説明

ガス発生器

【課題】 ガス発生剤の充填量変更への対応が容易であり、小型化できるガス発生器の提供。
【解決手段】 ハウジング11内に第1カップ部材32と第2カップ部材41が配置されている。第1カップ部材32は、下側の外径が大きく、上側の外径が小さくされ、第2カップ部材41は逆形状となっている。第1カップ部材32と第2カップ部材41を組み合わせて配置することにより、全体容量を変えることなく、ガス発生剤の充填量の増減が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の人員拘束装置に使用するガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の人員拘束装置用のガス発生器は、エアバッグ等の人員拘束装置を作動させるための十分な量のガスを発生させる必要がある。一方、車両の重量低減から、ガス発生器自体の小型・軽量化が望まれている。
【0003】
特許文献1では、ハウジング12内部にアダプタ64、92に固定された2つの点火器62,90が並列に配置され、それぞれのアダプタ64,92にカップ56および96が取り付けられたガス発生器10が開示されている。
【0004】
この構造では、各々のカップ56、96の外径が実質上一定であり、たとえばアダプタ64の径以下に小さくはできない。このため第2ガス発生剤の充填量を増やす必要がある場合、カップ同士56、96の干渉が発生する。そのため、各カップに充填できるガス発生剤や火薬の量に上限があった。
【特許文献1】米国特許6,032,979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガス発生剤等の使用量の変更への対応が容易であり、かつ全体を小型軽量化できるガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)
本発明は、課題の解決手段として、
ガス排出口を有するハウジング内に筒状フィルタが配置され、前記筒状フィルタの内側にガス発生剤を収容する第1カップ部材と第2カップ部材が半径方向に並列して配置され、前記第1カップ部材と前記第2カップ部材にはそれぞれのガス発生剤を着火、燃焼させる点火手段が収容されており、
前記第1カップ部材が、開口部側の第1拡径周壁部と底面側の第1縮径周壁部を有し、開口部側から前記点火手段を包囲するように前記ハウジング底面に被せられており、
前記第2カップ部材が、開口部側の第2縮径周壁部と底面側の第2拡径周壁部を有し、開口部側から前記点火手段を包囲するように前記ハウジング底面に被せられており、
前記第1カップ部材と前記第2カップ部材が、前記第1拡径周壁部と前記第2縮径周壁部が半径方向に隣接し、かつ前記第1縮径周壁部と前記第2拡径周壁部が半径方向に隣接するように配置されており、
前記ハウジング内の前記第1カップ部材及び前記第2カップ部材で囲まれた空間を除いた空間が第1燃焼室を形成し、前記第1カップ部材で囲まれた空間がエンハンサ室を形成し、前記第2カップ部材で囲まれた空間が第2燃焼室を形成しており、前記第1燃焼室と前記エンハンサ室が作動時に連通され、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室が作動時に連通される、ガス発生器を提供する。
【0007】
第1カップ部材の第1拡径周壁部と第1縮径周壁部の外径の大きさは相対的なものであり、第1拡径周壁部の外径が第1縮径周壁部の外径よりも大きいこと(即ち、第1拡径周壁部の外径>第1縮径周壁部の外径)を意味する。なお、第1拡径周壁部は全体にわたって同一径であることが好ましいが、同一径でない部分を含んでいてもよく、第1縮径周壁部は全体にわたって同一径であることが好ましいが、同一径でない部分を含んでいてもよい。また、第1カップ部材は、開口部側から底面側にかけて外径が連続的に小さくなるものでもよい。
第1拡径周壁部の外径が均一ではなく、第1縮径周壁部の外径が均一ではないとき、第1拡径周壁部の平均外径>第1縮径周壁部の平均外径、の関係を満たすものである。
【0008】
第2カップ部材が、第2縮径周壁部と第2拡径周壁部の外径の大きさは相対的なものであり、第2縮径周壁部の外径が第2拡径周壁部の外径よりも大きいこと(即ち、第2拡径周壁部の外径>第2縮径周壁部の外径)を意味する。なお、第2拡径周壁部は全体にわたって同一径であることが好ましいが、同一径でない部分を含んでいてもよく、第2縮径周壁部は全体にわたって同一径であることが好ましいが、同一径でない部分を含んでいてもよい。また、第2カップ部材は、開口部側から底面側にかけて外径が連続的に大きくなるものでもよい。
第2拡径周壁部の外径が均一ではなく、第2縮径周壁部の外径が均一ではないとき、第2拡径周壁部の平均外径>第2縮径周壁部の平均外径、の関係を満たすものである。
【0009】
第1カップ部材と第2カップ部材の大きさは適宜調整することができるが、第1カップ部材の第1拡径周壁部の内径と第2カップ部材の第2縮径部の内径は、取り付け作業性の観点から、同程度であることが好ましい。
【0010】
第1カップ部材と第2カップ部材は、軸方向の断面形状で見たとき、隣接する周壁面同士が互いにぴったりとくっ付き合うような形状であることが特に好ましい。
【0011】
本発明のガス発生器では、ハウジング内において、第1カップ部材と第2カップ部材が、第1拡径周壁部と第2縮径周壁部が半径方向に隣接し、かつ第1縮径周壁部と第2拡径周壁部が半径方向に隣接するように配置されているため、組立時に前記2つのカップ部材同士がぶつかり合って邪魔になることがない。更に、第1カップ部材の周壁面と第2カップ部材の周壁面との間隔も狭くすることができる。前記間隔は、第1燃焼室内におけるガス発生剤の燃焼により、第2燃焼室が熱的影響を受けないように、ガス発生剤が入り込まない程度の間隔にすることが好ましい。
【0012】
このため、第2カップ部材の内容積を最大限に大きくした状態にすることができるので、ハウジング全体を大きくすることなく、内部に充填するガス発生剤量の調整可能な範囲を広くすることができる。
【0013】
(請求項2)
本発明は、課題の解決手段として、前記第1カップ部材において、前記第1拡径周壁部と前記第1縮径周壁部の境界部が第1環状斜面を有しており、
前記第2カップ部材において、前記第2縮径周壁部と前記第2拡径周壁部の境界部が第2環状斜面を有している、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0014】
第1環状斜面は、外径を大きくするような傾斜の環状斜面であり、第2環状斜面は、逆に外径を小さくするような傾斜の環状斜面であるから、第1カップ部材と第2カップ部材の間隔をより小さくすることができる。第1環状斜面と第2環状斜面の傾斜角度は同一かできるだけ近似していることが好ましい。
【0015】
(請求項3)
本発明は、課題の解決手段として、前記第1カップ部材の第1縮径周壁部には複数の第1連通孔が形成され、前記第2カップ部材の第2拡径周壁部には複数の第2連通孔が形成されており、
前記第1連通孔と前記第2連通孔が、軸方向の高さ位置が異なるように形成されている、請求項1又は2記載のガス発生器を提供する。
【0016】
第1カップ部材において、第1縮径周壁部に複数の第1連通孔が形成されていると、第1連通孔と筒状フィルタとの間隔を大きくすることができる。このため、点火手段の作動により、第1カップ部材内のエンハンサ剤(ガス発生剤)が燃焼し、第1連通孔から燃焼生成物(高温ガス、火炎等)が噴出されたとき、第1連通孔と正対位置にある筒状フィルタに及ぼす熱的影響が抑制される。このとき、第1連通孔の向きを斜め方向にすると、燃焼生成物が斜め上又は斜め下方向に噴出されるため、より熱的影響が抑制される。
【0017】
また第1連通孔と第2連通孔は、第1燃焼室のうち、ガス発生剤が多く存在する部分に向くように形成してもよい。
【0018】
なお、第1カップ部材の第1連通孔は、第2カップ部材に対向する方向に形成されていないことが好ましく、第2カップ部材の第2連通孔は、第1カップ部材に対向する方向に形成されていないことが好ましい。このように設定することにより、第1連通孔から発生した燃焼生成物によって第2カップ部材内部に充填されたガス発生剤が着火されることが防止され、逆の問題発生も防止される。
【0019】
(請求項4)
本発明は、課題の解決手段として、前記第1カップ部材の第1拡径周壁部の内径と、前記第2カップ部材の第2縮径周壁部の内径が同一であり、前記第1カップ部材と前記第2カップ部材が同一形状かつ同一寸法の点火器カラーに嵌め込まれて固定されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器を提供する。
【0020】
このように第1カップ部材の第1拡径部の内径と第2カップ部材の第2縮径部の内径を同一寸法にすることにより、点火器を固定するための点火器カラーも同一寸法のものを用いることができる。また、点火器も同じものを用いることができる。このため、部品を共通化することで組立作業が容易になり、コストも削減できる。
【0021】
また、第1カップ部材と第2カップ部材は、カップ部材の開口部の形状を拡径したり縮径する加工法を適用できるため、所望寸法の調整が容易である。これに対して、特許文献1に見られるようなカップ96の開口部分を内側に曲げる加工は難しい。
【0022】
(請求項5)
本発明は、課題の解決手段として、前記第1カップ部材において、前記第1拡径周壁部と前記第1縮径周壁部の境界部が第1環状平面を有しており、
前記第2カップ部材において、前記第2縮径周壁部と前記第2拡径周壁部の境界部が第2環状平面を有しており、
前記第1環状平面に複数の第1連通孔が形成され、前記第2環状平面に複数の第2連通孔が形成されている、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0023】
第1環状平面と第2環状平面は、それぞれのカップ部材の軸方向に対して垂直な面又は垂直に近い面である。第1環状平面と第2環状平面は、第1カップ部材と第2カップ部材を近接配置する観点から、軸方向の高さ位置が異なるように形成されていることが好ましい。
【0024】
第1環状平面に形成された複数の第1連通孔からは、燃焼生成物が上方向(軸方向)に噴出され、第2環状平面に形成された複数の第2連通孔からは、燃焼生成物が下方向(軸方向)に噴出されるため、筒状フィルタへの熱的影響が抑制される。なお、第1カップ部材と第2カップ部材が、第1環状平面と第2環状平面が軸方向に重なり合うように配置されているとき、第1連通孔と第2連通孔が対向しないように形成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス発生器は、ハウジング内部に充填されるガス発生剤等の充填量を変更するためにハウジングの大きさを変える必要がなく、ガス発生剤量の変更による出力の変更も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(1)図1、図2のガス発生器
図1は、本発明のガス発生器の軸方向の断面図である。図2は、図1のガス発生器の軸方向に対して垂直方向への断面図であるが、一部構造や肉厚等は簡略化して示している。
【0027】
ガス発生器10は、ディフューザシェル12とクロージャシェル13とが接合部16で溶接されたハウジング11により、外殻が形成されている。
【0028】
ディフューザシェル12の周面には、複数のガス排出口14が設けられており、ガス排出口14は、アルミニウム又はステンレスからなるシールテープ15で内側から閉塞されている。
【0029】
クロージャシェル13の底面には2つの穴が設けられ、それぞれに第1点火手段21と第2点火手段25が配置されている。第1点火手段21は、第1点火器カラー22に固定された第1点火器23を有している。第2点火手段25は、第2点火器カラー26に固定された第2点火器27を有している。
【0030】
第1点火器カラー22と第2点火器カラー26、第1点火器23と第2点火器27は、同一形状、同一寸法のものを使用している。
【0031】
ハウジング11内部には、筒状のフィルタ45が配置されており、フィルタ45の外周面とガス排出口14及びシールテープ15の間には環状の間隙が設けられている。
【0032】
フィルタ45内部には第1燃焼室31が形成され、図示していない第1ガス発生剤(公知のガス発生剤)が充填されている。第1燃焼室31内には、第1カップ部材32と第2カップ部材41が隣接配置されている。
【0033】
第1カップ部材32は、開口部32a側の第1拡径周壁部32cと底面32b側の第1縮径周壁部32dを有しており、開口部32a側から第1点火器23を覆うようにして第1点火器カラー22に嵌め込まれている。第1カップ部材32の肉厚は均一である。
【0034】
第1拡径周壁部32cと第1縮径周壁部32dの境界部には第1環状斜面32eが形成されており、第1縮径周壁部32dには複数の第1連通孔34が形成されている。図1では、第1連通孔34は第1環状斜面32eに近い位置に形成されているが、第2カップ部材41と対向しない位置であれば、より底面32bに近い位置に形成されていてもよい。
【0035】
第1カップ部材32内部はエンハンサ室33となり、図示していないガス発生剤(公知のエンハンサ剤又はガス発生剤を使用できる。本発明では、前記エンハンサ剤もガス発生剤に含まれる。)が充填されている。ガス発生剤は、適宜種類、組成、形状を選択することにより、第1燃焼室31内のガス発生剤を着火燃焼させる作用と、それ自体の燃焼により発生するガスも利用するようにもできる。
【0036】
第2カップ部材41は、開口部41a側の第2縮径41dと底面41b側の第2拡径周壁部41cを有しており、開口部41a側から第2点火器27を覆うようにして第2点火器カラー26に嵌め込まれている。第2カップ部材41の肉厚は均一である。
【0037】
第2縮径周壁部41dと第2拡径周壁部41cの境界部には第2環状斜面41eが形成されており、第2拡径周壁部41cには複数の第2連通孔42が形成されている。複数の第2連通孔42は、外側からシールテープで閉塞されている。
図1では、第2連通孔42は底面41bに近い位置に形成されているが、第1カップ部材32と対向しない位置であれば、より第2環状斜面41eに近い位置や第2環状斜面41eに形成されていてもよいし、底部41bに形成されいてもよい。底部41bに形成するときには、底部41bとディフューザシェル12の天板12aとの間に間隔を形成する。
【0038】
第2カップ部材41内部は第2燃焼室35となり、図示していない第2ガス発生剤(公知のガス発生剤を使用できる)が充填されている。
【0039】
図1に示す断面図において、第1カップ部材32と第2カップ部材41は、同じ肉厚であり、互いにぴったりと合わせられるような断面形状をしている。第1カップ部材32と第2カップ部材41は、第1拡径周壁部32cと第2縮径周壁部41dが半径方向に間隔をおいて隣接し、かつ第1縮径周壁部32dと第2拡径周壁部41cが半径方向に間隔をおいて隣接するように配置されている。
【0040】
第1カップ部材32と第2カップ部材41の間隔は、エンハンサ室33の容量と第2燃焼室35の容量の増減の程度に応じて、第1カップ部材32と第2カップ部材41の外径を増減させることで設定される。また、第1カップ部材32と第2カップ部材41の間隔を狭くすることで、第1燃焼室31の容積を増加させることができる。なお、第1カップ部材32と第2カップ部材41の間は、そこに第1ガス発生剤が入り込まず、エンハンサ室33での燃焼が第2燃焼室35に影響しないような間隔にすることが好ましい。
【0041】
第1連通孔34と第2連通孔42は、軸方向の高さ位置が異なるように形成されており図1では高さ方向に間隔Aが形成されるようにして形成されている。このように設定することで、フィルタ45の同じ高さ位置に燃焼生成物が集中することが防止される。
【0042】
図2に示すとおり、第1連通孔34は、フィルタ45に最も近い位置及び第2カップ部材41に対向する位置には形成されていない。このため、第1連通孔34から噴出された燃焼生成物(ガス発生剤からの高温ガス等)によるフィルタ45と第2カップ部材41への熱的影響が抑制される。また、第1カップ部材32は、第1ガス発生剤が多く存在する部分に第1連通孔34が向くように配置されている。
【0043】
図2に示すとおり、第2連通孔42は、フィルタ45に最も近い位置及び第1カップ部材32に対向する位置には形成されていない。このため、第2連通孔42から噴出された燃焼生成物(第2ガス発生剤からの高温ガス等)によるフィルタ45と第1カップ部材32への熱的影響が抑制される。
【0044】
次に、図1、図2によりガス発生器の動作を説明する。ガス発生器はエアバッグシステムに組み込まれ、自動車に搭載されている場合を例にする。なお、第1点火器23と第2点火器27は、衝突時において自動車が受ける衝撃の程度に応じて、第1点火器23のみが作動する場合、第1点火器23が先に作動して第2点火器27が遅れて作動する場合、第1点火器23と第2点火器27が同時に作動する場合があるが、以下においては、第1点火器23が先に作動して第2点火器27が遅れて作動する場合について説明する。
【0045】
自動車が衝突して衝撃を受けたとき、コントロールユニットからの作動信号を受け、第
1点火器23が作動点火してエンハンサ室33内部のガス発生剤を着火燃焼させる。そしてその燃焼生成物(高温ガスや火炎等)は、第1連通孔34を通って第1燃焼室31に入り、第1ガス発生剤を着火、燃焼させて燃焼ガスを発生させる。このとき、第1連通孔34は、フィルタ45と距離を置いており、また第2カップ部材41とも対向する位置には形成されていないため、エンハンサ剤の燃焼生成物によって第2燃焼室35内の第2ガス発生剤が着火燃焼されることはない。
【0046】
第1燃焼室31内の第1ガス発生剤から発生した燃焼ガスは、フィルタ45を通って濾過及び冷却された後、シールテープ15を破り、ガス排出口14から排出され、エアバッグを膨張させる。このとき、第2連通孔42は外側からシールテープ(図示せず)で閉塞されているため、第1ガス発生剤の燃焼で発生する燃焼ガスによって第2燃焼室35内の第2ガス発生剤が着火、燃焼することはない。
【0047】
第1点火器23から遅れて第2点火器27が作動点火し、第2燃焼室35内の第2ガス発生剤が着火燃焼し、燃焼ガスが発生する。この燃焼ガスは、第2連通孔42のシールテープ(図示せず)を破り、第2連通孔42から第1燃焼室31に流出したあと、フィルタ45を通って濾過及び冷却され、ガス排出口14からエアバッグに導入される。
【0048】
(2)図3、図4のガス発生器
図3は、本発明の別実施形態であるガス発生器の軸方向の断面図である。図4は、図3のガス発生器の軸方向に対して垂直方向への断面図であるが、一部構造や肉厚等は簡略化して示している。
【0049】
ガス発生器100は、基本的な構造は図1のガス発生器10と同じであり、同じ動作をするものである。ガス発生器100とガス発生器10は、2つのカップ部材の形状等が異なるものであるため、2つのカップ部材について説明する。
【0050】
第1カップ部材132は、開口部132a側の第1拡径周壁部132cと底面132b側の第1縮径周壁部132dを有しており、開口部132a側から第1点火器23を覆うようにして第1点火器カラー22に嵌め込まれている。
【0051】
第1拡径周壁部132cと第1縮径周壁部132dの境界部には第1環状平面132eが形成されており、第1環状平面132eには複数の第1連通孔134が形成されている。
【0052】
第1カップ部材132内部はエンハンサ室33となり、図示していないガス発生剤(公知のエンハンサ剤又はガス発生剤を使用できる。本発明では、前記エンハンサ剤もガス発生剤に含まれる。)が充填されている。ガス発生剤は、適宜種類、組成、形状を選択することにより、第1燃焼室31内のガス発生剤を着火燃焼させる作用と、それ自体の燃焼により発生するガスも利用するようにもできる。
【0053】
第2カップ部材141は、開口部141a側の第2縮径周壁部141dと底面141b側の第2拡径周壁部141cを有しており、開口部141a側から第2点火器27を覆うようにして第2点火器カラー26に嵌め込まれている。
【0054】
第2縮径周壁部141dと第2拡径周壁部141cの境界部には第2環状平面141eが形成されており、第2環状平面141eには複数の第2連通孔42が形成されている。
【0055】
第2カップ部材141内部は第2燃焼室35となり、図示していない第2ガス発生剤(公知のガス発生剤を使用できる)が充填されている。
【0056】
図3に示す断面図において、第1カップ部材132と第2カップ部材141は、互いにぴったりと合わせられるような断面形状をしている。第1カップ部材132と第2カップ部材141は、第1拡径周壁部132cと第2縮径周壁部141dが半径方向に間隔をおいて隣接し、かつ第1縮径周壁部132dと第2拡径周壁部141cが半径方向に間隔をおいて隣接するように配置されている。
【0057】
第1カップ部材132と第2カップ部材141の間隔は、エンハンサ室33の容量と第2燃焼室35の容量の増減の程度に応じて、第1カップ部材132と第2カップ部材141の外径を増減させることで設定される。また、第1カップ部材132と第2カップ部材141の間隔を狭くすることで、第1燃焼室131の容積を増加させることができる。なお、第1カップ部材132と第2カップ部材141の間は、そこに第1ガス発生剤が入り込まず、エンハンサ室33での燃焼が第2燃焼室35に影響しないような間隔にすることが好ましい。
【0058】
第1連通孔134は、ハウジング天井面12a方向に開口しているため、第1連通孔134から噴出された燃焼生成物(ガス発生剤からの高温ガス等)によるフィルタ45と第2カップ部材141への熱的影響が抑制される。
【0059】
第2連通孔141は、ハウジング底面13a方向に開口しているため、第2連通孔142から噴出された燃焼生成物(ガス発生剤からの高温ガス等)によるフィルタ45と第1カップ部材132への熱的影響が抑制される。
【0060】
第1連通孔134と第2連通孔142は、第1カップ部材132と第2カップ部材141が軸方向に重なり合うように配置されているとき、即ち、第1環状平面132eが第2環状平面141eの下に入り込むようにして配置されているとき、図4に示すように、前記重なり部分に各連通孔が形成されないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のガス発生器の軸方向断面図。
【図2】図1のガス発生器の軸方向に対して垂直方向の断面図。
【図3】本発明の他実施形態であるガス発生器の軸方向断面図。
【図4】図3のガス発生器の軸方向に対して垂直方向の断面図。
【符号の説明】
【0062】
10 ガス発生器
11 ハウジング
14 ガス排出口
22、26 点火器カラー
23、27 点火器
31 第1燃焼室
32 第1カップ部材
33 エンハンサ室
34 第1連通孔
35 第2燃焼室
41 第2カップ部材
42 第2連通孔
45 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に筒状フィルタが配置され、前記筒状フィルタの内側にガス発生剤を収容する第1カップ部材と第2カップ部材が半径方向に並列して配置され、前記第1カップ部材と前記第2カップ部材にはそれぞれのガス発生剤を着火、燃焼させる点火手段が収容されており、
前記第1カップ部材が、開口部側の第1拡径周壁部と底面側の第1縮径周壁部を有し、開口部側から前記点火手段を包囲するように前記ハウジング底面に被せられており、
前記第2カップ部材が、開口部側の第2縮径周壁部と底面側の第2拡径周壁部を有し、開口部側から前記点火手段を包囲するように前記ハウジング底面に被せられており、
前記第1カップ部材と前記第2カップ部材が、前記第1拡径周壁部と前記第2縮径周壁部が半径方向に隣接し、かつ前記第1縮径周壁部と前記第2拡径周壁部が半径方向に隣接するように配置されており、
前記ハウジング内の前記第1カップ部材及び前記第2カップ部材で囲まれた空間を除いた空間が第1燃焼室を形成し、前記第1カップ部材で囲まれた空間がエンハンサ室を形成し、前記第2カップ部材で囲まれた空間が第2燃焼室を形成しており、前記第1燃焼室と前記エンハンサ室が作動時に連通され、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室が作動時に連通される、ガス発生器。
【請求項2】
前記第1カップ部材において、前記第1拡径周壁部と前記第1縮径周壁部の境界部が第1環状斜面を有しており、
前記第2カップ部材において、前記第2縮径周壁部と前記第2拡径周壁部の境界部が第2環状斜面を有している、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第1カップ部材の第1縮径周壁部には複数の第1連通孔が形成され、前記第2カップ部材の第2拡径周壁部には複数の第2連通孔が形成されており、
前記第1連通孔と前記第2連通孔が、軸方向の高さ位置が異なるように形成されている、請求項1又は2記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1カップ部材の第1拡径周壁部の内径と、前記第2カップ部材の第2縮径周壁部の内径が同一であり、前記第1カップ部材と前記第2カップ部材が同一形状かつ同一寸法の点火器カラーに嵌め込まれて固定されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第1カップ部材において、前記第1拡径周壁部と前記第1縮径周壁部の境界部が第1環状平面を有しており、
前記第2カップ部材において、前記第2縮径周壁部と前記第2拡径周壁部の境界部が第2環状平面を有しており、
前記第1環状平面に複数の第1連通孔が形成され、前記第2環状平面に複数の第2連通孔が形成されている、請求項1記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−892(P2010−892A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161172(P2008−161172)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】