ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置、およびトリガー式エアゾール噴射器
【課題】取り扱いが面倒となったり、コスト高を招いたりすることなく、また工具を準備したり、ステムを押し続けたりすることなしに、簡単に廃棄時のガス抜きを可能とする。
【解決手段】押下部材33を、押し下げ方向にのびる第1部分34とそれと直交する方向にのびる第2部分35とで構成し、その第2部分を貫挿してストッパ部材50を第2部分でスライド可能に支持して退避位置とストップ位置とに移動自在とする。そして、ストッパ部材を退避位置としたときは、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を妨げない。ストッパ部材をストップ位置としたときは、トリガーレバーの通過孔38aに入れて押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を阻止する。
【解決手段】押下部材33を、押し下げ方向にのびる第1部分34とそれと直交する方向にのびる第2部分35とで構成し、その第2部分を貫挿してストッパ部材50を第2部分でスライド可能に支持して退避位置とストップ位置とに移動自在とする。そして、ストッパ部材を退避位置としたときは、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を妨げない。ストッパ部材をストップ位置としたときは、トリガーレバーの通過孔38aに入れて押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を阻止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部に取り付け、使用時にトリガーレバーを回動して押下部材を押し下げ、その押下部材内を通して容器の内容物を噴射剤の圧力で外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置に関する。および、そのようなガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を容器の口部に取り付けた、殺虫用・薬用・化粧用・洗浄用・塗装用などのトリガー式エアゾール噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トリガー式エアゾール噴射器では、スプレー缶等の容器の口部にエアゾール噴射装置を取り付けて容器内に噴射剤とともに内容物を収納し、トリガーレバーを回動して押下部材を介してステムを押し込み、または押下部材であるステムを押し込むことにより、容器の内容物を噴射剤の圧力で外部へと噴射していた。
【0003】
ところで、この種の噴射器では、通常、噴射剤として可燃性のガスを充填することから、廃棄するとき、そのまま捨てると、廃棄物処理時に容器が爆発して清掃作業者が怪我をしたり、焼却炉が破損したりするおそれがあった。このため、廃棄するときには、あらかじめ容器に孔をあけたり、ステムを押し込み続けたりして容器内のガスを抜くことが行われている。
【0004】
ところが、容器に孔をあけるには、釘や千枚通しや金槌などの工具とか、市販の専用工具とかを準備しなければならない面倒があった。他方、ステムを押し込み続けるには、長時間にわたりステムに指を当てて押し続けなければならない面倒があり、容器内のガスを完全に抜くには指の疲れ等も覚悟しなければならなかった。
【0005】
このような点に鑑み、従来のエアゾール噴射器の中には、例えば図13に示すように、容器1の底部外周の巻き締め部2に椀状ガス抜き治具3の入口周縁3aをはめ付け、ガス抜き治具3を着脱自在に備えるものがある。そして、廃棄時には、容器1の口部に取り付けるエアゾール噴射装置4からキャップ5を取り外すとともに、容器1からガス抜き治具3を取り外して図14に示すように容器1の上に載せ、容器1のステム6まわりの巻き締め部7にガス抜き治具3のリブ8をはめ付け、ガス抜き治具3の止め板9でステム6を押し込んだ状態で保持し、容器1内の噴射剤を完全に抜くようにしていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−177786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このようなエアゾール噴射器では、容器1にガス抜き治具3を取り付けるから、全体が大型化して保管や使用に不便となったり、通常使用時にガス抜き治具3が外れ落ちるおそれがあったりして、取り扱いが面倒である問題があった。また、入口周縁3aやリブ8や止め板9などを備える複雑な形状のガス抜き治具3を備えなければならないから、コスト高となる問題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、そのような問題を解消し、取り扱いが面倒となったり、コスト高を招いたりすることなく、また工具を準備し、ステムを押し続けることなしに、簡単に廃棄時のガス抜きを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、請求項1ないし4に記載の発明は、スプレー缶等の容器に取り付け、使用時にトリガーレバーを第1位置から第2位置へと回動して、ステムそれ自身またはそれに取り付ける部材により構成する押下部材を押し下げ、容器の内容物を押下部材内を通して、例えばその押下部材に取り付けるノズル部材の噴出口から外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置において、押下部材でストッパ部材を支持し、そのストッパ部材を、退避位置とストップ位置とに移動自在とする、ことを特徴とする。退避位置では、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を妨げず、ストップ位置では、ストッパ部材を押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を阻止する。
【0010】
押下部材は、例えば、押し下げ方向にのびる第1部分とそれと直交する方向にのびる第2部分とで構成し、ストッパ部材をその第2部分にスライド可能に設けて退避位置とストップ位置とに移動自在とする。このとき、例えば、押下部材の第2部分を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材をストップ位置としたとき、通過孔に入れて押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませる。また、押下部材の第2部分を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材を退避位置としてトリガーレバーが第1位置にあるとき、通過孔の一部をストッパ部材で塞ぐととともに、トリガーレバーとストッパ部材の外面を面一とする。
【0011】
そして、廃棄するときは、トリガーレバーを回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材をストップ位置へと移動して押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、トリガーレバーが第1位置へと復帰することを阻止する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、トリガー式エアゾール噴射器にあって、請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、押下部材でストッパ部材を支持して、そのストッパ部材を、退避位置とストップ位置とに移動自在とするのみであるので、全体が大型化して保管や使用に不便をきたすおそれはなく、またストッパ部材が簡単に外れないようにすることも容易であり、取り扱いを簡単とすることができる。しかも、廃棄するときは、トリガーレバーを回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材をストップ位置へと移動して押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、トリガーレバーが第1位置へと復帰することを阻止するだけでよいので、別途工具を準備したり、ステムを押し続けたりする必要がなく、廃棄時のガス抜きを簡単に行うことができ、ストッパ部材を単純な形状とすることが可能であり、コスト高となる心配もない。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、押下部材を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材を退避位置としてトリガーレバーが第1位置にあるとき、通過孔の一部をストッパ部材で塞ぐととともに、トリガーレバーとストッパ部材の外面を面一とするので、トリガーレバーが通常の第1位置にあるとき、ストッパ部材をトリガーレバーと一体化して外観を良好とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、トリガー式エアゾール噴射器にあって、請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備えるので、取り扱いが面倒となったり、コスト高を招いたりすることなく、工具を準備したり、ステムを押し続けたりすることなしに、簡単に廃棄時のガス抜きを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明によるトリガー式エアゾール噴射器の上部を斜め上から見て示す。図2には、その噴射器を、不使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す。
【0017】
図示トリガー式エアゾール噴射器では、アルミニウム・スチール等の金属製トリガー缶を容器10として、その容器10の口部に取り付けてガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴出装置12を備える。そして、容器10内に、殺虫剤・薬液・化粧液・洗剤・洗浄液・塗料などの内容物を噴射剤とともに収納する。内容物は、噴射剤であるガス中に溶解していてもよいし、ガスとは分離した状態で容器10内に存在するようにしてもよい。
【0018】
図3には、そのガス抜き用ストッパ部材付きエアゾール噴射装置12の縦断面を示す。この図3に示すように、エアゾール噴射装置12には、中段に段部13を有する縦筒状のハウジング14を備える。ハウジング14には、段部13の上に大径部15を、下に小径部16を設け、それらの大径部15内と小径部16内とを連通する。
【0019】
小径部16には、それをパイプ17の上端部内に圧入してパイプ17を取り付ける。パイプ17は、このエアゾール噴射装置12を容器10の口部に取り付けたとき、容器10の底部へと向けてのばす。そして、噴射剤の圧力で内容物を押し上げ、パイプ17内を通して小径部16内から大径部15内へと入れる。
【0020】
大径部15は、内周面に複数の縦溝15aを有し、内部に段部13上に載せてコイルスプリング18を設ける。そして、そのコイルスプリング18上にステム20を乗せる。ステム20には、下部にヘッド部21を設け、そのヘッド部21の上に首部22を設け、上端部に円筒部材取付部23を設ける。
【0021】
首部22には、外周面から中心へと径方向に貫通する貫通孔22aをあける。円筒部材取付部23には、中心に吐出通路23aをあけ、貫通孔22aと連通している。
【0022】
そして、首部22に、弾性部材である環板状のステムラバー(バルブ)24を取り付け、ヘッド部21を大径部15内に入れてコイルスプリング18上に乗せる。これにより、縦溝15aとともに、大径部15の内周面とヘッド部21の外周面との隙間で内容物吐出通路25を形成して、ステム20をハウジング14内に出し入れ自在に収納し、ステムラバー24を大径部15上にはめ付ける。
【0023】
その後、マウンテンキャップ26の中心孔26aにステム20を通し、ステムラバー24を圧縮するとともに、ハウジング14の上部に抱き付かせてマウンテンキャップ26を取り付ける。マウンテンキャップ26は、外周縁に、逆U字型に湾曲する巻き締め部26bを形成し、その巻き締め部26bを容器10の口部周縁にガスケットラバー27を介して図4に示すようにクリンプして巻き締め、ステム20を上向きに突出して容器10の口部にこのエアゾール噴射装置12を取り付ける。
【0024】
図4には、エアゾール式噴射器の縦断面を示す。この図4から判るとおり、容器10の口部を被って容器10にカバー部材28を取り付ける。カバー部材30には、頂部30aから上向きに円筒部30bを突出する一方、下向きに順次長くのばして内筒部30c、中筒部30d、外筒部30eを設ける。
【0025】
内筒部30cの先端は、巻き締め部26b内に入り込んでそれに内側から軽くあてがうようにする。中筒部30dの先端は、巻き締め部26bの顎部に外側から掛け止めてカバー部材30が容器10から外れないようにする。外筒部30eの先端は、容器10の肩部外周までのばして容器10の外形と連続性を持たせ、外観上容器10と一体感を保持し得るようにしている。
【0026】
そして、ステム20の円筒部材取付部23に円筒部材32のステム嵌合部32aをはめ付ける。円筒部材32は、上から順に、細長い小径筒部32bと中径筒部32cと大径筒部32dとを設け、大径筒部32d内に上述のステム嵌合部32aを形成する。小径筒部32bと中径筒部32cは、押下部材33の第1部分34に挿入する。
【0027】
図5には、押下部材33を斜め上から見て示す。この図5から判るとおり、押下部材33は、エルボ状にほぼ90度に折り曲げて、押し下げ方向にのびる基端側の第1部分34と、それと直交する水平方向にのびる先端側の第2部分35とで構成する。そして、第1部分34は、一重パイプ状で、上部両側に、円形の係合突部33aと、それから下向きにのびる細長リブ状の突き当て突部33bを設ける。
【0028】
第2部分35は、二重パイプ状で、外筒部とそれよりやや突出する内筒部とからなり、図4に示すようにそれらの間にノズルホルダ40の円筒基端40a側をはめ付ける。ノズルホルダ40には、先端側にノズル部材42を取り付け、そのノズル部材42に設ける噴出口42aを、第2部分35の内筒部内の吐出流路33cに連通する。
【0029】
そして、図4に示すように、円筒部材32の大径筒部32dと押下部材33の第1部分34のまわりに止めキャップ36を取り付ける。止めキャップ36は、キャップ部36aと、その頂部から同心にて上向きに突出する筒部36bと、キャップ部36aの肩部から斜め上向きにのびる支柱部36cとからなる。そして、キャップ部36aをカバー部材30の円筒部30bのまわりに被せるようにはめ付ける。止めキャップ36上には、ロック部材37を押下部材33の第1部分34まわりに回動自在に取り付ける。
【0030】
ロック部材37は、図6ならびに図7(A)および(B)からも判るとおり、止めキャップ36の筒部36bにはめ付けるスカート部37aと、そのスカート部37a上に同心に設ける円筒部37bと、その円筒部37b外周から径方向にのびる指当て部37cとからなる。
【0031】
円筒部37bには、内周面上縁に段部37dを形成するとともに、その段部37dから下向きに縦溝状に逃げ凹部37eを180度の間隔をあけて2つのばし、入口にはテーパ37fを設けている。また、外周面の下縁には、指当て部37cと90度および180度の間隔でクリック突部37gを3つ設ける。そして、図4に示すように、そのうちの1つのクリック突部37gをクリック係合部36eにクリック感をもって弾性的にはめ付け、ロック部材37の回動位置をロック位置とロック解除位置とに位置決めする。
【0032】
他方、止めキャップ36の支柱部36cは、先端にトリガーレバー38の基端を取り付けて図示第1位置から支軸39を中心として第2位置へと回動自在とする。トリガーレバー38は、直角に折れ曲がり、その曲げ部に、押下部材33の第2部分35を通す通過孔38aを有する周面部38bと、その両側に対向するように設ける側面部38cとからなる。側面部38cの内面には、下向きに係合凹部38dを形成する。
【0033】
この例のトリガーレバー38では、指掛け部38eを長くのばし、例えば看護師が指掛け部38eをポケットやベルトなどに引っ掛けて持ち運びしやすいようにしたり、清掃員が指掛け部38eを清掃ワゴンのフレームに引っ掛けて持ち運びしやすいようにしたりする。そして、トリガーレバー38の係合凹部38dを、押下部材33の係合突部33aに係合する。
【0034】
そして、不使用時は、ロック部材37の指当て部37cを図1および図2に示すようにトリガーレバー38の指掛け部38e側に向け、反対側のクリック突部37gを図4に示すようにクリック係合部36eにクリック感をもってはめ付け、ロック部材37をロック位置とする。すると、このとき指掛け部38eに指を掛け、トリガーレバー38を回動しようとしても、押下部材33の突き当て突部33bがロック部材37の段部37dに突き当たり、押下部材33の押し下げを阻止してトリガーレバー38の回動を規制し、ステム20の押し込みを妨げる。
【0035】
いま、この噴射器を使用するときは、図1および図2に示す状態から、容器10を持って指当て部37cに指を当て、ロック部材25をステム20の往復動方向まわりに任意の方向に回動し、指当て部37cから90度離れた位置にあるクリック突部37gのいずれか一方をクリック係合部36eにクリック感をもってはめ付け、ロック部材37をロック解除位置とする。
【0036】
その後、指掛け部38eに指を掛け、図8に示すようにトリガーレバー38を支軸39を中心として反時計方向に回して第1位置から第2位置へと回動すると、トリガーレバー38の係合凹部38dで押下部材33の係合突部33aを押し、図9に示すように押下部材33の突き当て突部33bがロック部材37の逃げ凹部37e内に入り込み、押下部材33を押し下げて、円筒部材32をともなってステム20を押し込み、ステムラバー24を弾性変形して貫通孔22aを開く。
【0037】
そして、容器10の内容物を噴射材の圧力により押し上げ、パイプ17内を通して小径部16内から大径部15内へと入れる。次いで、内容物吐出通路25を通して貫通孔22aからステム20の吐出通路23aに導き、その吐出通路23aを通して円筒部材32の流路32eに入れ、連通路33cを通して噴出口42aから外部に向けて噴射する。
【0038】
使用を止めるときは、指掛け部38eから手を離して押下部材33の押し込みを解除し、コイルスプリング18でステム20を押し上げてステムラバー24の変形を戻し、貫通孔22aを塞いで噴出口42aからの噴射を停止する。そして、指当て部37cに指を当ててロック部材37をステム20の往復動方向まわりに回動し、再び図1に示すロック位置として押下部材33の押し下げを阻止し、トリガーレバー38の回動を規制する。
【0039】
ところで、図示エアゾール噴射器では、押下部材33でストッパ部材50を支持する。ストッパ部材50は、樹脂材料を用いて一体成形でつくり、例えば図10に示すように、短筒部51と、その短筒部51の下部をその短筒部51の軸方向片側に向けて突出する弧状断面の突出部52と、短筒部51の上側に設けてその短筒部51の軸方向他側に向けて突出するサーフボード状の頂部53とで構成する。
【0040】
ストッパ部材50は、大きながたなく短筒部51に押下部材33の第2部分35を通し、下側から突出部52をあてがうようにして第2部分35にスライド可能に取り付け、第2部分35上で退避位置とストップ位置とに移動自在とする。そして、上述した図1ないし図9に示すように、ストッパ部材50を退避位置とした場合は、短筒部51の軸方向他側を押下部材33の第1部分34に当てて、頂部53を通過孔38aの端部に隙間なくはめ込む。そして、トリガーレバー38が第1位置にあるときは、図1に示すように、通過孔38aの一部をストッパ部材50で塞ぐとともに、トリガーレバー38の周面部38bとストッパ部材50の頂部53外面を面一とし、ストッパ部材50をトリガーレバー38と一体化して外観を良好とする。このとき、図8および図9に示すように、トリガーレバー38を第1位置から第2位置へと回動しても、上述したとおり第2位置から第1位置への復帰を妨げることはない。
【0041】
ところが、トリガーレバー38を第1位置から第2位置へと回動して後、図11および図12に示すようにストッパ部材50をスライドしてストップ位置としたときは、トリガーレバー38を回動することによりできた、押下部材33と通過孔38a孔縁との隙間55に突出部52を入れ、押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませ、それらの間で突出部52を挟み込んでトリガーレバー38の第1位置への復帰を阻止する。よって、廃棄するときは、トリガーレバー38を第2位置へと回動して後に、ストッパ部材50をストップ位置として突出部52を通過孔38aに入れて、押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませることにより、ノズル部材42の噴出口42aからの噴射剤の噴射状態を継続して容器10内の噴射剤を完全に抜くことができる。
【0042】
押下部材33でストッパ部材50を支持して、そのストッパ部材50を、退避位置とストップ位置とに移動自在とするのみであるので、全体が大型化して保管や使用に不便をきたすおそれはなく、またストッパ部材50が簡単に外れないようにすることも容易であり、取り扱いを簡単とすることができる。しかも、廃棄するときは、トリガーレバー38を回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材50をストップ位置へと移動して押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませ、トリガーレバー38が第1位置へと復帰することを阻止するだけでよいので、別途工具を準備したり、ステム20を押し続けたりする必要がなく、廃棄時のガス抜きを簡単に行うことができ、ストッパ部材50を単純な形状とすることが可能であり、コスト高となる心配もない。
【0043】
なお、図示例では、図4および図12に示すように、トリガーレバー38の通過孔38a位置に側面部38cの内面から突出してストッパ部材50の位置決め用突起56・57を設け、一方の位置決め用突起56でストッパ部材50が退避位置から容易に動かないように保持し、2つの位置決め用突起56・57でストッパ部材50をストップ位置から容易に動かないように保持するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明によるトリガー式エアゾール噴射器の上部外観斜視図である。
【図2】そのエアゾール噴射器を、不使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す側面図である。
【図3】そのエアゾール噴射器に備える、ガス抜き用ストッパ部材付きエアゾール噴射装置の縦断面図である。
【図4】その不使用状態においてエアゾール噴射器の部分縦断面図である。
【図5】そのエアゾール噴射装置で用いる押下部材の斜視図である。
【図6】そのエアゾール噴射装置で用いるロック部材の斜視図である。
【図7】(A)はそのロック部材の平面図、(B)はそのA−A線に沿う縦断面図である。
【図8】そのエアゾール噴射器を、使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す側面図である。
【図9】その使用状態におけるエアゾール噴射器の部分縦断面図である。
【図10】そのエアゾール噴射装置で用いるストッパ部材の斜視図である。
【図11】そのエアゾール噴射器におけるガス抜き状態の上部外観斜視図である。
【図12】そのガス抜き状態にあるエアゾール噴射器を、トリガーレバーを断面にして示した側面図である。
【図13】従来のエアゾール噴射器の一部を断面にして示した側面図である。
【図14】そのガス抜き状態を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
10 容器
12 ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置
33 押下部材
34 押下部材の第1部分
35 押下部材の第2部分
38 トリガーレバー
38a 通過孔
42 ノズル部材
42a 噴出口
50 ストッパ部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部に取り付け、使用時にトリガーレバーを回動して押下部材を押し下げ、その押下部材内を通して容器の内容物を噴射剤の圧力で外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置に関する。および、そのようなガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を容器の口部に取り付けた、殺虫用・薬用・化粧用・洗浄用・塗装用などのトリガー式エアゾール噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トリガー式エアゾール噴射器では、スプレー缶等の容器の口部にエアゾール噴射装置を取り付けて容器内に噴射剤とともに内容物を収納し、トリガーレバーを回動して押下部材を介してステムを押し込み、または押下部材であるステムを押し込むことにより、容器の内容物を噴射剤の圧力で外部へと噴射していた。
【0003】
ところで、この種の噴射器では、通常、噴射剤として可燃性のガスを充填することから、廃棄するとき、そのまま捨てると、廃棄物処理時に容器が爆発して清掃作業者が怪我をしたり、焼却炉が破損したりするおそれがあった。このため、廃棄するときには、あらかじめ容器に孔をあけたり、ステムを押し込み続けたりして容器内のガスを抜くことが行われている。
【0004】
ところが、容器に孔をあけるには、釘や千枚通しや金槌などの工具とか、市販の専用工具とかを準備しなければならない面倒があった。他方、ステムを押し込み続けるには、長時間にわたりステムに指を当てて押し続けなければならない面倒があり、容器内のガスを完全に抜くには指の疲れ等も覚悟しなければならなかった。
【0005】
このような点に鑑み、従来のエアゾール噴射器の中には、例えば図13に示すように、容器1の底部外周の巻き締め部2に椀状ガス抜き治具3の入口周縁3aをはめ付け、ガス抜き治具3を着脱自在に備えるものがある。そして、廃棄時には、容器1の口部に取り付けるエアゾール噴射装置4からキャップ5を取り外すとともに、容器1からガス抜き治具3を取り外して図14に示すように容器1の上に載せ、容器1のステム6まわりの巻き締め部7にガス抜き治具3のリブ8をはめ付け、ガス抜き治具3の止め板9でステム6を押し込んだ状態で保持し、容器1内の噴射剤を完全に抜くようにしていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−177786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このようなエアゾール噴射器では、容器1にガス抜き治具3を取り付けるから、全体が大型化して保管や使用に不便となったり、通常使用時にガス抜き治具3が外れ落ちるおそれがあったりして、取り扱いが面倒である問題があった。また、入口周縁3aやリブ8や止め板9などを備える複雑な形状のガス抜き治具3を備えなければならないから、コスト高となる問題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、そのような問題を解消し、取り扱いが面倒となったり、コスト高を招いたりすることなく、また工具を準備し、ステムを押し続けることなしに、簡単に廃棄時のガス抜きを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、請求項1ないし4に記載の発明は、スプレー缶等の容器に取り付け、使用時にトリガーレバーを第1位置から第2位置へと回動して、ステムそれ自身またはそれに取り付ける部材により構成する押下部材を押し下げ、容器の内容物を押下部材内を通して、例えばその押下部材に取り付けるノズル部材の噴出口から外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置において、押下部材でストッパ部材を支持し、そのストッパ部材を、退避位置とストップ位置とに移動自在とする、ことを特徴とする。退避位置では、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を妨げず、ストップ位置では、ストッパ部材を押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、第2位置としたトリガーレバーの第1位置への復帰を阻止する。
【0010】
押下部材は、例えば、押し下げ方向にのびる第1部分とそれと直交する方向にのびる第2部分とで構成し、ストッパ部材をその第2部分にスライド可能に設けて退避位置とストップ位置とに移動自在とする。このとき、例えば、押下部材の第2部分を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材をストップ位置としたとき、通過孔に入れて押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませる。また、押下部材の第2部分を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材を退避位置としてトリガーレバーが第1位置にあるとき、通過孔の一部をストッパ部材で塞ぐととともに、トリガーレバーとストッパ部材の外面を面一とする。
【0011】
そして、廃棄するときは、トリガーレバーを回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材をストップ位置へと移動して押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、トリガーレバーが第1位置へと復帰することを阻止する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、トリガー式エアゾール噴射器にあって、請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、押下部材でストッパ部材を支持して、そのストッパ部材を、退避位置とストップ位置とに移動自在とするのみであるので、全体が大型化して保管や使用に不便をきたすおそれはなく、またストッパ部材が簡単に外れないようにすることも容易であり、取り扱いを簡単とすることができる。しかも、廃棄するときは、トリガーレバーを回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材をストップ位置へと移動して押下部材とトリガーレバーとの間に入り込ませ、トリガーレバーが第1位置へと復帰することを阻止するだけでよいので、別途工具を準備したり、ステムを押し続けたりする必要がなく、廃棄時のガス抜きを簡単に行うことができ、ストッパ部材を単純な形状とすることが可能であり、コスト高となる心配もない。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、押下部材を通す通過孔をトリガーレバーにあけ、ストッパ部材を退避位置としてトリガーレバーが第1位置にあるとき、通過孔の一部をストッパ部材で塞ぐととともに、トリガーレバーとストッパ部材の外面を面一とするので、トリガーレバーが通常の第1位置にあるとき、ストッパ部材をトリガーレバーと一体化して外観を良好とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、トリガー式エアゾール噴射器にあって、請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備えるので、取り扱いが面倒となったり、コスト高を招いたりすることなく、工具を準備したり、ステムを押し続けたりすることなしに、簡単に廃棄時のガス抜きを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明によるトリガー式エアゾール噴射器の上部を斜め上から見て示す。図2には、その噴射器を、不使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す。
【0017】
図示トリガー式エアゾール噴射器では、アルミニウム・スチール等の金属製トリガー缶を容器10として、その容器10の口部に取り付けてガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴出装置12を備える。そして、容器10内に、殺虫剤・薬液・化粧液・洗剤・洗浄液・塗料などの内容物を噴射剤とともに収納する。内容物は、噴射剤であるガス中に溶解していてもよいし、ガスとは分離した状態で容器10内に存在するようにしてもよい。
【0018】
図3には、そのガス抜き用ストッパ部材付きエアゾール噴射装置12の縦断面を示す。この図3に示すように、エアゾール噴射装置12には、中段に段部13を有する縦筒状のハウジング14を備える。ハウジング14には、段部13の上に大径部15を、下に小径部16を設け、それらの大径部15内と小径部16内とを連通する。
【0019】
小径部16には、それをパイプ17の上端部内に圧入してパイプ17を取り付ける。パイプ17は、このエアゾール噴射装置12を容器10の口部に取り付けたとき、容器10の底部へと向けてのばす。そして、噴射剤の圧力で内容物を押し上げ、パイプ17内を通して小径部16内から大径部15内へと入れる。
【0020】
大径部15は、内周面に複数の縦溝15aを有し、内部に段部13上に載せてコイルスプリング18を設ける。そして、そのコイルスプリング18上にステム20を乗せる。ステム20には、下部にヘッド部21を設け、そのヘッド部21の上に首部22を設け、上端部に円筒部材取付部23を設ける。
【0021】
首部22には、外周面から中心へと径方向に貫通する貫通孔22aをあける。円筒部材取付部23には、中心に吐出通路23aをあけ、貫通孔22aと連通している。
【0022】
そして、首部22に、弾性部材である環板状のステムラバー(バルブ)24を取り付け、ヘッド部21を大径部15内に入れてコイルスプリング18上に乗せる。これにより、縦溝15aとともに、大径部15の内周面とヘッド部21の外周面との隙間で内容物吐出通路25を形成して、ステム20をハウジング14内に出し入れ自在に収納し、ステムラバー24を大径部15上にはめ付ける。
【0023】
その後、マウンテンキャップ26の中心孔26aにステム20を通し、ステムラバー24を圧縮するとともに、ハウジング14の上部に抱き付かせてマウンテンキャップ26を取り付ける。マウンテンキャップ26は、外周縁に、逆U字型に湾曲する巻き締め部26bを形成し、その巻き締め部26bを容器10の口部周縁にガスケットラバー27を介して図4に示すようにクリンプして巻き締め、ステム20を上向きに突出して容器10の口部にこのエアゾール噴射装置12を取り付ける。
【0024】
図4には、エアゾール式噴射器の縦断面を示す。この図4から判るとおり、容器10の口部を被って容器10にカバー部材28を取り付ける。カバー部材30には、頂部30aから上向きに円筒部30bを突出する一方、下向きに順次長くのばして内筒部30c、中筒部30d、外筒部30eを設ける。
【0025】
内筒部30cの先端は、巻き締め部26b内に入り込んでそれに内側から軽くあてがうようにする。中筒部30dの先端は、巻き締め部26bの顎部に外側から掛け止めてカバー部材30が容器10から外れないようにする。外筒部30eの先端は、容器10の肩部外周までのばして容器10の外形と連続性を持たせ、外観上容器10と一体感を保持し得るようにしている。
【0026】
そして、ステム20の円筒部材取付部23に円筒部材32のステム嵌合部32aをはめ付ける。円筒部材32は、上から順に、細長い小径筒部32bと中径筒部32cと大径筒部32dとを設け、大径筒部32d内に上述のステム嵌合部32aを形成する。小径筒部32bと中径筒部32cは、押下部材33の第1部分34に挿入する。
【0027】
図5には、押下部材33を斜め上から見て示す。この図5から判るとおり、押下部材33は、エルボ状にほぼ90度に折り曲げて、押し下げ方向にのびる基端側の第1部分34と、それと直交する水平方向にのびる先端側の第2部分35とで構成する。そして、第1部分34は、一重パイプ状で、上部両側に、円形の係合突部33aと、それから下向きにのびる細長リブ状の突き当て突部33bを設ける。
【0028】
第2部分35は、二重パイプ状で、外筒部とそれよりやや突出する内筒部とからなり、図4に示すようにそれらの間にノズルホルダ40の円筒基端40a側をはめ付ける。ノズルホルダ40には、先端側にノズル部材42を取り付け、そのノズル部材42に設ける噴出口42aを、第2部分35の内筒部内の吐出流路33cに連通する。
【0029】
そして、図4に示すように、円筒部材32の大径筒部32dと押下部材33の第1部分34のまわりに止めキャップ36を取り付ける。止めキャップ36は、キャップ部36aと、その頂部から同心にて上向きに突出する筒部36bと、キャップ部36aの肩部から斜め上向きにのびる支柱部36cとからなる。そして、キャップ部36aをカバー部材30の円筒部30bのまわりに被せるようにはめ付ける。止めキャップ36上には、ロック部材37を押下部材33の第1部分34まわりに回動自在に取り付ける。
【0030】
ロック部材37は、図6ならびに図7(A)および(B)からも判るとおり、止めキャップ36の筒部36bにはめ付けるスカート部37aと、そのスカート部37a上に同心に設ける円筒部37bと、その円筒部37b外周から径方向にのびる指当て部37cとからなる。
【0031】
円筒部37bには、内周面上縁に段部37dを形成するとともに、その段部37dから下向きに縦溝状に逃げ凹部37eを180度の間隔をあけて2つのばし、入口にはテーパ37fを設けている。また、外周面の下縁には、指当て部37cと90度および180度の間隔でクリック突部37gを3つ設ける。そして、図4に示すように、そのうちの1つのクリック突部37gをクリック係合部36eにクリック感をもって弾性的にはめ付け、ロック部材37の回動位置をロック位置とロック解除位置とに位置決めする。
【0032】
他方、止めキャップ36の支柱部36cは、先端にトリガーレバー38の基端を取り付けて図示第1位置から支軸39を中心として第2位置へと回動自在とする。トリガーレバー38は、直角に折れ曲がり、その曲げ部に、押下部材33の第2部分35を通す通過孔38aを有する周面部38bと、その両側に対向するように設ける側面部38cとからなる。側面部38cの内面には、下向きに係合凹部38dを形成する。
【0033】
この例のトリガーレバー38では、指掛け部38eを長くのばし、例えば看護師が指掛け部38eをポケットやベルトなどに引っ掛けて持ち運びしやすいようにしたり、清掃員が指掛け部38eを清掃ワゴンのフレームに引っ掛けて持ち運びしやすいようにしたりする。そして、トリガーレバー38の係合凹部38dを、押下部材33の係合突部33aに係合する。
【0034】
そして、不使用時は、ロック部材37の指当て部37cを図1および図2に示すようにトリガーレバー38の指掛け部38e側に向け、反対側のクリック突部37gを図4に示すようにクリック係合部36eにクリック感をもってはめ付け、ロック部材37をロック位置とする。すると、このとき指掛け部38eに指を掛け、トリガーレバー38を回動しようとしても、押下部材33の突き当て突部33bがロック部材37の段部37dに突き当たり、押下部材33の押し下げを阻止してトリガーレバー38の回動を規制し、ステム20の押し込みを妨げる。
【0035】
いま、この噴射器を使用するときは、図1および図2に示す状態から、容器10を持って指当て部37cに指を当て、ロック部材25をステム20の往復動方向まわりに任意の方向に回動し、指当て部37cから90度離れた位置にあるクリック突部37gのいずれか一方をクリック係合部36eにクリック感をもってはめ付け、ロック部材37をロック解除位置とする。
【0036】
その後、指掛け部38eに指を掛け、図8に示すようにトリガーレバー38を支軸39を中心として反時計方向に回して第1位置から第2位置へと回動すると、トリガーレバー38の係合凹部38dで押下部材33の係合突部33aを押し、図9に示すように押下部材33の突き当て突部33bがロック部材37の逃げ凹部37e内に入り込み、押下部材33を押し下げて、円筒部材32をともなってステム20を押し込み、ステムラバー24を弾性変形して貫通孔22aを開く。
【0037】
そして、容器10の内容物を噴射材の圧力により押し上げ、パイプ17内を通して小径部16内から大径部15内へと入れる。次いで、内容物吐出通路25を通して貫通孔22aからステム20の吐出通路23aに導き、その吐出通路23aを通して円筒部材32の流路32eに入れ、連通路33cを通して噴出口42aから外部に向けて噴射する。
【0038】
使用を止めるときは、指掛け部38eから手を離して押下部材33の押し込みを解除し、コイルスプリング18でステム20を押し上げてステムラバー24の変形を戻し、貫通孔22aを塞いで噴出口42aからの噴射を停止する。そして、指当て部37cに指を当ててロック部材37をステム20の往復動方向まわりに回動し、再び図1に示すロック位置として押下部材33の押し下げを阻止し、トリガーレバー38の回動を規制する。
【0039】
ところで、図示エアゾール噴射器では、押下部材33でストッパ部材50を支持する。ストッパ部材50は、樹脂材料を用いて一体成形でつくり、例えば図10に示すように、短筒部51と、その短筒部51の下部をその短筒部51の軸方向片側に向けて突出する弧状断面の突出部52と、短筒部51の上側に設けてその短筒部51の軸方向他側に向けて突出するサーフボード状の頂部53とで構成する。
【0040】
ストッパ部材50は、大きながたなく短筒部51に押下部材33の第2部分35を通し、下側から突出部52をあてがうようにして第2部分35にスライド可能に取り付け、第2部分35上で退避位置とストップ位置とに移動自在とする。そして、上述した図1ないし図9に示すように、ストッパ部材50を退避位置とした場合は、短筒部51の軸方向他側を押下部材33の第1部分34に当てて、頂部53を通過孔38aの端部に隙間なくはめ込む。そして、トリガーレバー38が第1位置にあるときは、図1に示すように、通過孔38aの一部をストッパ部材50で塞ぐとともに、トリガーレバー38の周面部38bとストッパ部材50の頂部53外面を面一とし、ストッパ部材50をトリガーレバー38と一体化して外観を良好とする。このとき、図8および図9に示すように、トリガーレバー38を第1位置から第2位置へと回動しても、上述したとおり第2位置から第1位置への復帰を妨げることはない。
【0041】
ところが、トリガーレバー38を第1位置から第2位置へと回動して後、図11および図12に示すようにストッパ部材50をスライドしてストップ位置としたときは、トリガーレバー38を回動することによりできた、押下部材33と通過孔38a孔縁との隙間55に突出部52を入れ、押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませ、それらの間で突出部52を挟み込んでトリガーレバー38の第1位置への復帰を阻止する。よって、廃棄するときは、トリガーレバー38を第2位置へと回動して後に、ストッパ部材50をストップ位置として突出部52を通過孔38aに入れて、押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませることにより、ノズル部材42の噴出口42aからの噴射剤の噴射状態を継続して容器10内の噴射剤を完全に抜くことができる。
【0042】
押下部材33でストッパ部材50を支持して、そのストッパ部材50を、退避位置とストップ位置とに移動自在とするのみであるので、全体が大型化して保管や使用に不便をきたすおそれはなく、またストッパ部材50が簡単に外れないようにすることも容易であり、取り扱いを簡単とすることができる。しかも、廃棄するときは、トリガーレバー38を回動して第2位置とした状態で、ストッパ部材50をストップ位置へと移動して押下部材33とトリガーレバー38との間に入り込ませ、トリガーレバー38が第1位置へと復帰することを阻止するだけでよいので、別途工具を準備したり、ステム20を押し続けたりする必要がなく、廃棄時のガス抜きを簡単に行うことができ、ストッパ部材50を単純な形状とすることが可能であり、コスト高となる心配もない。
【0043】
なお、図示例では、図4および図12に示すように、トリガーレバー38の通過孔38a位置に側面部38cの内面から突出してストッパ部材50の位置決め用突起56・57を設け、一方の位置決め用突起56でストッパ部材50が退避位置から容易に動かないように保持し、2つの位置決め用突起56・57でストッパ部材50をストップ位置から容易に動かないように保持するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明によるトリガー式エアゾール噴射器の上部外観斜視図である。
【図2】そのエアゾール噴射器を、不使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す側面図である。
【図3】そのエアゾール噴射器に備える、ガス抜き用ストッパ部材付きエアゾール噴射装置の縦断面図である。
【図4】その不使用状態においてエアゾール噴射器の部分縦断面図である。
【図5】そのエアゾール噴射装置で用いる押下部材の斜視図である。
【図6】そのエアゾール噴射装置で用いるロック部材の斜視図である。
【図7】(A)はそのロック部材の平面図、(B)はそのA−A線に沿う縦断面図である。
【図8】そのエアゾール噴射器を、使用状態においてトリガーレバーを断面にして示す側面図である。
【図9】その使用状態におけるエアゾール噴射器の部分縦断面図である。
【図10】そのエアゾール噴射装置で用いるストッパ部材の斜視図である。
【図11】そのエアゾール噴射器におけるガス抜き状態の上部外観斜視図である。
【図12】そのガス抜き状態にあるエアゾール噴射器を、トリガーレバーを断面にして示した側面図である。
【図13】従来のエアゾール噴射器の一部を断面にして示した側面図である。
【図14】そのガス抜き状態を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
10 容器
12 ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置
33 押下部材
34 押下部材の第1部分
35 押下部材の第2部分
38 トリガーレバー
38a 通過孔
42 ノズル部材
42a 噴出口
50 ストッパ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付け、使用時にトリガーレバーを第1位置から第2位置へと回動して押下部材を押し下げ、前記容器の内容物を前記押下部材内を通して外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置において、
前記押下部材でストッパ部材を支持し、そのストッパ部材を、前記第2位置とした前記トリガーレバーの前記第1位置への復帰を妨げない退避位置と、前記押下部材と前記トリガーレバーとの間に入り込んで、前記第2位置とした前記トリガーレバーの前記第1位置への復帰を阻止するストップ位置とに移動自在とすることを特徴とする、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項2】
前記押下部材を、押し下げ方向にのびる第1部分とそれと直交する方向にのびる第2部分とで構成し、前記ストッパ部材をその第2部分にスライド可能に設けて前記退避位置と前記ストップ位置とに移動自在とすることを特徴とする、請求項1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項3】
前記押下部材の第2部分を通す通過孔を前記トリガーレバーにあけ、前記ストッパ部材を前記ストップ位置としたとき、前記通過孔に入れて前記押下部材と前記トリガーレバーとの間に入り込ませることを特徴とする、請求項2に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項4】
前記トリガーレバーに前記押下部材の第2部分を通す通過孔をあけ、前記ストッパ部材を前記退避位置として前記トリガーレバーが前記第1位置にあるとき、前記通過孔の一部を前記ストッパ部材で塞ぐととともに、前記トリガーレバーと前記ストッパ部材の外面を面一とすることを特徴とする、請求項2に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備えることを特徴とする、トリガー式エアゾール噴射器。
【請求項1】
容器に取り付け、使用時にトリガーレバーを第1位置から第2位置へと回動して押下部材を押し下げ、前記容器の内容物を前記押下部材内を通して外部へと噴射する、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置において、
前記押下部材でストッパ部材を支持し、そのストッパ部材を、前記第2位置とした前記トリガーレバーの前記第1位置への復帰を妨げない退避位置と、前記押下部材と前記トリガーレバーとの間に入り込んで、前記第2位置とした前記トリガーレバーの前記第1位置への復帰を阻止するストップ位置とに移動自在とすることを特徴とする、ガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項2】
前記押下部材を、押し下げ方向にのびる第1部分とそれと直交する方向にのびる第2部分とで構成し、前記ストッパ部材をその第2部分にスライド可能に設けて前記退避位置と前記ストップ位置とに移動自在とすることを特徴とする、請求項1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項3】
前記押下部材の第2部分を通す通過孔を前記トリガーレバーにあけ、前記ストッパ部材を前記ストップ位置としたとき、前記通過孔に入れて前記押下部材と前記トリガーレバーとの間に入り込ませることを特徴とする、請求項2に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項4】
前記トリガーレバーに前記押下部材の第2部分を通す通過孔をあけ、前記ストッパ部材を前記退避位置として前記トリガーレバーが前記第1位置にあるとき、前記通過孔の一部を前記ストッパ部材で塞ぐととともに、前記トリガーレバーと前記ストッパ部材の外面を面一とすることを特徴とする、請求項2に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載のガス抜き用ストッパ部材付きトリガー式エアゾール噴射装置を備えることを特徴とする、トリガー式エアゾール噴射器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−44705(P2006−44705A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225605(P2004−225605)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】
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