説明

ガスバリアユニット、太陽電池モジュール用のバックシート、および太陽電池モジュール

【課題】バリア性および接着性に優れた太陽電池モジュール用のバックシートを提供する。
【解決手段】基材フィルム1の少なくとも片面に、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物からなる無機層を含むバリア層2を有し、該バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜3nmであるガスバリアフィルム2枚を、前記バリア層同士が、二液型ポリウレタン系接着剤を硬化してなる接着層4を介して対向するように配置したガスバリアユニットを含む太陽電池モジュール用のバックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアユニット、太陽電池モジュール用のバックシートおよびこれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力を利用して、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池が、クリーンなエネルギー源として注目されている。そして、太陽電池モジュール用のバックシートにバリア性を持たせることが検討されている。バリア性を確保するための方法としては、これまで、基材フィルムの表面にアルミ箔を設けることが行われてきた。しかしながら、近年、絶縁性確保のニーズがあり、非導電性材料を使用することが望まれている。
【0003】
かかる状況のもと、例えば、特許文献1には、基材フィルムと酸化物を蒸着したバリア層とからなるガスバリアフィルム2枚を、該バリア層同士が対向するように接着させてなるラミネート型バックシートが提案されている。しかしながら、このようなガスバリアフィルム同士を貼り合わせたバックシートは、バリア層を薄くしようとすると十分なバリア性を達成できないという問題がある。一方、非特許文献1では、対向させるガスバリアフィルム同士の接着層の厚さを薄くすることによって、ガスバリアフィルムの断面方向からの水分の侵入を防ぎ必要なバリア能を達成できる可能性があることを示唆している。ところが、非特許文献1において、接着層の厚さを薄くしようとすると接着力が低下するため、接着層の厚さを薄くできない。
【0004】
すなわち、必要なバリア能を確保しつつ、十分な接着性を確保する手段が見出されていないのが現状である。特に、太陽電池は、室外に放置され、かつ、永年に渡って使用されるため、長期間の接着性の確保が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130647号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Appl.Polym.Sci. Vol.106,3534-3542(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、フィルムの断面方向からの水分の侵入を防ぐためには、接着層の厚さを薄くすることが有効であるが、接着層の厚さを薄くすると、接着性が低下してしまう。本発明は、かかる問題点を解決することを目的としたものであって、ガスバリアフィルム同士を接着剤を用いて貼り合わせて作成する太陽電池モジュール用のバックシートにおいて、必要なバリア性を確保しつつ、接着層の厚さを薄くしても、ガスバリアフィルム同士の接着力が低下しないバックシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、本願発明者は、接着層の厚さを薄くしつつ、接着性を低下させない方法について検討した。そして、鋭意検討の結果、接着剤として、二液型ポリウレタン系接着剤を用い、かつ、接着層と接するガスバリアフィルム表面の表面粗さを特定の範囲とすることにより、かかる問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により達成された。
(1)基材フィルムの少なくとも片面に、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物からなる無機層を含むバリア層を有し、該バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜3nmであるガスバリアフィルム2枚を、前記バリア層同士が、二液型ポリウレタン系接着剤を硬化してなる接着層を介して対向するように配置したガスバリアユニット。
(2)前記接着層の厚さが0.1μm以上2μm未満である、(1)に記載のガスバリアユニット。
(3)前記ガスバリアフィルムの無機層と接着層が隣接している、(1)または(2)に記載のガスバリアユニット。
(4)前記ガスバリアフィルムの無機層と接着層が隣接し、かつ、基材フィルムと無機層の間に少なくとも一層のアンダーコート層を有する、(1)または(2)に記載のガスバリアユニット。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のガスバリアユニットを含む太陽電池モジュール用のバックシート。
(6)前記二液型ポリウレタン系接着剤が、105℃、相対湿度100%で、24時間保存後のラミネート強度が1N/15mm以上であり、かつ、デラミネーションが生じない耐加水分解性接着剤である、(5)に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
(7)前記二液型ポリウレタン系接着剤が、ポリエーテルポリウレタンポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物を配合した接着剤である、(5)または(6)に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
(8)前記無機層が蒸着法により形成されたことを特徴とする、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
(9)前記無機層が珪素酸化物またはアルミニウム酸化物またはこれらの混合物からなる、(5)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
(10)前記バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が、0.1〜1.0nmである、(5)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
(11)(5)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシートを含む太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、接着層の厚さを薄くしても、ガスバリアフィルム同士の接着性を維持することが可能になった。その結果、バリア性および接着性に優れた太陽電池モジュール用のバックシートの提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の太陽電池モジュール用のバックシートが有するガスバリアユニットの積層構造の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の太陽電池モジュール用のバックシートの積層構造の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
【0012】
本発明の太陽電池モジュール用のバックシートは、基材フィルムの少なくとも片面に、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物からなる無機層を含むバリア層を有し、該バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜3nmであるガスバリアフィルム2枚を、前記バリア層同士が、二液型ポリウレタン系接着剤を硬化してなる接着層を介して対向するように配置したガスバリアユニットを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、ガスバリアユニットの断面方向からの水分の侵入を防ぎ、バリア性を向上させることが可能になる。
【0013】
図1は、本発明の太陽電池モジュール用バックシートに用いられるガスバリアユニットの一例を示したものであって、基材フィルム1と無機層2とからなるガスバリアフィルム3を、無機層2側同士が対向するように、接着剤で貼り合わせて形成される形態を示している。本実施形態では、無機層2と接着層4とが隣接する構成になっているが、必ずしも隣接する必要はなく、他の構成層が隣接していてもよい。すなわち、本実施形態では、バリア層は、無機層一層のみから構成されているが、複数層から構成されていてもよい。バリア層を構成する層としては、無機層のほか、後述するアンダーコート層が例示される。また、アンダーコート層と無機層は交互に積層していてもよい。本発明では、接着層と隣接する層は無機層であることが好ましい。
【0014】
<バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)>
本発明では、バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜3nmであり、好ましくは、0.1〜1.0nmである。バリア層の最表層は、好ましくは無機層であり、該無機層の表面のRaは、平滑な基材フィルムを採用したり、平滑なアンダーコート層を用いることで達成することができる。特に、無機層の下地層として、平滑なアンダーコート層を設けることが、ハンドリング性の観点から好ましい。
【0015】
<アンダーコート層>
アンダーコート層は、上述のとおり、無機層を所定のRaとすることを主目的として設けられる。ここで、アンダーコート層のRaは、2.0nm以下であることが好ましく、1.0nm以下であることがより好ましい。アンダーコート層の材料としては、有機材料が好ましい。具体的には、アンダーコート層は、有機溶剤に可溶なポリマー材料やオリゴマー材料を塗設することで得ることができる。また、アンダーコート層は、多官能アクリレートや多官能イソシアネートなどの材料を架橋して形成してもよい。アンダーコート層の形成方法は、寸法安定性、材料の安定性および密着性の観点から、塗布か蒸着が好ましいが、生産性の高さやレベリング効果の得やすさから塗布が好ましい。また、有機材料の水分散物(ラテックス)を水系塗布したのち、乾燥・加熱融着させて造膜する方法も好ましく用いることができる。
【0016】
<接着層の厚さ>
本発明における接着層の厚さは、通常、0.1以上2μm未満であり、0.2〜1.5μmがより好ましく、0.5〜1.0μmがさらに好ましい。本発明では、好ましい接着層の厚さとするために、二液型ポリウレタン系接着剤が用いられる。
【0017】
<接着剤の種類>
本発明における接着層は、二液型ポリウレタン系接着剤を硬化してなる層である。但し、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明における接着層には、他の接着剤や添加剤等を含んでいても良い。通常、本発明における接着層は、その95重量%以上が二液型ポリウレタン系接着剤の硬化物である。
本発明における二液型ポリウレタン系接着剤は、105℃、相対湿度100%で、24時間保存後のラミネート強度が1N/15mm以上であり、かつ、デラミネーションが生じない耐加水分解性接着剤であることが好ましい。また、本発明における二液型ポリウレタン系接着剤は、ポリエーテルポリウレタンポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物を配合した接着剤であることが好ましい。
本発明における二液型ポリウレタン系接着剤としては、ポリエステルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプ、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプが好ましい例として挙げられる。一般的にポリエーテル系よりもポリエステル系の方が強度、耐熱性に優れ、レトルト材料などに多用されているが、驚くべきことに、本願発明者らは、本発明の構成、特に、蒸着した無機層同士を接着する構成においてはポリエーテル系でも十分な接着性能を保持できることを見出した。さらに、蒸着層の平滑性を向上させることでその効果が得られやすいこともわかった。
【0018】
<無機層>
本発明における無機層は、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物からなる。ここで、「からなる」とは、無機層が実質的にこれらの成分のみで構成されていることをいい、不純物等の微量成分までを排除する趣旨ではない。例えば、98重量%以上が、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物から形成されることをいう。無機層は、金属酸化物またはその混合物からなることが好ましく、アルミニウム酸化物、珪素酸化物、錫酸化物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、またはそれらの混合物からなることがより好ましく、珪素酸化物、アルミニウム酸化物またはこれらの混合物からなることがさらに好ましい。
さらに、珪素酸化物の中でも化学式SiOxで表され、かつ、xが0.9〜1.5であるものが好ましく用いられる。このような無機層は、色がついてしまうので、有機EL素子等では、使われなかったが、太陽電池に用いる場合、着色が問題にならないためである。
本発明における無機層は、物理気相成長 (PVD:Physical Vapor Deposition)、化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)などの気相法や、ゾルゲル法を利用した液相法等の公知の方法で形成することができる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法が好ましく、生産性ならびにコストの観点から蒸着法がより好ましい。特に、蒸着法で形成した無機層同士を接着剤によって貼り合わせることにより、生産性が高く性能の安定した無機層が低コストで得られるという効果が得られる。
【0019】
無機層の厚さは、無機層の材料の種類等により好ましい条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲である。膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことがあり、バリア層としての機能を果たすことができない場合がある。また、膜厚が300nmを越える場合は薄膜の柔軟性を十分に保つことができず、曲げや引張りなどの外力の要因により薄膜が破壊しバリア層としての機能を果たすことができなくなる場合がある。より好ましくは10nm〜150nmの範囲であり、さらに好ましくは20nm〜100nmの範囲である。
【0020】
<基材フィルム>
本発明における基材フィルムは、特に定めるものではなく、公知の基材フィルムを採用することができる。例えば、特開2009−196318号公報の段落番号0046〜0053に記載のものを好ましく採用できる。
尚、本発明では、基材フィルムのRaは、0.1〜10.0nmであることが好ましく、0.1〜5.0nmであることがより好ましい。
【0021】
さらに、本発明におけるガスバリアユニットは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の構成層を有していてもよい。他の構成層としては、特開2009−196318号公報の段落番号0045に記載のものを好ましく採用できる。
【0022】
<太陽電池モジュール用のバックシート>
本発明におけるガスバリアユニットを、太陽電池モジュール用のバックシートとして用いる態様の一例について説明する。図2は、本発明のガスバリアユニットを太陽電池モジュール用バックシートに応用した例を示した概略図であって、5はガスバリアユニットを示し、6は太陽電池モジュール用のバックシートを示している。ここで、太陽電池モジュール用のバックシート6は上側が太陽電池の表側となり、下側が太陽電池の裏側に相当する。本実施形態では、ガスバリアユニット5の表側の基材フィルム1は、第二の接着層7を介して、基板8と貼り合わされている。また、基板8は白色顔料が添加されたものであってもよい。また、本実施形態では、基板8が基材フィルム1に貼り合わされているが、基材フィルム1の厚さを厚くし、かつ着色剤を添加することで、基板8および第二の接着層7を省略することも可能である。従って、本発明における基材フィルムが、着色剤を含むことも本発明の好ましい実施形態として例示される。一方、太陽電池の裏側に相当する部分に使用される基板9は耐候性を有するものが好ましく用いられ、もしくは、耐候性を向上させる目的でポリフッ化ビニルなどの耐候性樹脂からなるフィルムと貼り合わせてもよい。基板9も、第三の接着層10を介して基材フィルム1に貼り合わされる。
【0023】
上述のような太陽電池モジュール用バックシートと、太陽電池モジュール用フロントシートの間に太陽電池素子が設けられる。本発明のバックシートを好ましく適用できる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【0024】
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、通常、促進評価として85℃85%RHの環境で2000時間以上の保存が必要とされるが、これは、105℃、100%相対湿度、168時間の保存の物性値に相当することが知られている。そこで、本発明の太陽電池モジュール用バックシートはかかる要件を満たすことが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
100μm厚のPENフィルム(帝人デュポンフィルム製)の平滑面に、EB(電子ビーム)+イオンガン方式でプラズマアシスト可能な蒸着装置(シンクロン製、ACE1350IAD)を用い、イオンアシスト電圧:900V、酸素ガス流量:50sccm、アルゴンガス流量:8sccmの条件でSiO(大阪チタニウムテクノロジーズ製)を蒸着源にして蒸着膜を形成し、表面に珪素酸化物の薄膜が形成された蒸着フィルムA−1を作製した。成膜速度は5nm/secで、無機層の厚さは50nmであった。また、蒸着フィルムの表面粗さ(Ra)は1.57nmであった。蒸着フィルムの水蒸気透過率は0.05g/m2・dayであった。
次に蒸着フィルムA−1同士を蒸着面同士が対向するようにドライラミネーションを行った。接着剤として大日精化製セイカボンドE−372(主剤)とC−76−2.0(硬化剤)を用いた。両者を配合比(質量)17:2となるように秤量し、酢酸エチルで10倍希釈した均一塗布液をスピンコーターで塗布した。接着剤の濃度を変えるための希釈溶媒には酢酸エチルを用いた。90℃、5分で溶剤を乾燥したのち、70℃のニップロールを通過させラミネートし、40℃、48時間のエージングを行った。このようにしてガスバリアユニットA−1を作製した。接着層の厚さはエージング後の試料のマイクロメーターによる無作為測定点10点の平均値とした。
【0027】
実施例2
実施例1の塗布液の希釈倍率を変えることで接着層厚さを変化させた以外は実施例1と同じ方法でガスバリアユニットA−2〜A−5を作製した。
【0028】
比較例1
100μm厚のPETフィルム(東レ製)に製膜した以外は実施例1と同様にして蒸着フィルムB−1を作製した。蒸着フィルムの表面粗さは61.7nmであった。さらに蒸着フィルムA−1の代りに蒸着フィルムB−1を用いた以外は実施例1または2と同様にしてガスバリアユニットB−2〜B−5を作製した。
【0029】
実施例3
100μm厚のPETフィルム(東レ製)上に光重合性アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA:ダイセル・サイテック製)9gおよび光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカルズ製、イルガキュア907)0.1gを、メチルエチルケトン190gに溶解させて塗布液とした。この塗布液を、ワイヤーバーを用いてPETフィルムの表面に塗布し、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ条件下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度350mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して有機層を形成した。有機層の膜厚は、約500nmであった。この上に、実施例1と同様の方法によって、無機層を形成して、蒸着フィルムC−1を得た。蒸着フィルムの表面粗さ(Ra)は0.48nmであった。
さらに蒸着フィルムA−1の代りに蒸着フィルムC−1を用いた以外は実施例1または2と同様にしてガスバリアユニットC−2〜C−5を作製した。
【0030】
実施例4
接着剤として大日精化製セイカボンド A−159(主剤)とC−89(F)(硬化剤)を用いた以外は実施例3と同じ方法でガスバリアユニットD−1〜D−5を作製した。
【0031】
比較例2
実施例3の2枚の蒸着フィルムC−1を蒸着面と非蒸着面が対向するように接着し、接着層の厚さを1.88μmとした以外は実施例3と同じ方法でガスバリアユニットE−1を作製した。
【0032】
比較例3
実施例3の接着剤を非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン600)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)溶液(7.5質量%)を用いた以外は実施例3と同じ方法でガスバリアユニットF−1を作製した。
【0033】
比較例4
100μm厚のPENフィルム(帝人デュポンフィルム製)の平滑面に金属アルミニウムを50nm真空蒸着法にて製膜した蒸着フィルムG−1を用いた以外は実施例1と同様に行って、ガスバリアユニットG−1を作製した。なお、蒸着フィルムの表面粗さ(Ra)は1.85nm、蒸着フィルムの水蒸気透過率は0.95g/m2・dayであった。
【0034】
実施例5
実施例3のメチルエチルケトンを同量のプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(PEGMEA)に変更した以外は実施例3と同じ方法にて蒸着フィルムH−1〜H−5を作製した。なお、蒸着フィルムの表面粗さ(Ra)は4.15nmであった。蒸着フィルムの水蒸気透過率は0.05g/m2・dayであった。さらに、実施例3と同様に行って、ガスバリアユニットH−1〜H−5を作成した。
【0035】
<表面粗さ(Ra)>
原子間力顕微鏡(AFM)として、セイコーインスツルメンツ製走査型プローブ顕微鏡SPI3700を使用し、ダイナミックフォースモードで試料の表面を、測定面積10×10μm角、走査速度1Hz、x−y方向512×256分割、カンチレバーSI−DF−20(Si、f=126kHz、c=16N/m)の条件で測定したAFMトポグラフィー像につき傾斜自動補正処理を行い、次いで3次元粗さ解析にて中心線平均粗さRa(nm)を求めた。この際、測定に用いたカンチレバーは摩耗や汚れのない状態のものを用いた。
【0036】
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率測定装置として、MOCON社製PERMATRAN−W3/31を用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。この装置の測定限界である0.01g/m2/day以下の水蒸気透過率は、次の方法を用いて測定した。まず、試料フィルム上に直に金属Caを40nm蒸着し、蒸着Caが内側になるよう該フィルムとガラス基板を市販の有機EL用封止材で封止して測定試料を作製した。次に該測定試料を前記の温湿度条件に保持し、試料フィルム上の金属Caの光学濃度変化(水酸化あるいは酸化により金属光沢が減少)から水蒸気透過率を求めた。
【0037】
<接着強度測定>
試料の接着力は島津製作所製万能引張試験機を用い、T型剥離法を用い、試料幅15mm、引張速度300mm/minにおける強度を測定した。また、A5サイズに切り取った試料をプレッシャークッカー試験機(加圧蒸気による促進評価装置、ヤマト科学製)に105℃で168時間保存後の接着強度もあわせて評価した。端面は2mmのアルミシートを用いて封止した。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例6
上記ガスバリアユニットD−1〜D−5について、該ガスバリアユニットの端面(ガスバリアユニットの横面)からの水蒸気の浸入に対する抑制効果を確認するため、ガスバリアユニットの端面を1mmの金属アルミニウムシートで隙間なく封止した場合の水蒸気透過率についても評価を行った。結果より接着厚を薄くすることによりフィルム端面からの水蒸気の浸入を抑制する効果があることがわかった。
【0040】
【表2】

【0041】
太陽電池モジュール用バックシートの作成
上記実施例3で作成したガスバリアユニットの一方の面に、実施例1と同じ接着剤を用いて東レ製ルミラーX10S(50μm)を貼り合わせ、他方の面に、実施例1と同じ接着剤を用いて東レ製ルミラーE20(50μm)を貼り合わせ、太陽電池モジュール用バックシートを作成した。
【0042】
実施例7
太陽電池モジュールの作成
上記で作成した太陽電池モジュール用バックシートを用いて、太陽電池モジュールを作成した。具体的には、太陽電池モジュール用充填剤として、スタンダードキュアタイプのエチレンー酢酸ビニル共重合体を用いた。10cm角の強化ガラス上に厚さ450μmのエチレンー酢酸ビニル共重合体でアモルファス系のシリコン太陽電池セルを挟み込み充填し、さらにその上の太陽電池モジュール用バックシートを設置することで太陽電池モジュールを作成した。設置条件は、150℃にて真空引き3分行ったあと、9分間圧着を行った。本方法で作成した太陽電池モジュールは、良好に作動し、85℃、85%相対湿度の環境下でも良好な電気出力特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、要求されるバリア性能を確保しつつ、層間の密着性に優れた太陽電池モジュール用バックシートを提供可能になった。特に、本発明の方法では、アルミ箔を用いずに製造できるため、絶縁性のバックシートとすることが可能になる。
さらに、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、非特許文献1のようにバックシートへの適性に関する制約(コスト、連続生産性、接着性、耐久性)が全くない。
加えて、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、湿熱経時下においても安定である。太陽電池は、屋外で、永年に渡って使用されるため、このような安定性は極めて重要である。
【符号の説明】
【0044】
1 基材フィルム
2 無機層
3 ガスバリアフィルム
4 接着層
5 ガスバリアユニット
6 太陽電池モジュール用のバックシート
7 接着層
8 基板
9 基板
10 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、無機酸化物、無機窒化物またはそれらの混合物からなる無機層を含むバリア層を有し、該バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜3nmであるガスバリアフィルム2枚を、前記バリア層同士が、二液型ポリウレタン系接着剤を硬化してなる接着層を介して対向するように配置したガスバリアユニット。
【請求項2】
前記接着層の厚さが0.1μm以上2μm未満である、請求項1に記載のガスバリアユニット。
【請求項3】
前記ガスバリアフィルムの無機層と接着層が隣接している、請求項1または2に記載のガスバリアユニット。
【請求項4】
前記ガスバリアフィルムの無機層と接着層が隣接し、かつ、基材フィルムと無機層の間に少なくとも一層のアンダーコート層を有する、請求項1または2に記載のガスバリアユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアユニットを含む太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項6】
前記二液型ポリウレタン系接着剤が、105℃、相対湿度100%で、24時間保存後のラミネート強度が1N/15mm以上であり、かつ、デラミネーションが生じない耐加水分解性接着剤である、請求項5に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項7】
前記二液型ポリウレタン系接着剤が、ポリエーテルポリウレタンポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物を配合した接着剤である、請求項5または6に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項8】
前記無機層が蒸着法により形成されたことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項9】
前記無機層が珪素酸化物またはアルミニウム酸化物またはこれらの混合物からなる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項10】
前記バリア層の最表面の表面粗さ(Ra)が、0.1〜1.0nmである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシート。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用のバックシートを含む太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−73199(P2011−73199A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225252(P2009−225252)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】