説明

ガス発生器

【課題】 一方の燃焼室内のガス発生剤の燃焼により、他方の燃焼室内のガス発生剤が燃焼する誤作動を防止できるガス発生器の提供。
【解決手段】 2つの燃焼室30、50間は隔壁35で分離されている。隔壁35は、ハウジング11に形成された不連続突起61、62により固定されている。2つの燃焼室30、50間の気密性は、2つのリテーナ80、90により確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアバッグシステムに使用するエアバッグ用ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時の衝撃の大きさや、乗員の体格等によってエアバッグの展開速度や張りの強弱を調整するため、デュアル型のガス発生器が使用されている。
【0003】
デュアル型のガス発生器は、例えば、2つの燃焼室(ガス発生部)を独立に作動させることで、ガス発生量やエアバッグへのガス排出速度や量を調整して、エアバッグの展開具合をコントロールするものである。このため、各々の燃焼室中のガス発生剤は、互いに他方の燃焼室のガス発生剤の着火によって燃焼されないように隔離する必要がある。
【0004】
特許文献1は、エアバッグ用のガス発生器の発明である。長尺ハウジングのほぼ中央に隔壁20を配置し、2つの燃焼室を隔壁によって隔離する構造であり、環状クリンプ62を隔壁の両側に形成することで、隔壁を固定すると同時に、互いに反対側の燃焼室とのシール性能を最大にさせることを意図したものである。
【0005】
環状のクリンプは、隔壁の固定と燃焼室のシールを兼ねるものであるが、シール性確保のためには、クリンプ(内側方向への突起)をハウジングの周りに連続に形成する必要がある。ところが、円筒ハウジングの周りに連続したクリンプを形成するときには、ハウジング外周面から力を加えてハウジングを内側に変形させるため、「逃げ」を設ける必要があり、「逃げ」を設けないと、円筒ハウジングに歪みが生じる恐れもある。このため、円周方向に連続したクリンプを形成することは技術的に困難である。
【0006】
また、隔壁もハウジング周壁もハウジングを形成する強度部材となるため、ある程度の厚みが必要になる。よって、隔壁のうち、ハウジングと接触部分を変形させる程度にまでクリンプを形成しないと、充分なシール性は確保されにくい。
【特許文献1】USP 6,547,477 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、デュアル型のガス発生器において、一方の燃焼室内のガス発生剤の燃焼により、他方の燃焼室内のガス発生剤が燃焼する誤作動を防止すると共に、組み立てを簡略化できるエアバッグ用ガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筒状ハウジング内に、隔壁で分離され、軸方向に隣接された2つの燃焼室が配置され、前記2つの燃焼室内には、それぞれ点火手段とガス発生剤が収容され、2つの燃焼室ごとにガス排出口を有しており、
前記隔壁が、前記筒状ハウジング内表面に、周方向に不連続で間隔をおいて2列形成された複数の突起により挟持されて固定されており、
前記2つの燃焼室の内、少なくとも一方の燃焼室内にリテーナが圧入されており、前記リテーナが有する壁面が前記筒状ハウジングの内周面に当接されることで前記2つの燃焼室間が気密状態に分離されている、ガス発生器を提供する。
【0009】
本発明のガス発生器では、隔壁の固定手段と、2つの燃焼室間を気密状態に維持する手段、即ち、一方の燃焼室の作動(点火手段の作動により、ガス発生剤が着火燃焼して高温ガスを発生すること)の影響が他方の燃焼室に及ばない(一方の燃焼室で発生した高温ガスが他方の燃焼室に流入しない)ようにする手段は、別々の手段からなっている。
【0010】
2つの燃焼室を分離する隔壁の固定手段は、周方向2列に形成された複数の突起であり、隔壁の両周縁部に当接するように周方向に間隔をおいて形成される。よって、特許文献1の発明のクリンプとは異なり、不連続に形成されているから、複数の突起は、隔壁を固定する役目はするものの、2つの燃焼室間を気密状態にする機能はない。しかし、このように不連続の突起により隔壁を固定すると、特許文献1の発明のように連続的にクリンプを形成する技術的困難性もなく、ハウジングに歪み等が生じるおそれもない。
【0011】
複数の突起は、筒状ハウジングを外側から加圧して窪みを付け、筒状ハウジングの内側に向かって突き出した突起である。よって、筒状ハウジングの内表面を見たときには突起であるが、外表面を見たときには窪み(凹部)乃至は溝である。
【0012】
不連続な突起は、突起が環状に形成されているのではなく、例えば、内周面に4つの突起を設けた場合、突起が形成されていない部分が4箇所存在する。即ち、周方向に形成された突起と突起の間に間隔があき、この部分は基本的には内側に変形していない(無変形部分)。
【0013】
間隔をおいた2列の突起は、2つの突起で隔壁を固定するとき、厚さ方向の両側から隔壁を挟み付けるようにして固定するためである。
【0014】
1列の突起の数は4〜8が好ましく、4又は6が好ましい。2列の突起の数は同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0015】
突起の周方向の長さは、全ての突起において同一でもよいし、突起ごとに異ならせてもよい。具体的には、筒状ハウジングの径(円周の長さ)によっても異なるが、筒状ハウジングの外径が50mmであるとき、突起の長さは10〜40mmが好ましく、25〜35mmがより好ましい。2列の突起の長さは同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0016】
突起の高さは、隔壁を固定することができる程度であれば良いが、必要に応じてフィルタを使用する場合に干渉しないようにする観点から、フィルタとガス排出口との間隔程度に設定することができる。2列の突起の高さは同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0017】
突起同士の間隔(即ち、無変形部分の円周方向への長さ)は、4〜10mmとすることができるが、更に4〜8mmとすることもできる。通常の使用によって発生する燃焼室の圧力に対しては、突起同士の間隔が4mm以上であると、不連続突起を形成することができるので充分な「逃げ」が確保でき、上限値の10mm以下であると、隔壁の固定強度が高められる。但し、無変形部分の長さや突起の深さは、隔壁固定の強度と関係し、それは燃焼時の圧力に依存することから、上記の数値はあくまでも一例であって、燃焼圧力によって突起の深さ、突起同士の間隔を調整することができる。なお、2列の突起の長さ、又は突起同士の間隔は同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0018】
2つの燃焼室間を気密状態に維持する手段は、少なくとも一方の燃焼室内に圧入されたリテーナであり、リテーナが有する壁面が前記筒状ハウジングの内周面に当接されていることにより、気密状態が維持される。なお、リテーナは、圧入できるような形状、即ち、リテーナが有する壁面が筒状ハウジングの内周面を押圧できるような形状であればよい。
【0019】
本発明は、前記リテーナが、先に作動する燃焼室内又は両方の燃焼室内に配置されている、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0020】
2つの燃焼室を有するガス発生器では、自動車の衝突の程度(乗員が受ける衝撃の程度)に応じて、適切に乗員を拘束保護するため、2つの燃焼室が同時に作動する場合、一方が先に作動して、他方が遅れて作動する場合、一方のみが作動する場合(但し、車両解体時の安全性を確保するため、他方も乗員の拘束に無関係な時点で作動する)の3つがある。このため、一方の燃焼室の作動による影響を他方に及ぼさない観点からは、2つの燃焼室間の気密性をより高めるため、先に作動する燃焼室内又は2つの燃焼室内にリテーナを圧入することが好ましい。
【0021】
本発明は、前記リテーナが、円板部と前記円板部と一体に形成された外周壁部を有しており、前記円板部が前記隔壁に当接され、前記外周壁部のうち、前記円板部と反対側の終端部が少なくとも前記筒状ハウジングの内周面を押圧するように配置されている、請求項1又は2記載のガス発生器を提供する。
【0022】
リテーナの外周壁部は、円板部から垂直方向に延ばされた第1外周壁と、第1外周壁の外側に同心状に形成される第2外周壁とを有するものが好ましい。第1外周壁と第2外周壁は、段差部を介して2つの垂直壁が組み合わされたものでもよいし、第1外周壁から斜め外側方向に第2外周壁が形成されたものでもよい。ここで、円板部の直径と第1外周壁の直径は同程度であるが、第2外周壁の直径(最大直径)は第1外周壁の直径よりも大きくなる。第2外周壁の直径(最大直径)が筒状ハウジングの内径よりも僅かに大きくなるように設定することで、リテーナが圧入できるようになり、リテーナの外周壁部によりハウジング内周面を押圧できるようになる。
【0023】
また、第2外周壁の外側がハウジング内周面を押圧するため、シール性も確保される。なお、第2外周壁は、ハウジング内部に圧入できる程度の弾性を有し、作動時の圧力で更にハウジングの内周面に押圧されるため、シール性が高められる。
【0024】
リテーナは、弾力性と強度のある、厚さ0.3〜1.0mm程度の金属製(例えば、ステンレス製)のものを用いることができる。
【0025】
本発明は、前記2つの燃焼室内には、それぞれ筒状フィルタが配置されており、前記筒状フィルタの少なくとも一方が、前記リテーナに設けられた突起により位置決めされている、請求項1〜3のいずれかに記載のガス発生器を提供する。
【0026】
フィルタは、ガス発生剤の燃焼により発生した燃焼ガスに対するろ過機能及び冷却機能を有する部品であるが、フィルタと筒状ハウジングに設けられたガス排出口の間には、ガスの排出を容易にするため、間隙を設けることが好ましい。よって、ガス排出口との間に間隙を設けるようにしてフィルタを配置するとき、フィルタの位置決めが重要となるが、2つの燃焼室間の気密性を確保するためのリテーナをフィルタの位置決めに利用することで、部品点数を増加することなく、フィルタを簡単に位置決めできるようになる。
【0027】
フィルタは、目の粗い金網(例えば、平織金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル、ラスメタル等の金網、金属線材を用い、圧縮成形されたメッシュ織りフィルタ)を複数積層してなる筒状のものを用いることができる。
【0028】
本発明は、前記2つの燃焼室の内の少なくとも一方には、点火手段から発生した着火エネルギーを伝達するための伝火チューブが配置されており、
前記伝火チューブが、一端側の開口部は点火手段に接続され、他端側の開口部は前記リテーナに当接されて閉塞されており、前記リテーナに設けられた突起により位置決めされている、請求項1〜4のいずれかに記載のガス発生器を提供する。
【0029】
筒状ハウジングの場合、2つの燃焼室は円筒状となるため、燃焼室内に充填されたガス発生剤には、点火手段(通常は、電気式点火器又は電気式点火器と伝火薬との組み合わせ)に近い位置にあるものと、遠い位置にあるものが存在する。このような場合、点火手段に近い位置にあるガス発生剤の方が燃えやすく、遠い位置にあるガス発生剤の方が燃えにくくなる。よって、燃焼室内に着火エネルギーを伝達する伝火チューブを配置して、点火手段からの位置に拘わらず、ガス発生剤の良好な着火性を確保することは重要となる。このため、伝火チューブの位置決めも重要となるが、2つの燃焼室間の気密性を確保するためのリテーナを伝火チューブの位置決めに利用することで、部品点数を増加することなく、伝火チューブを簡単に位置決めできるようになる。
【0030】
なお、伝火チューブの他端側の開口部は、リテーナの形状に応じて、リテーナに当接してもよいし、隔壁に当接してもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のガス発生器によれば、2つの燃焼室を分離する隔壁の固定手段と、2つの燃焼室を気密状態に分離するリテーナにより、一方の燃焼室の作動による影響が他方の燃焼室に及ぶことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜図5により、本発明のガス発生器について説明する。図1は、軸方向への断面図である。図2〜図4は、図1の部分斜視図(異なる実施形態を含む)、図5は、図1の部分拡大断面図である。図1のガス発生器10は、車両の乗員拘束装置の一つであるエアバッグシステムに適用するものであり、特に助手席用エアバッグのガス発生器として適している。
【0033】
筒状ハウジング11内の一端側には、第1点火器20、第1燃焼室30が配置されている。筒状ハウジング11内の幅方向の断面形状は円形に限られず、楕円形や多角形でも良い。
【0034】
第1点火器20は、円盤形状の第1カラー21に取り付けられ、その第1カラー21が筒状ハウジング11の端部周縁のカシメ部12と、環状突起部(完全な環状ではない)13により固定されている。第1カラー21の外周部に溝を設けて、防湿性を確保するためのO−リングを配置し、ハウジング内周面との間で挟持することができる。
【0035】
第1燃焼室30内には、第1伝火チューブ40が配置され、その中には、燃焼温度が1700〜3000℃の所望形状に成形されたガス発生剤成型体(伝火薬として使用する)、又は公知のB/KNOのような伝火薬)が収容されている。
【0036】
第1伝火チューブ40は、その周壁面に多数の伝火ノズル41が形成されている。伝火ノズル41は、アルミニウムテープなどで閉塞されているが、伝火薬をアルミニウムのキャニスタなどに収容し、第1伝火チューブ40内部に配置することもできる。
【0037】
第1燃焼室30には、第1伝火チューブ40に配置したガス発生剤よりも燃焼温度の低い第1ガス発生剤33が収容されている。
【0038】
筒状ハウジング11の他端側には、第2点火器51、第2燃焼室50が配置されている。第1燃焼室30と同じように、第2点火器51が第2カラー53に固定され、筒状ハウジング11の端部周縁のカシメ部16と、環状突起部(完全な環状ではない)17により固定されている。第2カラー53にも第1カラー21と同様にO−リングを配置することができる。
【0039】
第2燃焼室50内には、第2伝火チューブ46が配置され、その中に燃焼温度が1700〜3000℃の所望形状に成形されたガス発生剤成型体(伝火薬として使用する)、又は公知のB/KNOのような伝火薬)が収容されている。第2伝火チューブ46はその周壁面に多数の伝火ノズル47が形成されている。伝火ノズル47は、アルミテープなどで閉塞されているが、伝火薬をアルミニウムのキャニスタなどに収容し、伝火チューブ40内部に配置することもできる。第2伝火チューブ46の一端側開口部は第2点火器51に接続され、他端側開口部は第2リテーナ90の第1円板部91aに当接されている。
【0040】
第2燃焼室50には、第2伝火チューブ46に配置したガス発生剤よりも燃焼温度の低い第1ガス発生剤53が収容されている。
【0041】
筒状ハウジング11の中央部には、隔壁35が配置されている。隔壁35は筒状ハウジング11の周方向に形成された2列の不連続な突起61、62によって固定されている。2列の突起61、62は、筒状ハウジング11の外表面のうち、隔壁35の両周縁に相当する部分を内側に突起させるように変形させたものである。
【0042】
次に、図2〜図4により、突起61、62の例を説明する。図2では、筒状ハウジング11の円周上に、内側方向への突起61a、61b、61c(61dは裏面で見えない)、内側方向への突起62a、62b、62c(62dは裏面で見えない)の2列が形成されており、各列の突起の形成状態は同じである。各突起の間は平坦面(ハウジングの曲面)であり、平坦面部分には内側方向への突起又は変形はない。
【0043】
筒状ハウジング11の直径は50mm(円周157mm)であり、各突起の高さ(突起の深さ)は1.5mm、各突起の長さは約32mm、各突起同士の周方向の間隔は7mmにすることができる。
【0044】
図3では、筒状ハウジング11の円周上に、内側方向への突起61a、61b、61c(61dは裏面で見えない)、内側方向への突起62a、62b、62c(62dは裏面で見えない)の2列が形成されている。但し、各列の突起の形成状態は異なっており、突起の形成位置(即ち、突起のない部分の形位置)が異なっている。各突起の間は平坦面(ハウジングの曲面)であり、平坦面部分には内側方向への突起又は変形はない。
【0045】
筒状ハウジング11の直径は50mm(円周約157mm)であり、各突起の高さ(突起の深さ)、長さは、間隔は、図2のものと同じにすることができる。
【0046】
図4では、筒状ハウジング11の円周上に、内側方向への突起61a、61b、61c(61dは裏面で見えない)の4つの突起、内側方向への突起62a、62b、62c、62d、62e(62fは裏面で見えない)の6つの突起の2列が形成されている。各突起の間は平坦面(ハウジングの曲面)であり、平坦面部分には内側方向への突起又は変形はない。
【0047】
筒状ハウジング11の直径は50mm(円周157mm)であり、突起61a〜61dの高さ(突起の深さ)、長さは、間隔は、図2のものと同じにすることができる。
【0048】
筒状ハウジング11の直径は50mm(円周157mm)であり、突起62a〜62fの高さ(突起の深さ)は1.5mm、長さは20mm、突起同士の間隔は6mmにすることができる。
【0049】
第1燃焼室30には、図5に示すような第1リテーナ80が配置されている。第1リテーナ80は、円板部81と外周壁部82を有しており、外周壁部82は、垂直壁部(第1外周壁)83と、垂直壁部83から外側に広げられた拡大部(第2外周壁)84を有している。
【0050】
円板部81には、外側環状突起部85と内側環状突起部86が設けられており、内側環状突起部86で囲まれた部分が第1円板部81a、外側環状突起部85と内側環状突起部86で囲まれた部分が第2円板部81b、外側環状突起部85と外周壁部82で囲まれた部分が第3円板部81cとなっている。第1円板部81a、第2円板部81b、第3円板部81cは、隔壁35に当接されている。
【0051】
拡大部84の外径は、筒状ハウジング11の内径よりも大きくなるように設定されているため、第1リテーナ80は筒状ハウジング11内に圧入することができ、拡大部84は筒状ハウジング11の内表面を押圧している。垂直壁部83の外径は、突起51の高さを考慮して、突起51に干渉しないように決定されている。
【0052】
第2燃焼室50には、図5に示すような第2リテーナ90が配置されている。第2リテーナ90は、円板部91と外周壁部92を有しており、外周壁部92は、垂直壁部93と、垂直壁部93から外側に広げられた拡大部94を有している。
【0053】
円板部91には、外側環状突起部95と内側環状突起部96が設けられており、内側環状突起部96で囲まれた部分が第1円板部91a、外側環状突起部95と内側環状突起部96で囲まれた部分が第2円板部91b、外側環状突起部95と外周壁部92で囲まれた部分が第3円板部91cとなっている。第1円板部91a、第2円板部91b、第3円板部91cは、隔壁35に当接されている。
【0054】
拡大部94の外径は、筒状ハウジング11の内径よりも大きくなるように設定されているため、第2リテーナ90は筒状ハウジング11内に圧入することができ、拡大部94は筒状ハウジング11の内表面を押圧している。垂直壁部93の外径は、突起50の高さを考慮して、突起51に干渉しないように決定されている。
【0055】
第1燃焼室30には、筒状の第1フィルタ71がハウジング軸方向に配置され、第1フィルタ71に対向する筒状ハウジング11の壁面には、複数のガス排出口52aが設けられている。ガス排出口52aは、内側からシールテープでシールされている。
【0056】
第1フィルタ71は、一端部が第1カラー21の凹部73に嵌合されている。特に第1カラー21に形成された凹部73は、内側段部73aと外側段部73bを有しており、内側段部73aはフィルタ71内周面のうちの一端部側が当接されており、ガス発生器組立時のフィルタ71の位置決めの機能を有するほか、発生した燃焼ガスがフィルター端部と第1カラー21との間からショートパスが防止される。
【0057】
図1の構造では、外側段部73bはテーパー状に形成されているが、内側段部73aと同様に第1フィルタ71の一端部外周面に当接される面が形成されるため、燃焼ガスのショートパスを防止する効果が更に高められる。即ち、第1カラー21の第1フィルタ端部当接面に不連続な面(73cと73d)が形成され、第1フィルタ端部の内周面又は外周面の少なくともいずれかが接触する構造となっており、第1フィルタ端部からの燃焼ガスのショートパスが防止される。
【0058】
一方、反対端部は、第3円板部81cに当接された状態で、外側環状突起部85と外周壁部82で囲まれている。このため、第1フィルタ反対端部では、第1フィルタ71の位置決めが容易であるとともに、燃焼ガスが第1フィルタ71の反対端部からショートパスすることが防止される。
【0059】
第1伝火チューブ40の一端側開口部は、第1カラー21に形成された凹部22に嵌合されており、凹部22は、第1伝火チューブ40の外径に相当する内径で形成されており、両方ががたつきなく固定されていることが好ましい。一方、反対端部は、内側環状突起部86によって固定されている。内側環状突起部86の内径を第1伝火チューブ40の外径に相当させることで、第1伝火チューブ40をがたつきなく固定することができる。
【0060】
このようにして第1伝火チューブ40固定され、位置決めされていることにより、第1伝火チューブ40内のガス発生剤成型体(伝火薬として使用する)が燃焼して、第1伝火チューブ40内部が高圧になったときには、第1伝火チューブ40内部の燃焼ガスが第1カラー21又リテーナ80の間をショートパスすることも防止される。
【0061】
第2フィルタ72も第1フィルタ71と同様にして位置決めされ、固定されており、第2伝火チューブ46も第1伝火チューブ40と同様にして位置決めされ、固定されている。
【0062】
第2燃焼室50には、筒状の第2フィルタ72がハウジング軸方向に配置され、第2フィルタ72に対向する筒状ハウジング11の壁面には、複数のガス排出口52bが設けられている。ガス排出口52bは、内側からシールテープでシールされている。
【0063】
第2フィルタ72は、一端は第2カラー53の凹部74に嵌合され、反対端部は第3円板部91cに当接され、端部は外側環状突起部95と外周壁部92で囲まれている。このため、第2フィルタ73の位置決めが容易である共に、燃焼ガスが第2フィルタ72の端部からショートパスすることが防止される。
【0064】
次に、図1をもとに自動車のエアバッグシステムにガス発生器10を組み込んだときの動作を説明する。以下においては、第1点火器20と第2点火器51が同時に作動した場合について説明する。
【0065】
車両の衝突時、第1点火器20が作動し、伝火薬を着火燃焼させ、着火エネルギー(高温ガス及び火炎)を発生させる。この着火エネルギーは、伝火ノズル41から第1燃焼室30内に流入し、第1ガス発生剤33を着火燃焼させる。
【0066】
第1ガス発生剤33の燃焼により発生した燃焼ガスは、第1フィルタ71を経由することで冷却され、かつ燃焼残渣が濾過された後、シールテープを破り、ガス排出口52aから排出され、エアバッグを膨張させる。
【0067】
このような燃焼ガスの排出過程において、第1燃焼室30で発生した圧力によって、第1リテーナ80の拡大部84はハウジング11の内表面に強く押されるため、接触面における隙間は存在しない。このため、燃焼ガスのショートパス(第2燃焼室50への漏出)が防止される。
【0068】
一方、第1点火器20と同時に第2点火器51が作動したとき、伝火薬を着火燃焼させ、着火エネルギー(高温ガス及び火炎)を発生させる。この着火エネルギーは、伝火ノズル47から第2燃焼室50内に流入し、第2ガス発生剤53を着火燃焼させる。
【0069】
第2ガス発生剤53の燃焼により発生した燃焼ガスは、第2フィルタ72を経由することで冷却され、かつ燃焼残渣が濾過された後、シールテープを破り、ガス排出口52bから排出され、更にエアバッグを膨張させる。
【0070】
このような燃焼ガスの排出過程において、第2燃焼室50で発生した圧力によって、第2リテーナ90の拡大部94はハウジング11の内表面に強く押されるため、接触面における隙間は存在しない。このため、燃焼ガスのショートパス(第1燃焼室30への漏出)が防止される。
【0071】
なお、第1点火器20が先に作動した場合においても、同時作動時と同様に、燃焼ガスのショートパス(第2燃焼室50への漏出)が防止される。また、第1点火器20が先に作動した場合、第1燃焼室30の内圧のみが高くなり、第2燃焼室50は常圧のままであるが、隔壁35は2列の突起61、62により固定されているので、第1燃焼室30の圧力を受けて移動したりすることはない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のガス発生器の軸方向の断面図。
【図2】図1のガス発生器の部分斜視図。
【図3】他実施形態のガス発生器の部分斜視図。
【図4】他実施形態のガス発生器の部分斜視図。
【図5】図1のガス発生器の部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0073】
10 ガス発生器
11 筒状ハウジング
20 第1点火器
30 第1燃焼室
35 隔壁
50 第2燃焼室
51 第2点火器
61、62 突起
80 第1リテーナ
90 第2リテーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ハウジング内に、隔壁で分離され、軸方向に隣接された2つの燃焼室が配置され、前記2つの燃焼室内には、それぞれ点火手段とガス発生剤が収容され、2つの燃焼室ごとにガス排出口を有しており、
前記隔壁が、前記筒状ハウジング内表面に、周方向に不連続で間隔をおいて2列形成された複数の突起により挟持されて固定されており、
前記2つの燃焼室の内、少なくとも一方の燃焼室内にリテーナが圧入されており、前記リテーナが有する壁面が前記筒状ハウジングの内周面に当接されることで前記2つの燃焼室間が気密状態に分離されている、ガス発生器。
【請求項2】
前記リテーナが、先に作動する燃焼室内又は両方の燃焼室内に配置されている、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記リテーナが、円板部と前記円板部と一体に形成された外周壁部を有しており、前記円板部が前記隔壁に当接され、前記外周壁部のうち前記円板部と反対側の終端部が少なくとも前記筒状ハウジングの内周面を押圧するように配置されている、請求項1又は2記載のガス発生器。
【請求項4】
前記2つの燃焼室内には、それぞれ筒状フィルタが配置されており、前記筒状フィルタの少なくとも一方が、前記リテーナに設けられた突起により位置決めされている、請求項1〜3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記2つの燃焼室の内の少なくとも一方には、点火手段から発生した着火エネルギーを伝達するための伝火チューブが配置されており、
前記伝火チューブが、一端側の開口部は点火手段に接続され、他端側の開口部は前記リテーナに当接されて閉塞されており、前記リテーナに設けられた突起により位置決めされている、請求項1〜4のいずれかに記載のガス発生器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−15573(P2007−15573A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199727(P2005−199727)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】