説明

ガスバリア性積層フィルム、積層体、およびそれを用いた真空断熱材

【課題】 防湿性、断熱性に優れたガスバリア性積層フィルム、積層体、およびそれを用いた真空断熱材を提供する。
【解決手段】 本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、プラスチック材料からなる基材フィルムに、透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、半透明薄膜層を積層し、さらに、ガスバリア性塗布膜と半透明薄膜層の間には、強密着処理層を設けた構成を基本構成としており、このガスバリア性積層フィルムを用いることにより、防湿性、断熱性に優れたガスバリア性積層体、および真空断熱材を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層フィルム、積層体およびそれを用いた真空断熱材に関し、詳しくは、水蒸気に対するバリア性が高く、且つ、優れた断熱性を有し、真空断熱材の外装体に使用する積層体として適したガスバリア性積層フィルム、積層体、およびそれを用いた真空断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫等の低温保持を求められる機器には、断熱材として、種々の構造の断熱材が用いられてきている。その一つとして、一般にプラスチックフィルム等からなる外装体に断熱性コア材を収納し、内部を減圧密封して得られる真空断熱材がある(特許文献1)。この外装体には、真空状態を保持するために、外部からの空気や湿気等の進入を防ぐ能力が必要であり、外装体を構成する材料には、ガスバリア性に優れた材料が求められている。
【0003】
上述のガスバリア性に優れた材料としては、金属のアルミニウムを蒸着したフィルムを、機械的な強度を有するポリアミドフィルムやポリエステルフィルムと積層したものが、一般に用いられてきた。しかしながら、このような従来の積層フィルムでは、バリア性が不足しており、特に水蒸気に対して、さらなるバリア性の向上が求められている。
【0004】
ここで、バリア性の高い積層体として、アルミニウム箔などの金属箔をラミネート構成したガスバリアフィルムがある。しかしながら、アルミニウム箔などの金属は熱伝導率が大きいために、断熱効果が低下する、いわゆるヒートブリッジ現象が問題となっている(特許文献2)。
【0005】
その他にも、プラスチック基材フィルムに無機酸化物を蒸着し、更にバリアコート層および金属アルミニウムからなるハーフ蒸着層を設け、さらにバリアコートを積層することを特徴とする積層体や(特許文献3)、透明な蒸着層からなる積層体を用いたものが提案されているが(特許文献4)、未だバリア性が不足しており、特に水蒸気に対して、十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−213561号公報
【特許文献2】特開2001−21094号公報
【特許文献3】特開2004−330669号公報
【特許文献4】特開2005−132004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、防湿性、断熱性に優れたガスバリア性積層フィルム、積層体、およびそれを用いた真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、プラスチック材料からなる基材フィルムに、透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、半透明薄膜層を積層し、さらに、ガスバリア性塗布膜と半透明薄膜層の間には、強密着処理層を設けた構成を基本構成としており、このガスバリア性積層フィルムを用いることにより、本発明に係るガスバリア性積層体、および本発明に係る真空断熱材を得るものである。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、プラスチック材料からなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、ガスバリア層を積層した積層フィルムにおいて、前記ガスバリア層は、透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、半透明薄膜層を積層したものであって、前記ガスバリア性塗布膜と前記半透明薄膜層の間には、前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより形成された強密着処理層があり、かつ、前記ガスバリア性塗布膜は、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種類またはそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記半透明薄膜層が、物理蒸着法によるアルミニウム、ニッケル、チタニウムの単独、若しくは混合物の酸化物または窒化物の蒸着膜であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記半透明薄膜層が、物理蒸着法によるアルミニウムの酸化物からなり、該酸化物におけるアルミニウム原子に対する酸素原子の比が、0.1〜1.0であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0012】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記プラスチック材料からなる基材フィルムに用いられるプラスチック材料が、ポリエステル、ポリアミド、またはポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかにに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0013】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記易接着処理が、酸素、窒素、若しくはアルゴンの単独ガスまたはこれらの混合ガスによるプラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0014】
また、本発明の請求項6に係る発明は、一般式R1nM(OR2m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタニウム、またはアルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0015】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記アルコキシドが、アルコキシラン、アルコキシドの加水分解物、またはアルコキシドの加水分解縮合物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0016】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記ガスバリア性組成物が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0017】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設けた基材フィルムを、20℃〜200℃で、かつ、前記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理した硬化膜からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0018】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記ゾルゲル法におけるゾルゲル法触媒が、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三級アミンからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0019】
また、本発明の請求項11に係る発明は、前記第三級アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンからなることを特徴とする請求項10に記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0020】
また、本発明の請求項12に係る発明は、前記ガスバリア性組成物中の水が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの割合で用いられることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
【0021】
また、本発明の請求項13に係る発明は、請求項1〜12のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムの2枚を、各々の半透明薄膜層の面が対向するように接着剤層を介して接着し、前記ガスバリア性積層フィルムのいずれか一方の基材フィルム面に、接着剤層を介して、シーラント層を積層してなることを特徴とするガスバリア性積層体である。
【0022】
また、本発明の請求項14に係る発明は、請求項13に記載のガスバリア性積層体のシーラント層の面を対向させて周縁をヒートシールして形成した外装体に、断熱性コア材として硬質ポリウレタンフォームを収納し、減圧密封してなることを特徴とする真空断熱材である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プラスチック材料からなる基材フィルムを用いて、その少なくとも一方の面に、透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、半透明薄膜層を積層し、さらに、ガスバリア性塗布膜と金属薄膜層の間には、強密着処理層を設けて密着性を向上させているため、水蒸気透過度が小さいガスバリア性積層フィルムを得ることができ、かつ、半透明薄膜層を用いることで、金属蒸着層由来のヒートブリッジ現象を抑制し、熱伝導率が小さい真空断熱材を得ることができる。
【0024】
ここで、本発明に係るガスバリア性積層フィルムを構成するガスバリア性塗布膜は、その表面に易接着処理がされることにより、その表面が強密着処理層となっており、この強密着処理層を間にして、ガスバリア性塗布膜と金属薄膜層とを積層することにより、ガスバリア性塗布膜と金属薄膜層とを直接積層した場合には得られなかったバリア性を発揮させることができ、基材フィルム、透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、強密着処理層、半透明薄膜層から構成される本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、水蒸気に対して優れたバリア性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るガスバリア性積層フィルムについて、その層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリア性積層体について、その層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図3】本発明に係る真空断熱材について、その一例を示す概略的断面図である。
【図4】プラズマ化学気相成長装置について、その一例の概要を示す概略的構成図である。
【図5】巻き取り式真空蒸着装置について、その一例の概要を示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明について、説明する。
[ガスバリア性積層フィルム]
本発明に係るガスバリア性積層フィルム10は、図1に示すように、基材フィルム1の少なくとも一方の面に、透明蒸着層2、ガスバリア性塗布膜3、強密着処理層4、半透明薄膜層5を積層した5層構成を基本構造とするものである。
【0027】
[ガスバリア性積層体]
本発明に係るガスバリア性積層体100の層構成の一例を図2に示す。本発明に係るガスバリア性積層フィルム10を用いて、真空断熱材用の外装体となるガスバリア性積層体100を製造する場合は、例えば、図2に示すように、同種の、または異種の本発明に係るガスバリア性積層フィルム10を2枚使用して、各々の半透明薄膜層5の面が対向するように接着剤層6を介して接着し、前記ガスバリア性積層フィルムのいずれか一方の基材フィルム1の面に、接着剤層6を介して、シーラント層7を設けることにより、本発明に係るガスバリア性積層体を製造することができる。
【0028】
[真空断熱材]
本発明に係る真空断熱材200の一例を図3に示す。本発明に係るガスバリア性積層体100を用いて、本発明に係る真空断熱材200を製造する場合は、例えば、図3に示すように、本発明に係るガスバリア性積層体100のシーラント層7を対向させ、開口部を除いて周縁をヒートシールして形成した外装体に、断熱性コア材8として硬質ポリウレタンフォームを収納し、その後、減圧して開口部をヒートシールして密封することにより、本発明に係る真空断熱材を製造することができる。
【0029】
[基材フィルム]
本発明の基材フィルムとしては、化学的または物理的強度に優れ、無機酸化物または無機窒化物の蒸着薄膜層を形成する条件等に耐え、蒸着薄膜層の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチック材料からなるフィルムないしシートを使用することができる。
【0030】
このようなプラスチック材料からなるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種のプラスチック材料からなるフィルムないしシートを使用することができる。
【0031】
本発明においては、上記のプラスチック材料からなるフィルムの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂のプラスチック材料からなるフィルムないしシートを使用することが、機械的な強度を有し、耐ピンホール性に優れている点から好ましい。
【0032】
本発明において、上記の各種フィルムは、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種のフィルムを製造し、さらに、所望により、テンター方式、あるいは、チューブラマ方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸した各種のフィルムとすることができる。
本発明において、基材フィルムの膜厚は、6〜188μmであり、より好ましくは、9〜25μmである。
【0033】
なお、上記各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0034】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
【0035】
また、本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシートの表面には、後述する無機酸化物または無機窒化物の蒸着膜との密接着性等を向上させるために、予め、所望の表面処理層を設けておくこともできる。
【0036】
本発明において、上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を
用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾ
ン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他を形成しておくことができる。
【0037】
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシートと後述する無機酸化物または無機窒化物の蒸着膜との密接着性等を改善するためのものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
【0038】
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0039】
[透明蒸着層]
本発明において、基材フィルムに積層する透明蒸着層としては、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物または窒化物からなる蒸着薄膜層を挙げることができる。好ましいものとしては、珪素(Si)又はアルミニウム(Al)の金属の酸化物からなる蒸着薄膜層を挙げることができる。
【0040】
また、上記の金属の酸化物の蒸着薄膜層は、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物でもあり、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる)で表される。
【0041】
また、上記のXの値の範囲として、珪素(Si)は0〜2、アルミニウム(Al)は0〜1.5、マグネシウム(Mg)は0〜1、カルシウム(Ca)は0〜1、カリウム(K)は0〜0.5、スズ(Sn)は0〜2、ナトリウム(Na)は0〜0.5、ホウ素(B)は0〜1.5、チタン(Ti)は0〜2、鉛(Pb)は0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は0〜1.5の範囲の値をとることができる。
【0042】
上記において、X=0の場合は、完全な金属であり、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化したときの値である。
【0043】
望ましくは、珪素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0044】
無機酸化物または無機窒化物の蒸着薄膜層の層厚は、使用する金属、又は金属の酸化物若しくは窒化物の種類等によって異なるが、例えば50〜20000Å、好ましくは100〜500Åの範囲内で任意に選択することができる。
【0045】
また、無機酸化物層として、使用する金属、又は金属の酸化物は、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物層を構成することもできる。
【0046】
さらに、無機酸化物が、酸化珪素である場合は、SiOxCyで表される炭素含有酸化珪素であってもよい。そして式中、xは1.5〜2.2の範囲内にあって、yは0.15〜0.80の範囲内にあるのが好ましく、そしてxが1.7〜2.1の範囲内にあって、yが0.39〜0.47の範囲内にあるのがさらに好ましい。なお、無機窒化物についても無機酸化物と同様である。
【0047】
[透明蒸着層の形成方法]
透明蒸着層の形成は、化学気相成長法又は物理気相成長法により、又はこれらを併用して行うことができる。化学気相成長法を用いる場合には、膜質の異なる蒸着薄膜層を多層で積層することができる。
【0048】
(1)化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)
本発明で利用する化学気相成長法には、例えば、プラズマCVD法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が含まれる。
本発明で利用することができる化学気相成長法の一つである、プラズマCVD法(Plasma Chemical Vapor Deposition法)は、具体的には、基材フィルムの被蒸着面の表面に、透明蒸着の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて、蒸着薄膜層を形成する。
【0049】
上記において、低温プラズマ発生装置として、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用するが、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
本発明における、低温プラズマ化学気相成長法による透明蒸着層の形成法について、その一例を挙げて説明する。図4は、上記の低温プラズマ化学気相成長法において使用される低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
【0050】
本発明においては、図4に示すように、低温プラズマ化学気相成長装置21の真空チャンバー22内に配置された巻き出しロール23から、被蒸着フィルム11を繰り出し、更に、該被蒸着フィルム11を、補助ロール24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。ガス供給装置26、27及び、原料揮発供給装置28から酸素ガス、不活性ガス、蒸着用モノマーガス等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しながら原料供給ノズル29を通して真空チャンバー22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された、被蒸着フィルム11の上に、グロー放電プラズマ30によってプラズマを発生させ、これを照射して、透明蒸着層を形成する。その際に、冷却・電極ドラム25は、真空チャンバー22の外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。次いで、被蒸着フィルム11は、透明蒸着層を形成した後、補助ロール33を介して巻き取りロール34に巻き取られる。なお、図中、35は真空ポンプを表す。
【0051】
また、上記の低温プラズマ化学気相成長装置において、透明蒸着層は、プラズマ化した原料ガスを用いて、被蒸着フィルム上に薄膜状に形成されるので、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となる。従って、従来の真空蒸着法等によって形成される無機酸化物蒸着薄膜層よりもはるかに高いバリア性を示し、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。
【0052】
(2)物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)
物理気相成長法には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等が含まれる。
本発明において利用できる物理気相成長法について、その一例を挙げてさらに具体的に説明する。図5は、本発明における蒸着方法の一例を示す巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。
【0053】
図5に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバー42の中で、巻き出しロール43から、被蒸着フィルム11を繰り出し、該被蒸着フィルム11を、ガイドロール44、45を介して、冷却したコーティングドラム46に案内する。次いで、冷却したコーティングドラム46上に案内された被蒸着フィルム11の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48を、必要ならば、酸素ガス吹出口49から酸素ガス等を供給しながら蒸着させ、マスク50を介して透明蒸着層を成膜化する。電子ビーム真空蒸着法では、蒸着源48への過熱が電子ビーム照射により行われる。次いで、透明蒸着層を積層した被蒸着フィルム11を、ガイドロール51、52を介して、巻き取りロール53に巻き取る。
【0054】
[ガスバリア性塗布膜]
本発明に係るガスバリア性塗布膜は、アルコキシドと水溶性高分子とをゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるものである。これにより、フィルムのガスバリア性をさらに向上させることができる。
(1)アルコキシド
該ガスバリア性組成物において用いることができるアルコキシドとしては、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種類またはそれ以上のアルコキシドを好ましく用いることができる。
【0055】
本発明において、一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、金属原子Mとして、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムその他を使用することができ、Mが珪素であるアルコキシシランを使用することが好ましい。
また、本発明において、単独又は二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うことができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基その他のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基その他を挙げることができる。
尚、本発明において、同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0056】
一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用される。
【0057】
(2)水溶性高分子
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であることが好ましい。上記において、500重量部を越えると、バリア性被膜の脆性が大きくなり、その耐侯性等も低下することから好ましくない。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂として、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製PVA110(ケン化度=98〜99%、重合度=1100)、PVA117(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)、PVA124(ケン化度=98〜99%、重合度=2400)、PVA135H(ケン化度=99.7%以上、重合度=3500)、同社製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1400)及びゴーセノールNH−18(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)等を使用することができる。
【0058】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。このようなケン化物には、酢酸基が数十モル%残存する部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないか又は酢酸基が全く残存していない完全ケン化物までが包含される。特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、ケン化度が80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であるものを使用することが望ましい。また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%であるものを使用することが好ましい。上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0059】
(3)シランカップリング剤
本発明において、本発明に係る第1および第2のガスバリア性塗布膜を形成するガスバリア性組成物を調製するには、シランカップリング剤等も添加することができる。
本発明において、シランカップリング剤は、無機物と反応する加水分解基、及び有機物と反応する有機官能基の両方を一分子中にもつ有機ケイ素化合物からなる。無機物と反応する加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基及びクロロ基などが挙げられる。また、有機物と反応する有機官能基としては、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基又はイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基が好ましく、例えばイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基が挙げられる。また、ビニル基及びメタクリルオキシ基などであってもよい。
【0060】
該有機ケイ素化合物は、無機物及び有機物のいずれとも反応しないアルキル基やフェニル基を有していてもよい。また、有機官能基を有しないケイ素化合物、例えば加水分解基のみを有するアルコキシシランのような化合物と混合することもできる。本発明において、シランカップリング剤は、1種類または2種類以上の混合物であっても良い。
【0061】
本発明において用いられるシランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0062】
(4)ガスバリア性組成物の調製
アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤、および必要に応じて、シランカップリング剤等を混合してガスバリア性組成物を調製する。
ガスバリア性組成物の調製には、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モルの割合の水を用いることが好ましい。
ガスバリア性組成物の調製において用いられる、ゾル−ゲル法触媒としては、実質的に水に不溶であり、且つ有機溶媒に可溶な第三級アミン、例えばN,N−ジメチルベンジルアミンを用いることができ、また、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、並びに酢酸、酒石酸等の有機酸その他を使用することができる。更に、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等を用いることができる。
【0063】
更に、ガスバリア性組成物に関して、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態にあることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択される。本発明において、溶剤中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(日本合成化学社製)として市販されているものを使用することができる。
【0064】
(5)ガスバリア性塗布膜の形成方法
上記のガスバリア性組成物を、透明蒸着層の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なガスバリア性塗布膜が形成される。
更に、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が透明蒸着層の表面の水酸基と結合する為、該透明蒸着層とガスバリア性塗布膜との密着性、接着性等が良好なものとなる。
【0065】
上述のように形成されることにより、本発明のガスバリア性塗布膜は、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を取る。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0066】
本発明においては、透明蒸着層とガスバリア性塗布膜との2層間で、例えば、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成し、これら2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なバリア性を発揮する。
【0067】
本発明において、上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回或いは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmのバリアコートを形成することができる。更に、通常の環境下で、20〜300℃、好ましくは20〜200℃の温度下で、3秒〜60分間、好ましくは10秒〜10分間加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0068】
[強密着処理層]
本発明の強密着処理層は、上述のガスバリア性塗布膜の表面を易接着処理することにより、ガスバリア性塗布膜の表面に形成される。
強密着処理層を形成することにより、ガスバリア性塗布膜と半透明薄膜層とを直接積層する場合には得られなかったガスバリア性の向上を図ることができる。
易接着処理は、酸素、窒素若しくはアルゴンの単独、又はこれらの混合ガスによるプラズマ処理により行われる。
易接着処理は、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、出力0.5〜20kw、酸素ガス若しくはアルゴンガス単独を又はそれらの混合ガスを使用し、混合ガス圧2〜100×10-3mbar、処理速度100〜600m/minで、酸素ガス若しくはアルゴンガス単独プラズマ処理、又は酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理により行い、強密着処理層を形成した。
【0069】
[半透明薄膜層]
半透明薄膜層の蒸着は、上述した蒸着薄膜層の蒸着と同様に、化学気相成長法又は物理気相成長法により、又はこれらを併用して行うことができる。例えば、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法が好ましく使用できる。
本発明の半透明薄膜層は、酸素ガス及び/又は窒素ガスを導入しながら、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、およびチタン(Ti)等の金属を上記の方法で蒸着させることで形成されるが、金属原子に対する酸素原子及び/又は窒素原子の比を調整することで、完全な金属のときよりも熱伝導率が小さく、内容物の視認性が得られ、かつ、ある程度の遮光性の得られる層(半透明薄膜層)とすることができる。
本発明においては、物理蒸着法によるアルミニウム、ニッケル、チタニウムの単独、若しくは混合物の酸化物または窒化物の蒸着膜を使用することが出来るが、特に好ましくは、アルミニウムの酸化物(AlOX)からなる半透明薄膜層であり、該酸化物におけるアルミニウム原子に対する酸素原子の比が0.1〜1.0の範囲、すなわちAlOXで表されるXの値の範囲が0.1〜1.0の場合である。
【0070】
[接着剤層]
接着剤層の材料としては、ドライラミネートによって、半透明薄膜層、基材フィルム、シーラント層等を接着させることができるものであれば良く、特に限定されるものではない。
例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0071】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0072】
[シーラント層]
シーラント層としては、例えば、熱によって溶融し、相互に融着し得るヒートシール性有するものを使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレ、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー 、酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルムを使用することができる。
フィルムの厚さとしては、10μm以上あればヒートシール性を発揮できるが、好ましくは、100μm〜500μm位が、内容物保護の点から望ましい。
【実施例】
【0073】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0074】
(実施例1)
[ガスバリア性積層フィルムIの作成]
(1)基材フィルムとして、厚さ15μmのポリアミドフィルムを使用し、巻き取り式の低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、以下の蒸着条件により、透明蒸着層として、炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
出力:10kW
蒸着チャンバー内の真空度:60mTorr
処理速度:50m/min
ガス流量:(ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:He:Ar)=(1.0:5. 0:1.0:0.5)[単位:slm]
蒸着面:コロナ放電処理面
【0075】
その後、蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を用いて、出力9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0076】
(2)他方、以下の表1に示す組成に従って、組成a.正珪酸エチル(多摩科学社製)、イソプロピルアルコール、0.5規定塩酸水溶液、イオン交換水、シランカップリング剤からなる加水分解液に、予め調製した組成b.のポリビニルアルコール水溶液を加えて攪拌し 、無色透明のガスバリア性塗工液を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性塗工液をグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、150℃で60秒間、加熱処理して、厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
【0079】
(3)次に、上記で作成した積層フィルムを、巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、その積層フィルムの第1のガスバリア性塗布膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、出力9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、強密着処理層を形成した。
【0080】
(4)その後、上記の強密着処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を、半透明薄膜層として形成し、本発明に係るガスバリア性積層フィルムIを得た。得られた酸化アルミニウムの蒸着膜におけるAlOXのX値を測定した結果、X=0.3であった。
(蒸着条件)
蒸着チヤンバー内の真空度:1×10-4mbar
巻き取りチヤンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:30kW
酸素導入量:8000sccm
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:強密着処理面
【0081】
[ガスバリア性積層フィルムIIの作成]
(5)基材フィルムとして、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、まず、上記の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、その2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ放電処理面に、一酸化珪素を蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、透明蒸着層として、膜厚300Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
酸素ガス導入後の蒸着チヤンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチヤンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:35kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ放電処理面
【0082】
その後、酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、出力9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。それ以外は、上述のガスバリア性積層フィルムIと同様の方法で、本発明に係るガスバリア性積層フィルムIIを作成した。
【0083】
[ガスバリア性積層体の作成]
(6)前記ガスバリア性積層フィルムIと前記ガスバリア性積層フィルムIIを、各々の半透明薄膜層面が対向するようにして、接着剤層として2液効果型ウレタン接着剤を用いてドライラミネーション接着し、ガスバリア性積層フィルムIの基材フィルムの面の上に、シーラント層として高密度ポリエチレンフィルムを、ドライラミネーション接着して、真空断熱材用のガスバリア性積層体を形成した。
【0084】
[断熱コア材収納用外装体の作成]
(7)上述の(6)で作成したガスバリア性積層体を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールし、1方向のみが開口した袋状の断熱コア材収納用外装体を作成した。
【0085】
[真空断熱材の作成]
(8)断熱コア材として、200×200×30mmの硬質ポリウレタンフォームを用い、乾燥処理(120℃、1時間)を行った。次に、上述(7)で作成した外装体に前記硬質ポリウレタンフォームからなる断熱コア材を収納し、外装体の内部を真空排気したあと、外装体の開口部分をヒートシールによって密封して、本発明に係る真空断熱材を得た。封止圧力は0.05Torrであった。その後、プレス加圧装置を用いて、圧力70ton(約150kgf/cm2)で、本発明に係る真空断熱材を加圧圧縮した。
【0086】
(実施例2)
実施例1の(3)記載の強密着処理層の形成条件を、出力9kw、窒素ガス:アルゴンガス=60:3.0(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minで窒素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、強密着処理層を形成し、それ以外は実施例1と同様の方法で、本発明に係るガスバリア性積層フィルムを作成し、同様にガスバリア性積層体、および真空断熱材を作成した。
【0087】
(比較例1)
実施例1の(3)記載の強密着処理層の形成、および、(4)記載の半透明薄膜層の形成を行わない以外は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層フィルムを作成し、同様にガスバリア性積層体、および真空断熱材を製造した。
【0088】
(測定試験)
実施例1、2、および比較例1において作成されたガスバリア性積層フィルム、真空断熱材を用いて、以下の試験を行った。結果を表2に示す。
(a)水蒸気透過度測定
各ガスバリア性積層体の水蒸気透過度を、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製、PARMATRAN−W3/31)を使用して測定した。
(b)熱伝導率測定
各真空断熱材の熱伝導率を、JIS−A−9511に規定される平板熱流計法( AUTO−λHC−072)で測定した。
【0089】
【表2】

【0090】
上記のように本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、水蒸気に対して優れたバリア性を示し、また、本発明に係る真空断熱材は、熱伝導率が低く、優れた断熱性を示すものであった。
【符号の説明】
【0091】
1・・・基材フィルム
2・・・透明蒸着層
3・・・ガスバリア性塗布膜
4・・・強密着処理層
5・・・半透明薄膜層
6・・・接着剤層
7・・・シーラント層
8・・・断熱性コア材
10・・・ガスバリア性積層フィルム
11・・・被蒸着フィルム
21・・・低温プラズマ化学気相成長装置
22、42・・・真空チャンバー
23、43・・・巻き出しロール
24、33・・・補助ロール
25・・・冷却・電極ドラム
26、27・・・ガス供給装置
28・・・原料揮発供給装置
29・・・原料供給ノズル
30・・・グロー放電プラズマ
31・・・電源
32・・・マグネット
34、53・・・巻き取りロール
35・・・真空ポンプ
41・・・巻き取り式真空蒸着装置
44、45、51、52・・・ガイドロール
46・・・コーティングドラム
47・・・るつぼ
48・・・蒸着源
49・・・酸素ガス吹出口
50・・・マスク
100・・・ガスバリア性積層体
200・・・真空断熱材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料からなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、ガスバリア層を積層した積層フィルムにおいて、
前記ガスバリア層は、
透明蒸着層、ガスバリア性塗布膜、半透明薄膜層を積層したものであって、
前記ガスバリア性塗布膜と前記半透明薄膜層の間には、
前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより形成された強密着処理層があり、かつ、
前記ガスバリア性塗布膜は、
一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種類またはそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【請求項2】
前記半透明薄膜層が、物理蒸着法によるアルミニウム、ニッケル、チタニウムの単独、若しくは混合物の酸化物または窒化物の蒸着膜であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項3】
前記半透明薄膜層が、物理蒸着法によるアルミニウムの酸化物からなり、該酸化物におけるアルミニウム原子に対する酸素原子の比が、0.1〜1.0であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項4】
前記プラスチック材料からなる基材フィルムに用いられるプラスチック材料が、ポリエステル、ポリアミド、またはポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかにに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項5】
前記易接着処理が、酸素、窒素、若しくはアルゴンの単独ガスまたはこれらの混合ガスによるプラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項6】
一般式R1nM(OR2m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタニウム、またはアルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項7】
前記アルコキシドが、アルコキシラン、アルコキシドの加水分解物、またはアルコキシドの加水分解縮合物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項8】
前記ガスバリア性組成物が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設けた基材フィルムを、20℃〜200℃で、かつ、前記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理した硬化膜からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項10】
前記ゾルゲル法におけるゾルゲル法触媒が、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三級アミンからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項11】
前記第三級アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンからなることを特徴とする請求項10に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項12】
前記ガスバリア性組成物中の水が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの割合で用いられることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムの2枚を、各々の半透明薄膜層の面が対向するように接着剤層を介して接着し、前記ガスバリア性積層フィルムのいずれか一方の基材フィルム面に、接着剤層を介して、シーラント層を積層してなることを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項14】
請求項13に記載のガスバリア性積層体のシーラント層の面を対向させて周縁をヒートシールして形成した外装体に、断熱性コア材として硬質ポリウレタンフォームを収納し、減圧密封してなることを特徴とする真空断熱材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−5839(P2011−5839A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154401(P2009−154401)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】