説明

ガスタービンを制御するための方法およびシステム、ならびにこのようなシステムを含むガスタービン

本発明は、可変形状を有する少なくとも1つの部分(210)を備えるコンプレッサシステム(10)、燃焼室、およびタービン組立体を有するガスタービンを適合させるためのシステムおよび方法に関するものであり、前記方法は、ガスタービンのターゲットモードを基に燃焼室に供給されるべき燃料についての流量設定値(C)を設定するステップと、所与の範囲内に燃料流量設定値を維持するために、ガスタービンの熱力学的状態に依存する閾値(C/Pmin’,C/Pmax’)を算出するステップと、瞬時位置を表す位置情報(XGV)と設定値の位置情報(XGV)との間のずれを基にアクチュエータを制御することによって可変形状部の位置を制御するステップとを含み、閾値は、可変形状部の瞬時の位置情報、または検出された位置情報と設定値の位置情報との間のずれ(εXGV)を基にリアルタイム演算によって自動的に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの制御に関し、詳細には航空エンジン用の、より詳細にはターボジェットエンジン用のガスタービンの制御に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットエンジンでは、いくつかの制御ループ、より詳細には:
ガスタービンの燃焼室に供給される燃料の流量に作用することによって、所望の推力に応じて速度設定値にターボジェットエンジンの速度を従動させるための主制御ループと、
可変ジオメトリの一部の位置を従動させるためのローカル制御ループとが設けられる。
【0003】
いくつかのスプールを備える、たとえば低圧(LP)スプール(コンプレッサおよびタービン)と高圧(HP)スプールとを備えるターボジェットエンジンでは、主制御ループによってサーボ制御される量は、LPタービンをLPコンプレッサに接続するシャフトの回転速度NLPであり得る。他の量、詳細には、エンジン圧力比(またはEPR)、すなわちLPコンプレッサ(またはファン)の入口の圧力とLPコンプレッサ(またはファン)の出口の圧力との間の比が使用され得る。
【0004】
また以下で「可変ジオメトリ」によって示される可変ジオメトリの一部は、低減され得るターボジェットエンジンの速度に応じて、または(ある速度から別の速度まで切り換わる)過渡的な段階の間中、設定値に従動される位置を有する。可変ジオメトリのよく知られている例は、可変設定角度を備えるコンプレッサ静翼の組立体、またはVSV(Variable Stator Vanes)、コンプレッサの吐出のための空気を集めるための弁、または飛行時のターボジェットエンジンの全作動時間中に制御されるVBV(Variable Bleed Valves)、またはコンプレッサの過渡的な吐出のために空気を集めるためのさらなる弁、または特別な飛行段階中に制御されるTBV(Transient Bleed Valves)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターボジェットエンジンの音響操作を確実にするために、詳細にはコンプレッサの失速、燃焼の消滅、または過速度を回避するために、閾値が、主制御ループに導入され、これは、ターボジェットエンジンに要求される速度変化の間中、燃料流量の増加または減少を制限する。これらの閾値は、速度の変化の瞬間にターボジェットエンジンの推定される熱力学的状態に応じて算出される。次に、いくつかの環境では、詳細には速度の間の連続的な移行中に、ターボジェットエンジンの推定される熱力学的状態とその実際の状態との間に重大な差異が存在する場合があり、これは、算出した閾値やコンプレッサの寸法取りに対して追加マージンが必要とされることを強いている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の欠点を改善することを目的としており、第1の態様によればこの目的を達成するために、可変ジオメトリの少なくとも一部を備えるコンプレッサ組立体、燃焼室、およびタービン組立体を有するガスタービンを制御するための方法を提案し、方法は:
ガスタービンの所望の速度を基に燃焼室に供給されるべき燃料についての流量設定値を生成するステップと、
最小制限値以上、かつ最大制限値以下の燃料流量設定値を維持するための閾値を算出するステップであり、閾値がガスタービンの熱力学的状態に依存するステップと、
可変ジオメトリ部の瞬時位置を表す検出された位置情報と設定値の位置情報との間の差の関数としてアクチュエータを制御することによって可変ジオメトリ部の位置を制御するステップとを含み、
方法は、本発明によれば:
閾値が、可変ジオメトリ部の瞬時位置を表す検出された位置情報の関数、またはこの検出された位置情報と設定値の位置情報との間の差の関数として、リアルタイム演算によって自動的に調整される。
【0007】
このように、本発明は、可変ジオメトリの実際の位置を表す1つの情報を考慮に入れることによって、最適に閾値を算出するために、ターボジェットエンジンの瞬時の実際の熱力学的状態に一番よいところで近づくことができる点で顕著である。
【0008】
したがって:
コンプレッサ組立体および制御の性能が同等な場合、加速時間が改善されることができ、失速のおそれがより高速への移行中に低減されることができ、または、
制御の性能が同等な場合、コンプレッサ組立体は、失速マージンを減少させることによって、それゆえに質量の減少によって最適化されることができ、または
コンプレッサ組立体の性能が同等な場合、制御の仕様についてより大きな許容差が認められ得る。
【0009】
方法の実施形態によれば、閾値は、可変ジオメトリ部の設定値の位置が対応する、ガスタービンの熱力学的状態の関数として算出され、可変ジオメトリ部の検出された位置と設定値の位置との間の差の関数としてリアルタイムで補正される。
【0010】
方法の他の実施形態によれば、閾値は、可変ジオメトリ部の検出された位置を直接考慮に入れることによって、ガスタービンの熱力学的状態の関数として算出される。
【0011】
可変ジオメトリ部は、可変設定角度を有する静翼の組立体と、コンプレッサ組立体の空気を集めるための弁とからの少なくとも1つであり得る。
【0012】
算出された閾値は、C/P燃空比値であることができ、ここで、Cは、燃焼室に供給されるべき燃料流量であり、Pは、コンプレッサ組立体の出口の圧力である。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、後者は、可変ジオメトリの少なくとも一部を備えるコンプレッサ組立体、燃焼室、およびタービン組立体を有するガスタービンを制御するためのシステムに関し、制御システムは、
ガスタービンの所望の速度の関数として燃焼室に供給されるべき燃料についての流量設定値を生成するための回路であり、最小制限値以上、かつ最大制限値以下の燃料流量設定値を維持するために、閾値を算出するための回路を備える燃料流量設定値を生成するための回路と、
可変ジオメトリ部の検出された位置を表す情報を提供するための位置センサ、その位置を制御するために可変ジオメトリ部に作用するアクチュエータ、および設定値の位置に可変ジオメトリ部の位置を従動させるためにアクチュエータを制御するための回路を備える、可変ジオメトリ部の位置を制御するための回路とを備え、
制御システムは、本発明によれば、閾値を算出するための回路が、可変ジオメトリ部の検出された位置の関数、または検出された位置と設定値の位置との間の差の関数としてリアルタイム演算によって閾値を自動的に調整するために、可変ジオメトリ部の位置を制御するための回路に接続される。
【0014】
1つの実施形態によれば、閾値を算出するための回路は、可変ジオメトリ部の設定値の位置が対応するガスタービンの熱力学的状態の関数として閾値を算出し、算出された閾値を可変ジオメトリ部の検出された位置と設定値の位置との間の差に従って補正するように設計される。
【0015】
他の実施形態によれば、閾値を算出するための回路は、可変ジオメトリ部の検出された位置を直接考慮に入れることによって、ガスタービンの熱力学的状態の関数として閾値を算出するように設計される。
【0016】
制御システムの特徴よれば、閾値を算出するための回路は、可変設定角度を有する静翼の組立体と、コンプレッサ組立体の空気を集めるための弁とから選択される可変ジオメトリ部の位置を制御するための少なくとも1つの回路に接続される。
【0017】
チューニングシステムの他の特徴によれば、閾値を算出するための回路は、C/P燃空比閾値を算出するように設計され、ここで、Cは、燃焼室に供給されるべき燃料流量であり、Pは、コンプレッサ組立体の出口の圧力である。
【0018】
その態様の他のものによれば、本発明は、上で規定されたような制御システムが設けられるガスタービン、詳細には航空機ターボジェットエンジンに関する。
【0019】
本発明は、添付の図面を参照して、指示の通りなるも限定としてではない以下で行われる説明を読むとよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】航空機タービンエンジンを非常に概略的に示す図である。
【図2】先行技術によるターボジェットエンジンを制御するためのシステムのダイヤグラムを示す図である。
【図3】「燃料流量」対「速度(または減速速度)」の変化を示す曲線の図である。
【図4】「燃料/空気混合気である燃空比(C/P)を表す量」対「速度(または減速速度)」の変化を示す曲線の図である。
【図5】N/√Tの関数として、コンプレッサにおいて可変設定角度を有する静翼の設定角度の変化を示す図であり、ここで、Nは、コンプレッサを駆動する翼の回転速度であり、Tは、コンプレッサの入口の温度である。
【図6】本発明の第1の実施形態によるターボジェットエンジン制御システムのダイヤグラムである。
【図7】本発明の第2の実施形態によるターボジェットエンジン制御システムのダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
航空機ターボジェットエンジンへの適用の範囲内で、以下の説明がされる。しかしながら、本発明は、ヘリコプタタービンなどの航空ガスタービンの他のタイプ、または産業用タービンにも適用できる。
【0022】
図1は、飛行機用のツインスプールターボジェットエンジン10を非常に概略的な方法で示している。ターボジェットエンジン10は、インジェクタが設けられる燃焼室11、ならびにHPタービン12およびLPタービン13を駆動する燃焼室11からの燃焼ガスを含む。HPタービン12は、燃焼室11に加圧空気を供給するHPコンプレッサ14にHPシャフトによって接続されるが、LPタービン13は、ターボジェットエンジンの入口でファン15にLPシャフトを通して接続される。
【0023】
先行技術による制御システムの実施形態が、図2によって概略的に示されている。
【0024】
制御システムは、所望の推力に対応する値にターボジェットエンジンの速度を従動させるための主制御ループ100を備えている。図示の例では、従動される量は、LPシャフト16の回転速度NLPである。
【0025】
主制御ループは、スラストレバー角度αmanによって通常表現される推力設定値情報を受け取り、かつ情報のこの部分をLPシャフト速度の設定値NLPに変換するファンクションジェネレータ102を備えている。
【0026】
センサ(図示せず)は、LPシャフトの瞬時の実際値NLPに基づき代表情報を提供する。コンパレータ104は、その符号および振幅がNLPとNLPとの間の差の実際値を反映する差分信号εNLPを供給する。
【0027】
差分εNLPは、PID(Proportional−Integral−Derivative(比例−積分−微分))タイプの補正回路106によって、燃空比設定値(C/P)を表す値に変換され、ここで、Cは、燃焼室に供給されるべき燃料流量であり、Pは、コンプレッサ組立体の出口の圧力である。圧力Pは、実質的に、燃焼室に行き渡るものであり、これは、燃焼室に供給される空気流量を表し、C/P値は、燃料/空気混合気である燃空比を表す(燃焼室に供給される燃料流量と空気流量との比)。
【0028】
2値化回路108は、C/P設定値(C/P)、ならびに量C/Pに対する接合点または最大閾値C/Pmaxの、およびこの同じ量に対する接合点または最小閾値C/Pminの値を受け取る。閾値C/PmaxおよびC/Pminは、たとえばターボジェットエンジンのエンジン制御ユニットECUの中に組み入れられる演算回路110によって生成される。
【0029】
回路108は:
(C/P)≦C/Pmaxおよび(C/P)≧C/Pminのとき、(C/P)**=(C/P)
(C/P)>C/Pmaxのとき、(C/P)**=C/Pmax、および
(C/P)<C/Pmaxのとき、(C/P)**=C/Pmin
のような閾値設定値(C/P)**を生成する。
【0030】
回路112は、閾値設定値(C/P)**、およびHPコンプレッサの出口の圧力P30を表す情報を受け取り、設定値Cに対応する燃料流量を燃焼室に吐出できるように燃料計量ユニット120の計量装置122を制御するために燃料流量設定値Cを生成する。
【0031】
計量装置122は、通常、加圧燃料を供給するための導管124に接続されるその入口と、ターボジェットエンジンの燃焼室のインジェクタに導管126を通して接続されるその出口との間に一定の圧力差を有する計量装置であり、吐出流量は、計量装置の可動部材の位置に比例する。ファンクションジェネレータ114は、設定値Cを位置設定値XDに変換する。
【0032】
コンパレータ116は、位置設定値XD、および計量装置と関連する位置センサ128によって提供される実際位置値XDを受け取り、XDとXDとの間の差分εXDを演算する。PIDタイプの補正回路118は、差分εXDを受け取り、所期の位置に計量装置をもってくるために、計量装置120と関連するサーボ弁130を制御する電流の強さを表す量を生成し、したがって、これは、噴射される燃料の流量を所望の値Cまでもってくるべきである。
【0033】
図3は、ターボジェットエンジンの速度Nの関数として燃料流量Cの変化を示している。
【0034】
図3では、曲線CDおよび曲線CEは、コンプレッサの失速線および希薄消滅線を表している。曲線Cmaxは、流量値最大閾値を表し、実質的に曲線CDに平行であるが、安全マージンdCを与えるために、曲線CDの下方に配置される。曲線Cminは、流量値最小閾値を表し、実質的に曲線CEに平行であるが、安全マージンdCを与えるために、曲線CEの上方に配置される。
【0035】
アイドル速度IDからフルパワー速度FPまで切り換わると、燃料流量は、曲線Cmaxに出会うまで、最初は強く増加し、曲線Cmaxに追従してからFP速度に対応する値に到達する。逆に、FP速度からID速度まで切り換わると、燃料流量は、曲線Cminに出会うまで、最初は強く減少し、曲線Cminに追従してからID速度に対応する値に到達する。
【0036】
曲線CNは、安定状態下での流量値を示している。
【0037】
同様に、図4は、ターボジェットエンジンの速度Nの関数として量C/Pの変化を示している。
【0038】
曲線(C/P)Nは、安定状態下での値を表している。これは、ここでは一定であり、ターボジェットエンジンの不変量を表すことが留意されたい。
【0039】
曲線(C/P)Dおよび曲線(C/P)Eは、コンプレッサの失速線および希薄消滅線を表し、線(C/P)maxおよび線(C/P)minは、最大および最小の接合点の値またはC/Pの閾値を表している。
【0040】
また、ID速度からFP速度へ、およびその逆への過渡状態下でのC/Pの変化も示されている。
【0041】
所与のターボジェットエンジンの場合、閾値(C/P)maxおよび閾値(C/P)minは、ある一定の個数のパラメータに依存する。
【0042】
したがって、(C/P)maxは、HPタービンをHPコンプレッサに接続するシャフトの回転速度NHP、HPコンプレッサの入口の温度T25、コンプレッサの入口の圧力P、入射角i(飛行機の軸と変位方向との間の角度)、飛行機のスリップ角、特にNHP、NLP、P30に対する所定の最大許容値、およびLPタービンの出口の温度T50に依存し、同時にターボジェットエンジンの該当する速度について可変ジオメトリの位置であるべき位置を考慮に入れる。
【0043】
同様に、(C/P)minは、速度NHP、温度T25、圧力P30、および特にNHP、NLP、P30についての最小許容値に依存し、該当する速度について可変ジオメトリの位置であるべき位置を考慮に入れる。
【0044】
飛行時のリアルタイム演算作業を軽くするために、(C/P)maxおよび(C/P)minの値は、
(C/P)max=F(N,T,P,i,...)
(C/P)min=F(N,T,P,i,...)
の形で回路110によって算出され、
ここで、Nは、NHPの瞬時値であり、Tは、T25の瞬時値であり、Pは、エンジンの入口の圧力の瞬時値であり、iは、入射角であり、これらの値は、センサによって提供され、関数F、Fは、現在の条件についてのVG設定値位置を含めて、ターボジェットエンジンの他の不変パラメータを既に組み入れている。
【0045】
コンプレッサの特性およびエンジンの熱力学的特性の関数として閾値(C/P)maxおよび閾値(C/P)minの決定は、それ自体知られている方法で行われる。
【0046】
閾値(C/P)maxの決定(主として、コンプレッサ失速に対する保護)は、コンプレッサの失速特性P output/P input=F(N/√T)が算出されるコンプレッサの寸法を決めると、理論計算によって行われ、次いで、特性は、コンプレッサの試験によって実証される。この特性は、制御ユニットによって利用され得るフィールドに再転写され、すなわち、これらのパラメータがN、C、P、TであるC/P=F(N/√T)は、制御ユニットに使用でき、次いで、エンジン試験によって確認され、調整され得る。
【0047】
閾値(C/P)minの決定(主として、エンジンの希薄消滅からの保護)は、燃焼室の消滅特性、すなわち燃料流量C/空気流量が算出される燃焼室の寸法取りを決めると、理論計算によって行われ、次いで、特性は、燃焼室の試験によって実証される。この特性は、制御ユニットによって利用され得るフィールドに再転写され、すなわち、これらのパラメータがN、C、PであるC/P=F(N)は、制御ユニットに使用でき、次いで、エンジン試験によって確認され、調整され得る。
【0048】
これらの閾値は、通常、エンジン制御ユニットによって処理されるように曲線のパターンで、または関係式で表現される。
【0049】
また、図2の制御システムは、可変ジオメトリ210について少なくとも1つのローカル制御ループ200、たとえば可変設定角度を有するHPコンプレッサの静翼の設定角度の制御ループを備え、この可変設定角度は、ターボジェットエンジンの状態にHPコンプレッサの空気流量偏差を適応させることができる。
【0050】
ここで、可変ジオメトリの位置は、HPシャフト18のNHP速度に従動される。
【0051】
ファンクションジェネレータ202は、速度センサによって提供されるNHPを表す量を受け入れ、可変ジオメトリの位置について設定値XVGを形成する。可変設定角度を有するコンプレッサ翼の場合には、設定角度γの設定値は、N/√Tと対照して図5に指示されるように変化し、ここで、Nは、コンプレッサを駆動するシャフトの回転速度であり、Tは、コンプレッサの入口の温度である。ここで、N=NHP、およびT=T25である。したがって、ファンクションジェネレータ202は、温度T25を表す情報も受け入れる。
【0052】
位置センサ212は、可変ジオメトリ210の実際の位置を表す量XVGを提供する。位置センサ212は、たとえば、可変ジオメトリ210の位置を制御するシリンダアクチュエータと関連する。
【0053】
コンパレータ204は、量XVGおよび量XVGを受け取り、たとえばPIDタイプの補正回路206にXVGとXVGとの間の差分を表すεXVG値を提供する。
【0054】
補正回路206は、可変ジオメトリの位置を設定値にもってくるように、可変ジオメトリのアクチュエータと関連するサーボ弁214に対する制御電流の強さを表す量を形成する。
【0055】
図6および図7は、本発明による制御システムの2つの実施形態を示している。
【0056】
図6および図7では、図2の制御システムのそれらと共通の要素は、同じ参照符号をもち、再び詳細には説明されない。
【0057】
図6の制御システムは、最大および最小C/P閾値を算出するするための回路110が、設定値位置と可変ジオメトリの実際の位置との間の差分εXVGを表す情報を受け取るために、コンパレータ204の出口に接続され、このような差分は、場合により、過渡状態下で非常に重要であり、攪乱しているという点で図2の制御システムと区別している。
【0058】
次に、2値化回路108に提供されるC/P最大閾値は、
(C/P)max’=(C/P)max+kεXVG、ここで(C/P)maxが、図2を参照して指示されるように算出され、kが、失速線での該当する可変ジオメトリの位置の影響係数を表す補正係数であるように、
自動的にリアルタイムで演算される変更値(C/P)max’である。
【0059】
同様に、次に、2値化回路108に提供されるC/P最小閾値は、
(C/P)min’=(C/P)min+kεXVG、ここで(C/P)minが、図2を参照して指示されるように算出され、kが、希薄消滅線での該当する可変ジオメトリの位置の影響係数を表す補正係数であるように、
自動的にリアルタイムで演算される変更値(C/P)min’である。
【0060】
およびkは、正または負であることができる。
【0061】
k1は、それの影響を定義するために、所与のジオメトリ角ang1での失速線(C/P)1、および次いで他のジオメトリ角ang2での失速線(C/P)2を求めること、すなわち
k1=[(C/P)2−(C/P)1]/[ang2−ang1]
によって決定される。
【0062】
k2は、それの影響を定義するために、所与のジオメトリ角ang1’での消滅線(C/P)1’、および次いで他のジオメトリ角ang2’での消滅線(C/P)2’を求めること、すなわち
k2=[(C/P)2’−(C/P)1’]/[ang2’−ang1’]
によって決定される。
【0063】
図7の制御システムは、最小および最大C/P閾値を算出するための回路110が、可変ジオメトリの実際の位置XGVを表す情報を受け取るために、位置センサ212に接続されるという点で図2の制御システムから区別される。
【0064】
演算回路110は、
(C/P)max’’=F’(N,T,P,...,XVG)
(C/P)min’’=F’(N,T,P,...,XVG)
のように、最大(C/P)max’’閾値および最小(C/P)min’’閾値をリアルタイムの演算によって自動的に生成し、ここで、F’およびF’は、これらが該当する瞬間でのVGs(可変ジオメトリ)の位置を有するタービンエンジンの不変パラメータを組み入れる(およびこれらの設定値でない)点で、関数Fおよび関数Fから区別される。
【0065】
閾値(C/P)max’’および閾値(C/P)min’’、ならびにこれらの式を決定する場合には、このことは、閾値(C/P)maxおよび閾値(C/P)minについての決定および式の場合と同様に進められる。
【0066】
図6および図7の実施形態では、可変ジオメトリの実際の位置が考慮に入れられる。しかしながら、これらが有し得る影響に応じて、設定値位置と実際の位置との間の差を表し、または異なる可変ジオメトリの実際の位置を表す情報を演算回路110に提供することによって、いくつかの可変ジオメトリの実際の位置を考慮に入れることができる。
【0067】
本発明は、閾値を最適化するために、タービンエンジンの実際の熱力学的状態を一層効果的に考慮に入れることができる点で顕著である。
【0068】
所与のコンプレッサの場合には、先行技術と比べると、タービンエンジンの熱力学的状態の誤った考慮に関係がある失速や消滅のおそれが低減され、変速時の加速時間が改善され得る。
【0069】
もう1つの与えられる可能性は、失速線との関連においてマージンが低減されること、したがって、コンプレッサの設計を最適化することである。
【0070】
他の与えられる可能性は、所与のコンプレッサについて、可変ジオメトリのサーボ制御装置のより劣った性能を受け入れ、その結果、寸法取りおよび質量を減少させることができ、または、故障の場合は設定値と位置が異なるので故障に対する頑健性の増加を可能にすることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ジオメトリの少なくとも一部を備えるコンプレッサ組立体、燃焼室、およびタービン組立体を有するガスタービンを制御するための方法にして、
ガスタービンの所望の速度を基に燃焼室に供給されるべき燃料についての流量設定値を生成するステップと、
最小制限値以上、かつ最大制限値以下の燃料流量設定値を維持するための閾値を算出するステップであり、閾値がガスタービンの熱力学的状態に依存する、ステップと、
可変ジオメトリ部の瞬時位置を表す検出された位置情報と設定値の位置情報との間の差の関数としてアクチュエータを制御することによって可変ジオメトリ部の位置を制御するステップとを含む方法であって、
閾値が、可変ジオメトリ部の瞬時位置を表す検出された位置情報の関数、またはこの検出された位置情報と設定値の位置情報との間の差の関数として、リアルタイム演算によって自動的に調整されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
閾値が、可変位置部の設定値の位置が対応するガスタービンの熱力学的状態の関数として算出され、可変ジオメトリ部の検出された位置と設定値の位置との間の差の関数としてリアルタイムで補正されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
閾値が、可変ジオメトリ部の検出された位置を直接考慮に入れることによって、ガスタービンの熱力学的状態の関数として算出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
可変ジオメトリ部が、可変設定角度を有する静翼の組立体と、コンプレッサ組立体の空気を集めるための弁とのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
算出された閾値が、C/P燃空比値であり、ここで、Cが燃焼室に供給されるべき燃料流量であり、Pがコンプレッサ組立体の出口の圧力であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
可変ジオメトリの少なくとも一部を備えるコンプレッサ組立体、燃焼室、およびタービン組立体を有するガスタービンを制御するためのシステムにして、
ガスタービンの所望の速度の関数として燃焼室に供給されるべき燃料についての流量設定値を生成するための回路であり、最小制限値以上、または最大制限値以下の燃料流量設定値を維持するために、閾値を算出するための回路を備える燃料流量設定値を生成するための回路と、
可変ジオメトリ部の検出された位置を表す情報を提供するための位置センサ、その位置を制御するために可変ジオメトリ部に作用するアクチュエータ、および設定値の位置に可変ジオメトリ部の位置を従動させるためにアクチュエータを制御するための回路を備える、可変ジオメトリ部の位置を制御するための回路とを備える制御システムであって、
閾値を算出するための回路が、可変ジオメトリ部の検出された位置の関数、または検出された位置と設定値の位置との間の差の関数としてリアルタイム演算によって閾値を自動的に調整するために、可変ジオメトリ部の位置を制御するための回路に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
閾値を算出するための回路が、可変ジオメトリ部の設定値の位置が対応するガスタービンの熱力学的状態の関数として閾値を算出し、算出された閾値を、可変ジオメトリ部の検出された位置と設定値の位置との間の差に従って補正するように設計されることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
閾値を算出するための回路が、可変ジオメトリ部の検出された位置を直接考慮に入れることによって、ガスタービンの熱力学的状態の関数として閾値を算出するように設計されることを特徴とする、請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
閾値を算出するための回路が、可変設定角度を有する静翼の組立体と、コンプレッサ組立体の空気を集めるための弁とから選択される可変ジオメトリ部の位置を制御するための少なくとも1つの回路に接続されることを特徴とする、請求項6から8のいずれかに記載の制御システム。
【請求項10】
閾値を算出するための回路が、C/P燃空比閾値を算出するように設計され、ここで、Cが燃焼室に供給されるべき燃料流量であり、Pがコンプレッサ組立体の出口の圧力であることを特徴とする、請求項6から9のいずれかに記載の制御システム。
【請求項11】
請求項6から10のいずれかに記載の制御システムを備える、ガスタービン。
【請求項12】
請求項6から10のいずれかに記載の制御システムを備える航空機ターボジェットエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−518116(P2012−518116A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549634(P2011−549634)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050061
【国際公開番号】WO2010/092268
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】