説明

ガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法

【課題】ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できるガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法を得ることを目的とする。
【解決手段】ガスタービンの燃料制御部44において、偏差算出部62がCLCSOの変化を検出する。そして、導出部78が、ガスタービンに対してランバック運転が行われ、かつ偏差算出部62によってCLCSOの低下が検出された場合に、通常運転におけるPL比計画値よりも大きなPL比計画値を、CLCSOに応じて導出する。流量制御部76が、導出部78によって導出されたPL比計画値でパイロット燃料が燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼器によって生成された燃焼ガスにより、タービンを回転駆動させるガスタービンにおいて、燃焼器には、所定の空気流量及び燃料流量で燃料が供給されている。
ここで、燃料の組成が変化すると、燃焼器に燃焼振動が発生する場合があった。そこで、安定燃焼を維持するために、特許文献1には、目標負荷に対応して設定された燃料流量又は空気流量の設定値に対して、圧縮機入口の吸気温度を検出し、この検出値に基づいて該設定値の補正量を設定する第2の関数発生器を設け、第3の関数発生器で、第2の関数発生器で設定された補正量を目標負荷を加味して修正した修正補正量を演算し、燃料流量又は空気流量の設定値を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ガスタービンの燃焼器は、パイロットノズルから供給されたパイロット燃料と圧縮空気とを混合させて燃焼させると共に、メインノズルから供給されたメイン燃料と圧縮空気とを混合させて燃焼させる。そして、全燃料流量に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比(PL比)の計画値は、一例として、タービン入口の燃焼ガス温度を無次元化した燃焼負荷指令値(CLCSO)に対して設定されている。
しかしながら、ガスタービンに対して、ある一定の負荷から急速に負荷を低下させる運転であるランバック運転が行われた場合、図8に示すように、実際のパイロット比が予め定められた計画値を過度的に下回る場合があった。すなわち、ランバック運転では、急速に負荷が低下するため、負荷の低下に応じてパイロット比を上昇させる必要があるが、実際のパイロット比の上昇の度合いが負荷の低下の度合いに比較して遅いため、図8に示すように、パイロット比が計画値を過度的に下回る場合があった。
そして、燃焼器に供給される燃料のパイロット比が計画値を下回ることは、燃焼器に燃焼振動を生じさせる原因となっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できるガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るガスタービンの制御装置は、全燃料流量に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比が予め定められた燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えたガスタービンの制御装置であって、タービン入口の燃焼ガス温度の変化を検出する検出手段と、前記ガスタービンに対して負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われ、かつ前記検出手段によって前記燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を、前記燃焼ガス温度に応じて導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された前記計画値でパイロット燃料が前記燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する流量制御手段と、を備える。
【0007】
本発明によれば、検出手段によって、タービン入口の燃焼ガス温度の変化が検出される。なお、検出手段は、タービン入口の燃焼ガス温度として、該燃焼ガス温度を無次元化した燃焼負荷指令値(CLCSO)を用いてもよい。燃焼負荷指令値は、大気温度、圧縮機の入口案内翼の開度、及びガスタービンの出力値に基づいた決定されるものであり、タービン入口の燃焼ガス温度と比例関係にある。
そして、ガスタービンに対して負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われ、かつ検出手段によって燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、導出手段によって、ランバック運転が行われていない場合(通常運転の場合)におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値が、燃焼ガス温度に応じて導出される。
ランバック運転とは、すなわち、ある一定の負荷から急速に負荷を低下させる運転であり、機器保護のために行われたりする。
なお、導出手段は、通常運転の場合におけるパイロット比の計画値に燃焼ガス温度に応じた持上量を加算することによって、通常運転の場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を導出してもよいし、通常運転の場合におけるパイロット比の計画値に燃焼ガス温度に応じた係数を乗算することによって、通常運転の場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を導出してもよい。
導出手段によってパイロット比の計画値が導出されると、流量制御手段は、該計画値でパイロット燃料が燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する。
これにより、ランバック運転が行われることによって、負荷が低下しても、パイロット比の計画値を負荷の低下に応じて上昇させることができるので、本発明は、ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できる。
【0008】
また、本発明のガスタービンの制御装置は、前記導出手段が、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値を、予め定められた時間当たりの増加率で、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値へと増加させてもよい。
本発明によれば、導出手段によって、パイロット比の計画値が徐々に増加されるため、ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値から、より大きなパイロット比の計画値へと不連続に変化することが防止される。
【0009】
また、本発明のガスタービンの制御装置は、前記導出手段が、前記ランバック運転が開始されたときの前記ガスタービンの負荷に応じて、前記計画値を補正してもよい。
本発明によれば、導出手段によって導出されるパイロット比の計画値は、ランバック運転が開始されたときのガスタービンの負荷に応じて補正されるので、ランバック運転を開始したときのガスタービンの負荷の大きさに起因する、パイロット比と計画値とのずれを抑制することができる。
【0010】
また、本発明のガスタービンの制御装置は、前記導出手段が、前記燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差に応じて、前記計画値を補正してもよい。
本発明によれば、導出手段によって導出されるパイロット比の計画値は、燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差に応じて補正されるので、ガスタービンの特性が変化しても、パイロット比と計画値とのずれを抑制することができる。
【0011】
また、本発明のガスタービンの制御装置は、前記導出部が、燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差が予め定められた閾値以上である場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値の導出を行ってもよい。
本発明によれば、燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差が予め定められた閾値以上である場合に、導出手段によるパイロット比の計画値の導出が行われるので、実際のパイロット比とパイロット比の計画値との差が小さいにもかかわらず、パイロット比の計画値が持ち上げられることを抑制できる。
【0012】
一方、本発明に係るガスタービンは、上記記載の制御装置と、前記制御装置によって導出された前記計画値で燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備える。
本発明によれば、ガスタービンに対してランバック運転が行われることによって、負荷が低下しても、パイロット比の計画値を負荷の低下に応じて上昇させることができるので、本発明は、ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できる。
【0013】
また、本発明に係るガスタービンの制御方法は、全燃料流量に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比が予め定められた燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えたガスタービンの制御方法であって、タービン入口の燃焼ガス温度の変化を検出する第1工程と、前記ガスタービンに対して負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われ、かつ前記第1工程によって前記燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を、前記燃焼ガス温度に応じて導出する第2工程と、前記第2工程によって導出された前記計画値でパイロット燃料が前記燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する第3工程と、を含む。
本発明によれば、ガスタービンに対してランバック運転が行われることによって、負荷が低下しても、パイロット比の計画値を負荷の低下に応じて上昇させることができるので、本発明は、ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ランバック運転が行われても、パイロット比が本来の計画値からずれることを抑制できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るGTCCプラントの全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るPL比計画値持上処理の効果の説明に要する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図8】従来のCLCSOとパイロット比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るガスタービンの制御装置、ガスタービン、及びガスタービンの制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るガスタービンコンバインドサイクルプラント(以下、「GTCCプラント」という。)10の全体構成図である。GTCCプラント10は、ガスタービン12、蒸気タービン14、並びに発電機16を備える。
【0018】
ガスタービン12は、圧縮機20、燃焼器22、及びタービン24を備える。
圧縮機20は、回転軸26により駆動されることで、空気取込口から取り込まれた空気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器22は、圧縮機20から車室28へ導入された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。タービン24は、燃焼器22で発生した燃焼ガスによって回転駆動する。
車室28と燃焼器22との間にはバイパス管30が設けられており、バイパス管30は、タービン24の負荷変動により燃焼器22内の空気が不足する状態になった場合に、燃焼器バイパス弁32が開かれると車室28内の空気を燃焼器22内に導入する流路となる。また、圧縮機20とタービン24との間には、圧縮機20からタービン24へ冷却用の空気を導入させるための抽気管34が設けられている。
【0019】
蒸気タービン14は、タービン24の排ガスから熱回収して蒸気を発生させ、該蒸気によって回転駆動する。
【0020】
なお、タービン24、蒸気タービン14、圧縮機20、及び発電機16は、回転軸26によって連結され、タービン24及び蒸気タービン14に生じる回転駆動力は、回転軸26によって圧縮機20及び発電機16に伝達される。そして、発電機16は、タービン24及び蒸気タービンの回転駆動力によって発電する。
【0021】
また、燃焼器22には、パイロットノズル36及びメインノズル38が設けられている。メインノズル38は、パイロットノズル36を取り囲むように複数(例えば8本、図示省略)設けられている。パイロットノズル36には、圧力調整弁40Aで流量調整弁42A前後の差圧が調整され、流量調整弁42Aで流量が調整されたパイロット燃料が供給される。一方、メインノズル38には圧力調整弁40Bで流量調整弁42B前後の差圧が調整され、流量調整弁42Bで流量が調整されたメイン燃料が供給される。
そして、燃焼器22は、パイロットノズル36から供給されたパイロット燃料と圧縮空気とを混合させて燃焼させると共に、メインノズル38から供給されたメイン燃料と圧縮空気とを混合させて燃焼させる。
【0022】
なお、全燃料流量(本第1実施形態ではパイロット燃料流量とメイン燃料流量との和)に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比(以下、「PL比」という。)には、予め計画値(以下、「PL比計画値」という。)が設定されている。そして、燃料制御部44は、PL比計画値に基づいて、流量調整弁42A及び流量調整弁42Bの開度を制御すると共に、パイロット燃料及びメイン燃料の各流量調整弁42A,42B前後の差圧が所定の値となるように圧力調整弁40A及び圧力調整弁40Bを制御する。
ここで、本第1実施形態に係るPL比計画値は、タービン24入口の燃焼ガス温度を無次元化した燃焼負荷指令値(以下、「CLCSO」という。)に対して設定されている。CLCSOは、大気温度、圧縮機20の入口案内翼の開度、及びタービン24の出力値に基づいて導出される値であり、タービン24入口の燃焼ガス温度と比例関係にある。なお、CLCSOについては、特開2007−077866号公報、特開2007−077867号公報、及び特開2007−309279号公報に記載されているため、その詳細を省略する。
【0023】
ところで、GTCCプラント10は、ガスタービン12の負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われる場合がある。ランバック運転とは、すなわち、ある一定の負荷から急速に負荷を低下させる運転であり、機器保護のために行われたりする。
このランバック運転が行われると、急速に負荷が低下するため、負荷の低下に応じてPL比計画値を上昇させる必要がある。しかし、実際のPL比の上昇の度合いは、負荷の低下の度合いに比較して遅く、PL比がPL比計画値を過度的に下回る場合があった。そして、燃焼器に供給される燃料のPL比がPL比計画値を下回ることは、燃焼器22に燃焼振動を生じさせる原因となっていた。
そこで、本実施形態に係るGTCCプラント10では、ランバック運転が行われる場合に、PL比計画値を、ランバック運転が行われていない場合の運転(以下、「通常運転」という。)のPL比計画値よりも大きな値とする処理、すなわちPL比計画値を持ち上げる処理(以下、「PL比計画値持上処理」という。)を行う。
【0024】
図2は、本第1実施形態に係る燃料制御部44で行われるPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
燃料制御部44は、ランバック運転検出部50及びCLCSO出力部52を備える。
【0025】
ランバック運転検出部50は、GTCCプラント10がランバック運転を行っているか否かを検出し、ランバック運転を行っていることを検出した場合は、ランバック運転を行っていることを示すランバック検出信号(High信号)を、例えば、フラグを立てることにより、出力する。なお、ランバック運転検出部50によって、ランバック運転が行われていないことが検出されている場合は、ランバック検出信号の出力は停止される。
そして、ランバック検出信号は、時間遅れ部54を介して、ANDゲートへ入力される。時間遅れ部54は、ランバック運転検出部50がランバック検出信号を出力しても、時間遅れ部54で設定された時間経過後に、ランバック検出信号がANDゲートに入力される。すなわち、時間遅れ部54は、ランバック検出信号に時間遅れを持たせるものである。
【0026】
一方、CLCSO出力部52は、大気温度、圧縮機20の入口案内翼の開度、及びタービン24の出力値に基づいて導出されたCLCSOが出力される。CLCSO出力部52から出力されるCLCSOは、持上量決定部56に入力される。
持上量決定部56は、CLCSOの大きさに応じたPL比計画値の持上量を決定する。なお、本第1実施形態に係る持上量決定部56は、CLCSOの大きさに応じた持上量を示したテーブルデータを予め記憶し、入力されたCLCSOの大きさに応じた持上量を該テーブルデータから抽出することで、持上量を決定する。しかし、これに限らず、持上量決定部56は、例えば、CLCSOの大きさと持上量との関係を示した関数を記憶し、該関数を用いて持上量を決定してもよい。持上量決定部56によって決定された持上量は、乗算部72へ出力される。
【0027】
さらに、CLCSO出力部52から出力されたCLCSOは、CLCSO記憶部60及び偏差算出部62に入力される。
CLCSO記憶部60は、CLCSO出力部52から出力されたCLCSOの値を記憶し、記憶したCLCSOを予め定められた時間後に偏差算出部62へ出力する。
偏差算出部62は、CLCSO出力部52から出力されたCLCSOをCLCSO記憶部60から出力されたCLCSOで減算する。すなわち、偏差算出部62は、上記予め定められた時間前のCLCSOに対する現在のCLCSOの変化をCLCSOの増減量として検出することとなる。そして、偏差算出部62は、検出したCLCSOの増減量を比較部64へ出力する。
【0028】
比較部64は、偏差算出部62から入力された増減量と予め定められた閾値(下限値及び上限値)とを比較し、該増減量(低下量)が下限値として予め定められた閾値を超える場合に、CLCSOが低下していることを示すCLCSO低下信号(High信号)をANDゲート66へ出力する。
ANDゲート66は、ランバック運転検出部50から出力されたランバック検出信号が入力され、かつ比較部64から出力されたCLCSO低下信号が入力されると、オン信号をスイッチ部68へ出力する。
【0029】
スイッチ部68がオフからオンとされると、変化率出力部70から、予め定められた時間当たりの増加率(RI)が乗算部72へ出力される。
乗算部72は、持上量決定部56によって決定された持上量、及び変化率出力部70から出力された増加率が入力され、該持上量に該増加率を乗算し、乗算後の持上量を加算部74へ出力する。
加算部74は、乗算部72から出力された持上量と、現在のCLCSOに応じた通常運転のPL比計画値とを加算し、加算後のPL比計画値を流量制御部76へ出力する。
すなわち、変化率出力部70から出力される増加率とは、持上量決定部56で決定された持上量を、時間の経過と共に0(零)から持上量決定部56で決定された持上量へ徐々に増加させるための値であり、PL比計画値が、通常運転のPL比計画値から持ち上げられたPL比計画値へ不連続に変化することを防止するものである。
また、持上量決定部56と変化率出力部70と加算部74が、ランバック運転が行われ、かつCLCSOの低下が検出された場合に、通常運転のPL比計画値よりも大きなPL比計画値を、CLCSOに応じて導出する導出部78を構成することとなる。
【0030】
そして、流量制御部76は、加算部74から出力されたPL比計画値に基づいて、流量調整弁42A及び流量調整弁42Bの開度を制御することによって、導出部78によって導出されたPL比計画値でパイロット燃料が燃焼器22に供給されるように燃料の流量を制御する。
【0031】
一方、ランバック運転検出部50から出力されているランバック検出信号の停止、及び比較部64から出力されているCLCSO低下信号の停止の少なくとも何れか一方が行われると、ANDゲート66はスイッチ部68をオンからオフとするオフ信号をスイッチ部68へ出力する。
スイッチ部68がオンからオフとされると、変化率出力部70から予め定められた時間当たりの減少率(RD)が乗算部72へ出力され、乗算部72に入力された持上量に乗算される。すなわち、変化率出力部70から出力される減少率とは、持上量決定部56で決定された持上量を、時間の経過と共に持上量決定部56で決定された持上量から0(零)に徐々へ減少させるための値であり、PL比計画値が、持ち上げられたPL比計画値が通常運転のPL比計画値へ不連続に変化することを防止するものである。
【0032】
なお、ランバック運転検出部50でランバック運転が行われていることが検出されていない場合、比較部62でCLCSOの増減量(低下量)が下限値として予め定められた閾値を超えない場合は、ANDゲート66からオフ信号が出力される。そのため、変化率出力部70からは0(零)が出力され、その結果、乗算部72から出力される信号も0(零)となるため、加算部74によって、通常運転のPL比計画値に加算される持上量は、0(零)となり、PL比計画値の持ち上げは行われない。
【0033】
図3は、本第1実施形態に係るPL比計画値持上処理によって導出された持ち上げられたPL比計画値を用いた場合の、PL比とCLCSOとの関係を示したグラフの一例である。同図において、実線は、持ち上げのないPL比計画値であり、破線と一点鎖線はそれぞれ、ランバック運転中にPL比計画値を持ち上げた場合の実際のPL比とPL比計画値を持ち上げない場合の実際のPL比である。
同図に示されるように、PL比計画値を持ち上げた場合の方が、PL比計画値を持ち上げない場合に比較して、PL比計画値とのずれが小さくなる。
【0034】
以上説明したように、本第1実施形態に係るガスタービン12の燃料制御部44は、偏差算出部62がCLCSOの変化を検出し、導出部78が、ガスタービン12に対してランバック運転が行われ、かつ偏差算出部62によってCLCSOの低下が検出された場合に、通常運転におけるPL比計画値よりも大きなPL比計画値を、CLCSOに応じて導出する。そして、流量制御部76が、導出部78によって導出されたPL比計画値でパイロット燃料が燃焼器22に供給されるように、燃料の流量を制御する。これにより、本第1実施形態に係る燃料制御部44は、ランバック運転が行われることによって、負荷が低下しても、PL比計画値を負荷の低下に応じて上昇させることができるので、ランバック運転が行われても、PL比が本来のPL比計画値からずれることを抑制できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、本第2実施形態に係るGTCCプラント10の構成は、図1に示される第1実施形態に係るGTCCプラント10の構成と同様であるので説明を省略する。
図4は、本第2実施形態に係る燃料制御部44で行われるPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。なお、図4における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
本第2実施形態に係る燃料制御部44は、負荷値出力部80を備えている。負荷値出力部80は、ランバック運転が開始されたときのガスタービン12の負荷の大きさを補正量決定部82へ出力する。
補正量決定部82は、負荷値出力部80から出力された負荷の大きさに応じて、持上量決定部56で決定された持上量に対する補正量を決定する。なお、該補正量は、ガスタービン12の負荷が大きいほど持上量を大きくするものである。
また、本第2実施形態に係る補正量決定部82は、負荷の大きさに応じた補正量を示したテーブルデータを予め記憶し、入力された負荷の大きさに応じた補正量を該テーブルデータから抽出することで、補正量としての補正量を決定する。しかし、これに限らず、例えば、補正量決定部82は、負荷の大きさと補正量との関係を示した関数を記憶し、該関数を用いて補正量を決定してもよい。補正量決定部82によって決定された補正量は、乗算部84へ出力される。
【0037】
乗算部84は、持上量決定部56によって決定された持上量、及び補正量決定部82によって決定された補正量が入力される。そして、該持上量と該補正量とを乗算することによって、持上量を補正し、補正後の持上量を乗算部72へ出力する。
本第2実施形態に係る乗算部72は、乗算部84から出力された補正後の持上量、及び変化率出力部70から出力された増加率が入力され、該補正後の持上量に該増加率を乗算し、乗算した補正後の持上量を加算部74へ出力する。
【0038】
以上説明したように、本第2実施形態に係るガスタービン12の燃料制御部44は、導出部78によって導出されるパイロット比の計画値を、ランバック運転が開始されたときのガスタービン12の負荷に応じて補正するので、ランバック運転を開始したときのガスタービン12の負荷の大きさに起因する、PL比とPL比計画値とのずれを抑制することができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、本第3実施形態に係るGTCCプラント10の構成は、図1に示される第1実施形態に係るGTCCプラント10の構成と同様であるので説明を省略する。
図5は、本第3実施形態に係る燃料制御部44で行われるPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。なお、図5における図4と同一の構成部分については図4と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
本第3実施形態に係る燃料制御部44は、PL比計画値出力部90A及びPL比出力部92Aを備えている。
PL比計画値出力部90Aは、通常運転のPL比計画値(加算部74に入力されるPL比計画値と同じ値)を偏差算出部94へ出力する。一方、PL比出力部92Aは、燃焼器22に供給されている燃料のPL比(実際のPL比)を偏差算出部94へ出力する。
【0041】
偏差算出部94は、PL比計画値出力部90Aから出力されたPL比計画値からPL比出力部92Aから出力されたPL比を減算し、減算結果を偏差値として、乗算部96へ出力する。
【0042】
乗算部96は、入力された偏差値に所定の係数を乗算し、乗算結果を乗算部98へ出力する。なお、上記係数は、入力された偏差値にかかわらず、一定としてもよいし、該偏差値に応じて異なる値としてもよい。
【0043】
乗算部98は、乗算部96から出力された乗算結果、及び変化率出力部70から出力された増加率又は減少率が入力され、該乗算結果と該増加率又は該減算率とを乗算し、乗算結果を加算部74へ出力する。
【0044】
本第3実施形態に係る加算部74は、乗算部72から出力された持上量と乗算部98から出力された乗算結果とを、現在のCLCSOに応じた通常運転のPL比計画値に加算し、加算後のPL比計画値を流量制御部76へ出力する。
【0045】
以上説明したように、本第3実施形態に係るガスタービン12の燃料制御部44は、導出部78によって導出されるPL比計画値を、燃焼器22に供給されている燃料のPL比と、PL比計画値との差に応じて補正するので、ガスタービン12の特性が変化しても、実際のPL比とPL比計画値とのずれを抑制することができる。
【0046】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
なお、本第4実施形態に係るGTCCプラント10の構成は、図1に示される第1実施形態に係るGTCCプラント10の構成と同様であるので説明を省略する。
図6は、本第4実施形態に係る燃料制御部44で行われるPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。なお、図6における図4と同一の構成部分については図4と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
本第4実施形態に係る燃料制御部44は、PL比計画値出力部90B及びPL比出力部92Bを備えている。
PL比計画値出力部90Bは、通常運転のPL比計画値(加算部74に入力されるPL比計画値と同じ値)を偏差算出部98へ出力する。一方、PL比出力部92Bは、燃焼器22に供給されている燃料のPL比(実際のPL比)を偏差算出部98へ出力する。
【0048】
そして、偏差算出部98は、PL比計画値出力部90Bから出力されたPL比計画値をPL比出力部92Bから出力されたPL比で減算し、減算結果を偏差値として、比較部100へ出力する。
【0049】
比較部100は、入力された偏差値と予め定められた閾値とを比較し、該偏差値が該閾値以上の場合に、High信号をANDゲート66へ出力する。なお、上記閾値とは、実際のPL比とPL比計画値とのずれ量が、PL比計画値の持ち上げを必要とするほど大きいか否かを判定するためのものである。
【0050】
本第4実施形態に係るANDゲート66は、ランバック運転検出部50から出力されたランバック検出信号が入力され、比較部64から出力されたCLCSO低下信号が入力され、かつ比較部100からHighが入力されると、スイッチ部68をオンとするオン信号をスイッチ部68へ出力する。
【0051】
以上説明したように、本第4実施形態に係るガスタービン12の燃料制御部44は、燃焼器22に供給されている燃料のPL比とPL比計画値との偏差が予め定められた閾値以上である場合に、導出部78による持ち上げられたPL比計画値の導出が行われるので、実際のパイロット比とPL比計画値との差が小さいにもかかわらず、PL比計画値が持ち上げられることを抑制できる。
【0052】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
なお、本第5実施形態に係るGTCCプラント10の構成は、図1に示される第1実施形態に係るGTCCプラント10の構成と同様であるので説明を省略する。
図7は、本第5実施形態に係る燃料制御部44で行われるPL比計画値持上処理の流れを示す機能ブロック図である。
なお、本第5実施形態に係るPL比計画値持上処理は、第3実施形態に係るPL比計画値持上処理に第4実施形態に係るPL比計画値持上処理のPL比計画値出力部90B、PL比出力部92B、偏差算出部98、及び比較部100を追加したものである。そのため、図7における図5及び図6と同一の構成部分については図5及び図6と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
例えば、上記各実施形態では、本発明をGTCCプラント10に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、蒸気タービン14を備えない、ガスタービンプラントに適用する形態としてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態では、PL比計画値持上処理は、ランバック運転が行われ、かつCLCSOの低下が検出された場合に、PL比計画値の持ち上げを行う形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、PL比計画値持上処理は、CLCSOの低下を検出するのではなく、タービン24入口の燃焼ガス温度を実測し、ランバック運転が行われ、かつタービン24入口の燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、PL比計画値の持ち上げを行う形態としてもよい。また、PL比計画値持上処理は、CLCSO、又はタービン24入口の燃焼ガス温度の実測値の替わりに、タービン24入口の燃焼ガス温度を模擬した他の値を用いてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、全燃料流量をパイロット燃料流量とメイン燃料流量との和とする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、全燃料流量をパイロット燃料流量、メイン燃料流量、及び他の種類の燃料流量(例えば、トップハット燃料流量)との和とする形態としてもよい。
【0057】
また、上記各実施形態では、PL比計画値持上処理において、流量制御部76が時間遅れ部54及び変化率出力部70を備える形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、流量制御部76が時間遅れ部54及び変化率出力部70の何れか一方、又は両方を備えない形態としてもよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、PL比計画値持上処理において、ランバック運転が行われ、かつCLCSOの低下が検出された場合に、通常運転のPL比計画値にCLCSOの大きさに応じた持上量を加算することによって、通常運転のPL比計画値よりも大きなPL比計画値を、CLCSOに応じて導出する形態について説明したが、本発明は、これに限定されず、例えば、通常運転のPL比計画値にCLCSOの大きさに応じた係数(>1)を乗算することによって、通常運転のPL比計画値よりも大きなPL比計画値を、CLCSOに応じて導出する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 GTCCプラント
12 ガスタービン
22 燃焼器
24 タービン
44 燃料制御部
62 偏差算出部
76 流量制御部
78 導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全燃料流量に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比が予め定められた燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えたガスタービンの制御装置であって、
タービン入口の燃焼ガス温度の変化を検出する検出手段と、
前記ガスタービンに対して負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われ、かつ前記検出手段によって前記燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を、前記燃焼ガス温度に応じて導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された前記計画値でパイロット燃料が前記燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する流量制御手段と、
を備えたガスタービンの制御装置。
【請求項2】
前記導出手段は、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値を、予め定められた時間当たりの増加率で、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値へと増加させる請求項1記載のガスタービンの制御装置。
【請求項3】
前記導出手段は、前記ランバック運転が開始されたときの前記ガスタービンの負荷に応じて、前記計画値を補正する請求項1又は請求項2記載のガスタービンの制御装置。
【請求項4】
前記導出手段は、前記燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差に応じて、前記計画値を補正する請求項1から請求項3の何れか1項記載のガスタービンの制御装置。
【請求項5】
前記導出部は、燃焼器に供給されている燃料のパイロット比と、予め定められたパイロット比の計画値との差が予め定められた閾値以上である場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値の導出を行う請求項1から請求項4の何れか1項記載のガスタービンの制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のガスタービンの制御装置と、
前記制御装置によって導出された前記計画値で燃料を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器によって生成された燃焼ガスにより駆動するタービンと、
を備えたガスタービン。
【請求項7】
全燃料流量に対するパイロット燃料流量の比であるパイロット比が予め定められた燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器と、該燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えたガスタービンの制御方法であって、
タービン入口の燃焼ガス温度の変化を検出する第1工程と、
前記ガスタービンに対して負荷を所定時間内に所定量以上低下させるランバック運転が行われ、かつ前記第1工程によって前記燃焼ガス温度の低下が検出された場合に、前記ランバック運転が行われていない場合におけるパイロット比の計画値よりも大きなパイロット比の計画値を、前記燃焼ガス温度に応じて導出する第2工程と、
前記第2工程によって導出された前記計画値でパイロット燃料が前記燃焼器に供給されるように燃料の流量を制御する第3工程と、
を含むガスタービンの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−77662(P2012−77662A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222500(P2010−222500)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】