説明

ガス状ハロゲン化合物の処理方法及び処理装置

【課題】 臭化メチル等のガス状ハロゲン化合物を無害化処理することができて地球環境への負荷を低減できると共に、処理コストを低減でき、処理設備の小型化も十分に可能な、ガス状ハロゲン化合物の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】 この発明の処理方法は、ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を放電プラズマと接触させてハロゲン化合物を分解する分解処理工程と、前記分解処理で生成した分解生成物を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって前記ハロゲンと金属との塩を形成せしめるハロゲン固定工程とを包含することを特徴とする。この発明の処理装置1は、ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた放電プラズマと反応させる放電プラズマ反応器2と、前記放電プラズマ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバー3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、検疫時に実施される殺虫目的の燻蒸処理等に用いられる臭化メチルガス等のガス状ハロゲン化合物を分解して無害化処理する処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば輸入食品等は検疫の際に、殺虫を目的とした燻蒸処理が行われている。この燻蒸処理の殺虫薬剤としては臭化メチルガスが用いられることが多い。例えば、図9に示すように、燻蒸倉庫(100)内に被燻蒸物(燻蒸対象物)(101)を配置した後、内部循環用送風機(102)を作動させることによって臭化メチル(103)を燻蒸倉庫(100)内で循環せしめる。臭化メチルは気化点が3〜4℃程度であり常温下で気化するので気体(ガス)となって燻蒸倉庫(100)内を循環して燻蒸倉庫(100)内に配置された被燻蒸物(101)に付着して殺虫する。所定時間燻蒸処理を行った後、排気送風機(104)で燻蒸倉庫(100)内のガスを排出すると共に、吸気送風機(105)で新たな空気を倉庫(100)内に送り込んでこの流入大気で希釈しつつ燻蒸倉庫(100)内の臭化メチルガス(103)を排出ガスとして大気放出する。
【0003】
検疫時の殺虫燻蒸処理で用いられる臭化メチルの濃度は、一般的に3000〜12000ppmであり、1回の燻蒸処理で大量の臭化メチルが用いられているのであるが、現状では殆どの場合、燻蒸処理後の臭化メチルは何ら処理を施されることなくそのまま大気に放出されている。しかしながら、臭化メチルは、オゾン層破壊係数が0.6(ODP)でありオゾン層破壊を促進する物質である上に、生態毒性を有することから、臭化メチルの大気への放出濃度は抑制する必要がある。近年の地球環境保護の要請の高まりの中、臭化メチルの大気への放出は極力抑制することが強く要請されているところである。
【0004】
このような状況の中、臭化メチルを処理する方法として、活性炭を用いた吸着法が提案されている(引用文献1参照)。例えば、図10に示すように、活性炭吸着塔(110)の中に活性炭(111)を配置し、燻蒸倉庫から送られてくる燻蒸処理後の臭化メチルガス(112)を前記活性炭吸着塔(110)内に導入し、前記活性炭(111)で臭化メチルを吸着せしめて分離した後、吸着処理後のガス(113)を大気に放出する。
【0005】
また、臭化メチルを処理する方法として、臭化メチルガスを燃焼分解処理する方法も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−197455号公報(請求項1、5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記活性炭吸着法では、活性炭の臭化メチル吸着量には飽和量があることから、燻蒸処理で使用される大量の臭化メチルを処理するためには必然的に吸着剤である活性炭の充填量を多くしなければならず設備容積が膨大なものとなって設備が大型化するという問題があった。また、活性炭吸着法では、臭化メチルを活性炭に吸着捕捉せしめるものであるから、根本的に臭化メチルを無害化処理することはできない。更に、臭化メチルを吸着した活性炭を廃棄処理することが必要となるので、地球環境に負荷をかけることになるという問題もあった。
【0007】
また、前記燃焼分解処理法では、臭化メチルの燃焼処理によって、該臭化メチルよりも毒性の大きい臭素酸化物を生成してしまうという問題があった。即ち、発生する臭素酸化物を無害化処理する二次処理が必要になる。また、臭化メチルガスを燃焼させるのに500℃以上の加熱温度にする必要があり、処理に多量の熱エネルギーを要することから、多大なコストがかかるという問題もあった。更に、燃焼分解処理装置の設備は大型にならざるを得ず、小型化が困難であるという問題もあった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、臭化メチル等のガス状ハロゲン化合物を無害化処理することができて地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献できると共に、多大な熱エネルギーを必要とせず処理コストを低減することができ、処理設備の小型化も十分に可能である、ガス状ハロゲン化合物の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記ハロゲン化合物を分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した分解生成物を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって前記ハロゲンと金属との塩を形成せしめるハロゲン固定工程とを包含することを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0011】
[2]臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記臭化メチルを分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって臭化金属塩を形成せしめるハロゲン固定工程とを包含することを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0012】
[3]燻蒸処理に用いられた後の臭化メチルガスを含むガス流を燻蒸倉庫から放電プラズマ反応器内に送流する送流工程と、
前記放電プラズマ反応器内において、前記臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記臭化メチルを分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって臭化金属塩を形成せしめるハロゲン固定工程と、
前記ハロゲン固定工程を経た後のガス流を前記燻蒸倉庫内に戻す返流工程とを包含し、
前記送流工程、分解処理工程、ハロゲン固定工程及び返流工程からなる循環処理を1ないし複数回行うことを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0013】
[4]前記金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液を用いる前項1〜3のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0014】
[5]前記金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる前項1〜3のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0015】
[6]前記放電プラズマとして、相互に離間して配置された放電電極と対向電極の間にパルス電圧を印加することによって両電極間にパルスコロナを発生させるパルスコロナ反応器によって発生させた非平衡プラズマを用いる前項1〜5のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【0016】
[7]ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた放電プラズマと反応させる放電プラズマ反応器と、
前記放電プラズマ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0017】
[8]ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた非平衡プラズマと反応させるパルスコロナ反応器と、
前記パルスコロナ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0018】
[9]燻蒸倉庫と、
前記燻蒸倉庫から送流されてくるガス状ハロゲン化合物を含むガス流を、器内で発生させた非平衡プラズマと反応させるパルスコロナ反応器と、
前記パルスコロナ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーと、
前記スクラバーから送流されてくるガス流を導入すると共に、該ガス流を前記燻蒸倉庫内に戻す経路とそのまま大気に放出する経路の切り替えを行うことのできる切替ダンパとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0019】
[10]前記パルスコロナ反応器は、放電電極と対向電極の離間距離が100mm以下に設定され、距離的平均電界強度が10V/cm/ns以上で立ち上がるように設定され、最大値が5kV/cm以上であるパルス高電圧を毎秒100回以上印加するように設定されている前項8または9に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0020】
[11]前記パルスコロナ反応器において、前記対向電極は螺旋コイル状に形成される一方、前記放電電極は角線を撚った線状電極で形成され、該線状の放電電極が前記螺旋コイル状の対向電極の螺旋内空間に挿通配置されている前項8〜10のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0021】
[12]前記パルスコロナ反応器の対向電極の表面に誘電体が被覆形成されている前項8〜11のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0022】
[13]前記誘電体として、セラミック、ガラスおよび樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の誘電体が用いられている前項12に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0023】
[14]前記金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液が用いられている前項7〜13のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【0024】
[15]前記金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液が用いられている前項7〜13のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を放電プラズマと接触させるから、該放電プラズマの作用によってハロゲン化合物を分解処理することができ、さらに分解生成物を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるので、これによってハロゲン化金属塩を形成せしめることができ、ガス状ハロゲン化合物を無害化処理することができる。このようにガス状ハロゲン化合物を無害化処理できるので、オゾン層破壊を促進するハロゲン化合物の大気への排出を十分に抑制することができると共に、毒性を有する物質の大気への排出も抑制することができて、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献することができる。また、処理に際して多大な熱エネルギーを必要としないから、処理コストを低減することができる。また、本処理方法では、ガスを吸着した活性炭等のような廃棄物を生成しないことから、この点からも地球環境への負荷が極めて少なくて済む。更に、本処理方法では、処理設備の小型化も十分に可能である。
【0026】
[2][3]の発明では、臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させるから、該放電プラズマの作用によって臭化メチルを分解処理することができ、さらに分解生成物である臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるので、これによって臭化金属塩を形成せしめることができ、こうして臭化メチルガスを無害化処理することができる。このように臭化メチルガスを無害化処理できるので、オゾン層破壊を促進する臭化メチルガスの大気への排出を十分に抑制することができると共に、毒性を有する物質の大気への排出も抑制することができて、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献することができる。また、処理に際して多大な熱エネルギーを必要としないから、処理コストを低減することができる。また、本処理方法では、ガスを吸着した活性炭等のような廃棄物を生成しないことから、この点からも地球環境への負荷が極めて少なくて済む。更に、本処理方法では、処理設備の小型化も十分に可能である。
【0027】
更に[3]の発明では、送流工程、分解処理工程、ハロゲン固定工程及び返流工程からなる循環処理を1ないし複数回行うことによって臭化メチルガスの無害化処理を行うので、即ち循環させつつ無害化処理(臭化メチルガスの分解処理)を進めるので、小さな設備で対応することができると共に、臭化メチルガスの無害化処理を十分な程度まで行うことができる利点がある。
【0028】
[4]の発明では、金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液を用いるので、ハロゲン固定工程において効率良く臭化金属塩(臭化ナトリウム塩)を形成せしめることができる利点がある。
【0029】
[5]の発明では、金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液を用いるので、ハロゲン固定工程において一層効率良く臭化金属塩(臭化ナトリウム塩)を形成せしめることができる利点がある。
【0030】
[6]の発明では、放電プラズマとして、相互に離間して配置された放電電極と対向電極の間にパルス電圧を印加することによって両電極間にパルスコロナを発生させるパルスコロナ反応器によって発生させた非平衡プラズマを用いるので、ガス状ハロゲン化合物の分解処理を非常に効率良く実施することができ、これにより短時間での無害化処理が可能となる。
【0031】
[7]の発明(処理装置)では、ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた放電プラズマと反応させる放電プラズマ反応器を備えており、該放電プラズマ反応器においてガス状ハロゲン化合物を含むガス流を放電プラズマと接触させるてハロゲン化合物を分解処理することができ、さらにスクラバーにおいて分解生成物を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるので、これによってハロゲン化金属塩を形成せしめることができ、こうしてガス状ハロゲン化合物を無害化処理することができる。このようにガス状ハロゲン化合物を無害化処理できるので、オゾン層破壊を促進するハロゲン化合物の大気への排出を十分に抑制することができると共に、毒性を有する物質の大気への排出も抑制することができて、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献することができる。また、処理に際して多大な熱エネルギーを必要としないから、処理コストを低減することができる。また、本処理装置では、ガスを吸着した活性炭等のような廃棄物を生成しないことから、この点からも地球環境への負荷が極めて少なくて済む。更に、本処理装置では、処理設備の小型化も十分に可能である。
【0032】
[8][9]の発明(処理装置)では、ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた非平衡プラズマと反応させるパルスコロナ反応器を備えており、該パルスコロナ反応器において臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させて臭化メチルを分解処理することができ、さらにスクラバーにおいて分解生成物である臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるので、これによって臭化金属塩を形成せしめることができ、こうして臭化メチルガスを無害化処理することができる。このように臭化メチルガスを無害化処理できるので、オゾン層破壊を促進する臭化メチルガスの大気への排出を十分に抑制することができると共に、毒性を有する物質の大気への排出も抑制することができて、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献することができる。また、処理に際して多大な熱エネルギーを必要としないから、処理コストを低減することができる。また、本処理装置では、ガスを吸着した活性炭等のような廃棄物を生成しないことから、この点からも地球環境への負荷が極めて少なくて済む。更に、本処理装置では、処理設備の小型化も十分に可能である。
【0033】
更に[9]の発明では、燻蒸倉庫、パルスコロナ反応器、スクラバー及び切替ダンパからなるガス循環経路が構成されており、該ガス循環経路をガス流が通過することによって循環処理がなされるので、小さな設備で対応することができると共に、臭化メチルガスの無害化処理を十分な程度まで行うことができる利点がある。また、切替ダンパが設けられているので、前記ガス循環経路を通過しているガス流における臭化メチルガスの濃度が所定の濃度よりも低い場合には、切替ダンパの切替の設定によりこの切替ダンパから処理済みガスを大気に放出することができる。なお、前記ガス循環経路を通過しているガス流における臭化メチルガスの濃度が所定の濃度よりも高い場合には、切替ダンパの切替の設定により切替ダンパに送流されてきたガス流を燻蒸倉庫内に戻して再循環処理に供することができる。
【0034】
[10]の発明では、パルスコロナ反応器は、放電電極と対向電極の離間距離が100mm以下に設定され、距離的平均電界強度が10V/cm/ns以上で立ち上がるように設定され、最大値が5kV/cm以上であるパルス高電圧を毎秒100回以上印加するように設定されているから、ガス状ハロゲン化合物から分解生成物への転換率(臭化メチルから臭化水素への転換率)が非常に大きくなる利点がある。これにより処理装置の処理効率が格段に向上する。
【0035】
[11]の発明では、パルスコロナ反応器において、対向電極は螺旋コイル状に形成される一方、放電電極は角線を撚った線状電極で形成され、該線状の放電電極が螺旋コイル状の対向電極の螺旋内空間に挿通配置されているから、非平衡プラズマの発生量が非常に多くなり、これにより分解効率をさらに向上させることができる。
【0036】
[12]の発明では、パルスコロナ反応器の対向電極の表面に誘電体が被覆形成されているから、放電電極から進展するパルスコロナが対向電極と橋絡しないようにすることができる。
【0037】
[13]の発明では、誘電体として、セラミック、ガラスおよび樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の誘電体が用いられているから、放電電極から進展するパルスコロナが対向電極と橋絡することを確実に防止することができる。
【0038】
[14]の発明では、金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液が用いられているから、スクラバーにおいて効率良く臭化金属塩(臭化ナトリウム塩)を形成せしめることができる。
【0039】
[15]の発明では、金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液が用いられているから、スクラバーにおいて一層効率良く臭化金属塩(臭化ナトリウム塩)を形成せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
この発明に係るガス状ハロゲン化合物の処理装置(1)の一実施形態を図1に示す。本実施形態では、ガス状ハロゲン化合物が臭化メチルである場合を例に説明する。図1において、(2)は放電プラズマ反応器、(3)はスクラバー、(6)は燻蒸倉庫である。
【0041】
前記燻蒸倉庫(6)内には、被燻蒸物(燻蒸対象物)(41)が配置され、さらに内部循環用送風機(40)が配置されている。燻蒸処理を行う際には臭化メチル(42)が燻蒸倉庫(1)内に放置される。前記内部循環用送風機(40)は、気化した臭化メチルを燻蒸倉庫(1)内で循環させるための設備である。
【0042】
前記燻蒸倉庫(6)の側壁の底部位置に設けられた開口部にダンパ(21)が取り付け固定され、さらに該ダンパ(21)に第1ガス誘導管(25)が連通接続されている。この第1ガス誘導管(25)の他端(図面右端)は、放電プラズマ反応器(2)の側壁に連通接続されている。なお、前記ダンパ(21)は、燻蒸処理中は燻蒸倉庫(6)内を閉鎖空間とするために閉じられる。後述するダンパ(22)についても同様に燻蒸処理中は閉じられる。
【0043】
本実施形態では、前記放電プラズマ反応器(2)としてパルスコロナ反応器が用いられている。このパルスコロナ反応器(2)は、外部にパルス電源(11)を備え、反応器(2)内に放電電極(12)及び対向電極(13)を備えている。本実施形態では、図2に示すような螺旋型の構成が採用されている。即ち、対向電極(13)は螺旋コイル状に形成され、放電電極(12)は断面矩形状の角線を撚った(ツイストした)線状電極で形成され、この線状の放電電極(12)が前記螺旋コイル状の対向電極(13)の螺旋内空間に挿通配置されている。前記対向電極(13)の表面には誘電体(図示しない)が被覆形成されている。前記放電電極(12)の一端は外部のパルス電源(11)に接続され、前記対向電極(13)の一端も外部のパルス電源(11)に接続されており、このパルス電源(11)で放電電極(12)と対向電極(13)の間にパルス電圧を印加することによって両電極(12)(13)間にパルスコロナの非平衡プラズマ(低温プラズマ)を発生させることができる。
【0044】
前記パルスコロナ反応器(2)では、前記燻蒸倉庫(6)内からダンパ(21)、第1ガス誘導管(25)を通過して送気されてくる臭化メチルを含むガス流を、反応器(2)内で発生させた前記非平衡プラズマと接触させて分解反応させる。即ち、図2に示すように、前記螺旋コイル状の対向電極(13)の螺旋内空間に臭化メチルを含むガス流を送流せしめて非平衡プラズマと接触させて分解反応させる。この反応により、前記臭化メチルは分解されて臭化水素に転換される。なお、図2において、(14)は分解処理前ガス流、(15)は分解処理後ガス流をそれぞれ示す。
【0045】
前記パルスコロナ反応器(2)と前記スクラバー(3)は、その側壁同士が第2ガス誘導管(26)を介して連通接続されている。前記スクラバー(3)は、図3に示すように、処理塔(30)と、該処理塔(30)内に設けられたスプレーノズル部(31)(31)と、前記処理塔(30)内に設けられた気液接触層部(32)とを備えている。前記処理塔(30)の側面壁の下部位置に前記第2ガス誘導管(26)が連通接続されると共に、処理塔(30)の側面壁の上部位置に第3ガス誘導管(27)が連通接続されている。前記処理塔(30)内における前記第2ガス誘導管(26)取付位置よりも高い位置に前記気液接触層部(32)が配置されている。この気液接触層部(32)は、複数枚の多孔板が上下に積み重ねられたものからなり、多孔板同士は相互に離間して配置されている。前記処理塔(30)内における気液接触層部(32)と第3ガス誘導管(27)取付位置の間の位置にスプレーノズル部(31)(31)が設けられている。即ち、前記処理塔(30)の側面壁における前記第3ガス誘導管(27)取付位置よりも低い位置にスプレーノズル部(31)(31)が取付固定されている。
【0046】
前記スプレーノズル部(31)には、多数のノズル孔が形成されており、これらノズル孔から金属イオンを含有した薬液(34)が処理塔(30)内にスプレーされるものとなされている。しかして、前記第2ガス誘導管(26)から送気されてくるガス流(分解生成物である臭化水素を含むガス流)は、前記スクラバー(3)の処理塔(30)内を通過して上部の第3ガス誘導管(27)を介して次の切替ダンパ(5)の方へ送流されていくのであるが、このガス流は、スクラバー(3)の処理塔(30)内を通過する間にまず前記気液接触層部(32)において、上部にあるスプレーノズル部(31)からスプレーされて落下してきて付着した金属イオン含有薬液(34)と接触すると共に、更に気液接触層部(32)より上部空間において前記スプレーノズル部(31)からスプレーされた金属イオン含有薬液(34)と接触する。このような金属イオン含有薬液(34)との接触により臭化金属塩が形成され、この臭化金属塩はスクラバー(3)の処理塔(30)内の底部に滞留するものとなる(ハロゲンの固定が行われる)。
【0047】
前記スクラバー(3)の側壁の上部位置に設けられた開口部に第3ガス誘導管(27)が取付固定され、該第3ガス誘導管(27)の他端は吸引ファン(4)に接続されている。また前記吸引ファン(4)は、第4ガス誘導管(28)を介して切替ダンパ(5)と連通接続されている。更に前記切替ダンパ(5)は、前記燻蒸倉庫(6)の側壁の上部位置に設けられた開口部に連通接続された第5ガス誘導管(29)の他端と連通接続されている。しかして、前記吸引ファン(4)を作動させると、前記燻蒸倉庫(6)内のガスは、ファン(4)側に吸引されて、ダンパ(21)、第1ガス誘導管(25)、パルスコロナ反応器(2)、第2ガス誘導管(26)、スクラバー(3)、第3ガス誘導管(27)を順に通過して吸引ファン(4)を経てさらに第4ガス誘導管(28)を介して切替ダンパ(5)に到達する。この切替ダンパ(5)において第5ガス誘導管(29)に接続されるように切り替えが行われている場合には、前記ガスは、第5ガス誘導管(29)、ダンパ(22)を順に通過して前記燻蒸倉庫(1)内に戻されて合流する。また、切替ダンパ(5)において外部に開放するように切り替えが行われている場合には、前記ガスは、外部の大気に放出される。
【0048】
しかして、前記ダンパ(21)(22)を閉じた状態にして、前記燻蒸倉庫(6)内で臭化メチル(42)により所定時間燻蒸処理を行う。しかる後、前記ダンパ(21)(22)を開放して連通状態とし、前記吸引ファン(4)を作動させると共に、前記放電プラズマ反応器(パルスコロナ反応器)(2)を運転状態とする。
【0049】
前記吸引ファン(4)の作動によって、前記燻蒸倉庫(6)内のガス(臭化メチルガスを含むガス)は、ダンパ(21)、第1ガス誘導管(25)を介してパルスコロナ反応器(2)内に導入される。このパルスコロナ反応器(2)内においては、パルス電源(11)を用いて放電電極(12)と対向電極(13)の間にパルス電圧を印加することによって両電極(12)(13)間にパルスコロナの非平衡プラズマを発生しており、反応器(2)内に導入されたガス中の臭化メチルガスは、非平衡プラズマと接触して非平衡プラズマの作用によって分解されて臭化水素に転換される。このような分解処理がなされたガス流(臭化水素を含むガス流)は、前記吸引ファン(4)の吸引作用によって第2ガス誘導管(26)を通過して前記スクラバー(3)内に導入される。
【0050】
このスクラバー(3)内では、導入されたガス流(分解生成物である臭化水素を含むガス流)は、まず前記気液接触層部(32)において、上部にあるスプレーノズル部(31)からスプレーされて落下してきて付着滞留している金属イオン含有薬液(34)と接触すると共に、更に気液接触層部(32)より上部空間において前記スプレーノズル部(31)からスプレーされた金属イオン含有薬液(34)と接触する。このような金属イオン含有薬液(34)との接触により臭化金属塩が形成され、この臭化金属塩はスクラバー(3)の処理塔(30)内の底部に滞留するものとなる(ハロゲンの固定が行われる)。即ち、図3において、(33)は、反応後溶液(例えば、臭化金属塩+水)である。この反応後溶液(例えば臭化ナトリウム水溶液)は、排出されて回収される。回収された臭化ナトリウムは、例えば写真材料等に再利用可能である。
【0051】
前記固定処理を経たガス流は、前記吸引ファン(4)の吸引作用によって第3ガス誘導管(27)を通過して吸引ファン(4)を経てさらに第4ガス誘導管(28)を介して切替ダンパ(5)に到達する。この切替ダンパ(5)は、前記第4ガス誘導管(28)を通過したガスにおける臭化メチルガス濃度が所定の濃度よりも高い場合には、第5ガス誘導管(29)に接続されるように切替設定されているから、前記ガスは、第5ガス誘導管(29)、ダンパ(22)を順に通過して前記燻蒸倉庫(1)内に戻されて合流する(ガスが循環される)。
【0052】
しかして、このような放電プラズマ反応器(2)及びスクラバー(3)を用いた循環処理操作が1ないし複数回繰り返して行われていく。1回の循環操作後に又は複数回繰り返し循環処理操作を行った後に、前記第4ガス誘導管(28)を通過したガスにおける臭化メチルガス濃度が所定の濃度よりも低い場合には、切替ダンパ(5)において外部に開放するように切り替えが行われるから、この場合には前記ガスは、外部の大気に放出されるものとなる。こうして大気に放出されたガスは、臭化メチルガス、臭化水素ガスを殆ど含有しないガスになっている。このようにオゾン層破壊を促進する臭化メチルガスの大気への排出を十分に抑制することができると共に、毒性を有する物質の大気への排出も抑制することができて、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献することができる。
【0053】
また、前記処理装置(1)を用いた本処理方法では、処理に際して多大な熱エネルギーを必要としないものであるから、処理コストを低減することができる。また、本処理方法では、ガスを吸着した活性炭等のような廃棄物を生成しないことから、この点からも地球環境への負荷が極めて少なくて済む。更に、本処理装置(1)では、放電プラズマ反応器(2)、スクラバー(3)ともに大きな設備になるものではなく、十分に小型化が可能であり、小型の処理装置(1)を構成できる利点もある。
【0054】
なお、上記実施形態では、スクラバー(3)としては、処理塔(30)内にスプレーノズル部(31)と気液接触層部(32)とを備えた構成のものを採用しているが、特にこのような構成のものに限定されるものではない。例えば図7(イ)(ロ)(ハ)に示す構成を採用しても良い。図7(イ)に示すスクラバー(3)は、バブリング方式のスクラバーであり、処理塔(30)内の金属イオン含有薬液(34)中にガス流(分解生成物である臭化水素を含むガス流)をバブリングすることによってガス流と薬液(34)とを接触せしめて臭化金属塩を形成させるものである。また、図7(ロ)に示すスクラバー(3)は、気液接触層方式のスクラバーであり、気液接触層部(32)において上方から落下してきて付着滞留している金属イオン含有薬液(34)と、ガス流(分解生成物である臭化水素を含むガス流)とを接触せしめて臭化金属塩を形成させるものである。また、図7(ハ)に示すスクラバー(3)は、スプレー方式のスクラバーであり、処理塔(30)の内部空間において、スプレーノズル部(31)からスプレーされた金属イオン含有薬液(34)と、ガス流(分解生成物である臭化水素を含むガス流)とを接触せしめて臭化金属塩を形成させるものである。これらの中でも、金属イオン含有薬液とガス流との接触効率を十分に高める観点から、本実施形態の構成(処理塔内にスプレーノズル部(31)と気液接触層部(32)とを備えた構成)を採用するのが好ましい。
【0055】
前記金属イオンを含有した薬液(34)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムイオンを含有した薬液等が挙げられる。前記ナトリウムイオンを含有した薬液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等が挙げられる。これらの中でも、効率良く臭化ナトリウム塩を形成せしめる観点から、水酸化ナトリウム水溶液を用いるのが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、パルスコロナ反応器(2)における電極構造として図2に示すような螺旋型の構成が採用されているが、特にこのような構成のものに限定されるものではない。例えば図4〜6に示す電極構造を採用しても良い。図4では、平板状の放電電極(12)(12)(12)(12)と、平板状の対向電極(13)(13)(13)(13)とが交互に平行状に所定間隔をあけて配置された構成を採用している。また、図5では、離間して配置された一対の平板状の対向電極(13)(13)の間の対向空間に線状の放電電極(12)(12)(12)が挿通配置された構成を採用している。また、図6では、円筒状の対向電極(13)の内部空間に線状の放電電極(12)が挿通配置された構成を採用している。なお、図5、6において、(14)は分解処理前ガス流、(15)は分解処理後ガス流をそれぞれ示す。
【0057】
前記パルスコロナ反応器(2)において、放電電極(12)と対向電極(13)の離間距離は100mm以下に設定されるのが好ましい。100mmを超えると反応空間における単位容積当たりのエネルギー密度が低下し分解率が低下する傾向があるので好ましくない。
【0058】
また、前記パルスコロナ反応器(2)において、距離的平均電界強度は10V/cm/ns以上で立ち上がるように設定されるのが好ましい。なお、前記「距離的平均電界強度」とは、印加するパルス高電圧の電圧を、放電電極と対向電極の離間距離で割った値である。
【0059】
更に、前記パルスコロナ反応器(2)では、最大値が5kV/cm以上であるパルス高電圧を毎秒100回以上印加するように設定されているのが好ましい。毎秒100回未満では反応空間における単位容積当たりのエネルギー密度が低下し分解率が低下する傾向があるので好ましくない。
【0060】
前記パルスコロナ反応器(2)における好適な電圧波形(23)及び電流波形(24)を図8に示す。このような数百ナノ秒の急峻な立上がり波形を有した高電圧パルスを印加するのが望ましい。この場合には発生する非平衡プラズマ(低温プラズマ)により臭化メチルを高転換率で臭化水素に転換することができ、90%以上の転換率を達成することも十分に可能である。
【0061】
上記実施形態では、対向電極(13)の表面に誘電体が被覆されているが、このような誘電体が被覆されていない構成を採用しても良い。ただ、放電電極(12)から進展するパルスコロナが対向電極(13)と橋絡することを効果的に防止する観点から、前記対向電極(13)の表面に誘電体が被覆されている構成を採用するのが好ましい。前記誘電体としては、特に限定されるものではないが、セラミック、ガラスおよび樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の誘電体を用いるのが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、燻蒸用臭化メチルガスの処理について説明したが、この発明の処理方法及び処理装置は、特にこのような臭化メチルガスの処理に限定されるものではなく、例えば他の設備や用途で使用された臭化メチルガスの処理にも適用できる。更に、この発明の処理方法及び処理装置は、臭化メチルガスの処理だけに限定されるものではなく、その他のガス状ハロゲン化合物を含むガスの処理に適用することもできる。その他の適用可能なガス状ハロゲン化合物としては、例えばフロンガス(CFC−12)、トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)等が挙げられる。
【0063】
また、上記実施形態では、パルスコロナ反応器による放電プラズマ(非平衡プラズマ)を用いて処理を行っているが、特にこのようなパルスコロナ反応器による放電プラズマのみに限定されるものではなく、例えばアーク放電による放電プラズマ、グロー放電による放電プラズマを用いて処理しても良く、本発明はこのような種類の放電プラズマによる処理も包含するものである。ただ、より高い分解率が得られる点で、パルスコロナ反応器による非平衡プラズマを用いて分解処理するのが望ましい。
【実施例】
【0064】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0065】
<実施例1>
前述した図1に示す構成からなる処理装置(1)を用いて、燻蒸倉庫(6)内で燻蒸に用いられた後の臭化メチルガスの無害化処理を行った。即ち、燻蒸処理後、ダンパ(21)(22)を開放して連通状態とし、吸引ファン(4)を作動させると共に、放電プラズマ反応器(パルスコロナ反応器)(2)を運転状態とした。
【0066】
前記吸引ファン(4)の作動により第4ガス誘導管(28)におけるガス流量は5600L/分であった。なお、燻蒸処理直後の燻蒸倉庫(6)内の臭化メチルガス濃度は10000ppmであった。パルスコロナ反応器(2)の周波数を1000Hzに設定し、電圧を80kVに設定した。また、前記パルスコロナ反応器(2)は、電極構造が図2に示す螺旋型であり、放電電極と対向電極の離間距離が90mmに設定され、距離的平均電界強度が1000V/cm/ns以上で立ち上がるように設定され、最大値が5kV/cm以上であるパルス高電圧を毎秒1000回印加するように設定されている。また、スクラバー(3)では薬液として1.25モル/L(5%水溶液)の水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0067】
しかして、処理装置(1)の運転を開始した後、経過時間毎の第4ガス誘導管(28)における臭化メチルガス濃度を表1に示す。時間の経過と共に臭化メチルガス濃度が低下していることがわかる。
【0068】
8時間経過後に臭化メチルガス濃度が1ppm以下になったことが確認できたことから、この後に切替ダンパ(5)において外部に開放するように切り替えを行ってガス流を外部大気に放出せしめた。
【0069】
<実施例2>
燻蒸処理直後の燻蒸倉庫(6)内の臭化メチルガス濃度が5000ppmであった以外は、実施例1と同様にして、燻蒸倉庫(6)内で燻蒸に用いられた後の臭化メチルガスの無害化処理を行った。処理装置(1)の運転開始後の経過時間毎の第4ガス誘導管(28)における臭化メチルガス濃度を表1に示す。6時間経過後に臭化メチルガス濃度が5ppm以下になったことが確認できたことから、この後に切替ダンパ(5)において外部に開放するように切り替えを行ってガス流を外部大気に放出せしめた。
【0070】
【表1】

【0071】
表から明らかなように、実施例1〜2では、時間の経過と共に臭化メチルガス濃度が低下しており、このように速やかに臭化メチルガスの無害化処理を行うことができた。このように、この発明の処理装置、処理方法によれば、オゾン層破壊を促す臭化メチルガスの大気への排出を十分に抑制できるし、毒性を有する物質の大気への排出を抑制することができるので、地球環境への負荷を低減し得て地球環境保護に十分に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明のガス状ハロゲン化合物処理装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】パルスコロナ反応器の電極構造の一例(螺旋型)を示す概略図である。
【図3】スクラバーを示す概略図である。
【図4】パルスコロナ反応器の電極構造の他の例を示す概略図である。
【図5】パルスコロナ反応器の電極構造の更に他の例を示す概略図である。
【図6】パルスコロナ反応器の電極構造の更に他の例(円筒型)を示す概略図である。
【図7】(イ)(ロ)(ハ)いずれもスクラバーの他の例を示す概略図である。
【図8】パルス電源の電圧及び電流波形の好適例を示すグラフである。
【図9】従来の燻蒸処理後のガス処理の説明図である。
【図10】従来の処理方法で用いられる活性炭吸着塔の概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1…ガス状ハロゲン化合物処理装置
2…放電プラズマ反応器(パルスコロナ反応器)
3…スクラバー
5…切替ダンパ
6…燻蒸倉庫
11…パルス電源
12…放電電極
13…対向電極
42…臭化メチル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記ハロゲン化合物を分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した分解生成物を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって前記ハロゲンと金属との塩を形成せしめるハロゲン固定工程とを包含することを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項2】
臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記臭化メチルを分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって臭化金属塩を形成せしめるハロゲン固定工程とを包含することを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項3】
燻蒸処理に用いられた後の臭化メチルガスを含むガス流を燻蒸倉庫から放電プラズマ反応器内に送流する送流工程と、
前記放電プラズマ反応器内において、前記臭化メチルガスを含むガス流を放電プラズマと接触させることによって前記臭化メチルを分解する分解処理工程と、
前記分解処理で生成した臭化水素を含むガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させることによって臭化金属塩を形成せしめるハロゲン固定工程と、
前記ハロゲン固定工程を経た後のガス流を前記燻蒸倉庫内に戻す返流工程とを包含し、
前記送流工程、分解処理工程、ハロゲン固定工程及び返流工程からなる循環処理を1ないし複数回行うことを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項4】
前記金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項5】
前記金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項6】
前記放電プラズマとして、相互に離間して配置された放電電極と対向電極の間にパルス電圧を印加することによって両電極間にパルスコロナを発生させるパルスコロナ反応器によって発生させた非平衡プラズマを用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項7】
ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた放電プラズマと反応させる放電プラズマ反応器と、
前記放電プラズマ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項8】
ガス状ハロゲン化合物を含むガス流を器内で発生させた非平衡プラズマと反応させるパルスコロナ反応器と、
前記パルスコロナ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項9】
燻蒸倉庫と、
前記燻蒸倉庫から送流されてくるガス状ハロゲン化合物を含むガス流を、器内で発生させた非平衡プラズマと反応させるパルスコロナ反応器と、
前記パルスコロナ反応器で反応した後のガス流を、金属イオンを含有した薬液と接触させるスクラバーと、
前記スクラバーから送流されてくるガス流を導入すると共に、該ガス流を前記燻蒸倉庫内に戻す経路とそのまま大気に放出する経路の切り替えを行うことのできる切替ダンパとを備えることを特徴とするガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項10】
前記パルスコロナ反応器は、放電電極と対向電極の離間距離が100mm以下に設定され、距離的平均電界強度が10V/cm/ns以上で立ち上がるように設定され、最大値が5kV/cm以上であるパルス高電圧を毎秒100回以上印加するように設定されている請求項8または9に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項11】
前記パルスコロナ反応器において、前記対向電極は螺旋コイル状に形成される一方、前記放電電極は角線を撚った線状電極で形成され、該線状の放電電極が前記螺旋コイル状の対向電極の螺旋内空間に挿通配置されている請求項8〜10のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項12】
前記パルスコロナ反応器の対向電極の表面に誘電体が被覆形成されている請求項8〜11のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項13】
前記誘電体として、セラミック、ガラスおよび樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の誘電体が用いられている請求項12に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項14】
前記金属イオンを含有した薬液としてナトリウムイオンを含有した薬液が用いられている請求項7〜13のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。
【請求項15】
前記金属イオンを含有した薬液として水酸化ナトリウム水溶液が用いられている請求項7〜13のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化合物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−122866(P2006−122866A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317746(P2004−317746)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(392008194)オリエンタル機電株式会社 (8)
【Fターム(参考)】