、ワッシャ(押圧部材)13のシール材押圧面13aに第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を設けている。このように、シール材押圧面13aに第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を設けることで、粉末状の充填剤(シール材)12をワッシャ13により押圧力Fで圧縮した際に、第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201によって下方かつ外周方向(検出素子2の軸方向と交差する方向)への押圧力F1を充填剤12に作用させることができる。そのため、ワッシャ13による押圧力を粉充填スペース4gの底部4k近傍の充填剤12に伝達させることができる。すなわち、図8に示すように、充填剤12を平坦面aによって押圧した場合(図7参照)に比べ、底部4k近傍の充填剤12にかかる応力を大きくすることができる。その結果、粉充填スペース(シール材収納スペース)4g内に充填された粉末状の充填剤12をより効率よく流動させることができるようになるため、シール部5内に空洞部が形成されてしまうのが抑制され、以て、シール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0075】
ここで、図8では、本実施形態にかかるワッシャ13と近似した形状のワッシャ(シール材押圧面が第1の押圧傾斜面と第1の押圧平坦面のみを有するワッシャ)を用いて押圧した場合の応力分布図を示している。すなわち、図8には、本実施形態にかかるワッシャ13で押圧した場合の応力分布と近似した応力分布が示されている。
【0076】
この図8をみると、シール材押圧面13aに第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を設けることで、従来のように傾斜面を設けない場合(図7参照)に比べ、シール部5内の充填剤12に生じる応力が全体的に大きくなることが理解される。
【0077】
このように、シール材押圧面13aに第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を設けることで、シール部5内の充填剤12に生じる応力が全体的に大きくなるため、ワッシャ13による充填剤(シール材)12の圧縮の際に、過大な押圧力Fを付加する必要がなくなり、検出素子2の破損を抑制することができるようになる。
【0078】
また、本実施形態によれば、押圧傾斜面201の傾きを、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ1≦θ2)設定している。そのため、底部4kの受圧傾斜面4l近傍の充填剤12に中心部方向に作用する分力が生じ、底部4kの受圧傾斜面4l近傍の充填剤12をより効率的に中心方向に向けて流動させることができるようになる。
【0079】
すなわち、押圧傾斜面201の傾きを、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ1≦θ2)設定することで、粉充填スペース(シール材収納スペース)4g内の充填剤12の流動性をより一層高めることができ、以て、シール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0080】
また、本実施形態によれば、第1の押圧傾斜面201の内周側に、検出素子2に対して略垂直に延在する第1の押圧平坦面203を形成している。そのため、受圧平坦面4m近傍の充填剤12に外周方向に作用する分力が生じてしまうのを抑制することができる。したがって、充填剤12の中心側の密度が外周側に比べて低下してしまうのを抑制することができ、前述の効果に加えてさらにシール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、検出素子2の破損を抑制しつつシール部5のシール性の向上を図ることができるため、より長期に亘って排気ガス中の特定ガス成分の濃度を高精度に検出できるようになり、ひいては、酸素センサ1の寿命を延ばすことができるようになる。
【0082】
また、ワッシャ13のシール材押圧面13aに第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)201を形成するだけで、シール部5のシール性を高めることができるため、ワッシャ13の構成の簡素化を図りつつ、ワッシャ13を容易に製造することができるようになるという利点もある。
【0083】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる酸素センサ1は、基本的に上記第1実施形態の構成とほぼ同様であり、ワッシャ13のシール材押圧面13aに、傾斜面が形成されている。
【0084】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、図9に示すように、第1の押圧傾斜面211がシール材押圧面13aの全体に亘って形成されている点にある。
【0085】
すなわち、本実施形態にかかるワッシャ13は、図10に示すように、中心部に検出素子2を挿通する中央開口部13bを有するリング状に形成されている。そして、外周から中心に向かうにつれて厚さが増すようにワッシャ13を形成することで、ワッシャ13のシール材押圧面13aの全体に第1の押圧傾斜面211を形成している。
【0086】
そして、本実施形態においても、図10に示すように、第1の押圧傾斜面211の傾き、すなわち、第1の押圧傾斜面211の検出素子2の軸に垂直な垂直面に対する傾斜角度をθ3とし、受圧傾斜面41の傾き、すなわち、垂直面に対する底部4kの受圧傾斜面4lの傾斜角度をθ2とした場合、第1の押圧傾斜面211の傾きが、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ3≦θ2)設定している。
【0087】
また、ワッシャ13の加締め部4fによる加締め力が入力される一端13c側の内周部および外周部には、それぞれ面取部13d、13eが形成されている。
【0088】
かかる構成とすることで、粉末状の充填剤(シール材)12をワッシャ13により押圧力Fで圧縮した際に、第1の押圧傾斜面(押圧傾斜面)211によって下方かつ外周方向(検出素子2の軸方向と交差する方向)への押圧力F1を充填剤12に作用させることができる。したがって、充填剤12を図6に示す平坦面aによって押圧した場合に比べ、底部4k近傍の充填剤12にかかる応力を大きくすることができる(図11参照)。その結果、粉充填スペース(シール材収納スペース)4g内に充填された粉末状の充填剤12をより効率よく流動させることができるようになるため、シール部5内に空洞部が形成されてしまうのが抑制され、以て、シール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0089】
また、第1の押圧傾斜面211をシール材押圧面13aの全体に亘って形成した場合にあっても、上記第1実施形態と同様に、従来のように傾斜面を設けない場合(図7参照)に比べ、シール部5内の充填剤12に生じる応力が全体的に大きくなることが理解される(図11参照)。なお、図11においても、本実施形態にかかるワッシャ13で押圧した場合の応力分布と近似した応力分布が示されている。
【0090】
このように、本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0091】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる酸素センサ1は、基本的に上記第1実施形態の構成とほぼ同様であり、ワッシャ13のシール材押圧面13aに、傾斜面が形成されている。
【0092】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、ワッシャ13のシール材押圧面13aに、粉充填スペース4gの底部4kの受圧傾斜面41に対して逆方向に傾斜する第2の押圧傾斜面221を形成した点にある。
【0093】
すなわち、本実施形態にかかるワッシャ13は、図12に示すように、中心部に検出素子2を挿通する中央開口部13bを有するリング状に形成されている。そして、中心から外周に向かうにつれて厚さが増すようにワッシャ13を形成することで、ワッシャ13のシール材押圧面13aの内周部に第2の押圧傾斜面221を形成している。
【0094】
また、ワッシャ13の外周部には面取部222が形成され、第2の押圧傾斜面221と面取部222との間(第2の押圧傾斜面221の外周側)に、検出素子2に対して略垂直に延在する押圧平坦面223が形成されている。
【0095】
このとき、第2の押圧傾斜面221の傾き、すなわち、第2の押圧傾斜面221の検出素子2の軸に垂直な垂直面に対する傾斜角度をθ4とし、受圧傾斜面41の傾き、すなわち、垂直面に対する底部4kの受圧傾斜面4lの傾斜角度をθ2とした場合、第2の押圧傾斜面221の傾きが、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ4≦θ2)設定している。なお、この場合、それぞれの傾斜角度θ2、θ4は絶対値で表してある。
【0096】
また、ワッシャ13の加締め部4fによる加締め力が入力される一端13c側の内周部および外周部には、それぞれ面取部13d、13eが形成されている。
【0097】
かかる構成とすることで、粉末状の充填剤(シール材)12をワッシャ13により押圧力Fで圧縮した際に、第2の押圧傾斜面(押圧傾斜面)221によって、下方かつ中心方向(検出素子2の軸方向と交差する方向)への押圧力F2を充填剤12に作用させることができる。したがって、充填剤12を図6に示す平坦面aによって押圧した場合に比べ、底部4k近傍の充填剤12にかかる応力を大きくすることができる(図13参照)。その結果、粉充填スペース(シール材収納スペース)4g内に充填された粉末状の充填剤12をより効率よく流動させることができるようになるため、シール部5内に空洞部が形成されてしまうのが抑制され、以て、シール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0098】
また、シール材押圧面13aに第2の押圧傾斜面(押圧傾斜面)221を設けた場合にあっても、上記第1実施形態と同様に、従来のように傾斜面を設けない場合(図7参照)に比べ、シール部5内の充填剤12に生じる応力が全体的に大きくなることが理解される(図13参照)。なお、図13においても、本実施形態にかかるワッシャ13で押圧した場合の応力分布と近似した応力分布が示されている。
【0099】
このように、本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる酸素センサ1は、基本的に上記第3実施形態の構成とほぼ同様であり、ワッシャ13のシール材押圧面13aに、傾斜面が形成されている。
【0101】
ここで、本実施形態が上記第3実施形態と主に異なる点は、第2の押圧傾斜面231がワッシャ13の外周部に形成された点にある。
【0102】
すなわち、本実施形態にかかるワッシャ13は、図14に示すように、中心部に検出素子2を挿通する中央開口部13bを有するリング状に形成されている。そして、中心側から外周側に向かうにつれて厚さが増すようにワッシャ13を形成することで、ワッシャ13のシール材押圧面13aの外周部に第2の押圧傾斜面231を形成している。また、第2の押圧傾斜面231の内周側には、検出素子2に対して略垂直に延在する押圧平坦面232が形成されている。
【0103】
このとき、第2の押圧傾斜面231の傾き、すなわち、第2の押圧傾斜面231の検出素子2の軸に垂直な垂直面に対する傾斜角度をθ5とし、受圧傾斜面41の傾き、すなわち、垂直面に対する底部4kの受圧傾斜面4lの傾斜角度をθ2とした場合、第2の押圧傾斜面231の傾きが、受圧傾斜面41の傾き以下となるように(θ5≦θ2)設定している。なお、この場合、それぞれの傾斜角度θ2、θ5は絶対値で表してある。
【0104】
また、ワッシャ13の加締め部4fによる加締め力が入力される一端13c側の内周部および外周部には、それぞれ面取部13d、13eが形成されている。
【0105】
かかる構成とすることで、粉末状の充填剤(シール材)12をワッシャ13により押圧力Fで圧縮した際に、第2の押圧傾斜面(押圧傾斜面)231によって、下方かつ中心方向(検出素子2の軸方向と交差する方向)への押圧力F2を充填剤12に作用させることができる。したがって、充填剤12を図6に示す平坦面aによって押圧した場合に比べ、底部4k近傍の充填剤12にかかる応力を大きくすることができる(図15参照)。その結果、粉充填スペース(シール材収納スペース)4g内に充填された粉末状の充填剤12をより効率よく流動させることができるようになるため、シール部5内に空洞部が形成されてしまうのが抑制され、以て、シール部5のシール性をより一層高めることができるようになる。
【0106】
また、シール材押圧面13aに第2の押圧傾斜面(押圧傾斜面)231を設けた場合にあっても、上記第1実施形態と同様に、従来のように傾斜面を設けない場合(図7参照)に比べ、シール部5内の充填剤12に生じる応力が全体的に大きくなることが理解される(図15参照)。なお、図15においても、本実施形態にかかるワッシャ13で押圧した場合の応力分布と近似した応力分布が示されている。
【0107】
このように、本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0108】
以上、本発明にかかるガスセンサの好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0109】
例えば、上記各実施形態では、ガスセンサとして酸素センサを例示したが、これに限らず、他のガスの成分濃度を検出できるガスセンサにあっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 酸素センサ(ガスセンサ)
2 検出素子
2e 検出素子の外周面
4 ホルダ
4a 検出素子の挿入孔
4g 粉充填スペース(シール材収納スペース)
4j シール材装填口
4k シール材収納スペースの底部
4l 受圧傾斜面
4m 受圧平坦面
13 ワッシャ(押圧部材)
13a 押圧部材のシール材押圧面
201、211 第1の押圧傾斜面(傾斜面)
203 第1の押圧平坦面
221、231 第2の押圧傾斜面(傾斜面)
232 第2の押圧平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス成分を検出する検出素子と、
前記検出素子を嵌挿する挿入孔を有するホルダと、
前記挿入孔の内周に設けられたシール材収納スペース内に充填される粉末状のシール材と、
前記シール材収納スペースのシール材装填口側に配置され、前記シール材を圧縮して前記検出素子の外周と前記ホルダとの間をシールする押圧部材と、を備え、
前記シール材収納スペースの底部には、外周部に位置し、前記検出素子に向かうにつれて深くなる方向に傾斜する受圧傾斜面と、内周部に位置し、前記検出素子に対して略垂直となる受圧平坦面と、が形成されており、
前記押圧部材のシール材押圧面に傾斜面が設けられていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記受圧傾斜面と同方向に傾斜する第1の押圧傾斜面を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記シール材押圧面は、前記受圧平坦面と略平行な第1の押圧平坦面を有することを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記受圧傾斜面に対して逆方向に傾斜する第2の押圧傾斜面を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記シール材押圧面は、前記受圧平坦面と略平行な第2の押圧平坦面を有することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−191268(P2011−191268A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59667(P2010−59667)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】