説明

ガス化システム

【課題】炭素系原料の資源を最大限に活用して実利性を高めることができるようにしたガス化システムを提供する。
【解決手段】高温の循環粒子2とガス化剤3との存在下で炭素系原料5をガス化してガス化ガス17を生成する流動層ガス化炉1と、流動層ガス化炉1でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉9と、燃焼炉9からの燃焼ガス10を分離器11に導いて排ガス12と循環粒子2とに分離し循環粒子2を流動層ガス化炉1に戻すようにしたガス化システムであって、流動層ガス化炉1からのガス化ガス17を導入してH、COリッチな高品位ガス21を生成する高温改質炉19と、高温改質炉19での改質時に生成した煤22を導入して機能性材料24を製造する材料製造装置23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系原料の資源を最大限に活用するようにした実利性の高いガス化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の炭素系の機能性材料を、天然ガスを原料として製造する技術は従来から確立されている。
【0003】
しかし、近年の天然ガス価格の高騰から、上記機能性材料を石炭等の安価な原料から製造することが求められるようになってきている。
【0004】
石炭から炭素系の機能性材料を製造する方法としては特許文献1、2がある。特許文献1は酸素Oを用いて石炭をガス化し、ガス化ガスをガスクーラに導き発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電を行い、更にガス化ガスからグラファイトナノファイバを製造し、ガス化ガスの余剰分でガスタービンを駆動して発電を行うものである。又、特許文献2は、石炭ガス化ガスを変換炉に導いて二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、この一酸化炭素を炭素源としてとして化学気相成長法(CVD法)により単層カーボンナノチューブを製造するものである。
【特許文献1】特開2003−120323号公報
【特許文献2】特開2006−027949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、石炭のガス化を酸素で行うものであるため、多量の酸素を必要として運転コストが増大する問題があり、又、特許文献2は、石炭ガス化ガスを変換炉に導いて二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、この一酸化炭素を炭素源として単層カーボンナノチューブを製造するのみであり、特許文献1、2のいずれにおいても、炭素系原料のガス化ガスを改質して高品位ガスを得ると共に改質時に生成する煤を用いて有用な機能性材料を製造することについては記載されておらず、更に、炭素系材料の資源を使い切るようにして実利性を高めることができたガス化システムについても記載されていない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、炭素系原料の資源を最大限に活用して実利性を高めることができるようにしたガス化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高温の循環粒子とガス化剤との存在下で炭素系原料をガス化してガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記流動層ガス化炉に戻すようにしたガス化システムであって、流動層ガス化炉からのガス化ガスを導入してH、COリッチな高品位ガスを生成する高温改質炉と、該高温改質炉での改質時に生成した煤を導入して機能性材料を製造する材料製造装置とを有することを特徴とするガス化システム、に係るものである。
【0008】
上記ガス化システムにおいて、高温改質炉からの高温の高品位ガスと熱交換して熱回収する熱回収手段を有することは好ましい。
【0009】
又、上記ガス化システムにおいて、分離器で分離した排ガスの熱を回収する熱回収手段を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス化システムによれば、炭素系原料のガス化により生成するガス化ガスを改質して高品位ガスを得ると共に改質時に生成する煤を用いて有用な機能性材料を製造することができ、更に、高温の高品位ガスから熱回収し、又、排ガスの排熱を回収することにより、炭素系原料の資源を最大限に活用した実利性の高いガス化システムを提供することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の形態例を添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明のガス化システムの一例を示す概略構成図であり、このガス化システムにおいては、高温の循環粒子2と水蒸気等のガス化剤3の存在下で炭素系原料供給装置4から供給される炭素系原料5を流動層6によりガス化する流動層ガス化炉1と、流動層ガス化炉1でガス化時に生成したチャーと循環粒子とを供給管7を介して導入し空気8により燃焼することにより循環粒子2を加熱する燃焼炉9を備えている。更に、燃焼炉9からの燃焼ガス10を導入して循環粒子2と排ガス12とに分離する分離器11を備えており、分離器11で分離した循環粒子2は流動層ガス化炉1に戻して循環させるようにしている。前記流動層ガス化炉1では循環粒子2によって例えば800℃以上の温度に保持されて炭素系原料5のガス化を行うようになっており、又、燃焼炉では900℃以上の温度で循環粒子2を加熱するようになっている。
【0013】
前記炭素系原料供給装置4は、流動層ガス化炉1内の圧力を保持(シール)した状態で石炭、石油残渣、ペトロコークス、重質油等の炭素系原料5を供給するようになっている。
【0014】
前記分離器11で分離された排ガス12は、熱回収手段13に導いて熱回収するようにしている。図1に示す熱回収手段13は、排ガス12と水を熱交換して蒸気を発生する熱交換器14(ボイラ)と、該熱交換器14からの蒸気により発電機15を回転させる蒸気タービン16を備えて電気を生産する場合を示している。尚、熱回収手段13は発電せずに熱交換器14によって得た水蒸気を他の目的に利用するようにしてもよい。例えば熱交換器14によって得た水蒸気を流動層ガス化炉1にガス化剤3として供給するようにしてもよい。
【0015】
前記流動層ガス化炉1で生成されるガス化ガス17は、一酸化炭素CO、水素Hを主成分とし、それにメタンCH等の炭化水素、二酸化炭素CO等とタールが混在したものであり、流動層ガス化炉1から取り出されたガス化ガス17は、分離器18に導かれて固形分が除去された後、高温改質炉19に供給されて改質される。ここで、前記分離器18で分離された炭素を含む固形分は、燃焼炉9へ供給して燃焼炉9の熱源に利用することができる。
【0016】
高温改質炉19には酸素20が供給されていて、前記ガス化ガス17のタールの改質と炭化水素Cの分解を行うようになっており、この改質によってH、COリッチな高品位ガス21が生成されるようになっている。ここで、高温改質炉19に導入されるガス化ガス17は流動層ガス化炉1内温度と略同じ例えば800℃の高温を保持されているため、高温改質炉19に供給される酸素20はガス化ガスの昇温には殆ど使用されずに、殆どが改質に使用される。そのため、酸素20の供給量は少なく抑えることかできる。
【0017】
前記高温改質炉19でガス化ガス17を改質する際には炭素の塊である煤が生成するので、この煤22を高温改質炉19から取り出して材料製造装置23に導入し、該材料製造装置23において前記煤22を原料として活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の機能性材料24を製造するようにしている。材料製造装置23としては、造粒装置、化学気相成長法(CVD法)を用いた生成炉等の種々の装置を用いることができる。従来、ガス化ガス素17等から分離される煤を含む固形分は燃焼炉9へ供給して燃焼炉9の熱源に利用していたが、流動層ガス化炉1と燃焼炉を熱バランスが成立するように運転することにより、煤22を燃焼炉9へ供給することなく、材料製造装置23に供給して機能性材料24を製造することができる。
【0018】
前記高温改質炉19から取り出される高品位ガス21は高温を有しているので、この高温の高品位ガス21と熱交換して熱回収するようにした熱回収手段25を備える。この熱回収手段25によって水蒸気を生成するようにした場合には、この水蒸気を前記流動層ガス化炉1のガス化剤として用いることができる。
【0019】
上記形態例の作動を説明する。
【0020】
図1のガス化システムにおいて、炭素系原料供給装置4により流動層ガス化炉1に供給された炭素系原料5は、流動層6において循環粒子2による加熱とガス化剤3の作用を受けてガス化される。水蒸気ガス化の場合には、一酸化炭素CO、水素Hを主成分とし、これにメタンCH等の炭化水素、二酸化炭素CO等とタールが混合したガス化ガス17が生成される。
【0021】
流動層ガス化炉1で生成したガス化ガス17は分離器18に導かれて固形分が除去された後、高温改質炉19に供給される。高温改質炉19では酸素20の供給によって、前記ガス化ガス17のタールの改質と炭化水素Cの分解を行い、これによりH、COリッチな高品位ガス21を生成する。ここで、高温改質炉19に導入されるガス化ガス17は流動層ガス化炉1内温度に近い例えば800℃の温度を保持しているため、前記酸素20は昇温には殆ど使用されずに、殆どが改質に使用される。そのため、酸素20の供給量は少なく抑えることかできる。
【0022】
前記高温改質炉19ではガス化ガス17を改質する際に、殆どか炭素の塊である煤22を生成するので、この煤22を高温改質炉19から取り出して材料製造装置23に導入する。材料製造装置23においては前記煤22を原料として活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の機能性材料24を製造することができる。
【0023】
前記高温改質炉19から取り出される高品位ガス21は高温(略800℃)を有しているので、この高温の高品位ガス21を熱回収手段25に導くことにより熱回収する。この熱回収手段25による熱回収によって水蒸気を生成した場合には、この水蒸気を前記流動層ガス化炉1のガス化剤として用いることができる。
【0024】
又、燃焼炉9から排出される燃焼ガス10は分離器11に導かれて循環粒子2と排ガス12とに分離されて循環粒子2は流動層ガス化炉1に供給され、排ガス12は熱回収手段13の熱交換器14に供給される。熱交換器14では排ガス12と水を熱交換することにより水蒸気を発生させ、この水蒸気を蒸気タービン16に供給することにより電気を生産する。
【0025】
上記したように、炭素系原料5のガス化により生成するガス化ガス17を改質して高品位ガス21を得ると共に、改質時に生成する煤22を用いて材料製造装置23により有用な機能性材料24を製造することができる。更に、熱回収手段25により高温の高品位ガス21から熱回収することができ、又、熱回収手段13により排ガス12の排熱を回収することができるため、炭素系原料5の資源(成分、熱量)を最大限に活用することができて実利性の高いガス化システムが提供できるようになる。
【0026】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のガス化システムの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 流動層ガス化炉
2 循環粒子
3 ガス化剤
5 炭素系原料
9 燃焼炉
10 燃焼ガス
11 分離器
12 排ガス
13 熱回収手段
17 ガス化ガス
19 高温改質炉
21 高品位ガス
22 煤
23 材料製造装置
24 機能性材料
25 熱回収手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の循環粒子とガス化剤との存在下で炭素系原料をガス化してガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記流動層ガス化炉に戻すようにしたガス化システムであって、流動層ガス化炉からのガス化ガスを導入してH、COリッチな高品位ガスを生成する高温改質炉と、該高温改質炉での改質時に生成した煤を導入して機能性材料を製造する材料製造装置とを有することを特徴とするガス化システム。
【請求項2】
高温改質炉からの高温の高品位ガスと熱交換して熱回収する熱回収手段を有する請求項1に記載のガス化システム。
【請求項3】
分離器で分離した排ガスの熱を回収する熱回収手段を有する請求項1又は2に記載のガス化システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−13184(P2009−13184A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172888(P2007−172888)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】