説明

ガスタービン用再生器

【課題】寿命が長く、且つ、信頼性が高いという長所を生かしつつ、構造の小型化とメンテナンス性に優れたガスタービン用再生器を提供する。
【解決手段】ガスタービンの排ガスdを誘導する筒形のケーシング12と、該ケーシング12内に設けられ、且つ、燃焼用空気aを誘導する多数の伝熱チューブ13により構成されたガスタービン用再生器である。前記ケーシング12に前記伝熱チューブ13を出し入れするための開口部15を設けると共に、該開口部15を密閉する管板14を設ける。更に、前記伝熱チューブ13をU字状に形成すると共に、前記伝熱チューブ13の開口端を管板14に設けた孔9内に挿入固定する。更に、前記管板14に前記伝熱チューブ13の開口端13a,13bに対向する燃焼用空気入口10a及び燃焼用空気出口10bを有するヘッダ10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの排ガスと燃焼用空気との熱交換により、燃焼用空気の予熱を行なうガスタービン用再生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1次エネルギー(燃料)から2つ以上の2次エネルギー(電気や熱など)を取り出す所謂コージェネレーションシステムにおいて、ガスタービンの排ガスと燃焼用空気とを再生器によって熱交換して燃焼用空気の予熱を行ない、タービン効率、換言すれば、発電効率を高める試みが行なわれている。この種の再生器は、ガス同士で熱交換を行なうものであり、ガスタービン用再生器と言われている。
【0003】
このガスタービン用再生器は、排ガスが流れる熱交換器内に伝熱チューブを有し、この伝熱チューブ内を燃焼用空気が流れるようになっており、一般に、(1)プレートフィン型熱交換器、(2)プレート型熱交換器、(3)プライマリサーフェイス型熱交換器、(4)フィンチューブ型熱交換器のうち、熱交換性能の点から上記(1)〜(3)項の熱交換器が使用されてきた。但し、構造上、熱疲労に弱く、寿命が短いという、致命的な欠陥があり、信頼性に難点があった。
【0004】
また、燃焼用空気側および排ガス側が共に圧力損失が大きいため、ガスタービンの性能を悪化させることがある。また、排ガス(2次側)の流路断面が廃熱ボイラに比べて小さいため、接続のための接続ダクトを必要とし、スペース上、不利となる。
【0005】
また、上記(4)項のフィンチューブ型熱交換器は、ボイラや冷却器など、汎用の熱交換器として広く使用されているが、形状が大型となるため(プレートフィン型熱交換器の約5倍)、提案されているもののガスタービン用再生器としての実績は見当たらない。
【0006】
他方、ガスタービン用再生器において、排気ガスが流れる熱交換容器と、該熱交換容器内に配置されたチューブ内を燃焼用空気が流れる伝熱チューブとを有し、該伝熱チューブをヘアピン形状に蛇行させると共に、その中間部分を吊り具を介して熱交換容器の天井に取り付けたガスタービン用再生器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−129979号公報(第4−5頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このガスタービン用再生器は、燃焼用空気入口継手管と燃焼用空気出口継手管とが熱交換器の天井部を貫通した状態で、天井部に適宜の手段によって固定されたいるので、メンテナンス時に前記燃焼用空気入口継手管及び燃焼用空気出口継手管、並びに、この2つの継手管間に接続された伝熱チューブを熱交換器の外に簡単に取り出せないという問題がある。
【0008】
また、ヘアピン形状に蛇行させた伝熱チューブをブラケットやピンなどを用いて熱交換容器の天井に取り付けているため、熱交換器内における組み付け作業となり、メンテナンスが面倒になるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、寿命が長く、且つ、信頼性が高いという長所を生かしつつ、構造の小型化と、メンテナンス性に優れたガスタービン用再生器を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、次のように構成されている。
【0011】
請求項1に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、ガスタービンの排ガスを誘導する筒形のケーシングと、該ケーシング内に設けられ、且つ、燃焼用空気を誘導する多数の伝熱チューブにより構成されたガスタービン用再生器であって、前記ケーシングに前記伝熱チューブを出し入れするための開口部を設けると共に、該開口部を密閉する管板を設け、更に、前記伝熱チューブをU字状に形成すると共に、前記伝熱チューブの開口端を管板に設けた孔内に挿入固定し、且つ、前記管板に前記伝熱チューブの開口端に対向する燃焼用空気入口及び燃焼用空気出口を有するヘッダを設けたことを特徴とするガスタービン用再生器である。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、ケーシングの排ガス通路断面を、廃熱ボイラの排ガス通路断面と同一又は相似形とすることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用再生器である。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、請求項1に記載のガスタービン用再生器を単位ユニットとすることを特徴とするガスタービン用再生器である。
【0014】
請求項4に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、単位ユニットを直列に配置すると共に、隣接する単位ユニットの燃焼用空気出口部と燃焼用空気入口部とを連絡管によって接続することを特徴とする請求項3記載のガスタービン用再生器である。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、請求項1に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、ガスタービンの排ガスを誘導する筒形のケーシングと、該ケーシング内に設けられ、且つ、燃焼用空気を誘導する多数の伝熱チューブにより構成されたガスタービン用再生器であって、前記ケーシングに前記伝熱チューブを出し入れするための開口部を設けると共に、該開口部を密閉する管板を設け、更に、前記伝熱チューブをU字状に形成すると共に、前記伝熱チューブの開口端を管板に設けた孔内に挿入固定し、且つ、前記管板に前記伝熱チューブの開口端に対向する燃焼用空気入口及び燃焼用空気出口を有するヘッダを設けたことを特徴とするものである。
【0016】
従って、次のような多数の効果を有している。
【0017】
すなわち、
(a) 上記のように、燃焼用空気を通すチューブをU字状にすることにより、熱膨張などによる熱疲労損傷を回避することができる。このため、寿命が大幅に延び、信頼性が格段に向上する。
【0018】
(b) ヘッダを共通とすることにより、再生器のケーシングを設置したまま、管束部を外部に取り出すことができる。このため、再生器の点検やメンテナンスが容易になる。
【0019】
(c) 本方式の再生器は、特に、中間冷却サイクル型ガスタービンへの適用が有利であり、単純サイクル型に比べて1次側流体(燃焼用空気)と2次側流体(ガスタービンの排ガス)との温度差を約1.5倍以上とすることができる。このため、他の方式との熱交換器寸法差を抑制することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、ケーシングの排ガス通路断面を、廃熱ボイラの排ガス通路断面と同一又は相似形としたため、再生器のケーシングと廃熱ボイラとを、直接、接続することが可能となった。その結果、再生器の設置スペースを抑制することが可能になった。
【0021】
請求項3に記載の発明に係るガスタービン用再生器は、請求項1に記載のガスタービン用再生器を単位ユニットとすることにより、標準化が可能となった。その結果、コストの低減や、容量の増加に伴う設計費の増加を削減することが可能となった。
【0022】
また、上記のように、再生器を単位ユニット化することにより、大型化に際しても特別な構造変更が必要なく、信頼性を維持することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0024】
図1において、1はガスタービン装置、2は発電機、3は再生器、4は廃熱ボイラである。このガスタービン装置1は、図2に示すように、圧縮機6と、タービン7と、燃焼器8により構成されている。
【0025】
しかして、吸気(燃焼用空気)aは、図2に示すように、ガスタービン装置1の圧縮機6によって圧縮されて圧縮空気a’となった後、再生器3によって予熱され、高圧の予熱空気a”となる。この高圧の予熱空気a”と燃料bとは、燃焼器8に供給され、燃焼器8内で激しく燃焼する。
【0026】
上記の燃焼器8で得られた高温・高圧の燃焼ガスcは、タービン7に導入され、タービン7、圧縮機6および発電機2を稼働する。この発電機2によって発電された電力は、需要先に供給される。
【0027】
上記タービン7から排出された排ガスdは、既に説明したように、再生器3において圧縮空気a’を予熱した後、廃熱ボイラ4に導入され、廃熱ボイラ4による熱エネルギーの回収が行なわれる。
【0028】
上記再生器3は、図3に示すように、ヘッダ10と、管束11と、ケーシング12により構成されている。管束11には、多数本のペアチューブ又はプレート式チューブを用いている。例えば、ペアチューブ13は、図5に示すように、側面視で外側のチューブ13’と、内側のチューブ13”により構成されている。
【0029】
上記管束11は、図5に示すように、ケーシング12内に設けられている。その上、管束11を構成しているペアチューブ13’及び13”は、夫々、U字状に形成され、管板14から吊り下げた構造となっている。このため、熱膨張などによって拘束されない構造となっている。
【0030】
このように、ペアチューブ13’及び13”をU字状にすることにより、その2つの先端部、つまり、2つの開口端13a及び13bを共通の管板14に取り付けることができる。具体的に説明すると、ペアチューブ13’及び13”は、その先端開口端13a及び13bを管板14に設けた図示しない孔9内に挿入して固定している。
【0031】
上記管板14は、ケーシング12の上壁面に設けた開口部15を密閉するように、ケーシング12に取り付けられている。したがって、メンテナンス時に、管板14及び管束11をケーシング12から簡単に取り出すことができる。
【0032】
更に、管板14上には、燃焼用空気入口10aと燃焼用空気出口10bとを有するヘッダ10を設け、全体をコンパクトにする。このヘッダ10は、燃焼用空気入口10aがペアチューブ13の一方の開口端13aに対向し、燃焼用空気出口10bがペアチューブ13の一方の開口端13bに対向するようになっている。
【0033】
しかして、ヘッダ10の燃焼用空気入口10aから導入された燃焼用空気a’は、ペアチューブ13’及び13”の一方の開口端13aからペアチューブ13内に入り、その中を通過する間にガスタービンの排ガスdによって予熱される。予熱された燃焼用空気a”は、ペアチューブ13’及び13”の他方の開口端13bからヘッダ10の燃焼用空気出口10bに流出する。
【0034】
このペアチューブ13は、図4に示すように、排ガスdが通過する方向に対して半ピッチずつ位相をずらし、熱エネルギーを効率的に回収するようになっている。
【0035】
上記ケーシング12の排ガス通路断面は、廃熱ボイラ4の排ガス通路断面と同一、或いは相似形とし、再生器3と廃熱ボイラ4とを、直接、接続し、連絡用ダクトスペースを削減するようになっている。
【0036】
また、熱交換容量が増加する場合には、図6に示すように、上記再生器3を1つの単位ユニット20とする。そして、この単位ユニット20を直列に配置し、ヘッダ10の外部にてU字型の連絡管16によって隣接する単位ユニット20の燃焼用空気出口10bと燃焼用空気入口10aとをそれぞれ接続する。
【0037】
また、上記管束11には、数枚のプレート(図示せず)が取り付けられ、ベアチューブ13の振動防止が図られている。更に、図7のように、伝熱促進用プレート17を取り付けることにより、プレートチューブ型とすることができる。これにより、再生器の全体寸法を変えることなく、排ガス側(2次側)の熱伝達性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るガスタービン用再生器を含むコージェネレーション設備の側面図である。
【図2】本発明に係るガスタービン用再生器を含むコージェネレーションシステムの構成図である。
【図3】本発明に係るガスタービン用再生器の正面図である。
【図4】図3のX−X’拡大断面図である。
【図5】本発明に係るガスタービン用再生器の要部拡大断面図である。
【図6】本発明に係るガスタービン用再生器を直列に組付けた場合の要部拡大断面図である。
【図7】本発明に係るガスタービン用再生器の他の実施形態の要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
a 燃焼用空気
d ガスタービンの排ガス
3 再生器
9 孔
10 ヘッダ
10a 燃焼用空気入口
10b 燃焼用空気出口
12 ケーシング
13 伝熱チューブ
13a,13b 伝熱チューブの開口端
14 管板
15 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの排ガスを誘導する筒形のケーシングと、該ケーシング内に設けられ、且つ、燃焼用空気を誘導する多数の伝熱チューブにより構成されたガスタービン用再生器であって、前記ケーシングに前記伝熱チューブを出し入れするための開口部を設けると共に、該開口部を密閉する管板を設け、更に、前記伝熱チューブをU字状に形成すると共に、前記伝熱チューブの開口端を管板に設けた孔内に挿入固定し、且つ、前記管板に前記伝熱チューブの開口端に対向する燃焼用空気入口及び燃焼用空気出口を有するヘッダを設けたことを特徴とするガスタービン用再生器。
【請求項2】
ケーシングの排ガス通路断面を、廃熱ボイラの排ガス通路断面と同一又は相似形とすることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用再生器。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービン用再生器を単位ユニットとすることを特徴とするガスタービン用再生器。
【請求項4】
単位ユニットを直列に配置すると共に、隣接する単位ユニットの燃焼用空気出口部と燃焼用空気入口部とを連絡管によって接続することを特徴とする請求項3記載のガスタービン用再生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−2622(P2006−2622A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178274(P2004−178274)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】