説明

ガス分析装置および燃料電池

【課題】複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定可能なガス検出装置等を提供する。
【解決手段】熱伝導度検出器のベースブロック1の内部には、検出側空洞11および参照側空洞12が形成されている。検出側空洞11には、検出側フィラメント13が、参照側空洞12には、参照側フィラメント14が、それぞれ配置されている。検出側空洞11の上流側には、所望の分子のみを選択通過させることができる分子選択膜41が配置される。この分子選択膜41は、分子篩として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサを用いてガス濃度を計測するガス分析装置、およびガス流路内のガス濃度を、ガスセンサを用いて計測可能とした燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス成分の濃度を測る装置として、熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector ;TCD)を備えたガスクロマトグラフ(GC)がある。ガスクロマトグラフでは、試料ガスをキャリアガスに混合した後、分離カラムに導入し、分析成分はカラムを通過する際に成分ごとに分離される。分離された成分は、カラム出口に配置された熱伝導度検出器によって計測される。
【0003】
特開2002−228647号公報に記載されたガスクロマトグラフでは、キャリアガスはキャリアガス導入部から導入され、連続流として試料気化室、キャピラリーカラムを経て、熱伝導度検出器へと導かれる。試料は試料気化室においてキャリアガスに導入される。その後、試料はキャリアガスに運ばれ、キャピラリーカラムを通過する間に成分ごとに分離された後、熱伝導度検出器にて検出される。キャピラリーカラムは、一般に恒温槽内に収められる。また、熱伝導度検出器は測定試料を気体状態に保つとともに、周囲の温度変化の影響を受けないように、キャピラリーカラムとは別の恒温槽に収められることが多い。
【0004】
金属性ブロックで作製された熱伝導度検出器のセル内には、ガス流路である検出側空洞と参照側空洞が設けられており、検出側空洞および参照側空洞内にはフィラメントが設置されている。フィラメントの材料としては、一般にタングステンまたはその合金が用いられる。フィラメントには一定の直流電流が印加される。検出側空洞部にはキャピラリーカラムから流れてきた試料ガスとキャリアガスの混合ガスが導入され、参照側空洞部にはキャリアガスのみが導入される。キャリアガスとしては、例えばヘリウムガスのような、気体の中では熱伝導度の比較的大きなものが選択される場合が多い。試料が含まれない場合、キャリアガスの熱伝導度が比較的大きいために、フィラメントから発生する熱は、熱伝導度検出器セルの金属ブロックの壁面へ熱伝導で伝わり、フィラメントの温度は比較的低いところで平衡に達する。これに対して、試料ガスが検出側空洞に導入されると、試料ガスの熱伝導度はヘリウムガスに比べて小さいので、フィラメントから発生する熱は金属ブロックの壁面へ熱伝導で伝わりにくくなり、その結果、フィラメントの温度が上昇する。フィラメントの温度変化は、フィラメントに定電流を流しておくことで、電位差として取り出すことができるが、非常に小さな電位差の変化を取り出すため、ブリッジ回路が用いられる。その際に、参照抵抗としてキャリアガスのみを流している参照側空洞に設けたフィラメントを用いる。
【特許文献1】特開2002−310971号公報
【特許文献2】特開2002−228647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法により、ガスクロマトグラフによれば定性分析と定量分析とを一度に行うことができる。また、ガスクロマトグラフは複数成分混合サンプルであっても成分ごとに分離してから各成分の濃度を測定するので、その測定結果は信頼性の高いものである。しかし、ガスクロマトグラフは成分分離に相応する分析時間を必要とするだけでなく、1度採取した試料の分析結果が判明するまでは次の分析を進めることができない。すなわち、ガスクロマトグラフは間欠分析装置である。このため、成分濃度変化の激しいプロセスにおけるガス成分の定性定量分析用途に適した分析装置ではない。
【0006】
一方、ガス成分の濃度を連続的に分析可能なガスセンサとして、ガスクロマトグラフの構成要素である熱伝導度検出器の検出原理を利用した熱伝導式センサがある。熱伝導式センサは、検出対象ガス流に曝露させるように配置した検出用フィラメントを一定電圧または一定電流で加熱し、フィラメントに接するガスの成分組成が変わった時に起こる熱伝導度の変化に伴うフィラメント温度の変化を、フィラメントの電気抵抗値変化を介してブリッジ回路により電位差として検出するものである。しかし、熱伝導式センサは測定対象ガスの経時変化を検出することができるが、分離機能を有しないので、複数成分中の特定成分のみを定性定量することができない。
【0007】
このように、従来のガス分析法では、複数のガス成分濃度を定性定量分析できるガスクロマトグラフでは経時的な分析ができず、一方、経時的な分析ができる熱伝導式センサでは、分離機能を持たないために、複数成分混合試料に対して不適であるという問題がある。ガスクロマトグラフを複数台用意してサンプル採取のタイミングをずらしていくことで、擬似的に連続分析を行う手法も考えられる。しかし、より連続的な検出状態を得ようとすれば、さらに多くのガスクロマトグラフを用意しなければならず、連続分析用途では実用的でなくコストも嵩む。従来のガス分析方法では、複数成分混合試料中の単一成分もしくは幾つかの分析対象成分のみを選択して、高精度かつ経済的に定性定量することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定可能なガス検出装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス分析装置は、ガスセンサを用いてガス濃度を計測するガス分析装置において、前記ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したことを特徴とする。
このガス分析装置によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定できる。
【0010】
前記ガスセンサは熱伝導度検出器であってもよい。
【0011】
前記分子選択用部材の上流側にガスクロマトグラフ用のカラムを設けてもよい。
【0012】
本発明の燃料電池は、ガス流路内のガス濃度を、ガスセンサを用いて計測可能とした燃料電池であって、前記ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したことを特徴とする。
この燃料電池によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス分析装置によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定できる。
【0014】
本発明の燃料電池によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図4を参照して、本発明によるガス分析装置の実施形態について説明する。
【0016】
熱伝導度検出器はガス種選択性を有しないので、複数成分よりなる試料ガス中の特定成分のみを分離検出することはできない。
【0017】
本発明によるガス分析装置では、熱伝導度検出器の上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置し、熱伝導度検出器および分子選択用部材を連結させて有機的に機能させることにより上記課題を解決している。分子選択用部材の形態としては、膜状、繊維状、モノリス状、その他の形態を選択できる。好ましくは、膜状の形態が選択される。
【0018】
所望の分析対象成分は分子選択用部材を通過して熱伝導度検出器へ導入される。他方、試料に含まれる測定対象外成分は分子選択用部材を通過できないので、膜表面近傍に連結された排気ラインへ誘導される。試料ガスがこのような分子篩作用を経た結果、濃度検知用素子である熱伝導度検出器のフィラメント近傍へは測定対象成分のみが流入することとなる。よって、複数成分含有試料中の特定成分のみを高選択的、且つ経時的に定性定量可能となる。当然、試料ガスに含まれる所望の分析対象成分以外の成分群を熱伝導度検出器へ流入させない構造であるため、検出時に夾雑成分の影響は受けない。
【0019】
図1は、一実施形態のガス分析装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、ガラス、セラミックなどの無機材料もしくはPEEK樹脂などの耐温性ポリマーを成形した熱伝導度検出器のベースブロック1の内部には、検出側空洞11および参照側空洞12が形成されている。検出側空洞11には、検出側フィラメント13が、参照側空洞12には、参照側フィラメント14が、それぞれ配置されている。
【0021】
検出側空洞11の上流側には、所望の分子のみを選択通過させることができる分子選択膜41が配置される。この分子選択膜41は、分子篩として機能する。
【0022】
分子選択膜41の上流側には、分析対象成分を含む試料を導入するためのガス導入管21が、検出側空洞11の下流側には分析ガス管23が、それぞれ接続されている。さらに、分子選択膜41の近傍には、ガス導入管21から分岐する排ガス管31が設けられている。
【0023】
また、参照側空洞12の上流側には、参照ガスを導入するための参照ガス導入管22が、参照側空洞12の下流側には参照ガス排管24が、それぞれ接続されている。
【0024】
分析対象成分を含む試料ガスは試料ガス導入管21により導入され、分子選択膜41の機能特性により特定分子(もしくは、試料ガスと比較して特定分子がリッチな成分比のガス)が分子選択膜41を経由して検出側空洞11に導かれ、検出側フィラメント13により検出される。
【0025】
分子選択膜41を通過しなかったガス成分は、排ガス管31を介して外部に排気される。なお、図1において、試料ガス、排ガス、および分子選択膜41を通過するガスのガス流は制御バルブ32により制御可能であるが、制御バルブ32を省略してもよい。
【0026】
このように、分子篩として機能する分子選択膜41と熱伝導度検出器を一体化させた検出器を構成することにより、ガスクロマトグラフによる成分分離が不要となり、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定でき、しかも夾雑成分の影響を受けずに高精度な測定が可能となる。
【0027】
分子選択膜41の材質としては、所望の化学種を高選択的に通過させるとともに、試料中の他の化学種に対しては通過を抑制する機能を有するものを広く使用できる。
【0028】
分析対象成分と分子選択用部材の組み合わせとして、以下のものが例示される。
(1)分析対象成分が水素の場合
・多孔質支持体(アルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニア、シリカアルミナ等のセラミックスの管状体、平板状体等)の上に、水素を選択的に透過させる分離機能層を設けた構造を有する水素透過膜。水素を選択的に透過させる分離機能を有する材料(膜状、層状)としては、Pdまたは、Pdと、Ag、Au、Pt、Rh、Ru、Cu、Sn、Se、Te、Y、Si、Zn、Ir、Ta、Nb、V、Ni、Zr等の少なくとも1種との合金、Vまたは、Vと、Ni、Co、Mo等の少なくとも1種との合金、VαNiβCoγMoδ合金(金属比率は限定されない。α、β、γ、δは零を含む任意の値。)、アモルファスZrαNiβ合金(α、βは零を含む任意の値であるが、Zr36Ni64合金は好適である。)
・V、Zr、Nb、Taのうちの少なくとも1種類の金属を含む金属ベース層と、この金属ベース層の最表層の少なくとも一部に形成されたタンタル酸化物層とを備える材料ないし部材。
・シリアアセテート中空糸
・アモルファスシリカ
(2)分析対象成分が窒素の場合
・ポリイミド中空糸
・ポリオレフィン中空系複合膜
・ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンオキサイド
・シリアアセテート中空糸
(3)分析対象成分が酸素の場合
・ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリフェニレンオキサイド、シリコーン膜、シリコーンポリカービネート膜、ポリトリメチルシリルプロピン膜、ポリイミド中空糸、ポリオレフィン中空系複合膜
・2種類以上のビニル芳香族アミン重合体、および、メソーテトラキス(α,α,α,α−o−ピバルアミドフェニル)ポルフィリナトコバルトからなる酸素透過高分子膜
・ポリウレタン系ポリマー中空糸
・ポリスルホン非多孔質膜中空糸
・ポリフッ化ビニリデン多孔質膜にシリコンポリマーコーティングを施した中空糸
・セルロースアセテート中空系複合膜
(3)分析対象成分が一酸化炭素の場合
・デンドリマ
(4)分析対象成分が二酸化炭素の場合
・ポリイミド中空糸、含フッ素系ポリイミド中空系複合膜
・ポリウレタン系ポリマー中空糸
・シリコンアルコキシドとジルコニウムアルコキシドの複合アルコキシド膜および中空糸
・リチウムジルコネート、ジルコニアと支持膜の複合膜
(5)分析対象成分が揮発性有機化合物の場合
・シリコーンゴム−ポリイミド複合膜
・多孔質支持膜とイオン基含有ポリマー中空糸
【0029】
図1の例では、熱伝導度検出器の検出側空洞11に連接するガス流路内に分子選択膜41を嵌め込んでいるが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、ガラスなどのベース基板上に、ガス流路と熱伝導度検出素子を形成するとともに、熱伝導度検出素子の上流側に薄膜状の分子選択膜を形成することで、ワンチップ化することもできる。
【0030】
図2(a)は、分子選択膜と熱伝導度検出器を別ユニットとし、両者を連結させた構成を示すブロック図である。図1と同一要素には、同一符号を付している。
【0031】
図2(a)の例では、熱伝導度検出器の検出側空洞11の上流に接続された試料ガス導入管21の途中に分子選択膜42が接続されており、熱伝導度検出器のベースブロック1と、分子選択膜42とは別のユニットとして構成されている。
【0032】
本発明のガス分析装置において、分子選択膜と検出用フィラメントの間の容量(死容量)は、希釈効果、拡散効果を生み出し、定量限界を悪化させる。したがって、分子選択膜と検出用フィラメントの間の容量は小さい方が良く、図1に示したように分子選択膜と熱伝導度検出器を一体化させた方が良い。しかし、分析結果への希釈効果、拡散効果の影響が実用上許される範囲であれば、図2(a)に示すように分子選択膜と熱伝導度検出器を独立させることができ、両者を連結して使用できる。このように、個々のユニットを連結させる構造を採ることで、分析系の他の構成要素の連結状態を崩さずに、分子選択膜ユニットのみを着脱可能な形態とすることもでき、分析対象成分に応じて分子選択膜ユニットを適宜、選択交換することが可能となる。
【0033】
図2(a)の構成は、試料ガスが比較的高圧である場合に適している。ここでは、試料ガス自身の圧力を駆動力とし、試料中の分析対象成分は分子選択膜42を通過して熱伝導度検出器の検出側空洞11へ導入される。試料中の分子選択膜42を通過しない成分は、制御バルブ32の操作により排ガス管31を介して外部に排気される。
【0034】
図2(b)は、ガスを吸引する機能を追加した構成を示すブロック図である。
【0035】
図2(b)に示すように、検出側空洞11の下流側に接続された分析ガス管23には吸引ポンプ23aが、排ガス管31には吸引ポンプ33が、それぞれ設けられており、これらの吸引ポンプを作動させることで効率よく試料ガスを流動させることができる。これらの吸引ポンプとしては、例えばダイヤフラム式やピストン式ポンプが有効である。
【0036】
排ガス管31に設置された吸引ポンプ33の働きにより試料ガスを分子選択膜42の近傍まで導く。分析対象成分は分子選択膜42を通過させて検出側空洞11へ流入させ、分子選択膜42を通過しない分析対象外成分は排ガス管31を介して外部に排気する。分析ガス管23に設けた吸引ポンプ23aにより分子選択膜42の下流側を減圧状態とすることにより、分析対象成分を効率的に検出側空洞11へ流入させるとともに、分析対象成分の膜透過率を上げる効果も期待できる。なお、分子選択膜42を通過させた分析対象成分が検出用フィラメント近傍を通過する時の流速を、差圧法などの手段により制御することが好ましい。
【0037】
図2(b)の例では吸引ポンプを2箇所に配置しているが、状況に応じていずれか一方のみ設置してもよい。
【0038】
図2(c)は、キャリアガス型の構成例を示すブロック図である。
【0039】
この構成では、ガス導入管21に、調圧器21aで圧力を、流量計を用いて流量21bを、それぞれ制御したキャリアガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素など)を流す。なお、キャリアガスの圧力または流量のいずれか一方のみを制御してもよい。
【0040】
また、試料ガス導入管25からは試料導入用バルブ21cを介して試料ガスを導入し、このキャリアガスに混合する。試料ガスは、キャリアガスの流れにより分子選択膜42の近傍に導かれる。分析対象成分については分子選択膜42を通過させ検出側空洞11へ流入させるとともに、分子選択膜42を通過しない分析対象外成分は排ガス管31を介して外部に排気する。分析ガス管23に吸引ポンプ(不図示)を設け、分子選択膜42の下流側を減圧状態とすることにより、分析対象成分を効率的に検出側空洞11へ流入させるとともに、分析対象成分の膜透過率を上げるようにしてもよい。なお、分子選択膜42を通過させた分析対象成分が検出用フィラメント近傍を通過する時の流速を、差圧法などの手段により制御することが好ましい。
【0041】
以上のように、分子選択膜と熱伝導度検出器を組み合わせることで、装置全体を複数成分含有試料中の特定成分のみを選択定量可能なセンサとして働かせることができる。これにより、複数成分混合試料中の所望成分のみを選択的、経時的、かつ高精度に測定することが可能となる。
【0042】
図3は、分子選択膜付きの熱伝導度検出器を、ガスクロマトグラフの検出器として使用する構成を示すブロック図である。この構成は、図2(c)に示したガス分析装置にキャピラリーカラム5を追加したものである。
【0043】
この構成では、ガス導入管21に、調圧器21aで圧力を、流量計を用いて流量21bを、それぞれ制御したキャリアガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素など)の連続流を形成する。なお、キャリアガスの圧力または流量のいずれか一方のみを制御してもよい。
【0044】
また、試料ガス導入管25からは試料導入用バルブ21cを介して試料ガスを導入し、このキャリアガスに混合する。試料ガスは、キャリアガスの流れによりキャピラリーカラム5に導入され、成分ごとに分離された後、分子選択膜42の近傍に導かれる。分析対象成分については分子選択膜42を通過させ検出側空洞11へ流入させるとともに、分子選択膜42を通過しない分析対象外成分は排ガス管31を介して外部に排気する。分析ガス管23に吸引ポンプ(不図示)を設け、分子選択膜42の下流側を減圧状態とすることにより、分析対象成分を効率的に検出側空洞11へ流入させるとともに、分析対象成分の膜透過率を上げるようにしてもよい。なお、分子選択膜42を通過させた分析対象成分が検出用フィラメント近傍を通過する時の流速を、差圧法などの手段により制御することが好ましい。
【0045】
一方、参照側には、調圧器22aにより圧力が、流量計22bにより流量が、それぞれ制御された参照ガスが、参照ガス導入管22により参照側空洞12に導入され、参照ガス排管24を経て外部へ排出される。
【0046】
図3に示すキャピラリーカラム5は、恒温槽(不図示)に収容される。また、測定試料を気体状態に保つとともに、周囲の温度変化の影響を受けないように、熱伝導度検出器のベースブロック1はキャピラリーカラム5とは別の恒温槽(不図示)に収容するのが望ましい。
【0047】
クロマトグラフィーの希釈拡散理論に鑑みれば、死容量の影響を最小限に抑制するためには、分子選択膜と熱伝導度検出器とを一体化することが望ましい。しかし、希釈拡散の影響が実用上許容される範囲内であれば、図3に示すように、それぞれの部品を個別ユニットとし、両者を連結してもよい。
【0048】
図4は、本発明による分子選択膜の付いた熱伝導度検出器を内蔵した燃料電池セルの構成を示す断面図である。
【0049】
図4に示すように、燃料電池6は、電解質膜61、アノード側触媒拡散層62a、カソード側触媒拡散層62c、アノード側セパレータ63a、カソード側セパレータ63cを積層して構成され、アノード側セパレータ63aにはガス流路64aが、カソード側セパレータ63cにはガス流路64cが、それぞれ形成されている。
【0050】
図4に示すように、ガス流路64aおよびガス流路64cの近傍には、それぞれセパレータ63aおよびセパレータ63cとの間で絶縁層(不図示)を介して分子選択膜付き熱伝導度検出器7a,7a,・・・および分子選択膜付き熱伝導度検出器7c,7c,・・・が設けられている。また、各熱伝導度検出器には、測定後の試料を排出するための排ガス管71が接続されている。
【0051】
燃料電池6では、熱伝導度検出器7a,7a,・・・および熱伝導度検出器7c,7c,・・・により、燃料電池発電中もしくは非発電中におけるガス流路64aおよびガス流路64c中のガス濃度をピンポイントで経時的に測定できる。また、図4に示す構成では、ガス流路に沿って複数の測定点を設けているため、燃料電池内部のガスの濃度分布を詳しく把握することができる。ガスの濃度分布を燃料電池6の運転制御に用いることで、最適な運転状態を得ることができる。
【0052】
なお、燃料電池内部のガス濃度分布測定を行う場合、アノード側では主に水素または一酸化炭素が、カソード側では主に酸素または窒素が測定対象物であるので、熱伝導度検出器7aおよび熱伝導度検出器7cでは、それぞれの成分に相応する分子選択膜を使用すればよい。
【0053】
上記各実施形態では、分子選択膜と、熱伝導度検出器の組み合わせによる装置について述べたが、検知対象成分に応じて、分子選択膜を熱伝導度検出器以外の原理に基づくガスセンサと組み合わせて使用してもよい。例えば、半導体式センサ、接触燃焼式センサ、表面電位型センサ、赤外線吸収式センサ、光波干渉式センサなどをガスセンサとして使用できる。
【0054】
以上説明したように、本発明のガス分析装置によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定できる。また、本発明の燃料電池によれば、ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したので、複数成分混合ガス試料中の所望のガス成分を選択的、経時的に測定でき、燃料電池の最適な運転制御が可能となる。
【0055】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、ガスセンサを用いてガス濃度を計測するガス分析装置、およびガス流路内のガス濃度を、ガスセンサを用いて計測可能とした燃料電池に対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】一実施形態のガス分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】他の実施形態のガス分析装置の構成を示す図であり、(a)は、分子選択膜と熱伝導度検出器を別ユニットとし、両者を連結させた構成を示すブロック図、(b)は、ガスを吸引する機能を追加した構成を示すブロック図、(c)は、キャリアガス型の構成例を示すブロック図。
【図3】分子選択膜付きの熱伝導度検出器を、ガスクロマトグラフの検出器として使用する構成を示すブロック図。
【図4】分子選択膜の付いた熱伝導度検出器を内蔵した燃料電池セルの構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 ベースブロック(ガスセンサ)
41 分子選択膜(分子選択用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサを用いてガス濃度を計測するガス分析装置において、
前記ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したことを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは熱伝導度検出器であることを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記分子選択用部材の上流側にガスクロマトグラフ用のカラムを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
ガス流路内のガス濃度を、ガスセンサを用いて計測可能とした燃料電池であって、
前記ガスセンサの上流側に測定対象成分のみを選択通過させる分子選択用部材を配置したことを特徴とする燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−128177(P2009−128177A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303239(P2007−303239)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】