説明

ガス検知装置

【課題】半導体製造設備からの排ガス中の半導体材料用ガスなどを検知するガス検知装置において、半導体製造設備のメンテナンス作業などに起因して測定対象ガス以外のガスが高濃度状態でガス検知器に流入することを防止し、ガス検知器が損傷するなどの不都合が生じないようにする。
【解決手段】ガス検知器3と、このガス検知器に測定対象ガスを導入するガス導入管2と大気を導入する大気導入管12とを切り替える流路切替弁11を備え、ガス導入管2に測定対象ガス以外のガスが流入する場合に、流路切替弁11を切り替えて大気導入管12から大気を導入するようにしたガス検知装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有害ガスなどのガスを検知するガス検知器を備えたガス検知装置に関し、測定対象ガス以外のガスにガス検知器が曝されて損傷を受けることを防止するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備では、その製造に際して、アルシン、ホスフィン、ボラン、シラン、ゲルマンなどの半導体材料ガスが使用されている。これらのガスは、有害であったり、可燃性であったりするため、製造設備から大気中に漏洩することは絶対に避けねばならない。 このため、半導体製造設備からの排ガスを除害装置に導入して、これら半導体材料ガスの濃度をその許容濃度以下にして排気している。
さらに、安全性を確認するため、半導体製造設備からの排ガスをサンプリングしてこの排ガス中の前記半導体材料ガスの濃度をガス検知装置により常時計測している。
【0003】
図2は、このような目的のためのガス検知装置の例を示すものである。
図2中符号1は、測定対象ガスが流れる排気ダクトを示す。ここで測定対象ガスとは、前記半導体製造設備から排気ダクト1に排出され、前記半導体材料ガスが微量含まれている可能性がある排ガスを言う。
この排気ダクト1には測定対象ガスを導出するガス導入管2の一端が接続されている。このガス導入管2の他端は、ガス検知器3のガス入口3aに接続され、ガス検知器3に測定対象ガスが導入されるようになっている。
【0004】
また、ガス検知器3のガス出口3bには、ガス排出管4の一端が接続され、他端は排気ダクト1に接続され、測定後の測定対象ガスを排気ダクト1に戻すように構成されている。ガス排出管4には、流量計5と吸引ポンプ6が設けられており、これにより排気ダクト1からの測定対象ガスがガス検知器3に導入され、かつその導入流量が求められ、さらにガス検知器3から排出されるようになっている。
そして、このようなガス検知装置では、設置目的からして半導体材料ガスの漏洩を常時検知する必要があり、吸引ポンプ6を常時作動させて測定対象ガスをガス検知器3に導入し、常時モニターリングを行っている。
【0005】
前記ガス検知器3には、この例では定電位電解式ガス検知器が用いられている。
この定電位電解式ガス検知器には、測定対象ガスが一時的に貯留されるガスチャンバ31が設けられている。このガスチャンバ31には、前記ガス入口3aとガス出口3bが設けられて測定対象ガスが導入され、かつ排出されるように構成されている。
このガスチャンバ31の一方の壁は、ガス透過性の隔膜32となって測定室33に連接されている。測定室33内には電解質が満たされ、測定室32の一方の内側壁部には作用電極34が、他方の内側壁部には参照電極35と対電極36が設けられている。
【0006】
作用電極34には、定電圧回路37から予め一定の電位が与えられており、測定対象ガス中の半導体材料ガスはサンプルチャンバ31から隔膜32を透過して作用電極34に吸着される。この半導体材料ガスは作用電極34で電気化学的に酸化あるいは還元され、この反応の際に電流が発生し作用電極34と対電極36との間に接続された抵抗を介して電解電流が流れる。この電解電流はガスの濃度に比例するので、この電解電流を測定することで、測定対象ガス中の半導体材料ガスの濃度を知ることができる。
【0007】
ところで、半導体製造設備にあっては、定期的にメンテナンス作業を行っている。このメンテナンス作業では、機器の洗浄のために、アルコールなどの溶剤が使用される。一方、前述のようにガス検知装置は常時作動しているので、このようなアルコールなどの溶剤が排気ダクト1に漏洩することがあると、このようなアルコールなどの溶剤のガス、すなわち測定対象ガス以外のガスがガス導入管2からガス検知器3に流入することになる。
【0008】
ガス検知器3に測定対象ガス以外のガスが流れ込むと、ガス検知器3は誤報を発するので、従来はガス検知器3を電気的にメンテナンスモードに変えて、誤報を回避している。
しかしながら、ガス検知器3には、測定対象ガス以外のガスが流れ込み続けている。測定対象ガス以外のこの種のガスが高濃度で流入するとガス検知器3の作用電極等が損傷を受け、センサー機能が維持できなくなる。
【特許文献1】特開2002−8162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明における課題は、半導体製造設備からの排ガス中の半導体材料用ガスなどを検知するガス検知装置において、メンテナンス作業などに起因して測定対象ガス以外のガスが高濃度状態でガス検知器に流入することを防止し、ガス検知器が損傷するなどの不都合が生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、ガス検知器と、このガス検知器に測定対象ガスを導入するガス導入管と大気を導入する大気導入管とを切り替える流路切替弁を備えたガス検知装置であって、
ガス導入管に測定対象ガス以外のガスが流入する場合に、切替弁を切り替えて大気導入管から大気を導入するようにしたことを特徴とするガス検知装置である。
【0011】
請求項2にかかる発明は、測定対象ガスの発生源がメンテナンス作業となった場合に流路切替弁を切り替えるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置である。
本発明において、測定対象ガスとは半導体材料ガスなどのガス濃度測定の対象となるガスを含むガスを言い、測定対象ガス以外のガスとは、測定対象ガスおよび大気以外のガスを言う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンス作業などに起因してガス検知器に測定対象ガス以外のガスが流入することがなくなり、ガス検知器の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明のガス検知装置の例を示すもので、図2に示した従来のガス検知装置と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
この例のガス検知装置にあっては、ガス導入管2の途中に三方弁からなる流路切替弁11が設けられている。この流路切替弁11には、大気を導入するための大気導入管12の一端が接続され、その他端は大気開放となっている。
【0014】
流路切替弁11の第1ポートにはガス導入管2の排気ダクト1側の端部が接続され、第2ポートにはガス導入管2のガス検知器3側の端部が接続され、第3ポートには大気導入管12の一端が接続されている。
そして、この流路切替弁11は、弁操作により、第1ポートと第2ポートを連通し、あるいは第2ポートと第3ポートを連通する動作を行う。
【0015】
流路切替弁11には電動弁や気動弁が用いられ、この流路切替弁11の流路の切り替えを指示する制御部13が設けられている。この制御部13からの信号は流路切替弁11に送られ、流路が切り替えられて排気ダクト1からの測定対象ガスがガス検知器3のガス入口3aに導入され、あるいは大気が大気導入管12を流れてガス入口3aに導入される。
【0016】
制御部13は、平常時には排気ダクト1からの測定対象ガスがガス検知器3のガス入口3aに流れるように流路切替弁11を制御し、また半導体製造設備等のガス発生源がメンテナンス作業に入る場合に、大気がガス検知器3のガス入口3aに流れるように流路切替弁11を制御し、メンテナンス作業が終了する場合に排気ダクト1からの測定対象ガスがガス検知器3のガス入口3aに再度流れるように流路切替弁11を制御する。
制御部13へのメンテナンス作業の開始、終了の指示は、手入力もしくはマイコンなどによる入力によって行われる。
【0017】
このようなガス検知装置においては、測定対象ガスの発生源である半導体製造設備が通常作業を行っている場合には、流路切替弁11を操作して、排ガスダクト1からの測定対象ガスをガス導入管2を介してガス検知器3に送り込み、測定対象ガス中の半導体材料用ガスの濃度を測定する。万一、この濃度が規定値を超えた場合にはガス検知器3は警報を発する。
【0018】
半導体製造設備がメンテナンス作業に入ると、制御部13からの操作信号により流路切替弁11が切り替わって大気導入管12から大気がガス検知器3に送り込まれ、排気ダクト1からのガスがガス検知器3に流入することはない。
ガス検知器3に大気が流れ込んでも、この大気によってガス検知器3の作用電極34などの電極が劣化、損傷することはない。このメンテナンス作業中にガス検知器3において、メンテナンス作業中であることを示す表示を表示することもできる。
メンテナンス作業が終了すれば、制御部13からの操作信号により流路切替弁11が切り替わってガス導入管11から測定対象ガスがガス検知器3に送り込まれ、通常のガス検知に復帰する。
【0019】
なお、上述の例では、ガス検知器3として定電位電解式ものを例示して説明したが、この発明では、これ以外のガス検知器3として、半導体式、隔膜ガルバニ電池式、検知テープ式などのガスのサンプリングが吸引方式のガス検知器を採用することができ、同様にガス検知器が損傷を被るようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガス検知装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】従来のガス検知装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・排気ダクト、2・・ガス導入管、3・・ガス検知器、11・・流路切替弁、12・・大気導入管、13・・制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知器と、このガス検知器に測定対象ガスを導入するガス導入管と大気を導入する大気導入管とを切り替える流路切替弁を備えたガス検知装置であって、
ガス導入管に測定対象ガス以外のガスが流入する場合に、切替弁を切り替えて大気導入管から大気を導入するようにしたことを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】
測定対象ガスの発生源がメンテナンス作業となった場合に流路切替弁を切り替えるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−217695(P2009−217695A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62596(P2008−62596)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】