説明

ガス絶縁電気機器

【課題】地球温暖化対策に配慮しつつ、優れた絶縁性能を確保したガス絶縁電気機器を提供する。
【解決手段】ガス絶縁電気機器は、ガス区分用スペーサ2によりガス区画された母線側断路器1a、計器用変成器1b、遮断器1c、線路側断路器1d及びケーブルヘッド1eからなる。各構成ユニット1a〜1eからは、内部の絶縁ガスを流通させる配管3を引き出し、この配管3をバルブ4及びポンプ5を介して絶縁ガス保守管理部10に接続する。絶縁ガス保守管理部10は、分解ガス濃度監視部12、分解ガス吸着部11及び絶縁ガス濃度監視部13から構成され、配管3はこの絶縁ガス保守管理部10の各部分へと接続した後、バルブ4を介して各構成ユニット1a〜1eへと再接続する。絶縁ガス中に分解ガスが含まれていた場合、分解ガス吸着部11により分解ガスは除去できるため、運転中のガス絶縁電気機器であっても高電圧絶縁性能の低下を回復できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SFガスよりも地球温暖化係数の少ない絶縁ガスを使用したガス絶縁電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力を継続的に供給している変電所においては、開閉装置、遮断器、変圧器、避雷器などの電力用電気機器が使用されている。これら電力用電気機器は、高電圧印加部と金属容器(接地電位)との間を電気的に絶縁するために絶縁媒体ガスが封入されている。主な絶縁媒体ガスとしてはSFガスが有名であり、空気よりも約3倍の絶縁耐力があることからも電力供給に資するために必要不可欠な物質である。
【0003】
一方で、昨今の地球温暖化問題への取り組みから地球温暖化係数の高い温室効果ガスが規制される動向にあり、国内外でも温室効果が低いまたは温室効果が無い代替ガス、或いは温室効果ガスの使用割合を低減した混合ガスを封入したガス絶縁電気機器の適用が考えられている。
【0004】
例えば、大気中に含まれているN、O、COなどは代替ガスの候補であり、高電圧絶縁、大電流遮断などの性能ごとに実用化に近い研究レベルにまで達してきている。一方、CFIを用いた混合ガスについても、加熱手段などを用いてCFIの混合割合を高めることで温室効果ガスの低減効果を狙う例が以下の文献に公開されている。
【特許文献1】特開平11−275720号公報
【特許文献2】特開2000−224722号公報
【特許文献3】特開2000−166033号公報
【特許文献4】特開2000−164040号公報
【特許文献5】特開2000−150253号公報
【特許文献6】特開2000−152447号公報
【特許文献7】特開2000−069635号公報
【特許文献8】特開平11−341622号公報
【特許文献9】特開平11−299020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のガス絶縁電気機器には次の様な問題が挙げられる。すなわち、代替ガスや混合ガスの候補に挙がっているN、O、COなどは高電圧絶縁および大電流遮断の基本的性能が明らかにされつつあるものの、CFIをガス絶縁電気機器の絶縁媒体ガスに適用した事例は皆無である。そのため、CFIを絶縁ガスとして使用した場合に、絶縁ガスそれ自体はもとより、内部放電により発生する分解ガスについても、その運用・保守診断に対して必要な機器構成が明確でなかった。
【0006】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、ガス絶縁電気機器の構成ユニットと分解ガス吸着部、分解ガス濃度監視部、絶縁ガス濃度監視部とをバルブを介して配管で接続し、ガスを循環させることにより、運転中の異なる構成ユニット同士において絶縁ガスおよび分解ガス双方の相互運用・保守診断を容易かつ確実に実行し得るガス絶縁電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明のガス絶縁電気機器は、金属容器内に高電圧印加部を電気的に絶縁するための絶縁ガスが封入され、ガス区分用スペーサにより構成ユニットごとにガス区分されたガス絶縁電気機器において、前記構成ユニットと分解ガス吸着部、分解ガス濃度監視部、絶縁ガス濃度監視部とを、前記絶縁ガスを循環させる配管によって接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分解ガス濃度検出部及び絶縁ガス濃度検出部により、分解ガスと絶縁ガスの濃度を常時監視することができ、ガス絶縁電気機器の絶縁性能が低下する兆候を早期に検出することが可能になる。また、分解ガスを吸着した絶縁ガスを再び各構成ユニットに戻すようにしたので、絶縁ガスの再利用が可能になり、地球温暖化対策上有利であると同時に、優れた絶縁性能を長期間にわたって確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図1に従って具体的に説明する。
(1)実施形態の構成
本実施形態において、ガス絶縁電気機器は、金属容器内に高電圧印加部を電気的に絶縁するための絶縁ガスが封入されており、当該機器のガス区分用スペーサ2によりガス区画された構成ユニット1a〜1eからなる。本実施形態において、この構成ユニット1a〜1eは、母線側断路器1a、計器用変成器1b、遮断器1c、線路側断路器1d及びケーブルヘッド1eである。なお、構成ユニット1a〜1eはこれらに限らず、変圧器、避雷器、計器用変圧器、ブッシング、母線などであっても良い。
【0010】
これら各構成ユニット1a〜1eからは、内部の絶縁ガスを流通させる配管3を引き出し、この配管3をバルブ4及びポンプ5を介して絶縁ガス保守管理部10に接続する。この絶縁ガス保守管理部10は、分解ガス濃度監視部12、分解ガス吸着部11及び絶縁ガス濃度監視部13から構成され、前記配管3はこの絶縁ガス保守管理部10の各部分へと接続した後、バルブ4を介して前記各構成ユニット1a〜1eへと再接続する。
【0011】
なお、本実施形態では、前記配管3は構成ユニット1a〜1eごとに並列に接続し、これに応じて各構成ユニット1a〜1eに対応した分解ガス濃度監視部12を複数配置する。すなわち、実際の分解ガス濃度は非常に低いと考えられるので、構成ユニット1a〜1eを直列に配管接続する場合に比較して並列接続にする方が高精度の濃度監視になる。
【0012】
特に、実際の変電所にある電力用電気機器は様々な構成ユニット1a〜1eから成り立っており、前記のような並列接続を行うことで、これらの異なる構成ユニット1a〜1eごとに濃度監視することが可能となり、個々の構成ユニット1a〜1eの特徴に適した事故時および部分放電発生時の絶縁劣化診断が可能になる。
【0013】
また、前記絶縁ガス保守管理部10は、図示のように、ポンプ5、分解ガス濃度監視部12、分解ガス吸着部11、絶縁ガス濃度監視部13の順に接続することが望ましい。すなわち、分解ガス吸着部11の直前に分解ガス濃度監視部12を設けることで、分解ガスの濃度監視が最も高感度になる。また、分解ガス吸着部11の直後に絶縁ガス濃度監視部13を設けることで、分解ガスの影響を受けない絶縁ガスの濃度監視が行える。
【0014】
更に、前記分解ガス濃度監視部12及び絶縁ガス濃度監視部13には観測窓14を設け、この観測窓14を覆うための金属板その他の遮光部材15を設ける。すなわち、CFIのように大気中では紫外線により短時間で分解されてしまうような絶縁ガスでは、所定の高電圧絶縁性能を維持できなくなる可能性がある。そこで、遮光部材15で観測窓14を覆えば、CFIが分解されることなく濃度監視が行える。
【0015】
本実施形態において、前記分解ガス濃度監視部12としては、一例として、分解ガス中の硫黄化合物、フッ素化合物、ヨウ素化合物、炭化水素類、アルコール類、アミド類の存否を監視する装置を使用する。
【0016】
すなわち、一般にSFからは硫黄化合物やフッ素化合物の分解ガスが発生する。またCFIからはヨウ素化合物の分解ガスが発生する。さらに変圧器内部のセルロース系(プレスボード等)からは炭化水素類の分解ガスが、プラスチック系(PETフィルム等)からはアルコール類、アミド類の分解ガスが発生すると考えられる。そこで、これら多種多様の分解ガスに見合った分解ガス濃度監視部12を設けることで、様々な構成ユニット1a〜1eに対応できる。
【0017】
本実施形態において、前記絶縁ガス濃度監視部13として、SF,CFI,N,CO,O、およびヨウ素を含む絶縁ガスの濃度を監視するものを使用する。
【0018】
すなわち、今後の温室効果ガスの削減動向によっては、変電所内の構成ユニット1a〜1eごとに適材適所の絶縁ガスを使用する可能性がある。例えば遮断器1cには大電流遮断性能の高いSF,COが、また母線には高電圧絶縁性能の高いCFI,N,CO,Oなどが考えられる。そこで、本実施形態では、これら異なる絶縁ガスに見合った絶縁ガス濃度監視部13を設けることで、様々な混合ガス或いは代替ガスに対応できるようにする。
【0019】
更に、前記分解ガス濃度監視部12及び絶縁ガス濃度監視部13のガス濃度検出手段としては、レーザ照射、熱伝導率変化あるいは赤外線照射により濃度検出を行うものを使用することができる。
【0020】
例えば、一般的な分解ガスおよび絶縁ガスの濃度測定は接触式の化学的反応による検知が主流であるが、レーザのような非接触式の検知であればガス流などの影響を受けずに正確な濃度を監視できる。また、絶縁ガス或いは分解ガスの熱伝導率は個々に異なるため、熱伝導率の変化を検出する素子を適用することでこれら熱伝導率の違いから個々のガスを特定することができる。また熱伝導率の変化の割合を時間的に見ることで、個々のガスの濃度監視が行える。更に、絶縁ガス或いは分解ガスの赤外線吸収率は個々に異なるため、赤外線を照射することでこれら吸収率の違いから個々のガスを特定することができる。また赤外線吸収率の変化の割合を時間的に見ることで、個々のガスの濃度監視が行える。
【0021】
(2)実施形態の作用効果
前記のような構成を有する本実施形態においては、構成ユニット1a〜1e内には通常の絶縁ガスの他に事故等で発生する分解ガスが含まれる場合があり、ポンプ5によりこれら各構成ユニット1a〜1e内の絶縁・分解ガスを循環させて構成ユニット1a〜1e外部に取り出す。
【0022】
すると、絶縁ガス中に分解ガスが含まれていた場合、分解ガス吸着部11により分解ガスは除去できるため、運転中のガス絶縁電気機器であっても高電圧絶縁性能の低下を回復できる。また運用上必要な絶縁ガスは再度構成ユニット1a〜1eに戻すことで、地球温暖化に加担することのない高い絶縁ガスの運用効率が期待できる。
【0023】
本実施例によれば、絶縁ガスおよび分解ガス双方の相互運用・保守診断効果の高いガス絶縁電気機器を提供することができる。
【0024】
(3)他の実施形態
本発明は前記のような実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明に包含される。
【0025】
(a) 構成ユニットの種類ごと(例えば、変圧器、避雷器、遮断器、断路器、計器用変成器、ブッシング、母線ごと)に配管3を並列に接続する。すなわち、実際の変電所にある電力用電気機器は様々な種類の構成ユニット1a〜1eから成り立っており、これらを一括して濃度監視することで事故時および部分放電発生時の絶縁劣化診断の保守連携が可能になる。
【0026】
(b) 各構成ユニットからの配管3を直列に接続して、これを絶縁ガス保守管理部10に設けた1台の分解ガス濃度監視部12に接続する。これにより、配管3の引き回しを容易にすると共に、分解ガス濃度監視部12の構成も単純化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のガス絶縁電気機器の一実施の形態を示すシステム構成図。
【符号の説明】
【0028】
1a〜1e構成ユニット
1a…母線側断路器
1b…計器用変成器
1c…遮断器
1d…線路側断路器
1e…ケーブルヘッド
2…ガス区分用スペーサ
3…配管
4…バルブ
5…ポンプ
10…絶縁ガス保守管理部
11…分解ガス吸着部
12…分解ガス濃度監視部
13…絶縁ガス濃度監視部
14…観測窓
15…遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器内に高電圧印加部を電気的に絶縁するための絶縁ガスが封入され、ガス区分用スペーサにより構成ユニットごとにガス区分されたガス絶縁電気機器において、
前記構成ユニットと分解ガス吸着部、分解ガス濃度監視部、絶縁ガス濃度監視部とを、前記絶縁ガスを循環させる配管によって接続したことを特徴とするガス絶縁電気機器。
【請求項2】
前記分解ガス濃度監視部及び絶縁ガス濃度監視部が、その内部の観測窓および遮光部材を具備することを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁電気機器。
【請求項3】
前記配管を、分解ガス濃度監視部、分解ガス吸着部、絶縁ガス濃度監視部の順に接続することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス絶縁電気機器。
【請求項4】
前記配管を、構成ユニットごとまたは構成ユニットの種類ごとに並列に分解ガス濃度検出部に接続することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。
【請求項5】
前記分解ガス濃度監視部が、分解ガス中の硫黄化合物、フッ素化合物、ヨウ素化合物、炭化水素類、アルコール類、アミド類を検出するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。
【請求項6】
前記絶縁ガス濃度監視部が、SF、CFI、N、CO、Oおよびヨウ素を含む絶縁ガスの濃度を検出するものであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のガス絶縁電気機器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−273282(P2007−273282A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98159(P2006−98159)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】