説明

ガス処理装置

【課題】エネルギーコストを削減することができるガス処理装置とする。
【解決手段】ガスG1中の被処理物質を吸着剤Cに吸着させる吸着系と、吸着剤Cから被処理物質を脱着させる脱着系とを有するガス処理装置であって、吸着系として、ガスG1が流されるガス路X1と、このガス路X1に吸着剤Cを粉体の状態で供給する吸着剤供給手段と、吸着剤Cが供給されたガスG1が通される第1のフィルター14Aとを備え、脱着系として、加熱ガスG3が流される加熱路X2と、この加熱路X2に第1のフィルター14Aで捕捉された捕捉吸着剤C2を供給する捕捉吸着剤供給手段15と、捕捉吸着剤C2が供給された加熱ガスG3が通される第2のフィルター21Aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理装置に関するものである。より詳しくは、ガス中の被処理物質を吸着剤に吸着させて、被処理物質が除去されたガスを得る吸着系と、被処理物質を吸着した吸着剤から被処理物質を脱着させて、吸着剤を再生する脱着系と、を有するガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガス処理装置は、例えば、化学工場、製薬工場、印刷工場、塗装現場などから排出されるガス中の揮発性有機物質(VOC)、塩化水素、二酸化炭素等の除去や、下水処理施設、ゴミ処理施設、畜産施設、食品ゴミリサイクル施設などにおける脱臭、オフィス、一般家庭などにおける空気の除湿などを目的として使用される。
【0003】
現在、この種のガス処理装置としては、ハニカムローター方式の装置(例えば、特許文献1参照。)や、エンドレスベルト方式の装置、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式の装置(例えば、特許文献2参照。)などが存在する。
【0004】
具体的には、例えば、ハニカムローター方式の装置の場合は、ハニカムローターの吸着ゾーンに、揮発性有機物質や悪臭原因物質、水分等の被処理物質を含むガスを通し、当該ハニカムローターに保持されている吸着剤に被処理物質を吸着させて、ガス中の被処理物質を除去する。また、当該ハニカムローターは回転し、吸着ゾーンは当該ローターの回転によって脱着ゾーンへ移動するため、この脱着ゾーンに加熱空気等を通して、吸着剤に吸着されている被処理物質を脱着する。この一連の処理は、ローターが回転し続けることによって、連続的に行われる。なお、ハニカムローター自体は、例えば、セラミック紙等の不燃紙や金属がコルゲート加工されて出来ており、活性炭やシリカゲル、ゼオライト等の吸着剤がバインダーでコーティング等されることによって保持されている。また、一般に「脱着」とは、「とりつけたり、はずしたりすること。」を意味するとされるが、この種のガス処理装置やガス処理方法において「脱着」とは、吸着剤から被処理物質を取り除くことや、取り外すこと等のみを意味し、吸着剤に被処理物質を取り付けることは含まない。
【0005】
一方、例えば、PSA方式の装置の場合は、吸着剤槽に被処理物質を含むガスを通し、当該吸着剤槽に充填されている粒状又はペレット状の吸着剤に被処理物質を吸着させて、ガス中の被処理物質を除去する。続いて、当該吸着剤槽に加熱ガス等を通して、吸着剤に吸着されている被処理物質を脱着する。通常、この一連の処理は、2つ以上の吸着剤槽を用いて、吸着及び脱着を行う槽を相互に切り換えて行う。例えば、一の吸着剤槽で吸着を行っている間に他の吸着剤槽で脱着を行い、一の吸着剤槽で脱着を行っている間に他の吸着剤槽で吸着を行う。このように吸着及び脱着を切り換えて行うことによって、被処理物質を含むガスが連続的に処理される。
【0006】
これら従来のガス処理装置によると、被処理物質が濃縮されたガスを得ることができ、被処理物質を含むガスを処理するためのエネルギーコスト等を削減することができる。なお、被処理物質を濃縮した後のガスは、例えば、燃焼処分する場合や、ガス中の被処理物質を凝縮する等して回収し、この回収した被処理物質を再利用する場合などがある。
【0007】
しかしながら、(1)これら従来のガス処理装置においては、吸着剤がハニカムローターやエンドレスベルト等に保持され、あるいは吸着剤槽に充填され、この保持・充填された吸着剤間をガスが通り抜ける構成とされているため、目詰りが避けられず、ガス処理性能が低下するとの問題や、メンテナンスが頻繁に必要になるとの問題が生じる。また、(2)これら従来のガス処理装置においては、被処理物質の脱着時(吸着剤の再生時)に大量の熱エネルギーが必要になるとの問題が生じる。さらに、(3)PSA方式の装置の場合においては、吸着剤槽におけるガスの通気抵抗が大きいため、ガスが大風量の場合は、吸着剤槽を大型化する必要が生じる。また、ハニカムローター方式の装置の場合においては、吸着剤の単位面積当たりの保持量が少ないため、ガスが大風量の場合は、ローター径を大きくする必要が生じる。つまり、いずれの装置においても、装置全体が大型化するとの問題が生じる。この点、(4)ハニカムローター方式の装置の場合においては、ローターの回転を速め、吸着(冷却)及び脱着(加熱)のサイクルを短くすることで、装置全体を大型化せずに処理風量を増やすこともできる。しかしながら、吸着及び脱着のサイクルを短くすることは、冷却及び加熱のサイクルを短くすることでもあるため、著しくエネルギーコストが増加する。そもそも(5)ガスの風速が、ハニカムローター方式の装置の場合においては約2m/s以下に、PSA方式の装置の場合においては約0.5m/s以下に制限されるため、大風量には不向きである。また、(6)ガス中の揮発性有機物質が高濃度の場合、従来のガス処理装置において吸着剤として活性炭を使用すると、吸着熱によって自然発火するおそれがある。このため、従来のガス処理装置においては、通常、吸着剤として発火のおそれがないゼオライトやシリカゲル等を使用しているが、これらの吸着剤は、活性炭に比べて、吸着能力が劣る。さらに、(7)従来のガス処理装置においては、粉体状の吸着剤をバインダー等によって固めて使用するが、例えば、ペレット状の吸着剤は粉体状の吸着剤に比べて単位重量当りの単価が数倍以上と高価であり、ランニングコストが嵩む原因となる。また、(8)粉体状の吸着剤をバインダー等によって固めた吸着剤は、粒体表面やペレット表面でのみ吸着が行われ、あるいは粉体表面の細孔がバインダーで覆われているため、被処理物質との接触効率が悪い。したがって、吸着剤の充填量を多くし、あるいは通気時間を長くする必要が生じる。しかも、(9)粒状・ペレット状の吸着剤は、水蒸気、ダスト、共存ガス等によってマスキングされてしまうため、粉体状の吸着剤の場合と比べて、吸着性能(容量)が1/3〜1/5にまで低下する。したがって、劣化が早く、ランニングコストが嵩む原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009‐66578号公報
【特許文献2】特開2002‐11328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする主たる課題は、エネルギーコストを削減することができるガス処理装置を提供することにある。好ましくは、装置全体を大型化することなく処理風量を増やすことができるガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
ガス中の被処理物質を吸着剤に吸着させる吸着系と、前記吸着剤から前記被処理物質を脱着させる脱着系と、を有するガス処理装置であって、
前記吸着系は、前記ガスが流されるガス路と、このガス路に前記吸着剤を粉体の状態で供給する吸着剤供給手段と、前記吸着剤が供給されたガスが通される第1のフィルターと、を有し、
前記脱着系は、加熱ガスが流される加熱路と、この加熱路に前記第1のフィルターで捕捉された捕捉吸着剤を供給する捕捉吸着剤供給手段と、前記捕捉吸着剤が供給された加熱ガスが通される第2のフィルターと、を有する、
ことを特徴とする、ガス処理装置。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
前記ガス路に、前記吸着剤が供給されたガスを攪拌する攪拌手段が設けられている、
請求項1記載のガス処理装置。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記加熱路の一端が前記第2のフィルターの下流側に接続され、他端が当該第2のフィルターの上流側に接続されて、前記加熱ガスが循環する構成とされている、
請求項1又は請求項2記載のガス処理装置。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記第2のフィルターが容器体内に収められ、
前記第2のフィルターを通されて前記吸着剤が除かれた後の回収ガスが、当該回収ガス中の被処理物質も除かれた後、前記容器体の前記吸着剤が留まる側に吹き込まれる構成とされている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス処理装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、エネルギーコストを削減することができるガス処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態のガス処理装置の設備フロー図である。
【図2】他の形態のガス処理装置の設備フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
〔被処理物質等〕
本形態のガス処理装置は、ガス中の被処理物質を吸着剤に吸着させて、被処理物質が除去されたガスを得る吸着系(吸着機構)と、被処理物質を吸着した吸着剤から被処理物質を脱着させて、吸着剤を再利用可能な状態にする脱着系(脱着(再生)機構)と、から主になる。
【0017】
本形態のガス処理装置においては、処理の対象となる被処理物質の種類が、特に限定されない。処理の対象となる被処理物質としては、例えば、化学工場、製薬工場、印刷工場、塗装現場などから排出される排ガス中の揮発性有機物質(VOC)、塩化水素、二酸化炭素等や、下水処理施設、ゴミ処理施設、畜産施設、食品ゴミリサイクル施設などの空気(雰囲気)中に含まれるアンモニア等の悪臭原因物質、オフィス、一般家庭などの空気(雰囲気)中に含まれる水分などを、例示することができる。
【0018】
また、本形態のガス処理装置において使用することができる吸着剤は、被処理物質を吸着する性質を有するものであれば足り、その種類は特に限定されない。吸着剤としては、例えば、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、ナノカーボン、SPG(シラス多孔質ガラス)、クレー(多孔質粘土)等を使用することができる。ただし、吸着性能の観点からは、活性炭を使用するのが好ましい。後述するように本形態のガス処理装置は、被処理物質が揮発性有機物質であり、たとえ高濃度であったとしても、当該活性炭の使用を可能とする装置構成となっている。また、特に除湿を目的とする場合は、直径3〜4Åの細孔を有する多孔質吸着剤を使用するのが好ましい。
【0019】
〔ガス処理装置〕
(概要)
図1に示すように、本形態のガス処理装置は、吸着系(吸着機構)として、被処理物質を含むガス(以下、単に「被処理ガス」ともいう。)G1が流されるガス路X1と、このガス路X1に吸着剤Cを粉体の状態で供給する吸着剤供給手段(この吸着剤供給手段の詳細は、後述する。)と、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が通される第1のフィルター14Aと、を主に有する。また、本形態のガス処理装置は、脱着系(脱着機構)として、加熱ガスG3が流される加熱路X2と、この加熱路X2に第1のフィルター14Aで捕捉された捕捉吸着剤C2を供給する捕捉吸着剤供給手段15と、捕捉吸着剤C2が供給された加熱ガスG3が通される第2のフィルター21A,22Aと、を主に有する。さらに、本形態のガス処理装置は、より好ましい形態として、ガス路X1の途中に、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1を攪拌する攪拌手段13が設けられている。
以下では、本形態のガス処理装置について、より詳細に説明する。
【0020】
(前処理)
本形態のガス処理装置においては、被処理ガスG1が、まず、ガス冷却器11に通されて冷却される(冷却処理)。このガス冷却器11には、冷水等からなる冷媒R1も通され、この冷媒R1と被処理ガスG1との間で熱交換される。この熱交換に伴って温度上昇した冷媒R2は、クーリングタワー12にて冷却され、冷媒R1として、ガス冷却器11を再度通される。この冷媒R1(R2)の循環は、冷媒循環ポンプP1によって行われる。また、本形態のガス冷却器11には、フィルター11Aが備えられており、このフィルター11Aによって、冷却前の被処理ガスG1に含まれる、例えば、比較的大きな塵埃等が除去される(除塵処理)。
【0021】
本形態において、以上の冷却処理や除塵処理は、必須の処理ではない。例えば、被処理ガスG1の温度が60℃以下と低い場合等においては、冷却処理を省略することもできる。ただし、攪拌手段13が設けられている本形態のガス処理装置においては、塵埃等によって攪拌手段13に備わる回転羽根13Xが損傷するのを防止するために、フィルター11A等による除塵処理は行う方が好ましい。また、被処理ガスG1中の被処理物質を回収し、再利用する場合などにおいては、回収した被処理物質中に水分が混ざってしまうのを防止するために、被処理ガスG1の温度が低い場合においても、ガス冷却器11にて被処理ガスG1を更に冷却し、被処理ガスG1中の水分を凝縮させて、取り除いておくのが好ましい。
【0022】
(吸着系)
ガス冷却器11にて冷却された被処理ガスG1は、管路、ダクト等からなるガス路X1内を流される。また、このガス路X1内には、吸着剤供給手段によって吸着剤Cが粉体の状態で供給され、粉体の状態で使用される。したがって、被処理ガスG1がガス路X1内を流れている間に、被処理ガスG1中の被処理物質が吸着剤Cに吸着される。
【0023】
この点、従来のハニカムローター方式の装置やPSA方式の装置の場合においては、前述したとおり、吸着剤槽やハニカムローター等における目詰まりの問題が生じたが、本形態のように、ガス路X1内を流れる被処理ガスG1中に吸着剤Cを供給する方式によると、目詰まりの問題が生じない。また、被処理ガスG1を、吸着剤槽やハニカムローター等に通過させる必要がないため、圧力損失が少なく、ファン等の動力を小さくすることができる。しかも、活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の吸着剤Cは、粉体であると比表面積が広いため、被処理物質を含む被処理ガスG1との接触効率がよいとの特性や、細孔が露出しているため吸着速度が速く、また吸着ロスが少ないとの特性を有する。したがって、本形態のガス処理装置によると、装置を大型化せずとも、処理風量を増やすことができ、また、被処理物質の濃度変化には、吸着剤Cの供給量を変化させるのみで対応することができる。さらに、吸着剤Cが粉体状であると、吸着熱の熱放散性が高いため、吸着熱による自然発火のリスクが少なく、揮発性有機物質を被処理物質とする場合においても、活性炭を使用することができる。加えて、ガス路X1内を流れる被処理ガスG1中に粉体状の吸着剤Cを供給する方式によると、複数の吸着剤を適宜選択し、ブレンドして供給することで、複数種の揮発性有機物質等の回収、脱臭、除湿などを同時に行うことができる。
【0024】
この点、吸着剤槽に充填される吸着剤は、一般的に、粒状(例えば、直径3〜8mm程度。)又はペレット状(例えば、直径4〜6mm程度。)とされている。粉体状とされていないのは、充填等をする際のハンドリング性や、通気抵抗(粉体状の吸着剤を充填させると通気抵抗が著しく大きくなる。)、吸着剤のダスト化、吸着剤の再生などを考慮してのことである。しかしながら、粉体状の吸着剤は、比表面積が広く、また、細孔が表面に露出するため、吸着性能(吸着容量の多さや吸着速度の速さ、更には吸着ロスの少なさなど。)が極めて優れる。また、粉体状の吸着剤は、粒状又はペレット状にする前のものであるため、加工コストが削減され、処理コストを下げることができる。したがって、本形態のように粉体状の吸着剤を使用する方が好ましい。
【0025】
なお、ハニカムローター方式の装置においては、粒状又は粉体状の吸着剤がバインダーによってローターに接着されており、当該バインダーによって吸着剤表面の細孔がふさがれているため、吸着性能が劣る。また、当該バインダーによる接着によって吸着剤は流動性を失っており、もはや粉体状での使用とはいえないため、本形態のガス処理装置における粉体状での使用とは明確に区別される。
【0026】
さらに、粉体状の吸着剤は、比表面積が粒子径の2乗に反比例する。例えば、粒子径4mmの活性炭と比べて、粒子径40μmの活性炭は比表面積が10000倍にもなる。したがって、粉体状の吸着剤は、粒子径が小さいものが好ましく、本形態では、例えば、粒子径が5〜100μmの吸着剤を使用する。特に吸着剤の粒子径が40μm以下と小さいと、比表面積がより広くなるほか、被処理ガスG1中での拡散性・分散性に優れ、吸着性能がより向上する。
【0027】
なお、粉体状の吸着剤に類似する形態の吸着剤としては、繊維状の吸着剤(例えば、繊維径30〜70μm程度。)が存在し、この繊維状の吸着剤をフェルト化した吸着手段が存在する。しかしながら、繊維状の吸着剤は、吸着容量の点において粉体状の吸着剤に劣り、また、再生に難点がある。しかも、フェルト化すると目詰まりの問題が生じるため、粉体状の吸着剤を使用する方が好ましい。
【0028】
ところで、吸着剤を粉体の状態で利用する方法としては、バグフィルター等の表面に吸着剤が付着してなる付着層を形成し、この吸着剤の付着層に被処理物質を吸着させてガス処理を図る方法も考えられる。この方法においては、吸着剤の付着層が薄いと吸着効率が悪くなるため、吸着剤の付着層を厚くする必要があり、一般的には約1mm以上の厚さが必要とされている。しかしながら、吸着剤の付着層厚を厚くすると、通気抵抗が大きくなるため、ブロワ等による吸引圧力を大きくするか、単位面積当たりの通気量が少なくなるよう、例えば、フィルター面積を通常より150〜200%大きくする必要がある。したがって、ハニカムローター方式の装置やPSA方式の装置の場合と同様、装置や動力の大型化等の問題が生じる。
【0029】
また、バグフィルター等の表面に付着した吸着剤は、被処理物質を吸着してすぐに劣化してしまうため、当該付着吸着剤を新たな吸着剤に置き換える必要がある。この吸着剤の置換えは、例えば、パルスジェットなどによる逆洗クリーニングを行って劣化した吸着剤を払い落し、新たな吸着剤を付着させる方法によるのが一般的である。しかしながら、新たな吸着剤が所定の付着層厚となるまでの間は吸着性能が不十分になるため、総合的な吸着効率も低下してしまい、装置のガス処理性能等を保証することができなくなる。
【0030】
さらに、吸着剤の付着層厚を厚くするといっても、付着した吸着剤が重力等によって自己剥離してしまうため、約2〜3mmが限界である。そして、この付着層厚の限界が吸着容量の上限でもあり、被処理物質の濃度が急上昇した場合などに大きな問題が生じる。例えば、燃焼排ガス中の塩化水素ガスの濃度は、数百ppmから2000ppmを超える高濃度に急上昇する場合があることが知られているが、この場合は、吸着容量の限界を超えてしまうため、バグフィルター通過前の塩化水素ガス濃度の上昇に比例して、バグフィルター通過後の塩化水素ガス濃度も上昇してしまう。しかも、この場合は、短時間の間に吸着剤が劣化してしまうため、逆洗クリーニングが間に合わず、高濃度の塩化水素ガスが流出し、場合によっては環境濃度の許容値をオーバーするおそれがある。以上のことから、吸着剤を粉体の状態で利用する場合においては、バグフィルター表面に付着させた吸着剤によってガス処理を図るよりも、本形態のように、ガス路X1内を流れる吸着剤Cによってガス処理を図る方が好ましい。
【0031】
以上のように、本形態のガス処理装置においては、吸着剤供給手段によってガス路X1内に吸着剤Cが供給される。この吸着剤供給手段によって供給される吸着剤Cは、新たな吸着剤であっても、再生された(被処理物質が脱着された)吸着剤Cであっても、これら両方の吸着剤であってもよい。本形態のガス処理装置においては、再生された吸着剤Cを供給する吸着剤供給手段(機構)が備えられており、これを図示している。この吸着剤供給手段については、吸着剤Cの再生を説明した後に説明する。
【0032】
本形態のガス処理装置において、吸着剤供給手段によって吸着剤Cをガス路X1内に供給するにあたっては、例えば、濃度計等によって、ガス路X1内を流れる被処理ガスG1中の被処理物質の濃度を測定するのが好ましい。この測定値(被処理物質の濃度)に基づいて、吸着剤Cの供給量を調節することにより、被処理物質の濃度が変化しても、完全なガス処理(吸着処理)を行うことができる。
【0033】
ところで、本形態のガス処理装置においては、ガス路X1の途中に攪拌手段13が設けられており、この攪拌手段13によって吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が攪拌される。この攪拌によって、被処理物質の吸着剤Cに対する吸着効率が高まり、被処理ガスG1のガス処理効率が向上する。このように被処理物質の吸着剤Cに対する吸着効率が高まるのは、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1の攪拌によって、吸着剤Cの表面を覆う境界層が剥離されるためである。
【0034】
すなわち、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が単に流れている状態、つまり、吸着剤Cと被処理ガスG1(被処理物質)とが随伴移動している状態においては、吸着剤Cの周りに位置する被処理ガスG1が分子間引力によって当該吸着剤Cに引き寄せられ、当該吸着剤Cの周りを覆うように境界層を形成する。そして、この境界層によって他の被処理ガスG1中の被処理物質が吸着剤Cと接触し難くなるため(接触阻害)、例えば、風速条件やダクト長等を変化させても、吸着効率が大きくは向上しないことになる。これに対し、攪拌装置13を有する本形態においては、吸着剤Cの攪拌によって、吸着剤Cと被処理ガスG1との相対速度差が高まるため、剪(せん)断応力等によって、境界層が剥離され、吸着効率が著しく向上する。また、この吸着効率の向上により、被処理物質と吸着剤Cとの吸着は、ほとんどが攪拌手段13及びガス路X1、すなわち第1のフィルター14Aへの移動過程で行われることになり、第1のフィルター14Aの表面における吸着は、付加的又は補助的なものとなる。この結果、第1のフィルター14Aの処理負荷を期待する必要がなくなり、例えば、第1のフィルター14Aを小型化すること、第1のフィルター14Aの腐食対策を軽減すること、第1のフィルター14Aの目詰まりによる圧力損失を軽減することなどができる。
【0035】
また、本形態のガス処理装置によると、吸着容量が第1のフィルター14Aでの吸着に依存しなくなるため、被処理物質の濃度が急上昇した場合においても、例えば、被処理物質の検出濃度に応じて吸着剤Cの供給量を調節することなどによって、被処理物質の流出(第1のフィルター14Aを通り抜けること)を防止することができ、総合的な処理効率の低下を防止することができる。
【0036】
さらに、境界層の剥離によって吸着剤Cの吸着能力が限界まで利用されるようになるため、吸着剤Cが短時間で使用不能になるということがなく、吸着剤Cの再生や交換等に伴うランニングコストを大幅に削減することができる。しかも、被処理物質と吸着剤Cとの吸着は、ほとんどが攪拌手段13で行われ、第1のフィルター14Aでの吸着は、付加的又は補助的なものとなり、また、攪拌手段13は、揮発性有機物質の除去や、脱臭、除湿等の処理いずれにも共通して使用することができるため、これらの各種処理を複合的に行うことができる。加えて、吸着剤Cを粉体の状態で利用し、粒状化又はペレット化するものではないため、潮解作用によるトラブルが生じない。このほか、攪拌手段13が第1のフィルター14Aの前段に設けられており、第1のフィルター14Aに対して攪拌手段13が押込みファンの機能を発揮するため、第1のフィルター14Aに被処理ガスG1を通すための通気手段を小型化することができる。
【0037】
本形態のガス処理装置において用いることができる攪拌手段13の具体的な形態は、特に限定されず、例えば、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が、単に回転羽根によって攪拌される形態を採用することもできる。ない。ただし、図示例の攪拌手段13を推奨する。
すなわち、この攪拌手段13は、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が供給される、例えば円筒状の筒体13Aと、この筒体13A内に配置された筒体13Aの軸方向を軸として回転する1枚又は複数枚の回転羽根13Xと、この回転羽根13Xを回転駆動するモーター13Mとを有し、筒体13Aの一端開口が、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1の供給口とされ、筒体13Aの他端開口が、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1の排気口とされている。つまり、筒体13Aは、ガス路X1の延びる方向を軸とする。
【0038】
この攪拌手段13においては、前記供給口から筒体13A内に供給された、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が、回転羽根13Xによって攪拌され、そのままガス排出口から排出される。このように本形態の攪拌手段13においては、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1が滞留せず、単に筒体13A内を通り抜ける構成とされているため、ガス処理装置全体を小型化することができる(例えば、筒体13Aの直径は、40〜120cmとすることができる。)。また、吸着剤Cが供給された被処理ガスG1を滞留させないとすると、攪拌時間は短くなるが、本形態のような攪拌手段13を直列的に連接することによって、攪拌時間を長くすることができる。
【0039】
もっとも、攪拌手段13の連接数を変えるのみであると、必要になる攪拌時間によっては、攪拌手段13の連接数が多くなり過ぎる可能性がある。そこで、筒体13Aの両端部(供給口側端部及び排出口側端部)や中央部等の適宜の位置に、好ましくは図示例のように回転羽根13Xと隣接するように固定羽根13Yを設けるとよい。この形態によると、固定羽根13Yとの関係で回転羽根13Xの相対速度が増し、吸着剤Cが有する境界層の剥離性能が向上する。結果、吸着剤Cと被処理物質との吸着効率が向上する。
【0040】
このようにしてなる攪拌手段13の排出口から排出された吸着剤Cが供給された被処理ガスG1は、ガス路X1を通して第1のフィルター14Aが備わる第1のバグフィルター装置14に空気圧送される。この第1のバグフィルター装置14の形態は、特に限定されない。図示例の第1のバグフィルター装置14は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた容器体14Bと、この容器体14B内に配置された適宜の数の、図示例では2つの第1のフィルター14Aと、各フィルター14Aの上方に配置されたパルスジェット14Cと、を主に有する。
【0041】
本形態のガス処理装置において、被処理ガスG1中の吸着剤Cは、容器体14B内に供給された後、例えば、円筒状とされた第1のフィルター14Aの外周面に付着する等して、更に吸着が進む。もっとも、この吸着は、付加的又は補助的なものに過ぎず、第1のフィルター14Aの外周面に吸着剤Cを積極的に付着させる必要はなく、また、この付着層を厚いものとする必要もない。したがって、第1のフィルター14Aの通気抵抗が大きなものとはらならず、ブロワ等による吸引圧力を大きくする必要や、第1のフィルター14Aの面積を通常より大きくする必要がない。また、第1のフィルター14Aにおける吸着は、付加的又は補助的なものに過ぎず、吸着剤Cの付着層を厚く形成して吸着するものではないため、新たな吸着剤Cが所定の付着層厚となるまでの吸着効率の低下等は問題とならない。
【0042】
第1のバグフィルター装置14において、被処理物質を吸着した吸着剤Cは、重力等によって容器体14Bの底部に落下し、捕捉吸着剤C2として一時貯留される。また、第1のフィルター14Aに付着した吸着剤Cは、パルスジェット14Cから適宜の間隔をおいてエアーを噴出し、円筒状とされた第1のフィルター14Aの中心側から外方に向かってエアーを吹き出すことにより、払い落すことができる。ただし、被処理物質を吸着した吸着剤Cは、密度が、例えば、20〜30%大きくなっており、落下し易い状態にあり、ほとんどが自然落下する。第1のフィルター14Aによって被処理物質を吸着した吸着剤C(捕捉吸着剤C2)が取り除かれた(捕捉された)後の清浄ガスG2は、例えば、大気中に放風することができる。
【0043】
(脱着(再生)系及び回収系)
次に、脱着系及び本形態において特に備わる回収系について説明する。
本形態のガス処理装置においては、脱着系として、加熱ガスG3が流される加熱路X2と、相互に切り換えて使用される適宜の数の、図示例では2つの第2のバグフィルター装置21,22と、を主に有する。この2つの第2のバグフィルター装置21,22は、その形態が特に限定されるものではなく、例えば、相互に異なる形態とすることもできる。ただし、図示例では、2つの第2のバグフィルター装置21,22が同様の形態とされている。具体的には、一方の第2のバグフィルター装置21は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた(一方の)容器体21Bと、この容器体21B内に配置された適宜の数の、図示例では1つの第2のフィルター21Aと、この第2のフィルター21Aの上方に配置されたパルスジェット21Cと、を主に有する。同様に、他方の第2のバグフィルター装置22は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた(他方の)容器体22Bと、この容器体22B内に配置された適宜の数の、図示例では1つの第2のフィルター22Aと、この第2のフィルター22Aの上方に配置されたパルスジェット22Cと、を主に有する。
【0044】
一方、加熱路X2は、一端が第2のフィルター21A,22Aの下流側、本形態では容器体21B,22Bの天端部に接続され、他端が第2のフィルター21A,22Aの上流側、本形態では容器体21B,22Bの円錐側部に接続されている。そして、加熱路X2内には、ガス発生装置17にて生成した窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、パラフィン系ガス等の不活性ガスが移送用ブロワ18を利用して送り込まれる。この加熱路X2内に送り込まれた不活性ガスは、加熱路X2の途中に設けられた電気ヒーター等の加熱手段16によって加熱され、加熱ガスG3として加熱路X2内を流される。
【0045】
この加熱路X2の他端側は分岐しており、この分岐路の一方は、途中に供給バルブB1が備えられ、かつ一方の容器体21Bの円錐側部に接続され、当該分岐路の他方は、途中に供給バルブB6が備えられ、かつ他方の容器体22Bの円錐側部に接続されている。他方、加熱路X2の一端側は、移送用ブロワ18を起点として分岐しており、この分岐路X3の一方は、途中に循環バルブB2が備えられ、かつ一方の容器体21Bの天端部に接続され、当該分岐路X3の他方は、途中に循環バルブB7が備えられ、かつ他方の容器体22Bの天端部に接続されている。したがって、例えば、ガス処理の開始当初等においては、供給バルブB1及び循環バルブB2が開かれ、かつ回収バルブB3、エアーバルブB4及び供給バルブB6が閉じられていることにより、加熱路X2内を流れる加熱ガスG3は、まず、一方の容器体21B内に供給される。この容器体21B内に供給された加熱ガスG3は、第2のフィルター21Aを通り抜け、分岐路X3を介して、加熱路X2に戻される。この加熱路X2に戻された加熱ガスG3は、加熱路X2内を流れるときに、加熱手段16によって再度加熱され、一方の容器体21Bに供給される。このように加熱ガスG3は、加熱路X2及び一方の第2のバグフィルター装置21を通して循環し、この循環過程において、加熱手段16によって加熱が繰り返されるため、循環回数を調節することなどによって、確実に所定の温度まで高温化することができる。ただし、加熱ガスG3があらかじめ所定の温度に達している場合や、加熱手段16によって一度加熱するのみで所定の温度に達する場合などは、この加熱ガスG3の循環処理や、加熱手段16による加熱自体を省略することもできる。
【0046】
本形態のガス処理装置においては、加熱ガスG3が所定の温度、例えば、80〜150℃に達したら、前述第1のバグフィルター装置14の容器体14Bの底部に一時貯留された捕捉吸着剤C2を、ロータリーバルブ等の捕捉吸着剤供給手段15によって、加熱ガスG3が流される加熱路X2内に切り出す(供給する)。もっとも、この捕捉吸着剤C2の供給は、加熱ガスG3が所定の温度に達するに先立って行うこともでき、捕捉吸着剤C2を供給した後であっても、最終的に加熱ガスG3が所定の温度に達し、被処理物質の脱着が十分に行われる構成とされていればよい。ただし、あまりに早く捕捉吸着剤C2の供給を行うと、一方の容器体21B内において、貯留等された捕捉吸着剤C2が加熱ガスG3によって加熱されることになり、熱移動効率が低下して、吸着剤Cを粉体の状態で供給した趣旨が減殺されるおそれがある。したがって、加熱ガスG3の加熱を十分に行ってから、捕捉吸着剤C2の供給を行う方が好ましい。
【0047】
供給された捕捉吸着剤C2は、加熱ガスG3によって加熱路X2内を流され、一方の容器体21B内に供給される。そして、この過程において、捕捉吸着剤C2は、加熱ガスG3の熱により加熱されて、吸着されている被処理物質が脱着される。特に、本形態においては、捕捉吸着剤C2が粉体状であるため、加熱ガスG3から捕捉吸着剤C2への熱移動効率がよく、また、粉体状の捕捉吸着剤C2が直接加熱されるため、エネルギーロスが少ない。したがって、吸着剤槽やハニカムローター等を加熱する従来のガス処理装置における場合と比べて、エネルギーコストを大幅に削減することができる。さらに、捕捉吸着剤C2が粉体状であると、細孔が露出しているため、脱着効率がよく、この点でもエネルギーコストを削減することができる。
【0048】
なお、現在、活性炭やシリカゲル、ゼオライト等の吸着剤は、断熱材としても重要視されている。この事実から、吸着剤を吸着剤槽に充填したり、ハニカムローターに保持させたりして使用した場合には、熱移動効率が極めて悪く、本形態のように、粉体状の吸着剤Cを直接加熱した場合とで大きな差異が生じることを理解することができる。また、吸着剤Cの加熱方式は、本形態のように加熱手段16によって循環する不活性ガス(加熱ガスG3)を加熱する方式のほか、例えば、加熱蒸気を使用する方式や、容器体21B,22Bを非電導体とし、高周波電流によって粉体状の吸着剤Cを直接加熱する方式とすることもできる。
【0049】
以上のようにして、一方の容器体21B内に供給された捕捉吸着剤C2は、加熱によって被処理物質が脱着され、被処理物質が脱着された(再生)吸着剤Cは、第2のフィルター21Aによって捕捉されて、一方の容器体21B内に留まる。他方、被処理物質を含む加熱ガスG3は、第2のフィルター21Aを通り抜ける。したがって、加熱路X2を利用して、前述したように加熱ガスG3を循環し続けることにより、加熱ガスG3中における被処理物質の濃度を高めることができる。
【0050】
さらに、本形態のガス処理装置においては、回収系として、被処理物質を回収するための回収路X4が備えられている。この回収路X4の基端部は、真空ポンプ25を起点に分岐しており、一方の分岐路は、途中に回収バルブB3が備えられ、かつ一方の容器体21Bの天端部に接続され、他方の分岐路は、途中に回収バルブB8が備えられ、かつ他方の容器体22Bの天端部に接続されている。そして、例えば、捕捉吸着剤C2が供給された加熱ガスG3を、加熱路X2を利用して循環させ、加熱ガスG3中の被処理物質が所定の濃度まで高まったら、供給バルブB1及び循環バルブB2を閉じ、回収バルブB3を開いて、真空ポンプ25を作動させる。これにより、被処理物質を含む加熱ガスG3は、回収ガスとして一方の容器体21B内から抜き出され(真空吸引され)、回収路X4内を流れる。
【0051】
この点、本形態のように、粉体状の吸着剤Cを加熱(昇温)後、真空ポンプ等により真空吸引して脱着する方式の装置によると、吸着剤Cの再生エネルギーは、前述したハニカムローター方式の装置による場合と比べて、1/20以下で足り、CO2やランニングコストを大幅に削減することができる(風量150m3/minの場合、ハニカムローター方式では約82kWであるのに対し、本方式では約4kW。)。また、本形態のガス処理装置においては、先行する吸着剤Cの加熱によって被処理物質が蒸発し易い状態になっているため、真空吸引は、高真空となるまで行う必要がなく、例えば、300〜500Paとなるように行えば、十分かつ迅速に被処理物質を脱着することができる。さらに、真空ポンプ25による真空吸引に伴って、粉体状の吸着剤Cが冷却されるため、再利用が容易である。
【0052】
この回収路X4の途中には、コンデンサ等を利用した冷却手段26、コンプレッサー27及びレシーバータンク28が、この順に設けられている。また、当該回収路X4の先端は、分岐しており、一方の分岐路には、途中にエアーバルブB4が備えられ、かつ一方の容器体21Bの円錐側部に接続され、他方の分岐路には、途中にエアーバルブB9が備えられ、かつ他方の容器体22Bの円錐側部に接続されている。
【0053】
以上の回収系においては、回収路X4内を流される回収ガス中の被処理物質が、冷却手段26によって凝縮され、この被処理物質の凝縮液(ドレン)は、冷却手段26を起点として回収路X4から分岐する分岐路X5を通して、ドレンタンク29に送られ、貯留される。このドレンタンク29内に貯留された被処理物質は、例えば、燃焼等して処分することもできるが、資源の有効利用という観点から、再利用に供すると好適である。
【0054】
ところで、加熱ガスG3中の被処理物質が脱着された(再生)吸着剤Cは、第2のフィルター21Aによって捕捉され、重力等によって一方の容器体21Bの底部に落下し、再生された吸着剤Cとして一時貯留される。また、円筒状とされた第2のフィルター21Aの外周面に付着した(再生)吸着剤Cは、パルスジェット21Cから適宜の間隔をおいてエアーを噴出し、第2のフィルター21Aの中心側から外方に向かって当該エアーを吹き出すことにより、払い落される。そして、このようにして一方の容器体21Bの底部に貯留された(再生)吸着剤Cは、当該貯留をされている間に、ブリッジ等を形成してしまい、後述する吸着剤タンク23へ円滑に移動することができなくなる可能性がある。そこで、本形態では、工夫を凝らしている。
【0055】
すなわち、前述したように回収ガスは、被処理物質が除去された後、窒素等の不活性ガスとなる。そこで、本形態では、この不活性ガス(回収ガス)を回収路X4の途中に備わるレシーバータンク28に一時貯留させる。そして、適宜の間隔をおいて、通常閉じられているエアーバルブB4を開き、コンプレッサー27を利用して、レシーバータンク28内の不活性ガスを一方の容器体21Bの吸着剤Cが留まる側、本形態では下側部に吹き込む。これにより、一方の容器体21B内に一時貯留された吸着剤Cのブリッヂ等が防止される。また、この形態によると、被処理物質が完全に除去されず、不活性ガス中に被処理物質が残存していたとしても、一方の容器体21B内に戻されるのみであるため、問題を生じない。
【0056】
本形態においては、一方の容器体21Bの下端部が投入バルブB5を介して吸着剤タンク23の天端部に接続されており、同様に、他方の容器体22Bの下端部が投入バルブB10を介して当該吸着剤タンク23の天端部に接続されている。したがって、一方の容器体21B内に一時貯留された吸着剤Cは、通常閉じられている投入バルブB5を開くことにより、重量等によって吸着剤タンク23内に投入される。
【0057】
以上のようにして、一方の第2のバグフィルター装置21を利用して、被処理物質の回収処理を行っている間に、他方の第2のバグフィルター装置22を利用して、脱着処理が行われる。
すなわち、他方の第2のバグフィルター装置22においては、供給バルブB6及び循環バルブB7が開かれ、かつ回収バルブB8が閉じられ、これにより、加熱路X2内を流れる加熱ガスG3が、他方の容器体22B内に供給される。この他方の容器体22B内に供給された加熱ガスG3は、第2のフィルター22Aを通り抜け、分岐路X3を通して、加熱路X2に送り込まれる。この加熱路X2に送り込まれた加熱ガスG3は、加熱路X2内を流れるときに、加熱手段16によって再度加熱され、他方の容器体22Bに供給される。このように加熱ガスG3は、加熱路X2及び他方の第2のバグフィルター装置22を通して循環するようになり、前述一方の第2のバグフィルター装置21の場合と同様に、加熱ガスの高温化処理や、捕捉吸着剤C2の脱着処理が行われる。以後、一方の第2のバグフィルター装置21及び他方の第2のバグフィルター装置22における加熱・脱着処理と回収処理とを交互に切り換え、繰り返すことによって、被処理ガスG1を連続的に処理することができる。
【0058】
そして、一方の容器体21Bや他方の容器体22Bから吸着剤タンク23内に投入された(再生)吸着剤Cは、前述ガス路X1内に供給され、被処理物質の吸着に再利用される。この再利用によって、新たに供給する吸着剤Cの量を減らし、あるいは不要とすることができる。また、吸着剤Cが劣化した場合、本形態のガス処理装置においては、例えば、吸着剤タンク23内の吸着剤Cを新たな吸着剤と入れ替えるのみ足り、従来の吸着剤槽やハニカムローターを用いる方式の装置の場合と比べて、吸着剤の入れ替えに伴うランニングコストを大幅に削減することができる。
【0059】
ここで、新たな吸着剤や再生された吸着剤Cをガス路X1に供給するための手段(吸着剤供給手段)は、どのような形態であるかが、特に限定されない。本形態のガス処理装置においては、再生された吸着剤Cをガス路Xに供給するための吸着剤供給手段が備えられている。この吸着剤供給手段は、吸着剤タンク23のほか、定量フィーダー32、切出し路X8、返送路X6、圧送ブロワ31及びエアー路X7から主になる。
【0060】
吸着剤タンク23は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされており、円錐状部の下端部に定量フィーダー32が取り付けられている。この定量フィーダー32によって吸着剤タンク23内の吸着剤Cが切出し路X5内に切り出され、この切出し路X5内に切り出された吸着剤Cが切出し路X5の先端部に接続された返送路X6内に供給される。この返送路X6内に供給された吸着剤Cは、この返送路X6内を流れる圧送ブロワ31からの空気等によってガス路X1に向けて空気圧送され、返送路X6の先端部からガス路X1内に供給される。また、特に本形態では、返送路X6の切出し路X5との接続部よりも上流側からエアー路X7が分岐しており、このエアー路X7の先端部が吸着剤タンク23の円錐側部に接続されている。したがって、圧送ブロワ31からの空気等がエアー路X7を通して吸着剤タンク23内に送り込まれ、これにより、吸着剤タンク23内に貯留された吸着剤Cのブリッヂ等が防止される(エアレーション効果)。
【0061】
(その他の形態)
以上では、被処理物質を回収し、再利用可能な状態にする形態を示したが、例えば、被処理物質が水分等であり、ガス処理の目的が除湿等である場合は、被処理物質の回収系を省略した以下の形態とすることもできる。
【0062】
図2に示すように、本形態のガス処理装置は、前述したガス処理装置と、吸着系は同じ構成とされているが、脱着系及び回収系は異なる構成とされている。具体的には、脱着系として、加熱ガスG3が流される加熱路X9と、適宜の数の、図示例では1つの第2のバグフィルター装置35と、が備えられている。
【0063】
この第2のバグフィルター装置35自体は、その形態が特に限定されるものではなく、例えば、前述一方の第2のバグフィルター装置21や他方の第2のバグフィルター装置22と同様の形態とすることができる。本形態の第2のバグフィルター装置35は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた容器体35Bと、この容器体35B内に配置された適宜の数の、図示例では1つの第2のフィルター35Aと、この第2のフィルター35Aの上方に配置されたパルスジェット35Cと、を主に有する。
【0064】
ただし、本形態のガス処理装置においては、前述した形態と異なり、加熱路X9内を流れる加熱ガスG3が循環する構成とされていない。具体的には、圧送ブロワ42によって加熱路X9内に外気Aが通され、この外気Aが電気ヒーター等の加熱手段33によって加熱されて加熱ガスG3とされる。
【0065】
このように本形態のガス処理装置においては、加熱ガスG3の循環が省略され、当該加熱ガスG3がそれほど高温化しないこと(例えば、80〜120℃。)、除湿等を目的とする場合は、通常、吸着剤Cとしてシリカゲル、ゼオライト等が使用され、自然発火のおそれがないこと、などから酸素を含む外気Aを使用する。また、加熱手段33による加熱後の温度低下を防止するために、本形態のガス処理装置においては、加熱路X9及び第2のバグフィルター装置35をハニカム体等の構造とされた保温材34で覆っている。
【0066】
本形態のガス処理装置においては、前述したガス処理装置と同様に処理されて、第1のバグフィルター装置14の容器体14Bの底部に一時貯留された捕捉吸着剤C2が、ロータリーバルブ等の捕捉吸着剤供給手段15によって、加熱ガスG3が流される加熱路X9に切り出される(供給される)。この供給をされた捕捉吸着剤C2は、加熱ガスG3によって加熱路X9内を流され、容器体35B内に供給される。そして、この過程において、捕捉吸着剤C2は、加熱ガスG3の熱により加熱されて、吸着されている被処理成分が脱着される。本形態においても、捕捉吸着剤C2が粉体状であるため、加熱ガスG3から捕捉吸着剤C2への熱移動効率がよく、また、捕捉吸着剤C2からの被処理物の脱着効率がよく、エネルギーコストを削減することができる。
【0067】
以上のようにして、容器体35B内に供給された捕捉吸着剤C2は、加熱によって水分等の被処理物質が脱着された(再生)吸着剤Cとされており、この吸着剤Cが第2のフィルター35Aによって捕捉される。他方、被処理物質を含む加熱ガスG3は、第2のフィルター35Aを通り抜け、触媒燃焼装置39にて加熱ガスG3が燃焼される。
【0068】
触媒燃焼装置39においては、例えば、白金,パラジウム,バナジウム,チタニウム、酸化チタン等の酸化触媒、二酸化マンガン等の触媒を使用して、例えば、燃焼温度250〜350℃にて被処理物質の燃焼等をすることができる。この触媒による燃焼は、無炎燃焼であり、直燃の場合に比較して、燃焼温度が低く、局部的に高温にならないため、安定した燃焼が行われ、被処理物質が水分以外である場合も採用することができる。また、触媒燃焼によると、燃焼後のガスがNOX等の大気汚染物質を含まないため、清浄ガスG2として、そのまま大気中に放風することができる。さらに、本形態のガス処理装置においては、この触媒燃焼によって被処理物質が除去された清浄ガスG2は、熱交換器41に通され、前述外気Aと熱交換して当該外気Aを予熱する等した後、大気中に放風される。
【0069】
なお、近年、地球温暖化防止対策の一環として、エアコン等の設定温度が高くされる傾向にあり、湿度を下げることによって不快指数を下げることが望まれている。このような状況のもと、以上のガス処理装置は、いずれも除湿装置として使用することができ、しかもこの使用にあたってのエネルギー消費量が少なく、更にフロン等の温室効果ガスを使用する必要がないため、極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ガス中の被処理物質を吸着剤に吸着させて、被処理物質が除去されたガスを得る吸着系と、被処理物質を吸着した吸着剤から被処理物質を脱着させて、吸着剤を再生する脱着系と、を有するガス処理装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
11…ガス冷却器、11A…フィルター、12…クーリングタワー、13…攪拌手段、13A…筒体、13M…モーター、13X…回転羽根、13Y…固定羽根、14…第1のバグフィルター装置、14A…第1のフィルター、14B…容器体、14C…パルスジェット、16…加熱手段、17…ガス発生装置、18…移送用ブロワ、21…一方の第2のバグフィルター装置、21A…第2のフィルター、21B…一方の容器体、21C…パルスジェット、22…他方の第2のバグフィルター装置、22A…第2のフィルター、22B…他方の容器体、22C…パルスジェット、23…吸着剤タンク、25…真空ポンプ、26…冷却手段、27…コンプレッサー、28…レシーバータンク、29…ドレンタンク、31…圧送ブロワ、32…定量フィーダー、33…加熱手段、34…保温材、35…第2のバグフィルター装置、35A…第2のフィルター、35B…容器体、35C…パルスジェット、39…触媒燃焼装置、41…熱交換器、42…圧送ブロワ、A…外気、B1,B6…供給バルブ、B2,B7…循環バルブ、B3,B8…回収バルブ、B4,B9…エアーバルブ、B5,B10…投入バルブ、C…吸着剤、C2…捕捉吸着剤、G1…被処理ガス、G2…清浄ガス、G3…加熱ガス、P1…冷媒循環ポンプ、R1,R2…冷媒、X1…ガス路、X2…加熱路、X3…分岐路、X4…回収路、X5…分岐路、X6…返送路、X7…エアー路、X8…切出し路、X9…加熱路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の被処理物質を吸着剤に吸着させる吸着系と、前記吸着剤から前記被処理物質を脱着させる脱着系と、を有するガス処理装置であって、
前記吸着系は、前記ガスが流されるガス路と、このガス路に前記吸着剤を粉体の状態で供給する吸着剤供給手段と、前記吸着剤が供給されたガスが通される第1のフィルターと、を有し、
前記脱着系は、加熱ガスが流される加熱路と、この加熱路に前記第1のフィルターで捕捉された捕捉吸着剤を供給する捕捉吸着剤供給手段と、前記捕捉吸着剤が供給された加熱ガスが通される第2のフィルターと、を有する、
ことを特徴とする、ガス処理装置。
【請求項2】
前記ガス路に、前記吸着剤が供給されたガスを攪拌する攪拌手段が設けられている、
請求項1記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記加熱路の一端が前記第2のフィルターの下流側に接続され、他端が当該第2のフィルターの上流側に接続されて、前記加熱ガスが循環する構成とされている、
請求項1又は請求項2記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記第2のフィルターが容器体内に収められ、
前記第2のフィルターを通されて前記吸着剤が除かれた後の回収ガスが、当該回収ガス中の被処理物質も除かれた後、前記容器体の前記吸着剤が留まる側に吹き込まれる構成とされている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−36801(P2011−36801A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186368(P2009−186368)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(391061646)株式会社流機エンジニアリング (20)
【Fターム(参考)】