説明

ガス混合物の化学濃度を調合・制御する方法および装置

【課題】チャンバ内ガス混合物の不活性化化学薬品の濃度を調合・制御する方法および装置。
【解決手段】ガス混合物には基剤化学薬品である化学成分とともに不活性化化学薬品である化学成分が含まれ、基剤化学薬品は不活性化化学薬品の希釈剤または不活性化化学薬品のビヒクルまたはキャリアとして作用する。コンデンサをガス混合物に曝し、ガス混合物はコンデンサの板間で誘電物を構成する。誘電物の誘電率は化学成分の相対濃度によって影響を受けるので、容量の測定値をガス混合物の多数の化学成分の濃度レベルの決定に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス混合物の化学濃度を調合・制御する方法および装置に関し、特に、チャンバ内ガス混合物の不活性化化学薬品の濃度を調合・制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分子の極性の大きさは「双極子モーメント」の用語で表現される。分子内の電荷が分離する水などの分子の双極子モーメントはゼロではない。分離した電荷の大きさが等しく符号が反対の場合は、双極子モーメントの大きさは分離した1つの電荷の値と電荷間の分離距離との積となる。双極子モーメントは分子の負の電荷から正の電荷に向かうベクトルである。双極子モーメントは3つの要因、すなわち(1)分子の極性、(2)分離した電荷の大きさ、および(3)分子の形状によって決まる。異なる分子の双極子モーメントは異なることが知られている。例えば、オゾン(O)および過酸化水素(H)などの不活性化化学薬品の分子と水(HO)の分子とは双極子モーメントが異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はガス混合物の化学成分の濃度を調合・制御する手段として異なる分子で双極子モーメントが異なることを利用する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、貫流チャンバ内の汚染物質を不活性化する方法が提供される。この方法には(a)チャンバに第1の化学成分を導入し、(b)チャンバ内の第1の化学成分の濃度を第1の所定の濃度に増加し、(c)チャンバに第2の化学成分を導入し、かつ(d)チャンバ内の第2の化学成分の濃度を第2の所定の濃度に増加するステップが含まれる。この場合、(1)第1および第2の板を有する少なくとも1つのコンデンサを、チャンバに導入した第1および第2の化学成分に曝して、(2)少なくとも1つのコンデンサの電気特性の変化を決定することで第1および第2の化学成分の濃度を決定し、この際、前記電気特性の変化は第1および第2の化学成分の濃度の変化に応じて変化する。
【0005】
本発明の別の態様によると、貫流チャンバ内の汚染物質を不活性化する方法が提供される。この方法には、(a)チャンバ内で不活性化する少なくとも1つの汚染物質を選択し、(b)前記少なくとも1つの汚染物質を有効に不活性化するために、少なくとも第1の化学成分および第2の化学成分、さらにそれぞれの第1および第2の所定の濃度を決定し、(c)第1の化学成分をチャンバに導入し、(d)チャンバ内の第1の化学成分の濃度を第1の所定の濃度に増加し、(e)第2の化学成分をチャンバに導入し、(f)チャンバ内の第2の化学成分の濃度を第2の所定の濃度に増加するステップが含まれる。この場合、(1)チャンバ内に導入された第1および第2の化学成分に、第1および第2の板を有する少なくとも1つのコンデンサを曝し、(2)少なくとも1つのコンデンサの電気特性の変化を決定することで第1および第2の化学成分の濃度を決定し、この際、前記電気特性の変化は第1および第2の化学成分の濃度の変化に応じて変化する。
【0006】
本発明の別の態様によると、貫流チャンバ内の汚染物質を不活性化するシステムが提供される。このシステムは(a)第1の化学成分および第2の化学成分をチャンバ内に順次導入する手段と、(b)チャンバ内の第1の化学成分の濃度を第1の所定の濃度に増加し、かつチャンバ内の第2の化学成分の濃度を第2の所定の濃度に増加する流量制御手段と、(c)チャンバ内に順次導入された第1および第2の化学成分に曝され、第1および第2の板を有するコンデンサと、(d)第1および第2の化学成分の濃度の変化に応じて変化するコンデンサの電気特性の変化を決定する検出手段とを備える。
【0007】
本発明のさらに別の態様によると、貫流チャンバ内の汚染物質を不活性化するシステムが提供される。このシステムは(a)チャンバで活性化される少なくとも1つの汚染物質を選択する入力手段と、(b)前記少なくとも1つの汚染物質を有効に不活性化するため、少なくとも第1および第2の化学成分、およびそれぞれの第1および第2の所定の濃度を決定する手段と、(c)第1の化学成分および第2の化学成分をチャンバ内に順次導入する手段と、(d)チャンバ内の第1の化学成分の濃度を第1の所定の濃度に増加し、かつチャンバ内の第2の化学成分の濃度を第2の所定の濃度に増加する流量制御手段と、(e)チャンバ内に順次導入された第1および第2の化学成分に曝され、第1および第2の板を有するコンデンサと、(f)第1および第2の化学成分の濃度の変化に応じて変化するコンデンサの電気特性の変化を決定する検出手段とを備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様によると、チャンバ内のガス混合物の複数の化学成分の濃度を制御する方法が提供される。この方法には(a)時間の関数としての化学成分濃度に関するコンデンサの電気特性値が含まれ、それぞれが化学薬品の減衰を示す複数のデータセットをメモリーに格納し、(b)複数のデータセットに応じて作動期間経過後に少なくとも1つの化学成分の濃度まで補充するステップが含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の長所はコンデンサの電気特性を使用して検出する化学濃度を調合・制御する方法および装置が提供されることである。
本発明の別の長所は多数の化学成分で構成されたガス混合物の化学濃度を調合・制御する方法および装置が提供されることである。
【0010】
本発明のさらに別の長所は簡単で安価に実施できる、化学濃度を調合・制御する方法および装置が提供されることである。
これらの長所およびその他の長所は図面および特許請求の範囲とともに記載される次の好ましい実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は一定の部分および部分の配置において具体的な形態をとり、その好ましい実施形態は明細書で詳細に記述し、かつ一部を形成する付帯する図面で説明する。
【図1】本発明の好ましい実施形態による化学濃度を調合・制御するシステムのブロックダイヤグラムである。
【図2】検出回路を示す概略ダイヤグラムである。
【図3】第1の別の検出回路を示す概略ダイヤグラムである。
【図4】第2の別の検出回路を示す概略ダイヤグラムである。
【図5】チャンバ内の化学濃度を調合・制御する方法を示すフローダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで使用する用語「ガス」は(a)室温においてガス状の化学成分と(b)液体の蒸発により気相となった化学成分とを含む。また、本発明の好ましい実施形態では特にバイオ汚染物質の不活性化に関して述べるが、発明は他の種類の汚染物質、限定はされないが、バイオ戦用物質および化学戦用物質(すなわち、マスタードガス(H,HD,HS)などの有機硫黄物質、タブン(GA),サリン(GB)、ソマン(GD)およびシクロサリン(GF)などのGシリーズ神経物質(有機リン酸塩神経物質)、VX,VE,VG,VMおよびVガスなどのVシリーズ神経物質、増殖型および内生胞子形成バクテリア(例えば、炭疽菌)、菌、およびビールス)の不活性化にも使用できるものと考えられる。
【0013】
図面は発明の好ましい実施形態を示す目的のためだけであり、これに限定する目的のためではない。図1は本発明の好ましい実施形態による汚染物質不活性化システム10を示す。システム10には化学薬品源70A−70C,弁72A−72C,流量計74A−74C、導管75A−75C、処理チャンバ100、および化学薬品濃度調合・制御システムが含まれる。化学薬品源70A−70Cはそれぞれ化学薬品A,BおよびCの源となる。化学薬品A,BまたはCを蒸発処理(例えば、過酸化水素の蒸発)で発生させる場合は、それぞれの弁72A−72Cはシステム10から省略することができる。流量計74A−74Cは本体、変換器および発信器で構成された従来の流量計が好ましい。本体を通過する流体を変換器で検出する。生の変換器信号からの有効な流量信号が発信器で生成される。導管75A−75Cを流れるガス量は流量計74A−74Cを使用して正確に制御される。
【0014】
化学薬品A,BおよびCには「基剤化学薬品」および「前処理化学薬品」とともに「不活性化化学薬品」(限定はされないが、抗菌化学薬品が含まれる)が含まれるものと理解されるべきである。基剤化学薬品は不活性化化学薬品の希釈剤として、または不活性化化学薬品のビヒクルまたはキャリアとして作用する。基剤化学薬品はそれ自体不活性化化学薬品であってもよいし、不活性化特性があってもよい。前処理化学薬品には不活性化化学薬品により汚染物質をより不活性化させ易くする化学薬品が含まれる。プリオンの場合、前処理化学薬品はプリオンの立体配座状態を変化させるように作用して、プリオンをより不活性化させ易くすることができる。また、本発明の好ましい実施形態では3種類の化学薬品A,BおよびCを使用したシステム10について記載するが、汚染物質不活性化に使用する化学薬品数は3よりも多くても少なくてもよい。
【0015】
好ましい実施形態では、チャンバ100内領域において部品、器具、装置およびその他の対象物を複数の不活性化化学薬品に曝し、バイオ汚染物質の不活性化(例えば、汚染除去または滅菌)を行う。図示する実施形態では、チャンバ100は導管75A−75Cに連通する入口ポート110A−110Cと出口ポート120を備えた「貫流」チャンバである。チャンバ100の容積は1立方フィート(0.028m)未満から100万立方フィート(28300m)を超える範囲にすることができる。チャンバ100内を化学薬品A,BおよびCを容易に通過させるためブロワーまたはファン(図示しない)を設けることができる。フィルタ(例えばバクテリア固定フィルタ)を出口ポート120に配置して、汚染物質が出口ポート120を介してチャンバ100内に侵入するのを防止することができる。
【0016】
化学薬品濃度調合・制御システムには一般に検出回路20、処理ユニット50、出力ユニット62および入力ユニット64が含まれる。検出回路20には、詳細は以下に述べるが、チャンバ100内ガス混合物の化学成分の濃度を検出するコンデンサCが含まれる。理解できるように、化学薬品濃度調合・制御システムにはチャンバ100の2つ以上の領域の化学成分の濃度を検出するために複数の検出回路20を含めることができる。
【0017】
チャンバ100のガス混合物には抗菌化学薬品(例えば、汚染除去剤および滅菌剤)、「基剤」化学薬品および空気などの、バイオ汚染物質を不活性化する不活性化化学薬品である化学成分(これに限定はしないが)を含めることができる。発明者が意図するところによると、ガス混合物には異なる双極子モーメントを有する化学薬品を含むバイオ汚染物質不活性化処理に無関係の化学成分に加え、ここで特定しない化学成分を含めることができる。
【0018】
好ましい実施形態では、処理ユニット50は検出回路20とともに作動して、流量計74A−74Cから流量データ信号を入力し、制御信号を弁72A−72Cに出力する。さらに、処理ユニット50は源70A−70Cでガスの生成(例えば蒸発システム)を制御する制御手段(図示しない)など他のシステム要素の操作用に他の制御信号を出力することができる。また処理ユニット50は出力ユニット62に信号を出力し、オペレータ情報を音声および/または映像形態で供給することができる。したがって、出力ユニット62は音声スピーカおよび/または映像表示ユニットの形態をとることができる。入力ユニット64は処理ユニット50に情報を入力する手段を備える。この場合、入力ユニット64はキーボード、キーパッド、スイッチなどの形態にすることができる。好ましい実施形態では、処理ユニット50はデータ格納用メモリー52を含むマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラの形態にすることができる。
【0019】
図2に典型的な検出回路の詳細概略図を示す。検出回路20は「ブリッジ回路」の形態をとる。当該技術分野の通常の技術を有する者には周知のように、ブリッジ回路は、未知の1つのインピーダンス値を、その他の既知のインピーダンス値によって決定するのに使用される。未知のインピーダンスを決定するのにゼロ条件を使用するので、非常に正確な測定が可能となる。ブリッジ回路はチャンバ内の化学成分の濃度を示すコンデンサ容量を決定するのに使用する。図2に示す実施形態では、検出回路20は一般に、電源22、ゼロ検出器30、電子式電位差計40、既知容量のコンデンサC、およびコンデンサCで構成される。コンデンサCはチャンバ100の外側に配置した従来のコンデンサとするか、またはチャンバ100内でガス混合物から分離したコンデンサとする。
【0020】
コンデンサCはチャンバ100内のガス混合物に直接曝され、ガス混合物がコンデンサCの電導板間の隙間に満たされるので、ガス混合物はコンデンサCの絶縁物または「誘電物」として作用する。検出回路20で、化学薬品濃度に対応するコンデンサCのデータ表示が与えられる。この場合、コンデンサCはチャンバ100内の化学成分の濃度の変化にしたがって変化する。
【0021】
理解されるように、ガス混合物はコンデンサCの電導板間の隙間に対する唯一の誘電物ではない。この場合、限定はされないが、有機または無機材料を含む1つ以上の固体誘電材料を隙間に挿入することができる。さらに、理解されるように、コンデンサCの電導板は結露を最小限にするため加熱することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、コンデンサCは平行板コンデンサである。しかし、理解されるように、コンデンサCは異なる形状で作ることができる。例えば、Cは円筒状または球状のコンデンサとすることもできる。球状コンデンサをコンデンサCに使用する場合は、ガス混合物がコンデンサに出入りできるようにコンデンサの外殻に孔をあける必要がある。
【0023】
電子式電位差計40は機械式電位差計と同じように機能する。この場合電子式電位差計40は3端子装置である。2つの端子間に抵抗要素がある。「ワイパー」として知られる第3の端子は抵抗要素に沿う種々の点に接続される。ワイパーは処理ユニット50(図1参照)によりデジタル的に制御される。ワイパーで抵抗要素は2つの抵抗器RBCおよびRACに分割される。電子式電位差計40はカリホルニア、サニベールのケータリスト・セミコンダクタ会社から入手できる、デジタルでプログラム可能な電位差計(DPPTM)の形態をとることができる。
【0024】
好ましい実施形態では、電源22は正弦波またはパルス波などのAC電圧信号を供給する。ゼロ検出器30は検流計、電圧計、周波数選択増幅器などのゼロ状態(すなわち短絡回路)を検出する計器である。
【0025】
次に検出回路20の操作について詳細に述べる。ブリッジ回路の要素は接点間AC,BC,ADおよびBDで接続される。電子式電位差計40は処理ユニット50で操作され、接点AおよびB間の電位差(VAB)がゼロになるまで抵抗RBCおよびRACを変化させる。この状態になったとき、ブリッジはバランスした、または「ゼロ」になったといわれる。そのとき主なブランチの電圧の間には次の関係式が成り立つ。
【0026】
AC=VBC、および VAD=VBD
ここで、VACは接点AおよびC間の電圧であり、VBCは接点BおよびC間の電圧であり、VADは接点AとD間の電圧であり、かつVBDは接点BとD間の電圧である。したがって、
AD/VAC=VBD/VBC
AD=VBD/(VAC/VBC
コンデンサ容量Cは接点AとDの間に接続され、一方既知のコンデンサ容量Cは接点BとDの間に接続される。接点Aから接点Cに、さらに接点Bに接続された電子式電位差計40は電圧VACおよびVBCを変化させるよう処理ユニット50で調整される。
【0027】
ゼロ検出器でゼロが検出されると、電流Iは接点Cから接点Aにさらに接点Dに流れ、また電流Iは接点Cから接点Bにさらに接点Dに流れる。接点AとCの間の電圧VAC、および接点BとCの間の電圧VBC
AC=IAC および VBC=IBC
となる。
【0028】
容量Cをもつコンデンサの電圧は、電流をI、周波数をfとして
V=I/(2πfC)
で表されるので、電圧VADおよびVBDは次のように表される。
【0029】
AD=I/(2πfC
BD=I/(2πfC
前述のように、VAD=VBD/(VAC/VBC)、VAC=IAC、 およびVBC=IBCであるので、
=C(RBC/RAC
となる。
【0030】
この関係から、ゼロ状態が検出されると、未知のコンデンサ容量値Cを決定するため、RBCおよびRACの抵抗値は既知のコンデンサ容量値Cとともに使用できる。
ガス混合物の化学成分濃度を決定するため異なる分子の双極子モーメントの差を利用する。この場合、コンデンサの比誘電率は電子の「分極率」に依存する。分極は電界のもとで双極子を形成する分子の能力であり、また水分子などの固有の双極子を整列または回転させる電界の能力である。ガス混合物中に測定可能な双極子モーメントを有する化学成分が1つしかない場合は、化学成分の濃度は決定される。
【0031】
前述のように、ガス混合物はコンデンサCの電導板間の隙間に満たされるのでコンデンサCの誘電物として作用する。コンデンサCをブリッジ回路の一要素として構成すると、ブリッジがバランスしてゼロになったとき、抵抗値RACおよびRBCを測定することでコンデンサ容量Cが決定できる。それぞれの誘電物の誘電率はガス混合物の化学成分の濃度に影響されるので、コンデンサ容量Cはチャンバ100の化学成分の濃度を表示する。
【0032】
平行板コンデンサの容量は、C=(kε)(A/d)=(ε)(A/d)であることは周知であり、ここで、Cは容量、kは比誘電率、εは自由空間の誘電率(8.85×10−12F/m)、εはコンデンサ誘電物の誘電率(F/m)、Aはコンデンサプレートの面積(m)、およびdはコンデンサプレート間の分離距離(m)である。εが増加すると、容量Cも増加する。コンデンサが直径Dの円板を有する平行板コンデンサの場合、C=(πDε)/(4d)となる。
【0033】
一般にコンデンサの比誘電率kは次式によって決定される。
k=4dC/(πDε-)
ここで容量値Cは前述のように決定される。コンデンサの比誘電率kは電導板間に誘電物のある容量(C)を決定し、次にその場所の誘電物のない容量(C)を決定ことによっても決定できる。2つの容量Cの比は比誘電率に等しい。
【0034】
k=C/C
コンデンサの応答はここに印加されたAC波形の特性(例えば、周波数)で影響される。この場合、容量リアクタンス(X)は周波数の関数である。容量リアクタンスは交流においては容量の反対となり、オームで表現される(X=1/(2πfC))。したがって、電源22で発生した波形の周波数はコンデンサの応答に影響する。このように、電源22に選択された周波数は、チャンバ100内の化学成分の濃度が変化するときコンデンサに対して一般に線形応答をする周波数であることが好ましい。これにより、以下に述べるように容量値に対する内挿法および外挿法の使用が容易となる。適当な直線応答が得られないときは、拡張された1組のデータポイントをメモリー52に格納する。
【0035】
本発明の1つの実施形態ではブリッジ回路の形態で検出回路20が含まれるが、当分野の専門家に知られたその他の種類の回路および技術(その他の種類のブリッジ回路および容量要素を含む)を容量測定に適宜使用することができる。例えば、図3は別の検出回路20Aを示す。検出回路20Aはチャンバ100の外側に配置された(またはチャンバ100の内側でガス混合物から分離された)可変コンデンサCを有するLC共振回路であり、コンデンサCはガス混合物に直接曝される。この場合、コンデンサCはチャンバ100に配置され、ガス混合物はコンデンサCの電導板間の隙間に満たされるのでコンデンサCの絶縁物または「誘電物」として作用する。共振周波数はω=[L(C+C)]−1/2であるので、未知のコンデンサ容量Cは決定できる。
【0036】
図4は本発明に関する使用に適したさらに別の検出回路20Bである。検出回路20Bは「電荷移動」検出回路である。電荷移動検出回路はフェムトファラッドオーダーの分析ができるものと認識されている。電荷移動検出回路では検出電子の未知の容量は検出電子を固定電位に荷電して、その電荷を既知のコンデンサ容量を備えた電荷検出器に移動することによって決定される。検出回路20Bで未知のコンデンサ容量Cはチャンバ内に配置され、ガス混合物がコンデンサCの電導板間の隙間に満たされるので、コンデンサCの絶縁物または「誘電物」として作用する。最初は、コンデンサスイッチSを介してDC規準電圧(V)に接続される。スイッチSはCが電位Vに十分荷電された後で再びオフにする。その後、コンダクタンスで生じる漏洩影響を最小にするようにできるだけ遅延を短縮したあと、スイチイSをオンにしてCに存在する電荷(Q)をコンデンサC(すなわち、電荷検出器)に移動させる。電荷QがコンデンサCに十分移動すると、スイッチSを再びオフにする。電圧Vを読み取ることで、コンデンサ容量Cを決定することができる。デジタル処理のため有効な電圧範囲を有するアナログ−デジタル変換器(ADC)を提供するのに必要なスケーリングを備えるためVを増幅器に入力することができる。スイッチSは電荷移動サイクル間に電荷をリセットするリセット手段として作用するので、各電荷移動サイクルの初期状態は一貫する。スイッチS1,およびSは電気機械式スイッチまたはトランジスタにすることができる。スイッチS1,およびSを制御するのにデジタル制御ロジックを使用するのが好ましい。好ましい実施形態では、CはCよりかなり大きくなるよう選択するのが好ましい。
【0037】
検知回路20Bを支配する方程式は次のようになる。
=V[C/(C+C)]、したがって
=V/[V−V
ある場合には、チャンバ100に配置されガス混合物に曝されるコンデンサの容量はサブフェムトファラッドから低いピコファラッドまでの容量の範囲(例えば、0.1fFから100pFまで)にすることができ、またガス混合物の化学成分の濃度の変化は低いピコファラッド容量またはフェムトファラッド容量にまで至る範囲の容量変化となる結果になるだけであることが認識されている。したがって、容量測定に使用される検出回路には、小さい容量値が測定できる高感度のものが必要となる。高感度の検出回路の1つは前記した電荷移動検出回路である。その他の高感度の回路設計は英国チェシアのプロセストモグラフィ会社のPTL100キャパシタンストランスジューサなどの計器で提供される。
このPTL110は小さい容量値(10ピコファラッド以下)を1フェムトファラッドの分解能で測定する。ニューヨーク、ウエストベリのIETラボ会社の1616精密キャパシタンスブリッジは10−7pFから10μFの範囲で容量の測定が可能である。テクトロニクス社は0.3pFから3pFまでの容量が測定できるテクトロニクス130LCメートルを製造している。最新のオペアンプおよびアナログ−デジタル変換器(ADCs)を使用する容量検出回路では容易に0.01pFの分解能が得られるということは先行技術文献でも認識されている。
【0038】
理解されるように、本発明の好ましい実施形態では濃度を決定するのにコンデンサ容量を手段として使用しているが、電圧、電流、抵抗、リアクタンス、電荷、誘電率、比誘電率または他の電気特性、限定はしないが、を含むコンデンサの他の電気特性を濃度決定の手段として使用することもできる。
【0039】
図1および5を参照して、化学濃度調合・制御システムの好ましい実施形態の操作を詳細に説明する。図5に調合・制御方法を記載したフローダイヤグラムを示す。図1で述べたように、チャンバ100は「貫流」チャンバである。したがって、チャンバ100に流入した不活性化化学薬品は引き続き維持され、出口ポート120を通ってチャンバ100から流出する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の操作を、「バイオ汚染」を不活性化する「不活性化化学薬品」に関して述べるが、本発明の範囲をこれに限定する意図はない。前に示したように、化学薬品A,BおよびCは、限定はしないが、不活性化化学薬品、基剤化学薬品、および前処理化学薬品を含む化学薬品から選択することができる。また前に述べたように、不活性化する汚染物質としては、限定はしないが、バイオ汚染物質、化学戦用物質またはバイオ戦用物質が含まれる。
【0041】
最初のステップとして、コンデンサ容量Cと濃度に関するデータセット(容量対濃度のグラフを表すデータ表)を使用対象の不活性化化学薬品毎に決定して(ステップ210)、メモリー52に格納する(ステップ220)。この場合、個々の不活性化化学薬品の雰囲気を作り出し(例えば、チャンバ100内に)、コンデンサ容量Cを濃度の関数として測定する。例えば、コンデンサCを第1の不活性化化学薬品(例えば、オゾン)の検証済み濃度に曝して第1の不活性化化学薬品に関係するデータセットを決定する。チャンバ100を空にした後、コンデンサCを第2の不活性化化学薬品(例えば、エチレンオキシド)の検証済み濃度に曝して第2の不活性化化学薬品に関係するデータセットを決定する。このステップを繰り返して、その他の不活性化化学薬品(例えば、二酸化塩素および気化過酸化水素)のデータセットを追加取得する。
【0042】
理解されるように、不活性化化学薬品の濃度は周知の分析器具を使用して検証することができる。分析器具は濃度範囲、領域のサイズ、所望の応答時間、および測定時間によって選択するのが好ましい。化学成分の濃度を測定する周知の分析器具の例としては、限定はしないが、フーリエ変換赤外線(FTIR)分光器および高精度近赤外線(NIR)分光器が含まれる。
【0043】
データセットを使用対象の各不活性化化学薬品に対してメモリー52に格納した後で、処理ユニット50で「決定」操作を開始することができる。図5のステップ230に示すように、ユーザーは入力ユニット64を使用して処理すべき1つ以上のバイオ汚染物質(例えば、胞子、菌、ビールス、バクテリヤ、プリオンおよびその他のバイオ汚染物質)を選択する。次に、処理ユニット50で、1つ以上の選択した汚染物質を不活性化する不活性化化学薬品の調合を正確に決定する(ステップ240)。この場合、処理ユニット50はブレンドした不活性化化学薬品の適正な濃度を決定するデータで予めプログラム化されており、選択したバイオ汚染物質は正確に不活性化される。例えば、胞子をバイオ汚染物質として選択した場合は、胞子の不活性化に最も有効な不活性化化学薬品のブレンド(例えば、Xppmの気化過酸化水素とYppmのオゾン)が決定される。気化過酸化水素で処理する濃度の範囲は一般的には70ppmから9000ppmである。しかし、70ppm以下の気化過酸化水素の濃度を検出することはチャンバから気化過酸化水素が空になったことを確認するのに重要となることがある。ある種の汚染物質(例えばプリオン)では他のものよりも不活性化が難しくなるが、処理ユニット50は汚染物質の階層を認識するようプログラム化される。したがって、処理ユニット50で、汚染物質を不活性化するのにより難しいものを不活性化する不活性化化学が決定され、これは汚染物質を不活性化するのにそれほど難しくないものにも同様に有効となる。例えば、プリオンを不活性化するのに有効な不活性化化学は胞子およびバクテリヤを不活性化するのにも有効となる。したがって、処理ユニット50は選択した複数の汚染物質を不活性化する最適な不活性化化学を決定するようにプログラムされる。
【0044】
処理ユニット50で不活性化化学薬品のブレンドにおける各化学成分の濃度が決定された後、各化学成分はそれぞれの濃度でチャンバ100に連続して加えられて、組み合わされた不活性化化学薬品のガス混合物が形成される(ステップ250)。例えば、不活性化化学薬品の決定されたブレンドが化学薬品A(例えば、オゾン)Xppmおよび化学薬品B(例えば、二酸化塩素)Yppmから成るものとすると、処理ユニットで弁72Bおよび72Cを閉鎖位置に保持し、弁72Aを開放して化学薬品Aをチャンバ100内に放出する。前述したように、導管75A−75Cを通るガス量は流量計74A−74Cによって正確に制御される。化学薬品Aの濃度は検出回路20および予め格納したデータセットを使用して決定される。コンデンサ容量Cが予め格納したデータにないときは、格納データを内挿または外挿して測定コンデンサ容量Cに対応する濃度を得ることができる。
【0045】
化学薬品AのXppmの所望の濃度レベルが検出回路20で検出されると、化学薬品Aの流量はその所望の濃度レベルを維持するように制御される。次に、処理ユニット50で弁72Bを開いて化学薬品Bをチャンバ100内に放出する。検出回路20が(1)Xppmの化学薬品Aに対応する容量値と(2)Yppmの化学薬品Bに対応する容量値との合計に等しい容量値を示すまで、化学薬品Bの濃度をチャンバ100内で増加させるが、ここでステップ220に関連して前述したように(1)および(2)の容量値はメモリー52に予め格納されている。
【0046】
異なる化学薬品の様々な濃度に対応する容量値は下記分析に基づき加法的であると考えられる。室温以上で不変の双極子モーメントpを有するガスに対して、比誘電率(k)は k=1+4πnp/3KT
で概略表されることが知られている。ここで、nは単位容積当たりの分子の数、kはボルツマン定数(k=1.38×10−16erg/K)、Tはケルビン単位における温度である。注目されるように、与えられた温度において、比誘電率は単位容積当たりのガス分子の数nとともに直線的に増加する。そして誘電率は次のように計算される。
【0047】
ε=kε
この式の結果、特定の極性ガスの濃度の関数として測定される容量(平行板コンデンサの場合、C=εA/d)は濃度とともに直線的に増加する。感度を良好にするためには2つ以上のコンデンサを検出回路20で並列に接続することもできる。異なる双極子モーメントのガスに対して容量対濃度の曲線を表すデータセットはそれぞれ傾斜が異なるものと考えられる。実際、双極子モーメントが不変のガスでは、この式で計算した比誘電率は、分子を電界に置いて双極子モーメントを余分に誘導したときの実験値よりも多少小さい。
【0048】
単独の極性ガスおよび極性ガスの混合物においては、ガス間に双極子相互作用が存在する。単独の極性ガスの場合、この双極子相互作用は取得したデータ、すなわち、容量対濃度のデータに固有のものである。異なる極性ガスの混合物の場合、容量対濃度を混合物に対して測定しない限り双極子相互作用はデータに固有のものではない。しかし、ガスの混合物においては、双極子−双極子相互作用は次の理由により無視できると考えられる。すなわち、双極子−双極子相互作用の力は各双極子モーメントの積の一定倍(すなわち3)を、異なる双極子モーメントを分離する距離の4乗で除して、さらに様々な角度の正弦および余弦の積からなる方向量で乗じて得られる。簡単に述べると次のようになる。
【0049】
F∝p(方向計数)/r
双極子−双極子力はrで下降するので、異なる双極子が互いに影響を及ぼすには非常に接近する必要がある。この関係式において、ガス分子は急速に移動するという事実およびガス分子はいくぶん希釈するという事実を考慮すると、容量対濃度曲線に与える双極子−双極子相互作用の影響は無視できると考えられる。しかし、この相互作用は存在するので、2つ以上の異なる極性ガス分子を一緒に混合して不活性化雰囲気を形成した場合、分離して相互作用をしないガスとしてガスを取り扱うことは近似の取扱いであると理解される。しかし、これまでに示したように、混合物の異なる極性ガス間に発生する双極子−双極子相互作用が容量対濃度曲線に与える影響は本発明の精神から逸脱することなしに無視できるものと考えられる。
【0050】
次にステップ260を参照すると、チャンバ100内の濃度レベルを適当な時間、所望のレベルに維持するため、検出回路20で検出された容量値を処理ユニット50で監視し続ける。この場合、処理ユニット50は、チャンバ100内の物品または装置に関連したバイオ汚染物質を適切に不活性化するため露出時間を適正にするようプログラムされる。
【0051】
チャンバ100には、反応を起こして別の化学成分(またはそれ自体の)濃度およびバイオ汚染物質の不活性化有効性を減少する化学成分を加えない方が好ましい。しかし、ある混合した化学成分が反応する場合でも、チャンバ内への流入速度が反応速度よりも速いと、チャンバ内のガス混合物はバイオ汚染物質を依然不活性化する作動を行うことができる。また、データセットをステップ210で決定するときの温度はステップ250および260で不活性化処理の間に使用するときと一般に同じ温度にするべきである。
【0052】
蒸発したこれら不活性化化学薬品には蒸発した不活性化化学薬品をチャンバ100内に搬入するキャリアガスが必要となる。このようなキャリアガスの例には、限定はされないが、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび酸素が含まれる。
【0053】
また、処理ユニット50はプログラムされて、ガスの生成(例えば、蒸発処理)を制御する制御信号などその他の信号を出力することができる。また処理ユニット50は、所望の濃度が許容範囲にないとき、または不活性化処理が完了したとき、出力ユニット62に信号を出力して、音声および/または可視表示を行う。可視表示には濃度レベルを表示することが含まれオペレータを支援することができる。
【0054】
不活性化化学薬品には危険の可能性があることを認識するべきである。したがって、チャンバ100から出口ポートを通して排出される不活性化化学薬品を破壊するのに周知の従来手段が使用できることを理解するべきである。従来の手段には、限定はされないが、加熱、洗浄、および触媒による変換が含まれる。
【0055】
前述のように、コンデンサの応答は印加するAC波形の特性(例えば、周波数)によって影響される。したがって、コンデンサCに加えるAC波形の周波数はステップ210−260全体を通して同一にしなければならない。
【0056】
異なる化学薬品の様々な濃度に対応する容量値は前述のように加法的であると考えられる。しかし、ガス混合物で組み合わされた2つ以上の化学成分の濃度に関連する容量値は化学成分の濃度が変わるとコンデンサCの容量を測定することによっても決定できる。
この場合、コンデンサCは2つ以上の化学成分からなるガス混合物に曝される。コンデンサCの容量は各化学成分の濃度が変化すると、化学成分の濃度の関数として決定される。このように、2つ以上の化学成分濃度のいくつかの異なる組合せに対してコンデンサCの容量に関する大量のデータセットがメモリー52に集められて予め格納される。化学成分の濃度が調合されるとき、処理ユニット50は予め格納されたデータにアクセスして、ガス混合物の2つ以上の化学成分の濃度が決定される。
【0057】
多くの不活性化化学薬品は化学活性および環境条件(例えば、熱およびフォート・デグラデーション)のため時間と共に減衰する。例えば、オゾンはオゾン分子(O)が酸素分子(O)に分解して急速に減衰することが知られ、また蒸発した過酸化水素は水と酸素分子に分解することが知られている。したがって、不活性化システムではシステムで使用される化学成分の濃度は減衰の結果として不活性化処理サイクルの進行につれて減衰することが見られる。本発明によると、コンデンサ容量Cと濃度に関するデータセット(すなわち、容量対濃度の時間減衰グラフを表すデータテーブル)が各不活性化化学薬品に対して決定され(ステップ210)、各不活性化化学薬品に対して時間の関数として(すなわち1組の時間減衰データ)コンデンサ容量Cに関する追加データが得られる。この場合、減衰による不活性化化学薬品の濃度の変化を示すデータが得られる。
【0058】
不活性化化学薬品の減衰を監視する方法として容量の変化(例えば、減少または増加)の検出に関して以下に述べるが、不活性化化学薬品の減衰を監視する方法としては、これに代わって、電圧、電流、リアクタンス、電荷、比誘電率の変化、またはコンデンサの他の電気特性の変化を検出することによっても実施することができる。
【0059】
複数の不活性化化学薬品の場合は、データセットの各時間減衰の容量値を合計して、時間の関数として合計容量(すなわち、すべての不活性化化学薬品が寄与する容量の合計)の時間減衰グラフまたは曲線を表すデータセットを決定することができる。
【0060】
不活性化処理が進行すると、各不活性化化学薬品の濃度の損失は時間減衰データセットを参照して決定できる。例えば、不活性化処理を行う際、2つの不活性化化学薬品AおよびBがある場合、作動期間が経過すると、各不活性化化学薬品の減衰により、検出回路20で測定される合計容量は減少することになる。本発明は不活性化化学薬品が1つしか使用されない場合の減衰の監視にも使用できるものと理解するべきである。
【0061】
作動期間は、所定の時間間隔を選択するか、不活性化化学薬品AおよびBの閾値以下への減衰による合計容量の減少を検出するか、または合計容量の所定の減少パーセンテージを検出するかによって決めることができる。また、各不活性化化学薬品の時間減衰データセットは各不活性化化学薬品が減衰する速度を示すものと理解されるべきである。この減衰速度データは、限定はされないが、適切な所定時間間隔、閾値、または減少パーセンテージを選択することを含む様々な目的に使用される。
【0062】
2つの不活性化化学薬品AおよびBを十分な濃度レベルに補充するため、各不活性化化学薬品に対して時間の関数としての容量に関する時間減衰データセットが参照される。これらの時間減衰データセットは作動期間中にどれだけの合計容量の減少が各不活性化化学薬品AおよびBの減衰に帰するかを決定する手段を与える。したがって、その後、各不活性化化学薬品AおよびBの濃度を適当量増加することで、各不活性化化学薬品AおよびBをもとの濃度に戻すことができる。時間減衰データセットの容量値は前述の容量対濃度データを使用する特定の濃度値に関係する。このように、各不活性化化学薬品は補充され、各不活性化化学薬品に対する個々の容量対時間の曲線を参照することで決定されるように、付与された時間間隔に対する容量損失が回復する。
【0063】
第1の不活性化化学薬品の濃度が第2の不活性化薬品の濃度よりもより急速に減少する場合においては、第1の作動時間間隔が経過すると、第1の不活性化化学薬品のみを補充する必要がある。次いで、第2の作動時間間隔が経過すると、第1および第2の不活性化化学薬品の両方を補充する必要がある。
【0064】
実際の不活性化処理で使用する不活性化化学薬品の1つ以上の特定の濃度に対して格納された時間減衰データセットはないが、同一の不活性化化学薬品の他の濃度に対してデータが格納されている場合は、利用可能なデータを補間して実際に使用する不活性化化学薬品の各濃度に対する時間減衰データセットを作ることができる。さらに、不活性化処理の間に得られたデータを格納されたデータに追加することも可能であるので、同一の化学薬品を使用する以後の不活性化処理を一層精度良く制御することができる。
【0065】
データ履歴はコンデンサの電気特性を時間の関数(例えば、容量=f(t))として表現された式の展開に使用できるものと理解されるべきである。同様に、式は展開でき、コンデンサの電気特性の変化が時間の変化の関数(例えば、Δ容量=f(Δt))として表現できる。例えば、特定の不活性化化学薬品に対するコンデンサの電気特性の時間減衰曲線の一部分を測定することができる。データのこの部分が一旦取得できると、従来の曲線作成方法が使用できコンデンサの電気特性の時間関数としての変化に関する式が展開される。コンデンサの各電気特性値が不活性化化学薬品の1つの濃度に対応するので、格納された式により不活性化化学薬品の0%から100%までの濃度範囲に対応するコンデンサの電気特性値が与えられる。このように、全時間減衰データセットは1つの式に含まれる。一般的な曲線の作成または回帰解析が使用できる。例えば、最小2乗法が使用されて取得されたデータ部分に対応する式が与えられる。最小2乗法では、与えられた種類の最も適切な曲線は付与された1組のデータから得られた偏差の2乗の合計が最小となる(最小2乗誤差)曲線であると推定される。例えば、実際の不活性化処理サイクルの間において不活性化化学薬品の最初の濃度がコンデンサの測定電気特性Xに対応するとし、かつ作動開始後に時間間隔Tが経過しているとすると、格納された式がシステムで使用されて、時間間隔Tが経過したときの電気特性値が決定される。不活性化化学薬品は補充されて、コンデンサの元の電気特性Xが再格納される。さらに、前述のように、本式の時間導関数により、時間の変化に対するコンデンサの電気特性の変化に関する式が与えられる。
【0066】
前述のように、濃度検出用の1つ以上のコンデンサを有する検出回路20を1つ以上設けることができる。減衰による濃度変化を検出するためのコンデンサは、チャンバ100の低流速領域、またはチャンバ100に形成され流速がほとんどゼロに近い「デッドゾーン」領域などにおいてガス分子の滞留時間が長くなるチャンバ100の領域に配置するのが好ましい。
【0067】
本発明の好ましい実施形態の作動について不活性化化学薬品である化学成分(例えば、化学薬品A,BおよびC)を参照して説明したが、チャンバ100に導入する化学成分は、限定はされないが、不活性化化学薬品(例えば、抗菌剤)、基剤化学薬品(すなわち、不活性化化学薬品の希釈剤、または不活性化化学薬品用のビヒクルまたはキャリア)、前処理化学薬品、およびそれらの組合せたものが含まれる。例えば、化学薬品Aは前処理化学薬品とし、化学薬品BおよびCは不活性化化学薬品としてもかまわない。
【0068】
不活性化化学薬品には、限定はされないが、次亜塩素酸塩、ヨードフォア、第四級塩化アンモニウム、酸性消毒剤、アルデヒド(ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド)、アルコール、フェノール、過酢酸(PAA)、二酸化塩素からなる群から選択された化学薬品が含まれる。不活性化薬品の特定の例としては、限定はされないが、気化過酸化水素、気化漂白剤、気化過酸、気化過酢酸、オゾン、エチレンオキシド、二酸化塩素、ハロゲン含有化合物、アンモニアガス、他のガス状オキシダント、およびそれらの混合物がある。ハロゲン含有化合物のハロゲンには、限定はされないが、塩素、フッ素および臭素がある。
【0069】
基剤化学薬品の例としては、限定はされないが、脱イオン化水蒸気、蒸留水蒸気、気化アルコール(例えば、第三級アルコール)、およびそれらの混合物が含まれる。前述したように、基剤化学薬品はそれ自体不活性化化学薬品である。したがって、また、基剤化学薬品は上に列挙した不活性化化学薬品のいずれか1つであってもかまわない。
【0070】
チャンバ100内で作られる雰囲気のいくつかの例としては、限定はされないが、オゾン、気化過酸化水素と水蒸気、エチレンオキシド、気化過酸化水素と水蒸気とオゾン、気化過酸化水素と水蒸気とエチレンオキシド、オゾンとエチレンオキシド、および気化過酸化水素と水蒸気とオゾンとエチレンオキシドが含まれる。
【0071】
本明細書を検討、理解するに際して、その他の修正および変更が生じ得る。特許請求の範囲内またはそれと同等のものである限りこのような修正および変更はすべて本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物の化学成分の濃度変化に応答し、ガス混合物にさらされた第1と第2の導電体を有するコンデンサを含む検出手段であって、前記ガス混合物は導電体の間に誘電体として存在し、ガス混合物の化学成分の濃度によって変化する電気特性を有する前記コンデンサを含む検出手段と、
(a)電気特性に関連付けられた特性値、および(b)ガス混合物の化学特性の濃度を示す前記特性値に一致する濃度値を含む1組のデータを蓄積するメモリーと、
検出手段からデータを受信し、メモリーに蓄積されたデータ組をアクセスしてガス混合物の化学成分の濃度を決定する処理手段と、
を備えたことを特徴とする、ガス混合物の化学成分の濃度を決定する化学濃度検知システム。
【請求項2】
前記コンデンサは、平行板コンデンサ、円筒コンデンサおよび球面コンデンサからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の化学濃度検知システム。
【請求項3】
前記処理手段は、前記メモリーに蓄積された対応する濃度値を決定するために、前記特性値を用い、ガス混合物の化学成分の濃度を決定することを特徴とする請求項1に記載の化学濃度検知システム。
【請求項4】
前記処理手段は、ガス混合物の化学成分の濃度決定に、前記データ組を内挿または外挿することを特徴とする請求項1に記載の化学濃度検知システム。
【請求項5】
前記化学成分は、抗菌化学薬品であることを特徴とする請求項1に記載の化学濃度検知システム。
【請求項6】
前記抗菌化学薬品は、ガス状オキシダントであることを特徴とする請求項5に記載の化学濃度検知システム。
【請求項7】
前記抗菌化学薬品は、気化過酸化水素、気化過酸、気化過酢酸、気化漂白剤、オゾン、エチレンオキシド、アンモニアガス、ハロゲン含有化合物およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の化学濃度検知システム。
【請求項8】
化学成分の濃度により変化する前記電気特性は、抵抗、電圧、電流、リアクタンス、電荷、誘電率、比誘電率からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の化学濃度検知システム。
【請求項9】
第1および第2の導電体を有し、ガス混合物の化学成分の濃度に従って変化する電気特性を有するコンデンサを、電極の間に誘電体として存在するガス混合物にさらし、
前記コンデンサの前記電気特性に関連付けられた電気特性値と、前記ガス混合物の化学成分の濃度を示す前記電気特性値に一致する濃度値を含むデータをあらかじめメモリーへ蓄積し、
コンデンサに関連付けられた電気特性値を決定し、
ガス混合物の化学成分の濃度を決定する為に、前記電気特性値を用い前記メモリーへアクセスする
ことを特徴とするガス混合物の化学成分の濃度を決定する方法。
【請求項10】
前記ガス混合物の化学成分の相対濃度を決定するために前記メモリーへのアクセスにおいて、
対応する濃度値を決定するために、前記電気特性値を用いることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス混合物の化学成分の濃度決定に、前もって記録されたデータを内挿または外挿する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化学成分は抗菌化学薬品であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌化学薬品はガス状オキシダントであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗菌化学薬品は、気化過酸化水素、気化過酸、気化過酢酸、気化漂白剤、オゾン、エチレンオキシド、アンモニアガス、ハロゲン含有化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
化学成分の濃度により変化する前記電気特性は、抵抗、電圧、電流、リアクタンス、電荷、誘電率、比誘電率からなるグループから選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−258137(P2009−258137A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186184(P2009−186184)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【分割の表示】特願2006−514885(P2006−514885)の分割
【原出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【出願人】(507182690)ステリス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】