説明

ガスタービン用吸気フィルタユニット及び吸気装置

【課題】高性能かつコンパクトなガスタービン用吸気フィルタを提供する。
【解決手段】一つのフィルタ枠内に低効率濾材を折り込み加工した中性能フィルタパック7と高効率濾材を折り込み加工した高性能フィルタパック2を気流に垂直に且つ気流方向に捕集効率が順次高くなるように配置し、後段の高性能フィルタパックはフィルタ枠5内にウレタンシール材等の接着剤で空気がリークしないように密着固定し、前段の中性能フィルタパックはフィルタ枠内に着脱自在に取付けるようにする。またプレフィルタを含めた各段階のフィルタ寿命設計において、高性能フィルタを最長周期の定期修理以上とし、それより短い周期で中性能フィルタおよびプレフィルタの寿命が来るようにしたことを特徴とするガスタービン用吸気フィルタユニット1及び吸気装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン内部に吸入される空気を清浄化するための吸気用フィルタユニット及び吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービン用吸気フィルタは長期間安定した集塵効率を維持することが求められてきたが、最近ではガスタービンの出力低下を防ぐ目的で、最終段フィルタとして0.3μm粒子を99.9%以上除去可能な高性能フィルタの設置が求められてきている。既設のガスタービン吸気装置への高性能フィルタの追設はスペース上困難な場合が多いこと、および新設の場合でも省スペース化が強く望まれていることから、高性能かつコンパクトなガスタービン用吸気フィルタとして、特許文献1、2,3,のように、低効率濾材と高効率濾材を密着して重ねて、設置スペースの節減を計ろうとするものや、特許文献4のように中性能フィルタレベルの低効率濾材と高性能フィルタレベルの高効率濾材を一体化した積層濾材として設置スペースの節減を計ろうとするものなどがある。
【0003】
しかし、いずれのフィルタも低効率濾材と高効率濾材が同時期に寿命に達することは稀で、いずれか短い方の濾材寿命で交換を迫られることになり、従来式フィルタを3〜4段並べた従来式のガスタービン吸気装置に比べると高性能フィルタの交換周期が短くなる傾向があり、実用化に向けた信頼性の確立が望まれている。
【0004】
一方、ガスタービン用吸気フィルタでは、通常は最も高価な高性能フィルタの寿命を、例えば3年毎の定期修理で交換すると設定し、その前段の中性能フィルタは1年に一度の定期修理で、プレフィルタは半年ないし1年に一度の定期点検で交換するなどの保全計画に沿ってフィルタ設計が行なわれている。
【0005】
しかし、3年間という長期間の気象・天候および周囲環境の変化などは予測を超えるものがあり、当初計画から外れて早めにフィルタの交換を迫られることもある。
【0006】
このようなガスタービン用吸気フィルタの現状に対し、前記
【0002】
で述べた低効率濾材と高効率濾材を密着して重ねた構造のフィルタや、一枚の濾材を低効率層、高効率層の複数層に積層した濾材を使用するフィルタでは寿命に至ったフィルタ濾材、もしくは濾材層だけを交換することができないため、まだ寿命に至っていないフィルタの濾材を一緒に取り出して廃却することになる。機能的には使用可能であるにも拘わらず分離できないがために廃却されるのは大きな損失である。
【0007】
上記の技術では、中性能フィルタと高性能フィルタの濾材の組合せ、もしくは低効率と高効率の濾材層の組み合わせを一旦決定するとフィルタの寿命まではその組み合わせを変えることが出来ないという欠点の他に、大気塵の粒度分布は厳密にはガスタービンの設置環境ごとに異なるので、その都度中性能と高性能の濾材の最適な組み合わせを検討することが長寿命化には必要であるが、現実には種々の困難、例えばガスタービンの設置場所毎に濾材を設計・選定する不経済性や不測の外乱などによりその設計値から外れるという欠点をも有する。この欠点も上記の技術が目標よりも短い期間で寿命に至ってしまう原因である。
【特許文献1】 特開平7−253028
【特許文献2】 特開平7−253029
【特許文献3】 特開2002−292215
【特許文献4】 再公表特許WO2003−043717
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0008】
まず本発明の目的は、第1に中性能フィルタと高性能フィルタの2個のフィルタパックを1つのフィルタ枠内に備えることを特徴とし、コンパクトでかつ構造が簡単なガスタービン用吸気フィルタユニットを提供しょうとしたものである。
【0009】
また、本発明の目的は、高価な高性能フィルタの寿命が充分に発揮できるまで、中性能フィルタ、プレフィルタの交換で対応しょうとしたものである。
【0010】
また、本発明の目的は、天候・気象の変化や周囲環境の変化がもたらせた結果を基に、中性能フィルタ濾材の性能を見直すことを可能にしたものである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、高性能フィルタの取り換えスペースを不要とし、ハウジングスペースの縮小を計って吸気装置のコンパクト化および製作費の低減を可能にした吸気装置を提供しょうとしたものである。本発明の目的は大改造を要せず高性能フィルタを追設し、ガスタービンの出力低下を防ごうとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決手段は一つのフィルタ枠内に2種類のフィルタパックを気流に垂直に設け、気流方向に捕集効率が順次高くなるように配置したことを特徴としたものである。
【0013】
もう一つの解決手段は、最終段すなわち2次側の高性能フィルタパックはフィルタ枠内にウレタンシール材等の接着剤で空気がリークしないように密着固定したことを特徴としたものである。
【0014】
さらにもう一つの解決手段は、前段の中性能フィルタパックはフィルタ枠内に着脱自在に取付け、中性能フィルタが寿命に達した場合には交換可能にしたことを特徴としたものである。
【0015】
さらにもう一つの解決手段は、プレフィルタを含めた各段階のフィルタ寿命設計においては、高性能フィルタを最長周期の定期修理以上とし、それより短い周期で中性能フィルタおよびプレフィルタの寿命が来るように設計されていることを特徴としたものである。
【0016】
ここで、高性能フィルタとは0.3μm粒子で90〜99.99%(JISB9908の試験方法型式1による)以上の効率を有するもの。中性能フィルタとは65〜95%(JISB9908の試験方法型式2による)以上の効率を有するものをいう。さらに、高性能フィルタパックとは高効率濾材を折り込み加工したものをいい、中性能フィルタパックとは低効率濾材を折り込み加工したものをいう。
【0017】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなはち、ガスタービンの吸気運転によりハウジング内に吸入される大気はまずプレフィルタを通過する。ここで粗い粒径の大気塵が除去され、細かな粒径の大気塵を含んだエアーが吸入される。ここで一つのフィルタ枠内に中性能フィルタパックと高性能フィルタパックを気流に垂直に且つ気流方向に捕集効率が順次高くなるように配置されているので、中性能フィルタで捕集除去されたエアーが高性能フィルタを通過し、粒子径が0.3μm程度で99.9%以上除去された清浄なエアーとしてガスタービンへ供給される。これによりガスタービンの性能を低下させることはない。
【0018】
そして長期連続運転により各フィルタに目詰まりが生じ、寿命になった時点で新規なフィルタに交換するようになるが、本発明のフィルタの寿命設計においては、中性能フィルタの寿命が高性能フィルタの寿命の1/2以下に抑えるように、中性能フィルタおよびプレフィルタの濾過性能を選定しているので、中性能フィルタの数度の交換により後段の高性能フィルタの寿命を交換目標期間より長くすることができる。
【0019】
このため、高性能フィルタの寿命までは、プレフィルタは勿論、交換可能に収納された中性能フィルタパックのみを更新するだけの簡単な保全で対応できる。さらに、高性能フィルタの寿命が来た時点では、ガスタービン用フィルタユニットを一括更新すれば良い。
【発明の効果】
【0020】
上述したように本発明のガスタービン用フィルタユニットおよび吸気装置は次のような効果が得られる。
(1)一つのフィルタ枠内に高性能フィルタパックと中性能フィルタパックを配置し一体化してガスタービン用フィルタユニットとしたので、吸気装置が大幅に小形でかつ軽量となる。
(2)ガスタービン用フィルタユニットとして高性能フィルタ枠内に中性能フィルタパックを収納したので、中性能フィルタの取付枠が不要となり、その分フィルタユニットのコストダウンが計られる。
(3)各フィルタの寿命設計において後段の高性能フィルタの寿命が交換期間目標を超えるように、前段の中性能フィルタおよびプレフィルタの濾過性能を選定したので、プレフィルタおよび交換可能に収納された中性能フィルタパックのみを更新するだけで、高性能フィルタ自身は寿命が来るまで取り替える必要がない。
(4)フィルタ取り換えスペースが一段分不要となり、ハウジングスペースの縮小が可能となる。
(5)既設のガスタービン吸気装置への高性能フィルタの追設は、既に取り付けられている中性能フィルタの代わりに本発明のガスタービン用フィルタユニットに取り替えるだけで良く、大改造などを要しない。
(6)ガスタービン吸気装置を新設するに際しても特別な取付け枠も不要な上、ハウジングスペースの縮小が可能となる。
(7)吸気装置自体の製作費の低減など、経済的効果が甚だ大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るガスタービン用フィルタユニットおよび吸気装置を添付図1〜7に基づいて説明する。
(実施形態)
フィルタユニット1は高性能フィルタパック2と、上下のエンドフレーム3および左右のサイドフレーム4からなるフィルタ枠5とで構成されている。そして、高性能フィルタパック2はフィルタ枠5の内部に設けられており、高性能フィルタパック2の上下はウレタンなどのシール材でエンドフレーム3と接着シールされ、左右の濾材表面も接着材でサイドフレーム4に接着され、1次側空気はリークすることなく全てフィルタパックで濾過されるようになっている。
【0022】
仕切枠6は接着シールを実施する際の堰としての機能と、中性能フィルタパック7の2次側当り面としての機能を有し、エンドフレーム3、サイドフレーム4とは接着材もしくはリベット、ボルトなどで固定されている。中性能フィルタパック7は上述迄の構造に対し、1次側の開口部より装入し、仕切枠6へ当接される。その後、押さえ枠8を中性能フィルタパック7へ当て、掛け金9を回動させてサイドフレーム4の掛け金9と対応する位置に設けられたスリット穴10に掛け金9を嵌入させることによって中性能フィルタパック7を軽く押し込んだ状態で固定する。以上が2段フィルタパックからなるガスタービン用フィルタユニットの構造である。
【0023】
そして、中性能フィルタの圧損の推移を測定するためには中性能フィルタパック7と高性能フィルタパック2との間の圧力を測定する必要があるので、フィルタ枠5の仕切枠6辺りに圧力取り出し口11を設けている。また、高性能フィルタパック2の2次側にフィルタ保護用のラス網(図示せず)を設けるなども随意に実施できるものである。
【0024】
次に従来のガスタービン用吸気装置に高性能フィルタを追設する場合について説明する。図5は一般的な平面図を示し、図6はそのB−B’断面図を示す。21はウエザールーバ、22はプレフィルタ(巻き取り式ロールフィルタで図示)、23は中性能フィルタ、24は多段及び多列の状態で多数のフィルタを取り付けるための取付フレームである。ここで、中性能フィルタ23を2段フィルタパックからなるガスタービン用フィルタユニット1に置き換えることにより、従来のガスタービン用吸気装置に高性能フィルタを追設できるものである。
【0025】
一般的には、中性能フィルタ23の外形寸法は縦610×横610×幅290〜300であるから、本発明の場合最大で300mm奥行きが長くなるが、吸気装置の性能を低下させることも保全に支障をきたすこともなく高効率なガスタービン用吸気装置を実現できるものである。
【0026】
次に従来式のフィルタ取付枠を改造して、本発明の2段フィルタパックからなるガスタービン用フィルタユニット1を装着する実施例を図5,6、7に基づき説明する。従来の中性能フィルタ23を取付けていた取付ボルト25はフィルタ奥行きが長くなった分延長されているが、フィルタ装入時のガイドレール26は本発明のガスタービン用フィルタユニット1の重心が2次側にあるため取付フレーム24に装入すると安定的に仮置き出来るので延長不要の場合が多い。
【0027】
図7に示すように中性能フィルタパック7を含まない状態でフィルタユニット1をガイドレール26に預けて滑らせながら取付フレーム24へ装入し、取付ボルト25に押さえ板27を通してサイドフレーム4の1次側フランジ部に当て取付ナット28を締め込んで固定する。ガスケット部からのリーク防止上4本の取付ボルト25を均等に締め込むこと及び押さえ板27の寸法がフィルタユニット1内に装着する中性能フィルタパック7や押さえ枠8と干渉しない寸法に設計されていることが好ましい。
【0028】
尚、本実施例では、本発明の一実施例を示したもので、これに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ガスタービンプラントにおいてはガスタービンを保護および維持するために、ガスタービンプラントの空気吸気口にハウジングを設け吸気用フィルタを多数並列に並べて外気中の塵埃を除去した清浄エアーを取入れるようにしている。しかし、エアーがフィルタ層を通過する際の通気抵抗すなわち圧力損失を出来るだけ抑えるために吸気用フィルタの数が増えハウジングを大きくせざるをえなかった。これを解決するため、今迄いろいろな工夫がなされてきているが十分満足のいくものでなかった。
【0030】
そこで、本発明は交換可能に収納された中性能フィルタパックと高性能フィルタパックの2個のフィルタパックを1つのフィルタ枠内に備えることを特徴としたコンパクトでかつ構造が簡単なガスタービン用吸気フィルタユニットおよび吸気装置を提供しょうとしたもので、本発明を使用することで、フィルタの交換のためのスペースを縮小してハウジングをコンパクト化し且つ高性能フィルタの最終寿命までは高性能フィルタ枠は交換不要としたもので、産業上の利用価値が非常に高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例を示すガスタービン用フィルタユニットの上面図である。
【図2】図1のA−A’縦断面図である。
【図3】気流方向の2次側を示す図2の右側面図である。
【図4】気流方向の1次側を示す図2の左側面図である。
【図5】一般的なガスタービン用吸気装置を示す概略平面図である。
【図6】図5のB−B’を示す概略断面図である。
【図7】本発明のフィルタユニットの取付け状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・フィルタユニット 2・・・高性能フィルタパック
5・・・フィルタ枠 7・・・中性能フィルタパック
8・・・・押さえ枠 11・・・圧力取り出し口
24・・・取付フレーム 25・・・取付ボルト
27・・・押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ枠内の一方に最終段フィルタとして高性能フィルタパックをウレタンシール材などでフィルタ枠内に気密に接着固定し、他方には中性能フィルタパックを着脱可能に取り付けたことを特徴とするガスタービン用フィルタユニット。
【請求項2】
高性能フィルタパックは0.3μm粒子で90〜99.99%(JISB9908の試験方法型式1による)以上の効率を有し、中性能フィルタパックは65〜95%(JISB9908の試験方法型式2による)以上の効率を有すことを特徴とする請求項1のガスタービン用フィルタユニット。
【請求項3】
フィルタ枠の外形寸法が縦550〜610×横550〜610×幅300〜600で、フィルタ枠内に収納した高性能フィルタパックと中性能フィルタパックとの間に圧力取り出し口を設けたことを特徴とする請求項1のガスタービン用フィルタユニット。
【請求項4】
各段のフィルタ寿命設計において、高性能フィルタの寿命が交換目標期間を超えるように、中性能フィルタおよびプレフィルタの濾過性能を選定した上で中性能フィルタの寿命を高性能フィルタの寿命の1/2以下に抑えたことを特徴とする請求項1のガスタービン用フィルタユニット。
【請求項5】
取付フレームの各取付位置にフィルタユニットを装入して取付けボルトなどでフィルタユニットを取付フレームに取り付けることにより、中性能フィルタと高性能フィルタを一度に且つ一個所に取り付けたことを特徴とするガスタービン用吸気装置。
【請求項6】
フィルタユニットを取付フレームに取付ボルトで取り付ける場合にフィルタ枠を押さえて固定する押さえ板が、着脱可能な中性能フィルタパックを出し入れする際、押さえ枠や中性能フィルタパックと干渉しない範囲の寸法であることを特徴とする請求項5のガスタービン用吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−46587(P2007−46587A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254061(P2005−254061)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】