ガス検知装置及びガス検知方法
【課題】検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うに、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減を図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報を発することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ガス検知装置であって、筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達してガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することの検出が可能となる下限時間の検知応答時間と、筐体の外部に存在する検出対象ガスを筐体内のガス検知層にて検出することが必要とされる時間の検知応答規定時間とに関して、ガス種を判定するガス種判定手段による判定結果に基づいて、検出タイミングが、検知応答時間以上かつ検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、通常周期を変更する通電周期変更手段を備えた。
【解決手段】ガス検知装置であって、筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達してガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することの検出が可能となる下限時間の検知応答時間と、筐体の外部に存在する検出対象ガスを筐体内のガス検知層にて検出することが必要とされる時間の検知応答規定時間とに関して、ガス種を判定するガス種判定手段による判定結果に基づいて、検出タイミングが、検知応答時間以上かつ検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、通常周期を変更する通電周期変更手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及びガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、ヒータ層通電時の検出タイミングにおけるガス検知層の電気的特性に基づいて、検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置、及びそのガス検知装置において実行されるガス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなガス検知装置においては、センサ素子は薄膜ガスセンサにより構成され、ヒータ層への通電を開始することにより、ガス検知層を検出対象ガスの種類に応じた適切な温度(例えば、400〜500℃程度)にまで加熱して、この温度を保持した状態におけるガス検知層の電気的特性(電気抵抗値、電圧値など)に基づいて検出対象ガスの有無及び濃度を検出する。この際には、ヒータ層に通電を行う通電駆動手段は、例えば、電池駆動により駆動されるため、できるだけ消費電力を少なくして長期間電池を交換することなく検出対象ガスを検出可能であることが必要とされている。そのため、薄膜ガスセンサを微細加工プロセスを用いて製造したダイヤフラム構造等の高断熱・低熱容量の構造とするとともに、通電駆動手段が、ヒータ層への通電を所定の周期で間欠的に行って消費電力を低減する構成を採用している(例えば、特許文献1参照)。
ここで、例えば、メタンガスやプロパンガス等の可燃性ガスである検出対象ガスを検出する場合、ヒータ層への通電の周期を30sとし、ヒータ層への通電を50〜500msの比較的短い時間行ってヒータ層の温度を高温(例えば、400〜500℃程度)に保持して、ガス検知層の電気抵抗値等を測定し(検出タイミング)、その後、ヒータ層への通電を停止して通電の開始から30sが経過するまで(通電の停止から29.95〜29.995sの間)停止状態を維持する。そして、再度通電を開始し、電気抵抗値を測定して、通電を停止することを繰り返し行う構成とされている。これにより、通電時間をできるだけ少なくし、検出対象ガスの検出を確実に行いながら、低消費電力化をも図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガス検知装置の設置環境においては、検出対象ガスであるメタンガス等や非検出対象ガスである酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、水蒸気等が共存する。また、微量ではあるが非検出対象ガスとして、ガス検知装置のセンサ素子にとって有害な有害ガス(特性劣化を引き起こす)やセンサ素子に干渉する干渉ガス(ガス検知層が抵抗変化し、あたかも検出対象ガスが存在するかのように振舞う誤検出を誘発するガス)など、種々のガス成分が一時的に共存する場合がある。
そのため、ガス検知装置においては有害ガス、干渉ガス等の影響を防止するため様々な対策が施されている。例えば、低沸点の炭化水素系ガス(エタノール、VOC)、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの干渉ガスに対しては、ガス検知層を被覆した選択燃焼層で選択的に燃焼しガス検知層の出力に影響が出ないような対策が講じられている。更にシリコンのような有害ガスに関しては、ガス検知装置内のガス検知層へ検出対象ガスが流入可能なガス流入口に活性炭吸着層(フィルタ手段)を設け吸着除去するような対策が講じられている。
上記のような様々な対策で非検出対象ガスである有害ガス、干渉ガス等の影響を防止しているが、それらのガスが長期共存するような環境でガス検知装置を使用すると徐々に特性が変化する場合がある。具体的には、空気中の電気抵抗値が顕著に低下したり、検出対象ガスがメタンガスの場合、ガス検知層における一酸化炭素ガスや水素ガスなどの干渉ガスに対する選択性が悪くなる場合がある(一酸化炭素ガス、水素ガスが共存してもガス検知層の電気抵抗値が低下し、あたかもメタンガスが存在するような挙動を示す、すなわち、誤検出することがある)。更にはガス検知層が鋭敏化する、すなわち、予めガス検知層の濃度特性から決めたメタン濃度で示す電気抵抗値が低下し、あたかもメタンガス漏れが発生したかのような誤報を発報する場合がある。
【0005】
このような特性劣化を防止するため、非検出対象ガスがガス検知装置内のガス検知層を備えたセンサ素子に到達するのを防止できるように、センサ素子のパッケージの強化が進められている。一例を挙げると、筐体の外部からセンサ素子が設けられた内部に、当該筐体に設けられたガス流入口以外から非検出対象ガスである干渉ガスや有害ガスが進入することを防止するため、パッケージの気密性向上(定期点検時に点検ガスをガス流入口近傍に設けられた活性炭吸着層を通さずに筐体内のセンサ素子へ直接流入するための点検口の廃止、筐体の構造を嵌め込み方式から溶接方式へ変更する等)や、ガス流入口に設ける活性炭吸着層の機能向上(活性炭量の増加、粒度分布の改善、充填密度の変更、機能の異なる活性炭の積層等)が行われている。
【0006】
しかしながら、このセンサ素子のパッケージの強化は、検出対象ガスの検知応答性とトレードオフの関係にある。すなわち、上述したパッケージの気密性向上により、検出対象ガスについても、有害ガスや干渉ガス等と同様に、基本的にガス流入口以外からの進入は不可能となる。また、活性炭吸着層の機能向上により、雰囲気中の検出対象ガスが、活性炭を通過しガス検知層表面に到達する時定数が増加し、検知応答性の低下につながってしまう。ここで、この検知応答性は、センサ素子が筐体の内部に設けられた状態において、筐体の外部で所定濃度の検出対象ガスが存在する場合に、当該検出対象ガスが筐体の内部に進入してセンサ素子のガス検知層に接触し、当該ガス検知層の電気抵抗値を所定の電気抵抗値にまで低下させるまでの時間(検知応答時間、すなわち筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達して、ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間)により判断される。例えば、表1に、センサ素子がパッケージ化された複数のガス検知装置について、ヒータ層に通電する周期を5sに設定し、雰囲気メタン濃度1.25%(12500ppm)中で警報を発するまでの時間を調査したものを示す。この表1から判明するように、雰囲気メタン濃度1.25%での応答性は、従来構造のパッケージでの検知応答時間が15〜25sであるのに対し、パッケージを強化すると検知応答時間が45〜50sと倍増していることがわかる。
よって、センサ素子のパッケージを強化すると、非検出対象ガスの影響を低減することができるが、検出対象ガスの検知応答性が低下することとなる。
【0007】
【表1】
【0008】
一方、上記検知応答性については満たすべき基準が別途規定されており、その規定により、例えば、検出対象ガスとしての引火性を有するメタンガスの場合には、雰囲気中のメタン濃度1.25%に対し、ガス漏れから60s以内(検知応答規定時間内)に警報を発することができる必要があるとされている。
このような状況で、ヒータ層への通電の周期に対応してガス検知層の電気抵抗値を検出する検出タイミングとガス漏れ発生のタイミングとの関係に加え、検知応答時間も考慮して、ガス漏れから警報を発するまでの時間が検知応答規定時間内である必要がある。従って、センサ素子のパッケージの強化により検知応答性が低下(検知応答時間が増加)すると、警報を発するまでの時間が長くなる場合があり、検知応答規定時間内に警報を発することができなくなるという問題がある。
【0009】
例えば、図15に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置の通電周期を45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後に警報し、検知応答規定時間(ガス漏れ発生から60s)内に警報できるが、一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報せず、ガス漏れから85s後の第3回目の検出タイミング(90s)で警報することになり、検知応答規定時間を満たさなくなる場合がある。すなわち、ケース2では、ガス漏れから警報を発するまで85sの時間が経過してしまっている。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報せず、ガス漏れから65s後の第3回目の検出タイミング(90s)で警報することになり、検知応答規定時間を満たさなくなる場合がある。すなわち、ケース3では、ガス漏れから警報を発するまで65sの時間が経過してしまっている。
【0010】
このため、従来、電池駆動を念頭としたガス検知装置において通電駆動手段がヒータ層に通電する周期は、パッケージ強化に伴う検知応答性の低下(検知応答時間の増加)と検知応答規定時間とを考慮し、例えば、検知応答規定時間を60sとした場合、検知応答時間40sのときは周期20s以内、検知応答時間50sのときは周期10s以内等の比較的短い時間間隔に設定しなければならず、通電の周期を長くすることができず低消費電力化の妨げとなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みて、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減を図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報を発することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成1〕
上記の目的を達成するための本発明に係るガス検知装置は、
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、
前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、
ヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間である検知応答時間と、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子の前記ガス検知層にて検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間とに関して、
前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段を備え、
前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する通電周期変更手段を備えた点にある。
【0013】
また、上記の目的を達成するための本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子を用いて、
通電駆動手段が前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させ、
ガス検出手段がヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検知方法であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定し、
通電周期変更手段が前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる時間の下限である検知応答時間以上、かつ、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子において検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する点にある。
【0014】
上記構成1のガス検知装置及びガス検知方法によれば、筐体の内部にセンサ素子(ガス検知層)が設けられ、外部から筐体の流入口及びフィルタ手段を介して検出対象ガスが流入するようにパッケージが強化されたガス検知装置において検出対象ガスを検出する場合に、ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定した上で、検出対象ガスを検出する検出タイミングが検知応答時間以上かつ検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように通常周期を変更するので、ガス種に応じて必要な場合にのみ検出タイミングを変更することができるとともに、変更された検出タイミングでは、確実に検知応答規定時間を超えないように検出対象ガスを検出することができる。
ここで、検知応答時間は、筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達して、ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間であり、上記のようにパッケージが強化されたガス検知装置では、パッケージが強化されていないガス検知装置と比較して長い時間となる傾向にあるものである。また、検知応答規定時間は、筐体の外部に存在する検出対象ガスを、筐体の内部に設けられたセンサ素子のガス検知層にて検出することが必要とされる時間である。なお、検知応答時間は各ガス検知装置について予め計測したものを用いることができ、検知応答規定時間は法律等により予め定められている。
例えば、図5に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置の通電周期を通常周期45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から60s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段がガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第3回目の検出タイミング(55s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段がガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第5回目の検出タイミング(75s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、ケース3において、第3、第4回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
したがって、パッケージが強化されたガス検知装置を用いて非検出対象ガスの影響を排除して、より正確な検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うことができ、また、ガス種に応じて必要な場合にのみ通常周期を変更(検出タイミングを変更)し無駄に変更が行われることを防止して、消費電力の低減を図ることができる。しかも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を極力短くして検知応答規定時間内に警報を発することができる。
【0015】
〔構成2〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する点にある。
【0016】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成1のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する点にある。
【0017】
上記構成2のガス検知装置及びガス検知方法によれば、通電周期変更手段が、通常周期を検出タイミングが検知応答時間以上、かつ、検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、ガス種判定手段による判定結果が検出対象ガスである場合に、ヒータ層へ通電する通常周期をこの通常周期よりも短縮した短縮周期に変更するので、検出対象ガスが存在して、より精度の高い検出を行う必要がある場合にのみヒータ層の通電を短縮周期に変更して検出を行うことができ、一方で、検出対象ガスが存在しない場合には通常周期のまま検出を行い消費電力の低減を図ることができる。また、パッケージが強化されたガス検知装置において検知応答時間が長くなっているときでも、検出タイミングの周期を短くして、より早期に検出対象ガスを検出することができ、ガス漏れ発生から検出するまでの時間を確実に検知応答規定時間よりも短くすることが可能となる。
よって、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減をより確実に図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報をより確実に発することができる。
【0018】
〔構成3〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1又は2のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う点にある。
【0019】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成1又は2のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う点にある。
【0020】
上記構成3のガス検知装置及びガス検知方法によれば、ガス検出手段が、ガス種判定手段によるガス種の判定前に、検出タイミングにおけるガス検知層の電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行うので、ガス種判定手段によるガス種の判定及び通電周期変更手段による通電周期の変更を、第1判定による検出タイミングにおける電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの結果に基づいて行うことができ、例えば、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合にはガス漏れが生じている可能性があるため、より精度の高い検出を行うこととし、第1閾値以上である場合にはガス漏れが生じていないものとして、通常周期での検出対象ガスの検出を行うことができる。
これにより、第1判定により簡易な判定を行って、ガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
【0021】
〔構成4〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成3のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う点にある。
【0022】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成3のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う点にある。
【0023】
上記構成4のガス検知装置及びガス検知方法によれば、ガス検出手段が、第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合に、さらに、第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した検出タイミングにおける電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも小さな値の第2閾値(警報閾値)以下か否かの第2判定を行うので、第1判定においてガス漏れの可能性があると判定された場合に、より精度の高い第2閾値により第2判定を行い、ガス漏れか否かをより正確に判定することが可能となる。なお、この第2判定では、検出タイミングにおける電気抵抗値のうち、第1判定に用いた電気抵抗値より後に検出される安定した状態の電気抵抗値が用いられ、さらに、第1閾値よりも厳しい基準の第2閾値が用いられるため、第1判定よりも精度の高い判定を行うことができる。例えば、第2判定において、電気抵抗値が第2閾値以下である場合にはガス漏れが生じているものとしてガス漏れ警報を発し、第2閾値を超えている場合にはガス漏れが生じているか否か確定することができないので、より正確に判定するため、ガス種判定手段によるガス種の判定を行う構成とすることができる。
【0024】
〔構成5〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成4のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、更に、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う点にある。
【0025】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成4のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う点にある。
【0026】
上記構成5のガス検知装置及びガス検知方法によれば、第2判定において電気抵抗値が第2閾値を超えている場合にガス種を判定し、判定結果が検出対象ガスである場合には、通常周期を短縮周期に変更して、変更後の短縮周期での検出タイミングにおいて検出された電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行うので、短縮周期のまま検出を継続するか、通常周期に戻して検出を継続するかを当該第1判定の結果に基づいて決定することができる。例えば、当該第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下していない場合には、通常周期に戻して第1判定や第2判定を繰り返し行い、第1閾値以下である場合には、短縮周期のままとし、さらに第2判定を行って、検出対象ガスの検出を継続することができる。
よって、必要な場合にのみ短縮周期による通電を継続し、必要でなければ通常周期による通電に戻すことにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0027】
〔構成6〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から5の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性として電気抵抗値の変化状態を用いて、前記雰囲気中に存在するガス種を判定する点にある。
【0028】
上記構成6のガス検知装置によれば、ヒータ層通電時のガス検知層の電気抵抗値の変化状態を用いて、雰囲気中に存在するガス種を判定するので、検出対象ガスであるメタンガスであるか、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素など)であるかを正確に判定することができる。
ここで、ガス種がメタンガスの場合には、例えば、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係は、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の値に近づいて安定化する軌跡を描くものである。
一方、ガス種がメタンガス以外のガスの場合には、例えば、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係は、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の極小値を経て漸近増加に転じる軌跡を描くものである。この漸近減少は、センサ素子のガス検知層などに吸着した一酸化炭素や水素などのガスが、ヒータ層への通電が行われてガス検知層の温度が上昇する際に燃焼されることにより生じているものである。
したがって、ガス検知層の雰囲気中のガス種を判定するに当たり、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との軌跡が、どのような軌跡を描くかを調べることにより、正確かつ簡便にガス種を判定することができる。
【0029】
〔構成7〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記電気抵抗値の差分を用いる点にある。
【0030】
上記構成7のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の通り、極小値から漸近増加する部分を有するため、複数の電気抵抗値を抽出してその差分(通電時間の長い電気抵抗値から通電時間の短い電気抵抗値を引いたときの値)をとることにより、その差分が正となる場合にはメタンガス以外のガスであると即座に判定することができる。
【0031】
〔構成8〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の極小値の出現を用いる点にある。
【0032】
上記構成8のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の通り、極小値を有するため、この極小値の出現(存在)を抽出することにより、この極小値が出現(存在)する場合にはメタンガス以外のガスであると即座にガス種を判定することができる。この極小値は、ヒータ層通電時において時間的に比較的早く現れるため短い時間でガス種を判定することができる。なお、メタンガスの場合には、電気抵抗値は所定の値に安定化するため極小値は存在しない。
【0033】
〔構成9〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを用いる点にある。
【0034】
上記構成9のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の極小値の出現後に、その極小値から上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加する形状の軌跡となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、電気抵抗値は下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少する。このように、メタンガスの電気抵抗値は、それ以外のガスの電気抵抗値と異なる軌跡を示すため、この1階微分値と2階微分値を求めることによって、ガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上昇しつつ極小値の出現後に漸近線を描くように増加する形状の軌跡となるので、極小値の出現後に1階微分値が正の値となり、2階微分値が負の値となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、下降しつつ極小値の出現後に漸近線を描くように減少する軌跡となるので、極小値が出現することなく1階微分値が0以下の値を維持し、2階微分値が0以上の値となる。従って、このように1階微分値と2階微分値の正負関係を確認することで、ガス種を判定することができる。
【0035】
〔構成10〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値を用いる点にある。
【0036】
上記構成10のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の極小値の出現後に、その極小値から上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加する軌跡となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描く軌跡となる。従って、メタンガス以外のガスの1階微分値が極小値の出現後、正の値となるのに対して、メタンガスの1階微分値は0以下の値となる。これにより、電気抵抗値の1階微分値によって、ガス種を判定することができる。また、電気抵抗値の一つの検出タイミングにおける1階微分値よりも複数の検出タイミングにおける1階微分値によってガス種を判定することで、計測のエラーやノイズなどによる誤判定をなくして、ガス種を正確に判定することができる。
【0037】
〔構成11〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から10の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記センサ素子が、電気絶縁層と、酸化物半導体からなる前記ガス検知層と、前記ガス検知層の前記電気的特性としての電気抵抗値を検出する一対の電極層とを備えた薄膜センサ素子である点にある。
【0038】
上記構成11のガス検知装置によれば、センサ素子が薄膜状の薄膜センサ素子により構成されているので、薄膜センサ素子を構成するガス検知層の熱容量は非常に小さく、ヒータ層からの熱の入力に対し非常に応答性が高く構成することができる。
【0039】
〔構成12〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から11の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、内蔵された電池からの電力供給により駆動する点にある。
【0040】
上記構成12のガス検知装置によれば、ガス検知装置は、内蔵された電池からの電力供給により駆動するので、固定の電源の近傍に設置する必要が無くなり、設置性が向上する。
また、上記ガス検知装置においては、ヒータ層への通電を通電時間ができるだけ短くなる周期で行うとともに、通電周期を必要なときのみ短縮し、必要でない場合はできるだけ長い周期の通常周期が採用されているため、消費電力が低減されており、内蔵する電池を用いた場合であっても、所定の期間充分に稼動を続けることができるガス検知装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガス検知装置の検知システムの概略構造を示す図
【図2】ガス検知装置の具体的構造を示す図
【図3】ヒータ層への通電時間と電気抵抗値との関係を示すグラフ図
【図4】第1実施形態に係る第1判定、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図5】第1実施形態に係る通常周期の短縮、及びガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【図6】通常周期の変更を行った場合と行わなかった場合における、ガス漏れ発生から警報までの時間と検出タイミングからガス漏れ発生までの遅れ時間との関係を示すグラフ図
【図7】第2実施形態に係る通常周期の短縮、及びガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【図8】第3実施形態に係る第1判定、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図9】第4実施形態に係るガス種判定のための電気抵抗値の検出範囲を示す図
【図10】第5実施形態に係るガス種判定のための2点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図11】第5実施形態に係るガス種判定のための3点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図12】第5実施形態に係るガス種判定のための4点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図13】別実施形態に係る第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図14】別実施形態に係る第1判定、通電時間の変更、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図15】従来のガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るガス検知装置100の第1実施形態について詳細を説明する。
ガス検知装置100は、図1に示すように、検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層10及びガス検知層10を加熱するヒータ層6を形成した薄膜センサ素子(センサ素子の一例)20と、ヒータ層6へ所定の通常周期で通電を行って、ガス検知層10の温度を変化させる通電駆動手段12と、ヒータ層6への通電時(検出タイミング)のガス検知層10の電気抵抗値(電気的特性の一例)に基づいて検出対象ガスを検出するガス検出手段13と、ヒータ層6への通電時のガス検知層10の電気抵抗値(電気的特性の一例)に基づいてガス検知層10の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段14と、ガス種判定手段14によるガス種の判定結果に応じて所定の通常周期を通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する通電周期変更手段15と、これらに電力供給するリチウム電池(図示せず)とを備えて構成される。
また、ガス検知装置100では、図2に示すように、薄膜センサ素子20は、検出対象ガスを流入可能な流入口30を備えた筐体31の内部に設けられ、ガス流入口30から筐体の内部に至る間の流路には非検出対象ガスが付着する活性炭吸着層(フィルタ手段の一例)32が設けられている、したがって、薄膜センサ素子20には、外部から流入口30を介してのみ検出対象ガス等が流入されるように構成されており、ガス検知装置100は流入口30以外の箇所が密閉された状態でパッケージ化されている。
なお、後述するように、ガス検知装置100においては、検出対象ガスは、例えば、メタンガスとされており、基本的には、ヒータ層6への通電を所定の周期で断続的に行って、ヒータ層6への通電時の終了間際の高温状態において、ガス検知層10の電気抵抗値が比較的安定する状態(図3では、通電開始から200ms経過時)にてメタンガスを検出するように構成されている。
【0043】
なお、図1及び図2は、ガス検知装置100の概略構成を示す図であり、図3は、ヒータ層6への通電時における、空気、空気に1000ppmの濃度で含まれるメタンガス、空気に4000ppmの濃度で含まれるメタンガス、空気に4000ppmの濃度で含まれる水素ガス、空気に500ppmの濃度で含まれる一酸化炭素ガス、それぞれの通電時間と電気抵抗値との関係を示しており、図4は、ガス検出(第1判定及び第2判定)、ガス種判定及び通電周期の変更を示すフローを示している。
【0044】
〔薄膜センサ素子〕
図1に本発明の実施形態に用いた薄膜センサ素子20の構造を示す。
薄膜センサ素子20は、薄膜状の支持層5の外周部又は両端部がSi基板1により支持されたダイアフラム構造の支持基板上に、検出対象ガスの有無及び濃度の少なくとも一方により電気的特性としての電気抵抗値が変化するガス検知層10、及びガス検知層10を加熱するためのヒータ層6を形成して構成されている。
【0045】
次に、薄膜センサ素子20の詳細な構造及び製造方法を説明する。
薄膜センサ素子20は、半導体プロセスによりSi基板1上に、熱酸化膜2、Si3N4膜3、SiO2膜4が順次積層された支持層5を設けて構成され、さらにこの支持層5の上にヒータ層6を設け、当該ヒータ層6の上側に全体を覆う状態でSiO2膜からなる絶縁層(電気絶縁層の一例)7を設けるとともに、当該絶縁層7の上に一対の電極層9を設け、当該一対の電極層9上及びこれら電極層9に渡ってガス検知層10を設けて構成される。さらに、図1に示す例の場合は、一対の電極層9およびガス検知層10の全体を覆う形態で、選択燃焼層11が設けられている。その各々の層厚は0.1〜50μm程度のものである。そして、薄膜センサ素子20による一回のガス検出のために必要な期間の消費電力量が8.0mJ未満とされ、通電を開始してからガス検知層10の温度が所定の高温状態となるまでの薄膜センサ素子20の応答時間は、50〜100msとなる。
ガス検知層10は、例えば酸化スズ(SnO2)のn型半導体を、スパッタリング法などにより形成したものである。
【0046】
選択燃焼層11は、金属酸化物からなる担体上に触媒を担持して構成されるものであり、触媒を担持した金属酸化物をバインダーを介して互いに結合させて層状に構成するものである。
触媒としては、検出対象ガスに対して干渉ガスともなる還元性ガスを酸化除去できる、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等を使用する。
担体を構成する金属酸化物としては、例えばアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジュウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化銅(CuO)あるいはこれらの混合物等を使用できる。
また、上記の金属酸化物(触媒を担持する金属酸化物)同士を結合させるバインダーとしては、例えばアルミナ微粉末、アルミナゾル、シリカ微粉末、シリカゾル、マグネシアを使用することができる。
ここで、上記のような触媒、金属酸化物、バインダーはいずれも、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0047】
薄膜センサ素子20は、以下のように製造される。
図1に示すように、両面に熱酸化膜2が付いたSi基板1上に、ダイアフラム構造の支持層5として、Si3N4膜3、SiO2膜4を、順次プラズマCVD法にて形成する。次にダイアフラム構造の中央部分にヒータ層6、このヒータ層6を覆うようにSiO2絶縁層7を、順にスパッタ法で形成する。その上に一対の接合層8、この接合層8の上に一対の電極層9を形成する。成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行なう。成膜条件は接合層(TaまたはTi)8、電極層(PtまたはAu)9とも同じで、Arガス圧力1Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cm2、膜厚は、例えば接合層8/電極層9=500Å/2000Åとする。
【0048】
次に、前記一対の電極層9上及びこれら電極層9に渡ってガス検知層10であるSnO2膜を成膜する。成膜にはRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリング法によって行なう。ターゲットにはSbを0.5質量%有するSnO2を用いる。成膜条件はArガス圧力2Pa、基板温度150〜300℃、RFパワー2W/cm2である。ガス検知層10の大きさは50〜200μm角程度、厚さは、例えば、0.2〜1.6μm程度が望ましい。
【0049】
ガス検知層10の上にはAl2O3、Cr2O3などの多孔質金属酸化物からなる担体にPdまたはPtなどの貴金属酸化触媒を担持し、無機バインダーと溶剤でペースト状にした選択燃焼層材料をスクリーン印刷法により塗布し、500℃で1時間以上焼成することによって、ガス検知層10の全体を覆うように選択燃焼層11を形成する。選択燃焼層11は、ガス検知層10の全体を十分に覆いきる大きさに形成する必要がある。最後に、Si基板1の裏面よりエッチングによりSi(シリコン)を除去し、ダイアフラム構造とする。
選択燃焼層11の役割は、検出対象ガスであるメタンガス以外の水素ガス、一酸化炭素ガス、アルコールガスなどの還元性ガス(非検出対象ガス)を燃焼してガス検知層10に到達しないようにし、薄膜センサ素子20にガス選択性を持たせることにある。さらに、ガス検知層10の表面に酸素を供給することにより、感度を向上する役割をも果たしていると考えられる。
この選択燃焼層11に含まれるPdまたはPtなどの貴金属酸化触媒の担持量は、5〜9質量%(触媒質量/(触媒+担体)質量×100)とする。
【0050】
〔筐体、活性炭吸着層〕
筐体31は、図2に示すように、薄膜センサ素子20を載置して固定可能な円板状のベース31aと、ベース31aに載置固定された薄膜センサ素子20を内部に収容することが可能な円筒状のキャップ31bとを備えて構成されている。この筐体31は、薄膜センサ素子20が内部に設けられた状態のベース31a上にキャップ31bの一端側が溶接され、さらにキャップ31bの他端側には外部から検出対象ガスを流入可能なガス流入口30が形成されて構成されている。このガス流入口30には、ステンレス等の金網が張設されて、検出対象ガスを流入可能に構成されている。従って、筐体31は、ガス流入口30以外から検出対象ガス及び非検出対象ガス等が出入することが困難となるように密閉された状態で、パッケージ化して構成されている。なお、キャップ31bは、ステンレス等のメタルキャップとして、薄膜センサ素子20のパッケージ化を強化する構成とすることもできるが、樹脂等のキャップとして差込式で固定するようにしてもよい。ベース31aは、ベース31aの表裏を貫通する複数本のステムにより支持されている。
さらに、筐体31内において、外部からガス流入口30である金網を通過した箇所には、非検出対象ガスを吸着除去するための活性炭吸着層32が、ステンレス等の活性炭用金網33により支持固定された状態で設けられている。
この活性炭吸着層32は、例えば、活性炭、シリカゲル、あるいは、それら活性炭とシリカゲルとを組み合わせた材料にて形成されている。
そして、ガス流入口30からキャップ31b内に流入するガス中に含まれる非検出対象ガス(例えば、アルコール等の有機溶剤のガス、シリコン蒸気、NOx)等を活性炭吸着層32により吸着除去する構成となっている。なお、活性炭吸着層32は、活性炭量の増加、粒度分布の改善、充填密度の変更、機能の異なる活性炭の積層等を調整して、薄膜センサ素子20のパッケージを強化する構成とすることもできる。例えば、表1で示したような、各種パッケージとして構成することが可能である。なお、上述したように、薄膜センサ素子20のパッケージを強化すると、非検出対象ガスの影響を低減することができるが、検出対象ガスの検知応答性が低下することとなる。なお、検知応答時間は、筐体31の外部に存在する検出対象ガスが筐体31の内部に設けられた薄膜センサ素子20に到達して、ガス検知層10にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間であり、上記のようにパッケージが強化されたガス検知装置100では、パッケージが強化されていないガス検知装置100と比較して長い時間となる傾向にある。
ここで、本実施形態における図5、図7に示す例では、薄膜センサ素子20のパッケージとして、表1に示す強化構造で標準活性炭、厚さ2倍(通常の厚さに対し2倍)、メタルキャップ溶接式の構成を採用し、検知応答時間が45sのものを採用している。
【0051】
〔通電駆動手段〕
次に、通電駆動手段12は、ヒータ層6へのパルス状の通電を所定の通常周期で断続的に行って、ガス検知層10の温度を高温状態と低温状態との間で繰り返し変化させることができるように構成されている。このパルス通電は、例えば、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔を45s周期とし、その45sのうち、ヒータ層通電を200msの間実施し、44.80sの間実施しないように、断続的に(繰り返し)行うことができる。すなわち、図5における検出タイミングが、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔(45s周期)で存在する。
また、通電駆動手段12は、後述する通電周期変更手段15から通電周期を変更する通電周期変更信号を受信したときは、通常周期をこの通常周期よりも短縮した短縮周期とすることができるように構成されている。このときのパルス通電は、例えば、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔を10s周期とし、その10sのうち、ヒータ層通電を200msの間実施し、9.80sの間実施しないように、断続的に(繰り返し)行うことができる(図3、図5参照)。
ここで、メタンガスを良好に検出することができる上記高温状態は、検出対象ガスに応じて設定することができ、例えば、メタンガスの場合には、350℃〜450℃(高温状態)とすることにより精度高く検知することができる。
また、通電駆動手段12がヒータ層6を高温状態にまで加熱する際には、薄膜センサ素子20の周囲温度を検出して、この周囲温度に応じて補正を行った上で、ヒータ層6への通電を制御することが好ましい。これにより、適切な通電により、ヒータ層6の温度を高温状態にまで正確に加熱することができる。
【0052】
〔ガス検出手段〕
ガス検出手段13は、ガス検知層10の温度が検出対象ガスを精度高く検出可能な温度になった状態(高温状態)での、ガス検知層10の電気抵抗値に基づいて、検出対象ガスの有無や濃度を検出することができるように構成されている。すなわち、ヒータ層6に通電してメタンガス存在下でガス検知層10が高温状態となるに従い、このガス検知層10の電気抵抗値が低下して所定の電気抵抗値に近づいて安定化するため、この安定化した電気抵抗値を用いることにより、メタンガスの有無や濃度を正確かつ精度の高い状態で検出することができる。なお、上記電気抵抗値は、薄膜センサ素子20中に直列に設けられた固定抵抗と可変抵抗のうち、可変抵抗の電気抵抗値を意味している。
具体的には、図3に示すように、本実施形態において、上記通電駆動手段12による通電が開始されてからヒータ層6への通電が終了する200ms経過時点までとされる時間帯内において、安定化した電気抵抗値が得られるのは、ヒータ層6への通電が終了する間際である200ms経過時であるので、この200ms経過時にメタンガスを検出するように設定されている(図3上、第2判定と記載)。したがって、ガス検知層10の雰囲気中にメタンガスが存在する場合と存在しない場合の電気抵抗値や、雰囲気中(例えば、空気中)に特定の濃度のメタンガスが存在する場合の電気抵抗値を予めガス検知装置(薄膜センサ素子)ごとに設定しておき、この設定結果と通電開始から200ms経過時に検出した電気抵抗値とを比較することにより、メタンガスの有無や濃度を検出することができる。例えば、通電開始から200ms経過時に検出した電気抵抗値がメタンガス漏れ用の警報閾値(メタンガスが空気中に2000ppm程度の濃度で存在する場合の電気抵抗値:第2閾値の一例)よりも低下している場合(メタンガスが空気中に4000ppmの濃度で存在する場合など)には、メタンガスが漏れているものとしてガス漏れを検出することができる。
一方、ガス検出手段13は、通電駆動手段12による通電が開始されてヒータ層6への通電が終了する間際である200ms経過時の電気抵抗値を用いて上記第2判定を行う前、すなわち、通電が開始された後、第2判定が行われる前に検出した電気抵抗値を用いて第1判定を行うことが可能に構成されている。この際には、上記第2判定において、第2閾値としての警報閾値よりも大きな電気抵抗値の第1閾値を用いて第1判定を行うことにより、第2判定よりも緩い基準で簡易な判定を第2判定よりも先に行うことができる。これにより、第1判定により簡易な判定を行ってガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定(第2判定等)を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
具体的には、図3に示すように、第1判定では、通電開始から100ms経過時に検出した電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合には、第2判定を行う必要があるものとして判断する。ここで、第1閾値は、例えば、空気中に比較的低濃度(例えば、1000ppm程度)のメタンガスが存在する場合と、空気中に水素ガス(例えば、4000ppm程度)や一酸化炭素ガス(例えば、500ppm程度)等のメタンガス以外のガスが存在する場合とをある程度弁別することができる電気抵抗値に設定されるとともに、さらに、第1判定が行われるタイミングは、第1閾値が上記のような弁別ができるようなヒータ層6への通電の開始からの経過時間(図3では、100ms程度)に設定されている。これにより、精度は低いものの、第1閾値よりも電気抵抗値が低下していない場合には、空気や比較的低濃度のメタンガスが存在しており、警報の必要がないと判断して、第2判定を省略でき、一方、電気抵抗値が低下している場合は、メタンガス以外のガスや比較的高濃度のメタンガスが存在している可能性が高いものと判断して、より精度の高い第2判定を行うことができる。
したがって、本実施形態において、ガス検出手段13は、第1閾値による第1判定を行い、必要に応じて第2判定を行うように構成されている。なお、第2判定が行われた結果に従って、後述するガス種判定手段14によるガス種の判定が行われる。
【0053】
〔ガス種判定手段〕
ガス種判定手段14は、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了間際程度(例えば、20〜200ms、好ましくは、20〜100ms、より好ましくは20〜80ms程度)の電気抵抗値の変化状態に基づいて、ガス検知層10の雰囲気中に存在するガスの種類を検出することができるように構成されている。ここで、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係(変化状態)は、空気中に含まれるガス種がメタンガスの場合、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の値に安定化する軌跡を描くものであり、一方、空気中に含まれるガス種がメタンガス以外の場合、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の極小値を経て漸近増加に転じる軌跡を描くものである。したがって、ガス種判定手段14により、ガス検知層10の雰囲気中のガス種を判定するに当たり、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との軌跡が、どのような軌跡を描くかを調べることにより、正確かつ簡便にガス種(検出対象ガスであるメタンガスか、メタンガス以外の一酸化炭素ガス若しくは水素ガス等か)の判定をすることができる。
【0054】
具体的には、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分に基づいて空気中に含まれるガス種を判定する。
すなわち、図3に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から40ms程度経過後、100ms程度経過するまでの間では漸近増加していることから、この40msから100ms間程度での電気抵抗値を2点(例えば、40ms時と60ms時、60ms時と80ms時など)で検出して、通電時間の長い方の電気抵抗値から短い方の電気抵抗値を引いた値(差分)が、正であるときは、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。一方、メタンガスの場合の電気抵抗値は、上記40msから100ms間では、漸近減少して安定化していることから、上記差分が負であるときは、メタンガスが存在すると判定することができる。なお、図3では、空気に1000ppmの濃度でメタンガスが含まれている場合の電気抵抗値は、第1閾値付近で安定化しつつある。上記では2点の電気抵抗値を用いて差分をとったが、3点以上の電気抵抗値の差分をとってもよく、また、電気抵抗値の微分値から傾きを検出して、ガス種を判定してもよい。
【0055】
また、ヒータ層通電時における極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定することもできる。
すなわち、図3に示すようにヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、通電開始から漸近減少し、例えば、20ms程度経過後40ms程度経過するまでの間で極小値を迎え、40ms程度経過後100ms程度経過するまで漸近増加している。したがって、3点(例えば、20ms時、40ms時、60ms時など)の電気抵抗値を検出して、これら電気抵抗値のうち40ms時の電気抵抗値が一番小さい値となっているなど、20ms時から60ms時までの間で電気抵抗値が極小値を有しているときには、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。一方、メタンガスの場合の電気抵抗値は、通電開始から100msの間では、漸近減少して安定化していることから極小値は存在せず、上記3点(例えば、20ms時、40ms時、60ms時など)の電気抵抗値が極小値を有しないときは、メタンガスが存在すると判定することができる。なお、この際には、さらに、4点以上の電気抵抗値をとってもよく、また、電気抵抗値の微分値から傾きを検出して、ガス種を判定するようにしてもよい。
【0056】
〔通電周期変更手段〕
通電周期変更手段15は、所定の通常周期を通常周期よりも短縮した短縮周期に変更することができるように構成されている。すなわち、通電周期変更手段15は、ガス種判定手段14によるガス種の判定結果に従って、判定結果が検出対象ガスとしてのメタンガスである場合には、通常周期を短縮周期に変更し、一方、判定結果がメタンガス以外のガスの場合には通常周期をそのままの値に維持するように構成されている。これにより、ガス検知層10の雰囲気中に存在するガス種に応じて通電周期を短縮するか否かを判断することができるので、ガス種に応じて短縮が必要な場合にのみ通常周期を短縮して、メタンガスを検出することが可能となる。例えば、図5では、通電周期変更手段15が、通常周期45sを短縮周期10sに短縮するように構成される例を示し、変更後の短縮周期10sを維持して複数の検出タイミングにてメタンガスの検出を行う例も示している。
そして、通電周期変更手段15は、短縮周期における検出タイミングが、検知応答時間以上で、かつ、検知応答規定時間よりも短い時間帯内となるように通常周期を短縮周期に短縮することができるように構成されている。検知応答規定時間は、筐体31の外部に存在する検出対象ガスを、筐体31の内部に設けられた薄膜センサ素子20のガス検知層10にて検出することが必要とされる時間である。なお、検知応答時間は各ガス検知装置について予め計測したものを用いることができ、検知応答規定時間は法律等により予め定められており、これらはガス検知装置100に設けられたメモリ(図示せず)等に記憶されている。
【0057】
〔電池〕
電池は、ガス検知装置100の内部に配置されて、上記各手段に電力を供給するように構成されている。例えば、耐用年数の比較的長いリチウム電池を用いる。
【0058】
〔メタンガスの有無および濃度の検出、ガス種の判定、通電周期変更〕
以下、図3から図6を用いて、上記構成のガス検知装置100における、ガス検知層10の雰囲気(空気)中に存在するメタンガスの存在の有無・濃度の検出(第1判定、第2判定)、ガス種の判定、及び通常周期の変更に関し、以下に説明する。
【0059】
まず、ガス検出手段13による第1判定について説明すると、図4に示すように、通電駆動手段12によりヒータ層6に通電が開始されると(ステップ#1)、通電の開始から200msが経過するまで通電が行われ、その後通電を停止して通電の開始から45s経過時に再度加熱をする通常周期で、通電と通電の停止が繰り返される(ステップ♯2)。すなわち、図3に示すように、通電の開始から200msが経過するまでの通電時間に、ガス検出手段13により第1判定及び第2判定が行われ、この第1判定や第2判定を行うタイミングが検出タイミングである。
そして、ガス検出手段13は、通電開始から100ms経過時にガス検知層10の電気抵抗値を検出して、この電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う(ステップ#3)。電気抵抗値が第1閾値よりも低下していない場合には(ステップ#3:No)、ガス検知層10の雰囲気には、空気、或いは空気中に比較的低濃度(例えば、1000ppm程度)のメタンガスが存在するものとして(図3参照)、ステップ#2に戻り通常周期にて第1判定による検出を行う。一方、電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合には(ステップ#3:Yes)、空気中に水素ガス(例えば、4000ppm程度)や一酸化炭素ガス(例えば、500ppm程度)等のメタンガス以外のガス、或いはメタンガスが高濃度(例えば、4000ppm程度)で存在する可能性があるものとして(図3参照)、より高精度な第2判定を行うためステップ♯4に進む。これにより、第2判定を行う前に、第1判定により簡易な判定を行って、所定濃度以上のメタンガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
次に、ガス検出手段13は、通電開始から200ms経過時にガス検知層10の電気抵抗値を検出して、この電気抵抗値が警報閾値(第2閾値)以下であるか否かの第2判定を行う(ステップ#4)。電気抵抗値が警報閾値以下である場合には(ステップ#4:Yes)、比較的高濃度のメタンガス(例えば、空気中に4000ppm程度)が存在しているものとして、ガス漏れ警報を発する(ステップ♯6)。これにより、電気抵抗値が警報閾値以下となることにより、雰囲気中のメタンガス濃度が所定の濃度よりも濃くなったものと判断でき、この場合、ガス検知装置100の周囲に存在する人にスピーカ等からの警報の発生や液晶ディスプレイでの警報の表示などにより、メタンガス漏れの異常状態の発生を報知することができる。
一方で、電気抵抗値が警報閾値を超えている場合には(ステップ#4:No)、第1判定における電気抵抗値が第1閾値よりも低下している原因が、メタンガス以外のガスによるものかメタンガスの影響によるものかを特定することができないため、ガス種判定手段14によりガス種の判定を行う(ステップ#5)。
【0061】
ガス種判定手段14は、ガス検出手段13により検出されたヒータ層6への通電の開始から200ms経過時における電気抵抗値の変化状態に基づいて、ガス検知層10の雰囲気中のガス種を判定する。すなわち、上記ガス種判定手段14の説明のように、例えば、2点(40ms時と60ms時)の電気抵抗値を検出してその電気抵抗値の差分が、正であれば空気にメタンガスを含まれない(ステップ#7:No)と、負であれば空気にメタンガスが含まれる(ステップ#7:Yes)とガス種を判定する。メタンガスが含まれない、すなわち、メタンガス以外のガスが存在する場合には(ステップ#7:No)、メタンガス漏れが生じていないものとしてステップ#2に戻り、通常周期にて第1判定による検出を行う。メタンガスが含まれる場合には(ステップ#7:Yes)、ステップ♯4に戻り、高濃度のメタンガスが存在しているか否かを再度判定する(第2判定)。
【0062】
ここで、ステップ♯4において再度、第2判定を行う際には、通電周期変更手段15が通常周期を短縮周期に変更して(ステップ♯8)、短縮周期における検出タイミングでの電気抵抗値を用いて、第2閾値と比較する第2判定が行われる(ステップ♯4)。
すなわち、通電周期変更手段15は、ガス種判定手段14によりガス検知層10の雰囲気中にメタンガスが存在する場合には、ヒータ層6への通電を通常周期から短縮周期に変更する(ステップ♯8)。
このように、通常周期を短縮周期に変更して第2判定を行うのは、より精度を上げてメタンガスの検出を行うことに加え、背景技術において図15を用いて説明したように、ガス検知装置100のパッケージ強化に伴い検知応答性が低下(検知応答時間が増加)した場合でも、ガス漏れから警報を発するまでの時間が検知応答規定時間を超えない状態で、検出対象ガスを検出するためである。この場合、通電周期変更手段15は、周期的に繰り返される各検出タイミングの何れかが、検知応答時間以上、かつ、検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、通常周期を短縮した短縮周期とする。
【0063】
このステップ♯8により、例えば、図5に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置100の通電周期を通常周期45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から60s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段15が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第3回目の検出タイミング(55s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段15が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第5回目の検出タイミング(75s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、図5のケース3において、第3、第4回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
【0064】
ここで、図6に、複数のガス検知装置100について、通電周期変更手段15が上記のように通常周期を短縮周期に変更した場合、及び通常周期を短縮周期に変更しない場合に、ガス漏れ発生から警報までの時間(縦軸)と、検出タイミングからガス漏れ発生までの遅れ時間(横軸)との関係を示す。なお、図6では、通常周期は45s、短縮周期は10s、検知応答規定時間は60sに設定した。また、ガス検知装置の検知応答時間は、表1で示す検知応答時間が25s、45s、50sのものを用いた。具体的には、実施例1、2が表1において検知応答時間が45s、50sのそれぞれのガス検知装置100で、通常周期を短縮周期に変更する形態の本願の実施例である。一方、比較例1、2、3が表1において検知応答時間が25s、45s、50sのそれぞれのガス検知装置で、通常周期のみで短縮周期に変更しない形態の従来の例である。
図6から判明するように、本願に係る実施例1及び2では、検知応答時間が45s、50sと比較的長い(パッケージが強化され、非検出対象ガスによる影響を受けにくい)にも拘わらず、ガス漏れ発生の遅れ時間がどの値をとった場合でも、警報までの時間は検知応答規定時間である60sよりも短い時間となっており検知応答規定時間を超えることはなく、確実にかつ早期に警報を発することが可能となっている。
一方、比較例1では、ガス漏れ発生の遅れ時間がどの値をとった場合でも、警報までの時間は検知応答規定時間である60sよりも短い時間となっているが、検知応答時間が短い、すなわち、ガス検知装置の気密性や活性炭吸着層の機能が低い状態であり、非検出対象ガスの影響を受け易く、正確なメタンガスの検出を行うことが困難となる場合がある。
他方、比較例2、3では、検知応答時間が45s、50sと比較的長い(パッケージが強化され、非検出対象ガスによる影響を受けにくい)ものの、ガス漏れ発生の遅れ時間が所定の値をとった場合には、警報までの時間が検知応答規定時間である60sよりも長くなってしまい、検知応答規定時間を満足することができなくなっている。
よって、本願のように、通電周期変更手段15によりヒータ層6に通電する通常周期を短縮周期に短縮することにより、パッケージが強化されたガス検知装置100を用いて非検出対象ガスの影響を排除して、より正確な検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うことができ、また、ガス種に応じて必要な場合にのみ通常周期を変更(検出タイミングを変更)し無駄に変更が行われることを防止して、消費電力の低減を図ることができる。しかも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を極力短くして検知応答規定時間内に警報を発することができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、通電駆動手段12及び通電周期変更手段15が、通常周期を45sとし、短縮周期を10sとするとともに、ガス検知装置100に応じた検知応答時間を45s、50s等、及び検知応答規定時間を60sとしたが、検出タイミングが検知応答時間以上で検知応答規定時間よりも短い時間帯内となる構成であれば、これら具体的な数値に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、通常周期を100s、短縮周期を30sとし、検知応答時間を80s、検知応答規定時間を120sとすることもできる。
この場合、図7に示すように、検知応答時間80sの強化パッケージのガス検知装置100の通電周期を通常周期100s(検出タイミングが100s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)後、20s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース1)には、第2回目の検出タイミング(100s)である80s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から120s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、30s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから70s後の第2回目の検出タイミング(100s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段14が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期100sから短縮周期30sに短縮することにより、ガス漏れから100s後の第3回目の検出タイミング(130s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで100sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、50s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから50s後の第2回目の検出タイミング(100s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段14が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期100sから短縮周期30sに短縮することにより、ガス漏れから110s後の第4回目の(160s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで110sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、ケース3において、第3回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
【0066】
〔第3実施形態〕
上記第1及び第2実施形態では、図4のステップ♯8において通常周期を短縮周期に変更した後、ステップ♯4に戻って、検出タイミングにおける通電開始から200ms経過時における電気抵抗値が、警報閾値(第2閾値)以下であるかの第2判定を行う構成としたが、図8に示すように、この第2判定を行う前に、第1判定を行う構成とすることもできる。短縮周期における電気抵抗値に関し、第2判定による高精度な判定を行う前に簡易な第1判定を行うことにより(ステップ♯9)、第1判定により電気抵抗値が第1閾値よりも低下していないと判定した場合には(ステップ♯9:No)、第2判定を省略して通常周期に戻す(ステップ♯2)。一方で、当該第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下していると判定された場合には(ステップ♯9:Yes)、短縮周期に維持したまま当該短縮周期における電気抵抗値を用いて第2判定を行うことができる(ステップ♯4)。これにより、必要な場合にのみヒータ層6への通電を短縮周期に維持した状態でメタンガスの検出を行い、必要でなければ通常周期による通電に戻すことにより、消費電力の低減を図ることができる。なお、ステップ♯1から♯8については、図4と同様であるため説明を省略する。
【0067】
〔第4実施形態〕
上記第1実施形態では、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分または極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定したが、ガス種の判定はこれらに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを算出し、1階微分値が0以下の値であり、前記2階微分値が0以上の値である場合は、検知対象ガスであると判断することもできる。
すなわち、図9に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から50ms程度経過後から通電終了まで200msまでは、上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加していることから、この50msから200msの間において任意の電気抵抗値を検出して、この1階微分値と2階微分値を求めると、1階微分値が正の値となり、2階微分値が負の値となる。これによって、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。
一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合の電気抵抗値は、上記50msから200ms間では、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少していることから、1階微分値が0以下の値となり、2階微分値が0以上の値となる。従って、この求められた1階微分値と2階微分値の値が、1階微分値が0以下の値となり、2階微分値が0以上の値となる場合はメタンガスが存在すると判定することができる。
なお、上記では1点の電気抵抗値を用いてガス種を判定したが、より確実な判定のために2点以上の電気抵抗値を用いてガス種を判定してもよい。
また、より確実な判定のために、微分値を計算する点は、ノイズに影響されていない点における電気抵抗値として、さらに、データを移動平均して瞬時的変化を除去するなどの処理を行うこともできる。
【0068】
〔第5実施形態〕
上記第1実施形態では、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分または極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定したが、ガス種の判定はこれらに限定されるものではない。例えば、図10〜図12に示すように、複数の検出タイミングにおける電気抵抗値の1階微分値がすべて0以下となる場合は、検知対象ガス(メタンガス)であると判断することもできる。
すなわち、図10〜図12に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から50ms程度経過後から通電終了まで200msまでは、上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加していることから、この50msから200msの間において任意の複数の検出タイミングにおける電気抵抗値を検出して、これらの1階微分値を求めると、これらの検出タイミングにおける電気抵抗値の1階微分値がすべて正の値となる。これによって、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。
一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、上記50msから200ms間では、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少していることから、任意の検出タイミングにおける複数の電気抵抗値の1階微分値はすべて0以下の値となる。従って、複数の電気抵抗値の1階微分値の値がすべて0以下の値となる場合はメタンガスが存在すると判定することができる。
なお、図10は電気抵抗値を2点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この場合、通電経過時間が50ms(T1)および150ms(T2)とされる2点の電気抵抗値が検出されている。図11は電気抵抗値を3点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この場合、通電経過時間が50ms(T1)、100ms(T2)および150ms(T3)とされる3点の電気抵抗値が検出されている。
そして、図12は電気抵抗値を4点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この例では、通電経過時間が15ms付近(T1)、30ms付近(T2)、100ms(T3)および150ms(T4)とされる4点の電気抵抗値が検出されている。この場合、15ms付近(T1)、30ms付近(T2)において検出されたメタン以外のガスの電気抵抗値の1階微分値はメタンガスの場合と同様に0以下の値となる。
また、上記では2点〜4点の電気抵抗値を用いてガス種を判定したが、より確実な判定のために5点以上の検出点における電気抵抗値を用いてガス種を判定してもよい。
なお、より確実な判定のために、微分値を計算する複数の点は、ノイズに影響されないように互いに間隔が取られており、また、データを移動平均して瞬時的変化を除去するなどの処理を行うこともできる。
【0069】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態においては、ガス検出手段13が、第1判定を行った後、第2判定を行う構成としたが、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、第1判定を省略して、第2判定のみを行う構成とすることもできる。すなわち、図13に示すように、図4のフローチャートにおいてステップ#03を省略して、電気抵抗値が第1閾値より低下しているか否かを判定する第1判定を行わずに、電気抵抗値が警報閾値(第2閾値)以下であるか否かの第2判定を行うことができる。
【0070】
(2)上記実施形態においては、ガス検知層10(薄膜センサ素子20)の電気的特性として可変抵抗の電気抵抗値を用いてガス種及びメタンガスの存在を検出したが、特にこれに限定されるものではなく、ガス検知層10(薄膜センサ素子20)の固定抵抗の出力電圧を用いてガス種及びメタンガスの存在を検出することもできる。
【0071】
(3)上記実施形態においては、ガス検知層10を酸化スズ(SnO2)を主成分とする材料からなるものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、このような主成分材料としては、検出対象ガスに応じ、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe2O3)等も採用できる。
【0072】
(4)上記実施形態においては、内蔵された電池からの電力供給により駆動するように構成したが、特にこれに限定されるものではなく、ガス検知装置の設置箇所の近傍に固定電源が存在するのであれば、この固定電源から電力供給を受ける構成としてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態においては、図1に示したように、支持層5の上に設けられたヒータ層6の全体を覆う状態でSiO2膜からなる絶縁層7が設けられ、当該絶縁層7の上に一対の電極層9が設けられる構成を例示した。しかし、絶縁層7が設けられることなく、ヒータ層の上に電極層が設けられる構成であってもよい。また、電極層とヒータ層とが独立して設けられず、兼用される構成であってもよい。
【0074】
(6)上記実施形態においては、検出対象ガスをメタンガスとして説明したが、メタンガスと同様の電気的特性の変化状態をもつガスであれば、特に制限無く検出対象ガスとすることができる。
【0075】
(7)上記実施形態においては、ヒータ層への通電時間を一定時間(例えば200ms)としているが、例えば、第1判定の判定結果に基づいて、ヒータ層への通電時間を変更することもできる。すなわち、図14に示すように、電気抵抗値が第1閾値より低下しているか否かを判定する第1判定を行い、電気抵抗値が第1閾値より低下していなければ、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)とする(ステップ#09)。また、電気抵抗値が第1閾値より低下していると、ヒータ層への通電時間を通常通電時間よりも長い延長通電時間(例えば200ms)とする(ステップ#10)。このように、第1判定の判定結果に基づいて、電気抵抗値が第1閾値より低下していなければ、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)としておくことで、消費電力の低減を図ることができながら、電気抵抗値が第1閾値より低下していると、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)よりも長い延長通電時間(例えば200ms)として、その後に行う第2判定やガス種判定を精度良く行える。ちなみに、図14において、ステップ#09及びステップ#10以外の動作については、図4と同様であるので、その説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減を図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報を発することが可能なガス検知装置及びガス検知方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
6: ヒータ層
7: 絶縁層(電気絶縁層)
9: 電極層
10: ガス検知層
12: 通電駆動手段
13: ガス検出手段
14: ガス種判定手段
15: 通電周期変更手段
20: 薄膜センサ素子(センサ素子)
30: ガス流入口
31: 筐体
32: 活性炭吸着層(フィルタ手段)
100:ガス検知装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及びガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、ヒータ層通電時の検出タイミングにおけるガス検知層の電気的特性に基づいて、検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置、及びそのガス検知装置において実行されるガス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなガス検知装置においては、センサ素子は薄膜ガスセンサにより構成され、ヒータ層への通電を開始することにより、ガス検知層を検出対象ガスの種類に応じた適切な温度(例えば、400〜500℃程度)にまで加熱して、この温度を保持した状態におけるガス検知層の電気的特性(電気抵抗値、電圧値など)に基づいて検出対象ガスの有無及び濃度を検出する。この際には、ヒータ層に通電を行う通電駆動手段は、例えば、電池駆動により駆動されるため、できるだけ消費電力を少なくして長期間電池を交換することなく検出対象ガスを検出可能であることが必要とされている。そのため、薄膜ガスセンサを微細加工プロセスを用いて製造したダイヤフラム構造等の高断熱・低熱容量の構造とするとともに、通電駆動手段が、ヒータ層への通電を所定の周期で間欠的に行って消費電力を低減する構成を採用している(例えば、特許文献1参照)。
ここで、例えば、メタンガスやプロパンガス等の可燃性ガスである検出対象ガスを検出する場合、ヒータ層への通電の周期を30sとし、ヒータ層への通電を50〜500msの比較的短い時間行ってヒータ層の温度を高温(例えば、400〜500℃程度)に保持して、ガス検知層の電気抵抗値等を測定し(検出タイミング)、その後、ヒータ層への通電を停止して通電の開始から30sが経過するまで(通電の停止から29.95〜29.995sの間)停止状態を維持する。そして、再度通電を開始し、電気抵抗値を測定して、通電を停止することを繰り返し行う構成とされている。これにより、通電時間をできるだけ少なくし、検出対象ガスの検出を確実に行いながら、低消費電力化をも図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガス検知装置の設置環境においては、検出対象ガスであるメタンガス等や非検出対象ガスである酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、水蒸気等が共存する。また、微量ではあるが非検出対象ガスとして、ガス検知装置のセンサ素子にとって有害な有害ガス(特性劣化を引き起こす)やセンサ素子に干渉する干渉ガス(ガス検知層が抵抗変化し、あたかも検出対象ガスが存在するかのように振舞う誤検出を誘発するガス)など、種々のガス成分が一時的に共存する場合がある。
そのため、ガス検知装置においては有害ガス、干渉ガス等の影響を防止するため様々な対策が施されている。例えば、低沸点の炭化水素系ガス(エタノール、VOC)、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの干渉ガスに対しては、ガス検知層を被覆した選択燃焼層で選択的に燃焼しガス検知層の出力に影響が出ないような対策が講じられている。更にシリコンのような有害ガスに関しては、ガス検知装置内のガス検知層へ検出対象ガスが流入可能なガス流入口に活性炭吸着層(フィルタ手段)を設け吸着除去するような対策が講じられている。
上記のような様々な対策で非検出対象ガスである有害ガス、干渉ガス等の影響を防止しているが、それらのガスが長期共存するような環境でガス検知装置を使用すると徐々に特性が変化する場合がある。具体的には、空気中の電気抵抗値が顕著に低下したり、検出対象ガスがメタンガスの場合、ガス検知層における一酸化炭素ガスや水素ガスなどの干渉ガスに対する選択性が悪くなる場合がある(一酸化炭素ガス、水素ガスが共存してもガス検知層の電気抵抗値が低下し、あたかもメタンガスが存在するような挙動を示す、すなわち、誤検出することがある)。更にはガス検知層が鋭敏化する、すなわち、予めガス検知層の濃度特性から決めたメタン濃度で示す電気抵抗値が低下し、あたかもメタンガス漏れが発生したかのような誤報を発報する場合がある。
【0005】
このような特性劣化を防止するため、非検出対象ガスがガス検知装置内のガス検知層を備えたセンサ素子に到達するのを防止できるように、センサ素子のパッケージの強化が進められている。一例を挙げると、筐体の外部からセンサ素子が設けられた内部に、当該筐体に設けられたガス流入口以外から非検出対象ガスである干渉ガスや有害ガスが進入することを防止するため、パッケージの気密性向上(定期点検時に点検ガスをガス流入口近傍に設けられた活性炭吸着層を通さずに筐体内のセンサ素子へ直接流入するための点検口の廃止、筐体の構造を嵌め込み方式から溶接方式へ変更する等)や、ガス流入口に設ける活性炭吸着層の機能向上(活性炭量の増加、粒度分布の改善、充填密度の変更、機能の異なる活性炭の積層等)が行われている。
【0006】
しかしながら、このセンサ素子のパッケージの強化は、検出対象ガスの検知応答性とトレードオフの関係にある。すなわち、上述したパッケージの気密性向上により、検出対象ガスについても、有害ガスや干渉ガス等と同様に、基本的にガス流入口以外からの進入は不可能となる。また、活性炭吸着層の機能向上により、雰囲気中の検出対象ガスが、活性炭を通過しガス検知層表面に到達する時定数が増加し、検知応答性の低下につながってしまう。ここで、この検知応答性は、センサ素子が筐体の内部に設けられた状態において、筐体の外部で所定濃度の検出対象ガスが存在する場合に、当該検出対象ガスが筐体の内部に進入してセンサ素子のガス検知層に接触し、当該ガス検知層の電気抵抗値を所定の電気抵抗値にまで低下させるまでの時間(検知応答時間、すなわち筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達して、ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間)により判断される。例えば、表1に、センサ素子がパッケージ化された複数のガス検知装置について、ヒータ層に通電する周期を5sに設定し、雰囲気メタン濃度1.25%(12500ppm)中で警報を発するまでの時間を調査したものを示す。この表1から判明するように、雰囲気メタン濃度1.25%での応答性は、従来構造のパッケージでの検知応答時間が15〜25sであるのに対し、パッケージを強化すると検知応答時間が45〜50sと倍増していることがわかる。
よって、センサ素子のパッケージを強化すると、非検出対象ガスの影響を低減することができるが、検出対象ガスの検知応答性が低下することとなる。
【0007】
【表1】
【0008】
一方、上記検知応答性については満たすべき基準が別途規定されており、その規定により、例えば、検出対象ガスとしての引火性を有するメタンガスの場合には、雰囲気中のメタン濃度1.25%に対し、ガス漏れから60s以内(検知応答規定時間内)に警報を発することができる必要があるとされている。
このような状況で、ヒータ層への通電の周期に対応してガス検知層の電気抵抗値を検出する検出タイミングとガス漏れ発生のタイミングとの関係に加え、検知応答時間も考慮して、ガス漏れから警報を発するまでの時間が検知応答規定時間内である必要がある。従って、センサ素子のパッケージの強化により検知応答性が低下(検知応答時間が増加)すると、警報を発するまでの時間が長くなる場合があり、検知応答規定時間内に警報を発することができなくなるという問題がある。
【0009】
例えば、図15に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置の通電周期を45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後に警報し、検知応答規定時間(ガス漏れ発生から60s)内に警報できるが、一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報せず、ガス漏れから85s後の第3回目の検出タイミング(90s)で警報することになり、検知応答規定時間を満たさなくなる場合がある。すなわち、ケース2では、ガス漏れから警報を発するまで85sの時間が経過してしまっている。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報せず、ガス漏れから65s後の第3回目の検出タイミング(90s)で警報することになり、検知応答規定時間を満たさなくなる場合がある。すなわち、ケース3では、ガス漏れから警報を発するまで65sの時間が経過してしまっている。
【0010】
このため、従来、電池駆動を念頭としたガス検知装置において通電駆動手段がヒータ層に通電する周期は、パッケージ強化に伴う検知応答性の低下(検知応答時間の増加)と検知応答規定時間とを考慮し、例えば、検知応答規定時間を60sとした場合、検知応答時間40sのときは周期20s以内、検知応答時間50sのときは周期10s以内等の比較的短い時間間隔に設定しなければならず、通電の周期を長くすることができず低消費電力化の妨げとなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みて、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減を図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報を発することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成1〕
上記の目的を達成するための本発明に係るガス検知装置は、
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、
前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、
ヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間である検知応答時間と、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子の前記ガス検知層にて検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間とに関して、
前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段を備え、
前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する通電周期変更手段を備えた点にある。
【0013】
また、上記の目的を達成するための本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子を用いて、
通電駆動手段が前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させ、
ガス検出手段がヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検知方法であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定し、
通電周期変更手段が前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる時間の下限である検知応答時間以上、かつ、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子において検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する点にある。
【0014】
上記構成1のガス検知装置及びガス検知方法によれば、筐体の内部にセンサ素子(ガス検知層)が設けられ、外部から筐体の流入口及びフィルタ手段を介して検出対象ガスが流入するようにパッケージが強化されたガス検知装置において検出対象ガスを検出する場合に、ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定した上で、検出対象ガスを検出する検出タイミングが検知応答時間以上かつ検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように通常周期を変更するので、ガス種に応じて必要な場合にのみ検出タイミングを変更することができるとともに、変更された検出タイミングでは、確実に検知応答規定時間を超えないように検出対象ガスを検出することができる。
ここで、検知応答時間は、筐体の外部に存在する検出対象ガスが筐体の内部に設けられたセンサ素子に到達して、ガス検知層にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間であり、上記のようにパッケージが強化されたガス検知装置では、パッケージが強化されていないガス検知装置と比較して長い時間となる傾向にあるものである。また、検知応答規定時間は、筐体の外部に存在する検出対象ガスを、筐体の内部に設けられたセンサ素子のガス検知層にて検出することが必要とされる時間である。なお、検知応答時間は各ガス検知装置について予め計測したものを用いることができ、検知応答規定時間は法律等により予め定められている。
例えば、図5に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置の通電周期を通常周期45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から60s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段がガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第3回目の検出タイミング(55s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段がガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第5回目の検出タイミング(75s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、ケース3において、第3、第4回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
したがって、パッケージが強化されたガス検知装置を用いて非検出対象ガスの影響を排除して、より正確な検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うことができ、また、ガス種に応じて必要な場合にのみ通常周期を変更(検出タイミングを変更)し無駄に変更が行われることを防止して、消費電力の低減を図ることができる。しかも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を極力短くして検知応答規定時間内に警報を発することができる。
【0015】
〔構成2〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する点にある。
【0016】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成1のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する点にある。
【0017】
上記構成2のガス検知装置及びガス検知方法によれば、通電周期変更手段が、通常周期を検出タイミングが検知応答時間以上、かつ、検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、ガス種判定手段による判定結果が検出対象ガスである場合に、ヒータ層へ通電する通常周期をこの通常周期よりも短縮した短縮周期に変更するので、検出対象ガスが存在して、より精度の高い検出を行う必要がある場合にのみヒータ層の通電を短縮周期に変更して検出を行うことができ、一方で、検出対象ガスが存在しない場合には通常周期のまま検出を行い消費電力の低減を図ることができる。また、パッケージが強化されたガス検知装置において検知応答時間が長くなっているときでも、検出タイミングの周期を短くして、より早期に検出対象ガスを検出することができ、ガス漏れ発生から検出するまでの時間を確実に検知応答規定時間よりも短くすることが可能となる。
よって、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減をより確実に図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報をより確実に発することができる。
【0018】
〔構成3〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1又は2のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う点にある。
【0019】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成1又は2のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う点にある。
【0020】
上記構成3のガス検知装置及びガス検知方法によれば、ガス検出手段が、ガス種判定手段によるガス種の判定前に、検出タイミングにおけるガス検知層の電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行うので、ガス種判定手段によるガス種の判定及び通電周期変更手段による通電周期の変更を、第1判定による検出タイミングにおける電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの結果に基づいて行うことができ、例えば、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合にはガス漏れが生じている可能性があるため、より精度の高い検出を行うこととし、第1閾値以上である場合にはガス漏れが生じていないものとして、通常周期での検出対象ガスの検出を行うことができる。
これにより、第1判定により簡易な判定を行って、ガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
【0021】
〔構成4〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成3のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う点にある。
【0022】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成3のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う点にある。
【0023】
上記構成4のガス検知装置及びガス検知方法によれば、ガス検出手段が、第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合に、さらに、第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した検出タイミングにおける電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも小さな値の第2閾値(警報閾値)以下か否かの第2判定を行うので、第1判定においてガス漏れの可能性があると判定された場合に、より精度の高い第2閾値により第2判定を行い、ガス漏れか否かをより正確に判定することが可能となる。なお、この第2判定では、検出タイミングにおける電気抵抗値のうち、第1判定に用いた電気抵抗値より後に検出される安定した状態の電気抵抗値が用いられ、さらに、第1閾値よりも厳しい基準の第2閾値が用いられるため、第1判定よりも精度の高い判定を行うことができる。例えば、第2判定において、電気抵抗値が第2閾値以下である場合にはガス漏れが生じているものとしてガス漏れ警報を発し、第2閾値を超えている場合にはガス漏れが生じているか否か確定することができないので、より正確に判定するため、ガス種判定手段によるガス種の判定を行う構成とすることができる。
【0024】
〔構成5〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成4のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、更に、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う点にある。
【0025】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記特徴構成を有するガス検知装置により好適に実行されるものであり、上記構成4のガス検知方法の手段に加えて、その特徴手段は、前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う点にある。
【0026】
上記構成5のガス検知装置及びガス検知方法によれば、第2判定において電気抵抗値が第2閾値を超えている場合にガス種を判定し、判定結果が検出対象ガスである場合には、通常周期を短縮周期に変更して、変更後の短縮周期での検出タイミングにおいて検出された電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行うので、短縮周期のまま検出を継続するか、通常周期に戻して検出を継続するかを当該第1判定の結果に基づいて決定することができる。例えば、当該第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下していない場合には、通常周期に戻して第1判定や第2判定を繰り返し行い、第1閾値以下である場合には、短縮周期のままとし、さらに第2判定を行って、検出対象ガスの検出を継続することができる。
よって、必要な場合にのみ短縮周期による通電を継続し、必要でなければ通常周期による通電に戻すことにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0027】
〔構成6〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から5の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性として電気抵抗値の変化状態を用いて、前記雰囲気中に存在するガス種を判定する点にある。
【0028】
上記構成6のガス検知装置によれば、ヒータ層通電時のガス検知層の電気抵抗値の変化状態を用いて、雰囲気中に存在するガス種を判定するので、検出対象ガスであるメタンガスであるか、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素など)であるかを正確に判定することができる。
ここで、ガス種がメタンガスの場合には、例えば、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係は、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の値に近づいて安定化する軌跡を描くものである。
一方、ガス種がメタンガス以外のガスの場合には、例えば、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係は、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の極小値を経て漸近増加に転じる軌跡を描くものである。この漸近減少は、センサ素子のガス検知層などに吸着した一酸化炭素や水素などのガスが、ヒータ層への通電が行われてガス検知層の温度が上昇する際に燃焼されることにより生じているものである。
したがって、ガス検知層の雰囲気中のガス種を判定するに当たり、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との軌跡が、どのような軌跡を描くかを調べることにより、正確かつ簡便にガス種を判定することができる。
【0029】
〔構成7〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記電気抵抗値の差分を用いる点にある。
【0030】
上記構成7のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の通り、極小値から漸近増加する部分を有するため、複数の電気抵抗値を抽出してその差分(通電時間の長い電気抵抗値から通電時間の短い電気抵抗値を引いたときの値)をとることにより、その差分が正となる場合にはメタンガス以外のガスであると即座に判定することができる。
【0031】
〔構成8〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の極小値の出現を用いる点にある。
【0032】
上記構成8のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の通り、極小値を有するため、この極小値の出現(存在)を抽出することにより、この極小値が出現(存在)する場合にはメタンガス以外のガスであると即座にガス種を判定することができる。この極小値は、ヒータ層通電時において時間的に比較的早く現れるため短い時間でガス種を判定することができる。なお、メタンガスの場合には、電気抵抗値は所定の値に安定化するため極小値は存在しない。
【0033】
〔構成9〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを用いる点にある。
【0034】
上記構成9のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の極小値の出現後に、その極小値から上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加する形状の軌跡となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、電気抵抗値は下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少する。このように、メタンガスの電気抵抗値は、それ以外のガスの電気抵抗値と異なる軌跡を示すため、この1階微分値と2階微分値を求めることによって、ガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上昇しつつ極小値の出現後に漸近線を描くように増加する形状の軌跡となるので、極小値の出現後に1階微分値が正の値となり、2階微分値が負の値となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、下降しつつ極小値の出現後に漸近線を描くように減少する軌跡となるので、極小値が出現することなく1階微分値が0以下の値を維持し、2階微分値が0以上の値となる。従って、このように1階微分値と2階微分値の正負関係を確認することで、ガス種を判定することができる。
【0035】
〔構成10〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成6のガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値を用いる点にある。
【0036】
上記構成10のガス検知装置によれば、短い時間での電気抵抗値の変化によりガス種を判定することができるので、より簡便にガス種を判定することができる。
すなわち、メタンガス以外のガスの通電時間と電気抵抗値との関係(軌跡)は、上述の極小値の出現後に、その極小値から上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加する軌跡となる。一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描く軌跡となる。従って、メタンガス以外のガスの1階微分値が極小値の出現後、正の値となるのに対して、メタンガスの1階微分値は0以下の値となる。これにより、電気抵抗値の1階微分値によって、ガス種を判定することができる。また、電気抵抗値の一つの検出タイミングにおける1階微分値よりも複数の検出タイミングにおける1階微分値によってガス種を判定することで、計測のエラーやノイズなどによる誤判定をなくして、ガス種を正確に判定することができる。
【0037】
〔構成11〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から10の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、前記センサ素子が、電気絶縁層と、酸化物半導体からなる前記ガス検知層と、前記ガス検知層の前記電気的特性としての電気抵抗値を検出する一対の電極層とを備えた薄膜センサ素子である点にある。
【0038】
上記構成11のガス検知装置によれば、センサ素子が薄膜状の薄膜センサ素子により構成されているので、薄膜センサ素子を構成するガス検知層の熱容量は非常に小さく、ヒータ層からの熱の入力に対し非常に応答性が高く構成することができる。
【0039】
〔構成12〕
本発明に係るガス検知装置は、上記構成1から11の何れかのガス検知装置の構成に加えて、その特徴構成は、内蔵された電池からの電力供給により駆動する点にある。
【0040】
上記構成12のガス検知装置によれば、ガス検知装置は、内蔵された電池からの電力供給により駆動するので、固定の電源の近傍に設置する必要が無くなり、設置性が向上する。
また、上記ガス検知装置においては、ヒータ層への通電を通電時間ができるだけ短くなる周期で行うとともに、通電周期を必要なときのみ短縮し、必要でない場合はできるだけ長い周期の通常周期が採用されているため、消費電力が低減されており、内蔵する電池を用いた場合であっても、所定の期間充分に稼動を続けることができるガス検知装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガス検知装置の検知システムの概略構造を示す図
【図2】ガス検知装置の具体的構造を示す図
【図3】ヒータ層への通電時間と電気抵抗値との関係を示すグラフ図
【図4】第1実施形態に係る第1判定、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図5】第1実施形態に係る通常周期の短縮、及びガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【図6】通常周期の変更を行った場合と行わなかった場合における、ガス漏れ発生から警報までの時間と検出タイミングからガス漏れ発生までの遅れ時間との関係を示すグラフ図
【図7】第2実施形態に係る通常周期の短縮、及びガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【図8】第3実施形態に係る第1判定、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図9】第4実施形態に係るガス種判定のための電気抵抗値の検出範囲を示す図
【図10】第5実施形態に係るガス種判定のための2点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図11】第5実施形態に係るガス種判定のための3点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図12】第5実施形態に係るガス種判定のための4点の電気抵抗値の検出点の一例を示す図
【図13】別実施形態に係る第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図14】別実施形態に係る第1判定、通電時間の変更、第2判定、ガス種判定及び通常周期の変更を示すフロー図
【図15】従来のガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るガス検知装置100の第1実施形態について詳細を説明する。
ガス検知装置100は、図1に示すように、検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層10及びガス検知層10を加熱するヒータ層6を形成した薄膜センサ素子(センサ素子の一例)20と、ヒータ層6へ所定の通常周期で通電を行って、ガス検知層10の温度を変化させる通電駆動手段12と、ヒータ層6への通電時(検出タイミング)のガス検知層10の電気抵抗値(電気的特性の一例)に基づいて検出対象ガスを検出するガス検出手段13と、ヒータ層6への通電時のガス検知層10の電気抵抗値(電気的特性の一例)に基づいてガス検知層10の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段14と、ガス種判定手段14によるガス種の判定結果に応じて所定の通常周期を通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する通電周期変更手段15と、これらに電力供給するリチウム電池(図示せず)とを備えて構成される。
また、ガス検知装置100では、図2に示すように、薄膜センサ素子20は、検出対象ガスを流入可能な流入口30を備えた筐体31の内部に設けられ、ガス流入口30から筐体の内部に至る間の流路には非検出対象ガスが付着する活性炭吸着層(フィルタ手段の一例)32が設けられている、したがって、薄膜センサ素子20には、外部から流入口30を介してのみ検出対象ガス等が流入されるように構成されており、ガス検知装置100は流入口30以外の箇所が密閉された状態でパッケージ化されている。
なお、後述するように、ガス検知装置100においては、検出対象ガスは、例えば、メタンガスとされており、基本的には、ヒータ層6への通電を所定の周期で断続的に行って、ヒータ層6への通電時の終了間際の高温状態において、ガス検知層10の電気抵抗値が比較的安定する状態(図3では、通電開始から200ms経過時)にてメタンガスを検出するように構成されている。
【0043】
なお、図1及び図2は、ガス検知装置100の概略構成を示す図であり、図3は、ヒータ層6への通電時における、空気、空気に1000ppmの濃度で含まれるメタンガス、空気に4000ppmの濃度で含まれるメタンガス、空気に4000ppmの濃度で含まれる水素ガス、空気に500ppmの濃度で含まれる一酸化炭素ガス、それぞれの通電時間と電気抵抗値との関係を示しており、図4は、ガス検出(第1判定及び第2判定)、ガス種判定及び通電周期の変更を示すフローを示している。
【0044】
〔薄膜センサ素子〕
図1に本発明の実施形態に用いた薄膜センサ素子20の構造を示す。
薄膜センサ素子20は、薄膜状の支持層5の外周部又は両端部がSi基板1により支持されたダイアフラム構造の支持基板上に、検出対象ガスの有無及び濃度の少なくとも一方により電気的特性としての電気抵抗値が変化するガス検知層10、及びガス検知層10を加熱するためのヒータ層6を形成して構成されている。
【0045】
次に、薄膜センサ素子20の詳細な構造及び製造方法を説明する。
薄膜センサ素子20は、半導体プロセスによりSi基板1上に、熱酸化膜2、Si3N4膜3、SiO2膜4が順次積層された支持層5を設けて構成され、さらにこの支持層5の上にヒータ層6を設け、当該ヒータ層6の上側に全体を覆う状態でSiO2膜からなる絶縁層(電気絶縁層の一例)7を設けるとともに、当該絶縁層7の上に一対の電極層9を設け、当該一対の電極層9上及びこれら電極層9に渡ってガス検知層10を設けて構成される。さらに、図1に示す例の場合は、一対の電極層9およびガス検知層10の全体を覆う形態で、選択燃焼層11が設けられている。その各々の層厚は0.1〜50μm程度のものである。そして、薄膜センサ素子20による一回のガス検出のために必要な期間の消費電力量が8.0mJ未満とされ、通電を開始してからガス検知層10の温度が所定の高温状態となるまでの薄膜センサ素子20の応答時間は、50〜100msとなる。
ガス検知層10は、例えば酸化スズ(SnO2)のn型半導体を、スパッタリング法などにより形成したものである。
【0046】
選択燃焼層11は、金属酸化物からなる担体上に触媒を担持して構成されるものであり、触媒を担持した金属酸化物をバインダーを介して互いに結合させて層状に構成するものである。
触媒としては、検出対象ガスに対して干渉ガスともなる還元性ガスを酸化除去できる、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等を使用する。
担体を構成する金属酸化物としては、例えばアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジュウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化銅(CuO)あるいはこれらの混合物等を使用できる。
また、上記の金属酸化物(触媒を担持する金属酸化物)同士を結合させるバインダーとしては、例えばアルミナ微粉末、アルミナゾル、シリカ微粉末、シリカゾル、マグネシアを使用することができる。
ここで、上記のような触媒、金属酸化物、バインダーはいずれも、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0047】
薄膜センサ素子20は、以下のように製造される。
図1に示すように、両面に熱酸化膜2が付いたSi基板1上に、ダイアフラム構造の支持層5として、Si3N4膜3、SiO2膜4を、順次プラズマCVD法にて形成する。次にダイアフラム構造の中央部分にヒータ層6、このヒータ層6を覆うようにSiO2絶縁層7を、順にスパッタ法で形成する。その上に一対の接合層8、この接合層8の上に一対の電極層9を形成する。成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行なう。成膜条件は接合層(TaまたはTi)8、電極層(PtまたはAu)9とも同じで、Arガス圧力1Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cm2、膜厚は、例えば接合層8/電極層9=500Å/2000Åとする。
【0048】
次に、前記一対の電極層9上及びこれら電極層9に渡ってガス検知層10であるSnO2膜を成膜する。成膜にはRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリング法によって行なう。ターゲットにはSbを0.5質量%有するSnO2を用いる。成膜条件はArガス圧力2Pa、基板温度150〜300℃、RFパワー2W/cm2である。ガス検知層10の大きさは50〜200μm角程度、厚さは、例えば、0.2〜1.6μm程度が望ましい。
【0049】
ガス検知層10の上にはAl2O3、Cr2O3などの多孔質金属酸化物からなる担体にPdまたはPtなどの貴金属酸化触媒を担持し、無機バインダーと溶剤でペースト状にした選択燃焼層材料をスクリーン印刷法により塗布し、500℃で1時間以上焼成することによって、ガス検知層10の全体を覆うように選択燃焼層11を形成する。選択燃焼層11は、ガス検知層10の全体を十分に覆いきる大きさに形成する必要がある。最後に、Si基板1の裏面よりエッチングによりSi(シリコン)を除去し、ダイアフラム構造とする。
選択燃焼層11の役割は、検出対象ガスであるメタンガス以外の水素ガス、一酸化炭素ガス、アルコールガスなどの還元性ガス(非検出対象ガス)を燃焼してガス検知層10に到達しないようにし、薄膜センサ素子20にガス選択性を持たせることにある。さらに、ガス検知層10の表面に酸素を供給することにより、感度を向上する役割をも果たしていると考えられる。
この選択燃焼層11に含まれるPdまたはPtなどの貴金属酸化触媒の担持量は、5〜9質量%(触媒質量/(触媒+担体)質量×100)とする。
【0050】
〔筐体、活性炭吸着層〕
筐体31は、図2に示すように、薄膜センサ素子20を載置して固定可能な円板状のベース31aと、ベース31aに載置固定された薄膜センサ素子20を内部に収容することが可能な円筒状のキャップ31bとを備えて構成されている。この筐体31は、薄膜センサ素子20が内部に設けられた状態のベース31a上にキャップ31bの一端側が溶接され、さらにキャップ31bの他端側には外部から検出対象ガスを流入可能なガス流入口30が形成されて構成されている。このガス流入口30には、ステンレス等の金網が張設されて、検出対象ガスを流入可能に構成されている。従って、筐体31は、ガス流入口30以外から検出対象ガス及び非検出対象ガス等が出入することが困難となるように密閉された状態で、パッケージ化して構成されている。なお、キャップ31bは、ステンレス等のメタルキャップとして、薄膜センサ素子20のパッケージ化を強化する構成とすることもできるが、樹脂等のキャップとして差込式で固定するようにしてもよい。ベース31aは、ベース31aの表裏を貫通する複数本のステムにより支持されている。
さらに、筐体31内において、外部からガス流入口30である金網を通過した箇所には、非検出対象ガスを吸着除去するための活性炭吸着層32が、ステンレス等の活性炭用金網33により支持固定された状態で設けられている。
この活性炭吸着層32は、例えば、活性炭、シリカゲル、あるいは、それら活性炭とシリカゲルとを組み合わせた材料にて形成されている。
そして、ガス流入口30からキャップ31b内に流入するガス中に含まれる非検出対象ガス(例えば、アルコール等の有機溶剤のガス、シリコン蒸気、NOx)等を活性炭吸着層32により吸着除去する構成となっている。なお、活性炭吸着層32は、活性炭量の増加、粒度分布の改善、充填密度の変更、機能の異なる活性炭の積層等を調整して、薄膜センサ素子20のパッケージを強化する構成とすることもできる。例えば、表1で示したような、各種パッケージとして構成することが可能である。なお、上述したように、薄膜センサ素子20のパッケージを強化すると、非検出対象ガスの影響を低減することができるが、検出対象ガスの検知応答性が低下することとなる。なお、検知応答時間は、筐体31の外部に存在する検出対象ガスが筐体31の内部に設けられた薄膜センサ素子20に到達して、ガス検知層10にて検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間であり、上記のようにパッケージが強化されたガス検知装置100では、パッケージが強化されていないガス検知装置100と比較して長い時間となる傾向にある。
ここで、本実施形態における図5、図7に示す例では、薄膜センサ素子20のパッケージとして、表1に示す強化構造で標準活性炭、厚さ2倍(通常の厚さに対し2倍)、メタルキャップ溶接式の構成を採用し、検知応答時間が45sのものを採用している。
【0051】
〔通電駆動手段〕
次に、通電駆動手段12は、ヒータ層6へのパルス状の通電を所定の通常周期で断続的に行って、ガス検知層10の温度を高温状態と低温状態との間で繰り返し変化させることができるように構成されている。このパルス通電は、例えば、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔を45s周期とし、その45sのうち、ヒータ層通電を200msの間実施し、44.80sの間実施しないように、断続的に(繰り返し)行うことができる。すなわち、図5における検出タイミングが、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔(45s周期)で存在する。
また、通電駆動手段12は、後述する通電周期変更手段15から通電周期を変更する通電周期変更信号を受信したときは、通常周期をこの通常周期よりも短縮した短縮周期とすることができるように構成されている。このときのパルス通電は、例えば、パルス通電から次のパルス通電が行われるまでの間隔を10s周期とし、その10sのうち、ヒータ層通電を200msの間実施し、9.80sの間実施しないように、断続的に(繰り返し)行うことができる(図3、図5参照)。
ここで、メタンガスを良好に検出することができる上記高温状態は、検出対象ガスに応じて設定することができ、例えば、メタンガスの場合には、350℃〜450℃(高温状態)とすることにより精度高く検知することができる。
また、通電駆動手段12がヒータ層6を高温状態にまで加熱する際には、薄膜センサ素子20の周囲温度を検出して、この周囲温度に応じて補正を行った上で、ヒータ層6への通電を制御することが好ましい。これにより、適切な通電により、ヒータ層6の温度を高温状態にまで正確に加熱することができる。
【0052】
〔ガス検出手段〕
ガス検出手段13は、ガス検知層10の温度が検出対象ガスを精度高く検出可能な温度になった状態(高温状態)での、ガス検知層10の電気抵抗値に基づいて、検出対象ガスの有無や濃度を検出することができるように構成されている。すなわち、ヒータ層6に通電してメタンガス存在下でガス検知層10が高温状態となるに従い、このガス検知層10の電気抵抗値が低下して所定の電気抵抗値に近づいて安定化するため、この安定化した電気抵抗値を用いることにより、メタンガスの有無や濃度を正確かつ精度の高い状態で検出することができる。なお、上記電気抵抗値は、薄膜センサ素子20中に直列に設けられた固定抵抗と可変抵抗のうち、可変抵抗の電気抵抗値を意味している。
具体的には、図3に示すように、本実施形態において、上記通電駆動手段12による通電が開始されてからヒータ層6への通電が終了する200ms経過時点までとされる時間帯内において、安定化した電気抵抗値が得られるのは、ヒータ層6への通電が終了する間際である200ms経過時であるので、この200ms経過時にメタンガスを検出するように設定されている(図3上、第2判定と記載)。したがって、ガス検知層10の雰囲気中にメタンガスが存在する場合と存在しない場合の電気抵抗値や、雰囲気中(例えば、空気中)に特定の濃度のメタンガスが存在する場合の電気抵抗値を予めガス検知装置(薄膜センサ素子)ごとに設定しておき、この設定結果と通電開始から200ms経過時に検出した電気抵抗値とを比較することにより、メタンガスの有無や濃度を検出することができる。例えば、通電開始から200ms経過時に検出した電気抵抗値がメタンガス漏れ用の警報閾値(メタンガスが空気中に2000ppm程度の濃度で存在する場合の電気抵抗値:第2閾値の一例)よりも低下している場合(メタンガスが空気中に4000ppmの濃度で存在する場合など)には、メタンガスが漏れているものとしてガス漏れを検出することができる。
一方、ガス検出手段13は、通電駆動手段12による通電が開始されてヒータ層6への通電が終了する間際である200ms経過時の電気抵抗値を用いて上記第2判定を行う前、すなわち、通電が開始された後、第2判定が行われる前に検出した電気抵抗値を用いて第1判定を行うことが可能に構成されている。この際には、上記第2判定において、第2閾値としての警報閾値よりも大きな電気抵抗値の第1閾値を用いて第1判定を行うことにより、第2判定よりも緩い基準で簡易な判定を第2判定よりも先に行うことができる。これにより、第1判定により簡易な判定を行ってガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定(第2判定等)を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
具体的には、図3に示すように、第1判定では、通電開始から100ms経過時に検出した電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合には、第2判定を行う必要があるものとして判断する。ここで、第1閾値は、例えば、空気中に比較的低濃度(例えば、1000ppm程度)のメタンガスが存在する場合と、空気中に水素ガス(例えば、4000ppm程度)や一酸化炭素ガス(例えば、500ppm程度)等のメタンガス以外のガスが存在する場合とをある程度弁別することができる電気抵抗値に設定されるとともに、さらに、第1判定が行われるタイミングは、第1閾値が上記のような弁別ができるようなヒータ層6への通電の開始からの経過時間(図3では、100ms程度)に設定されている。これにより、精度は低いものの、第1閾値よりも電気抵抗値が低下していない場合には、空気や比較的低濃度のメタンガスが存在しており、警報の必要がないと判断して、第2判定を省略でき、一方、電気抵抗値が低下している場合は、メタンガス以外のガスや比較的高濃度のメタンガスが存在している可能性が高いものと判断して、より精度の高い第2判定を行うことができる。
したがって、本実施形態において、ガス検出手段13は、第1閾値による第1判定を行い、必要に応じて第2判定を行うように構成されている。なお、第2判定が行われた結果に従って、後述するガス種判定手段14によるガス種の判定が行われる。
【0053】
〔ガス種判定手段〕
ガス種判定手段14は、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了間際程度(例えば、20〜200ms、好ましくは、20〜100ms、より好ましくは20〜80ms程度)の電気抵抗値の変化状態に基づいて、ガス検知層10の雰囲気中に存在するガスの種類を検出することができるように構成されている。ここで、図3に示すように、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との関係(変化状態)は、空気中に含まれるガス種がメタンガスの場合、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の値に安定化する軌跡を描くものであり、一方、空気中に含まれるガス種がメタンガス以外の場合、時間が経過するにつれ電気抵抗値が漸近減少し、所定の極小値を経て漸近増加に転じる軌跡を描くものである。したがって、ガス種判定手段14により、ガス検知層10の雰囲気中のガス種を判定するに当たり、ヒータ層通電時における通電時間と電気抵抗値との軌跡が、どのような軌跡を描くかを調べることにより、正確かつ簡便にガス種(検出対象ガスであるメタンガスか、メタンガス以外の一酸化炭素ガス若しくは水素ガス等か)の判定をすることができる。
【0054】
具体的には、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分に基づいて空気中に含まれるガス種を判定する。
すなわち、図3に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から40ms程度経過後、100ms程度経過するまでの間では漸近増加していることから、この40msから100ms間程度での電気抵抗値を2点(例えば、40ms時と60ms時、60ms時と80ms時など)で検出して、通電時間の長い方の電気抵抗値から短い方の電気抵抗値を引いた値(差分)が、正であるときは、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。一方、メタンガスの場合の電気抵抗値は、上記40msから100ms間では、漸近減少して安定化していることから、上記差分が負であるときは、メタンガスが存在すると判定することができる。なお、図3では、空気に1000ppmの濃度でメタンガスが含まれている場合の電気抵抗値は、第1閾値付近で安定化しつつある。上記では2点の電気抵抗値を用いて差分をとったが、3点以上の電気抵抗値の差分をとってもよく、また、電気抵抗値の微分値から傾きを検出して、ガス種を判定してもよい。
【0055】
また、ヒータ層通電時における極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定することもできる。
すなわち、図3に示すようにヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、通電開始から漸近減少し、例えば、20ms程度経過後40ms程度経過するまでの間で極小値を迎え、40ms程度経過後100ms程度経過するまで漸近増加している。したがって、3点(例えば、20ms時、40ms時、60ms時など)の電気抵抗値を検出して、これら電気抵抗値のうち40ms時の電気抵抗値が一番小さい値となっているなど、20ms時から60ms時までの間で電気抵抗値が極小値を有しているときには、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。一方、メタンガスの場合の電気抵抗値は、通電開始から100msの間では、漸近減少して安定化していることから極小値は存在せず、上記3点(例えば、20ms時、40ms時、60ms時など)の電気抵抗値が極小値を有しないときは、メタンガスが存在すると判定することができる。なお、この際には、さらに、4点以上の電気抵抗値をとってもよく、また、電気抵抗値の微分値から傾きを検出して、ガス種を判定するようにしてもよい。
【0056】
〔通電周期変更手段〕
通電周期変更手段15は、所定の通常周期を通常周期よりも短縮した短縮周期に変更することができるように構成されている。すなわち、通電周期変更手段15は、ガス種判定手段14によるガス種の判定結果に従って、判定結果が検出対象ガスとしてのメタンガスである場合には、通常周期を短縮周期に変更し、一方、判定結果がメタンガス以外のガスの場合には通常周期をそのままの値に維持するように構成されている。これにより、ガス検知層10の雰囲気中に存在するガス種に応じて通電周期を短縮するか否かを判断することができるので、ガス種に応じて短縮が必要な場合にのみ通常周期を短縮して、メタンガスを検出することが可能となる。例えば、図5では、通電周期変更手段15が、通常周期45sを短縮周期10sに短縮するように構成される例を示し、変更後の短縮周期10sを維持して複数の検出タイミングにてメタンガスの検出を行う例も示している。
そして、通電周期変更手段15は、短縮周期における検出タイミングが、検知応答時間以上で、かつ、検知応答規定時間よりも短い時間帯内となるように通常周期を短縮周期に短縮することができるように構成されている。検知応答規定時間は、筐体31の外部に存在する検出対象ガスを、筐体31の内部に設けられた薄膜センサ素子20のガス検知層10にて検出することが必要とされる時間である。なお、検知応答時間は各ガス検知装置について予め計測したものを用いることができ、検知応答規定時間は法律等により予め定められており、これらはガス検知装置100に設けられたメモリ(図示せず)等に記憶されている。
【0057】
〔電池〕
電池は、ガス検知装置100の内部に配置されて、上記各手段に電力を供給するように構成されている。例えば、耐用年数の比較的長いリチウム電池を用いる。
【0058】
〔メタンガスの有無および濃度の検出、ガス種の判定、通電周期変更〕
以下、図3から図6を用いて、上記構成のガス検知装置100における、ガス検知層10の雰囲気(空気)中に存在するメタンガスの存在の有無・濃度の検出(第1判定、第2判定)、ガス種の判定、及び通常周期の変更に関し、以下に説明する。
【0059】
まず、ガス検出手段13による第1判定について説明すると、図4に示すように、通電駆動手段12によりヒータ層6に通電が開始されると(ステップ#1)、通電の開始から200msが経過するまで通電が行われ、その後通電を停止して通電の開始から45s経過時に再度加熱をする通常周期で、通電と通電の停止が繰り返される(ステップ♯2)。すなわち、図3に示すように、通電の開始から200msが経過するまでの通電時間に、ガス検出手段13により第1判定及び第2判定が行われ、この第1判定や第2判定を行うタイミングが検出タイミングである。
そして、ガス検出手段13は、通電開始から100ms経過時にガス検知層10の電気抵抗値を検出して、この電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う(ステップ#3)。電気抵抗値が第1閾値よりも低下していない場合には(ステップ#3:No)、ガス検知層10の雰囲気には、空気、或いは空気中に比較的低濃度(例えば、1000ppm程度)のメタンガスが存在するものとして(図3参照)、ステップ#2に戻り通常周期にて第1判定による検出を行う。一方、電気抵抗値が第1閾値よりも低下している場合には(ステップ#3:Yes)、空気中に水素ガス(例えば、4000ppm程度)や一酸化炭素ガス(例えば、500ppm程度)等のメタンガス以外のガス、或いはメタンガスが高濃度(例えば、4000ppm程度)で存在する可能性があるものとして(図3参照)、より高精度な第2判定を行うためステップ♯4に進む。これにより、第2判定を行う前に、第1判定により簡易な判定を行って、所定濃度以上のメタンガス漏れが生じていないと考えられる場合には、より精度の高い判定を省略することにより、簡易な構成とするとともに消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
次に、ガス検出手段13は、通電開始から200ms経過時にガス検知層10の電気抵抗値を検出して、この電気抵抗値が警報閾値(第2閾値)以下であるか否かの第2判定を行う(ステップ#4)。電気抵抗値が警報閾値以下である場合には(ステップ#4:Yes)、比較的高濃度のメタンガス(例えば、空気中に4000ppm程度)が存在しているものとして、ガス漏れ警報を発する(ステップ♯6)。これにより、電気抵抗値が警報閾値以下となることにより、雰囲気中のメタンガス濃度が所定の濃度よりも濃くなったものと判断でき、この場合、ガス検知装置100の周囲に存在する人にスピーカ等からの警報の発生や液晶ディスプレイでの警報の表示などにより、メタンガス漏れの異常状態の発生を報知することができる。
一方で、電気抵抗値が警報閾値を超えている場合には(ステップ#4:No)、第1判定における電気抵抗値が第1閾値よりも低下している原因が、メタンガス以外のガスによるものかメタンガスの影響によるものかを特定することができないため、ガス種判定手段14によりガス種の判定を行う(ステップ#5)。
【0061】
ガス種判定手段14は、ガス検出手段13により検出されたヒータ層6への通電の開始から200ms経過時における電気抵抗値の変化状態に基づいて、ガス検知層10の雰囲気中のガス種を判定する。すなわち、上記ガス種判定手段14の説明のように、例えば、2点(40ms時と60ms時)の電気抵抗値を検出してその電気抵抗値の差分が、正であれば空気にメタンガスを含まれない(ステップ#7:No)と、負であれば空気にメタンガスが含まれる(ステップ#7:Yes)とガス種を判定する。メタンガスが含まれない、すなわち、メタンガス以外のガスが存在する場合には(ステップ#7:No)、メタンガス漏れが生じていないものとしてステップ#2に戻り、通常周期にて第1判定による検出を行う。メタンガスが含まれる場合には(ステップ#7:Yes)、ステップ♯4に戻り、高濃度のメタンガスが存在しているか否かを再度判定する(第2判定)。
【0062】
ここで、ステップ♯4において再度、第2判定を行う際には、通電周期変更手段15が通常周期を短縮周期に変更して(ステップ♯8)、短縮周期における検出タイミングでの電気抵抗値を用いて、第2閾値と比較する第2判定が行われる(ステップ♯4)。
すなわち、通電周期変更手段15は、ガス種判定手段14によりガス検知層10の雰囲気中にメタンガスが存在する場合には、ヒータ層6への通電を通常周期から短縮周期に変更する(ステップ♯8)。
このように、通常周期を短縮周期に変更して第2判定を行うのは、より精度を上げてメタンガスの検出を行うことに加え、背景技術において図15を用いて説明したように、ガス検知装置100のパッケージ強化に伴い検知応答性が低下(検知応答時間が増加)した場合でも、ガス漏れから警報を発するまでの時間が検知応答規定時間を超えない状態で、検出対象ガスを検出するためである。この場合、通電周期変更手段15は、周期的に繰り返される各検出タイミングの何れかが、検知応答時間以上、かつ、検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、通常周期を短縮した短縮周期とする。
【0063】
このステップ♯8により、例えば、図5に示すように、検知応答時間45sの強化パッケージのガス検知装置100の通電周期を通常周期45s(検出タイミングが45s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)と同時にガス漏れが発生した場合(ケース1)は、第2回目の検出タイミングである45s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から60s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、5s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから40s後の第2回目の検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段15が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第3回目の検出タイミング(55s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、25s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから20s後の第2検出タイミング(45s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段15が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期45sから短縮周期10sに短縮することにより、ガス漏れから50s後の第5回目の検出タイミング(75s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで50sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、図5のケース3において、第3、第4回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
【0064】
ここで、図6に、複数のガス検知装置100について、通電周期変更手段15が上記のように通常周期を短縮周期に変更した場合、及び通常周期を短縮周期に変更しない場合に、ガス漏れ発生から警報までの時間(縦軸)と、検出タイミングからガス漏れ発生までの遅れ時間(横軸)との関係を示す。なお、図6では、通常周期は45s、短縮周期は10s、検知応答規定時間は60sに設定した。また、ガス検知装置の検知応答時間は、表1で示す検知応答時間が25s、45s、50sのものを用いた。具体的には、実施例1、2が表1において検知応答時間が45s、50sのそれぞれのガス検知装置100で、通常周期を短縮周期に変更する形態の本願の実施例である。一方、比較例1、2、3が表1において検知応答時間が25s、45s、50sのそれぞれのガス検知装置で、通常周期のみで短縮周期に変更しない形態の従来の例である。
図6から判明するように、本願に係る実施例1及び2では、検知応答時間が45s、50sと比較的長い(パッケージが強化され、非検出対象ガスによる影響を受けにくい)にも拘わらず、ガス漏れ発生の遅れ時間がどの値をとった場合でも、警報までの時間は検知応答規定時間である60sよりも短い時間となっており検知応答規定時間を超えることはなく、確実にかつ早期に警報を発することが可能となっている。
一方、比較例1では、ガス漏れ発生の遅れ時間がどの値をとった場合でも、警報までの時間は検知応答規定時間である60sよりも短い時間となっているが、検知応答時間が短い、すなわち、ガス検知装置の気密性や活性炭吸着層の機能が低い状態であり、非検出対象ガスの影響を受け易く、正確なメタンガスの検出を行うことが困難となる場合がある。
他方、比較例2、3では、検知応答時間が45s、50sと比較的長い(パッケージが強化され、非検出対象ガスによる影響を受けにくい)ものの、ガス漏れ発生の遅れ時間が所定の値をとった場合には、警報までの時間が検知応答規定時間である60sよりも長くなってしまい、検知応答規定時間を満足することができなくなっている。
よって、本願のように、通電周期変更手段15によりヒータ層6に通電する通常周期を短縮周期に短縮することにより、パッケージが強化されたガス検知装置100を用いて非検出対象ガスの影響を排除して、より正確な検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うことができ、また、ガス種に応じて必要な場合にのみ通常周期を変更(検出タイミングを変更)し無駄に変更が行われることを防止して、消費電力の低減を図ることができる。しかも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を極力短くして検知応答規定時間内に警報を発することができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、通電駆動手段12及び通電周期変更手段15が、通常周期を45sとし、短縮周期を10sとするとともに、ガス検知装置100に応じた検知応答時間を45s、50s等、及び検知応答規定時間を60sとしたが、検出タイミングが検知応答時間以上で検知応答規定時間よりも短い時間帯内となる構成であれば、これら具体的な数値に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、通常周期を100s、短縮周期を30sとし、検知応答時間を80s、検知応答規定時間を120sとすることもできる。
この場合、図7に示すように、検知応答時間80sの強化パッケージのガス検知装置100の通電周期を通常周期100s(検出タイミングが100s毎に来る周期)で駆動した場合、第1回目の検出タイミング(0s)後、20s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース1)には、第2回目の検出タイミング(100s)である80s後の検知応答規定時間内(ガス漏れ発生から120s内)に警報する。一方で、第1回目の検出タイミング(0s)後、30s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース2)には、ガス漏れから70s後の第2回目の検出タイミング(100s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段14が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期100sから短縮周期30sに短縮することにより、ガス漏れから100s後の第3回目の検出タイミング(130s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで100sしか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。同様に、第1回目の検出タイミング(0s)後、50s経ってからガス漏れが発生した場合(ケース3)には、ガス漏れから50s後の第2回目の検出タイミング(100s)では検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しないが、ガス種判定手段14が警報すべき濃度未満の検出対象ガスを検知してガス種を判定して必要に応じて(例えば、検出対象ガスが存在する場合に)、ヒータ層6への通電を通常周期100sから短縮周期30sに短縮することにより、ガス漏れから110s後の第4回目の(160s)で警報することができ、ガス漏れから警報を発するまで110sの時間しか経過していないので、検知応答規定時間を満たすことができる。なお、ケース3において、第3回目の検出タイミングでは、検知応答時間を経過していないため、警報すべき濃度以上の検出対象ガスを検出しておらず、警報しない。
【0066】
〔第3実施形態〕
上記第1及び第2実施形態では、図4のステップ♯8において通常周期を短縮周期に変更した後、ステップ♯4に戻って、検出タイミングにおける通電開始から200ms経過時における電気抵抗値が、警報閾値(第2閾値)以下であるかの第2判定を行う構成としたが、図8に示すように、この第2判定を行う前に、第1判定を行う構成とすることもできる。短縮周期における電気抵抗値に関し、第2判定による高精度な判定を行う前に簡易な第1判定を行うことにより(ステップ♯9)、第1判定により電気抵抗値が第1閾値よりも低下していないと判定した場合には(ステップ♯9:No)、第2判定を省略して通常周期に戻す(ステップ♯2)。一方で、当該第1判定において電気抵抗値が第1閾値よりも低下していると判定された場合には(ステップ♯9:Yes)、短縮周期に維持したまま当該短縮周期における電気抵抗値を用いて第2判定を行うことができる(ステップ♯4)。これにより、必要な場合にのみヒータ層6への通電を短縮周期に維持した状態でメタンガスの検出を行い、必要でなければ通常周期による通電に戻すことにより、消費電力の低減を図ることができる。なお、ステップ♯1から♯8については、図4と同様であるため説明を省略する。
【0067】
〔第4実施形態〕
上記第1実施形態では、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分または極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定したが、ガス種の判定はこれらに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを算出し、1階微分値が0以下の値であり、前記2階微分値が0以上の値である場合は、検知対象ガスであると判断することもできる。
すなわち、図9に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から50ms程度経過後から通電終了まで200msまでは、上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加していることから、この50msから200msの間において任意の電気抵抗値を検出して、この1階微分値と2階微分値を求めると、1階微分値が正の値となり、2階微分値が負の値となる。これによって、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。
一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合の電気抵抗値は、上記50msから200ms間では、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少していることから、1階微分値が0以下の値となり、2階微分値が0以上の値となる。従って、この求められた1階微分値と2階微分値の値が、1階微分値が0以下の値となり、2階微分値が0以上の値となる場合はメタンガスが存在すると判定することができる。
なお、上記では1点の電気抵抗値を用いてガス種を判定したが、より確実な判定のために2点以上の電気抵抗値を用いてガス種を判定してもよい。
また、より確実な判定のために、微分値を計算する点は、ノイズに影響されていない点における電気抵抗値として、さらに、データを移動平均して瞬時的変化を除去するなどの処理を行うこともできる。
【0068】
〔第5実施形態〕
上記第1実施形態では、ヒータ層通電時における複数の電気抵抗値の差分または極小値の存在に基づいて空気中に含まれるガス種を判定したが、ガス種の判定はこれらに限定されるものではない。例えば、図10〜図12に示すように、複数の検出タイミングにおける電気抵抗値の1階微分値がすべて0以下となる場合は、検知対象ガス(メタンガス)であると判断することもできる。
すなわち、図10〜図12に示すように、ヒータ層6への通電を開始してから通電終了までの時間を200msにした場合に、メタンガス以外のガス(一酸化炭素、水素)である場合の電気抵抗値は、例えば、通電開始から50ms程度経過後から通電終了まで200msまでは、上昇しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように増加していることから、この50msから200msの間において任意の複数の検出タイミングにおける電気抵抗値を検出して、これらの1階微分値を求めると、これらの検出タイミングにおける電気抵抗値の1階微分値がすべて正の値となる。これによって、メタンガス以外のガスが存在すると判定することができる。
一方で、検出対象ガスであるメタンガスの場合には、上記50msから200ms間では、下降しつつ一定値に漸近する漸近線を描くように減少していることから、任意の検出タイミングにおける複数の電気抵抗値の1階微分値はすべて0以下の値となる。従って、複数の電気抵抗値の1階微分値の値がすべて0以下の値となる場合はメタンガスが存在すると判定することができる。
なお、図10は電気抵抗値を2点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この場合、通電経過時間が50ms(T1)および150ms(T2)とされる2点の電気抵抗値が検出されている。図11は電気抵抗値を3点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この場合、通電経過時間が50ms(T1)、100ms(T2)および150ms(T3)とされる3点の電気抵抗値が検出されている。
そして、図12は電気抵抗値を4点で検出してガス種を判定する場合の一例を示す図である。この例では、通電経過時間が15ms付近(T1)、30ms付近(T2)、100ms(T3)および150ms(T4)とされる4点の電気抵抗値が検出されている。この場合、15ms付近(T1)、30ms付近(T2)において検出されたメタン以外のガスの電気抵抗値の1階微分値はメタンガスの場合と同様に0以下の値となる。
また、上記では2点〜4点の電気抵抗値を用いてガス種を判定したが、より確実な判定のために5点以上の検出点における電気抵抗値を用いてガス種を判定してもよい。
なお、より確実な判定のために、微分値を計算する複数の点は、ノイズに影響されないように互いに間隔が取られており、また、データを移動平均して瞬時的変化を除去するなどの処理を行うこともできる。
【0069】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態においては、ガス検出手段13が、第1判定を行った後、第2判定を行う構成としたが、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、第1判定を省略して、第2判定のみを行う構成とすることもできる。すなわち、図13に示すように、図4のフローチャートにおいてステップ#03を省略して、電気抵抗値が第1閾値より低下しているか否かを判定する第1判定を行わずに、電気抵抗値が警報閾値(第2閾値)以下であるか否かの第2判定を行うことができる。
【0070】
(2)上記実施形態においては、ガス検知層10(薄膜センサ素子20)の電気的特性として可変抵抗の電気抵抗値を用いてガス種及びメタンガスの存在を検出したが、特にこれに限定されるものではなく、ガス検知層10(薄膜センサ素子20)の固定抵抗の出力電圧を用いてガス種及びメタンガスの存在を検出することもできる。
【0071】
(3)上記実施形態においては、ガス検知層10を酸化スズ(SnO2)を主成分とする材料からなるものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、このような主成分材料としては、検出対象ガスに応じ、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe2O3)等も採用できる。
【0072】
(4)上記実施形態においては、内蔵された電池からの電力供給により駆動するように構成したが、特にこれに限定されるものではなく、ガス検知装置の設置箇所の近傍に固定電源が存在するのであれば、この固定電源から電力供給を受ける構成としてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態においては、図1に示したように、支持層5の上に設けられたヒータ層6の全体を覆う状態でSiO2膜からなる絶縁層7が設けられ、当該絶縁層7の上に一対の電極層9が設けられる構成を例示した。しかし、絶縁層7が設けられることなく、ヒータ層の上に電極層が設けられる構成であってもよい。また、電極層とヒータ層とが独立して設けられず、兼用される構成であってもよい。
【0074】
(6)上記実施形態においては、検出対象ガスをメタンガスとして説明したが、メタンガスと同様の電気的特性の変化状態をもつガスであれば、特に制限無く検出対象ガスとすることができる。
【0075】
(7)上記実施形態においては、ヒータ層への通電時間を一定時間(例えば200ms)としているが、例えば、第1判定の判定結果に基づいて、ヒータ層への通電時間を変更することもできる。すなわち、図14に示すように、電気抵抗値が第1閾値より低下しているか否かを判定する第1判定を行い、電気抵抗値が第1閾値より低下していなければ、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)とする(ステップ#09)。また、電気抵抗値が第1閾値より低下していると、ヒータ層への通電時間を通常通電時間よりも長い延長通電時間(例えば200ms)とする(ステップ#10)。このように、第1判定の判定結果に基づいて、電気抵抗値が第1閾値より低下していなければ、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)としておくことで、消費電力の低減を図ることができながら、電気抵抗値が第1閾値より低下していると、ヒータ層への通電時間を通常通電時間(例えば100ms)よりも長い延長通電時間(例えば200ms)として、その後に行う第2判定やガス種判定を精度良く行える。ちなみに、図14において、ステップ#09及びステップ#10以外の動作については、図4と同様であるので、その説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、検出対象ガスの有無及び濃度の検出を行うにあたり、非検出対象ガスの影響を排除し、消費電力の低減を図ることができながらも、ガス漏れ発生から警報を発するまでの時間を短くして検知応答規定時間内に警報を発することが可能なガス検知装置及びガス検知方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
6: ヒータ層
7: 絶縁層(電気絶縁層)
9: 電極層
10: ガス検知層
12: 通電駆動手段
13: ガス検出手段
14: ガス種判定手段
15: 通電周期変更手段
20: 薄膜センサ素子(センサ素子)
30: ガス流入口
31: 筐体
32: 活性炭吸着層(フィルタ手段)
100:ガス検知装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、
前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、
ヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間である検知応答時間と、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子の前記ガス検知層にて検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間とに関して、
前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段を備え、
前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する通電周期変更手段を備えたガス検知装置。
【請求項2】
前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う請求項1又は2に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う請求項3に記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、更に、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う請求項4に記載のガス検知装置。
【請求項6】
前記ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性として電気抵抗値の変化状態を用いて、前記雰囲気中に存在するガス種を判定する請求項1から5の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記電気抵抗値の差分を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項8】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の極小値の出現を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項9】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項10】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項11】
前記センサ素子が、電気絶縁層と、酸化物半導体からなる前記ガス検知層と、前記ガス検知層の前記電気的特性としての電気抵抗値を検出する一対の電極層とを備えた薄膜センサ素子である請求項1から10の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項12】
内蔵された電池からの電力供給により駆動する請求項1から11の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項13】
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子を用いて、
通電駆動手段が前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させ、
ガス検出手段がヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検知方法であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定し、
通電周期変更手段が前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる時間の下限である検知応答時間以上、かつ、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子において検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更するガス検知方法。
【請求項14】
前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する請求項13に記載のガス検知方法。
【請求項15】
前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う請求項13又は14に記載のガス検知方法。
【請求項16】
前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う請求項15に記載のガス検知方法。
【請求項17】
前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う請求項16に記載のガス検知方法。
【請求項1】
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子と、
前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させる通電駆動手段と、
ヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検出手段とを備えたガス検知装置であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる下限時間である検知応答時間と、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子の前記ガス検知層にて検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間とに関して、
前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定するガス種判定手段を備え、
前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更する通電周期変更手段を備えたガス検知装置。
【請求項2】
前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う請求項1又は2に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う請求項3に記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、更に、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う請求項4に記載のガス検知装置。
【請求項6】
前記ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性として電気抵抗値の変化状態を用いて、前記雰囲気中に存在するガス種を判定する請求項1から5の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記電気抵抗値の差分を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項8】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の極小値の出現を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項9】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、前記電気抵抗値の1階微分値と2階微分値とを用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項10】
前記電気抵抗値の変化状態を用いてガス種を判定するに、複数の前記検出タイミングにおける前記電気抵抗値を用いる請求項6に記載のガス検知装置。
【請求項11】
前記センサ素子が、電気絶縁層と、酸化物半導体からなる前記ガス検知層と、前記ガス検知層の前記電気的特性としての電気抵抗値を検出する一対の電極層とを備えた薄膜センサ素子である請求項1から10の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項12】
内蔵された電池からの電力供給により駆動する請求項1から11の何れか一項に記載のガス検知装置。
【請求項13】
検出対象ガスとの接触により電気的特性が変化するガス検知層、及び前記ガス検知層を加熱するヒータ層を形成したセンサ素子を用いて、
通電駆動手段が前記ヒータ層へ所定の通常周期で通電を行って、前記ガス検知層の温度を変化させ、
ガス検出手段がヒータ層通電時の検出タイミングにおける前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記検出対象ガスを検出するガス検知方法であって、
外部から前記検出対象ガスが流入可能なガス流入口を備えた筐体の内部に前記センサ素子が設けられるとともに、前記ガス流入口から前記筐体の内部に至る間の流路に非検出対象ガスが付着するフィルタ手段が設けられ、
ガス種判定手段が、前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて、前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定し、
通電周期変更手段が前記ガス種判定手段による判定結果に基づいて、前記検出タイミングが、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスが前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子に到達して、前記ガス検知層にて前記検出対象ガスが警報すべき濃度以上存在することを検出することが可能となる時間の下限である検知応答時間以上、かつ、前記筐体の外部に存在する前記検出対象ガスを、前記筐体の内部に設けられた前記センサ素子において検出することが必要とされる時間である検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように、前記通常周期を変更するガス検知方法。
【請求項14】
前記通電周期変更手段が、前記通常周期を前記検出タイミングが前記検知応答時間以上、かつ、前記検知応答規定時間よりも短く設定された時間帯内となるように変更するに当たり、前記ガス種判定手段による判定結果が前記検出対象ガスである場合に、前記ヒータ層へ通電する前記通常周期を前記通常周期よりも短縮した短縮周期に変更する請求項13に記載のガス検知方法。
【請求項15】
前記ガス検出手段が、前記ガス種判定手段によるガス種の判定前に、前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が第1閾値よりも低下しているか否かの第1判定を行う請求項13又は14に記載のガス検知方法。
【請求項16】
前記ガス検出手段が、前記第1判定において前記電気抵抗値が前記第1閾値よりも低下している場合に、さらに、前記第1判定において用いた電気抵抗値よりも後に検出した前記検出タイミングにおける前記電気的特性としての電気抵抗値を用いて、当該電気抵抗値が前記第1閾値よりも小さな値の第2閾値以下か否かの第2判定を行う請求項15に記載のガス検知方法。
【請求項17】
前記ガス種判定手段が、前記第2判定において前記電気抵抗値が前記第2閾値を超えている場合に前記ヒータ層通電時の前記ガス検知層の電気的特性に基づいて前記ガス検知層の雰囲気中に存在するガス種を判定して、判定結果が前記検出対象ガスである場合に前記通電周期変更手段が前記通常周期を前記短縮周期に変更し、前記ガス検出手段が前記短縮周期における前記検出タイミングにおける電気抵抗値に基づいて、当該電気抵抗値が前記第1閾値より低下しているか否かの前記第1判定を行う請求項16に記載のガス検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−227069(P2011−227069A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73629(P2011−73629)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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