説明

ガスタービンエンジンのシール

【課題】取り付け構造体36とシュラウド12との間の冷却チャンネル64を隣接するチャンネル66からシールする。
【解決手段】タービンブレード先端シュラウド12は取り付け構造体36に支持され、その間に、冷却チャンネル64が形成される。リングシール46が、シュラウド12と取り付け構造体36との間の接合部をシールするために用いられており、この取り付け構造体36は、“L”形状の断面積を有する環状のギャップ48を形成している。リングシール46は、“C”形状を有しており、“C”形状の一方の脚部54は“L”形状のギャップ48の軸方向構成要素48a内にのびている。この脚部54は、ピーク60,62がギャップ48の軸方向構成要素48aの互いに対向する壁22a,36aに接触する波打ちパターンとされていて接合部におけるガスシールを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、より詳細にはガスタービンエンジンを取り囲むケーシング内において冷却流体の漏れを低減させるためのタービンブレード用のシュラウドのシールに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンブレードの先端部を取り囲む環状シュラウドのシール性能を改善するため、多くの試みがなされてきている。エンジンケーシングは、航空機エンジンのタービン領域を取り囲んでおり、ケーシング内の種々の要素例えば、シュラウド自体等に冷却ガスを送っている。エンジンのタービン領域は、ケーシングと同心とされており、極めて高温のガスの通路となっている。このように取り囲むケーシング構造体は、相対的に低温に維持することが好ましい。
【0003】
タービンブレード先端部のための環状のシュラウドは、通常周方向にセグメント化されている。シールは、シュラウドセグメントの間におけるギャップでのガスリークを防止するために必要となる。クレベンガー(Clevenger)等の1988年8月30日に付与された米国特許第4,767,260号及びディクソン(Dixon)等に1992年10月27日に付与された米国特許第5,158,430号では、ベーンアッセンブリのプラットホームの間に配設された種々のフェザーシールが開示されている。サンディジュニア(Sandy, Jr)等に1986年3月4日に付与された米国特許第4,573,866号は、ブレード先端シュラウドの端部の間における径方向平面に用いられるフェザーシールを開示している。ベイレイ(Bailey)等に1994年6月7日に付与された米国特許第5,318,402号では、スプライン又はフェザーシール及びシュラウドとフェザーシールとをロックするための周方向のスペーサが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なったシーリングリングは、また異なったシュラウド及びケーシング配置において必要とされる。例えば、分離した連結部が軸方向の構成要素を有している溝を備えた形状とされている場合には、“C”形状のリングとされるのが通常である。米国特許第4,573,866号においては、ベローズタイプリングがこのような溝に用いられている。このようなリングは、良好なシーリング特性を与えるが、それらの径方向の断面の故に圧縮に対して固すぎ、したがってエンジンの保守の際に容易に交換できない。実際、上述のシールを交換する場合には、特殊工具が必要とされていた。
【0005】
本発明の目的は、軸方向構成要素と径方向構成要素とを備えたタイプの改善されたシュラウドセグメント間シールを提供することにある。
【0006】
本発明はさらに、高温ガス流路に冷却ガスがリークするのを低減するための周方向のシュラウドセグメント端部の間に形成されるギャップをシールするためのワンピースシートシールを提供することを目的とする。
【0007】
本発明はさらに、軸方向構成要素を備えた環状ギャップの形成された環状ジョイント部をシールするためのリングシールを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、さらにより簡単に装着するようにするために、径方向に容易に圧縮できるシートメタルから形成されたリングシールを提供することを目的とする。
【0009】
本発明はさらに、タービンブレード先端シュラウドアッセンブリのための改善されたシール構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成によれば、シュラウドがガスタービンエンジンの軸方向に沿った高温ガス流路と同心の冷却ガス通路の間に配設され、前記冷却ガス通路は、前記シュラウドと外側ケーシングとの間に形成され、シュラウドが周方向に配列されたセグメントから構成され、各シュラウドセグメントが軸方向のプラットホームとこのプラットホームから延びた少なくとも1つの径方向リブとを有しており、前記シュラウドセグメントは端部壁とこの端部壁に形成され、プラットホーム及び前記リブに対応する端部壁位置に形成された連続溝とを有しており、シールは、端部壁部分の連続溝の形状にされたワンピースシート部材を有していて、シートの部分は、軸方向構成要素と径方向の構成要素とを有するガスタービンエンジンのタービンブレード先端シュラウドのためのシールが提供される。
【0011】
本発明のより詳細な特定の実施例においては、シールを形成するシートの垂直方向成分は、2重とされており、この垂直成分は、径方向リブの壁に形成される溝と摩擦力を生じさせるための弾性部材とされている。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、ガスタービンエンジンにはリングシールが装着され、環状のギャップが軸方向構成要素に形成された場合に、2つの環状エンジン部品の間を連結させていて、この軸方向のギャップは、互いに離間した径方向壁を有し、リングシールが波打った部分を備える構成とされ、この波打った部分は、一つの波打ち部分のピークを有しているとともに、ギャップの離間した壁のうちの一方に接触し、他方のピークがギャップの他の離間した壁と接触していて、このギャップからジョイント部の両側へとガスが漏れて行くのを防止しているとともに、波打ち部分は、充分にシールが径方向へと容易に圧縮されるような角度とされている。
【0013】
本発明のより具体的な実施例によれば、ガスタービンエンジンのタービンブレード先端部シュラウドにはリングシールが配設されており、シュラウドは、軸方向に向いた高温ガス通路と、該シュラウドと外側ケーシングの間に形成される冷却ガス通路と、の間に配置されている。シュラウドは、軸方向に延びたプラットホームを有しているとともに、少なくとも径方向に延びたリブを備えていて、このリブがケーシング上の取り付け手段に連結されるようになっている。環状のギャップは、シュラウドとケーシングの取り付け手段の間に形成された軸方向の構成要素を有しており、環状ギャップは、シュラウドと取り付け手段とに形成された径方向に互いに離間した壁を有し、前記リングシールは、“C”形状の脚部部分が軸方向に延びていて、この“C”部分がその軸方向の脚部よりも大きな径方向の寸法を有し、かつ、この“C”部分は、ギャップの半径方向部分内に配置されかつ、ギャップの径方向寸法よりも小さな径方向寸法を有した“C”形状を有し、リングシールの脚部は、交互にピークを形成する波打ちパターンを備えていて、このピークは、環状ギャップの径方向に互いに離間した壁に接触して、シュラウドと取り付け手段の間のジョイント部分におけるガスシールを形成して、冷却ガスフローの漏れを防止するとともに、前記波打ちパターンは、シールを径方向の圧縮が容易になるような角度とされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照すると、特に図1及び図2には、エンジン10に用いられる典型的なタービンブレードシュラウド12が示されている。シュラウド12は、複数のセグメント12a...12nを有しており、これらのセグメントは、周方向に配列されているとともに、タービンブレード38がマウントされるロータと同心とされている(図1及び図4)。
【0015】
シュラウドセグメントは、図1においては参照符号12により示されていて、軸方向構成要素を有する本質的に環状のプレート様部材として形成されたプラットホーム14と、それぞれフランジ20,22を備え、対となった上側に延びたリブ16,18とを有している。これらのリブ16,18及びそれぞれのフランジ20及び22は、冷却空気の通路及びチャンバを画成する他、シュラウドプラットホーム14の支持体としても機能する。フランジ20,22は、図4に示されているようにまた、エンジンケーシング32内にシュラウドを取り付けているが、この取り付け構造体36については、後述する。エンジンケーシング32の壁34には、換気用開口33が設けられていて、支持構造体とケーシング32の間の空間に冷却空気が流入するようにさせている。換気用開口31は、また、支持構造体36に設けられていて、この冷却空気をシュラウド12と支持構造体36の間に形成された環状チャンネル35へと流入するようにさせている。最後に、シュラウド12に形成されたアパーチャ37は、冷却空気が高温ガス流路に排気されるようにしている。
【0016】
セグメント間シールを提供するために、各シュラウドセグメント12の端部壁には、連続溝26が配設されており、この連続溝は、軸方向構成要素26bと、リブ16,18に対応する径方向構成要素26a,26cを有している。シール24は、耐熱性合金のシート24から製造されていて、このシールは、曲げられて上向きに延びた要素28,30とプラットホーム14に対応する水平方向部材25,27を形成している。このシールは、当然ながらいかなる好適な耐熱性材料から押し出し成型又はモールドすることもできる。
【0017】
上向きに延びた要素28,30は、それぞれ脚部28a,28b,30a,30bを有していて、これらの脚部は、僅かに広げられてそれぞれの溝よりも広くされており、これが図2に示されている。この構成は、上向きに延びた要素28,30に対して弾性の度合いを与えており、シール24がシュラウド12の端部における溝26に嵌合された場合に、上向きに延びた要素28,30は、それぞれ上向きの溝セグメント26a,26cに挿入されて圧縮され、溝26にシールを堅固に固定するようになっている。その弾性の観点から、セグメントは容易に組み立てることができ、その後分離することもでき、保守が必要とされた場合にはシール24は容易に交換することができる。
【0018】
本発明の特徴は、図3及び図5に示されている。エンジン10のタービン領域は、図4にその一部が示されていて、これに加えてタービンブレード38と、ステータベーン42,44とが示されている。各ステータベーンは、ステータベーンに取り付けられたシュラウド構造体を有しており、シュラウド12は、タービンブレード38のブレード先端部40を取り囲んでいる。
【0019】
図に示されているように、エンジンケーシング32内の取り付け構造体36は、シュラウド12を支持しており、これが図4及び図5に示されている。シュラウド12のフランジ22は、例えば支持構造体36のフランジ47に支持されていても良い。同様にして、フランジ20は、支持構造体36のフランジによって支持されていても良い。リブ16,18は、支持構造体36の構造とともに、シュラウドの内側ならびにこれを取り囲んだ冷却チャンネル64,66を形成している。冷却チャンネル64内の空気の圧力は、周囲のチャンネル66とは異なっており、したがってこれら異なったチャンネルすなわちチャンバは、シールをする必要がある。
【0020】
リングシール46は、フランジ47によって形成された溝により画成されたギャップ、すなわち環状の溝48に設けられている。この場合、溝48は、フランジ22が挿入された状態では、軸方向構成要素48aと径方向構成要素48bを有する“L”形状をなす。リングシール46は、“C”形状の部分52を有しており、この“C”形状部分52は、径方向構成要素48bの領域における溝48よりも径寸法が小さくされている。“C”形状部分52は、脚部54,56を有している。脚部54の延長部は、フラットな角度に面した波打ちパターンを有していて、ピーク60,62を備えた波打ち領域58を構成している。アーム58a,58bによって規定される角度は、鈍角とされている。この角度は鋭角とすることもできるが、シールが容易に径方向の圧縮を行うことができるだけ充分に大きくされている。
【0021】
波打ち領域58の形状は、ピーク60,62の間の径方向の寸法が、溝48の壁36a,22aの間の径方向寸法よりも僅かに大きくなるようにされている。リングシール46は、対向した壁22a,36aに対して継続的にスプリングによるフィッティングを維持させるように、本質的に弾性を有する耐熱性材料又は耐熱性合金から形成されている。したがって、波打ち領域58は、溝48に対してスプリングフィットされているので、ピーク60,62は、対向する壁22a,36aに対して継続的に接触している。
【0022】
したがって、リングシール46の形状により、このリングシールは、組立の際に、シュラウドフランジ22が内部に挿入される前に、溝48にフィットさせることができる。リングシール46は、溝48にフィットさせることが可能なエンドレスリングとして構成することもできる。
【0023】
フランジ22は、溝48内にすで取り付けられているスプリングシール46に対して挿入できるようにするために、図示されているように傾斜部を有していても良い。波打ち部分58の径方向における弾性は、保守の間にシュラウドが溝48から取り外される際にリングシールを容易に交換可能とさせている他、フランジ22の挿入を容易にさせている。
【0024】
したがって、シール24とリングシール46は、双方ともシュラウド12と協働してシール及びシュラウドセグメントのアッセンブリへの装着を容易にさせているとともに、シュラウド12の保守を著しく容易とさせている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1つの実施例の一部分解して示した部分斜視図。
【図2】図1の詳細な正面図。
【図3】本発明の別実施例を示した一部断面斜視図。
【図4】本発明の詳細部を示したガスタービンエンジンのタービン領域の軸方向断面図。
【図5】図4と同一の平面に沿った拡大部分断面図であり、図4の詳細部を示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの環状エンジン部品(12、36)の間の接合部をシールするガスタービンエンジンのためのシール(46)であって、
前記2つの部品の間の前記接合部は、互いに対向する径方向に離間した壁を備えた軸方向構成要素(48a)を含む環状ギャップ(48)を有しており、
前記シール(46)は、一つのピーク(60)が前記環状ギャップ(48)の互いに対向する壁の一方(36a)と接触し、これとは別のピーク(62)が前記壁の他方(22a)に接触する波打ち構造とされた軸方向部分(54)を有していて、前記接合部の両側に流れるガスのリークをシールしていることを特徴とするシール(46)。
【請求項2】
前記シール(46)は、耐熱性の本質的に弾性材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール(46)。
【請求項3】
前記波打ち構造は、交互のピーク(60、62)を有しており、この波打ちパターンは、前記接合部におけるガスシールを構成するように、前記環状ギャップ(48)の前記壁の各々へ接触するために必要な前記ピーク(60、62)の径方向の圧縮が充分にできる角度をなしていることを特徴とする請求項2に記載のシール(46)。
【請求項4】
前記エンジンは、エンジンケーシングと、このエンジンケーシング(32)内で取り付け構造体(47)に係合する軸方向に延びたプラットホーム(22)を備えたシュラウド(12)と、を有していて、前記シュラウド(12)と前記取り付け構造体(36)の間に軸方向構成要素(48a)を有する環状ギャップ(48)を形成しており、
この環状ギャップ(48)は、前記シュラウド(12)および前記取り付け構造体(36)にそれぞれ形成された互いに対向する径方向に離間した壁(22a,48a)を備えており、
前記シール(46)の軸方向に延びた部分(54)の前記波打ち構造の波打ちパターンの前記交互ピーク(60、62)は、
前記シュラウド(12)と前記取り付け構造体(36)との間の接合部におけるガスシールを構成するように、前記環状ギャップ(48)の前記壁(22a,48a)の各々へ接触するために必要な前記ピーク(60、62)の径方向の圧縮が充分にできる角度をなしていることを特徴とする請求項3に記載のシール(46)。
【請求項5】
前記環状ギャップは、さらに互いに対向する径方向に離間した壁を備えた径方向構成要素(48b)を有しており、
前記シール(46)は、この径方向構成要素内に嵌合する“C”形状部分(52)を有しているとともに、この“C”形状部分の径方向の大きさは前記径方向構成要素(48b)の互いに対向する壁の間の寸法よりも小さく、前記シールの軸方向部分(54)は、前記環状ギャップ(48)の前記軸方向構成要素(48a)内へと軸方向に延在する前記“C”形状部分の一部となる脚部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のシール(46)。
【請求項6】
前記シール(46)は、耐熱性合金の屈曲されたシートから形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシール(46)。
【請求項7】
前記シール(46)は、エンドレスリングとされていることを特徴とする請求項6に記載のシール(46)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−342811(P2006−342811A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247476(P2006−247476)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【分割の表示】特願平9−541308の分割
【原出願日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【出願人】(592228505)プラット アンド ホイットニー カナダ コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】Pratt & Whitney Canada, Inc.
【Fターム(参考)】