説明

ガスバリア

バイオマス、産業廃棄物、都市ごみや汚泥を含む有機被覆廃棄物や有機物などの材料を処理するための装置が提供される。装置は、本体部(15)と、単一の材料入口(11)と、炉の入口と本体部との間の傾斜部(13)とを備える回転および傾斜可能な炉を備える。この炉は、長手軸を中心に炉(1)を回転させるための手段(25)と炉を傾斜させるための手段(32、102)とをさらに含む。炉は、炉(1)に材料を導入可能な開位置と炉内部が外部環境から遮断される閉位置との間を移動可能な蓋を有する。入口(11)またはそれに隣接する位置にある手段が炉の内側に向かってガスを指向させ、開口部に隣接してガスバリアを形成する。そうして蓋が開位置にある場合に酸素を含む外気ガスの侵入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、産業廃棄物、都市ごみや汚泥を含む有機被覆廃棄物や有機物などの材料を処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一端が開放された傾斜回転炉は、金属工業において有機材料を含む不純物を含有するスクラップから得られる、例えばアルミニウムなどの汚染金属の溶解に使用される(例えば、Yershalmiによる米国特許第6,572,675号明細書、Mansellによる米国特許第6,676,888号明細書を参照)。より具体的には、これらの炉はアルミニウムの浮きかす処理に利用される。これらの炉は通常、金属スクラップを溶融状態(流体状態)で処理した後に、一般的には例えば1400〜2000°Fの範囲の高温で運転される。これらの炉は、空気バーナか酸素バーナを利用して、炉内で金属スクラップを加熱、溶解する。一般的にこれらの炉では、米国特許第6,572,675号明細書(Yerushalmi)に記載されているように、酸素対燃料の比が1.8〜1.21の範囲で運転されるバーナを利用する。この範囲では、炉内環境に注入された燃料がほぼ完全に酸化される。この高い酸素対燃料比によって、これらの傾斜回転炉内での高い燃料効率(溶融アルミニウム1ポンド当たりに使用される燃料のBTU)が確保される。
【0003】
さらにこれらタイプの炉のすべてにおいて排出ガスは、米国特許第6,572.675号明細書(Yerushalmi)および米国特許第6,676,888号明細書(Mansell)に示されているような開放型のフードシステム内に収集される。開放型のフードシステムは、回転炉から排出される排出ガスを取り囲んで収集するように設計されている。開放型フードシステムは、高温排出ガスとともに、広範囲の不純物(燃焼されていない有機物、微粒子やそのほかの不純物)なども収集する。これらの不純物は高温ガス中に取り込まれて伴出される。開放型フードシステムはまた、高温排出ガスのほかに、かなりの量の周辺空気を(炉の外部から)フード内に取り込み、空気と汚染排出ガスの完全混合物を作る。
【0004】
Zdolshekによる米国特許出願第2005/0077658号明細書において開放型フードシステムが論じられている。このシステムは、伴出された空気とともに汚染ガスを受け取り、ヒューム処理システムへ送って、微粒子の大部分を遠心分離器で除去し、炭化水素は別の独立型灰化装置内で灰化する。灰化装置から出るガスはバグハウスへ排出される。この構成は排出前にガスを処理するように設計されている。
【0005】
排出ガスを利用して排気筒から熱を回収する実施例が、Fink による米国特許第4,697,792号明細書に開示されている。この特許において、高温ガスは復熱装置(レキュペレータ)内部を通過する。そこで燃焼空気がこのガスで予熱されて、ブロアからバーナへ送風される。したがって、これは排出ガスを燃焼空気の予熱にのみ利用する開放循環システムである。
【0006】
このような炉においては一般的に溶解サイクルの最後には炉を前方へ傾斜させて、溶融金属をまず取鍋へ空ける。そうして、鉄とこの処理に使用された塩を含むそのほかの残留不純物との混合物や、アルミニウム酸化物などの残滓が、突出したスキム器具によって炉の内部から掬い取られる。
【0007】
米国特許第4,697,792号明細書(Fink)、第6,572,675号明細書(Yerushalmi)、第6,676,888号明細書(Mansell)で述べられている、傾斜回転炉(単一操作入口炉)が従来型の固定回転炉(二つの対向操作入口)より優れている点は以下のとおりである。
溶融金属の高速鋳込み(重力制御)。
スクラップ金属処理後に生じる溶融金属残滓(塩、アルミニウム酸化物など)の高速鋳込み。
炉内部の耐火壁と金属スクラップ間の大量熱伝導を可能として少量の使用燃料で溶解プロセスを加速する炉壁による大面積熱伝導。
高温燃焼ガスが回転炉の長手パスを2回通過(2フライト)し、大量熱伝導を確保し大きな溶融容量をもたらす、ガスの長時間滞留。
【0008】
回転炉からの半化学量論的高温ガスを利用して廃棄物をガス化する実施例は、米国特許第5,553,554号明細書(Urichによる)に列挙されており、そこには廃棄物のガス化に、2つの対向する入口(したがって単一入口傾斜回転炉ではない)を有する連続運転炉の利用が記述されている。この特許において、有機性廃棄物はラム供給装置のあるホッパから回転炉内へ連続的に供給される。さらにこのシステムでは回転炉内にバーナが設置され、誘導された空気で炉内を直接的に炎熱処理する。このシステムのプロセス制御は有機物が完全にガス化したことを予測する機構を持っていない。したがってこのシステムは、廃棄物中の有機物の量に拘らず、廃棄物に対して固定の処理時間で運転される。これは当然ながら、廃棄物材料の過剰処理(エネルギーの浪費)かまたは材料の処理不足(有機物は完全に燃焼していなくて、炉の出口で廃棄物は灰を被ってまだ蒸し焼き状態にある)かのいずれかになってしまう(これは環境問題であるとともに、炭化水素の未燃焼による潜在的エネルギーの損失、という2つの問題をもたらす)。このような炉に関するさらなる問題点として、材料の追加投入のために炉の扉を開けると、酸素を含むガス(空気)が炉内に入り、温度が低下して金属の酸化を起こすということがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機物と有機物被覆金属を処理する方法および装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
金属スクラップ材料から、バイオマスや都市ごみや汚泥を含む有機物や廃棄物を剥離する方法は、一般的にガス化という処理を利用する。
【0012】
好適な方法は、単一操作入口を有する回転傾斜炉を利用する。この炉は、ボトル型の形状をし、高負荷と高温に耐える耐熱材料で内張りされ、その長手方向中心軸の周りを回転可能となっている。この炉は単一の操作入口を有し、処理する材料を加熱するためのバーナと、排出ガスを取り除く排煙ダクトを備えた密閉扉とを含んでいる。
【0013】
また、回転炉内のスクラップまたは廃棄物から放出される揮発性有機化合物(VOC)を灰化する熱酸化器も備えている。
【0014】
熱酸化器は、一次燃料(天然ガスや石油などの)及び/又はVOCガスの両方を使用することが可能な複数燃料バーナを備えていてもよい。炉内温度を制御するために雰囲気調整システムが設けられ、バグハウスへの温度を制御する第2の雰囲気調整システムも設けられている。ガス化プロセス中での炉システムの燃焼酸素レベルを化学量論より低く(<2〜12%)維持するためのプロセス制御システムが設けられている。さらに、制御システムは、回転傾斜炉内(1000〜1380°F)および熱酸化器内(約2400°F)の適正なガス化温度を維持する。さらに、制御システムはプロセスサイクルを通してシステム圧力が確実に一定値を維持するようにする。制御システムは、酸素と一酸化炭素のセンサ、熱センサ、ガス分析器、圧力センサの組み合わせを活用してシステム内部からの信号を受信する。
【0015】
回転炉は好ましくは、金属スクラップの融点より低い温度で運転するように設計されている。炉の加熱は、バーナ、すなわちいわゆる半化学量論的燃焼で酸素が不足した状態の高温ガスを注入する高速ランスにより達成される。酸素が欠乏した(半化学量論的)燃焼であるので、スクラップの有機物は回転炉雰囲気中では部分酸化しかしない。この部分酸化はまた、スクラップ金属からの有機物をガス化するのに必要な熱を部分的にしか与えない。排出ガスは配管を通して回転炉雰囲気から出てゆき、揮発性有機化合物(VOC)を含んでいる。これらのガスはその次に熱酸化器中で灰化され、実質的に完全酸化されて大気に放出される。
【0016】
垂直熱酸化器はタールを完全灰化し、回転炉内で金属スクラップから遊離した揮発性有機化合物を完全酸化させるのに必要な2秒の滞留時間を与える。それを実現するために、熱酸化器は、酸素レベルが2〜12%の範囲の2400°Fに至る高温で、揮発性有機化合物と酸素を混合して運転される。熱酸化器は複数燃料バーナを利用して、熱酸化器雰囲気を加熱する。この複数燃料バーナは、一次燃料(天然ガス、ディーゼルオイルと回転炉から受け取る揮発性有機化合物の両方を燃焼できるように設計されている。
【0017】
そのあと、場合によっては微粒子または有害ガスを除去する下流処理を行なった後に大気中へ放出される。
【0018】
一実施形態において、高温ガスは酸化器を出て雰囲気調整システムを通る。そこでは、投入されたスクラップの種類と回転炉の運転仕様に従って、ガス温度と酸素レベルが調節される。一般的には被膜を剥離する目的に対しては、ガス温度は1000°Fより低く維持され、酸素レベルは材料と剥離の段階に応じて2〜12%の範囲に維持される。廃棄物(バイオマス、都市ごみ、産業廃棄物、スラッジを含む)のガス化に対しては、ガス温度は1380°F程度に、そして酸素レベルは4%より低く維持されてよい。
【0019】
これらのガスは次に、温度(金属の融点より低い温度)と酸素レベル(半化学量論量)を調節されて回転炉へ移動して戻り、高速ノズルから回転炉の内部環境へ導入される。これらのガスは回転炉の内部を高速で移動し、金属スクラップに衝突する。回転炉の運転として重要なのは、ノズルまたはランスが半化学量論的なガスを酸化器から注入している間は連続回転をすることである。炉の回転はスクラップの混合を助け、また衝突してくるガスの熱流に金属スクラップを曝し、それによってスクラップを再生する。炉の回転速度と、バーナの燃焼度合すなわちランスからのガス注入速度は、処理する材料に依存する。これらのパラメータは制御システム回路により決定され、製造仕様と処理する材料の種類とに依存する。金属スクラップの剥離プロセスの間の回転炉の雰囲気は主として以下の条件に維持される。(温度<1000°F、酸素レベル<2〜12%)。これらの2つの条件は、アルミニウムの金属スクラップが酸化しないことを保証する。
【0020】
回転炉の内部にはいくつかのセンサが取り付けられ、炉の運転中にデータを連続して送信する。これらのセンサとしては、圧力センサ、酸素センサ、COセンサとともに、雰囲気温度を計測する熱電対も含まれる。このデータは連続的に記録され、信号はプロセス制御システムへ送信される。プロセス制御システムはこのデータを利用して、ランスの(リターンガス)温度、酸素レベル、ランス速度、回転炉の回転速度を含む種々のパラメータを調節する。剥離の終了時間を制御するために、回転炉に流入するガスと回転炉から流出するガスの両方を閉回路中で精密ガス分析器によりモニタする。ガス分析器は酸素レベルとCOレベルの両方を記録する。
【0021】
剥離工程の運転中は、回転炉から出る酸素レベルは回転炉に入るレベルよりも低く、COレベルはその全く逆となる。剥離プロセスの終了が近くなると、炉内の有機物はほとんどガス化し、COレベルと酸素レベルは近づいて行って、最終的には等しくなる。このように配管内のガス分析器の2つの信号が等しくなることは、ガス中のすべての有機物が消費され、剥離/ガス化のプロセスが終了したことを意味する。
【0022】
酸化器から再循環させたガスを用いる、傾斜式の回転剥離炉を利用することにより、非常に効率的な熱の伝達操作ができる。さらに、炉の剥離運転に要求されることの1つは、ガスが炉から出て酸化器に向かう地点での厳密な密閉であり、回転傾斜剥離炉に空気が絶対混入しないようにすることである。この要求を充たすことにより運転時の余計な炉の冷却を必要としないし、また回転炉内または炉から出る配管内でのVOCガスの不慮の急速点火や、さらには爆発の可能性が防止される。
【0023】
以下に本発明を、添付の図面を例示として参照しながら更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による好適な形態の装置の一部断面を含む側面図であり、傾斜回転炉、熱酸化器とバグハウスが示されている。
【図2a】傾斜回転炉の断面図であり、炉の内部が示されている。
【図2b】図2aの炉の横断面図である。
【図3】排煙ダクトと燃料ランスの接続部を示す炉の扉の概略図である。
【図4】回転炉への金属スクラップまたは廃棄物の供給機構を示す図である。
【図5】図4を矢印Aの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜5は、金属スクラップから有機物を剥離し、及び/又は有機物材料をガス化して合成ガスを生成するための装置の好適な形態を示す。この装置は単一入口の傾斜型回転炉1を有し、ここからガスを排気ダクト2の通路手段を介して熱酸化器31の酸化手段へ送り、そのあと、分離器9、ファンまたはブロワ26および排出手段(煙突)10へ送る。
【0026】
分離器9は通常バグハウスとして知られ、ガス流から塵と微粒子を分離するために使用される。熱酸化器31からの高温ガスは、リターンダクト3の通路手段を経由して炉体15に戻される。
【0027】
炉は、耐火物が内張りされたドラム15、扉11、空気導管32と、炉を長手軸104を中心に回転させるための駆動機構25とを備えている。炉体には炉の扉11近くに傾斜部13があり、ガス流が炉内の金属及び/又は有機物スクラップ14の周りをよく循環し、排出時に投入されたスクラップ14を制御しやすいようにしている。
【0028】
炉1は、ほぼ水平のピボット軸102を中心として前後に傾斜できるように取り付けられている。油圧装置32は、排出時に回転炉1を軸102を中心に前へ傾斜させ、装入時および材料14の処理時には(図1に示すように)わずかに後ろに傾斜させて炉の運転特性を向上させる。
【0029】
炉の扉11は耐火物で内張りされ、精巧な扉密閉機構12を装備している。これにより、炉体15は扉11に対して回転可能であり、密閉と、回転炉内部雰囲気16と外部雰囲気30との完全な分離とを確保できる。炉の扉11には2つの開口すなわち穴28、29がある。1つの開口28は排気ダクト2に密閉接続され、もう1つの開口29はリターン導管3に密閉接続されている。この開口は2つとも頑強な密閉が維持できるように設計されていて、運転時に外部空気が回転炉雰囲気中へ侵入できないようになっている。
【0030】
運転時に回転炉の炉体15は図1に示すように後ろに少し傾斜し、炉の扉11はしっかりと密閉される。炉は駆動機構25によって回転される。高温の半化学量論的ガスが導管3から、開口29を通って炉内部へ突出している高速ノズル18を介して炉内へ導入される。ノズルは開口29に対して密閉されている。同様に、排気ダクト2は開口28を通って入口17で炉の内部に結合されている。排気ダクト2とリターンダクト3の両方はそれぞれ回転気密フランジ22、23(図3)を有し、これによりダクト2、3の扉11への密閉部に力をかけずに扉11が開けられる。
【0031】
ダクト2は排気ガスを炉から熱酸化器31へ接続し、そこで排気ガスをバーナ6からの熱流中で燃焼して燃焼ガスをバグハウス9へ送る。
【0032】
炉1は炉壁の内側にガスを指向させる通路手段40も持っている。通路手段40は、細長いチューブまたは導管で、炉1の内壁の周りに円周状に広がっている。好ましくは、この導管は炉の開口部または開口部に隣接して配置され、360°または360°より小さい典型的には240°の所定の角度まで広がっている。通路手段40は、ガスを炉内に指向させる複数の開口すなわちノズル42も有している。これらの開口は、長手軸に対して90°またはそのほかの好適な角度でガスが炉の長手軸104方向に向かうように配置と角度付け、すなわち配向がなされている。一変形においては、通路手段40は炉の外側に配置されて、ガスは炉壁内の貫通孔すなわちノズル44を介して炉内へ導入されてもよい。ここでもこれらの貫通孔すなわちノズルは、軸に対してある所定の角度でガスを炉の長手軸104方向に指向させられるような配向または角度となっていてもよい。
【0033】
通路手段40は複数の導管群で形成されて、それぞれに個別にガスが供給されて、それぞれの群のガス圧力を個別に制御できるようになっていてもよい。導管群のそれぞれが1つまたは複数の開口42、44へ供給することは理解されるであろう。
【0034】
ガスは導管3からさらなる導管46によって吸引されてもよい。ガスは酸素が除去されていて、炉の扉が開放されると、ガスカーテンを形成して酸素を含む空気が炉の内部へ入ることを制限する。ガスの供給は供給ラインにある1つまたは複数のバルブ48で制御されて、導管群42及び/又は開口44へのガス供給を制御してもよい。バルブ48はプロセス制御システム106によって制御されて、開口42、44に供給されるガス圧力を変化させてもよい。
【0035】
あるいは、開口42、44へ供給されるガスは、1つまたは複数のバルブで制御された供給ラインを有するボンベガスなどの供給源からのものであってもよい。
【0036】
1つまたは複数の開口42、44は、炉の内部へ突き出た、好適な高圧または高速ノズルで形成されてもよい。
【0037】
さらなる変更として、炉壁にある貫通孔44のそれぞれは、ガスを開口44に供給するためのガス供給パイプなどの個別の分離された通路手段に接続されていてもよい。分離された通路手段は、前述したように、個別の制御された高圧ガス源から供給された群を形成していてもよい。さらに、開口42、44に供給されるガスの圧力は、1つまたは複数のバルブなどの好適な圧力制御手段によって制御されて、貫通孔を出るガスの圧力を変化させることができるようにしてもよい。ここのパイプ中のガス圧力は相互に、あるいはグループで独立して変化させてもよい。
【0038】
複数のセンサ48を炉の入り口付近にも備えて、入口のそばでガス中の酸素含有量をモニタしてもよい。これらのセンサはプロセス制御システムに信号を与え、それによって開口42またはノズル44を出るガスの圧力を個別にまたは選択された群で制御して、炉に入ろうとする空気に対するより強力なあるいはより弱いバリアを提供することができる。
【0039】
熱酸化器31はスチール製の垂直な円筒形構造で、耐火物5で内張りされて、一般的には2400°Fの高温に耐えられるようになっている。炉1からの高温ガスは揮発性有機化合物(VOC)を含んでおり、熱酸化器の容積は、VOCで充満されたガスを酸化器内に最低でも2秒の滞留時間だけは保持することができるように設計されている。熱酸化器は、一次燃料(天然ガスやディーゼル油など)と炉1からのVOCの両方の燃焼が可能な複数燃料バーナによって加熱される。VOCガス用のダクト2はバーナ6へ直接接続され、バーナへの代替燃料または追加燃料としてVOCが直接供給される。
【0040】
熱酸化器31内のガスは2つの出口経路がある。一つの出口経路はリターンダクト3を通るもので、回転炉1の加熱または追加加熱を行う。もう一つの出口経路は、出口ダクト7の形態のさらなる通路手段を通って、バグハウス9へ向かう。
【0041】
ガス調整ユニット4はリターンダクト3の中に接続されて、ガスが炉に到達する前にガス調整を行うように用いられる。調整ユニット4は間接冷却によりガス温度を調節し、ガスからの微粒子と酸の両方を除去する。第2のガス調整ユニットが出口ダクト7にも備えられ、間接冷却によりガス温度を調節し、第1の相のガスからの微粒子と酸の両方を除去する。出口ガスはガス調整ユニット8からバグハウス9を通り、その次にIDファン26を通過する。IDファンはダクト7とバグハウス9を通過するガスの移動を支援する。そのあと、ガスは煙突10を経由して外部環境へ排出される。
【0042】
ダクト3を通って回転炉1へ向かうリターンガスは回転炉に入る前に、サンプリング手段20によってサンプル採取が行われる。一方、炉からの排出ガスは出口ダクト2にある第2のサンプリング手段21によってサンプル採取される。この2つのサンプリング手段は、温度、酸素含有量、一酸化炭素含有量などのガスの種々のパラメータを表す信号を生成するサンプリングシステムである。これらの信号はガス分析器19に入力される。ガス分析器19は信号を解析し、その結果をプロセス制御システム106に送信する。
【0043】
回転炉15の内部にはいくつかのセンサ108が設置され、炉の運転中に連続的なデータの流れをプロセス制御システム106へ送信する。これらのセンサは便利な熱電対であって、雰囲気温度、圧力、炉内の酸素含有量とCO含有量などのパラメータを測定し、そのパラメータを表す信号を生成する。このデータは連続的に記録され、信号はプロセス制御システム106へ送信される。プロセス制御システム106は炉の回転速度やノズル18から注入されるガス速度を表すデータも受信する。プロセス制御システムは処理する材料の種類に応じてプログラムすることもできて、リターンガス温度、酸素レベル、リターンガス速度や回転炉の回転速度を含む種々の運転パラメータをプログラム値及び/又は受信した信号に応じて、調整する。剥離の終了時間を制御するために、回転炉に入るリターンガスと回転炉から出るガスの双方をガス分析器19によって閉回路でモニタする。そして酸素レベルとCOレベルの双方が記録される。さらには、制御システム106はバーナ6も制御して、酸化器31内の温度を制御することもできる。
【0044】
プロセス制御システムは、受信した信号に基づいて、プロセスサイクル、つまり剥離サイクルの終点を制御する。
【0045】
回転傾斜型の剥離炉は、金属スクラップ及び/又は有機物を炉内に装入するための装入機械24を利用する。この操作中は、炉1の回転を停止して扉11を開放して炉を後ろ側に傾斜させ、スクラップが投入されて炉の遠位端の後壁27へ向かって押し込まれるようにする。同様の手順が排出操作時にも行われる。ただし炉を前方へ傾斜させて剥離が終わったスクラップを装入ビンまたは分離した収集システムの中へ空ける。便利なことには、装入機械はプラットフォーム32を備え、その上に材料が積載される。プラットフォームを好ましくは炉に向かって下方向に傾斜させ、前進させて炉の中に一部を突き出させる。また加振器の形態の加振手段25も備えられ、プラットフォームを振動させて材料が炉の内部へ装入されるのを助ける。加振器は、機械的あるいは電気的に駆動することができる。プラットフォームは、平坦(平面)、部分円筒形、または概ね平坦なベースと上方向への曲線的な壁、などの任意の好適な形状であってよい。
【0046】
図1の実施形態では、酸素含有量が化学量論レベルよりも低い(より具体的には12重量%酸素より低い)リサイクルガスを利用して、傾斜型回転炉内で有機物を部分燃焼させる。ガス化された有機物は炉を離れて排気筒に入る。これは完全に密閉された回路となっていて排気筒ガス中への空気の混入はない。これらの有機物で充満されたガス(合成ガス)は、化学量論的バーナが天然ガスか液体燃料を使用して合成ガスを強熱する、独立した熱酸化器中で完全に灰化されるか、またはバーナによって部分酸化されて合成ガスのそのほかの部分が収集されてさらなる利用のために貯蔵されるか、のいずれかである。システムは有機物が完全にガス化され、金属スクラップが完全に清浄化されたタイミングを識別する。
【0047】
任意の実施形態のいかなる特徴も他の任意の実施形態に利用されてもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスと産業廃棄物と都市ごみと汚泥とを含む有機被覆廃棄物や有機物などの材料を処理するための装置であって、
本体部(15)と、炉に材料を導入可能な開位置と炉内部が外部環境から遮断される閉位置との間を移動可能な蓋を有する単一の材料入口(11)と、炉の前記入口と前記本体部との間の傾斜部(13)とを備える回転および傾斜可能な炉(1)と、
前記炉(1)をその長手方向の軸を中心に回転させる手段(25)と、
前記炉を傾斜させる手段(32、102)と、
前記入口(11)またはそれに隣接する位置にあって、前記蓋が開位置にある場合に酸素を含む外気ガスの侵入を防止するために前記開口部に隣接してガスバリアを形成するように前記炉の内側に向かってガスを指向させるための手段と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記材料を処理することにより放出されたガス中の、少なくとも部分的に酸化性の揮発性有機化合物(VOC)に対する酸化手段(6、31)と、
前記炉(1)からの前記ガスを前記酸化手段(6、31)に導くための通路手段(2)と、
をさらに備え、
前記通路手段(2)は、外気の進入を防ぐために前記炉および前記バーナに対して密閉されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記酸化手段(6、31)は複数のバーナを備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガス中の酸素と一酸化炭素のレベルをモニタし、それぞれのレベルを表す信号を提供するガス分析手段(19、21)を前記通路手段(2)内にさらに備える、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記炉および前記酸化手段(6、31)の温度を制御するための制御手段(106)をさらに備える、請求項2、3、または4に記載の装置。
【請求項6】
前記炉(1)は、前記炉に関する選択されたパラメータをモニタし、それを表す信号を生成するための複数のセンサを有し、
それに依存して前記制御手段(106)は、前記炉と前記酸化手段(6、31)の少なくとも1つの運転を制御可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記センサは、熱センサとガス分析器と圧力センサとを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記回転炉の温度を、金属スクラップの融点より低く、前記廃棄物または金属スクラップ中の有機物をガス化するのに十分な温度のレベルに温度制御することが可能である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記回転炉の温度を1400°Fより低いレベルに制御可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御手段(106)は、前記炉内の酸素レベルを2〜12重量%の間に制御することが可能な、請求項5〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御手段(106)は、前記酸化手段内の酸素レベルを2〜12重量%の間に制御することが可能な、請求項5〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記制御手段(106)は、前記酸化手段内の温度を2400°Fより低く制御することが可能な、請求項5〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記酸化手段(6、31)からのガスを、前記ガスから微粒子を分離するために分離器(9)へ導くための通路手段(7)をさらに備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記酸化手段(6、31)から前記分離器(9)へ排出されるガス温度を制御するための調節手段(8)をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記炉内の材料の加熱を支援するために前記酸化手段(6、31)からの高温ガスを前記炉(1)に導く通路手段(3)をさらに備える、請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
リターンガス中の酸素と一酸化炭素のレベルをモニタし、それぞれのレベルを表す信号を提供するガス分析手段(19、20)を前記通路手段(3)内にさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)へ排出されるリターンガスの温度を制御するための調節手段(4)をさらに備える、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記ガスは酸素欠乏ガスである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに円周状に広がる導管手段を備える、請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに360°まで円周状に広がる導管手段を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに240°まで円周状に広がる導管手段を備える、請求項1〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記指向手段は、前記ガスを前記指向手段へ供給するための通路手段を備える、請求項1〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記指向手段は、前記ガスが前記炉(1)に入る前に加熱するための加熱手段を備える、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記指向手段は前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)へ高温ガスを導くための通路手段を備える、請求項2に付随する請求項2〜23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記材料を前記炉(1)中へ装入するための装入手段(24)をさらに備える、請求項1〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記装入手段(24)は、前記炉内へ排出する前に前記材料を保持するためのプラットフォーム(32)を備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記プラットフォーム(32)は断面が部分円筒形である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プラットフォーム(32)は概ね平坦である、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記プラットフォーム(32)は基体と直立した側壁とを有する、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
材料の前記装入手段から前記炉(1)への排出を支援するために前記プラットフォーム(32)を振動させる手段をさらに備える、請求項26〜29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
バイオマスと産業廃棄物と都市ごみと汚泥とを含む有機被覆廃棄物や有機物などの材料を処理するための方法であって、
本体部(15)と、炉に材料を導入可能な開位置と炉内部が外部環境から遮断される閉位置との間を移動可能な蓋を有する単一の材料入口(11)と、炉の前記入口と前記本体部との間の傾斜部(13)とを備える回転および傾斜可能な炉(1)を提供し、
前記炉(1)をその長手方向の軸を中心に回転させ、
前記材料を前記炉に導入し、
前記入口(11)またはそれに隣接する位置において前記炉の内側に向かってガスを指向させて前記開口部に隣接してガスバリアを形成し、前記蓋が開位置にある場合に酸素を含む外気ガスの侵入を防止する、
ことを含む方法。
【請求項32】
有機材料を燃焼させて揮発性有機化合物(VOC)を含むガスを生成する温度に前記材料を加熱し、
前記炉内の酸素レベルをプロセス中は化学量論的な当量レベルより下に維持し、
前記炉から排気された前記ガスが前記熱酸化器に至るまでは外部空気を混入させない密閉回路になっている通路手段(2)を介して、前記ガスを酸化手段(31)へ送り前記揮発性有機化合物(VOC)を灰化させ、
前記炉と前記酸化手段(31)の内部の温度のそれぞれを効率的な運転のために選択されたレベルに維持する、
ことをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記酸化手段は熱酸化器である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記熱酸化器は複数のバーナを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記通路手段(2)中のガスの酸素と一酸化炭素のレベルをモニタし、それに依存して前記炉(1)の運転を制御することをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
前記通路手段(2)中のガスの酸素と一酸化炭素のレベルをモニタし、それに依存して前記酸化手段(31)の運転を制御することをさらに含む、請求項32〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記炉の選択されたパラメータをモニタし、それに依存して前記炉(1)と前記酸化手段(6、31)の少なくとも1つの運転を制御することをさらに含む、請求項32〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記パラメータは、温度、ガス中の酸素と一酸化炭素含有量、および圧力を含むセンサを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記回転炉の温度は、金属スクラップの融点より低く、前記廃棄物または金属スクラップ中の有機物をガス化するのに十分な温度のレベルに制御される、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記回転炉の温度は1400°Fより低いレベルに制御される、請求項32〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記炉内の酸素レベルは2〜12重量%の間に制御される、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記酸化手段内の酸素レベルは2〜12重量%の間に制御される、請求項32〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化手段内の温度は2400°F以下である、請求項32〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化手段(6、31)からのガスを、前記ガスから微粒子を分離するために分離器(9)へ導くことをさらに含む、請求項32〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記酸化手段(6、31)から前記分離器(9)へ排出されるガス温度を制御することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記酸化手段(6、31)からの高温ガスを前記炉(1)に導き、それによって前記炉内の材料の加熱を支援することをさらに含む、請求項32〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記炉(1)へのリターンガス中の酸素と一酸化炭素のレベルをモニタし、それに依存して前記炉と前記酸化手段(6、31)の少なくとも1つの運転を制御することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)へ排出されるリターンガスの温度を制御することをさらに含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記炉で生成されたガスは、前記酸化手段に至るまでの流れの中に酸素が混入しないように密閉された閉回路の中へ前記炉から排出される、請求項32〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ガスは酸素欠乏ガスである、請求項31〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに円周状に広がる導管手段を備える、請求項31〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに360°まで円周状に広がる導管手段を備える、請求項31〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記指向手段は前記炉の内壁の周りに少なくとも240°まで円周状に広がる導管手段を備える、請求項31〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記指向手段は、前記ガスを前記指向手段へ供給するための通路手段を備える、請求項31〜453のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記指向手段は、前記ガスが前記炉(1)に入る前に加熱するための加熱手段を備える、請求項31〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記指向手段は前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)へ高温ガスを導くための通路手段を備える、請求項2に付随する請求項32〜55のいずれか1項に記載の装置。
【請求項57】
前記材料を前記炉(1)内へ装入するための装入手段(24)をさらに備える、請求項31〜56のいずれか1項に記載の装置。
【請求項58】
前記装入手段(24)は、前記炉内へ排出する前に前記材料を保持するためのプラットフォーム(32)を備える、請求項25〜57のいずれか1項に記載の装置。
【請求項59】
前記プラットフォーム(32)は断面が部分円筒形である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記プラットフォーム(32)は概ね平坦である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記プラットフォーム(32)は基体と直立した側壁とを有する、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
材料の前記装入手段から前記炉(1)への排出を支援するために前記プラットフォーム(32)を振動させる手段をさらに備える、請求項58〜61のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533044(P2012−533044A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519081(P2012−519081)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002263
【国際公開番号】WO2011/004268
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512007269)
【Fターム(参考)】