説明

ガスバリアフィルム積層体および電子部材

【課題】
高い水蒸気バリア性を有し、さらに、積層界面で端部の浮きが発生しないガスバリアフィルム積層体、及びこのガスバリアフィルム積層体を備える電子部材を提供する。
【解決手段】
少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体であって、前記ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、プラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有し、前記粘着剤層がゴム系粘着剤組成物よりなる層であることを特徴とするガスバリアフィルム積層体、このガスバリアフィルム積層体を備える電子部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたガスバリア性を有する、少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体、及びこのガスバリア積層体を備える電子部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池や液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の電子部材用の基板として、薄型化、軽量化、フレキシブル化や耐衝撃性等を実現するために、基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。
しかし、プラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過しやすく、電子部材内部の素子の劣化を起こしやすいという問題があった。
【0003】
この問題を解決すべく、特許文献1には、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が開示されている。
また、特許文献2には、プラスチックフィルムと、該プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に、ポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とする樹脂層を積層してなるガスバリア性積層体が開示されている。
しかしながら、上記のような、ガスバリア性が付与された透明プラスチックフィルムは、製造工程において、ガスバリア層にキズやピンホールが発生し、ガスバリア性が低下する場合があった。
【0004】
また、特許文献3には、高分子フィルム、樹脂コート層及び無機酸化物蒸着薄膜層を有するガスバリアフィルムが少なくとも2枚以上積層された太陽電池モジュール用表面保護シートが開示されている。
しかしながら、上記のようにガスバリアシートを積層した場合、積層界面で、端部の浮きが発生することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−338901号公報
【特許文献2】特開2006−123307号公報
【特許文献3】特開2007−173449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、高い水蒸気バリア性を有し、さらに、積層界面で端部の浮きが発生しないガスバリアフィルム積層体、及びこのガスバリアフィルム積層体を備える電子部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム系の粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して、ガスバリアフィルム同士を貼り合わせることで、水蒸気バリア性に優れ、かつ積層界面で端部の浮きが発生しないガスバリアフィルム積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記(1)、(2)のガスバリアフィルム積層体、及び(3)の電子部材が提供される。
(1)少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体であって、前記ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、プラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有し、前記粘着剤層がゴム系粘着剤組成物よりなる層であることを特徴とするガスバリアフィルム積層体。
(2)少なくとも2枚のガスバリアフィルムが、粘着剤層を介して、ガスバリア層とガスバリア層とが対向するように積層されたものである
(1)に記載のガスバリアフィルム積層体。
(3)前記(1)又は(2)に記載のガスバリアフィルム積層体を備える電子部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、高い水蒸気バリア性を有し、かつ、積層界面で端部の浮きが発生しないものである。
本発明のガスバリアフィルム積層体は、太陽電池や、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の電子部材用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のガスバリアフィルム積層体の一例の層構成断面図である。
【図2】本発明のガスバリアフィルム積層体を製造する工程断面図である。
【図3】本発明のガスバリアフィルム積層体を製造する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、1)ガスバリアフィルム積層体、及び、2)電子部材、に項分けして詳細に説明する。
【0011】
1)ガスバリアフィルム積層体
本発明のガスバリアフィルム積層体は、少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体であって、前記ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、プラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有し、前記粘着剤層がゴム系粘着剤組成物よりなる層であることを特徴とする。
【0012】
(ガスバリアフィルム)
本発明に用いるガスバリアフィルムの少なくとも1枚は、プラスチックフィルムからなる基材(以下、単に「基材」ということがある。)と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有する。
【0013】
本発明のガスバリアフィルム積層体においては、該積層体を構成する2枚以上のガスバリアフィルムのいずれもが、透明なプラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有するものであることが好ましい。
【0014】
(プラスチックフィルムからなる基材)
プラスチックフィルムからなる基材の材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、透明性に優れ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
【0016】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0017】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。
用いる基材の厚みは、通常100nm〜1000μm、好ましくは5μm〜200μmの範囲である。
【0018】
(ガスバリア層)
本発明に用いるガスバリアフィルムにおけるガスバリア層は、酸素や水蒸気の透過を抑制する特性(以下、「ガスバリア性」という)を有する層である。
【0019】
ガスバリア層の材料としては、酸素及び水蒸気の透過を阻止するものであれば、特に制約はないが、透明性がよく、ガスバリア性が良好なものが好ましい。
【0020】
ガスバリア層の材料としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属;
酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;
窒化珪素等の無機窒化物;
無機炭化物;無機硫化物;これらの複合体である無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物;高分子化合物;等が挙げられる。
【0021】
ガスバリア層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上述の材料を蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材上に形成する方法や、上記材料を有機溶剤に溶解又は分散した溶液を、公知の塗布方法によって基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0022】
ガスバリア層の厚みは、特に制限されないが、通常20nm〜50μm、好ましくは30nm〜1μm、より好ましくは40nm〜500nmである。
【0023】
ガスバリア層は、容易に目的のガスバリア層を形成できることから、高分子化合物から構成される高分子層に、プラズマ処理がされて形成されるものが好ましい。高分子化合物から構成される高分子層は、プラズマ処理を施すことによって改質され、ガスバリア性が向上する。
【0024】
プラズマ処理の方法としては、公知の方法を用いることができるが、ガスバリア性が優れるという点から、イオンを注入する方法が好ましい。すなわち、ガスバリア層は、高分子化合物から構成される高分子層に、イオンが注入されて形成されるものが好ましい。
このようにガスバリア層を形成することにより、優れたガスバリア性を得ることができる。
なお、この場合、「ガスバリア層」とは、イオン注入により改質された部分のみを意味するのではなく、「イオン注入により改質された部分を有する高分子層」を意味する。
【0025】
高分子層を構成する高分子化合物としては、例えば、ケイ素系高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、及びこれらの高分子の二種以上の組合せ等が挙げられる。
【0026】
また、高分子化合物は、エネルギー線硬化性化合物の硬化物であってもよい。エネルギー線硬化性化合物としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが多官能アクリレート等のエネルギー線重合性モノマー;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートオリゴマー;等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0027】
これらの中でも、ガスバリア性に優れるガスバリア層を容易に形成することができることから、ケイ素系高分子化合物、ポリエステル又はアクリル系樹脂が好ましく、ケイ素系高分子化合物がより好ましい。
【0028】
ケイ素系高分子化合物としては、ケイ素を含有する高分子であれば、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。例えば、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリシラザン系化合物等が挙げられる。
【0029】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合して得られる化合物である。
【0030】
ポリオルガノシロキサン系化合物の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。
例えば、前記直鎖状の主鎖構造としては下記式(a)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(b)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては、例えば下記式(c)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
式中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等の非加水分解性基を表す。なお、式(a)の複数のRx、式(b)の複数のRy、及び式(c)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0035】
無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0036】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0037】
前記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0038】
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
【0039】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0041】
ポリオルガノシロキサン系化合物としては、前記式(a)で表される直鎖状の化合物が好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、前記式(a)において2つのRxがともにメチル基の化合物であるポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0042】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、例えば、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0043】
用いるシラン化合物は、目的とするポリオルガノシロキサン系化合物の構造に応じて適宜選択すればよい。好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラs−ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物等が挙げられる。
【0044】
ポリカルボシラン系化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシラン系化合物としては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0045】
【化4】

【0046】
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0047】
Rw、Rvのアルキル基、アリール基、アルケニル基としては、前記Rx等として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
【0049】
これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0050】
Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0051】
アリーレン基としては、フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
【0052】
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
【0053】
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
【0054】
なお、Rのアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0055】
これらの中でも、式(1)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むものがさらに好ましい。
【0056】
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン系化合物の質量平均分子量は、通常400〜12,000である。
【0057】
ポリカルボシラン系化合物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、ポリシランの熱分解重合により製造する方法(特開昭51−126300号公報)、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位により製造する方法(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978)、クロロメチルトリクロロシランのグリニャール反応によりポリカルボシラン系化合物を得る方法(Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991)、ジシラシクロブタン類の開環重合により製造する方法(Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996)、ジメチルカルボシランとSiH基含有シランの構造単位を有する原料ポリマーに、塩基性触媒の存在下で水及び/又はアルコールを反応させることにより製造する方法(特開2006−117917号公報)、末端にトリメチルスズ等の有機金属基を有するカルボシランを、n−ブチルリチウム等の有機典型金属化合物を開始剤として重合反応させて製造する方法(特開2001−328991号公報)等が挙げられる。
【0058】
ポリシラン系化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を有する高分子化合物である。かかるポリシラン系化合物としては、下記式(e)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0059】
【化5】

【0060】
式(e)中、Rq及びRrは、同一又は異なって、水素原子、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
【0061】
Rq及びRrのアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0062】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0063】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0064】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基等の炭素数7〜20のアラルキルオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基等で置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0065】
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)、置換シリル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基等で置換された置換シリル基)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0066】
前記シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0067】
これらの中でも、本発明のより優れた効果が得られることから、前記式(e)で表される繰り返し単位を含む化合物が好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基である繰り返し単位を含む化合物がより好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基である繰り返し単位を含む化合物がさらに好ましい。
【0068】
ポリシラン系化合物の形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン系化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン系化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
【0069】
ポリシラン系化合物の具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー;ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマ;等が挙げられる。
【0070】
なお、ポリシラン系化合物については、詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)等に記載されている。本発明においては、これらの文献に記載されるポリシラン系化合物を用いることができる。
【0071】
ポリシラン系化合物の平均重合度(例えば、数平均重合度)は、通常、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
また、ポリシラン系化合物の質量平均分子量は、300〜100,000、好ましくは400〜50,000、さらに好ましくは500〜30,000程度である。
【0072】
ポリシラン系化合物の多くは公知物質であり、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報等)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)等)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)等)、特定の重合用金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮合させる方法(特開平4−334551号公報等)、ビフェニル等で架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)等)、環状シラン類の開環重合による方法等が挙げられる。
【0073】
ポリシラザン系化合物としては、式(f)
【0074】
【化6】

【0075】
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0076】
式(f)中、nは任意の自然数を表す。
Rm、Rp、Rtは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
【0077】
前記アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、前記Rq等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0078】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt−ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、Rm、Rp、Rtとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0080】
前記式(h)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記式
【0081】
【化7】

【0082】
で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)
【0083】
【化8】

【0084】
〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は式(B)
【0085】
【化9】

【0086】
(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、式(C)
【0087】
【化10】

【0088】
で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。
【0089】
有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rm’SiHNH)−(Rm’は、Rmと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。以下のRm’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rm’SiHNRt’)−(Rt’は、Rtと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rm’Rp’SiNH)−(Rp’は、Rpと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基アルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン、
【0090】
【化11】

【0091】
(v)下記式
【0092】
【化12】

【0093】
〔Rm’、Rp’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は下記式(D)
【0094】
【化13】

【0095】
(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(D)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。
【0096】
上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式
【0097】
【化14】

【0098】
(式中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、Rは、前述した、Rm、Rp、Rt、Rm’、Rp’、Rt’のいずれかの置換基を表す。)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン系化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。
【0099】
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH(NH))〕及び〔(SiHO〕(式中、j、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、
ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、
上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。
【0100】
これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
なお、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
【0101】
前記高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
【0102】
高分子層中の、高分子化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましい。
【0103】
高分子層を形成する方法としては、特に制約はなく、例えば、高分子化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を公知の塗布方法によって基材または所望により基材上に形成されたプライマー層上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0104】
塗工装置としては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
【0105】
得られた塗膜の乾燥、フィルムのガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0106】
形成される高分子層の厚みは、特に制限されないが、通常20nm〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、高分子層の厚みがナノオーダーであっても、後述するようにイオンを注入することで、充分なガスバリア性能を有するフィルムを得ることができる。
【0107】
高分子層に注入されるイオンの注入量は、形成するフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
【0108】
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
【0109】
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0111】
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0112】
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層の表面部に注入する方法が好ましい。
【0113】
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的のガスバリア層を効率よく形成することができる。
【0114】
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。
【0115】
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
【0116】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1〜−50kV、より好ましくは−1〜−30kV、特に好ましくは−5〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0117】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0118】
層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)高分子層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0119】
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
【0120】
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、高分子層の表面部に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にイオン注入により改質された部分を有する高分子層、すなわちガスバリア層が形成されたガスバリアフィルムを量産することができる。
【0121】
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚み、ガスバリアフィルムの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。
【0122】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて高分子層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0123】
ガスバリア層はプラスチックフィルムからなる基材の片面に形成されていても、基材の両面に形成されていてもよい。また、ガスバリア層は単層であってもよく、複数層積層されていてもよい。
【0124】
本発明に用いるガスバリアフィルムとしては、水蒸気透過率が、40℃、相対湿度90%の雰囲気下で、1.0g/m/day以下であるものが好ましく、0.5g/m/day以下であるものがより好ましい。
本発明においては、ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、前記プラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた、少なくとも1層のガスバリア層を有するものであるが、これ以外のガスバリアフィルムとしては、上記の水蒸気透過率を満たすものであれば特に限定されない。
このようなガスバリアフィルムとしては、単層又は複層の合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリル等の単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0125】
(粘着剤層)
本発明のガスバリアフィルム積層体は、少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体である。
【0126】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、粘着剤層がゴム系粘着剤組成物よりなる層である。ゴム系粘着剤組成物よりなる層は、粘着剤層単独での水蒸気透過率が低く、粘着力も高いため、少なくとも2枚のガスバリアフィルムを、粘着剤層を介して積層した場合に、粘着剤層の端部からの水蒸気の透過を抑制することができ、端部の浮きが発生し難い積層体を得ることができる。
【0127】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、ゴム系粘着剤組成物で有れば特に限定されない。ゴム系粘着剤組成物であれば、得られる粘着剤層の水蒸気透過率が低く、粘着力も高いため、少なくとも2枚のガスバリアフィルムを、粘着剤層を介して積層した場合に、粘着剤層の端部からの水蒸気の透過を抑制することができ、端部の浮きが発生し難い。
【0128】
粘着剤層の水蒸気透過率は、粘着剤層が50μmの場合、40℃、相対湿度90%の雰囲気下で、好ましくは25g/m/day以下、より好ましくは20g/m/day以下、さらに好ましくは15g/m/day以下である。水蒸気透過率が25g/m/dayであれば、粘着剤層の端部からの水浸入を防止することができるため、端部の浮きが発生し難い。なお、水蒸気透過率については公知方法で測定することができる。本発明においては、粘着剤層の水蒸気透過率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0129】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、ゴム系化合物を含有するゴム系粘着剤組成物であれば特に限定されない。
【0130】
ゴム系化合物としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリルから選ばれる1種又は2種以上の単量体をグラフト重合させた変性天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ホモポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリイソプレン等のジエン系コポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレン系樹脂、ポリブテン樹脂等が挙げられる。
これらのゴム系化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
これらの中でも、前記粘着剤組成物としては、ガスバリアフィルム積層体が、高温湿熱条件下に長時間置かれた場合であっても、粘着剤層の端部からの水蒸気の透過を抑制され、端部の浮きが発生し難い積層体を得ることができるという点から、ポリイソブチレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリイソブチレン系樹脂とポリブテン樹脂とを併用して含むことがより好ましい。
【0132】
ポリイソブチレン系樹脂は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であり、下記構成単位(a)を有する樹脂である。ポリイソブチレン系樹脂としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンの共重合体、イソブチレンとn−ブテンのる共重合体、あるいはイソブチレンとブタジエンの共重合体、これら共重合体を臭素化又は塩素化したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。なお、ポリイソブチレン系樹脂がイソブチレンとn−ブテンとから得られる共重合体である場合は、原料モノマー中、イソブチレンは主成分として最大量のモノマーである。ポリイソブチレン系樹脂は単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0133】
【化15】

【0134】
ゴム系化合物の重量平均分子量は、10,000〜3,000,000であることが好ましく、200,000〜2,000,000がより好ましく、500,000〜2,000,000がさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲であれば、粘着剤組成物の凝集力が高くなりすぎることがなく、アンカー効果が十分に得られるため好ましい。
【0135】
ゴム系粘着剤組成物中におけるゴム系化合物の含有量は、固形分として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。ゴム系化合物の含有量がこのような範囲にあることで、水蒸気透過率が低く、優れた粘着力を有する粘着剤層を形成することができる。
【0136】
また、本発明で用いる粘着剤組成物において、更に環状オレフィン系重合体を含んでもよい。環状オレフィン系重合体は、塗工時の粘度の調整、可塑性効果による柔軟性の向上、濡れ性向上による初期粘着力の向上、凝集力の増大等の目的に有用である。
【0137】
環状オレフィン系重合体は、重合体の全繰返し単位中に環状オレフィン系単量体の繰返し単位を含有するものである。具体的には、粘着付与剤として知られる石油樹脂を水素添加した、いわゆる水添石油樹脂等を挙げることができる。環状オレフィン系重合体は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0138】
粘着剤組成物中における環状オレフィン系重合体の含有量は、固形分として、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0139】
また、本発明で用いる粘着剤組成物は、公知の光重合開始剤や光増感剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤と水素引き抜き型光重合開始剤が知られているが、水素引き抜き型光重合開始剤が好ましい。
【0140】
水素引き抜き型光重合開始剤を用いることで、ゴム系化合物中に、ポリマーラジカルを生成させることができ、生成したポリマーラジカルは互いに反応して再結合し、ゴム系化合物中間の橋架けが形成されるため、粘着剤組成物の架橋密度及び凝集力を高くすることができる。これにより、粘着剤層の水蒸気透過率をさらに低くすることができる。
【0141】
水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジクロルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等;アセトナフトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、メチルアントラキノンなどのキノン系芳香族化合物;が挙げられる。これらの水素引き抜き型光重合開始剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0142】
光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、4−ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0143】
光開始剤や光増感剤の配合量は、前記ゴム系化合物100質量部に対して、通常0.2〜20質量部の範囲である。
【0144】
粘着剤組成物には、粘着性等を阻害しない範囲において、各種添加剤、例えば、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、増量剤、帯電防止剤、シランカカップリング剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0145】
粘着剤層の厚みは、特に制限はなく、適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。0.5μm以上であれば、良好な粘着力が得られ、100μm以下であれば、生産性の面で有利である。
【0146】
(ガスバリアフィルム積層体)
本発明のガスバリアフィルム積層体は、少なくとも2枚のガスバリアフィルムが、前記ゴム系粘着剤組成物よりなる粘着剤層を介して積層され、前記ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、前記プラスチックフィルムからなる基材と、前記基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有していることを特徴とする。
【0147】
本発明のガスバリアフィルム積層体の形状は、後述するごとき電子部材に適用できるものであれば、特に制限されない。例えば、シート状、直方体状、多角柱状、筒状等が挙げられる。
【0148】
また、本発明のガスバリアフィルム積層体において、積層するガスバリアフィルムの枚数は2以上であれば特に限定されない。ガスバリアフィルムの積層する枚数は、通常、2〜10である。
【0149】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、高い水蒸気バリア性を有し、かつ、積層界面で端部の浮きが発生しないため、各種の電子部材用に好適である。
【0150】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、所望により、保護層、導電体層、プライマー層等のその他の層が積層されていてもよい。なお、その他の層が積層される位置は、特に限定されない。他の層は、1種又は同種又は異種の2層以上であってもよい。
【0151】
(保護層)
保護層としては、透明性がよく、耐擦傷性が良好なことが要件であり、外部から衝撃が加わった場合に、ガスバリアフィルム積層体を保護する役割を担うものである。
保護層が積層される位置は、特に限定されないが、ガスバリアフィルム積層体の最外層に積層されることが好ましい。
【0152】
保護層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0153】
保護層は、前記保護層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなる保護層形成用溶液を、公知の方法により積層する層上に塗工し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
【0154】
保護層形成用溶液を保護層が隣接する層上に塗工する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0155】
保護層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。保護層の厚みは、ガスバリアフィルム積層体の目的に応じて適宜選択することができるが、0.05〜50μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.2〜5μmがさらに好ましい。
【0156】
保護層の厚さが0.05μmより薄い場合には、耐擦傷性が十分でなく好ましくない。一方、50μmより厚い場合には、硬化時の歪みによるカールが生じやすいので好ましくない。
【0157】
(導電体層)
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
【0158】
これらの中でも、透明性の点から、導電性金属酸化物が好ましく、ITOが特に好ましい。導電体層は、これらの材料からなる層が複数積層されてなっていてもよい。
導電体層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらの中でも、簡便に導電体層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。
【0159】
スパッタリング法は、真空槽内に放電ガス(アルゴン等)を導入し、ターゲットと基板との間に高周波電圧あるいは直流電圧を加えて放電ガスをプラズマ化し、該プラズマをターゲットに衝突させることでターゲット材料を飛ばし、基板に付着させて薄膜を得る方法である。ターゲットとしては、前記導電体層を形成する材料からなるものが使用される。
【0160】
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nm〜50μm、好ましくは20nm〜20μmである。得られる導電体層の表面抵抗率は、通常1000Ω/□以下である。
【0161】
形成された導電体層には、必要に応じてパターニングを行ってもよい。パターニングする方法としては、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等、マスクを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ法、印刷法等が挙げられる。
【0162】
(プライマー層)
プライマー層は、基材層とガスバリア層、またはその他の層との層間密着性を高める役割を果たす。
プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0163】
プライマー層は、前記プライマー層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を、基材層またはその他の層の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
【0164】
プライマー層形成用溶液を基材またはその他の層に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0165】
プライマー層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。プライマー層の厚みは、通常、10〜5000nm、このましくは20〜4000nm、より好ましくは30〜3000nmである。
【0166】
本発明のガスバリアフィルム積層体において、ガスバリアフィルムと粘着剤層とを貼り合わせる方法は、特に限定されず、ラミネーター等の装置を用いて公知の方法を用いて貼り合わせることができる。
【0167】
本発明のガスバリアフィルム積層体においては、少なくとも2枚のガスバリアフィルムが、前記ゴム系粘着剤組成物よりなる粘着剤層を介して積層されているものであれば、積層構成は特に限定されない。
【0168】
本発明のガスバリアフィルム積層体の一例を図1(a)、(b)に示す。
図1(a)に示すガスバリアフィルム積層体100Aは、2枚のガスバリアフィルムが、粘着剤層を介して、ガスバリア層とガスバリア層とが粘着剤層を挟んで対向するように積層された層構成(基材/ガスバリア層/粘着剤層/ガスバリア層/基材)である。
図1(b)に示すガスバリアフィルム積層体100Bは、2枚のガスバリアフィルムが、粘着剤層を介して、ガスバリア層と基材とが粘着剤層を挟んで対向するように積層された層構成(基材/ガスバリア層/粘着剤層/基材/ガスバリア層)である。
【0169】
これらの中でも、ガスバリアフィルム積層体は、図1(a)に示すように、2枚のガスバリアフィルムが、ガスバリア層とガスバリア層とが粘着剤層を挟んで対向するように積層されていることが、ガスバリア層にキズやピンホールが発生し難く、水蒸気バリア性が低下しにくいことから好ましい。
【0170】
前記少なくとも2枚のガスバリアフィルム同士を粘着剤層を介して積層する方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。
【0171】
例えば、図1(a)に示す層構成(基材/ガスバリア層/粘着剤層/ガスバリア層/基材)を有するガスバリアフィルム積層体100Aは、次のようにして製造することができる。
【0172】
先ず、図2(a)に示すように、プラスチックフィルムからなる基材1と、該基材上に設けられたガスバリア層2を有するガスバリアフィルム10を2枚用意する。
次いで、図2(b)に示すように、剥離フィルム3上に粘着剤層4を形成して、粘着剤層付剥離フィルム20を得る。
【0173】
粘着剤層を形成する方法は、特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、粘着剤組成物を、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の適当な有機溶剤に溶解した粘着剤層形成用組成物を調製し、この組成物を、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗工方法により剥離フィルム3上に塗工した後、得られた塗膜から溶媒を乾燥除去し、所望により加熱することにより、粘着剤層4を形成することができる。この場合、組成物(溶液)の濃度は、10〜60質量%、好ましくは10〜30質量%である。
【0174】
次に、図2(c)に示すように、ガスバリアフィルム10のガスバリア層2と、粘着剤層付剥離フィルム20の粘着剤層4とを貼り合わせることで、積層体30を得る。貼り合わせの方法は特に限定されず、例えば、公知のラミネーターを使用する方法が挙げられる。
【0175】
その後、図3(d)に示すように、積層体30の剥離フィルム3を剥離して、露出した粘着剤層4に、もう1枚のガスバリアフィルム10のガスバリア層2を貼り合わせることで、ガスバリアフィルム積層体100Aを得ることができる。
【0176】
本発明のガスバリア積層体を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、図2(a)に示すガスバリアフィルム10のガスバリア層2上に直接粘着剤層を形成し、この粘着剤層と、もう1枚のガスバリアフィルムを重ね合わせ圧着することで、ガスバリアフィルム積層体を得ることもできる。
【0177】
2)電子部材
本発明の電子部材は、上記の本発明のガスバリアフィルム積層体を備えることを特徴とする。 電子部材としては、例えば、液晶ディスプレイ部材、有機ELディスプレイ部材、無機ELディスプレイ部材、電子ペーパー部材、太陽電池、熱電変換部材等のフレキシブル基板等が挙げられる。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0179】
(1)粘着剤組成物の調製
(粘着剤組成物Aの調製)
ポリイソブチレン樹脂(オパノールB50、BASF社製、Mw:340,000)100質量部、ポリブテン樹脂(日石ポリブテン グレードHV−1900、新日本石油社製、Mw:1900)30質量部、環状オレフィン系重合体(Eastotac H−100L Resin、イーストマンケミカル社製)50質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度約18質量%の「粘着剤組成物A」を得た。
【0180】
(粘着剤組成物Bの調製)
ゴム系粘着剤組成物として、TN−560(MORESCO社製)をトルエンに溶解し、固形分濃度約20質量%の「粘着剤組成物B」を得た。
【0181】
(粘着剤組成物Cの調製)
ゴム系粘着剤組成物として、TY−070(MORESCO社製)をトルエンに溶解し、固形分濃度約30質量%の「粘着剤組成物C」を得た。
【0182】
(粘着剤組成物Dの調製)
ポリイソブチレン樹脂(オパノールB50、BASF社製、Mw:340,000)100質量部、水素引き抜き型光重合開始剤(イルガキュア500、BASFジャパン社製)1.5質量部、及び、光増感剤(4−ジメチルアミノピリジン)1.5質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度約16.7質量%の「粘着剤組成物D」を得た。
【0183】
(粘着剤組成物Eの調製)
ゴム系粘着剤組成物(TN−560、MORESCO社製)100質量部、水素引き抜き型光重合開始剤(イルガキュア500、BASFジャパン社製)1.5質量部、及び、光増感剤(4−ジメチルアミノピリジン)1.5質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度約18質量%の「粘着剤組成物E」を得た。
【0184】
(ガスバリアフィルムの作製)
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET38 T−100、三菱樹脂社製、厚さ38μm、以下、「PETフィルム」という。)に、ポリシラザン化合物(ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング材(商品名:アクアミカNL110−20、クラリアントジャパン社製)をスピンコート法により塗布し、120℃で1分間加熱して、PETフィルム上にペルヒドロポリシラザンを含む厚さ150nmの層のポリシラザン層を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置を用いてポリシラザン層の表面に、下記の条件にて、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して、ガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルムを作製した。
【0185】
ガスバリア層を形成するために用いたプラズマイオン注入装置及びイオン注入条件は以下の通りである。
【0186】
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
(プラズマイオン注入条件)
プラズマ生成ガス:Ar
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
印加電圧:−6kV
RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
パルス幅:5μsec
処理時間(イオン注入時間):200秒
【0187】
(実施例1)
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、シリコーン剥離層を設けてなる剥離フィルム(製品名:SP−PET381031、リンテック社製)の剥離層表面に、粘着剤組成物Aをコンマダイレクトコート法にて塗布し、100℃で1分間乾燥させて、厚さ約10μmの粘着剤層を形成して、粘着剤層付剥離フィルムAを得た。
次いで、上記で作製したガスバリアフィルムを2枚用意し、1枚のガスバリアフィルムのガスバリア層面と、粘着剤層付剥離フィルムAの粘着剤層面とを貼り合わせた後、剥離フィルムを剥離した。
次に、露出した粘着剤層面と、もう1枚のガスバリアフィルムのガスバリア層面とを貼り合わせて、ガスバリアフィルム積層体Aを作製した。
【0188】
(実施例2)
実施例1において、粘着剤組成物Aを粘着剤組成物Bに変えて、粘着剤層付剥離フィルムBを作製し、このものを使用した以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体Bを作製した。
【0189】
(実施例3)
実施例1において、粘着剤組成物Aを粘着剤組成物Cに変えて、粘着剤層付剥離フィルムCを作製し、このものを使用した以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体Cを作製した。
【0190】
(実施例4)
実施例1において、粘着剤組成物Aを粘着剤組成物Dに変えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物Dの塗膜を形成し、剥離フィルム側から、紫外線(UV)を1000mJ/cmの光量で照射して粘着剤層を形成し、粘着剤層付剥離フィルムDを作製した。次いで、得られた粘着剤層付剥離フィルムDを使用して、実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体Dを作製した。
【0191】
(実施例5)
実施例1において、粘着剤組成物Aを粘着剤組成物Eに変えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物Eの塗膜を形成し、剥離フィルム側から、紫外線(UV)を1000mJ/cmの光量で照射して粘着剤層を形成し、粘着剤層付剥離フィルムEを作製した。次いで、得られた粘着剤層付剥離フィルムEを使用して、実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体Eを作製した。
【0192】
(比較例1)
上記で作製したガスバリアフィルムを2枚用意した。次いで、剥離フィルム上にウレタン粘着剤層を有する粘着シート(商品名:G−6、倉敷紡績社製、厚み25μm)の粘着剤層面と、上記で作製したガスバリアフィルムのガスバリア層面とを、ヒートラミネーター(ラミロール温度、実測値110℃、速度:実測値0.2m/min)にて貼り合わせた後、剥離フィルムを剥離し、露出したウレタン粘着剤層と、もう1枚のガスバリアフィルムのガスバリア層面とを前記ヒートラミネーターを使用して貼り合わせて、ガスバリアフィルム積層体Fを作製した。
【0193】
(ガスバリアフィルム積層体の水蒸気透過率の測定)
40℃、相対湿度90%の条件で,ガスバリアフィルム積層体A〜Fの水蒸気透過率を測定した。
水蒸気透過率が0.01g/m/day以上のときは、水蒸気透過度計(LYSSY社製、製品名「L89−500」)を用い、水蒸気透過率が0.01g/m/day未満のときは、TECHNOLOX社製、「deltaperm」を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0194】
(粘着剤層の水蒸気透過率測定)
水蒸気透過率測定用のサンプルとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名:K200−6E、厚さ6μm、「PET6E」という)上に、粘着剤組成物A〜Eをコンマダイレクトコート法にて塗布し、得られた塗膜を110℃で1分間乾燥させて、厚さ約50μmの粘着剤層をそれぞれ形成した。
次いで、得られた粘着剤層のそれぞれを、PET6Eと貼り合わせ、PET6E/粘着剤層(50μm)/PET6Eの層構成を有する積層体を作製し、実施例1〜5に対応する水蒸気透過率測定用のサンプルとした。
また、剥離フィルム上にウレタン粘着剤層を有する粘着シート(商品名:G−6、倉敷紡績社製、厚み25μm)を2枚準備し、粘着剤層同士をヒートラミネーター(ラミロール温度、実測値110℃、速度:実測値0.2m/min)にて貼り合わせた。
次に、剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層とPET6Eを貼り合わせ、前記ヒートラミネーターを使用して貼り合わせた。次いで、もう一方の剥離フィルムを剥離し、露出したウレタン粘着剤層と、もう1枚のPET6Eとを前記ヒートラミネーターを使用して貼り合わせて、PET6E/ウレタン粘着剤層(50μm)/PET6Eの層構成を有する積層体を作製し、比較例1に対応する水蒸気透過率測定用のサンプルとした。
粘着剤層の水蒸気透過率測定用のサンプルの水蒸気透過率は、ガスバリアフィルム積層体の水蒸気透過率の測定と同様にして測定した。
測定結果を表1に示す。
【0195】
(高温湿熱条件投入後の浮き・剥がれの有無)
実施例及び比較例で得られたガスバリアフィルム積層体A〜Fのそれぞれを、(120mm×120mm)に裁断し、高温湿熱条件下(60℃、90%RH)に150時間載置した。その後、23℃、50%RH環境下で1日調温・調湿を行い、積層体の端部を目視にて、浮き・剥がれの有無を確認した。
【0196】
評価基準は、以下に示すとおりである。
◎:積層体の端部を目視にて観察、浮き・剥がれが全く見られなかったもの。
○:積層体の端部を目視にて観察、浮き・剥がれがほとんど見られなかったもの。
×:積層体の端部を目視にて観察、浮き・剥がれが見られたもの。
評価結果を表1に示す。
【0197】
(粘着剤層とガスバリア層との間の粘着力測定)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:PET50A−4100、東洋紡社製、厚さ50μm、以下「PET」という)上に、粘着剤組成物A〜Cをコンマダイレクトコート法にて塗布し、得られた塗膜を100℃で1分間乾燥させて、厚さ約10μmの粘着剤層を形成し、実施例1〜3に対応する粘着力測定用のサンプルをそれぞれ作製した。
また、粘着剤組成物D・Eを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:PET50A−4100、東洋紡社製、厚さ50μm、以下「PET」という)上に、コンマダイレクトコート法にて塗布し、得られた塗膜を100℃で1分間乾燥させて、厚さ約10μmの粘着剤層を形成した。次工程として、剥離フィルム側から紫外線(UV)を1000mJ/cmの光量で照射して粘着剤層を形成し、実施例4、5に対応する粘着力測定用のサンプルをそれぞれ作製した。
次いで、上記で作製したガスバリアフィルムのガスバリア層面に、粘着力測定用のサンプルの粘着剤層面を貼付して、ガスバリアフィルム(基材/ガスバリア層)/粘着力測定用のサンプル(粘着剤層/PET)の層構成を有する積層体をそれぞれ得た。
また、剥離フィルム上にウレタン粘着剤層を有する粘着シート(商品名:G−6、倉敷紡績社製、厚み25μm)の粘着剤層面と、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:PET50A−4100、東洋紡社製、厚さ50μm、以下「PET」という)とを、ヒートラミネーター(ラミロール温度、実測値110℃、速度:実測値0.2m/min)にて貼り合わせて比較例1の粘着力測定用のサンプルを作製した。
次に、剥離フィルムを剥離し、露出したウレタン粘着剤層と、上記で作製したガスバリアフィルムのガスバリア層とを、前記ヒートラミネーターを使用して貼り合わせて、ガスバリアフィルム(基材/ガスバリア層)/粘着力測定用のサンプル(ウレタン粘着剤層/PET)の層構成を有する積層体を得た。
次に、得られた積層体のそれぞれについて、23℃、50%RH環境下にて、JIS Z 0237(2000年度改正版)の粘着力の測定法に準じて、積層体を作製(貼付)して24時間経過後、180°における引き剥がし粘着強度(N/25mm)を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0198】
【表1】

【0199】
表1より、ゴム系粘着剤組成物からなる粘着剤層を介してガスバリアフィルム同士を貼り合わせて得られた、実施例1〜5のガスバリアフィルム積層体は、水蒸気バリア性及び粘着力に優れ、かつ高温湿熱条件下に投入した後においても、粘着剤層の積層界面で端部の浮きや剥がれがほとんど発生しないものであった。
一方、ウレタン系粘着剤からなる粘着剤層を介してガスバリアフィルム同士を貼り合わせて得られた比較例1のガスバリアフィルム積層体は、実施例のガスバリアフィルム積層体に比して、水蒸気透過率及び粘着力が劣り、かつ粘着剤層の積層界面で端部の浮きや剥がれが発生していた。
【符号の説明】
【0200】
1・・・プラスチックからなる基材
2・・・ガスバリア層
3・・・剥離フィルム
4・・・粘着剤層
10・・・ガスバリアフィルム
20・・・粘着剤層付剥離フィルム
30・・・積層体
100A,100B・・・ガスバリアフィルム積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のガスバリアフィルムが粘着剤層を介して積層されたガスバリアフィルム積層体であって、
前記ガスバリアフィルムの少なくとも1枚が、プラスチックフィルムからなる基材と、該基材上に設けられた少なくとも1層のガスバリア層を有し、
前記粘着剤層がゴム系粘着剤組成物よりなる層であること
を特徴とするガスバリアフィルム積層体。
【請求項2】
少なくとも2枚のガスバリアフィルムが、粘着剤層を介して、ガスバリア層とガスバリア層とが対向するように積層されたものである
請求項1に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体を備える電子部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22920(P2013−22920A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162376(P2011−162376)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】