説明

ガス栓

【課題】せん(20)及び操作つまみ(30)に対してそれぞれ相対回動阻止状態に連結されるドライブシャフト(31)がガス栓本体(10)の筒部(12)内に収容され、筒部(12)には、ドライブシャフト(31)の横孔部(40)を介して、スプリングピン(1)が貫通する一対の透孔(2a)(2b)が形成され、横孔部(40)の周方向の各面とスプリングピン(1)とで、せん(20)の回動規制部が構成されているガス栓において、筒部(12)と操作つまみ(30)との隙間や、透孔(2a)(2b)からガス栓内部に浸入する水滴や洗剤等が、ガス栓本体の摺動部(22)に到達しないようにすること。
【解決手段】筒部(12)の透孔(2a)(2b)よりも下方における筒部(12)の内周面とドライブシャフト(31)の外周面との間に、両者間の隙間よりも幅広の環状空間部(S)を設け、環状空間部(S)に防水用グリス(51)を充填させたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓、特に、操作つまみによるせんの回動角度を規制する回動規制部が設けられた形式のガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
この種ガス栓として、特許第3025841号公報に開示のものを提案した。この先登録例のものでは、図7のガス栓の分解斜視図に示すように、ガス栓本体(10)と、ガス栓本体(10)のせん収容部(11)内に回動自在に収容されるせん(20)と、前記せん(20)に、コイルバネ(4)を介して相対回動阻止状態に連結されるドライブシャフト(31)と、前記ドライブシャフト(31)に相対回動阻止状態に連結される操作つまみ(30)とから構成されている。
【0003】
せん収容部(11)の上方には筒部(12)が連設されており、筒部(12)を構成している周壁の直径線上の両端には、ドライブシャフト(31)内を挿通するスプリングピン(1)を貫通させるための一対の透孔(2a)(2b)が形成されている。
【0004】
ドライブシャフト(31)の上面には、操作つまみ(30)の下面に設けられた角孔部(図示せず)に内嵌可能な略直方体状の角軸部(3)がその直径線上に突設されており、角軸部(3)の中央部には、図8に示すように、挿通孔(43)とその下方にナット部(44)が連設されている。操作つまみ(30)とドライブシャフト(31)とは、ねじ(34)をナット部(44)に螺合させることによって、相対回動阻止状態に連結される。
【0005】
又、ドライブシャフト(31)には矩形孔部(32)が下方に開放するように形成されてあり、これに、せん(20)の上面に突設されている略直方体状の操作軸部(24)を内嵌させることにより、せん(30)とドライブシャフト(31)とも相対回動阻止状態に連結される。
尚、操作軸部(24)の基端部を囲むように、コイルバネ(4)の下端を受ける環状凹部(25)が形成されてあり、環状凹部(25)に対向するドライブシャフト(31)の下面には、コイルバネ(4)の上端を受ける環状溝部(33)が形成されている。
【0006】
ドライブシャフト(31)の中間部分には、図9に示すように、中心に対して対称な位置に、断面略台形状の第1、第2柱部(41)(42)が形成されている。これら第1、第2柱部(41)(42)の間に横孔部(40)が側方に開放するように形成されており、この横孔部(40)にスプリングピン(1)が貫通する。
【0007】
第1、第2柱部(41)(42)の両側面は、それぞれ、回動阻止面(41a)(41b)(42a)(42b)として機能し、操作つまみ(30)の回動に伴って、ドライブシャフト(31)が回動し、回動阻止面(41a)(41b)(42a)(42b)のいずれかの面が、筒部(12)に貫通固定されているスプリングピン(1)に当接すると、それ以上の回動が阻止される。尚、第1柱部(41)の回動阻止面(41a)と第2柱部(42)の回動阻止面(42b)、第1柱部(41)の回動阻止面(41b)と第2柱部(42)の回動阻止面(42a)とはそれぞれ90度の間隔をおいて設けられており、ドライブシャフト(1)は90度の範囲内で回動可能となる。すなわち、第1、第2柱部(41)(42)及びスプリングピン(1)がせんの回動規制部として機能する。
【0008】
ドライブシャフト(31)は、操作つまみ(30)及びせん(20)に対して回動阻止状態に連結された構成となっているから、操作つまみ(30)を回動させると、ドライブシャフト(31)を介して、せん(20)がせん収容部(11)内で90度の範囲内において回動可能となり、せん(20)を貫通する通過孔(21)がせん収容部(11)に連通しているガス流路に連通する位置に達した時にガス栓は開状態となり、この状態から90度回動させて、ガス流路がせん(20)によって閉塞された時がガス栓の閉状態となる。
【特許文献1】特許第3025841号公報
【特許文献2】特開2002−39403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような、せん(20)の回動規制のために、スプリングピン(1)とドライブシャフト(31)からなる回動規制部が採用されているガス栓を、屋外や湿気の多い厨房や浴室等で使用すると、雨水や厨房や浴室内の水滴や洗剤等が、前記ガス栓本体(10)の筒部(12)と操作つまみ(30)との隙間から、筒部(12)に開けた透孔(2a)(2b)とそれらを貫通しているスプリングピン(1)との隙間を経て、ガス栓本体(10)内に浸入することがある。
【0010】
水滴や洗剤等が、ガス栓本体(10)内に浸入し、せん収容部(11)とせん(20)との摺動部に至った場合には、摺動部にさびを発生させてしまう虞がある。又、摺動部に潤滑・シール用のグリスが介在されている場合では、洗剤の付着によって前記グリスが劣化したり、摺動部の上端に固着したりして、操作つまみ(30)の操作性が悪くなったり、操作できなくなったりする不都合がある。
【0011】
ガス栓本体(10)内への水や洗剤等の浸入を防止するために、特開2002−39403号公報に示すように、筒部(12)の上端開放部を全域にわたって被覆するキャップを設けることが考えられる。しかしながら、浴室のような、湿度の高い環境化では、キャップと筒部(12)の上方開放端との間は完全に密封されているわけではないので、ガス栓本体(30)の内部も浴室と同じ湿度になる。この場合、ガス栓本体(30)内のグリスの劣化や、摺動部の錆びの発生を阻止することができず、ガス栓の操作性の悪化を招来してしまう。
【0012】
本発明は、『ガス栓本体の一方に開放し且つガス流路に連通するせん収容部内に、前記ガス流路を開閉するせんが摺動部を介して回動自在に収容されており、前記せん収容部の開放端に連続する筒部に前記せんを回動操作する操作つまみが回動自在に外嵌する構成のガス栓であって、
前記せん及び前記操作つまみに対してそれぞれ相対回動阻止状態に連結されるドライブシャフトが前記筒部内に収容され、
前記筒部の直径線上の両端には、前記ドライブシャフトに形成されている横孔部を介して、スプリングピンが貫通する一対の透孔が形成され、
前記横孔部の周方向の各面とこれに当接する前記スプリングピンとによって、前記せんの回動角度を規制する回動規制部が構成されているガス栓』において、前記筒部と操作つまみとの隙間から、筒部に設けた透孔とスプリングピンとの隙間等を経てガス栓内部に浸入する水滴や洗剤等が、ガス栓本体の摺動部に到達しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)請求項1に係る発明のガス栓は、『前記筒部の前記透孔よりも下方における前記筒部の内周面と前記ドライブシャフトの外周面との間に、両者間の隙間よりも幅広の環状空間部を設け、前記環状空間部に防水用グリスを充填させた』ことである。
この発明のガス栓は、せん収容部内にせんが摺動部を介して収容されており、せん収容部の開放端に連設されている筒部には、せんに相対回動阻止状態に連結されるドライブシャフトが、前記筒部に形成された透孔を挿通するスプリングピンを介して収容されている。又、前記筒部の上方開放端には、前記ドライブシャフトに相対回動阻止状態に連結される操作つまみが外嵌している。操作つまみを回動操作すると、せんが、ドライブシャフトを介して同方向に回動可能となる。この種のガス栓の、前記筒部に設けた透孔よりも下方(せん収容部側)における筒部とドライブシャフトとの間に環状空間部を設け、この環状空間部に防水用グリスを充填させる。これにより、ガス栓本体内における環状空間部よりも下方域は、ガス栓の外部と完全に遮断され、密閉状態に維持される。従って、水滴や洗剤が、筒部と操作つまみとの隙間から筒部の上方開放端や透孔等を経て筒部内に浸入しても、その下方の環状空間部には防水用グリスが充填されているから、環状空間部よりも下方への水滴や洗剤等の浸入は阻止され、それより下方に位置するせんの摺動部に水滴や洗剤等が到達することはない。尚、前記水滴や洗剤等の水分は、環状空間部よりも上方域に溜まったあと、自然に蒸発し、前記透孔や隙間等から外部へ排出されていく。
又、防水用グリスは、特別に設けられた環状空間部内に充填させているため、環状空間部から他所へ流出することはない。
【0014】
(2)請求項2に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のガス栓において、『前記環状空間部は、前記ドライブシャフトの外周面に周方向に沿って形成される環状外溝と、前記筒部の内周面とで囲まれる空間である』ものでは、環状外溝に防水用グリスを塗布した後、ドライブシャフトを筒部内に収容させればよい。
【0015】
(3)請求項3に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のガス栓において、『前記環状空間部は、前記筒部の内周面に周方向に沿って形成される環状内溝と、前記ドライブシャフトの外周面とで囲まれる空間である』ものでは、筒部内周面の環状内溝に防水用グリスを塗布した後、ドライブシャフトを筒部内に収容させればよい。
【0016】
(4)請求項4に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のガス栓において、『前記環状空間部は、前記ドライブシャフトの外周面に周方向に沿って形成される環状外溝と、前記環状外溝に対向する前記筒部の内周面の所定箇所に周方向に沿って形成される環状内溝とで囲まれる空間である』ものでは、ドライブシャフトの外周面に形成される環状外溝と、筒部の内周面に形成される環状内溝とは対向する位置にあり、これら環状外溝と環状内溝とで囲まれる範囲が環状空間部となる。このものでは、環状外溝と環状内溝の両方に防水用グリスを充填させる。
【0017】
(5)請求項5に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のガス栓において、『前記ドライブシャフトの外周面又は前記筒部の内周面のどちらか一方には周方向に沿って下向き段部を形成し、他方には周方向に沿って上向き段部を形成し、前記環状空間部は、前記下向き段部と前記上向き段部との間に形成される』ものでは、例えば、前記ドライブシャフトの外周面には、周方向に沿った所定位置から下方へ向かって下向き段部を構成すると共に、筒部の内周面には、周方向に沿った所定位置から上方へ向かって上向き段部を構成すれば良く、ドライブシャフトを筒部内に収容した際に、前記下抜き段部と上向き段部との間に形成される空間を環状空間部として、防水用グリスを充填させる。
【0018】
(6)請求項6に係る発明のガス栓は、請求項1から5のいずれかに記載のガス栓において、『前記せん収容部の上端の段部と前記ドライブシャフトの下面との間に下空間部が形成され、前記下空間部に、前記摺動部の潤滑・シール用のグリスが充填されている』ものでは、前記下空間部が、潤滑・シール用のグリスを溜めておくグリス溜め部として機能し、潤滑・シール用グリスを充填しておくことにより、前記せんの回動操作の潤滑性及び摺動部におけるシール性が確保される。
この下空間部の上方には、環状空間部が設けられており、防水用グリスが充填されているから、下空間部内は防水用グリスによって気密状態に閉塞される。よって、潤滑・シール用グリスが洗剤等の混入で劣化したり、基油成分が蒸発したりすることがない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、筒部を貫通する透孔よりも下方に、防水用グリスを充填させた環状空間部を設けて、ガス栓本体内において環状空間部よりも下方域を確実に密閉状態に維持できるようにしたから、操作つまみと筒部との隙間や前記透孔等からガス栓本体の筒部内に浸入する水滴や洗剤等が、環状空間部よりも下方に浸入することがない。よって、環状空間部よりも下方に位置するせん収容部とせんとの摺動部の防水・防錆が確実となり、ガス栓の操作性の悪化を防止でき、ガス栓の耐久性が向上することから、厨房、台所、浴室等、高湿度の環境下においてもガス栓を長期にわたって使用することができる。
又、防水用グリスは環状空間部に収容されて、不用意に流出する不都合を防止しているから、防水用グリスを必要以上に充填することがなく、経済的である。
【0020】
請求項2から請求項4に係る発明によれば、環状空間部の形成が容易で且つ防水用グリスの塗布が容易であるから、確実に且つ容易に環状空間部に防水用グリスを充填させることができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、請求項1から請求項4に係る発明の効果と同様な効果が期待できる上に、下向き段部と上向き段部の形成位置が、上下方向に多少ずれていても、環状空間部の形成には支障がないから、ガス栓本体及びドライブシャフトの製造が容易となる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、上記各効果と同様に、摺動部の防水・防錆効果が期待できる上に、環状空間部の下方で且つせん収容部の上端とドライブシャフトの下面との間に形成される下空間部に、潤滑・シール用のグリスを充填することにより、前記せんの回動操作の潤滑性及び摺動部におけるシール性が向上する。さらに、下空間部はその上方に設けられている防水用グリスによって密閉されているから、ガス栓を取り巻く温度や湿度等の環境が変化しても、下空間部内の前記潤滑・シール用グリスの基油成分が蒸発することがなく、潤滑・シール用グリスの防水機能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本願発明の実施の形態におけるガス栓の組立て完成状態での断面図であり、図2は、その要部拡大断面図である。
【0024】
この実施の形態のガス栓は、ガス栓本体(10)の上方に開放するせん収容部(11)の左右に、ガス流入路(13)とガス流出路(14)とが同軸上に連通する構成となっており、せん収容部(11)内には、これらガス流入路(13)とガス流出路(14)を連通或は遮断させるための逆円錐台形状のせん(20)が回動自在に収容される。
【0025】
せん収容部(11)の内周面及びせん(20)の外周面は、相互に摺動可能な摺動部(22)を構成している。
せん収容部(11)の上方開放端からは筒部(12)が連設されてあり、筒部(12)の基端部の直径は、せん収容部(11)の開放端部の直径よりも大径に形成されて、筒部(12)とせん収容部(11)との境界部分に、段部(15)を設けている。又、筒部(12)を構成している周壁の中心に対して対向する各位置には、筒状のスプリングピン(1)の両端が貫通する透孔(2a)(2b)が形成されている。尚、スプリングピン(1)がガス流入路(13)及びガス流出路(14)に平行に位置するように、透孔(2a)(2b)の形成位置は設定されている。
【0026】
せん(20)には、ガス流入路(13)及びガス流出路(14)に連通するガス通過孔(21)が貫通しており、又、せん(20)の上面中央には、略直方体状の操作軸部(24)がその長辺が前記通過孔(21)と平行となるように突設されている。そして、その基端部を囲むように、コイルバネ(4)を受けるための環状溝部(25)が形成されている。
【0027】
操作軸部(24)は、後述するドライブシャフト(31)の下面に開放している矩形孔部(32)にちょうど内嵌する大きさに構成されており、操作軸部(24)を矩形孔部(32)に内嵌させることにより、せん(20)とドライブシャフト(31)とは相対回動阻止状態に連結される。
【0028】
ドライブシャフト(31)は、上記した要領で、せん(20)に連結された状態で筒部(12)内に収容される略円柱体であり、スプリングピン(1)と組み合わせることで、せん(20)の回動角度を規制する回動規制部を構成するものである。その上面には、操作つまみ(30)の中央下面に開放している矩形凹部(38)に内嵌可能な略直方体状の角軸部(3)がその直径線上に突設されており、角軸部(3)を矩形凹部(38)に嵌め込むことにより、操作つまみ(30)とドライブシャフト(31)とは相対回動阻止状態に連結される。
【0029】
前記角軸部(3)の中央部には、雌ねじ(3a)が形成されており、操作つまみ(30)の中央部に挿通されるねじ(34)が螺合する。
ドライブシャフト(31)には、従来例において、図8及び図9に示したように、中心に対して対称な位置に、断面略台形状の第1、第2柱部(41)(42)が形成されており、これら第1、第2柱部(41)(42)を除いた範囲に、スプリングピン(1)が挿通する横孔部(40)が側方に開放するように形成されている。
【0030】
第1、第2柱部(41)(42)とスプリングピン(1)との関係は、上述した従来例のとおりであり、第1、第2柱部(41)(42)各々の一方の回動阻止面(41a)(42a)がスプリングピン(1)に当接する第1の姿勢から、他方の回動阻止面(41b)(42b)がスプリングピン(1)に当接する第2の姿勢までの90度の範囲内でドライブシャフト(31)の回動可能となり、それに伴って、操作つまみ(30)及びせん(20)の回動も可能となる。
【0031】
せん(20)の環状溝部(25)に対向するドライブシャフト(31)の下面には、環状溝部(25)と同様な環状溝部(33)が形成されており、環状溝部(25)(33)間に、コイルバネ(4)が圧縮状態で収容される。
【0032】
コイルバネ(4)の付勢力によって、せん(20)とドライブシャフト(31)とは相互に離反する方向に付勢されるが、ドライブシャフト(31)がスプリングピン(1)によってガス栓本体(10)の筒部(12)に固定されていることにより、せん(20)は、前記付勢力によって、せん収容部(11)の底側に押圧状態に収容されることとなり、せん(20)の収容姿勢が安定する。
【0033】
又、この実施の形態のガス栓に採用されるドライブシャフト(31)の外周面には、上下2本の環状外溝(36)が周方向に沿って形成されてあり、これを筒部(12)内に収容することにより、環状外溝(36)と筒部(12)の内周面との間に、環状空間部(S)を形成している。この環状空間部(S)内に、防水用グリス(51)が充填される。
【0034】
ガス栓の組立てに際しては、ガス栓本体(10)のせん収容部(11)にせん(20)を収容し、せん(20)とせん収容部(11)との摺動部(22)の上端部から段部(15)にかけて、潤滑・シール用のグリス(50)を塗布する。すなわち、摺動部(22)の上端部から段部(15)に至る範囲が、グリス溜め部として機能する。
【0035】
他方、ドライブシャフト(31)の環状外溝(36)には、防水用グリス(51)を充填させておく。
そして、環状溝部(25)内にコイルバネ(4)を配設した後、コイルバネ(4)の上端部を、ドライブシャフト(31)の下面の環状溝部(33)に対応させ、せん(20)の操作軸部(24)をドライブシャフト(31)の矩形孔部(32)に嵌合させながら、ドライブシャフト(31)を筒部(12)内に収容する。
【0036】
これにより、ドライブシャフト(31)の環状外溝(36)と筒部(12)の内周面(16)との間に形成される環状空間部(S)には、防水用グリス(51)が充填される態様となる。よって、ガス栓本体(10)内における環状空間部(S)より下方域は、防水用グリス(51)によって気密状態に閉塞されることとなる。
【0037】
次に、コイルバネ(4)の付勢力に抗して、ドライブシャフト(31)を下方に押えながら、角軸部(3)を持って回動させ、筒部(12)の透孔(2a)(2b)に、ドライブシャフト(31)の横孔部(40)を対応させ、一方の透孔(2a)から、スプリングピン(1)を差し込み、ドライブシャフト(31)の横孔部(40)を通過させて、他方の透孔(2b)に挿通させる。
【0038】
これにより、ドライブシャフト(31)は、ガス栓本体(10)に対して抜止め状態となる。
この状態において、筒部(12)の対向壁に貫通させたスプリングピン(1)に対して、ドライブシャフト(31)は、90度の範囲内で回動可能となる。
【0039】
そして、ドライブシャフト(31)の上面の角軸部(3)を操作つまみ(30)の矩形凹部(38)に嵌合するように操作つまみ(30)を被せた後、操作つまみ(30)の中央にねじ(34)を挿通させ、ドライブシャフト(31)の雌ねじ(3a)に螺合させる。これで、ガス栓の組み立てが完了する。
【0040】
筒部(12)の外周面は、操作つまみ(30)の周壁によって被覆されているが、密閉されているわけではないので、操作つまみ(30)と筒部(12)との隙間から、透孔(2a)(2b)とスプリングピン(1)との隙間を経て、水滴や洗剤等がガス栓本体(10)内に浸入することがある。
【0041】
これら水滴や洗剤等の浸入部分よりも下方には、防水用グリス(51)が充填された環状空間部(S)が設けられており、それより下方の気密性を確保しているから、環状空間部(S)よりも下方の、せん(20)とせん収容部(11)との摺動部(22)を含むガス栓本体(10)の内部に、水滴や洗剤等が浸入することはない。よって、摺動部(22)の防水・防錆が確実となる。
【0042】
又、防水用グリス(51)は環状外溝(36)内に充填されている構成であるから、環状空間部(S)内に留まり、他所へ流出することはない。
尚、摺動部(22)の上端部から段部(15)にかけて、潤滑・シール用のグリス(50)が塗布されているから、せん(20)の回動操作の潤滑性及び摺動部(22)におけるシール性が確保される。
【0043】
図3に示すものは、本発明の第2番目の実施の形態のガス栓の要部拡大断面図である。
このものでは、筒部(12)の内周面(16)に、上下2本の環状内溝(17)を周方向に沿って形成したもので、これに防水用グリス(51)を充填した後、ドライブシャフト(31)を筒部(12)内に収容することで、ドライブシャフト(31)の外周面(37)と環状内溝(17)とで囲まれる範囲に、防水用グリス(51)が充填された環状空間部(S)を構成することができる。
【0044】
この実施の形態のものも、上述した第1番目の実施の形態のものと同様に、スプリングピン(1)が貫通する透孔(2a)(2b)から水滴や洗剤等が浸入しても、その下方に防水用グリス(51)が充填された環状空間部(S)が設けられていることから、摺動部(22)を含むガス栓本体(10)の内部に水滴や洗剤等が浸入することはない。
尚、図4に示す第3番目の実施の形態のように、ドライブシャフト(31)の外周面(37)に環状外溝(36)を設けると共に、それに対応するガス栓本体(10)の筒部(12)の内周面(16)に環状内溝(17)を設け、環状外溝(36)と環状内溝(17)とで囲まれる範囲を環状空間部(S)とし、防水用グリス(51)を充填しても良い。
【0045】
さらに、図5に示す第4番目の実施の形態のものは、ドライブシャフト(31)の外周面(37)に下向きの段部(39)を設けると共に、それに対応する筒部(12)の内周面(16)に上向きの段部(18)を設け、下向きの段部(39)と上向きの段部(18)とで囲まれる範囲を環状空間部(S)として、防水用グリス(51)を充填させる構成としている。尚、下向き段部(39)を筒部(12)に、上向き段部(18)をドライブシャフト(31)の外周面(37)に設ける構成としても良い。
【0046】
又、図6に示す第5番目の実施の形態のものは、筒部(12)の透孔(2a)(2b)より下方におけるドライブシャフト(31)の外周面(37)とガス栓本体(10)の筒部(12)の内周面(16)との間に、上下2つの環状空間部(S1)(S2)を設ける構成としたもので、下方の環状空間部(S2)に防水用グリス(51)を充填させると共に、上方の環状空間部(S1)に、防水用グリス(51)を吸収させた多孔質パッキン(5)を収容させている。
【0047】
防水用グリス(51)を充填させる環状空間部(S1)(S2)を上下二段に設けることにより、ガス栓本体(10)におけるスプリングピン(1)の取り付け部より下方の気密性を一層確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本願発明の第1番目の実施の形態におけるガス栓の組立て完成状態での断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】本願発明の第2番目の実施の形態におけるガス栓の要部拡大断面図。
【図4】本願発明の第3番目の実施の形態におけるガス栓の要部拡大断面図。
【図5】本願発明の第4番目の実施の形態におけるガス栓の要部拡大断面図。
【図6】本願発明の第5番目の実施の形態におけるガス栓の要部拡大断面図。
【図7】従来例のガス栓の分解斜視図。
【図8】従来例のガス栓に採用されたドライブシャフトの縦断面図。
【図9】図8のX−X断面図。
【符号の説明】
【0049】
(1) ・・・・・・・スプリングピン
(10)・・・・・・・ガス栓本体
(11)・・・・・・・せん収容部
(12)・・・・・・・筒部
(2a)(2b)・・・・・透孔
(20)・・・・・・・せん
(30)・・・・・・・操作つまみ
(31)・・・・・・・ドライブシャフト
(40)・・・・・・・横孔部
(S) ・・・・・・・環状空間部
(51)・・・・・・・防水用グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス栓本体の一方に開放し且つガス流路に連通するせん収容部内に、前記ガス流路を開閉するせんが摺動部を介して回動自在に収容されており、前記せん収容部の開放端に連続する筒部に前記せんを回動操作する操作つまみが回動自在に外嵌する構成のガス栓であって、
前記せん及び前記操作つまみに対してそれぞれ相対回動阻止状態に連結されるドライブシャフトが前記筒部内に収容され、
前記筒部の直径線上の両端には、前記ドライブシャフトに形成されている横孔部を介して、スプリングピンが貫通する一対の透孔が形成され、
前記横孔部の周方向の各面とこれに当接する前記スプリングピンとで、前記せんの回動角度を規制する回動規制部が構成されているガス栓において、
前記筒部の前記透孔よりも下方における前記筒部の内周面と前記ドライブシャフトの外周面との間に、両者間の隙間よりも幅広の環状空間部を設け、
前記環状空間部に防水用グリスを充填させたことを特徴とするガス栓。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓において、前記環状空間部は、前記ドライブシャフトの外周面に周方向に沿って形成される環状外溝と、前記筒部の内周面とで囲まれる空間であることを特徴とするガス栓。
【請求項3】
請求項1に記載のガス栓において、前記環状空間部は、前記筒部の内周面に周方向に沿って形成される環状内溝と、前記ドライブシャフトの外周面とで囲まれる空間であることを特徴とするガス栓。
【請求項4】
請求項1に記載のガス栓において、前記環状空間部は、前記ドライブシャフトの外周面に周方向に沿って形成される環状外溝と、前記環状外溝に対向する前記筒部の内周面の所定箇所に周方向に沿って形成される環状内溝とで囲まれる空間であることを特徴とするガス栓。
【請求項5】
請求項1に記載のガス栓において、前記ドライブシャフトの外周面又は前記筒部の内周面のどちらか一方には周方向に沿って下向き段部を形成し、他方には周方向に沿って上向き段部を形成し、前記環状空間部は、前記下向き段部と前記上向き段部との間に形成されることを特徴とするガス栓。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のガス栓において、前記せん収容部の上端の段部と前記ドライブシャフトの下面との間に下空間部が形成され、前記下空間部に、前記摺動部の潤滑・シール用のグリスが充填されていることを特徴とするガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−39170(P2008−39170A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218522(P2006−218522)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000151977)株式会社藤井合金製作所 (66)
【Fターム(参考)】