説明

ガスセンサ

【課題】排気ガス等からプロテクタが受ける熱をガス検出素子の昇温に利用し、ガス検出素子の活性温度への到達時間を短縮してライトオフ特性を向上させたガスセンサを提供する。
【解決手段】先端部が被測定ガスに晒され径方向外側に突出する素子側受け部22bを有する筒状のガス検出素子22と、ガス検出素子の周囲を取り囲み、径方向内側に突出する主体金具側受け部25aを有する筒状の主体金具25と、自身の後端側を主体金具の内側に収容させつつ、ガス検出素子の先端部を取り囲む筒状のプロテクタ40と、を備え、プロテクタの後端側には拡径する突出部40fが形成され、プロテクタはガス検出素子より熱伝導率が高く、主体金具側受け部の後端向き面と素子側受け部の先端向き面との間に突出部を挟持させた状態でプロテクタが固定され、素子側受け部の先端向き面と突出部とが直接接し、又は他部材を介しているガスセンサ21である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出素子を有するガスセンサと、これに装着されガスセンサの出力を外部に伝えるセンサキャップとを組み合わせたガスセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガス検出素子を有するガスセンサとして、様々なものが提案されている。これらのガスセンサとしては、例えば、酸素イオン導電性を有する固体電解質体からなるガス検出素子を有するものが挙げられる。ガスセンサは、内燃機関の排気管やエンジンヘッド等の取付け対象体に取付けられ、ガス検出素子先端側に配された1対の電極にて排気ガス中の特定ガス(例えば酸素)の濃度を検知する。
一般に、このようなガスセンサにおいては、ガス検出素子を主体金具で取り囲んで保持するとともに、検出部を保護する筒状のプロテクタを主体金具先端に溶接して固定している(特許文献1参照)。又、プロテクタの主体金具先端への溶接を不要とし、作業性及びセンサ性能を向上したものとして、主体金具の先端側に内側に突出する主体金具側係止部を設け、プロテクタの後端側に外側に突出するプロテクタ側係止部を設けた技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術では、このプロテクタ側係止部を、セラミックホルダと主体金具側係止部との間で挟持させて係止している。
又、ヒータを設けず、排気ガスからの受熱のみで活性温度まで昇温させられて使用されるガスセンサも知られている(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−235714号公報
【特許文献2】特開平11−190715号公報
【特許文献3】特開2009−63330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒータレスのガスセンサにおいては、上述のように排気ガスからの受熱のみで活性温度まで昇温させられる。このとき排気ガスに晒されるプロテクタも昇温させられるが、プロテクタは主体金具に接続されているため、プロテクタの受けた熱は主体金具に逃げてしまい、活用する事が出来ない(ガスセンサがエンジンヘッド等の取り付け対象体に取り付けられており、主体金具は取り付け対象体に熱を引かれて冷やされるため、排気ガスで昇温したプロテクタの熱が主体金具に逃げてしまう)。つまり、プロテクタ内のガス検出素子(検出部)は、プロテクタ孔からの排気ガスによって直接加熱されるに過ぎず、プロテクタに蓄えられる熱を利用できないため、ガス検出素子が活性温度まで達するまで時間がかかり、ライトオフ特性に劣る。
又、特許文献2記載の技術の場合、プロテクタ後端とガス検出素子とがセラミックホルダを介して接しているため、プロテクタの熱がガス検出素子に伝わり難く、ライトオフ特性を改善する余地がある。
そこで、本発明は、排気ガス等の被測定ガスからプロテクタが受ける熱を、ガス検出素子の昇温に利用することで、ガス検出素子の活性温度への到達時間を短縮してライトオフ特性を向上することができるガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に向かって延びて先端部が被測定ガスに晒されると共に、径方向外側に突出する素子側受け部を有する筒状のガス検出素子と、前記ガス検出素子の周囲を取り囲むと共に、径方向内側に突出する主体金具側受け部を有する筒状の主体金具と、自身の後端側を前記主体金具の内側に収容させつつ、自身の先端側を前記主体金具の先端より突出させて前記ガス検出素子の先端部を取り囲む筒状のプロテクタと、を備え、前記プロテクタは前記ガス検出素子より熱伝導率が高く、前記プロテクタの後端側には径方向外側に拡径する突出部が形成され、前記主体金具側受け部の後端向き面と前記素子側受け部の先端向き面との間に前記突出部を挟持させた状態で前記プロテクタが固定され、かつ少なくとも前記素子側受け部の先端向き面と前記突出部とが直接接し、又は前記ガス検出素子よりも熱伝導率が高い金属からなる他部材を介している。
このようなガスセンサによれば、排気ガス等の被測定ガスに晒されることで昇温させられるプロテクタが、ガス検出素子に直接又は他部材を介して接触しているため、被測定ガスからプロテクタが受けた熱をもガス検出素子の昇温に利用でき、ライトオフ特性が向上する。特に、素子側受け部の先端向き面と突出部とが直接接していると、プロテクタが受けた熱によるガス検出素子の昇温効果が大きい。
なお、「ガス検出素子の先端部を取り囲む筒状のプロテクタ」とは、ガス検出素子の先端部を径方向から取り囲んでいれば良く、プロテクタが底部を有さずに筒状に形成されていてもよい。
【0006】
前記ガス検出素子の外面には、前記被測定ガスに晒される外側電極が形成され、該外側電極は、前記主体金具に対して電気的にアースされていてもよい。
このように、外側電極を主体金具に対して電気的にアース(接地)することが前提条件となるガスセンサの場合に、特に本発明を有効に適用することができる。
【0007】
前記プロテクタは径方向に直径が異なる複数のプロテクタ部からなり、それらのうち最も外側のプロテクタ部に前記突出部が形成されていてもよい。
このようなガスセンサによれば、排気ガス等の被測定ガスから一番多く熱を受ける最も外側のプロテクタ部の熱をガス検出素子に伝える事が出来る。
【0008】
前記プロテクタと前記主体金具との間の少なくとも一部に、空間を設けてもよい。
このようなガスセンサによれば、プロテクタが受けた熱が、ガス検出素子に到達する前に主体金具へと引かれることを上記空間によって防止できる。
【0009】
前記主体金具の外面には、前記ガスセンサを取付け対象体に取付けるための取付け部が設けられ、前記空間の少なくとも一部が前記軸線方向に沿って前記取付け部と重なるとよい。
主体金具の熱は取付け部を通して取付け対象体へと引かれて冷却されるため、取付け部が最も冷えやすい構成となる。そこで、取付け部と重なるように上記空間を配置することで、プロテクタの受けた熱が主体金具へと引かれることをさらに効果的に防止できる。
【0010】
前記素子側受け部の先端向き面と前記突出部との接触面積、又は前記他部材と前記突出部との接触面積が、前記主体金具側受け部の後端向き面と前記突出部との接触面積より大きいと好ましい。
このようなガスセンサによれば、突出部においてプロテクタと接触する面積が、主体金具に比べてガス検出素子の方が大きくなるため、プロテクタの受けた熱をガス検出素子により効果的に伝えやすくなる。なお、素子側受け部の先端向き面と突出部との間に上記した他部材を介している場合は、当該他部材と突出部との接触面積を基準とする。
【0011】
前記ガス検出素子を加熱するヒータを有しない場合、排気ガスからの受熱のみでガス検出素子が活性温度まで昇温させられるので、特に本発明を適用すると有効である。
【0012】
前記主体金具が鉄系部材からなると、特に熱を引き易く、主体金具側に熱が伝達してガス検出素子が冷えやすくなるので、特に本発明を適用すると有効である。
【0013】
前記プロテクタがステンレス鋼からなると、熱伝導性が劣るため、プロテクタに熱がこもり易く、主体金具側に熱が伝達し難いので、被測定ガスからプロテクタが受けた熱をガス検出素子にさらに有効に伝えてガス検出素子を昇温することができる。
【0014】
前記軸線方向に沿う前記取付け部の長さは、前記ガス検出素子の先端から前記素子側受け部と前記突出部との接触領域の先端までの距離の1/2以上であってもよい。
取付け部の長さが長いほど、ガスセンサをエンジンヘッド等の取付対象体に確りと取り付けることができるが、この取付け部から取付対象体へ熱が伝達し、ガス検出素子が冷えやすくなるため、特に本発明を適用すると有効である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、排気ガス等の被測定ガスによって加熱されたプロテクタの熱をガス検出素子の昇温に利用する事が出来るので、活性温度への到達時間を短縮してライトオフ特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【図2】ガスセンサにセンサキャップを装着してなるガスセンサユニットの軸線方向に沿う断面図である。
【図3】プロテクタからガス検出素子への熱伝達を示す図である。
【図4】センサキャップの軸線方向に沿う断面図である。
【図5】キャップ端子の説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態にかかるガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態にかかるガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1の実施形態にかかるガスセンサ21の軸線O方向に沿う断面図である。ガスセンサ21は排気ガス中の酸素濃度を計測する酸素センサであり、ヒータを有さず、エンジンヘッドに取り付けられて排気ガスからの受熱で活性温度まで昇温させられて使用される。
ガスセンサ21は、ガス検出素子22、セラミック包囲体23、端子部材24、主体金具25、及びプロテクタ40を備える。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向のうち、センサキャップの取り付けられる側を後端側とし、この逆側を先端側として説明する。
【0018】
ガス検出素子22は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質からなり、先端部22aが閉塞された有底で、軸線O方向に延びる円筒状を有している。又、ガス検出素子22の軸線O方向のほぼ中央に鍔状の突出部22bが径方向外側に向かって形成され、突出部22bの先端向き面は先端に向かって縮径するテーパ形状になっている。突出部22bは特許請求の範囲の「素子側受け部」に相当する。
このガス検出素子22の先端部22aには、外周面に外側電極28が形成されている。この外側電極28は、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。この外側電極28は、突出部22bの先端側面まで設けられており、後述するように主体金具25の内周受け部25aに電気的に接続される。このため外側電極28の電位は、主体金具25から取り出すことができる。つまり、外側電極28は主体金具に対して電気的にアース(接地)した状態とされている。一方、ガス検出素子22の内周面にも、内側電極29が形成されている。この内側電極29も、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。
ガス検出素子22を構成する固体電解質としては、例えば、YまたはCaOを固溶させたZrOが代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体を使用しても良い。さらには、これにHfOが含有されていても良い。
【0019】
主体金具25はSUS430からなり、円筒状に形成されている。この主体金具25には、ガス検出素子22の突出部22bを支持するための内周受け部25aであって、先端側(図1中、下方)に向かって縮径するテーパ形状の内周受け部25aが、内周面から径方向内側に突出する形態で周設されている。ここで、内周受け部25aが特許請求の範囲の「主体金具側受け部」に相当する。
また、この主体金具25の外側には、ガスセンサ21を排気管(取付け対象体)に取付けるためのネジ部25bが形成されており、このネジ部25bの後端側(図1中、上方)には、ネジ部25bを排気管に螺挿するための取付工具を係合させる鍔部(六角部)25cが周設されている。鍔部25cは、主体金具25の他の外面より径方向外側に突出している。鍔部25cの先端向き面には、ガスセンサ21を排気管に取付けた際のシールを行うための環状のガスケット27が嵌められている。ここで、ネジ部25bが特許請求の範囲の「取付け部」に相当する。
【0020】
主体金具25の内側には、後述するガス検出素子22の先端部22aを覆う円筒状のプロテクタ40の後端側が収容され、プロテクタ40の先端側は主体金具25の先端より突出している。又、プロテクタ40の後端縁には径方向外側にテーパ状に拡径するフランジ部40f(特許請求の範囲の「突出部」)が形成されている。プロテクタ40は、金属製の有底筒体で、排気管内の排気をガスセンサ21の内部に導入するための通気孔40aを先端(有底部)側に複数有している。そして、主体金具25の先端より突出したガス検出素子22の先端部22aは、プロテクタ40に取り囲まれつつ、通気孔40aを介して排気ガス(被測定ガス)に晒されて被測定ガス中の特定ガスの濃度を検知する。
なお、ガス検出素子22は後述するように主に固体電解質からなり(電極等を除く)、プロテクタ40はガス検出素子22より熱伝導率が高い金属からなる。
【0021】
ここで、主体金具25の内周受け部25aの外径は、プロテクタ40の突出部40fの外径よりわずかに大きい。又、内周受け部25aより先端側における主体金具25の内面25iの直径は、突出部40fより先端側におけるプロテクタ40の外径より大きい。そして、プロテクタ40の後端側が主体金具25の内側に収容されつつ、ガス検出素子21の突出部22bの先端側面(先端向き面)と、主体金具25の内周受け部25aの表面(後端向き面)との間に、突出部40fを挟持させた状態でプロテクタ40が固定されるようになっている。
このようにして、少なくとも突出部22bの先端向き面と突出部40fとが直接接し、図3で説明するように、プロテクタ40の熱がガス検出素子22へ伝わってガス検出素子22を昇温する。なお、突出部22bの先端向き面と突出部40fとが直接接していればよく、ガス検出素子の構成によっては、主体金具25の内周受け部25aと突出部40fとの間には各種のパッキンや断熱材が介在していてもよい。
さらに、この実施形態では、径方向に沿って主体金具25の内面25iとプロテクタ40の外面との間に空間Gが開けられており、後述するようにプロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げることが抑制される。
【0022】
次に、ガスセンサ21のその他の構成部分について説明する。
セラミック包囲体23は、絶縁性セラミック(具体的には、アルミナ)からなり、円筒状を有している。このセラミック包囲体23は、そのうちの肉厚とされた先端側部分23aが、ガス検出素子22のうち、突出部22bよりも後端側の部分の周囲を取り囲む形態で、タルクから形成されたセラミック粉末30と共に、ガス検出素子22と主体金具25との間に介在するように保持されている。
【0023】
端子部材24は、例えばインコネル(英インコネル社、商標名)からなり、筒状で、出力側端子部24a、素子側端子部24b、及び両者を連結する端子接続部24cを有している。このうち、出力側端子部24aは、軸線Oに直交する断面が略C字形状の筒状である。この出力側端子部24aは、後述するキャップ端子751の挿入部751c(図4参照)を、軸線Oに沿う方向(図1、2中、上下方向)に相対移動させて、自身の内側に挿入したときに、弾性的に拡径するように構成されている。さらに、この出力側端子部24aのうち後端側(図1中、上方)の周方向4カ所には、径方向内側に突出した凸状部241aが形成されている。
【0024】
さらに、出力側端子部24aのうち、凸状部241aより先端側(図1中、下方)の周方向3カ所には、この出力側端子部24aの一部を打ち抜いて径方向内側に折り曲げた内側屈曲部242aと、径方向外側に折り曲げられた外側屈曲部243aとが形成されている。このうち、内側屈曲部242aは、後述するように、キャップ端子751の挿入部751c(図4参照)を出力側端子部24aの内側に挿入して接続するときに、弾性的に径方向外側に屈曲し、挿入部751cが所定位置まで挿入されたときに、屈曲が戻ってクリック感を生じさせるように形成されている。また、外側屈曲部243aは、図1に示すように、ガスセンサ21にこの端子部材24が組み付けられた時点で、セラミック包囲体23の段差部23bの先端面(段差面)に当接して、出力側端子部24a(端子部材24)の抜け防止の役割を果たしている。
【0025】
一方、端子部材24のうち、素子側端子部24bも、軸線Oに直交する断面が略C字形状の筒形状を有している。この素子側端子部24bは、図1に示すように、弾性的に縮径しつつガス検出素子22内に挿入されて、内側電極29と電気的に接続している。従って、本実施形態のガスセンサ21では、素子側端子部24bが、内側電極29を内側から径方向外側に向かって押圧しつつ電気的に接続している。
【0026】
このような端子部材24は、所定形状の単一の金属板を用いて、プレス加工によって一体成形で形成する。このため、形成容易で、低コストである。また、本実施形態の端子部材24では、金属板を曲げ加工し、出力側端子部24a及びこれより軸線O方向先端側(図1中、下方)に位置する素子側端子部24bを筒状に成形しているので、センサキャップ700内に取り込まれた基準ガス(外気)を、ガス検出素子22の内側(内側電極29)まで導入することができる。
【0027】
このようなガスセンサ21は、次のようにして製造する。まず、図1に示すように、主体金具25の後端側からプロテクタ40を主体金具25内に挿入し、主体金具25の内周受け部25aの表面(後端向き面)に、プロテクタ40の突出部40fの先端向き面を係止させる。次いで、外側電極28及び内側電極29が設けられたガス検出素子22をプロテクタ40の内部に挿入すると、プロテクタ40の突出部40fの後端向き面に、ガス検出素子21の突出部22bの先端側面(先端向き面)が当接する。
この状態で、セラミック粉末30を主体金具25とガス検出素子22との間隙部分に所定量充填する。次いで、セラミック包囲体23を先端側部分23aがガス検出素子22と主体金具25との間に介在するように挿入し、セラミック粉末30に当接させる。次いで、セラミック包囲体23を先端側に向かって加圧し、その加圧状態下で、主体金具25の加締め部25dとセラミック包囲体23との間に加締めリング32を介在させて加締め部25dを加締める。このようにして、主体金具25とガス検出素子22との間にプロテクタ40の突出部40fを挟持させた状態で、上記構成部品を一体に固定する。
【0028】
最後に、端子部材24をセラミック包囲体23及びガス検出素子22の内側に挿入する。具体的には、端子部材24の素子側端子部24bを、弾性的に縮径させつつガス検出素子22内に挿入して、内側電極29と電気的に接続させる。これと共に、出力側端子部24aを先端側に押しこんで、出力側端子部24aの後端から、軸線Oに直交し、径方向外側に向かう花びら状に形成された止め部244aを、セラミック包囲体23の後端面に当接させる。こうして、出力側端子部24aをセラミック包囲体23の内側に配置する。
なお、止め部244aがセラミック包囲体23の後端面に当接するまで出力側端子部24aを押しこむことで、径方向内側に屈曲していた外側屈曲部243aが解放されて戻り、セラミック包囲体23の段差部23bの先端面(段差面)に係合するようになるので、端子部材24の抜け防止を図ることができる。このようにして、ガスセンサ100が完成する。
【0029】
図2は、ガスセンサ21にセンサキャップ700を装着してなるガスセンサユニット600、およびこれを使用に供したときの様子を示す説明図であり、軸線O方向に沿う断面図である。ガスセンサユニット600は、ガスセンサ21の軸線O方向後端側(図1中、上方)にセンサキャップ700を配置してなる。このガスセンサユニット600は、車両の排気管(取付対象体)に、ガスセンサ21の先端部分を排気管内に突出させる形態で締結され、排気ガス中の酸素濃度を計測する。
【0030】
次に、図3を参照し、プロテクタ40からガス検出素子22への熱伝達について説明する。図1で説明したように、ガス検出素子22の突出部22bの先端向き面とプロテクタ40の突出部40fとが直接接している。そして、プロテクタ40はガス検出素子22より熱伝導率が高い。そのため、プロテクタ40の熱の少なくとも一部は、上記した接触部を介してガス検出素子22側へ伝わり、ガス検出素子22を昇温するのに寄与する。
又、この実施形態では、突出部40fがフランジになっているため、(プロテクタ40の厚み分だけ)突出部40fの後端向き面の方が先端向き面より表面積が大きくなる。従って、仮に突出部40fの各面に、それぞれガス検出素子22の突出部22b(の先端向き面)及び主体金具25の内周受け部25a(の後端向き面)が全面で接した場合でも、突出部40fとガス検出素子22の突出部22bとの接触面積22Lの方が、突出部40fと主体金具25の内周受け部25aとの接触面積より大きくなるので、プロテクタ40の熱がガス検出素子22側へ伝わり易くなる。
【0031】
さらに、この実施形態では、主体金具25の内面25iとプロテクタ40の外面との間に空間Gが開けられているので、実際の突出部40fと主体金具25の内周受け部25aとの接触面積25Lはさらに小さくなるとともに、空間Gではプロテクタ40から主体金具25へ熱伝達が生じなくなる。その結果、プロテクタ40からガス検出素子22へ伝達される熱量Hは増大し、プロテクタ40から主体金具25へ伝達される熱量Hは減少するので、ガス検出素子22の昇温効果が高くなる。なお、空間Gは、軸線O方向に沿って主体金具25のネジ部25bのすべてを含んでいる。ネジ部25bはエンジンヘッド等の取付け対象体に取り付けられ、取付け対象体でプロテクタ40が冷やされて熱逃げ部分になってしまうが、このネジ部25bに空間Gを設けることで熱逃げを防止することができ、熱量Hをさらに減少させることができる。
以上のように、プロテクタ40の熱の少なくとも一部がガス検出素子22に伝わるので、ガス検出素子22の活性温度への到達時間を短縮してライトオフ特性を向上することができる。
【0032】
次に、センサキャップ700について、図面を参照しつつ説明する。図4は、センサキャップ700の部分破断断面図である。センサキャップ700は、キャップ端子751、このキャップ端子751を被覆し保持する被覆部材752、リード線753、及びフィルタ部材754を備えている。
【0033】
キャップ端子751(図4及び図5参照)は、例えばステンレス鋼(SUS310S等)からなり、板材を絞り加工等によって二重略円筒形状に成形してなる。さらに、キャップ端子751は、軸線Oについて同心環状で板状の環状部751aと、環状部751aの外周縁に連なって軸線Oに沿う一方側(図5(a)中、下方)に突出する把持部751bと、環状部751aの内周縁に連なって把持部751bと同じ側に突出する円筒状の挿入部751cと、を有する。環状部751a、把持部751b、及び挿入部751cは、互いに一体に成型されている。
【0034】
このうち把持部751bは、図5に示すように、環状部751aの外周縁に連なって、C字状に突出する基端部751baと、この基端部751baからスリットSL1、SL2、SL3、SL4、SL5によって5つに分割されて延びる分割把持部751bbとを有する。このスリットSL1,SL2,SL3は、軸線O方向に延びた形状とされている。
上述の分割把持部751bbには、それぞれ、内側に向けて突出する突起部751bcが形成されている。具体的には、5つの突出部751bcが、互いに72度ずつ隔たった角度で周方向に配置されている。
後述するように、ガスセンサ21のセラミック包囲体23の外周面23c(図1参照)に5つの突起部751bcをそれぞれ当接させ、キャップ端子751の把持部751bがセラミック包囲体23の後端部を包囲するようにして、この部分に嵌め込む。この場合に(図2参照)、分割スリットSL1、SL2、SL3、SL4、SL5の存在により、5つの分割把持部751bbは、それぞれ径方向外側に弾性的に屈曲する。そして、この反力によって、キャップ端子751が弾性的にセラミック包囲体23を保持する。
【0035】
一方、挿入部751cは、前述したように、軸線Oを中心とする円筒状で、縮径、拡径等の変形が生じがたい剛性を有する。従って、後述するように、ガスセンサ21の出力側端子部24a内に挿入してこれに当接させたときに、自身は変形することなく、出力側端子部24aを拡径させることができる。この挿入部751cは、環状部751a側から、比較的径大の円筒状で軸線O方向に比較的長い導通部751ca、この導通部751caよりも径小の径小部751cb、この径小部751cbよりも径大の挿入先端部751ccを、この順に備える。
【0036】
ガスセンサ21のセラミック包囲体23にキャップ端子751の把持部751bを嵌め込んだ場合(図2参照)、挿入部751cは、セラミック包囲体23の内側で、かつ、端子部材24の出力側端子部24aの内側に挿入される。この際、導通部751caは、出力側端子部24aの凸状部241aに当接して、出力側端子部24aと電気的に導通する。また、径小部751cbの径方向外側には、出力側端子部24aの内側屈曲部242aが位置しており、端子部材24からキャップ端子751を脱着する際に、この内側屈曲部242aが挿入先端部751ccに係合して、容易には抜けないようにしている。また、キャップ端子751の挿入部751cを端子部材24の出力側端子部24a内に挿入完了した際に、内側屈曲部242aが挿入先端部751ccに当接していた状態から解放され、クリック感が生じる。
なお、環状部751aは、図2に示すように、挿入部751caが端子部材24の出力側端子部24a内に挿入された状態において、セラミック包囲体23の後端面上に位置する出力側端子部24aの止め部244aに当接することで、キャップ端子751の挿入部751cがさらに先端側に挿入されることを防止している。
【0037】
被覆部材752は、絶縁性のフッ素系ゴムを用いて中空状に成形してなり、キャップ端子751を収容するキャップ端子収容空間SPSを構成している。そして、被覆部材752の表面にはシボ加工が施されている。この被覆部材752は、キャップ端子751及びガスセンサユニット600時(図2参照)のセラミック包囲体23の後端側を包囲する挿通孔752aaを有する端子包囲部752a、端子包囲部752aの後端側から径方向に突出するように設けられ、連通孔752baを塞ぐように配置されたフィルタ部材754の周囲を包囲するフィルタ包囲部752b、端子包囲部752aの後端側から径方向に突出するように設けられ、リード線753の周囲を包囲するリード線包囲部752cを備える。
端子包囲部752aはさらに先端側に延び、周囲より拡径する裾部752apを一体に有している。この裾部752apは、少なくともセラミック包囲体23を完全に包囲しつつ主体金具25と離間している。又、軸線O方向に沿って、裾部752apの先端752xは、主体金具25の後端25eよりも先端側であって、鍔部25cの後端25ceと同じ位置に延びている。
又、図4に示すように、裾部752apの内壁752wは、主体金具25の外面の各部位とほぼ等距離で離間するよう、先端側に向かって主体金具25の輪郭に追随しつつ複数の階段状に拡径している。そして、裾部752apの内壁752wが拡径することに対応し、裾部752apの厚みを確保すべく、裾部752apの外径が周囲(端子包囲部752aの後端側)より段状に拡径している。
【0038】
一方、端子包囲部752aのうち、後端側(図中、上方)は、キャップ端子751の把持部751bの周囲に位置しており、その把持部751bと端子包囲部752aが当接している。一方、端子包囲部752aのうち把持部751bより先端側(図中、下方)には、ガスセンサ21のセラミック包囲体23の外周面23c(図1参照)に密着する寸法とされたリブ752abを有する。このリブ752abは、軸線O方向に2つ設けられている。また、このリブ752abのうち後端側(図中、上方)には、キャップ端子751の把持部751bの先端が係合されており、リブ752abによって、キャップ端子751を端子包囲部752a内に支持している。
【0039】
ついで、フィルタ包囲部752bについて説明する(図4参照)。このフィルタ包囲部752bは、連通孔752baを塞ぐように配置されたフィルタ部材754の周囲を包囲している。具体的には、フィルタ部材754は、微細気孔が連続する連続多孔質構造のPTFEからなり、円柱状の本体部754aと、この本体部754aの周囲を円環状に取り囲む平滑化処理部754bとからなるフィルタ部材754である。
【0040】
さらに、フィルタ包囲部752bの連通孔752baに、内側に向かって突出する環状の突出部752bbを設け、この突出部752bbをフィルタ部材754の外周面に密着させて、フィルタ部材754を保持している。
【0041】
ついで、リード線包囲部752cについて説明する(図4参照)。このリード線包囲部752cは、リード線753を包囲しており、フィルタ包囲部752bとはキャップ端子751を挟んで反対側に配置されている。このリード線包囲部752cには、リード線753を連通するリード線連通孔752caを有する。
【0042】
リード線753は、芯線のほか、被覆材を有している。このリード線753の先端側は、キャップ端子751の挿入部751c内まで挿入され、接続部751cの内部でリード線固定部材755の加締め部755aにて加締められている。
【0043】
このリード線固定部材755は略円筒形状を有しており、加締め部755aの他、キャップ端子751の挿入部751cの内壁に嵌め合う嵌合部755cを有している。なお、加締め部755a及び嵌合部755cにより、リード線753を通じて、ガスセンサ21のガス検出素子22の内側電極29からの出力信号を、外部装置(例えば、エンジンコントロールユニット(ECU))に送信することが可能となる。また、加締め部755aと嵌合部755cとの間に位置し、リード線(被覆材)を固定する略C形状の被覆材固定部755bをさらに備えている。また、嵌合部755cの後端側に径方向外側に突出するように形成され、キャップ端子751の環状部751aに接合される接合部755dを有する。この説合部755dとキャップ端子751の環状部751aとは溶接等によって接合されている。
その結果、図4に示されるように、リード線753は、端子包囲部752aの挿通孔752aa内で挿入部751cの軸線方向に沿って屈曲してキャップ端子751に固定されている。
以上のようにして、ガスセンサユニット600が構成される。
【0044】
次に、図6〜図9を参照し、本発明の第2〜第5の実施形態にかかるガスセンサについて説明する。図6〜図9は、各ガスセンサ21B〜21Eの軸線O方向に沿う断面図である。なお、各ガスセンサ21B〜21Eは、プロテクタ又は主体金具の形状が異なること以外は、第1の実施形態にかかるガスセンサ21と同一であるので、同一部分について同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図6において、第2の実施形態にかかるガスセンサ21Bは、プロテクタ40に代えて、2重プロテクタ43を有している。2重プロテクタ43は小径の内側プロテクタ部42と、内側プロテクタ部42より大径の外側プロテクタ部41からなり、外側プロテクタ部41に内側プロテクタ部42を収容しつつ、外側プロテクタ部41の底面に内側プロテクタ部42の底面を同心に溶接してなる。又、内側プロテクタ部42の軸線O方向の長さは、外側プロテクタ部41の軸線O方向の長さより短く、内側プロテクタ部42の後端がフランジ状に拡径して外側プロテクタ部41内面に接している。
この2重プロテクタ43において、最も外側のプロテクタ部41の後端側にフランジ状の突出部41fが形成されている。このような構成とすると、2重プロテクタ43において最も外側で排気ガスの熱を最も多く受けるプロテクタ部41から、突出部41fを介してガス検出素子22に熱が伝わるので、多重プロテクタにおいても活性温度への到達時間を短縮してライトオフ特性を向上することができる。なお、内側プロテクタ部42及び外側プロテクタ部41には、それぞれ内側プロテクタ通気穴42a及び外側プロテクタ通気孔41aが形成されている。
【0046】
図7において、第3の実施形態にかかるガスセンサ21Cは、内周受け部25aより先端側の主体金具25の内面のうち、軸線O方向のほぼ中央より後端の領域25eが径方向内側に突出してプロテクタ40の外面に接するようになっている。このため、径方向に沿って、領域25eを除く主体金具25の内面25iとプロテクタ40の外面との間に空間Gが開けられている。一方、領域25eで主体金具25とプロテクタ40が接しているため、第1の実施形態に比べるとプロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げる割合が多くなる。
但し、第3の実施形態の場合、プロテクタ40の後端部が主体金具25の領域25eで保持されるので、プロテクタ40が軸線O方向及び径方向に振れ難く、プロテクタ40を確実に固定することができる。又、第3の実施形態の場合も、プロテクタ40の少なくとも一部(内面25iに対向する部分)は径方向に沿って主体金具25と空間Gを開けているので、空間Gを開けない場合に比べるとプロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げ難い。さらに、空間Gは、軸線O方向に沿って主体金具25のネジ部25bの少なくとも一部(詳しくはネジ部25bの先端側)と重なっているため、熱逃げ部分となる取付け対象体でプロテクタ40が冷やされることを防止することができる。
又、第3の実施形態の場合、内周受け部25aの内径は、突出部40fを除くプロテクタ40の外径とほぼ同一であるが、既に図3で説明したように、突出部40fがフランジであるため、突出部40fの後端向き面の方が先端向き面より表面積が大きくなる。従って、突出部40fの各面に、それぞれガス検出素子22の突出部22b(の先端向き面)及び主体金具25の内周受け部25a(の後端向き面)が全面で接しても、突出部40fとガス検出素子22の突出部22bとの接触面積22Lの方が、突出部40fと主体金具25の内周受け部25aとの接触面積より大きくなるので、プロテクタ40の熱がガス検出素子22側へ伝わり易くなる。
【0047】
図8において、第4の実施形態にかかるガスセンサ21Dは、内周受け部25aより先端側の主体金具25の内面のうち、軸線O方向のほぼ中央より先端の領域25fが径方向内側に突出してプロテクタ40の外面に接するようになっている。このため、径方向に沿って、領域25fを除く主体金具25の内面25iとプロテクタ40の外面との間に空間Gが開けられている。一方、領域25fで主体金具25とプロテクタ40が接しているため、第1の実施形態に比べるとプロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げる割合が多くなる。
但し、第4の実施形態の場合、プロテクタ40は先後の2箇所で主体金具25によって保持される(具体的にはプロテクタ40後端部が内周受け部25aで保持され、先端部が領域25fで保持される)ので、プロテクタ40が軸線O方向及び径方向に振れ難く、プロテクタ40をさらに確実に固定することができる。又、第4の実施形態の場合も、プロテクタ40の少なくとも一部(内面25iに対向する部分)は径方向に沿って主体金具25と空間Gを開けているので、空間Gを開けない場合に比べるとプロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げ難い。さらに、空間Gは、軸線O方向に沿って主体金具25のネジ部25bの少なくとも一部(詳しくはネジ部25bの先端側を除く部分)と重なっているため、熱逃げ部分となる取付け対象体でプロテクタ40が冷やされることを防止することができる。
【0048】
図9において、第5の実施形態にかかるガスセンサ21Eは、プロテクタ40の外面に、外側へ突出する出っ張り40pを複数設けている。この出っ張り40pは、主体金具25の内面25iとほぼ点接触または線接触し、出っ張り40pが接触していない部分で主体金具25とプロテクタ40の外面との間に空間Gが開けられている。
プロテクタ40の外面に出っ張り40pを設けると、プロテクタ40が内周受け部25aと出っ張り40pの少なくとも2箇所で主体金具25によって保持されるので、プロテクタ40が軸線O方向及び径方向に振れ難く、プロテクタ40をさらに確実に固定することができる。又、出っ張り40pを主体金具25とほぼ点接触または線接触させることで、領域25e、25fで主体金具25とプロテクタ40が面接触する第3及び第4の実施形態に比べ、プロテクタ40の熱が主体金具25へ逃げ難くなる。
なお、出っ張り40pを半球状にすれば、主体金具25とほぼ点接触させることができ、出っ張り40pを周方向に連続した畝状にすれば、主体金具25とほぼ線接触させることができる。又、出っ張り40pを軸線O方向に沿って複数個形成させれば、軸線O方向に沿う複数箇所でプロテクタ40が主体金具25によって保持され、プロテクタ40をさらに確実に固定することができる。
【0049】
なお、本発明は上記各実施の形態に限られず、各種の変形が可能なことは言うまでもない。例えば、ガス検出素子の素子側受け部の先端向き面とプロテクタの突出部とが直接接さずに、両者がガス検出素子よりも熱伝導率が高い金属からなる他部材(パッキン等)を介して接していてもよい。このようにすると、ガス検出素子とプロテクタとが直接接している場合に比べ、熱の伝達は劣るが、両者を組み付ける際、変形がし難いプロテクタであっても他部材によって素子側受け部になじむようになり、組み付けが容易かつ確実になる。但し、プロテクタからガス検出素子への熱伝達が阻害されないよう、他部材の熱伝導率をガス検出素子よりも高くする。又、他部材を用いる場合、この他部材を介して外側電極がアースされることになる。
他部材としては、例えば銅又は銅合金製のパッキン(ガスケット)が挙げられる。
【0050】
又、ガスセンサ21は酸素センサやヒータレスタイプに限られない。但し、ガス検出素子を加熱するヒータを有しないヒータレスタイプでは、排気ガスからの受熱のみでガス検出素子が活性温度まで昇温させられるので、特に本発明を適用すると有効である。
又、プロテクタは有底に限られず、プロテクタ後端のフランジはテーパ状でなく軸線方向に垂直に延びていてもよい。さらに、プロテクタの突出部はフランジに限られず、プロテクタ後端縁よりやや先端側でプロテクタ外面から突出する形態(例えば、図9の1つの出っ張りのように、プロテクタ外面から周方向に連続して畝状に突出する形態)であってもよい。さらに、プロテクタの突出部はフランジで終端するものに限られず、フランジ部分から後端に筒状に延び、該筒部で素子側受け部の外周に接してガス検出素子との接触面積を増大するように構成してもよい。また、ガス検出素子22の先端が、主体金具25の先端よりも後端側に配置されていてもよい(主体金具25の先端よりガス検出素子22の先端が突出していない形態でもよい)。
【0051】
又、主体金具が鉄系部材からなると、特に熱を引き易く(熱伝導性が良く)、主体金具側に熱が伝達してガス検出素子が冷えやすくなるので、特に本発明を適用すると有効である。なお、「鉄系部材」とは、例えば低炭素鋼である。
又、プロテクタがステンレス鋼からなると熱伝導性が劣るため、プロテクタに熱がこもり易く、主体金具側に熱が伝達し難いので、被測定ガスからプロテクタが受けた熱をガス検出素子にさらに有効に伝えてガス検出素子を昇温することができる。
【0052】
又、軸線方向に沿う取付け部25b(図1参照)の長さLが、ガス検出素子22の先端から、素子側受け部22bとプロテクタの突出部40fとの接触領域の先端までの距離Lの1/2以上であると、特に本発明が有効となる。
取付け部25bの長さLが長いほど、ガスセンサ21をエンジンヘッド等の取付対象体に確りと取り付けることができるが、この取付け部25bから取付対象体へ熱が伝達し、ガス検出素子が冷えやすくなるからである。
なお、取付け部25bがネジである場合、不完全ネジ部を含む長さをLとする。
【符号の説明】
【0053】
21、21B〜21E ガスセンサ
22 ガス検出素子
22b 鍔部(素子側受け部)
22L 素子側受け部の先端向き面と突出部との接触面積
25 主体金具
25a 内周受け部(主体金具側受け部)
25b 主体金具の取付け部
25L 主体金具側受け部の後端向き面と突出部との接触面積
40、43 プロテクタ
40f、41f プロテクタの突出部
41、42 複数のプロテクタ部
G プロテクタと主体金具の空間
O 軸線方向
軸線方向に沿う取付け部の長さ
ガス検出素子の先端から素子側受け部とプロテクタの突出部との接触領域の先端までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に向かって延びて先端部が被測定ガスに晒されると共に、径方向外側に突出する素子側受け部を有する筒状のガス検出素子と、
前記ガス検出素子の周囲を取り囲むと共に、径方向内側に突出する主体金具側受け部を有する筒状の主体金具と、
自身の後端側を前記主体金具の内側に収容させつつ、自身の先端側を前記主体金具の先端より突出させて前記ガス検出素子の先端部を取り囲む筒状のプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは前記ガス検出素子より熱伝導率が高く、
前記プロテクタの後端側には径方向外側に拡径する突出部が形成され、
前記主体金具側受け部の後端向き面と前記素子側受け部の先端向き面との間に前記突出部を挟持させた状態で前記プロテクタが固定され、かつ少なくとも前記素子側受け部の先端向き面と前記突出部とが直接接し、又は前記ガス検出素子よりも熱伝導率が高い金属からなる他部材を介しているガスセンサ。
【請求項2】
前記ガス検出素子の外面には、前記被測定ガスに晒される外側電極が形成され、該外側電極は、前記主体金具に対して電気的にアースされている請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記プロテクタは径方向に直径が異なる複数のプロテクタ部からなり、それらのうち最も外側のプロテクタ部に前記突出部が形成されている請求項1又は2記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記プロテクタと前記主体金具との間の少なくとも一部に、空間を設けている請求項1〜3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記主体金具の外面には、前記ガスセンサを取付け対象体に取付けるための取付け部が設けられ、
前記空間の少なくとも一部が前記軸線方向に沿って前記取付け部と重なる請求項4記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記素子側受け部の先端向き面と前記突出部との接触面積、又は前記他部材と前記突出部との接触面積が、前記主体金具側受け部の後端向き面と前記突出部との接触面積より大きい請求項1〜5のいずれか記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記ガス検出素子を加熱するヒータを有しない請求項1〜6のいずれか記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記主体金具が鉄系部材からなる請求項1〜7のいずれか記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記プロテクタがステンレス鋼からなる請求項1〜8のいずれか記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記軸線方向に沿う前記取付け部の長さは、前記ガス検出素子の先端から前記素子側受け部と前記突出部との接触領域の先端までの距離の1/2以上である請求項5〜9のいずれか記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−83327(P2012−83327A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19546(P2011−19546)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】