説明

ガスタービン内側流路カバー部材

【課題】第1のタービン翼車と第2のタービン翼車とを備えるガスタービンのガスタービン内側流路カバー部材を提供する。
【解決手段】ガスタービン内側流路カバー部材300は、第1のタービン翼車と第2のタービン翼車の間に配置され、第1の表面306と第2の表面307とを有する本体305と、本体305の第1の表面306上に設けられる側方部材310と、本体305の第2の表面307上に設けられ翼型スロットと同じ位置に配置される嵌合対301とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明ガスタービンに関し、特にガスタービン内側流路カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来技術のガスタービン構成100を示す。この構成100のような一般的な高温ガス部の設計において、翼形スロット101を含むタービン翼車105、110は、タービン内における燃焼ガスの高温に耐えるようには設計されていない。固定部と回転部との間における間隙は、このガスが翼車材料に到達する原因になるとともに、翼車材料が過剰な保全を必要とする原因になる。このため、翼車105、110間においてキャビティ115内に、該キャビティ115を加圧する低温の空気を導入して、高温の空気がキャビティ115内に漏出することを防いでいる。一般に、ダイアフラム121を含み、キャビティ115がふさがれる。低温の空気を導入するプロセスは、キャビティパージと呼ばれる。キャビティパージは、ガスタービンの高温ガス流路内に漏出する加圧空気が用いられ、それによりガスタービンの効率が低下する。
【0003】
現行の方法では、翼車間のキャビティ内への直接的な空気パージが行なわれる。その他の方法は、高温ガス流路を翼車表面から切り離して密封するプラットフォーム部を有する中間翼車を用いるものである。現行の方法は、圧縮空気を寄生的に利用して、キャビティパージを行なって吸い込みを防ぐようにするため、エンジン性能の面で不利益を招き得る。キャビティは更に、主流路に対して垂直に空気を放出して、ガスが翼又はノズル列に流入する前に混合損失を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,217,348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービン内側流路カバー部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に従って、第1のタービン翼車と第2のタービン翼車とを有するガスタービン内の装置を提供する。装置は、第1の表面と第2の表面とを有する本体と、本体の第1の表面上に設けられる側方部材と、本体の第2の表面上に設けられる嵌合対とを含む。
【0007】
本発明のまた他の態様に従って、ガスタービン組立体を提供する。ガスタービン組立体は、第1のタービン翼車と、第2のタービン翼車と、第1のタービン翼車と第2のタービン翼車との間に設けられるガスタービン内側流路カバー部材とを含む。
【0008】
本発明の更に他の態様に従って、ガスタービンを提供する。ガスタービンは、第1のタービン翼車と、第2のタービン翼車と、第1及び第2のタービン翼車間に設けられる高温部タービンノズルと、第1のタービン翼車と第2のタービン翼車との間に設けられるガスタービン内側流路カバー部材とを含む。
【0009】
上記及びその他の利点と特徴は、図面と併せて以下の説明を読むことによって、より明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のガスタービン構成の側面図である。
【図2】例示的なガスタービン内側流路カバー部材を含むガスタービン構成の側面図である。
【図3】例示的なガスタービン内側流路カバー部材の側面斜視図である。
【図4】ガスタービン内側流路カバー部材の底面図である。
【図5】ガスタービン内側流路カバー部材の下側表面のアイソグリッドパターンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の末尾の特許請求の範囲に、本発明と見なされる主題を特に指摘し、且つ明確に記載する。本発明の上記及びその他の特徴と利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて読むことによって明らかになる。
【0012】
この詳細な説明に、本発明の実施形態を利点及び特徴と併せて、例示として図面を参照して説明する。
【0013】
図2に、例示的なガスタービン内側流路カバー部材300を含むガスタービン構成200を示す。例示的実施形態において、構成200は、自身間にキャビティ215を設けて有する隣接するタービン翼車205、210を含む。構成200は更に、タービン翼車205、210間に設けられるガスタービン内側流路カバー部材300を含む。例示的実施形態において、従来のダイアフラム(図1のダイアフラム121参照)は除去されることがわかる。構成200は更に、本明細書に記載のようにキャビティパージ用の低温空気を供給する高温部タービンノズル220を含む。ガスタービン内側流路カバー部材300を隣接するタービン翼車205、210間に設けることにより、高温ガス流路の温度に直接さらされる上側キャビティ225が小さくなるため、上記のキャビティパージは大幅に軽減され得る。下側キャビティ215は、ガスタービン内側流路カバー部材300により遮蔽されるため、ガスタービンの高温空気流にはさらされない。高温部タービンノズル220は、上側キャビティ225のパージのみを行なうため、キャビティパージが軽減され、従って低温空気の必要量が減少する。多大なキャビティパージが必要とされないため、パージ流に由来する空気損失が大幅に減少して、その結果として効率が大きく向上する。更に、高温部タービンノズル220において一般に用いられるダイアフラムは、もはや用いられないことがわかる。
【0014】
例示的実施形態において、各タービン翼車205、210は、雄型及び雌型の鳩尾形嵌合対206、211(翼形スロット)の少なくとも一方を含む。図示のように、タービン翼車205、210は、雌型の鳩尾形嵌合対206、211を含む。図3に、例示的なガスタービン内側流路カバー部材300の側面斜視図を示す。図3では、ガスタービン内側流路カバー部材300は、対応する雄型の鳩尾形嵌合対301を含んで示されている。例示的実施形態において、鳩尾形嵌合対301は、それぞれのタービン翼車205、210の鳩尾形嵌合対206、211と結合して、ガスタービン内側流路カバー部材300をタービン翼車205、210間において固定する。例示的実施形態において、ガスタービン内側流路カバー部材300は、隣接するタービン翼車205、210に軸方向に隣接する正位置に摺動的に嵌合する。例示的実施形態において、鳩尾形嵌合対301は、本体305の第2の表面307上に設けられる。
【0015】
例示的実施形態において、ガスタービン内側流路カバー部材300は、上側キャビティ225内において所望の流路の形状に合致する所定の形状を持つ第1の(上側)表面306を有する本体305を含む。例示的実施形態において、ガスタービン内側流路カバー部材300は、このような流路に面して何らかの密封構造と噛み合ういくつかの密封機構を有して、燃焼ガスが静翼を取り囲むのを防ぐ。例示的実施形態において、多数のガスタービン内側流路カバー部材300を用いて環体が形成されて、高温部タービンノズル220とガスタービン内側流路カバー部材300の第1の表面306との間において環状部(上側キャビティ225)が形成される。例示的実施形態において、ガスタービン内側流路カバー部材300は更に、ガスタービン内側流路カバー部材300がタービン翼車205、210間に固定されている時に、タービン翼車205、210に接触するように構成される側方部材310を含む。これらの側方部材310は、第1の表面306と連続しているとともに、第1の表面306に対して垂直をなす。例示的実施形態において、側方部材310は、第2の(下側)表面307に対して垂直をなすとともに、更に、鳩尾形嵌合対301と同一平面上に位置する。例示的実施形態において、側方部材310は、タービン翼車205、210の速度が増加すると変形して、側方部材310とタービン翼車205、210の翼部との間においてシールを形成するように構成される。
【0016】
例示的実施形態において、ガスタービン内側流路カバー部材300は更に、本体305の第2の表面307上に設けられる構造支持部315を含む。構造支持部315は、ガスタービン内側流路カバー部材300に半径方向の所望の剛性を与えるように構成される。ガスタービン内側流路カバー部材300は、半径方向の所望の剛性を確実にするために、複合材料、フレーム技術、平滑材料又はその他の構造的処理の何らかの組合せを用いて製造される。例えば、例示的実施形態において、第2の表面307は、該第2の表面307に沿って等方的な支持を達成するアイソグリッドパターンを含む。図4に、ガスタービン内側流路カバー部材300の底面図を示す。図5は、ガスタービン内側流路カバー部材300の下側表面のアイソグリッドパターン320を示す。アイソグリッドパターン320は、ガスタービン内側流路カバー部材300の剛性を維持しつつ、ガスタービン内側流路カバー部材300の全体の重さを減少させる。このため、タービン翼車205、210がガスタービン内側流路カバー部材300から受ける重さが減少する。上述のように、側方部材310は、回転時に変形するように構成されるが、アイソグリッドパターン320を下側表面上に有する本体305は、剛性を維持しつつ軽量化する。このため、それぞれのタービン翼車205、210の鳩尾形嵌合対206、211と結合する鳩尾形嵌合対301に対する負荷要件が緩和される。
【0017】
本明細書に記載の例示的実施形態により、高温ガス流路の温度に直接さらされる翼車キャビティがなくなるため、キャビティパージは解消又は大幅に軽減される。更に、多大なキャビティパージが必要とされないため、使用されるパージ流に由来する空気損失が大幅に減少して、その結果効率が大幅に向上する。タービン翼車205、210の鳩尾形対206、211が覆われるため、タービン長さが減少するので、費用面での利点が実現される。ガスタービン内側流路カバー部材300が存在することにより、更に、段間の漏出が防がれる。更に、ガスタービン内側流路カバー部材300が存在することにより、バケット軸を小さくすることができ、費用面での利点につながる。高温部タービンノズル220上のダイアフラムを完全に除去することも費用面での利点につながり、これによって、プラグ負荷の減少による高温部タービンノズル寿命の延長がもたらされ、従来の構成と比べてノズル部の下において差圧にさらされる部分が小さくなるため、費用面での利点につながる。
【0018】
限られた実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明がこのような開示の実施形態に限定されないことは容易に理解されよう。むしろ、本発明を改変して、上述されていないが本発明の精神及び範囲に相応するいかなる変形、改変、代替又は等価構成を組み込むことができる。また、本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の態様は、上記の実施形態の一部のみを含むことを理解されたい。従って、本発明は、上述の説明に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0019】
100 ガスタービン構成
101 翼形スロット
105 タービン翼車
110 タービン翼車
115 キャビティ
200 ガスタービン構成
205 タービン翼車
206 雌型の鳩尾形嵌合対
210 タービン翼車
211 雌型の鳩尾形嵌合対
215 キャビティ
220 高温部タービンノズル
225 縮小した上側キャビティ
300 ガスタービン内側流路カバー部材
301 雄型の鳩尾形嵌合対
305 本体
306 第1の(上側)表面
307 第2の(下側)表面
310 側方部材
315 構造支持部
320 アイソグリッドパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタービン翼車(205)と第2のタービン翼車(210)とを有するガスタービン(200)であって、前記第1及び第2のタービン翼車(205、210)は翼形スロットを有するガスタービン(200)の前記第1及び第2のタービン翼車(205、210)間に設けられる装置において、
第1の表面(306)と第2の表面(307)とを有する本体(305)と、
前記本体(305)の前記第1の表面(306)上に設けられる側方部材(310)と、
前記本体(305)の前記第2の表面(307)上に設けられる嵌合対(301)とを含む装置。
【請求項2】
前記第2の表面(307)上に設けられる構造支持部(315)を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の表面(306)は、前記ガスタービン(200)内の高温空気の流路に合致する所定の形状を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記側方部材(310)は、前記第1及び第2のタービン翼車(205、210)に接触するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記側方部材(310)が、前記第1及び第2のタービン翼車(205、210)の少なくとも一方の回転引張力下において変形するように構成されることにより、前記第1及び第2のタービン翼車(205、210)の少なくとも一方の表面に当接するシールが形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記側方部材(310)は、前記第1の表面(306)に対して垂直をなし、且つ前記表面と連続する、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記側方部材(310)と前記嵌合対(301)とは同一平面上に位置する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の表面(306、307)の少なくとも一方にアイソグリッドパターン(320)を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
各々の前記第1及び第2のタービン翼(205、210)は、前記本体(305)の前記第2の表面(307)上に設けられる前記嵌合対(301)と結合するように構成される第2の嵌合対(206)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記嵌合対(206、301)は、翼形スロットと同じ位置に配置される、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242757(P2010−242757A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76540(P2010−76540)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】