説明

ガスタービン装置

【課題】空気圧を利用したラビリンスシールと転がり軸受を有するガスタービンと、すべり軸受を有する減速機とを備えたガスタービン装置において、低回転数運転時にラビリンスシールでの潤滑油漏れを防止する。
【解決手段】ガスタービン1の定格回転数運転時、機付潤滑油ポンプ17が駆動してガスタービン1の転がり軸受6,8 と減速機15のすべり軸受16に潤滑油が供給される。コンプレッサ2からの空気圧によりラビリンスシール7,9 の潤滑油漏れはない。低回転数運転時等には電動予潤滑ポンプ28が作動して潤滑油を減速機15のすべり軸受16のみに供給する。低回転数運転では摩擦の小さい転がり軸受は潤滑不要であり、摩擦が大きい減速機15のすべり軸受16は潤滑が必要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦の少ない転がり軸受を有するとともに、その軸受シールとして圧縮機による空気圧を利用した非接触式密封手段を有するガスタービンと、摩擦の大きいすべり軸受を有する減速機とを備えたガスタービン装置に係り、特に停止時や低速度回転時にガスタービンの非接触式密封手段から潤滑油漏れが起こらないようにしたガスタービン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、ガスタービンと減速機からなるガスタービン装置におけるガスタービンの基本的な構造を例示したものである。図3に示すように、ガスタービン1では、空気を圧縮するコンプレッサ2と燃焼ガスで駆動されるタービン3が共通のタービン軸4に取り付けられており、コンプレッサ2からの圧縮空気により燃料ガスを燃焼器5で燃焼させ、生成された燃焼ガスでタービン3を駆動してタービン軸4を回転させるようになっている。
【0003】
図3に示すように、コンプレッサ2とタービン3の間には、タービン軸4を回転自在に支持する第1の転がり軸受としてローラ軸受6が設けられている。このローラ軸受6の両側には、一対の第1の非接触式密封手段としてのラビリンスシール7,7がタービン軸4を貫通して設けられており、ローラ軸受6を密封している。また、コンプレッサ2について、タービン3が設けられた側とは反対側に、タービン軸4を回転自在に支持する第2の転がり軸受としてボール軸受8が設けられている。このボール軸受8とコンプレッサ2との間には、第2の非接触式密封手段であるラビリンスシール9がタービン軸4を貫通して設けられており、ボール軸受8を密封している。タービン3とローラ軸受6と一対のラビリンスシール7,7はタービンケース10中に納められている。コンプレッサ2とボール軸受8とラビリンスシール9はコンプレッサケース11に納められている。
【0004】
図3に示すように、このガスタービン1のボール軸受8とローラ軸受6には潤滑油が供給されるようになっている。さらに、これら軸受8,6に潤滑油が供給されている際には、ガスタービン1のコンプレッサ2で生成された圧縮空気が、圧縮空気供給管12により、ローラ軸受6の両側にあるラビリンスシール7,7の各シール部分に外側から与えられえるとともに、ボール軸受8のラビリンスシール9の内部にも与えられるようになっている。これによって、ローラ軸受6に与えられた潤滑油がラビリンスシール7からタービン3側に漏れるのが防止されるとともに、またボール軸受8に与えられた潤滑油がラビリンスシール9からコンプレッサ2側に漏れるのが防止されるようになっている。
【0005】
図4は、図3を参照して説明した前記ガスタービン1を有するガスタービン装置の全体構成例を示したものである。このガスタービン1のタービン軸4には減速機15が連結されており、タービン軸4の回転速度を適度に減速して出力できるようになっている。この減速機15の図示しない回転軸はすべり軸受16によって回転自在に支持されており、該すべり軸受16には潤滑油が供給されるようになっている。
【0006】
このガスタービン装置が運転されている間、前述したようにガスタービン1のボール軸受8及びローラ軸受6と、減速機15のすべり軸受16とには潤滑油が供給されるが、この主潤滑は第1の潤滑油供給手段によって行なわれる。図4に示すように、第1の潤滑油供給手段は、第1の潤滑油ポンプとして機付潤滑油ポンプ17を備えている。機付潤滑油ポンプ17は減速機15に連動して駆動され、潤滑油タンク18から潤滑油を汲み上げて潤滑油冷却器19の入口に送り込む。なお、潤滑油冷却器19の入口の手前の配管には調圧弁20が接続されている。潤滑油冷却器19の出口に接続された潤滑油経路21は、逆止弁22とフィルタ23を経た後、ガスタービン1のローラ軸受6と減速機15のすべり軸受16に並列に接続され、さらにすべり軸受16に接続された潤滑油経路からは分岐管24が派生してガスタービン1のボール軸受8に接続されている。なお、フィルタ23の先にある潤滑油経路21には前記調圧弁20が接続されている。そして、ガスタービン1のローラ軸受6を潤滑した潤滑油は戻り経路25から潤滑油タンク18に戻り、減速機15のすべり軸受16及びガスタービン1のボール軸受8を潤滑した潤滑油は他の戻り経路26から潤滑油タンク18に戻るように構成されている。
【0007】
図4に示すように、このガスタービン装置は、機付潤滑油ポンプ17によって潤滑油が供給されるまでの低速度回転域でも各軸受に潤滑油を供給できるように、予潤滑のための第2の潤滑油供給手段を備えている。第2の潤滑油供給手段は、第2の潤滑油ポンプとして、ガスタービン1の運転からは独立して任意に運転可能なモータ27に接続された電動予潤滑ポンプ28を備えている。電動予潤滑ポンプ28の吐出口に接続された潤滑油経路29には逆止弁30が設けられ、この逆止弁30の出口側は、第1の潤滑油供給手段の潤滑油経路21に対し、前述した逆止弁22とフィルタ23の間に接続されている。従って、図5に示すように、機付潤滑油ポンプ17による潤滑油の供給が始まるまでの低速度回転域では、電動予潤滑ポンプ28が作動して潤滑油をガスタービン1と減速機15の双方に供給することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来のガスタービン装置によれば、ガスタービン1の軸受6,8から潤滑油を外に漏らさないようにするため、非接触式密封手段であるラビリンスシール7,9を軸受6,8に隣接して設け、さらに運転中のコンプレッサ2で発生した空気圧力をラビリンスシール7,9に加えてタービン軸4をシールする軸封方式が採用されている。このため、装置の停止時あるいは低速度回転時(例えば定格の15%程度)のようにコンプレッサ2の出口の空気圧力が潤滑油圧力に比べて低くなった場合には、タービン軸4のシール性が低下し、ラビリンスシール7,9から潤滑油が外に漏れることがあるという問題があった。
【0009】
特に、前述した従来のガスタービン装置によれば、装置の停止時あるいは低速度回転時に予潤滑を行なうための電動予潤滑ポンプ28が、ガスタービン1と減速機15の双方に接続された主潤滑用の供給系統に接続されているので、次のような場合に油漏れの問題が発生しやすい。
【0010】
1)図5に示すように、ガスタービン装置の停止中、またはガスタービン装置の停止後に、摩擦が比較的大きいすべり軸受16を保護するために電動予潤滑ポンプ28を作動させて予潤滑を行なう場合がある。この状態では、コンプレッサ2の出口の空気圧力が潤滑油圧力に比べて低いので、コンプレッサ2の空気圧力とラビリンスシール7,9でタービン軸4をシールする軸封方式が機能せずにシール性が低下し、図3中に破線で示した「漏れ」のように、電動予潤滑ポンプ28がガスタービン1に供給した潤滑油がラビリンスシール7,9から外に漏れてしまう。
【0011】
2)図6に示すように、例えば3台のガスタービン1の各排気煙道が共通の集合排気煙道31を介して煙突32に接続されており、そのうち2台のガスタービン1が運転され、残り1台のガスタービン1が停止している場合、運転中の2台のガスタービン1の排気によって集合排気煙道31に排気ドラフトが発生し、この排気ドラフトにより、停止しているガスタービン1がつれまわりを起こすことがある。このような場合には、停止しているガスタービン1において、図示しない減速機15の摩擦が比較的大きいすべり軸受16を保護するために予潤滑を行うことがある。しかしながら、このような状況で予潤滑を行なうと、1)で説明したようにコンプレッサ2の空気圧力が不十分であるためにラビリンスシール7,9のシール機能が低下し、電動予潤滑ポンプ28がガスタービン1に供給した潤滑油がラビリンスシール7,9から外に漏れてしまう。
【0012】
3)図7に示すように、高層ビル等の地下にガスタービン1を設置し、屋上に煙突32を設けた施設においては、ガスタービン1の停止直後の煙道内の排気残温度と、煙突32の上空の冷気による密度差で煙道内に排気ドラフトが生じ、この排気ドラフトにより、停止しているガスタービン1がつれまわりを起こす。より具体的には、煙突高さ200m、排気温度300℃、煙突出口周囲温度20℃の場合、約1200Paのドラフト力が作用し、ガスタービン1及びこれに連結された減速機15は定格回転数の15%程度で回転することが試験で確認されている。このような場合にも、図示しない減速機15の摩擦が比較的大きいすべり軸受16を保護するために予潤滑を行う場合がある。しかしながら、このような状況で予潤滑を行なうと、1)で説明したようにコンプレッサ2の空気圧力が不十分であるためにラビリンスシール7,9のシール機能が低下し、電動予潤滑ポンプ28がガスタービン1に供給した潤滑油がラビリンスシール7,9から外に漏れてしまう。
【0013】
本発明は、上述した従来の問題点を解決することを目的としており、摩擦の少ない転がり軸受を有するとともに、その軸受シールとして圧縮機による空気圧を利用した非接触式密封手段を有するガスタービンと、摩擦の大きいすべり軸受を有する減速機とを備えたガスタービン装置において、特に停止時や低速度回転時にガスタービンの非接触式密封手段から潤滑油漏れが起こらないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載されたガスタービン装置は、
空気を圧縮するコンプレッサと、前記コンプレッサからの圧縮空気により燃料ガスを燃焼させて生成した燃焼ガスで駆動されるタービンと、前記コンプレッサと前記タービンが取り付けられたタービン軸と、前記コンプレッサと前記タービンの間又は外側に配置されて前記タービン軸を支持する第1の転がり軸受と、前記第1の転がり軸受を密封するために前記タービン軸に設けられた第1の非接触式密封手段と、前記コンプレッサについて前記タービンが設けられた側とは反対側に配置されて前記タービン軸を支持する第2の転がり軸受と、前記第2の転がり軸受を密封するために前記タービン軸に設けられた第2の非接触式密封手段とを有するガスタービンと、
前記ガスタービンの前記タービン軸に連結された回転軸と前記回転軸を支持するすべり軸受とを有する減速機と、
前記減速機に連動して駆動され、前記ガスタービンの前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受と、前記減速機の前記すべり軸受に潤滑油を供給する第1の潤滑油供給手段と、
前記第1の潤滑油供給手段によって前記ガスタービンに潤滑油が供給されている際に、前記ガスタービンの前記コンプレッサで生成した圧縮空気を、前記第1の非接触式密封手段と前記第2の非接触式密封手段に与えることにより、前記第1の非接触式密封手段及び前記第2の非接触式密封手段から潤滑油が外部に漏洩するのを防止する圧縮空気軸封手段と、
を有するガスタービン装置において、
前記第1及び第2の非接触式密封手段から潤滑油が漏洩するのを防止するためには前記圧縮空気軸封手段から供給される圧縮空気の圧力が不十分であるような前記ガスタービンの駆動状況下において駆動され、前記ガスタービンの前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受には潤滑油を供給することなく、前記減速機の前記すべり軸受のみに潤滑油を供給する第2の潤滑油供給手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載されたガスタービン装置は、請求項1記載のガスタービン装置において、
前記第1の潤滑油供給手段は、前記減速機に連動して駆動される第1の潤滑油ポンプと、前記第1の潤滑油ポンプの吐出口を前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受に並列に連結するとともに、さらに第1の逆止弁を介して前記すべり軸受に並列に連結する第1の潤滑油経路とを有し、
前記第2の潤滑油供給手段は、前記ガスタービンの運転からは独立して任意に運転可能である電動式の第2の潤滑油ポンプと、前記第2の潤滑油ポンプの吐出口を第2の逆止弁を介して前記第1の潤滑油経路の前記第1の逆止弁の出口側に接続する第2の潤滑油経路とを有していることを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載されたガスタービン装置は、請求項2記載のガスタービン装置において、
前記ガスタービンにおいて前記タービンからの排気が煙道を介して排出されるように構成されており、前記煙道に生じる排気ドラフトによって前記ガスタービン及び前記減速機が連れ回りする場合に、前記第2の潤滑油供給手段を作動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載されたガスタービン装置は、相対的に摩擦が少ない転がり軸受を有するガスタービンと、相対的に摩擦が大きいすべり軸受を有する減速機とを備え、ガスタービンの転がり軸受はコンプレッサからの空気圧と非接触式密封装置でシールする構成とされている。かかる構成において、ガスタービンのコンプレッサで得られる空気圧では非接触式密封装置でのシールが不十分となるような駆動状況、例えば停止中又は定格回転数の15%以下程度の運転中において、予潤滑用の第2の潤滑油供給手段を駆動し、摩擦の少ないガスタービンの転がり軸受には潤滑油を供給することなく、摩擦の大きい減速機のすべり軸受のみに潤滑油を供給することにより、ガスタービンの非接触式密封手段からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0018】
請求項2に記載されたガスタービン装置によれば、回転数が比較的高いガスタービンの運転時には、減速機に連動して駆動される第1の潤滑油ポンプによってガスタービンの転がり軸受と減速機のすべり軸受の両方に潤滑油を供給することができ、停止時や回転数が比較的低いガスタービンの運転時には、ガスタービンから独立した電動式の第2の潤滑油ポンプによって、第2の逆止弁を介して第1の潤滑油経路の第1の逆止弁の出口側に潤滑油を供給するので、摩擦の少ないガスタービンの転がり軸受には潤滑油を供給せずに、摩擦の大きい減速機のすべり軸受のみに潤滑油を供給して請求項1記載のガスタービン装置による効果を挙げることができる。
【0019】
請求項3に記載されたガスタービン装置によれば、タービンからの排気が煙道を介して排出されることにより生じる排気ドラフトによってガスタービンと減速機が連れ回りする場合において、第2の潤滑油供給手段を作動させて摩擦の大きい減速機のすべり軸受のみに潤滑油を供給することにより、請求項2記載のガスタービン装置による効果を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガスタービン装置の全体構成図において、予潤滑時の潤滑油の流路を示した図である。
【図3】ガスタービンの軸受構造及びシール構造を示す断面図である。
【図4】従来のガスタービン装置の全体構成図である。
【図5】従来のガスタービン装置の全体構成図において、予潤滑時の潤滑油の流路を示した図である。
【図6】共通の集合排気煙道に接続された複数のガスタービン装置の全体構成図である。
【図7】高い排気煙突を備えたガスタービン装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン装置の全体構成図である。
実施形態のガスタービン1は、潤滑油供給経路を除き、図3で示したガスタービン1と同様の構成であり、タービン軸4、タービン軸4に取り付けられたコンプレッサ2及びタービン3、タービン軸4を支持するローラ軸受6及びボール軸受8、ローラ軸受6とボール軸受8を軸封するラビリンスシール7,9、コンプレッサ2からの圧縮空気をラビリンスシールに供給する圧縮空気供給管12を有している。よって、図3の記載及びこれを参照した「背景技術」における説明を援用して実施形態におけるガスタービン1の構成については説明を省略する。
【0022】
図1に示すように、このガスタービン1のタービン軸4には減速機15が連結されており、タービン軸4の回転速度を適度に減速して出力できるようになっている。この減速機15の図示しない回転軸はすべり軸受16によって回転自在に支持されており、該すべり軸受16には潤滑油が供給されるようになっている。
【0023】
図1に示すガスタービン装置が、定格回転数での運転その他所定の回転数以上の状態で運転されている間、ガスタービン1のボール軸受8及びローラ軸受6と、減速機15のすべり軸受16には潤滑油が供給されるが、このような定格回転数等における主潤滑は、第1の潤滑油供給手段によって行なわれる。図1に示すように、第1の潤滑油供給手段は、第1の潤滑油ポンプとして機付潤滑油ポンプ17を備えている。機付潤滑油ポンプ17は減速機15に連動して駆動され、潤滑油タンク18からフィルタ33を介して潤滑油を汲み上げ、潤滑油冷却器19の入口に送り込む。なお、潤滑油冷却器19の入口の手前の配管には調圧弁20が接続されている。潤滑油冷却器19の出口に接続された第1の潤滑油経路41は、潤滑油冷却器19に潤滑油が戻ることを防止する逆止弁22と第1のフィルタ23を経た後、ガスタービン1のローラ軸受6及びボール軸受8にそれぞれ並列に接続されるとともに、さらに第1の逆止弁42を介して減速機15のすべり軸受16にも並列に接続されている。なお、第1のフィルタ23の出口の潤滑油供給経路41には前記調圧弁20が接続されている。
【0024】
そして、ガスタービン1のローラ軸受6を潤滑した潤滑油は戻り経路25から潤滑油タンク18に戻り、減速機15のすべり軸受16及びガスタービン1のボール軸受8を潤滑した潤滑油は他の戻り経路26から潤滑油タンク18に戻るように構成されている。
【0025】
図1に示すように、このガスタービン装置は、機付潤滑油ポンプ17によって潤滑油が供給されるまでの低速度回転域において、すべり軸受16に潤滑油を供給できるように、予潤滑のための第2の潤滑油供給手段を備えている。第2の潤滑油供給手段は、第2の潤滑油ポンプとして、ガスタービン1の運転からは独立して任意に運転可能なモータ27に連結された電動予潤滑ポンプ28を備えている。電動予潤滑ポンプ28の運転圧力は、機付潤滑油ポンプ17の運転圧力ほど高いものでなくてもよく、電動予潤滑ポンプ28に設けられた図示しないリリーフ弁により適当な値となるよう機械的に設定されている。電動予潤滑ポンプ28の吐出口に接続された第2の潤滑油経路43には、第2のフィルタ44と第2の逆止弁45が設けられ、この第2の逆止弁45の出口側は、第1の潤滑油経路41の第1の逆止弁42の出口側に接続されている。
【0026】
本実施形態のガスタービン装置によれば、ガスタービン1が定格回転数で回転しているような所定の回転数以上の駆動状態では、機付潤滑油ポンプ17が駆動され、ガスタービン1のローラ軸受6及びボール軸受8と、減速機15のすべり軸受16とに、第1の潤滑油経路41を介してそれぞれ潤滑油が供給される。これによってガスタービン1及び減速機15は滑らかに回転することができる。また、この駆動状態では、ガスタービン1のコンプレッサ2からの圧縮空気が十分な圧力を有しているため、ガスタービン1におけるラビリンスシール7,9での軸封は良好に行われ、ローラ軸受6及びボール軸受8に供給された潤滑油がラビリンスシール7,9から外に漏れ出すことはない。
【0027】
本実施形態のガスタービン装置によれば、機関停止中、又は機関停止後や機関始動直後などであって、ガスタービン1の回転数が所定の回転数よりも低い場合(例えば定格回転数の15%程度以下の場合)には、電動予潤滑ポンプ28が作動して潤滑油を減速機15のみに供給することができる。このような低回転数の運転では、摩擦が比較的小さいガスタービン1のローラ軸受6及びボール軸受8には潤滑油を供給する必要性は少なく、摩擦が比較的大きい減速機15のすべり軸受16には円滑な回転を確保するために潤滑油を供給する必要性が大きいからである。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態のガスタービン装置では、電動予潤滑ポンプ28からの潤滑油を導く第2の潤滑油経路43が、減速機15のすべり軸受16に潤滑油を供給する第1の潤滑油経路41に設けられた第1の逆止弁42の出口側に接続されているので、図2中に示した潤滑油の流れのように、電動予潤滑ポンプ28からの潤滑油は第1の逆止弁42に阻まれてガスタービン1のローラ軸受6及びボール軸受8に向かうことはなく、摩擦が比較的大きい減速機15のすべり軸受16のみに供給され、減速機15の円滑な作動が確保される。ガスタービン1のローラ軸受6及びボール軸受8には潤滑油が供給されないが、ローラ軸受6及びボール軸受8はすべり軸受16に比べて摩擦が比較的小さいので一時的に潤滑油を供給しなくとも低回転数運転では問題が生じることはない。また、ガスタービン1の回転数が低い駆動状態では、ガスタービン1のコンプレッサ2からの圧縮空気は空気圧を利用したシールのためには十分ではないが、前述した通りローラ軸受6及びボール軸受8に潤滑油は供給されていないのであるから、ガスタービン1のラビリンスシールで潤滑油が漏れることはない。
【0029】
「発明が解決しようとする課題」の項において図6を参照して説明したのと同様の構造を本実施形態のガスタービン装置で構成した場合について説明する。すなわち3台の本実施形態のガスタービン装置の各排気煙道が共通の集合排気煙道31を介して煙突32に接続されており、そのうち2台のガスタービン1が運転され、残り1台のガスタービン1が停止している場合、運転中の2台のガスタービン1の排気によって集合排気煙道31に排気ドラフトが発生し、この排気ドラフトにより、停止しているガスタービン1がつれまわりを起こすことがある。このような場合には、停止中のガスタービン装置については、電動予潤滑ポンプ28を駆動して予潤滑を行うことにより、図6中には示さない減速機15の摩擦が比較的大きいすべり軸受16を保護することができる。コンプレッサ2の空気圧力が不十分であってラビリンスシール7,9のシール機能が低下しても、電動予潤滑ポンプ28はガスタービン1に潤滑油を供給していないので漏れるおそれがない。
【0030】
「発明が解決しようとする課題」の項において図7を参照して説明したのと同様の構造を本実施形態のガスタービン装置で構成した場合について説明する。すなわち図7に示すように、高層ビル等の地下に本実施形態のガスタービン装置を設置し、屋上に煙突32を設けた施設においては、ガスタービン1が停止した直後の煙道内の排気残温度と、煙突32の上空の冷気による密度差で煙道内に排気ドラフトが生じ、この排気ドラフトにより、停止しているガスタービン1がつれまわりを起こす。例えば、煙突高さ200m、排気温度300℃、煙突出口周囲温度20℃の場合、約1200Paのドラフト力が作用し、ガスタービン1及び図6中には示さない減速機15は定格回転数の15%程度で回転することが試験で確認されている。このような場合には、停止直後のガスタービン装置については、電動予潤滑ポンプ28を駆動して予潤滑を行うことにより、図6中には示さない減速機15の摩擦が比較的大きいすべり軸受16を保護することができる。コンプレッサ2の空気圧力が不十分であってラビリンスシール7,9のシール機能が低下しても、電動予潤滑ポンプ28はガスタービン1に潤滑油を供給していないので漏れるおそれがない。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のガスタービン装置によれば、転がり軸受6,8をもつガスタービン1と、すべり軸受16をもつ減速機15へ潤滑油を給油するための構成において、機付潤滑油ポンプ17による主潤滑油は双方に給油されるが、電動予潤滑ポンプ28等による予潤滑油は、摩擦の大きいすべり軸受16のみに供給され、摩擦の少ない転がり軸受6,8には供給されない構成としたので、転がり軸受6,8をもつガスタービン1には予潤滑が供給されないために油漏れが発生しないという効果を得ることができる。
【0032】
なお、以上説明した本実施形態では、上述した通り主潤滑用の第1の潤滑油供給手段と、予潤滑用の第2の潤滑油供給手段が設けられているが、両者は減速機15のすべり軸受16への供給管路については共通している部分がある。そのため、第2の潤滑油供給経路からの潤滑油が第1の潤滑油供給経路に逆流してガスタービン1の転がり軸受6,8に行かないようにするため、第1の潤滑油経路41と第2の潤滑油経路43にはそれぞれ第1の逆止弁42及び第2の逆止弁45が設けられ、第2の逆止弁45の出口側を第1の逆止弁42の出口側に接続した構成としている。しかしながら予潤滑用の第2の潤滑油供給手段の管路を、電動予潤滑ポンプ28から第2のフィルタ44を経て減速機15のすべり軸受16に直接至る管路で構成する等、主潤滑用の第1の潤滑油供給手段とは完全に別の管路で構成すれば、前述した第1及び第2の逆止弁42,45は必ずしも必要ない。
【0033】
また、以上説明した本実施形態では、第2の潤滑油ポンプとして、電動モータで駆動される電動予潤滑ポンプ28を備えていたが、第2の潤滑油ポンプも第1の潤滑油ポンプと同様に減速機15に連動する等、ガスタービン1の回転力で駆動する構成とすることもできる。例えば、減速機15の高速ギアリング側から回転力を取り出してポンプ駆動用のギアに連動させれば、低速回転中のガスタービン1の回転力を第2の潤滑油ポンプ(予潤滑用ポンプ)の駆動に利用できる。但し、このような構成の場合には、ガスタービン1が高速回転になった場合には第2の潤滑油ポンプ(予潤滑用ポンプ)から切り離せるようにする必要がある。
【0034】
また、以上説明した本実施形態では、ガスタービン1のタービン軸4の軸封装置として、非接触式密封手段であるラビリンスシールを用いたが、その他の形式・構造の非接触式密封手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1…ガスタービン
2…コンプレッサ
3…タービン
4…タービン軸
6…転がり軸受としてのローラ軸受
7…非接触式密封手段としてのラビリンスシール
8…転がり軸受としてのボール軸受
9…非接触式密封手段としてのラビリンスシール
12…圧縮空気供給管
15…減速機
16…すべり軸受
17…第1の潤滑油供給手段を構成する第1の潤滑油ポンプとしての機付潤滑油ポンプ
28…第2の潤滑油供給手段を構成する第2の潤滑油ポンプとしての電動予潤滑ポンプ
31…集合排気煙道
41…第1の潤滑油経路
42…第1の逆止弁
43…第2の潤滑油経路
45…第2の逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮するコンプレッサと、前記コンプレッサからの圧縮空気により燃料ガスを燃焼させて生成した燃焼ガスで駆動されるタービンと、前記コンプレッサと前記タービンが取り付けられたタービン軸と、前記コンプレッサと前記タービンの間又は外側に配置されて前記タービン軸を支持する第1の転がり軸受と、前記第1の転がり軸受を密封するために前記タービン軸に設けられた第1の非接触式密封手段と、前記コンプレッサについて前記タービンが設けられた側とは反対側に配置されて前記タービン軸を支持する第2の転がり軸受と、前記第2の転がり軸受を密封するために前記タービン軸に設けられた第2の非接触式密封手段とを有するガスタービンと、
前記ガスタービンの前記タービン軸に連結された回転軸と前記回転軸を支持するすべり軸受とを有する減速機と、
前記減速機に連動して駆動され、前記ガスタービンの前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受と、前記減速機の前記すべり軸受に潤滑油を供給する第1の潤滑油供給手段と、
前記第1の潤滑油供給手段によって前記ガスタービンに潤滑油が供給されている際に、前記ガスタービンの前記コンプレッサで生成した圧縮空気を、前記第1の非接触式密封手段と前記第2の非接触式密封手段に与えることにより、前記第1の非接触式密封手段及び前記第2の非接触式密封手段から潤滑油が外部に漏洩するのを防止する圧縮空気軸封手段と、
を有するガスタービン装置において、
前記第1及び第2の非接触式密封手段から潤滑油が漏洩するのを防止するためには前記圧縮空気軸封手段から供給される圧縮空気の圧力が不十分であるような前記ガスタービンの駆動状況下において駆動され、前記ガスタービンの前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受には潤滑油を供給することなく、前記減速機の前記すべり軸受のみに潤滑油を供給する第2の潤滑油供給手段を備えたことを特徴とするガスタービン装置。
【請求項2】
前記第1の潤滑油供給手段は、前記減速機に連動して駆動される第1の潤滑油ポンプと、前記第1の潤滑油ポンプの吐出口を前記第1の転がり軸受及び前記第2の転がり軸受に並列に連結するとともに、さらに第1の逆止弁を介して前記すべり軸受に並列に連結する第1の潤滑油経路とを有し、
前記第2の潤滑油供給手段は、前記ガスタービンの運転からは独立して任意に運転可能である電動式の第2の潤滑油ポンプと、前記第2の潤滑油ポンプの吐出口を第2の逆止弁を介して前記第1の潤滑油経路の前記第1の逆止弁の出口側に接続する第2の潤滑油経路とを有していることを特徴とする請求項1記載のガスタービン装置。
【請求項3】
前記ガスタービンにおいて前記タービンからの排気が煙道を介して排出されるように構成されており、前記煙道に生じる排気ドラフトによって前記ガスタービン及び前記減速機が連れ回りする場合に、前記第2の潤滑油供給手段を作動させることを特徴とする請求項2記載のガスタービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−80400(P2011−80400A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232561(P2009−232561)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(503116899)新潟原動機株式会社 (61)
【Fターム(参考)】